ぽかぽか陽だまりの小さな森の奥。 カラフルなキノコとふわふわした苔が笑っているみたいに揺れている。 そこには、小さな魔女たちが集まって、ひとつのテーブルを囲んでいた。 「今日は特別なお茶会だよ！」 くるくるかわいい縦ロールのミミは、ぴかぴか光る目を輝かせて言った。 テーブルの上には、可愛い小瓶やケーキが並んでいる。 でも、そのケーキは、ふつうのケーキじゃなかった。 血のように赤いジャムがじゅわっと溢れていて、カリカリの飴細工の形は骨のように見えた。 「わあ、ミミのお茶会っていつもワクワクするね！」 にこにこ笑うルルも、ひと口ケーキを食べた。 でも、その瞬間、ルルの瞳が一瞬、真っ黒になった。 そして、甘いケーキの中から、針のように尖った小さな棘のような物が口の中に刺さった。 「えっ、痛ｯ…？」 ルルは泣き顔でテーブルを見た。 ミミはにっこり笑って言った。 「だって、魔女の森のお菓子は甘くて、ちょっと怖いんだ！だってそれが、魔法でできてるんだもん！」 ふわふわの花びらがひらひらと舞いながら、森の中に不気味な囁きが響く。 「このお茶会、終わったらみんな変わっちゃうんだ…」 その夜、森の子たちは笑いながら眠りについた。 でも朝になると、みんなの影はゆらゆら、どこか変な形に。歪に。ゆがんでいた。

夏休みが始まったばかりのある日、 ユウは近所の公園で、不思議な少女。アオイと出会った。 アオイはいつも手に小さなラジオを持っていて、誰かに語りかけるように話していた。 「ねえ、ユウ。私、未来を少しだけ知ってるんだよ」 ユウは最初、そんなアオイのことを変だなと思ったけど、だんだん彼女の話にずるずると引き込まれていく。 「このラジオから流れる音は、未来のユウ達がが残すメッセージなの。」 二人は毎日、公園で会い、夏のほんの小さな冒険を重ねていった。 海辺での花火、星空の下での秘密の交換日記、そして、少しずつ距離が縮まる二人。 けれど、アオイはある日突然こう言った。 「ごめんね、ユウ。私は夏の終わりに消えちゃうんだ」 ユウは戸惑いながらも、最後の夏を二人で過ごす約束をした。 --- 夏が終わりに近づくある日、 ユウはアオイの本当の秘密を知った。 実はアオイはユウの「過去の記憶」から生まれた存在だった。 ユウが幼いころにがんで死んだ妹の記憶が、ラジオの中でユウに語りかけていた。 ラジオから流れる声は、未来のユウ自身が妹へ語りかけていたメッセージだった。 アオイは消えるけど、彼女の存在はユウの心の中にずっと残る。そう信じた。 --- 夏の終わりの夕暮れ、ユウは公園で一人、ラジオのスイッチを入れる。 「また、来年も会えるよね？」 遠くから聞こえる小さな声に、ユウは涙をこぼしながら、微笑んだ。 「　　　　　　」

深夜1時、東京都。 雨の降る街角に、小さなカフェが月明かりの様に灯りを灯していた。 扉を開けると、静かなジャズが流れ、ほのかな珈琲の香りが私を包む。 マスターのかずきはいつものようにカウンターに立ち、訪れた客を迎える。 今夜の客は、彼の昔の恋人、「なつみ」だった。 「久しぶりね、かずき」 なつみは少しだけ大人っぽくなった笑顔で言った。 二人は過去のことをあえて触れずに、静かな時間。ほんの少しの時間を共にした。 窓の外では、雨音がまるで二人の心の奥をそっと優しく撫でる様だった。 「覚えてる？あの頃、君がいつも言ってたこと」そうなつみは言った。 かずきは小さく笑いながら、なつみの手に触れた。 「覚えてるわ。『大人になっても、夜は特別』って」 そうなつみは微笑んだ。

それは甘くて切ない約束だった。 お互いに忙しくてすれ違いながらも、夜だけはここで会い、時間を止めていた。 けれど、今は違う。 大人になった二人は、簡単には繋がれない距離を抱えていた。 「また、こんな夜に会えたらいいね」 なつみの声は、微かな震えを含んでいた。 「そうだな。でも今夜は、この瞬間だけでいい」 カフェの灯りの中で、二人の影が、溶け合い。やがて静かに離れていった。

闇夜に輝く月の下、吸血鬼のルカは静かに街を見下ろしていた。 彼は千年を生きる古の吸血族だが、心は冷たく閉ざされていた。 そんなルカの胸に、小さな明かりが灯ったのは、人間の少女、ミナに出会ってからだった。 ミナは明るくて無邪気で、血の臭いも恐れずに彼に話しかけた。 「ねえ、ルカ。私のこと、怖くない？」 「…お前は、ただの人間だ」 でもルカはもう嘘をつけなかった。 「怖くない。…それどころか、忘れられない」 二人の秘密の関係が続く中、魔界の支配者たちは激怒した。 「吸血鬼は人間と交わるな。違反だ」 ルカには最後通告が来た。 「お前がその人間を愛するなら、吸血族を捨てろ」 心が引き裂かれる思いでルカは選択を迫られた。 吸血族を捨てるか。ミナを見捨てるか。 ある夜、ミナに言った。 「お前を守るため、俺は現世を離れる。だが、それでも。俺を愛してくれるか？ ミナは答えた。 「嫌だ…。ルカと…ルカと一緒がいい…！！」 赤く照らされる月が二人を優しく照らし、血と愛が交じり合った。 だが、その夜、ルカの背中には魔界の烙印が消え、 彼はただの人間にまた。近づいた。