編集者:みたらしだんご
君を忘れてしまうのが怖くてたまらなかった。
忘れたくなくて、私は必死だった。
忘れないように何度も思い返していた。君と過ごした時間を。
恋愛小説です。
多分、全4話とプロローグ、エピローグで完結します。ぜひ、最後まで読んでください!
〜登場人物〜
高校3年生
・椎菜 柚《しいなゆず》
・波風 穂樹《なみかぜすすき》
・若宮 双葉《わかみやふたば》
・クラスメート
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・椎菜 燕《しいなつばめ》
・藍川 紅琳《あいかわあかり》
・穂樹のお母さん
・柚のお母さん
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目次
君との思い出についていく プロローグ
ノートに小説を書くタイプで、ノートに書いたやつを一部変更しながら、書きました。
最後まで読んでくれたら嬉しいなぁ
--- プロローグ ---
私は今、屋上にいる。
なぜかというと、朝来たとき、机の中を見ると、折られた紙が入っていた。開くと、
《放課後、屋上へ》
と書かれていた。
だからこうして、屋上に来ているのだ。だが、肝心の呼び出した相手がまだ来ていない。こういうときは、先にきとくべきなのではないか?と、思ってしまうが、とりあえず、スマホで時間をつぶすことにした。
15分ほど経った頃、屋上の扉が開いた音がした。音がした方を見ると、男子生徒がいた。その男子生徒は、キョロキョロとあたりを見渡し、私を見ると、こっちに走ってきた。
「紙、見た?」
「あ、うん」
「遅くなってごめん」
「うん」
彼は、私の方をまっすぐ見ている。こんなにも見つめられたら、顔が赤くなりそうだ。
「あのさ、俺と付き合ってほしい」
「…えっ?」
いきなりの告白。突然すぎて、話が追いつかない。
「それって、私に言ってるんだよね?」
「うん」
「誰かと間違ってない?」
「うん、間違ってない」
私のことを好きになる人がいるんだ、とこのとき思った。だけど、同時に不思議に思った。
私は、物静かで、真面目だ。学校では友達以外は何も話さない。こんな性格なのに、好きになるなんて不思議だ。
そもそも、彼とは同じクラスではないのだ。だから、名前ももちろん知らない。
そうなると、どうやって私の机に紙を入れることができたのか、と思ってしまう。本人が入れたのかもしれないし、友だちに頼んだのかもしれない。
告白されたのは、ものすごく嬉しい。でも、少し迷ってしまう。
私は悩んだ結果、新しいことに挑戦するのも悪くないと思った。
「いいけど、条件がある」
「うん」
「本気で私のことを好きにならないこと」
最後まで読んでくれてありがとうございます!
また次の話もぜひ読んでください!(完成したら)
もし、文字が間違ってたら言ってください!
君との思い出についていく 1話ー1
ファンレターをくれた方、ありがとうございます!
めちゃくちゃ嬉しいですヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。
今回もぜひ最後まで読んでください!
--- 1.12月 ---
告白された次の日。彼と連絡先を交換したものの、1度もやり取りをしていない。どちらかというと、向こうから来てほしくて待っているのだ。
自分から送ってもいいのだが、私にはそんな勇気もなく、送らずにいる。そもそも、何を送ればいいのか、わからない。
昼休み、私の唯一の親友、若宮双葉(わかみやふたば)とともに屋上のベンチに座る。屋上には、何人かいた。
弁当を開けて食べる。双葉は、売店で買ったパンと牛乳を食べていた。
「今日も美味しそうなお弁当だね」
「うん。今日も作ってくれてるの」
「柚、料理できないもんね〜」
「うるさいな〜。仕方ないじゃん。苦手なの〜」
「わかってるって。ははは」
私は、料理ができない。なんでできないのかは、よくわかっていないけど。でも、私が料理をすると、必ずと言っていいほど、焦げてしまう。
弁当を食べすすめていると、食べ終わった双葉が私の方向を見つめている。まるで、「一口ちょうだい」と言っているかのように。
「…欲しいの?」
「え、まぁ、どっちでもいいっていうかぁ」
「どうせ、欲しいんでしょ。はい、あーんして」
「あーん」
双葉の口の中に唐揚げを入れた。
「う〜ん、やっぱ、優子おばさんの唐揚げは最高だよ!」
「いつも食べてるくせに」
「てへ!」
双葉は、毎回唐揚げを食べている。私の唐揚げを。
優子おばさんというのは、私の母のことだ。
弁当を食べ終え、ゆったりしている頃、スマホが鳴った。見ると、彼からメールが届いていた。
「誰から?」
「彼氏」
「ふーん。…えっ!彼氏!?」
「うん。彼氏。言ってなかったっけ?」
「えー!嘘でしょ!?いつの間に…!?」
「昨日、告られたんだよね」
「え、じゃあホヤホヤじゃん」
「うん、そうなの」
メールの中身を見てみる。
【今日の放課後、空いてる?空いてたら、カフェに来てほしい
カフェのの場所⇩】
⇩の下には、URLがあった。そのURLを押すと、カフェのホームページが開いた。
「くま…のこ…カフェ…?」
「ん?」
「いや、くまのこカフェって知ってる?」
「あー、知ってるよ。看板猫がいてさ、最近話題になってるんだよ」
「へー」
放課後、双葉と別れ、くまのこカフェへ向かう。学校までは歩きで通っているため、カフェまでも歩きで向かう。今は、マップを見ながら進んでいる。
昨日の告白のときに言った条件、彼はすんなり受け入れてくれた。普通の人なら、戸惑いながらもOKするだろうけど、彼は戸惑うことなく、すぐ答えた。
くまのこカフェの前に着いた。くまのこカフェの外観は、温かみのある木で作られている建物だった。
入り口のドアを開けると、中から暖かい空気が体にあたった。
中に入って、あたりを見渡し彼を探す。すると、彼は端の椅子に座っていた。私は彼の前に座り、温かいカフェラテを頼んだ。
「ごめん、待った?」
「ううん、全然」
「めっちゃいいカフェだね」
「だろ?」
「うん」
今思ったが、私はなぜ呼ばれたのだろうか。これはもしやデートというものなのか?これが初デートなのは少し嫌なのだが…。
「なんで今日は会おうと思ったの?」
「お互いさ、何も知らないじゃん。だからさ、お互いのこと知ろうっていう感じでさ」
「なるほどね」
少しホッとした。これが初デートじゃなくて。だいぶ安心した。
まぁ、確かに彼のことは全く知らない。
「とりあえず、名前教えて」
「私は椎菜柚(しいなゆず)」
「俺は波風穂樹(なみかぜすすき)」
「なんて呼んだらいい?」
「んー、別になんでもいいよ」
「じゃあ、穂樹くんでいい?」
「いいよ。俺は椎菜って呼ぶよ」
「うん」
やっと名前を知ることができた。でも、1つだけ思ったことがある。それは、私は穂樹くんのことを、下の名前で呼ぶことにしたけど、穂樹くんは、私のことを上の名前で呼ぶこと。
まぁ、私は条件として、本気で好きになるな、なんて言っちゃたし、そりゃあそうかと、納得はしている。
それから、色々な話をして、分かったことがたくさんあった。私はそれらを、スマホのメモに残しておいた。
穂樹くんは隣のクラスで、駅に近くに家がある。弟と妹が1人ずついるらしい。
私は、4歳上の兄がいる。美人な彼女さんもいる。私は、兄の彼女に一度だけ会ったことがある。とっても優しくて可愛かった。
「他に話してないこととかある?」
「えっ…」
まだ話していないこと…。一応1つだけ言ってないことがある。でも、それは双葉と家族と学校しか知らない。
私は、誰にも言わない。そう決めていた。でも、穂樹くんは私の彼氏だ。言ったほうがいいのかもしれない。
だが、それを言って、引かれてしまったり、別れてほしいなんて言われたりしたらどうしようなどと考えてしまっている。
「特には無いよ」
私は結局言わなかった。
「そっか、ほんじゃあ、帰るか」
私と穂樹くんは途中まで一緒に帰った。その間ずっと沈黙が続いていた。でも、気まずさは全く無かった。
「じゃあ、俺こっちだから」
「あ、うん。じゃあね」
「じゃあ。また連絡する」
「うん」
そして、別れた。
帰るときには、夕日が出ていて、冷たい風が吹いていた。
* * *
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
本当はまだ、1話は終わってないのですが、1話を3つに区切って投稿していこうと思います。
次もまた読んでください!
君との思い出についていく 1話ー2
またまた、ファンレターをいただきました!ありがとうございます!
ファンレターに質問みたいなのがあったので答えておこうと思います。
Q 小説が好きだったりするんですか?
A はい、大好きです。最近も2冊買いました。(恋愛小説を買うことが多い)
今回もぜひ最後まで読んでください!
* * *
「もって、2年ぐらいかと…」
そう言われてから、1年と6ヵ月が経っていた。意外にもすぐ時が経ってしまった。
今のところなんの変化もないが、大切に日々を過ごしている。
俺は、いつ死ぬかわからない。だから、彼女を作った。
別に大好きというほどではないが、気にはなっていた。告白したとき、彼女からあの条件を言われたとき、少しびっくりはしたが、OKした。
なぜ椎菜にしたのか。それは、一目惚れ?とでも言うのだろうか。俺は、彼女に惚れたのだ。
彼女を作ることができた。あとは、デートをしなければならない。どこに行くかは決まっていないが、デートは行きたい。人生で最初で最後の彼女と一緒に。
俺の病気のことは、彼女には言っていない。もちろん友達にも言っていない。弟と妹にも。これからも言うつもりはない。死んでからも。
弟と妹はまた別だ。まだ小1だから、もう少し大きくなってから、話してもらうつもりだ。
きっと、椎菜はまだ俺のことを好きにはなっていないはず。だから、俺と付き合っていくうちに好きなっていくだろう。
だが、椎菜は本気で好きにならないことを条件として付き合ってもらった。なぜ、あんな条件をつけたのかは分からないが、付き合ってくれたことに関しては、とても感謝している。
あと少しで冬休みに入る。冬休みに入ればデートし放題だ。だが、大学を受験するとなれば、また別だが。
俺は、あと4ヵ月ほどしか生きることができないから、大学に受験する必要もない。でも、椎菜が大学に行くのなら受験するはずだ。
だから、デートがたくさんできるわけじゃないが、できるだけたくさんデートをするつもりだ。
今日は、月に2回の病院に行く日だ。この日にいつも病状が悪化していないかを調べる。
病院に着き、受付を済ませ、待合室の椅子に腰掛けた。スマホを取り出し時間を潰していた。
「あっ」
突然、女の子の声がした。しかも、聞き覚えのある声だった。顔をあげると椎菜がいた。俺は固まってしまった。病院でばったり会うなんて。
「よ、よう。椎菜」
「あ、うん」
「きょ、今日はなんで、病院にいるんだ…?」
「えっ、いや、ちょっと風邪気味で…」
「あ、そう、なんだ」
「穂樹くんは?」
「えっと…」
ここで本当のことを言うべきなのか。でも、俺は言わないと決めている。
「ちょっと、体調悪くてさ…」
「あ、そうなんだ。大丈夫?」
「う、うん。大丈夫…」
「そっか」
「あ、あのさ」
俺はデートに誘うことにした。病院で。
「明日、空いてる?」
「うん。空いてるよ」
「じゃあ、どこか行く?」
「うん。いいよ」
「じゃあ、11時くらいに家に行くよ」
「うん。分かった」
こうして、明日デートに行くことになった。
俺の名前が呼ばれ、椎菜と別れ、診察室に向かった。扉を開けて中に入る。
「お座りください」
「はい」
主治医の先生は、病院の中でも人気らしい。話を聞くと、この病院の中でも唯一のイケメンらしい。俺は別になんとも思っていないが、モテモテらしい。
「最近お変わりないですか?」
「はい」
「じゃあ、検査しましょうか」
「はい」
検査と言っても簡単な検査ですぐ終わる。
「異常ないですね」
「そうですか」
「ですが、油断してはいけません。突然、急変することもあるので」
「はい。わかりました」
診察室を出て、会計を済ませ、処方箋を出す。薬を受け取り、外に出ると、椎菜がいた。
「あれ?椎菜?」
「あ、来た」
「待っててくれたのか?」
「うん、そうだよ」
「そうなのか」
椎菜は優しいということが分かった。椎菜の性格は全く知らなかった。だから、こんな一面を見られて良かったと思う。
「薬はもらわなかったのか?」
「えっ、あ、うん。薬はいらないよ、って言われてさ」
「そっか」
風邪気味なのに薬をもらわないっていうことがあるのだろうか?そんなことあまりない気もするが。もしかして、他の病気が…?
でも、そんなことを言ったら、俺だって椎菜に嘘をついている。だから、もし、椎菜が隠しているのなら、お互い様だ。
「そういえばもうすぐ冬休みだな」
「うん。そうだね」
「どこか、遠いところに行きたいな」
「例えば?」
「んー、旅行とか?」
「えっ…」
「ん?」
「い、いや、そうだね…」
椎菜は少し戸惑った様子だった。戸惑うようなことを俺は言ってしまっただろうか。
何か旅行に嫌な思い出でもあるのだろうか。それだったら、申し訳ないと思う。
「じゃあ、私こっちだから」
「あ、うん」
椎菜は慌てるように帰ってしまった。そんなに旅行が嫌いだったのだろうか。また明日聞くことにした。
* * *
最後まで読んでいただきありがとうございます!
次回もぜひ読んでください!
君との思い出についていく 1話ー3
ファンレターいただきました!本当にありがとうございます!
今回もぜひ最後まで読んでください!
(遅くなってしまいました…すみません(´-﹏-`;))
* * *
逃げるように帰ってきてしまったが、大丈夫だろうか。
病院で穂樹くんに会ってドキッとしてしまったが、バレてないだろうか。バレてないといいのだが…。
旅行…。旅行するのは大好きだが、今の自分では、クラスメートや彼氏と行くのは少し抵抗がある。双葉や家族と行くのは問題ない。
だったら、嘘をつかずに本当のことを言ってしまえばいいのかもしれないが、心配されてしまうのも嫌だし、別れを告げられるのも嫌だ。こんなのわがままなのかもしれないけど、本当に嫌なのだ。
明日はデートをすることになっているが、気まずくならないだろうか。初デートなのだから、楽しいデートにしたい。気まずさが残るデートにだけはしたくない。
スマホを取り出し、連絡先の中から双葉のを選び、電話する。
『もしもーし』
「あ、もしもしー?」
『どうしたの、柚?』
「あのさ、双葉って付き合ったことってあったよね」
『うん、もちろん。今もいるよ』
「そうだよねぇ。…ん?」
『ん?』
「彼氏いるの?」
『うん、いるよ。あれ?柚に言ってなかったっけ?』
「えっー!」
『うるさいよ!』
「ご、ごめん…」
初めて知った。双葉に彼氏がいたなんて。最近、別れた話は聞いてたけど、もうできてるなんて衝撃的すぎた。
きっと、私が双葉に彼氏がいるって言ったときの双葉の気持ちと一緒だ。反応も一緒な気がする。
『それで?彼氏となんかあった?』
「今日、病院で会ってさ」
『え、病院で?』
「うん、そう。で、帰るとき、一緒に帰ったんだけど、途中で逃げるように帰ってきちゃってさ。まぁ、 そこは、別にいいんだけど、明日、デートでさ。気まずさが出てくる気がしてさ…」
『その前にさ、彼氏くんに病気のこと言ってるの?』
「言ってないよ」
『なんで、逃げるように帰ってきたの?』
「話をしてて、旅行の話が出てきたんだよね。その時私、変な返事しちゃって。それで、嫌になって、逃げるように帰ってきた」
『なるほどね。柚はさ、彼氏くんと旅行に行きたいなって思ったりする?』
「行きたいなぁって思うけど、今の私じゃ、少し躊躇するかな…」
『そっか』
数分沈黙が続き、双葉が喋った。
『まぁ、普通にしとけばいいんじゃない?』
「えっ…?」
意外だった。もっと、なんかあるのかと思っていたから。
「なんで?」
『だってさ、変に話に触れても、余計に気まずくなると思わない?だから、普通にいつもどおりにしてればいいと思うよ。まぁ、個人的な意見だから、そのとおりにしても、しなくても、どっちでもいいよ』
「そっかー」
考えてみればそうかもしれない。気まずくなりたくないなら、話に触れなければいいだけの話だ。
『参考になった?』
「うん、なったよ。ありがと」
『ううん、全然。また何かあったらいつでも連絡してね』
「うん、ありがとう。またね」
『うん、またね』
そして、電話を切った。
私は未だに、驚いていた。それは、双葉に彼氏がいたこと。
メモにはまだ書かれていないから、双葉は言ってなかったんだと思う。新たに、双葉の項目に付け足しおかなければ。
メモのアプリを開き、【双葉】と書かれた項目に付け足す。
【現在彼氏あり】
今日は、明日に備えて早く寝た。
アラームが鳴り、起き上がる。部屋を出て、リビングに向かう。
「おはよう、柚」
「うん、おはよう」
「早く朝ごはん食べなさい」
「え、なんで?」
「だって、今日デートなんでしょ?」
「ん?デート?約束なんてしてたっけ?」
「メモ開いてみたら?」
「うん」
メモのアプリを開き、彼氏の項目を見ると、
【明日は穂樹くんとデート!11時くらいに自分のマンションのロビーで待ち合わせ】
と書かれていた。
「思い出した?」
「ううん、全然。でも、双葉と電話したことだけ覚えてるよ」
「何を話したかは覚えてるの?」
「ううん、そこまでは覚えてないな」
「そっか。まぁ、とりあえず早く食べなさい」
「はーい」
穂樹くんとデートか。どんな感じになるるんだろう?少し不安もあるけど、ワクワクもある。
朝食を食べ終え、自分の部屋に戻り、学校に提出物を終わらせる。終わらせ、時間を見ると、11時半くらいだった。
準備をし、ロビーに向かう。
まだ時間があるため、メモを見ていた。
【彼氏くんから逃げるように帰ってきてしまった。次の日はデートだというのに…。双葉に言われた通りにはしておくが、どうなるかわからないから少し不安…(双葉に言われたことは双葉の項目から)】
このメモを見ると少し不安になる。なぜ逃げるように帰ってきてしまったのかは、まだメモを見てないからわからないけど、気まずくならなければいいなと思っている。
いろいろメモを見て、昨日どんな事があったのかを頭の中にインプットした。
11時頃、ロビーに入るドアを見ると、穂樹くんがやってきた。スマホをカバンの中に直し、穂樹くんのところに向かった。
「待った…?」
「ううん、全然」
「なら、良かった。じゃあ、行こうか」
「どこに行くの?」
「んー、遊園地とか?」
「いいんじゃない?」
「じゃあ、決定で」
駅に向かって歩いているが、沈黙が続いている。この沈黙は決して気まずさがあるわけではなかった。
少しすると、沈黙を断ち切るかのように、穂樹くんが喋った。
「昨日さ、話したの覚えてる?」
「覚えてるよ。昨日はごめんね」
「ううん。全然いいんだけど、1つ疑問に思ったことがあって」
「うん、何?」
「椎菜って旅行嫌い…?」
「…え」
こんなこと聞かれるなんて思ってなかったため、固まってしまった。きっと、昨日のことがあってそう思ったのだろう。
こういう時、本当のことを言うべきなのか。でも、いつかは言わなきゃいけない時が来ると思う。それが今なのかは、私にはわからない。
「言いたくないなら、大丈夫だよ。無理にいう必要ないし。ただ疑問に思っただけだから」
「…」
そう言われると、言わないと可哀想に思ってしまう。穂樹くんは意を決して質問してくれたはずなのに、私はそれに答えないというのはどうなのだろうか。
「…嫌いってわけじゃないんだよ。好きだよ。でも、ある事情があって、穂樹くんと行くのには少し躊躇してて…」
「ある事情ってのは…?」
「そ、それは、今はまだ言えない。言うときが来たら言うね」
「分かった。答えてくれてありがとう」
私は言うことにした。病気のことは隠して。でも、いつかは言わなきゃいけないから、そのときはちゃんと言うけど、それがいつ来るのかわからない。明日かもしれないし、もっと先かもしれない。
色々話をしながら、遊園地に向かった。
遊園地に着いて、すぐレストランに向かった。今はお昼どきでたくさん人がいたが、なんとか席につくことができた。
「はぁーお腹すいたー」
「だな。食べるかー」
そのとき、突然、穂樹くんが胸に手を当て、苦しそうにした。
「…大丈夫!?」
「う、うん。だ、大丈夫。ちょっと、トイレ…」
「あ、うん」
結構苦しそうにしていたが、大丈夫だろうか。しかも胸だったから、心臓…?心臓があまり良くないのだろうか。
穂樹くんは私よりもひどい病気なのだろうか。もしかして、トイレで倒れちゃったりして?本当に大丈夫なのだろうか。
数十分経って、穂樹くんが戻ってきた。
「だ、大丈夫…?」
「うん、大丈夫。ちょっと腹が痛くなっちゃって」
「で、でも、手を当てたところ、胸だった…けど…」
「…と、とにかく、大丈夫だから。心配しないで」
「う、うん」
本人がそう言うなら信じるがやはり少し心配だ。心配しなでって言われても心配するに決まってる。だって、彼女だから。
別に、穂樹くんが好きとかじゃなくて、彼女の立場として心配している。
昼食を食べ、たくさんのアトラクションに乗り、家に向かった。
「ここまででいいよ」
「分かった」
「気をつけてね。大丈夫?」
「うん、大丈夫。椎菜は心配しなくて大丈夫だよ。ピンピンしてるから」
「うん、分かった」
「うん、じゃあ」
そう言って別れた。
もしも、病気ならばいつか言ってくれるだろうし、本人が大丈夫だというのだから、大丈夫だと思う。そう自分に言い聞かせた。
でも、少し片隅に心配があった。だって、胸に手を当てていたのだ。きっと、いつか言ってくれる。そう信じていた。
冬休みに入り、雪もつもり始めた。
穂樹くんと付き合って3週間が経った。穂樹くんとは距離も縮まってきて仲良くなってきた。
登下校も一緒で、穂樹くんは双葉とも仲良くなった。
ある日、穂樹くんからメールが届いた。
【おはよう。元気?1月に入ってから、有名な温泉に行こうと思ってるんだけどいい?しかも、寝泊まりなんだ。いい?】
泊まりということはほぼ旅行だ。すごく行きたいが、やはり2きりだとためらってしまう。
仲良くなったとはいえ、あのことを伝えていないから、行こうと思えない。
母に相談すると、
「じゃあ、紅琳さんと行けば?2人だけで行くのも危ないし」
と言われた。
紅琳さんというのは、私の兄の彼女だ。だがお願いするのは少し申し訳ないなと思ってしまう。だって、友達ではないし、1回しか会ったことがないのだ。
紅琳さんに連絡すると、
【全然いいよー。予定空いてると思うし】
とあっさりOKしてくれた。
紅琳さんはOKだが、穂樹くんがOKしてくれるかどうか。
【いいけど、私の友達も連れてってもいいかな?】
【うん。いいよ。その子は事情を知ってるの?】
【うん、知ってるよ】
紅琳さんは私の病気のことは知っている。兄が紅琳さんに言ったらしい。
【じゃあ、いいよ。日にちはまた連絡する】
【了解!】
温泉に行くと言っていたがどこの温泉に行くのだろうか。楽しみになってきた。だが、少し不安もある。あんな事にならなかったらいいのだが…。
最後まで読んでいただきありがとうございます!m(_ _)m
次回もぜひ読んでください!
君との思い出についていく 2話ー1
定期テストがここ最近あるので投稿が遅くなっています(すみません…m(_ _;)m)
今回も、最後まで読んでいただければ嬉しいです。
--- 2.1月 ---
冬休みもあと1週間を残した今日。やっとこの日がやってきた。今日は穂樹くんと温泉に行く日だ。1泊2日の温泉旅行。
温泉まで紅琳さんの車で向かうことになっている。もちろん、運転するのは紅琳さん。
私は最初、紅琳さんの車で向かうことに反対した。でも、紅琳さんが「いいよ、いいよ」と言うので、結局車で向かうことになった。
紅琳さんとは駅で待ち合わせしている。
カバンに洋服などの必要なものを入れ、家を出る。家を出るときには、母のチェックがしつこかった。
「服入れた?」
「入れたよ」
「歯ブラシとかは?」
「入れた」
「紅琳さんの失礼にならないようにね。あと気をつけて行くのよ」
「分かったって。じゃあ、行くね」
「いってらしゃい」
「いってきまーす」
駅につくと、紅琳さんがいた。やっぱり、紅琳さんは綺麗な人だ。なんでこんなにも綺麗な人が兄を選んだのか、今も不思議でたまらない。
「紅琳さん」
「お!柚ちゃん。久しぶり」
「久しぶりです」
「変わってないね〜」
「はい」
「彼氏くんはまだなの?」
「はい、まだ来てなくて…」
紅琳さんに荷物を入れてもらう。
「柚ちゃん」
「あ、はい」
「この際敬語やめない?」
紅琳さんにそう言われた。確かにタメ口で喋りたい気持ちは十分にある。でも、紅琳さんは年上だ。やはり、ためらってしまう。
「うーん」
「年上とか気にせずにさ」
「わかりました」
言われるがままに敬語は辞めることにした。もしかしたら、時々敬語が出てくるかもしないが。
数分経つと、穂樹くんがやってきた。手を振ると、振り返してくれた。なんだかキュンとしてしまう。
「ごめん、遅くなった」
「全然、大丈夫」
穂樹くんの荷物も紅琳さんに入れてもらった。
「紹介するね。こちらが兄の彼女の藍川紅琳さん」
「あ、どうも。波風穂樹です。よろしくお願いします」
「よろしくー」
2人は握手を交わす。紅琳さんと穂樹くんの身長は同じくらいだ。紅琳さんは女性の中でも高いほうだから、同じくらいになるんだと思う。私は小さい方だけど。
「今思ったけど、椎菜のお兄さんの彼女っていいの?」
「うん、OKもらってるから。お兄ちゃんにも紅琳さんにも」
「全然気にしないでね、穂樹くん」
「紅琳さんに手出したら、お兄ちゃん、穂樹くんのこと殴りに来ちゃうからダメだよ」
「分かってるよ。やるわけないじゃん」
お兄ちゃんには一応OKしてもらっているが渋々だった。最初は「俺も行く!」って聞かなかったけど、紅琳さんに「ダメ!2人を楽しませるのが私の役目。だから、今回はデートとは違うの!」と言われて、OKしてもらった。
私と穂樹くんは紅琳さんの車に乗り込んだ。車の中はいい匂いがした。
穂樹くんが言っていた。温泉までは約30kmほど。その間に昼食を食べることになっている。
「着いたよ〜」
「うん」
車を降りて、店に入る。このお店は海鮮丼のお店だ。店の中には美味しそうな海鮮丼を食べている人がたくさんいた。
メニュー表を開いて、選ぶ。値段はまぁまぁ高いが美味しそうなものばかり。私と穂樹くんはいろんな海鮮が入ってる海鮮丼、紅琳さんはマグロ丼を頼んだ。
料理が来て、真っ先に写真を撮った。海鮮丼には、いくらやマグロ、サーモン、イカ、エビ…などとたくさんの海鮮がご飯の上に乗っていた。
「いただきまーす」
1口目はマグロを食べる。とろけてとても美味しい。
「このお店ね、めっちゃ有名な店なんだよ」
「へぇー、そんなんだ。だからこんなに美味しいんだ」
「よかった。喜んでくれて」
海鮮丼を食べ終わり、ゆったりしていると、穂樹くんがカバンから何か取り出した。
「それ何?」
「薬だよ。飲まなきゃいけなくてさ」
「なんの?」
「えっと…風邪の薬…」
「風邪ひいてるの?」
「ううん、風邪気味なんだ」
「そんなんだ」
穂樹くんは風邪の薬だと言っていたが、薬の数が多かった。あと、何かを隠すかのように言っていた。何を隠しているのだろう?そう思っていたが、そこまで気にしていなかった。
店を出て、車に乗り再出発した。
温泉に着いたのは夕方の17時だった。外は暗くなりかけていた。
「はぁー、やっと着いたー」
「ほんとね。本当ならもう少し早く着けたはずだったんだけどね」
本当ならば、16時くらいに着くはずが、渋滞にあって、随分遅れてしまった。
「まぁ、仕方ないよ。おかげで穂樹くんと仲が深まったし」
「うん。結構楽しかった」
ここの温泉は旅館に付いている。旅館の宿泊料は高いけど、温泉も付いて、朝食、夕食も付いている。だから、だいぶいいところだと思う。
旅館の中に入って、受付をして鍵を受け取る。
私達の部屋は、2階にある。そして、とても広い。
階段で2階まで上り、部屋の鍵を開ける。中に入ると、とても綺麗な部屋だった。
「わぁ、すごい」
「だろ?俺ここに2回くらい来たことがあって、窓からの景色がめっちゃ綺麗なんだよ」
「あ、そうなんだ。誘ってくれてありがとね」
「うん。喜んでくれて嬉しいよ」
窓を開けて写真を撮る。
夕食は19時からでまだ時間があった。だから、3人でトランプをした。紅琳さんが持ってきてくれたトランプで。
19時前になり、夕食を食べる場所に向かう。
「うわー。美味しそう」
「そうだな。全部うまそう」
料理は机に並べられていた。座布団の上に、紅琳さんは私の前に、穂樹くんは私の隣りに座った。
料理はたくさんあり、全部食べられるか少し不安だった。
「紅琳さんはこれ全部食べれるの?」
「こんなの余裕よ。こう見えて大食いなのよ」
「えー!意外…!細いから食事制限してるのかと思った」
「ぜーんぜん、してないよ。そのかわり、食べた分だけ運動してるけどね」
「やっぱ、運動はするんだね」
全部食べられるか不安ではあったが、あまりにも美味しかったため、ぺろりと食べてしまった。
夕食を食べ終えきもちいね、温泉に入った。部屋についてある温泉に入った。
最初は穂樹くんから入ることになった。私はその間、紅琳さんと話をして盛り上がっていた。
「入っていいよ」
声が聞こえる方を向くと、浴衣姿の穂樹くんがいた。
「もういいの?」
「うん、いいよ」
「浴衣似合ってるね」
「あ、ありがとう」
そして、私と紅琳さんで温泉に入った。
「めっちゃ気持ちいいね」
「うん、そうだね~。肌がすべすべになりそう」
「確かに」
温泉から上がり、浴衣に着替えた。穂樹くんがいるところに行くと、穂樹くんは、スマホをいじっていた。
「穂樹くん、どう?」
「か、可愛い…」
「あ、ありがとう…」
穂樹くんは、照れていた。私もだけど。穂樹くんが照れているところなんて初めてみたから、とても嬉しかった。
今日のことを、メモっておく。写真も一緒にしておいた。3人で撮った写真も。穂樹くんの新たな一面も。
「あ、私飲んでくるね、下で」
「あ、うん。分かった」
「2人で楽しんで」
「う、うん」
紅琳さんはそう言って部屋を出た。2人きりなって、私も穂樹くんも照れて何も喋らなかった。
「紅琳さんって何飲むんだろう」
「やっぱ、ビールじゃない?」
「確かに。見た目的にもジョッキに入れたビールを飲んでそう」
「そうだね。私も想像できる」
「椎菜って、紅琳さんと仲いいんだね」
「うーん、仲良しだけど、会ったの今日で2回目だよ」
「に、2回目!?」
「うん、そうだよ」
「へぇー、すごいな。2回しか会ってないのにタメ口って」
「タメ口なのは、紅琳さんから言われたからだよ」
でも、今思えば、1回目会った時なんて、何も喋らなかった。それが今ではタメ口で喋っている。自分でもびっくりしている。
最初に会ったのは、私が高2の時、兄が彼女を家に連れてきたのだ。その彼女が紅琳さんだった。私は人見知りだったため、ずっと黙っていた。
そしたら、紅琳さんが私の存在に気づいて、積極的に話しかけてくれた。私はそれに首を振ったりして答えていた。それが精一杯のコミュニケーションだったから。
最後の方は、少しだけだけど喋ることができた。たった一言だったけど。「バイバイ」と一言だけ。
「そうなんだ。椎菜は人見知りなんだ」
「うん、そうなの」
「なんか意外かも」
そして、たくさん穂樹くんと話をした。穂樹くんの妹と弟の話とか、私の兄の話とかたくさん話し、たくさん知った。
「そろそろ寝る?」
「うん、そうだね。寝よう」
敷いた布団の中に入る。
「じゃあ、おやすみ」
「うん、おやすみ」
寝ようとするが、なかなか寝付けない。少し不安だから寝れないんだと思う。あんな事にならないとうにずっとお願いしている。今日一日中ずっと。
ならないにようにとお願いしていると、いつの間にか眠ってしまった。
最後まで読んでいただきありがとうございますm(_ _)m
最初にも言いましたが、定期テスト等あるため、投稿が遅れています。
それでも、読んでいただけたら嬉しいです。次回も読んでいただければなと思います。