二人の姉妹を中心に話が進む。
ある日を境に二人の住む町は、かつて死の皇帝が居座った異次元の都。
―――――――――闇雷京へと化した。
これ以上言うとネタバレなっておもんないんでこの辺で。
読んだら案外楽しいかもよ?
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目次
闇雷京、曼珠沙華骨牌、第壱句。
はい。
始まりました、闇雷京。
まあ、ごゆるりと。
「ほんと、勘弁しろよお天道様さぁ……」
夏のある日。
「雲の一個や二個くらい置いとけっての…………」
高めの位置で煌びやかな金髪をサイドポニテにした少女が、夏空に愚痴を吐いた。
横には同じような金髪をこれまた高めの位置でツインテールにした少女が並んで歩いている。
「なんか、ここまで晴れてたら…………嫌なことが起こりそうだよねぇ…」
ツインテールの少女がポツリと呟く。
二人は双子の姉妹。ポニテが滝紅 茉鈴、ツインテが滝紅 華鈴。
高校からの帰り路である。本日は授業が早く終わり、早々に帰宅出来て二人とも心が躍っている。
この夏の暑すぎる日差しを除いて。
「早く家帰っちゃおうか…………あっつい…………」
その時。
茉鈴の横髪に付けていた、母親の形見である大切な髪飾りがするりと、抜けていった。
「…………は?」
「お姉ちゃん!あそこ!」
華鈴がそう言って差す人差し指の先には、毛先が紫に染まった、黒髪おかっぱの少女が立っていた。
その少女の手には、茉鈴の髪飾り。少女はにっと笑って、路地裏へ走っていく。
「…………待ちなよこらぁぁぁぁぁ!」
「ああああお姉ちゃん⁈」
走り出した茉鈴に続いて、華鈴が追っていく。
少女をひたすら追い、路地裏を右へ左へくねくね曲がって、帰り路も分からなくなったあたりか。
少女が眼前から、唐突に消えた。
髪飾りを残して。
「何だったのあの子…………」
茉鈴は髪飾りを拾い、そう呟く。
その時、華鈴は奥から得体の知れない何かの禍々しい雰囲気が、空気を伝って伝わってくるのを感じた。
「…………何かある…………」
華鈴は、気配のする方へ近づいていく。
……………………すると突然、不思議な形をしたオブジェが現れた。
「…………っ⁈なにこれいきなり…………」
紫色…………否、闇のような色をした、奇妙なひし形のタイルがびっしり並んでいた。
こつんと、華鈴の足に何かが当たった。ひし形のタイルであった。
オブジェをよく見ると、一つ欠けている。華鈴はタイルを拾い、はめようか迷ってしまった。
…………それを感づいたかのように、不気味な声がこだまし始めた。
「ソレヲ…………ハメテ…………」
「クルシイヨ…………ハヤク…………」
「ハメテ…………ハメテ…………」
「…………っ」
華鈴は少しためらったが、このままだと殺されてしまいそうな気がし、タイルをはめた。すると、こだましていた不気味な声達は一斉に笑い声に変わった。
異常を察した茉鈴は、華鈴のもとへ駆け寄り腕をつかむやいなや
「逃げるよっ華鈴!」
と言って、無我夢中に走り出した。
ようやく路地裏から抜けると、二人は立ち止まって後ろを見た。オブジェがあったと思われる場所から、闇色の霧が勢いよく上がっているのが伺えた。
それと同時に青空が鉛色に染まり始める。街を行きかう人々は黒色の化物になっていく。
「何、これ…………何が起こってるのさ…………」
茉鈴は変わりすぎる町の光景を目にして絶句する。
建物の窓ガラスは割れていき、雑草が勝手に伸びていく。アスファルトの地面はひび割れていき、空を飛んでいた鳥たちは朽ちて消えていく。
まるでそれは、町全体が死んでいくようだった。
気づくと化物たちは、二人を囲んでいた。
「囲まれてる…………何こいつら…………」
逃げることができればいいのだが、逃がすほど化物たちも馬鹿ではないだろう。華鈴は顔を歪める。
「ちっ……ここで死ねってことか……」
不意に、化物が一体襲い掛かる。
二人は死を覚悟して目を閉じた。
…………その時、化物が突如、横に吹っ飛んだ。
眼を開くと、そこには白髪の女性が立っていた。女性は次々と化物を文字通りなぎ倒していく。
数秒の事だった。
「ふぅ…………これで全部かな」
「あの…………名前は何ですか…………?」
茉鈴は恐る恐る女性に名前を尋ねた。命の恩人なのだから名前くらいは知っておこうという考えである。
「あ、私?まず名前を聞くタイプなんだね」
女性は苦笑している。茉鈴は助けてもらったことに対してお礼を言っていないことに気が付いた。
「あっ、すいません、助けてくれてありがとうございます」
「いやいいのいいの。助けるように指示されただけだから。んで、名前を名乗らないとね。」
女性は「えーっとね…」と呟き、少し間を空けた後、
「私の名前は、彼岸桜だよ」
と言った。
まさかの苗字無し。二人は少し驚く。深追いはしないでおいた。
「さーて、君たち二人はこれから私達の…………隠れ家じゃないな…………拠点だな…………拠点に来てもらいまーす」
華鈴は彼岸桜がどうして隠れ家か拠点かで迷ったのを不思議に思って首を傾げた。茉鈴は迷っていた理由が分かって首をすくめた。
「あーあー聞こえるかーこちら彼岸桜―」
〔ばっちり聞こえるぞーい、それじゃあこっちにテレポートして来てー〕
「了解ー」
彼岸桜は耳に付けていた近未来風の片耳ヘッドフォンから手を放し、アスファルトの地面に手を付けた。
すると、地面にはブラックホールのようなものが浮かび上がった。
「はーいじゃあこれに入ってー」
「…………死んだりはしません、よね」
「何、まさか助けてから殺すようなことすると思ってるの」
彼岸桜に間髪入れず突っ込まれた茉鈴は、恐る恐るブラックホール(テレポーター)に足を突っ込む。
なんとなく気持ち悪い。
入りきるのを渋っていると、彼岸桜が背中を押した。
「っ⁈のわぁぁぁぁぁぁぁぁ…!」
「はよ入らないからだよ」
「あの、私もこれ入らないと駄目ですか」
「当たり前でしょ、ほらほらほら」
「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!」
悲鳴を上げて入っていった茉鈴に続き、華鈴が叫びながら入っていく。
それに続いて彼岸桜が飛び込むと、ブラックホール(テレポーター)が閉まっていった。
はい。
意外と時間かかるやんこれ。
まりりんもかりりんもしっかりしてくれ、高校生だろ、jkだろ(※作者次第です)
第弐句には新キャラ続々登場です。
お楽しみに。
闇雷京、曼珠沙華骨牌、第弐句。
来ました第弐句。
新キャラ続々登場です。
個性ぶっ飛んでるかもですが大目に見てくださいね[[圧
では、ごゆっくり。
「がっ」
「ごっ」
「よっと」
茉鈴が着地失敗し、その上から華鈴が多いかさぶり、最後に彼岸が着地。
「なんでそんなに着地下手なの君達…………」
「急に押したくせにそれ言えませんよね⁈」
急に背後から押されたのだから、着地出来ないのも無理はない。結論、茉鈴と華鈴が着地下手なのではなく、彼岸が押したからである。
「んじゃ、入ってー」
彼岸の手が示す先には、茶色の扉があった。
「なんで隠れ家なのにこんな堂々と扉あるんですか」
「隠れ家じゃない!拠点!」
「迷ってたの貴女ですけど⁈」
茉鈴はどうして茶色の扉が灰色のコンクリートについているのか不思議に思ったが、理由はすぐに解明した。
全員が扉に入ると、扉の窓から見えていた景色がふっと消えたのだ。恐らく、扉は指定した場所に現れるのだろう。
「このながーい廊下抜けたらお部屋でーす」
まるでバスガイドでもしているかのような声色で喋る彼岸をよそに、華鈴は廊下に飾られた花を見ていた。
「この花見たことないな…………なんていう花だろ…………」
「あー、何の花かは後でわかるよ、多分だけど」
「確証が持ててないのなんでなのか先に知りたいですけどね」
なんだかんだ話していると、廊下を抜けた。
ドアを開けると、リビングのような部屋があった。
「意外と綺麗なんですね…」
「意外って何、汚部屋とか想像してたのか」
真ん中に置いてあるローテーブルを囲うようにして、クッションとソファがあり、そんじょそこらの家と大して変わらないインテリアだった。
ただ、一つだけ、大きく違う点があった。
「窓がないんですね」
「そーなんだよねぇ、まあ諸事情あるんだけどさ」
茉鈴は諸事情という言葉が気になり、彼岸に聞いた。だがそれを含めて話があるようだった。
「まあ、適当に座って」
言われるがままに二人はソファに腰を掛け、彼岸の話を聞くことになった。
「まず、君達は何故こうなってしまったのかを話さないとね…………」
---
さて、人間の内部にはそれぞれ‘‘黒繊維‘‘ってのが少なからず存在するらしいんだけどね、その‘‘黒繊維‘‘はあるものの材料らしいんだね。
それもすごーく重要。
鉱石みたいに山掘ったら出てくるようなものじゃなくて、人間からしか取れないものなのね。最初にサイドポニテの君が髪飾りを取られたでしょ?髪飾りを取った子は恐らく、敵幹部だと判断してもいい。
つまりね、敵幹部が君達に近づいたってことは、君達に目を付けたって考えられる。なんで目を付けたかを考えると、それは奴等の目的である‘‘黒繊維‘‘が、君達の体内に大量に宿っているからっていう可能性が高い。
奴等はありとあらゆる世界…………ゲーム、小説、漫画、アニメ、そして現実、すべてを死の世界にしてしまうという野望を持っているんだよね。死の世界にするにはまず、死の皇帝を呼ぶ必要がある。そしてその死の皇帝を呼ぶには、ツインテの君が見た闇色のオブジェを10個発動させなきゃいけないわけなんだね。
あれが発動すると、周りの地域は‘‘黒死‘‘つってね、存在が無かったことになる…つまり、死んだことになる。そして、獣達はやがて灰となって消滅し、人間は
‘‘鬼零木枯し‘‘という化物に変わってしまう。その‘‘鬼零木枯し‘‘は‘‘黒繊維‘‘が生き物として凶悪化したものってわけ。オブジェが発動したことによって鬼零木枯らしは発生するから、ゲームとかの黒死地域には鬼零木枯らしが腐るほど湧いてるところがあるんだよ。
…………そうだ、ここの事も話しておかなきゃだった。
ここはね、『静晶空間』って呼ばれる空間にある。
魔法陣さえあれば生きたい場所へ行けるんだけど、建物から出て空間に行ったらね、四方からの圧力でぱっと消えちゃうらしいんよ。
この建物に住んでるのは、私以外に6人居てね。全員含めて無血縁七姉妹っていう、とある軍団の一グループなんだね。そのとある軍団っていうのは、死の世界になるのを阻止しようっていう意思を持った人たちで結成された、七草御伽団っていう軍団でね。私達無血縁七姉妹以外にも複数のグループが存在してるの。
---
「…………ざっとまあ、こんなもんかな」
茉鈴と華鈴は自分たちが置かれている状況を理解し、青ざめていた。
「つまり狙われてるんですよね、私達」
「そだよ」
「敵は今も私達を追っているんですよね」
「そだよ」
「捕まったら死にますかね」
「そりゃね」
「オーマイガー!」
華鈴は何故か英語で叫び、頭を抱えた。
「でも、君達をこのまま放したらすぐ捕まっちゃうだろうね」
「そりゃそうですよ」
茉鈴はうなずく。彼岸桜のように大した武力もないのだから、自分の身を守れるはずがない。
「じゃあ取り合えず、街道でも案内しようか」
「いやなんでのんびり街道観光なんですか」
彼岸の言ったことはあまりにもゆるすぎる。茉鈴は思わずすっ転びそうになった。
「いや、だって何も知らんまま何か稽古しようぜって言っても地形が分からないんじゃ意味ないでしょ?」
「ならそう言ってください」
彼岸の説明によると、街道というのは七草御伽団のグループが買い物などによく訪れる町にあるらしい。
なんでも、廃街にあるから『廃街・26番街』と呼ばれているとかなんとか。
なんで26なのかを突っ込みたいが、そんなことを言い出してはキリがない。
茉鈴、華鈴、そして彼岸桜の三人は長い廊下を抜け、街道へ向かっていくのだった。
第弐句お待たせしました。
いや、なんにせよいろいろございましてね、遅れただけです。
何が悪いというんだ(開き直るな)。
第壱句で新キャラ登場とかほざきやがったのどこのどいつでしょうかね、ええ(お前やろ)。
第参句からはいよいよ!ほんとに!マジで!新キャラ出てきます!
私はやればできる女ですよ、ええ(黙れ)。
では、次句でお会いしましょう。