テキストライブで作成後、小説家になろうに投稿した作品です。
クリスマスがテーマなので時季外れですが、読んでいただけると嬉しいです。
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目次
彼について。【あたたかき ふゆのひに】
季節外れですが、読んでいただけると幸いです。
今日はとても、さむい日ですね。
だんろはあたたかいですか?
ああ、それならよかった。さむいといいことがありませんからね。
冬はまったく、こんな老いぼれにはこたえます。
え、冬生まれですか?
それは失礼しました。それではもうすぐ、お|誕生日《たんじょうび》ですか。
いいことです。
ひとつ年をとると、いいこともわるいこともありますが、年のおわりになると、たいていは、ああ、生きていてよかったと思えるものですからね。
そうだ……せっかくですから、むかしばなしでもしましょうか。
ささやかですが、お|誕生日《たんじょうび》のおいわいです。
この話をきいていった人には、いいことがあるという、とくべつなお話ですよ。
****
むかしむかしあるところに、古びた|石造《いしづく》りの教会がありました。
三角形にとんがった屋根。
色あせたステンドグラス。
もみの木でできた、使いこまれてあめ色に光るオルガン。
屋根には一面|つた《・・》が這い、みどりのこけが生いしげって、石の色が見えないほどでした。
教会には、たったひとり、真っ白のひげをたっぷりとたくわえた、年老いた神父が住んでいました。
神父のやさしい青い目は、笑うと目じりにできるいっぱいのしわで埋まってしまいます。むかしは金色だった|髪《かみ》の毛も、すっかり|霜《しも》が降ったあとの地面のような白です。
教会のとなりにある村の子どもたちは、神父をサンタクロースとよんでいました。
サンタクロース。
クリスマスの夜にやってくる、みんなが大好きなおじいさんの名前です。
神父はみんなに愛されていました。
大人は口をそろえて、「あの人はりっぱな人だ。あの人にお祈りしてもらうと、本当に神さまの|御許《みもと》にいるような気がする。」といいます。
子どもはそれを聞いて、「いやいや、サンタクロースはお祈りするより、オルガンをひいていた方がすてきだよ。|讃美歌《さんびか》をひくのがとてもうまいんだ」と言い返します。
そうすると神父は、にこにこ笑って、子どもたちの頭をなでてあげるのでした。
さて、とある冬の日のお昼のことです……
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。お話はまだまだ続きますので、もしよければシリーズの続編を確認してくださると嬉しいです!
感想などいつでもお待ちしております!
※登場する地名などは全てフィクションです。また、便宜上クリスマスなどのキリスト教の祭日が出てきますが、実在の宗教とは一切関係ありません。
彼とこども【あたたかき ふゆのひに。】
前作への感想をくださった皆様ありがとうございます。
とある冬の日のお昼のことです。
外では、それはそれはつめたい風が吹いており、粉雪というのでしょうか、小さな雪がひらひらと風にまじっています。神父は朝のお祈りをすませ、教会のそうじをしていました。
そのときです。
教会のとびらを、とん、とん、と叩く音がします。
とびらには呼びりんがついているのですが、その高さにとどかないような、小さな子どもでしょうか。神父はおどろき、急いでとびらをあけに行きました。
「おやおや!」
とびらの向こうに立っていた子どもを見て、神父は目を丸くしました。
「こんなさむいのに、どうしたんだい。さあ早くおはいりなさい」
子どもは|乳《ちち》色のワンピースのような服を一枚だけまとい、雪をかぶった頭で、たいそうしょげたようすでした。教会の中に入ると、近くにあった長いすにすわって、かなしそうな顔で床のタイルを見つめています。
そのまま何もいおうとしないので、神父はどうしたものやらと、困ってしまいました。
何しろ、はじめて会う子どもなのです。
村の外からきたのはわかっています。
「お父さんとお母さんがどこにいるか、わかるかい?」
「名前をおしえてくれるかい?」
「いやなことがあったのかな?」
何をきいても、子どもは首をふるばかり。
しかたがないので、神父は少しまっているようにと言いおいて、自分の部屋に入っていきました。
しばらくすると、神父が、羊の毛でできたあたたかそうな上着と肩かけ、それにほかほかとゆげをたてるミルクといっしょにもどってきました。
それを見ると、子どもの目がすこしかがやきます。
うでを伸ばしてほしそうにするので、神父はほっとして上着をきせてやり、肩掛けでひざ下をくるんで、小さな手のひらにミルクの入ったうつわを持たせてやりました。大人の上着にすっぽりと入って、すこし気もちもおちついたのか、子どもの顔にほほえみがうかびます。
「神父さん、ありがとう。とてもさむくて、くるしかったんだ。今はあたたかくていい感じがするよ」
「それはよかった」
神父はそれいじょう、何もききませんでした。
こんなかっこうで、ひとりぼっちでいたのにはきっとわけがあるのでしょう。言いたくないなら、むりはさせたくありませんでした。
ひと月ほど、子どもは神父といっしょにくらしました。
神父のやさしさのおかげか、おいしいごはんとミルクのおかげか、だんろのあるあたたかい教会のおかげか、顔色がわるかった子どもの、まんまるいほおには赤みがもどり、ことばと笑顔ももどってきました。
神父はそれを何よりうれしく思い、白ひげの下でにっこり笑いました。
いいことは、それだけではありませんでした。
神父はたいそうさむがりで、いつも上着を何まいもかさねてきています。
ところが、子どもといると、いつものようなさむさが感じられないのです。これは神さまがくれたプレゼントだろうか、それとも子どもにはふしぎな力でもあるのだろうか。神父はおどろきつつも、すこしだけあたたかい冬の日ざしに目をほそめました。
さあ、もうすぐ、クリスマスがやってきますが……
最後までお付き合いいただきありがとうございます。
まだお話は続きますので、もう少し見守っていただけると幸いです。
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