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目次
人間、やめました!1
ぼんやり過ごしていた日常(せかい)。
あの日が、すべての始まりで、終わりだった。世界が、変わって、終わった日。
ピチチチチチ…………。鳥の鳴く音がする。カーテンの隙間から光が漏れて、朝を告げていた。
朝が来なければいいのに。父が、母のそばにいればいいのに。私、|柴永葵泉《しばながあおい》は毎朝そう思う。
「あんた、起きてんなら手伝いなさいよ!ったく………」母の苛ついた声が聞こえる。
勝手に苛ついて、勝手に怒って。人生は楽しいのだろうか。そんなふうに考えながら、身支度をする。
「今行きますー」
「ったく………。おっそいわね〜。もうちょい早く来れないの?そんなんだから、あんたは………」
たらたら母は説教をしているが、全く頭に入ってこない。右から左に聞き流している。ぼんやりと説教を聞いているふりをしながら、時計や部屋の様子を見ていた。
時計は家を出る数十分前で、何とか朝食は食べれそうだ。ってか部屋きったな……。洗濯物が部屋干しで家が狭く見える。床にはペットボトルが数本。毎日掃除しているのに、よく1日でここまで汚くできるなぁ。
「…って、あんた聞いてんの?せっかく私が話してるんだから…。もういいや、部屋きれいにして。そしたらご飯ね。早くしてよ〜」
「わかりましたー」
「んもう。部屋をきれいにするぐらい常識じゃない!なんでそんなことができないのかしら」
自分にかけられている声だとわかっていながら黙々とペットボトルを分別する。ゴミ箱に捨てる。ゴミ袋を捨てる。
「あ、そうそう。朝食、冷蔵庫の中だから。レンジで温めて食べて。今から|朝イチでパチ《いつものところ》行ってくるから」
パタン。玄関のドアが閉まった。私の母はダメな方の母らしい。私はワーワー言って、言いたいことだけ言って去っていった嵐のような人が居た玄関を見つめてから、掃除機をかけ終えて朝食を食べる。
「……いただきます」
〈ピロン〉自分の携帯からLINEの着信音が鳴る。反射的にメール画面を開いた。
クラスLINEだった。
<「今日は運動会の初めての練習の日だー」
<「↑マジ?何やるんだろ。あたし何組かなー!」
<「私はピと同じのがいいなー」
<「自慢かー。ひどいぞー(笑)てかここ女子グループじゃないぞ。」
<「あ」
<「お前彼氏持ちなのかよ。」
<「おれ種目どれやろっかなー。」
そっか。運動会か。てかご飯マズっ……。
返信しなくていいか。学校行こ。
「行ってきまーす。………まぁ、誰も家にいないんだけど」
今日は晴天。意外と日が眩しい。青い葉がしげる時期。五月にしては暑い日だ。
ぼんやりとそんなことを考えていた。
家から学校は近い。しばらく歩けば、ざわついた校門に着く。私にとって学校は勉強する場所とは言いにくい。なぜなら図書館に入り浸っていて、よく勉強しているからだ。もちろん家に居たくないからである。
木漏れ日を浴びながら校門を通り、校舎に入る。ざわついた廊下に教室。校庭に響く笛の音。すべてが重なり学校の“音”に成る。教師、先輩に挨拶をする声も含めて。
教室に入ると、仲良しグループで運動会の組み分けや、種目についての話題が上がっている。私はどこにも所属していないが、勉強はこいつに聞けば何とかなると思われる程度にはクラスに認知されている。
学校は退屈だなぁ……。
「はーい 席に座れー。出席取るぞー。まず、|浅井《あさい》ー」
いつもの光景が視界に映る。ぼんやりと過ごし、名を呼ばれ手を挙げて返事をする。教師が少しの話を挟んで朝の会が終わる。専科の教師が教室に入ってくる。課題を提出し、授業が始まる。いつもの声に、知っている内容の授業。ぼんやりと過ごしている学校。一番最初に勝ち取る購買の昼食。近ごろ、ぼんやりしすぎて毎日何をやったのかすら覚えていない。
「暇、だなぁ……」
誰かに聞かせるわけでもない独り言だ。そして、周りに誰も居ないことをいいことに、続けて言う。
「学校なんて勉強する為の場所だとしたら意味ないし、家に人が居たって……。クズだし。こんな|日常《せかい》なくなっちゃえばいいのにな」
周りに誰もいなくても、風や神は意外にも人の声を聞いているのかもしれない。
〈キーンコーンカーンコーン〉昼食の時間が終わる。早歩きで教室に向かった。その後の午後の授業は運動会の話だった。例えば種目内容、種目決めをいつやるか、組発表は体育館でするだとか。ぼうっと聞きながらコソコソ帰る準備をしていた。
「ーはい、質問はありますか?ないなら今〇時だから…先に帰る準備しててもいいぞー」
教師が言った「先に帰る準備しててもいいぞー」という言葉は、「えーやった」「誰も手を挙げないでくれ……」たくさんの声が集まってざわつきを作った。
手を挙げないで早く帰りたい。そんな空気をつきさすように誰かが手を挙げ―――――るわけでもなく、ほかのクラスよりもほんの少しだけ早く帰宅又は部活動を始める準備ができた。
ちなみに自分は帰宅をする。今日は一週間のうちいくつかある休みの日だ。私の通う学校はいくつかの方面に向かうが徒歩ですぐ着くような場所に住んでいる人はあまりいない。自分の家の方に行く人は全くいない。本を読みながら歩く。外国の本を自分で訳しながら読むのが最近の暇つぶしだ。
本を見ていると、近くの公園ので遊んでいる子供の高い声が聞こえる。その様子を見ながら歩く。私も、小さいときはこんな感じで遊んでたっけ。元気に遊ぶような子供じゃなかったような気がする。そもそも、友達と呼べる人はいたっけ……。考えながら歩く。本をバックに入れ、昔のことをぼんやり、また考える。
それがダメだったのだろう。今になってもそう思う。
「キャーー!通り魔、通り魔よぉ〜!」
ハッとして後ろを振り向こうと頭を動かした。髪が風で揺れ、強烈な痛みが腹部を襲った。
「っ………!」
遠くから、救急車の、高い電子音が、鳴って、いた。
〚あはー♡若い女の子だー!ここに来たってことは……死んじゃったの?若いのに?かわいそうに………あ、私はヒトに言わせると女神らしい!ちゃんと名前あるのに……。あ、名前は、『ルネ・アーシャ・テトラグラマトン(Rune Asha Tetragrammaton)』。ルネって気軽に呼んでねぇ♡
ちな、ここは死後の世界ってやつね。天国と地獄の間の下の方。なんか質問ある?
アオイちゃん?〛
………。うん。状況を整理しよう。腹部に強烈な痛みがあって、救急車の音がして、目を閉じたら真っ白の壁と床の境も見えない場所にいて、クッソ長い名前の女神っていう肩書(?)の小悪魔っぽいやばめの喋り方する女がいて……。
〚アオイちゃーん?生きてるー?って、もう死んだのか。あははー!んで、どうしたい?〛
はて、さて……?