雨がやまないカフェに入り浸る客の話。
カプチーノが冷めるまで話し続けよう。どこにも行かなくて良いのだから。
《登場人物》
水環マリ(みずたまり)
期待の新人小説家。常に課題と原稿に追われている。もう小説は書きたくないらしい。
カプチーノ一杯で何時間も居座る。
日向ナノカ (ひゅうがなのか)
おしゃべりな女性。ミントが苦手。
慎重で怖がり。
早乙女イツカ (さおとめいつか)
おしゃべりな女性。コーヒーが苦手。
快活な性格で優しい。
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目次
カプチーノが冷める前に
カプチーノが醒める前に、ただ終わりのない話を
いつからここにいるかも分からない、
湿った空気の匂いと騒がしい雨の音、
湯気が立ち込めるカプチーノの匂い、
永久にこの時間が続けば幸せなのかもしれない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーしかし現実はそう夢のように幸せなものではない、カフェのテーブルの前に山積みになった大学の課題、湿気を吸って憎ったらしく膨らんだ原稿用紙、学生であり駆け出しの小説家、ペンネーム『カプチーノ』、本名|水環マリ《みずたまり》19歳、彼女は今大量の課題と原稿に追われていた。
彼女、そうワタシがなぜこんな課題と原稿に追われているのか、それはなんとなくで出版社に寄稿してみた小説がなぜか異例の大ヒットをし、天才やら神童などと持て囃され勝手に期待され、読者や出版社に次回作を熱望されたからである。
まったく大人というやつは少し大袈裟ではないかと、ため息混じりに自分に寄せられた期待や嫉妬のように湿気を吸って膨らんでいる原稿用紙を見つめていた。
天才や神童といわれ持て囃され嬉しくなかった、と言えば嘘にはなるがたまたま書いたものがたまたま世間のニーズと合い大ヒットしただけであり、自分にはそこまで持て囃されるような力はないのだ、勝手に期待され失望されるのは御免だ。
だからといって次回作を書かない、と言って出版社のお偉いさん達の機嫌を損ねるのもまた面倒くさい、まったく悩ましいものだ。
こんなことになるなら最初から小説なんて書かなきゃよかった、失敗したと後悔しながらカプチーノを飲んでいると近くの席に2人組の女性が入ってきた。
大きな声で世間話をしておりとても騒がしい、そんな大きな声で喋らなくても大丈夫だと思うが。まったく、課題と原稿に追われただでさえ気が滅入っているのに何故追い打ちをかけられなければならぬのか、頭が割れそうだ。聞きたくなくても耳に入ってくる2人組の女性達の話し声、、、ここはもう大人しく屈した方がいいかもしれない、よしよし、そんなに周りに聞いて欲しいならワタシが聞いてやるよまったく、なにか小説のネタになるかもしれないからな、と自分を納得させる理由をつけて大人しく2人組の女性の話し声に屈した。
続くかもしれないし続かないかもしれない。
書きたいところだけ書きます。不定期更新、
窓際会議
人の噂も七十五日
大声で喋る二人組の女性は窓際の席に座り話し込んでいる。
店員も人が少ないためか特に注意する様子もなく注文を受けている。
??「私パンナコッタとウインナーコーヒーで、ナノカは?」
ナノカ「そうねあたしはミルククレープとストレートティーで」
??「、、、あ、パンナコッタにミントはつけなくて大丈夫です。」
ナノカ「イツカはいつもそれわざわざ言うよね、不思議。」
イツカ「ミント苦手でさ、うん。万が一のためにね。」
二人組の女性はイツカとナノカというらしい。
イツカという女性はナノカも言っていた通り不思議な人だ、パンナコッタにミントをつけないで、なんてわざわざいう必要あるだろうか?ついていても手で取れば良いのに、ミントの匂いがついたパンナコッタも無理なのかな。不思議。
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新しい価値観に出会いふむふむとメモを勝手ながら取っていると、イツカとナノカは再び話し始めた。
イツカ「雨、止まないね。」
ナノカ「もう何日も止んでないね、まだ春なのに。」
イツカ「このまま止まなかったらどうしよう、こわい。」
ナノカ「止まない雨なんてないよ、、、、もし止まなくてもあたしが一緒にいてあげるから怖くないよ。」
イツカ「ふふ、ありがと、大丈夫、ちょっと妄想したら怖くなっただけだから。」
ナノカ「なんだよもう、心配して損した、あっパンナコッタきたよ。」
確かにここのところ空を覆っている雨雲は消える面影がない。むしろ強まっている。
春だというのにこの雨雲達は桜が嫌いなのか、雨粒によって桜の木々を襲い、瞬く間に葉桜へと変えていった。
自分の名前でもあるからだろうか、ワタシはみずたまりが好きだ。みずたまりに映るくぐもった空や風景が好きだ。みずたまりに映る少し歪んだ人の顔が好きだ。
でも、雨がやまなければみずたまりのなかの景色は見れない。早く止んでくれはしないものだろうかこの雨は。
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イツカとナノカは運ばれてきたお菓子を突いているようで先程とは違いあまり話していない。
互いのお菓子を交換し合いながら感想を述べている。
イツカ「おいしいね。うんうん、これはふむふむ言いながら食べるものだ。」
ナノカ「何その感想、パンナコッタ、ミントついてなくて良かったね。」
イツカ「事前申告ってやっぱ大事だよね、ふむふむ。」
ナノカ「あんたは慎重すぎるんだよ、、」
イツカ「石橋を叩いて渡る的な感じだね、ミルククレープ一口もらうよ。ふむふむ、喫茶店の味って感じ。」
ナノカ「あ、ちょっと、じゃああたしもパンナコッタ一口もらうわよ、、、苦いわね、、うん。」
イツカ「ナノカはコーヒー苦手なんだよね、子供舌。」
ナノカ「子供舌って言い方やめてもらえるかしら、紅茶に慣れてるだけよ。」
ワタシは逆に紅茶が飲めない、コーヒーは飲める。カプチーノは大好きだ。冷めてても飲める。
ナノカはコーヒーが苦手なのか。損してるとまでは言わないが飲めた方が色んな味に出会えて楽しいと思うが、、、いやワタシは紅茶が飲めないので押し付けるようなことは言えない。自分のことを棚に上げるのは良くないのだ。ところでワタシは何故紅茶が飲めないのだろう、明確な理由は特に思いつかないがなんとなく避けてきた。幼少期に紅茶を飲んで苦い思いでもしただろうか、、、思い当たらない。先入観による食わず嫌いで避けてきたのかもしれない。これは良いチャンスだ。紅茶を頼んで新たな体験でも得て小説のアイデアでも思いつこう。
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店員を呼ぼうとしたその時、カフェの中に誰かが走り込んできた。
作者はコーヒーが飲めません。カフェイン中毒というか紅茶以外のカフェイン飲料を飲むと頭痛が酷くなるんですよね。
紅茶は週三で飲んでますよ。血液。
不定期投稿、時々思い出したかのように更新が早くなる。
グリサイユの空
グリサイユグリサイユうるさくてすいません。
カフェの中に走り込んできた人物は小柄な少年で雨に打たれずぶ濡れだった。
手に持っている傘はひしゃげている。傘が壊れ途方に暮れていたところこのカフェを見つけ急いで走ってきたというところだろう。
少年はカウンター席に座りハンカチで濡れているところを拭いている。ハンカチ一個で拭き切れる量ではないと思うが。
流石に見かねたのか店員からタオルを受け取っていた。
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ナノカ「外そんなに雨降ってるんだ…」
イツカ「うちら傘持ってないね。」
ナノカ「え?私達きた時まだ雨降ってたよね?じゃあどうやって私達濡れずにここまで来たの?」
イツカ「、、覚えてないかも。というかどうでも良くなってきた。眠い。」
ナノカ「えっえっ急なホラー展開やめてよお!寝ないで!1人にしないで!」
、、、、相変わらず2人はうるさい。
でも、確かにワタシが来た時も雨は降っていた。しかしワタシは傘を持っていない。でもワタシは少年のように濡れていない。何故だろう。
ワタシはカフェに来てから幾分か時間も経っているから乾いているのだろうとも考えられるがそれなら何故先程きたイツカとナノカは濡れていない?
そういえばワタシはどうやってここまで来たんだっけ、確か路地裏を歩いていたらついていたような。
先程までうとうとしていたから覚えていなくても仕方ないだろう。
、、、、帰り道は多分大丈夫だ。
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色々と考えていたら少年が口を開いた。
「グリサイユ画法のような空だね。」
その言葉はあまりにも唐突で誰に当てたようなものでもなく浮ついていて宙に浮いていた。
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グリサイユ画法。陰影だけで塗った後上から色を乗せていく技法の事。
ワタシが通っている大学は芸大なので知らない筈はない、おそらく灰色に染まった一面の雨雲から連想して言ったのだろう。きっと重苦しい雨雲が晴れて晴天が見えてくる様はグリサイユ画法で灰色の絵に上から色をつけているときのようにワクワクするものなのだろう。
その様を想像し、この少年はなんて表現力があるのだろうかと感心していた。
早速メモを取らせて頂こう。ふむふむ。
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ナノカ「ぐりさいゆがほう、、、?」
イツカ「グリサイユ画法。グレースケールの上からオーバーレイで色を乗せていく技法ね。」
ナノカ「ぐれーすけえる。おーばー、、ウン。ヨクワカッタ。」
イツカ「なんも分かってなさそうなリアクションやめてよ。」
ナノカ「私そっち系はよくわかんないんだもん。イツカは好きだからわかるだろうけどサ」
イツカ「好きこそ物の上手なれってワケ」
ナノカ「使い所違くなーい?」
作者は絵を描くのが大好き、Twitterとかでよく絵をあげたりしている。
厚塗りが大好きなのでワンレイヤーチャレンジとか良くしてる。