私はただ、生きたかっただけなのに。
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幸せになりたかっただけなのに。
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■■になりたかっただけなのに。
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■■■■を求めただけなのに。
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■■を知らなかっただけなのに。
五人の罪人の物語。
■の場所はネタバレなので公開していないだけです。気にしないでください。
異端者の福音/タイトル原案者:ABC探偵様
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目次
第零話【走】
灰色の町並みを、私は走っていた。都市の端っこの田舎町の夜に、当然人なんているはずない。
なのに、見られている。尾行されてる。捕まったら終わり。また、あそこに戻されて………。なんで?私はただ、生きたかっただけなのに。頬を涙が伝った。黒いフードが風によって取れ、|■■■■■■■■■■《長い真っ白な髪》が露わになった。足裏に、容赦なく石が打ち付ける。足跡が赤くなっても走ることをやめない。曲がり角を曲がり、必死で都市を目指した。生きたかっただけなのに、どうしてこうなったんだろう………。赤い目の少女はどこに怒りをぶつけていいか分からなかった。そして、立ち止まった。
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「目標が立ち止まった。」
トランシーバー越しに聞こえてくるノイズ混じりの声。
「これより、捕獲に移る。」
決められた事を決められた通りにやる。点々と残る赤い足跡を少しおぞましく思う。さっさと終わらせて、家族の元へ帰ろう。そう、いつも通り。その時、目の前で赤い液体が飛び散った。その赤い液は、顔に付いて、発火した。
「えっ?」
なにが起きたか、一瞬、分からなかった。なにかが焦げる匂いがすぐ横からする。焦げているものが、自分の顔の皮膚だと分かるのに、約0.1秒かかった。突然、きた激痛に、思わず顔を抑える、が、逆効果だった。
「ギャァ゛………!」
手に燃え移った火を、見つめることしかできなかった。変な悲鳴が口から漏れ、それば直ぐに夜の闇に溶けて消えた。熱い熱い熱い熱い。まだ燃え移っていない方の手で顔を触る。耐え難い激痛が閃光のように、一瞬にして全身を駆け巡った。もう声も出なかった。次に、火が目に燃え移った。それは、想像を絶する痛みだった。目が燃える。水分が蒸発するような音がして、消えていった。地面に転がり、のた打ちまわった。最後に、目で見たのは、怒りを含んだ燃えるような赤い目でこちらを睨む、少女の顔だった。いつも通り。いつも通り帰って、妻にキスして、子供と遊んで、夕飯を食べて、風呂に入って、寝る。それ以上の幸福はいらない。それだけで、いいのに。
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夜の町に、風が吹く。五人の人の服が残っていた。指輪がコロコロと転がり、かちゃりと音をたてた。私はそれを拾い、そっと、近くの服のもとに置いた。生きたかっただけ、誰もがそう。私だって、生きたかっただけだから。彼も、生きたかっただけなはず。でも、私は人を殺してでも、生きたいの。謝りはしない。謝っても赦されないから。私は、指輪に背を都市を目指し、走り出した。決して、振り返ることはなかった。
あとがき
一人目の主人公ちゃん視点です。
この子の出番はまだしばらく先になると思われます………。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
次回も読んでいただけたら嬉しいです!
第壱話【表】
ピチチチ………。
小鳥のさえずりの音で、シラハ・カナリアナスは目を覚ました。体を起こし、鏡の前へといく。もう十三歳だというのに、鏡に映った顔はなんともマヌケだった。慌てて、手で、灰色の髪を整える。まだぴょこんと跳ねる癖っ毛を乱暴に押さえて、メイド服に着替えると、外へでた。廊下を歩いていると、一人の少年が近づいてきた。
「シラハ姉ちゃんおはよう!」
「おはよう。ディアナ。」
シラハはディアナと呼ばれた少年に優しく微笑みかける。ディアナはきょとんとした表情で、言った。
「シラハ姉ちゃんの笑みってなんか怖いね。」
シラハは最初、なにを言われたか分からなかった。すぐに、侮辱されたと分かり、傷つく。呆然と立っていると、ディアナは慌てて顔の前で手を振った。
「ち、違う!そ、そんな意味じゃなくて………。」
「はいはい。ディアナくんはシラハお姉ちゃんに振り向いて貰いたいから変なこと言ってるんでしょう?」
にやけ顔で、横で遊んでいた少女、カエデが口を出した。すると、ディアナは耳まで真っ赤にして否定した。
「違うわ!」
カエデは余裕の表情で、「唾を飛ばすな」と文句を言った。睨み合う二人。このままだと喧嘩になりそうだと思ったから、話題を変えることにした。
「ノルエ様はどこにいる?」
ノルエ様の話題を口にすると、二人の顔が明るくなった。
「ノルエ様は今日一日部屋から出てないよ…………。」
「私、ノルエ様と早く遊びたいよ……。」
二人は暗い表情を見せる。気まずくなったシラハは別のことを早口で口にした。
「じゃあ、私が遊んであげるよ。」
シラハのセリフに二人の顔がまた明るくなった。ころころと変わる二人の表情を愛おしげに見つめた。まだ子供だなという気持ちもあったが、それはシラハもなので言わなかった。
「じゃあ、ボール遊びしよう。」
シラハの提案にディアナは不満げに唇を尖らした。
「ねぇ、シラハ姉ちゃん。それ前もやったよ。」
「あれ?そうだったっけ?」と首を傾げた。
「前っていつ?」
そう聞くと、カエデが心配そうにシラハを見つめた。
「シラハお姉ちゃん、病気?」
シラハは首を横に振る。病気ではない。けど、なんか記憶が抜けている気がする。
「きっと、気のせいだよね…………。」
ポツリと呟いたと同時に鐘の音が鳴り響いた。
「あ………お祈りの時間だ…………。」
シラハは二人を連れて、お祈りの場へと向かった。途中にある、金色のテンプレートがかかっている部屋。テンプレートには「ノルエ・モヴ・クロッカス」と掘られている。
ノルエ様の部屋には側に仕えるシラハでさえ、許しをもらわなければ入ることはできない。
シラハは中にいるであろうノルエ様を扉越しに見つめた。もちろん、視線が合うなんてことはない。シラハは三秒ほど間をおいて、お祈りの場へと向かった。
お祈りの場に来たのはシラハで最後なようだ。真っ白で艶々な大理石でできたお祈りの場。一番奧には豪華な席があるが、ノルエ様でさえ、その席に座ったことはない。
座ったらお尻が痛くなりそうだと、いつも思う。シラハは指定の場所へと行き、跪き、両手を合わせ、祈りを捧げた。
なにに祈りを捧げているかは分からない。きっと、あの席に座る誰かに向けてだと思う。三十分くらい経つと、雲に隠れていた太陽が出てきて、その光をカラフルなガラスが反射し、床を彩った。
その光をぼんやりと見つめる。それから、なぜか本来ならばやってはいけない、顔を上げることをした。窓の先に見える搭。この国、ニンファエア国のシンボルのような物だ。
その搭を見て、ようやく自分が顔を上げているのだと認識し、慌てて顔を下げた。心の中で、席に座る誰かに必死に謝る。
そうしている間に、お祈りの一時間は過ぎた。
昼食を食べるために、みんなを連れて、食堂へ向かった。食堂にも、ノルエ様はいなかった。
いつもノルエ様が昼食を食べている席をシラハは寂しそうに見つめた。午後にはノルエ様に会えるといいなと思いながら昼食を食べた。
あとがき
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
良ければ、どうだったか教えてほしいです…………。
最後、セリフ無ですみません!
でも、一応伏線?的なものもいれてあるので、しっかりと読んでもらえるとうれしいです!
次回も読んでいただけたら嬉しいです!
第弐話【探】
「やぁ!みんな!」
夕食を食べている時、突然扉の方から声が聞こえてきた。驚き、振り返ると、金の短髪の男性が口元に笑みを浮かべて立っていた。一人の少年が叫ぶ。
「あっ!ノルエ様!」
少年はノルエ様の方へと駆けていく。みんなも続いて、「ノルエ様!ノルエ様!」とノルエ様の方へ集まる。シラハも少し顔をほころばせた。シラハの視線に気づくと、ノルエ様も微笑み返した。夕食を一緒に食べることができて、幸せだと思った。シラハは改めて、あの席に座っている誰かに感謝した。
---
夕食後、ノルエ様に呼び出されたシラハはノルエ様の部屋へと向かった。ノルエ様は椅子に座り、シラハの方を真っ直ぐに見つめた。なにもかも見透かされているような気がして、シラハはお祈りの時間にしてしまった事を話した。
「すみません…………ノルエ様。お祈りの時間に顔を上げてしまいました………。誠に申し訳ございません…………。」
怒られるかと思い、ギュッと目を瞑る。しかし、いつまで経っても怒声は聞こえてこなかった。恐る恐る顔を上げると、微笑みを浮かべたノルエ様がいた。
「大丈夫。むしろ君で良かった。」
その言葉にシラハは違和感を憶えた。しかし、その違和感を口にすることはなかった。
「下がっていいよ。」
ノルエ様の優しく、しかししっかりとした声に言われ、シラハは部屋を出る。その途中、ノルエ様の机の紙が目にはいった。盗み見はよくないと分かっていたが、見てしまった。端っこの部分しか見えなかったし、一瞬だったが、『2実験:成功』と書いてあった気がする。実験?成功?シラハの頭の中がハテナで埋め尽くされた。分からないことだらけで、悪い妄想を振り払うように頭を振ると、壁に頭を打ち付け、苦しみ悶えることになった。
---
夜中、誰かの足音で、シラハは目を覚ました。音からして、革靴だろうと思う。この|施設《孤児院》で革靴を履いている人物は一人しかいない。心臓が不規則なリズムで跳ね上がる。深呼吸をし、心臓を落ち着かせると、ゆっくりとスリッパを履く。なるべく音をたてずに、ドアノブをひねって、扉を開けた。蝶番の開く音が少し響いたが、大丈夫だろうと思う。ゆっくりと閉めると、忍び足で、足音の方へと向かった。
足音は思ったよりも早く歩いていた。引き離されないように、必死に追う。段々と息があがってきた。曲がり角を曲がった。曲がり角の先には誰もいなかった。
代わりに、少し隙間の開いた扉を見つけた。隙間から中を覗く。部屋の中は暗く、なにも見えなかった。思い切って、扉を開けて、入る。手探りで暗闇の中を彷徨っていると、奥の床に扉があった。開けてみると、梯子がかけてあり、地下へ繋がっているようだった。シラハは恐る恐る、梯子を下り始めた。
あとがき
ここまで読んでいただきありがとうございます!
前回同様、最後の方、セリフ無ですみません…………。
皆さんも予想(?)の通り、ここから結構暗くなるので、お気をつけて!
まぁ、まだ年齢制限はかかんない。
次回も読んでいただけたら嬉しいです!
第参話【真】
__寒い。__牢の中の気温はとても低い。__寒い。__誰かの足音が響く。__寒い。__誰かが牢の前に立った。__寒い。__あの男だった。__寒い。__あの男は去ってった。__寒い。__また誰か来た。私は顔を上げる。そこには、銀髪の可憐な少女が立っていた。少女は驚いたように目を見開いた。驚きたいのはこっちだ。
「誰?」
私はか細い声で聞いた。ここ数十日、まともに声を出していなかったから、かすれた、変な声になってしまった。
「私は、シラハ・カナリアス。貴方は?」
高く柔らかく、どこか不思議な声で少女、シラハは答えた。
「私は……………ユヲネ・ヒペリカム………。」
少し答えに戸惑った。まさか、名前も一瞬忘れるなんて自分でも驚いた。
「ユヲネ………さん?」
シラハは躊躇いがちに聞く。さん付けの呼び方になれない。
「ユヲネでいいよ。」
大分、普通に戻った声でシラハに言う。シラハは眉を少し下げつつも、頷いた。
「ここって………?地下牢………ですよね?なんでユヲネはここに?」
「成功例だから。時が来るまで、ここに閉じこめられてるの。知らないの?」
私が聞くと、シラハは真っ直ぐ頷いた。どうやら、本当に知らず、無関係ならしい。私は少し警戒の目を緩める。
「今、何時?」
真っ暗な中、数十日いると、時間の感覚を忘れてしまう。
「丁度、十二時くらいです。」
もうそんな時間か。急に眠気が押し寄せてきた気がする。眠気を振り払うために、軽く頭を振る。洗っていない真っ黒な髪がバサバサと気持ちの悪い音をたてた。
「取り敢えず、また来ます。」
シラハはそう言い残すと、また梯子のところへと戻った。寒い。彼女がいなくなってから、また寒くなった。私は溜め息をつく。明日が、楽しみになるなんて、ここ数十日、思いもしなかったな。私は深呼吸をすると、彼女がまた来ることへの期待を胸に、横になった。目を閉じる。しばらくすると、穏やかな寝息をたてて、眠った。
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そろそろ、時かも知れない。彼女が………の方を見たのであれば、きっとそうだ。待っててくれ。………よ。もうすぐ、迎えにいく。夜空に浮かぶ月が、顔を照らす前に、立ち去った。
あとがき
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
いよいよ三人目の主人公が登場しました!
物語が、とうとう動き出す。
次回も読んでいただけたら嬉しいです!
第肆話【疑】
ユヲネと会った日から、シラハは少しよそよそしくなった。普段ならノルエ様に言うが、今回のことはなんだか言い出せなかった。認めたくないけど、きっとノルエ様の事を少なからず疑ってるんだと思う。そして、この生活も、施設も。
「シラハ、大丈夫かい?」
ノルエ様の心配する声で、シラハは自分の朝食を食べる手が止まってることに気づく。
「大丈夫………です。」
ノルエ様の優しく、甘い蜜のような声も、今じゃ偽りの声にしか聞こえない。ノルエ様は絶対に気づいてる。もしかして、ノルエ様が主犯………?違う。あんなに優しいノルエ様がそんなことするわけない。シラハだってノルエ様に拾ってもらわれなきゃ死んでたもの。しかし、疑うのをやめることはできない。黙々と朝食を粗食し、食べきった。食器を片づけると、無意識にお祈りの場へと行った。
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「__シラハ?__シラハ?シラハ。」
肩を揺すられ、ぼんやりとしていた意識が鮮明になり、感覚が戻る。白黒だった世界が一気に色づいた。少しくらくらするし、頭痛がする。
「大丈夫かい?」
前にも聞かれたような気がする言葉を言われ、シラハは目の前の人物、ノルエ様へと目を向ける。
「大丈夫………です。」
前と同じように答え、立ち上がろうとしたら、ふらついて、座っていた椅子を倒してしまった。慌てて直し、謝る。
「自分の部屋に戻って、寝てるといいよ。」
ノルエ様に言われるがまま、頷いて自分の部屋へと戻った。それから、倒れるようにして、ベッドに横になると、そのまま寝てしまった。
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目を覚ましたのは六時だった。正確には、六時十三分。とっくに夕食の時間はすぎている。シラハは起き上がり、走って食堂へと向かった。
「遅れてすみません!」
シラハは普段めったにあげない大声で、謝った。すると、食堂にいるみんなはぽかんとした表情をして、やがて笑い出した。
「大丈夫だよ!それより、シラハ姉ちゃん、体調大丈夫?」
一人の少年に聞かれて、シラハは頭痛や目眩がしないことに気づいた。
「大丈夫。」
「本当?」
一人の少女が疑いのまなざしでシラハを見る。シラハは笑って、頷いた。少女の顔はぱぁーっと明るくなる。
「よかった!こっちこっち!」
少女は隣の席を空けてくれたが、シラハは迷わずにいつもの席へと座った。少女は不満げに唇を尖らせ、夕食を黙って食べ始めた。周りの子が少女を慰める。いつもの幸せそうな光景に、シラハは昨日、ユヲネに会ったことが夢のように思えた。シラハは今があることに感謝し、夕食を噛みしめた。
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夜、みんなが寝静まった頃に、シラハはユヲネに会いに、部屋を抜け出した。思えば、ここからだったのかも知れない。始まりは。
あとがき
歯車は回り始めている。
だんだんと壊れていく日常と認識。
歯車は止まらない__。
ここまで、読んでいただきありがとうございます!
上の意味深三文はほっといてくださいね。
どうでしたか?
次回も読んでくれると嬉しいです!
第伍話【対】
天井から足音が聞こえる。私はゆっくりと目を開け、起き上がった。手首の方からジャラリと音がした。ああ、そうだった。今日の昼、彼が来て、私に手に鎖をかけたんだった。地味に重い金属製の鎖を地面に打ち付けたり、鎖同士で打ち付けたりしたが、外れはしなかった。諦めの溜め息をつく。その時、ガコンと音がして、梯子から誰かが降りてきた。私は身構える。降りてきたのはシラハだった。
「ユヲネ、来ました。」
シラハの柔らかく不思議な声を聞いて、私は安堵の息を洩らす。昨日初めて会った相手にここまで気を許している自分にびっくりした。
「昨日はゆっくり話せなかったので。教えてくれませんか?貴方がここにいる理由。成功例ってどういう意味なのか?」
シラハの真っ直ぐな質問に私は少し戸惑った。自分の言葉であの事を話したくない。そして、単純に記憶がないからだ。人間は恐怖に陥ったとき、自分を守るために、無意識のうちに記憶が消える、らしい。
「分からない。覚えてない。」
「じゃあ、なんか覚えている言葉とかは?」
「………魔。」
自然と喉の奥から声が出てきた。その言葉を口にするとき、酷く頭痛がして、脳内に何かが浮かび上がった。必死にそれを思い出す。浮かび上がってきたものを見て、私は思わず呟いた。
「なに、これ………。」
浮かび上がってきたものは花だった。赤色の鮮やかな花。
「どうしたの?」
「赤色の花………。その花の香りを吸わされて………。それで………。」
どんどん酷くなる頭痛と戦いながら必死に言葉を紡ぐ。しかし、そこまでで、視界が真っ暗になった。そして、真っ赤へと変わった。
---
「ユヲネ?」
名前を呼ばれて、私は目を覚ます。体を起こすと心配そうにこちらを見ているシラハと目があった。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、うん。」
曖昧な返事をする。
「じゃあ、まとめると、ここでは人体実験が行われていた、と。」
「ここじゃないけどね。」
私は付け足す。そう、ここでは行われていない。行われたのは、別の地下施設だ。
「たぶん、ここから近いと思うけど………。」
私は移動した時間を指折りで数えてみる。五分程度で、そう遠くないはずだ。
「ここから五分くらい………。」
シラハは何かを思いついたように、ハッとした表情で呟いた。
「お祈りの場……………。」
震える声で呻くように言った。
「明日、行ってみる。」
シラハは上の空の様子でそう言うと、梯子を登り始めた。私はその姿を見送り、壁に背を預けた。
あとがき
ここまで読んでくれてありがとうございます!
あ、あとがき付け足したのバレました?
時間ないので、次回も読んでくれると嬉しいです!
第陸話【下】
シラハは頭の中をはてなでいっぱいにしながら、歩いていた。あの、神聖なお祈りの場の地下が実験室?それに、魔って…………。「魔」には心当たりがあった。いつだっけ、遠い昔だった気もするし、最近だった気もする。ノルエ様が真っ赤な花を持ってきて、それで、それはなにかを聞いた。そうしたら、魔って………。とても、神聖なものだと言っていた気がする。神に等しい、と。花の花弁は五枚で………。花のことを思い出す度に、早くなる足取り。気がつくと、シラハは自室ではなく、お祈りの場へと向かっていた。何度見ても美しい大理石の床に足を踏み入れた途端、小さな断末魔が聞こえた気がした。驚き、思わず後ろへと下がる。キュッ、と心地のよい音が、壁に反響し、お祈りの場全体に広がった。思わず、口を塞ぐ。それから、ゆっくりと一歩一歩歩き出した。キョロキョロと視線を動かし、地下へ入る場所を探す。一生懸命探すが、なかなか見当たらない。それに、何度も行ったことのある場所なのだから、変なものがあったら見つかるし、普段から怪しむはずだ。そう、《《いつも行ってる場所なら》》。シラハはチラリと、奥に位置する豪華な椅子を見た。そして、歩み出した。
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案の定、椅子の後ろには隠し扉があった。引っ張ると木が擦れる音がして、扉が開いた。墨を塗りたくったような真っ暗な中。風はそこに吸い込まれているようだ。風の流れに逆らわず、シラハは中に入っていった。
---
気がつくと、シラハはベッドにいて、朝を迎えていた。あくびをしながら、くしゃくしゃな髪を触る。夢、だったのかな?妙にリアルな夢だな。思い出せない………。頭が痛む。赤色に染まる。シラハは首を振って、赤を振り払った。
「夢は、夢。だよね。」
シラハはいつも通り、メイド服に着替え、いつも通り、廊下へ出た。悲鳴を聞いたのはその時だった。慌てて、廊下を走り、駆けつけた先には、`発火した人`がいた。
`「あ゛ぁ゛………ヒュー………ヒュー………ダ………ズゲデ………………ぁ゛う゛ぁ゛………。」`
発火しながらも、助けを求める人物を呆然と見つめる。皮膚は焼けただれ、蒸発した目玉は片方が皮一枚で繋がっている状態になっていた。
`「いダい゛…ぁ゛づい…………い“や゛ダぁ゛………ジニタ゛………グ………ナイ゛………。」`
床に這い蹲り、転げ、のたうち回る人だった肉塊を見て、こんな無感情でいられる自分が怖かった。人の目の涙も、蒸発して、空気中に溶ける。やがて、口から小さな風を切るような音を出して、息絶えた。亡骸__肉塊を無表情で見つめるシラハを、小さな悲鳴をあげて、「化け物」と罵る一人の子供。混乱と恐怖は全体に伝わり、固まっている子や、泣いている子が何人もいた。そこへ、サラッとした金髪を揺らした男が入ってきた。
あとがき
読んでいただきありがとうございます!
一応、ね。PG12付けたよ?そんなにグロくないけど。
次回も読んでくれると嬉しいです!
第漆話【詰】
どこかから声がする。寒い気がする。これは、床。体が動かない。叫んでるのは誰?静にして。このまま寝たい。うるさい。
「__助けて!__助けて!**助けて!**」
その声を聞いて、私__シラハは意識を取り戻した。目を開こうと、接着剤で止められたような瞼を無理やり開いた。急に見た眩しい光に目を細める。見ると、カエデが金髪の男性__ノルエ様に連れて行かれるところだった。シラハは慌てて起き上がると、駆け出した。
「ノルエ様!カエデを離してください!」
シラハが叫ぶと、ノルエ様はきょとんとした表情を浮かべた後、いつも通り微笑んだ。
「おはよう。早かったね。」
ノルエ様の声にシラハはめまいを憶える。………そうだ。発火した人がいて、ノルエ様が来て………。
「仕方ない。君も、来なさい。」
ノルエ様の唐突な命令にシラハは逆らえず、ノルエ様に着いていった。
---
お祈りの場の椅子の裏。地下の扉をノルエ様は開き、押しやるようにして、シラハとカエデを中へと入れた。そして、自分も中に入ると、扉を閉めた。階段の先は地獄を投影したような場所だった。
`「殺し………て゛………。」`
牢屋から手を伸ばし、必死で言った言葉。耳を塞ぎたくなるような言葉から数々。憎悪と諦めの感情が詰まったような場所。カエデは途中で別の牢屋に入れられた。そして、シラハは真っ直ぐいった先のモニターの前の椅子に座らされた。中には数人の人と、真っ赤な花を持った一人の人。死んだ魚のような目をした数人の人の鼻に、花を押し付ける。花を持った人が出て行って、数分後に変化は起きた。苦しそうに息をし、壁にもたれかかる人。目を押さえ、うずくまる人。体を九の字に曲げる人。倒れ、はいつくばる人。そして、一人が発火した。連鎖するように、次々と発火していく人達。そこからは、地獄絵図だった。皮膚は焼けただれ、黒い燃えかすのようなものをボロボロと落とす。髪は額に張り付き、だんだんと焼かれ、焦げる。
`「熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!」`
最後に残った人が皮膚をかきながら叫ぶ。皮膚が「ベリッ!」と音をたて、剥がれる。尚もかき続ける。肉が焼ける悪臭がこっちにまで漂ってくるように思える。だんだんと、骨が見えてきた。所々黒ずんでいる骨は、炎に包まれ、黒焦げになった。「ビチャッ」音がして、その人の腕が血だまりに落ちた。血は広がる。腕のところに見え隠れしている骨を恐ろしく思う。触れてしまったら、壊れてしまいそうな真っ黒な骨。その人は片方に手で、喉をかきむしり始めた。嫌な音がして、喉から血が出てくる。もう、喉は焼けてしまっているのだろう。話そうとすると、風をきる音が喉から発せられる。それでも、無理やり話そうとするその人。
`「ガァ゛………い“………ヴ………“。」`
激しくせき込み、大量の血を吐いた。そして、血だまりに倒れ込んだ。モニターが途切れる。呆然とするシラハの腕をノルエ様__ノルエは掴み、無理やり立たせると、一番奥の牢屋に連れ込み、鍵をかけた。
あとがき
ここまで読んでいただきありがとうございます!
やっぱりグロい表現下手だよ……。一応、R18だけど。
次回も読んでくれると嬉しいです!
第捌話【城】
血の垂れる音がする。懐かしい血の匂い。私と同じ血の匂い。どこからかする。その近くで鉄の匂いがする。
「逃げられないよ。」
私は誰に言うでもなく、そう呟き、口角をあげた。
---
もう随分走った。大勢の人の息づかいが聞こえる場所まで来て、ようやく都市に着いたと気づき、足を止めた。足の裏の皮膚はズタズタで血がこびり付いている。傷だらけの足の裏に少し吐き気をおぼえる。もう追われていない安心感と開放感に、今まで溜まり続けていた疲労が限界を超え、私はその場に倒れた。
---
「………大丈夫?」
人の声に私は飛び起き、その人と距離を取る。
「誰!」
私はその人を注意深く観察する。巫女のような服装に先っぽだけ白い黒髪。ルビーのような赤い目は優しい眼差しで私を見ていた。困ったように眉を八の字にする少女。
「私は、サヤ・パンジー。貴方は?」
か細く柔らかいん怯えたような声に、私は警戒心を緩める。
「私は………マドナ・カレンデュラ。」
自分の名前を名乗るのはいつぶりだろうか?最後に名乗ったのは、あの金髪の男性にだろうか。実験の記憶が蘇り、頭痛に襲われる。
「もしかして、貴方もアマラン宗教の犠牲者?」
「あなら………え?なにそれ?」
私の返答に、サヤは信じられないといった表情で私を見る。
「え!?貴方、アマラン宗教を知らないの!?」
サヤの問いに私は頷く。
「もしかして、あの金髪の奴の………?」
「ノルエ様のことね。彼はアマラン宗教の教祖。永遠の命を追い求める、イカれた奴よ。私は奴の実験の《《失敗作》》。」
サヤは自分の髪を摘まむ。指先で擦ると、僅かに白くなった。きっと、染めているのだろう。
「貴方、どこに行くの?」
「知らない。逃げてきた。」
「なら、王都に向かいなさい。」
サヤの赤い目で見つめられ、私は無意識に頷いた。サヤの指差す方を見る。そこには立派な城がそびえ立っていた。私はサヤに向かって頭を下げると、城へ向かって駆け出した。そして、立ち止まった。城の横の搭をジッと見つめる。やはり、視線を感じる。私は搭にいるであろう誰かを睨むと、再び、城へ向かって走り出した。
---
「彼女…………リュイナの一族ね。」
私は彼女を観察する。目があった。なるほど、これは"魔"を身に宿して死なないわけだ。
「ふふ………楽しみ。」
最後に笑うのは、誰だろうか。私はしゃがみ込み、壁を背にもたれかかった。