「ヴェラセルト教会立魔法学園へようこそ!」
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世界は、数えられる間で十五回。文明を手放した。
文明を手放す、という言葉には、文明を象徴する人間そのものも、当たり前にそこに居て。
墓という文化が意味をなくすほど、全ての死を数えきることも、それを伝えることも無謀だった。
また、【厄災】がやってくる。
100年と少しの時間。
生きたいという願いは、この世界に生まれ落ちた人が一度は思うものだ。
だからせめて、手の届く全てを救えますように。
私は奇跡に願う。
── ここまでを、前日譚として。
── 少女はいつか相対す、世界の意思そのものに。
── 逃避はもう赦されない。
── 物語は、既に始まっているのだから。
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Prologue . 「 ようこそ魔法学園へ 」 . 1話~4話
1章 . ねがいごと . 5話~
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本シリーズは11月16日より連載を開始した「Crown」の差し替え版です。
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サブ連載のため気分更新~隔週更新。
場合によっては休止する可能性あり。
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目次
「魔法学園へようこそ」
あのまま行くと色々と終わる…!ということを感じ取った2025/11/19の私の書き貯めです。
日本における春というのは、別れと出会いの季節だ。
社会に属するものであれば、新生活の始まりと子供の終わりを肌で感じることだろう。
それはこの世界において、例外なく訪れるものだった。
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「ええっと…パンフレットにはこの辺りと書いてあったはず…」
今年のヴェラセルト教会立魔法学園新入生…|勘解由小路《かでのこうじ》 |椿《つばき》。
かなり大きなスーツケースの中に通学中使用するバッグから着替え、化粧品まで全てを詰め込み、入らなかった長細い『荷物』を肩に背負って、パンフレットにシワをつけながら元気に迷子になっていた。
それもそのはずで、彼女は統一大陸アルディアにおける【ヴェラセルト魔法王国】の地を踏むのは初めてである。要は土地勘がないのだ。
パンフレットを何度見てもわからない。地図が見れないわけでも、文章を読めないはないのだが、地図の描き方が日本とは全くもって違うため読み解くのが少々難解になっていた。
「(どどっ、どどどどうしましょう…|私《わたくし》、このままじゃ入学初日から遅刻ですわ…!!)」
「そこの人…大丈夫?」
目を白黒させながら冷や汗をかいていた椿に、同じ制服を着た少女が恐る恐ると話しかける。
ちなみに、|椿《つばき》は広場の隅っことは言え1人で百面相をしていたので、話しかけてくる相手がそういう状態になるのはある種当たり前である。
「…大丈夫じゃ、ありませんわ…」
「そ、そうなの…えっと、リボンの色を見るに…私と同じ新入生よね?」
胸元とミニベレーについているリボン −男子の場合胸元のリボンはネクタイになる− 。青であれば1年、黄であれば2年、赤であれば3年といった具合に色で相手の学年を判別できるようになっている。
「そうなんですけれど…|私《わたくし》、遠方の者でして…|此方《アルディア》の地図が読めないのです…それでお恥ずかしいことに迷子になっていて…」
「えっと…学園は、あのお城よ?」
言いづらそうに、指さされた城。
高く、荘厳にそびえ立っているその城。
今まで王族か何か、偉い人が住んでいる場所だと思っていた|椿《つばき》は、ぽかんと口を開けて驚くしかなかった。
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「うう、助かりましたわ…まさかあの城が学園だとは…」
「まぁ外国の人にとっては中々わからないわよね…それで貴方、名前は?」
なんとか学園の正面門にたどり着いた2人…主に体力を使ったのは1人のみだが。
入学式が行われる体育館へと移動しながら、2人は話す。
「|私《わたくし》、|勘解由小路《かでのこうじ》 |椿《つばき》と申しますわ!お気軽に|椿《つばき》と呼んでください!」
「|椿《ツバキ》ね。あたしはレティフォーネ・ロベッタ。レティって呼んでちょうだい、長いからね」
「よろしくお願いしますわ、レティ!」
「此方こそ…それで、|椿《ツバキ》は入学式についてちゃんと知ってる?」
入学案内に書いてあったんだけど、と付け加えてレティが|椿《つばき》の顔をチラ見する。
「こ、此方に来るときの準備が忙しなくて…あと|私《わたくし》、その、空を飛ぶ乗り物が苦手でして…つまり、ええと…」
「…しょうがないわね、口頭で説明するから、ちゃんと覚えなさいよ」
「ありがとうございますわ!」
このヴェラセルト魔法学園は、毎年1000人以上の人を拒まず受け入れる。
そのため入学式は毎年ありえないほど混雑し、保護者を受け入れるスペースもないらしい。
1000人に番号を割り振ったり、なんてことをしていては途方も無いので、入学式はファミリーネームのイニシャルを使って整列する。このときは右をAとし左をZとする。
「なら、レティとは一度離れ離れですわね…」
「まぁ、一旦は入学式まで乗り切れるでしょうから大丈夫よ」
そういいながら話していれば、とうとう入学式の会場に到着する。
ここまで歩くのにも7分かかったという事実に目が眩みそうになりながらも、|椿《つばき》は頭を振って|念写機《カメラ》を取り出す。
「レティ、写真を撮ってくれません?」
「いいわよ。後で私のもお願いね」
そういいながら、レティは|念写機《カメラ》を構える。
ヴェラセルト教会立魔法学園、第401期生入学式。
そう書かれたパネルの隣で、|椿《つばき》は可愛らしく微笑んでいた。