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目次
嘘はこの町の掟違反
一部変更しました
主が気に入らなかったので☆
ここは山の中にひっそりとある自然豊かなとっても平和な町だ。犯罪や争いごとは一度も起こったことがなく、街にいる人は全員兄弟のように仲良しだ。
私、”つき”は町の小さな学校へ通っている。町にある唯一の学園で、見かける生徒は全員顔見知り。そう、この町の境界には特殊な有刺鉄線が置かれていて外の世界の住人はこちらには一切侵入や干渉できない。私達もそうだ。前に町の外に出ようとした人は次の日何かの動物になって戻って来る。だから、町には赤の他人がいることは”絶対”にない。絶対に
「入学式楽しみだねー!」「うんうん!楽しみー」
廊下を通りかかると楽しそうにはしゃぐ女子二人のクラスメイトの声がした。近所の双子だ。いつ見ても同じ顔がならんでいて少し面白い。そう思い、教室への足を急がせると
「はぁ〜〜いもしもし〜皆様聞こえていますかぁ?」
という声が突然放送で流れた。近くの生徒達がざわついていると
「あぁ〜ごめんなさい私としたことが自己紹介が遅れました。私は新しい町の長であり、”リズ”という者です。どうぞお見知りおきを」
陽気でどこか暗い長の声が学園全体に流れた。
「そんなことはどうでも良くて今すぐ校庭に集合だ!はやくー」
なんだか嫌な予感がする校庭へと向かうべくつきは足を急がせた。
嘘はこの町の掟違反#2
全員が校庭に到着した頃校庭の向こうから檻に入れられたネズミが二匹が長のもとへ運ばれてきた。
「よろしい全員つきましたね。では質問です。皆さんこれはなんだと思いますか?」
と言い長は檻の鍵を開け、二匹のネズミを手の上にのせた
「どう考えてもネズミ」「なんでこんな問題出すんだろう」「え誰だろ?」
と生徒達がざわついている。そうなるのも当然だ。
「実はこれみんなと同じ生徒だったものなんですよ?あー驚きました?」
長の一言で場が凍りついた。
「バサッ」
私は持っていた本を落とした。そういえば今朝あった双子の姉妹がどこにも見当たらない。まさかあの姉妹がネズミなのか?でも人間がネズミになるなんて、でもどうやって通常ならありえないはず。もしかして長..
「簡単なことですよー”嘘をついたから”ネズミになったんです!」
長はにっこりと笑ってそう説明した。手足が震える。その笑顔が笑っているはずなのに私は怖くて怖くてたまらなかった。
「大丈夫です!もとに戻らないわっ......」
長の声が突然途切れた。
その後のことは覚えていない。重いまぶたを開けるとそこは学校の保健室だった。眩しい光が瞳の中に一斉に入ってきた。
「ここ....どこ..てか痛っ」
ふとベッドの隣を見ると一人の少女が私をびくびくしながら見ている
でもどこかで見たことがあるような..とりあえず制服からみてここの生徒だろうか、一人で看病してもらって申し訳ないな。後でなにかお礼しよう..
「あっあのっお怪我、だ大丈夫ですか」
そういって少女はお茶と落とした本を渡してくれた。あとから聞くに、私はあの後気を失ってその場で倒れたらしい。お茶を飲み落ち着いた後、少女に集会のその後を聞くと一つのメモを渡してくれた。
「もとに戻る方法は一つ!自分の嘘、罪を改めることです。まあ場合によって戻れなくなる場合もありますがね。集会は以上です。皆様教室に戻ってください〜」
「あ、嘘ついたらあなたも動物にしてやりますからね?ふふ」
そう言うと長はまたにっこりと笑い執事と共に去っていった。
「すごい細かいところまでメモしてくれてたんだね...ありがとう」
そう私が言うと少女はホッとしたように肩を下ろした。
「とんでもない...!あなたは命の恩人ですから....私は1年のみかです。覚えていますか?」
.....あれ、私この子とあったことがあるっけ?でもどこかで見たことが...
「ごめんなさい...どこかであったことがあるんだけど思い出せないわ..私も一年のつきよ」
「覚えてないのも当然ですよね.....!大丈夫です!よろしくお願いします」
学園からの帰り道、偶然家が近くだったのでみかと一緒に帰ることにした。正直一人で帰るのは少し怖かったから嬉しい。
「つきさんはっ」「つきでいいわよ」みかは少しの間を開けて「...つきはっこの町おかしいと思う?」え...そんなことこの町の中で一瞬たりとも思ったことがなかった。そもそも外の世界に一切出れない町なんて言われてみれば確かに、人間が動物に変えられる魔法...?そんなのがあるなんて初めて知った。
「ねえ...こんなおかしい町から一緒に出ようよ!」
そう身を乗り出して、大きな声でみかが言った。
嘘はこの町の掟違反#3
「おお..」
私は思わず声が出て後ずさりした。彼女がそこまで考えていると分からなかったし、あまりにも真剣すぎる瞳で見てくるので驚いた。
「あ...突然ごめんなさい。でも、つきもこの町はおかしいと思っているんだよね?だったら...」
「でも町から逃げるのは賛成する。なんだか危険だし」
そう言うと彼女の曇っていた顔がパァァと晴れた。(なんだかわかりやすい子だな...なんか犬みたいに尻尾振ってるみたいで可愛い)
「ではまた明日...!図書室で会いましょう!」
「ええ..また明日ね」
そう言うと彼女は私と反対方向の家へ向かっていった。なんだかこんなふうに帰るのは初めてだな..少し胸のあたりが暖かくなった。
「ハッ..」
私は紫色に染まり、星が見えてきた夜空を見て急いで家に帰った。毎日通っているはずの道、途中にある果樹園、風に揺れる金色のススキ。今日はなんだか目に見えるものがいつもと違う気がした。
“昔々、村の北の神社に土地神様が祀られていました。その土地神様は、ある時気まぐれで街まで降りてきました。すると、町の人々は土地神様をもてなしました。いい気分で神社まで帰ろうとしたところ、町の人々が話しているのが聞こえました。
「土地神様なんてちょろいものだぜこれで今年もうちは豊作だな」
「土地神様なんて所詮ただのにんげんだろ笑」「そうそう笑笑」
その話を聞いて土地神様は誰も信じられなくなり、この村に呪をかけました。そして......”
...そして、どうなったんだっけ...?昔、本で読んだことがある。でもたしかあの本って去年長によって回収されたんだ。なんでだろう
ていうかもうこんな時間っ、急がなきゃ!朝ごはんのパンをくわえて
「行ってきます!」
私は学校への道を急いだ。幸い遅刻にはならなかった。良かった...
下駄箱を出ると長がいつの間にか目の前に立っていた。
「あなた...集会で倒れた生徒ですね?もう怪我は癒えましたか?」
覗き込んでくるように長は私の近くによった。
「集会ではすいませんでした。傷はもう大丈夫です。」
本当は怖くてたまらない。はやいことこの場を去らなければ...
「ではこれで」
とこの場を去ろうとした。しかし長に右手を捕まれた。頬に汗がつたる
「さすが、神憑きの娘さんですね。よくできている子です。」
「え?」
思わず声が出た。”カミツキ”ってなんだろう?しかもなぜ私?昨日のみかとの会話が聞こえてた?行動が読めない
「何でもありません。授業、がんばってくださいね?つきさん。」
そう言うと長は目の前から消えた。危ない...心臓が飛び出るかと思った
気になることがたくさんありすぎる...早くみかに会いたい...
「キーンコーンカーンコーン」
授業開始5分前のチャイムがなった。その前に授業だ。私は教室への足を急がせた。
嘘はこの町の掟違反#4
「ガララッ...」
教室の扉を開けると中は静まり返っていた。昨日の件があったからだろうか。みかは違うクラスなのか...ん?あの人っていつも長の隣にいる執事じゃん。当然のように席に座っている。あの人って生徒だったんだ意外...整った顔がなんか大人っぽいから勝手に勘違いしてたな。
「早く席につけ、お花畑」
と涼しい顔で執事が言った。は?お花畑?もしかして私のことか?初めて話してそれはないだろ...と言いたい気持ちをぐっと堪えて席についた。最悪なことに、執事の席は私の隣だった。なんでだよ...
隣がものすごく気になるを抑えて授業に集中した。
「んん...やっと終わった。一日が長く感じるっ」
わたしは背伸びをして席から立ち上がった。やっとおわった...
教室の扉をみるとみかがひょっこりとこちらを見ていた。
「「あ...」」
「図書室で待とうと思ったんですけど、待ちきれなくて来ちゃいました」
やっぱりみかは犬みたいで癒やされる...授業頑張ってよかった。
「ここで話すのもなんだから図書室移動しよっか」
私がそう言うとみかはこくりと頷いて、二人で図書室に向かった。
「つき、早速ですが長についてわかったことがあるんです。」
「本当?教えて!」
「落ち着いて聞いて下さい。長は人間ではありません。」
「いや落ち着けないって」
一瞬何を言っているか分からなかったが、長が人間でないことはわかった。いや冷静に考えてじゃあ長ってなんなんだ...いや考えても無駄か。
「みか調べてくれて本当にありがとう。」
「ポッ...」
途端にみかの顔赤くなって座り込んでしまった。照れているのか?
少し間をおいて見せてくれたノートを渡してくれた。たくさん書いてある。後で見よう
座り込んでしまったみかに自販機で買ったお茶を渡した。それを飲むと見違えるように元気になったので安心した。胸がぽかぽかした。
嘘はこの町の掟違反#5
”あなたが落としたのは銀の生ハムですか?それとも金の生ハムですか?
「いいえ、わたしが落としたのはサラミ付きの高級生ハムです」
正直ですね。あなたには全部あげましょう。
「うへへやったぁぁぁぁ......」”
......「あれ生ハムは」
「何寝ぼけてるんですかっ...あなた今何時だと思いますか?」
目が覚めるとみかが目の前にいてものすごく怒っていた。ごめんって
「つき、授業サボって先生たちカンカンですよ〜」
「ごめん一緒に怒られてくれないか」
「無理です」
という会話をした後みかに職員室に引っ張られていった。
放課後...
一時間もお説教くらってしまった...結局一緒に怒られてくれなかったな。ふと目の前に通りかかった長の部屋に目をやった。ドアが少しだけあいてる...なにかみえるかもしれない。と思いこっそりのぞいてみた。部屋の戸棚にはねずみになった双子の籠が置かれていた。二匹はなんとか出ようとしているように見える。絶対に戻してやるからな...気を取り直し部屋の奥の方を見た。するとなにか影が動いている...なんだ影か。だがその影がだんだんと近づいてくるではないか。私は怖気がしてのぞくのをやめた。不安になってみかがいる図書室まで震える足で走った。不思議なことにいつもは誰かしらいるはずの廊下が静まり返っていてさらに恐怖を煽った。あの影を見てかななにかおかしい...学園に人の気配がしない。あれ?図書館の前に誰かが立っている。
「あの!」
と声をかけた瞬間、そこにいた生徒がゆっくりと振り向いた。
「ばり゛千本゛チがッで?゛...」
それはまるで人間ではないように見えた。いや”もう”人間ではないのかもしれない。長の部屋で見た影にどこか似ているように感じた。これって死ぬのかな
そう思った瞬間生徒の首が切れて、ゆっくりと地面に倒れた。
「もう大丈夫ですよ?つきさん。」
長が生徒の首を切ってくれたらしい..やり方は酷いが私にはヒーローに見えた。
「長...死ぬかと思いました。ありがとうございます」
私は半分涙目で答えた。良かった
「とはいえ、夢を見すぎましたね。もうさめたほうがいいのでは?」
長がそう言うと私は急に眠気がきて私はその場に倒れ込んでしまった。
「やれやれ、全く手がやけますね〜。カミツキのお嬢さん。」
嘘はこの町の掟違反#6
カタッ」
一瞬揺れた気がするが気のせいだろうか。みかは図書館でつきの帰りを一人待っていた。宿題も済ませて、暇になったところだ。
時計をみるとあと20分で5時になるところだ。つきは職員室に行ってからもう一時間立っている。そろそろ帰ってきてもいいはずだ。いやそれとも、ただ単に長いだけなのか...考えていると先程まで人で溢れかえっていて、騒がしかったはずの廊下が急に静まり返った。何かあったのだろうか。気になって図書室の扉を開けた。
「ガララ...」
あたりを見回すと影のようなものがこちらを見ている。いや人間なのか?そう考えているうちにぞろぞろと影が集まってきた。
(まずいことになった、はやくなんとかしないと...)
みかはつきのいる職員室へと走り出した。
「...き、つき..つき!」
誰かに呼ばれている気がする。でも今はまだ寝ていたい...眠い...
「つき起きろ!」
耳元で大声を出されたのでつきはびっくりして飛び起きた。そこは長の部屋で影はもういなかった。なんだ、みかか...びっくりさせないでくれよ。みかの右手をみると軽いやけどをしていた。
「その右手大丈夫?」
そう言うとみかは慌てて右手を制服の袖で隠した。その様子はひどく慌てているようだった。珍しいな...
「あいや、これは、家でやけどしたんですっ。」
そうだったのなら良かった。でもさっき話したときはなかったような気がする。これ以上詮索するのも良くないと思い、この話はやめた。
「みかは影みたいなものに襲われなかったの?」
「いや大丈夫だったよ!長が全部たおしてくれたから」
長...助けてくれたのか。ていうかあの影の正体は何だったんだろう
「後でお礼にいこうかな、助けてもらったし」
「そんな大丈夫だよ!」
ミカが慌ててどこか嬉しそうに言った。みかって長と友達だったのか
「はあぁ〜。」
と私がベッドでため息をつく。ここの所いろんなことが多すぎて頭がパンクしそうだ。長のことといい、影のことといい、入学してから問題が多すぎる。学園、いやこの町はなんなのだろうか。私がカミツキってどういうことだろう。あの双子は大丈夫なのだろうか...あの時私が力を持っていたらなんとかなったのだろうか。
「カララッ」
部屋の窓を開けた。昔からこうやって何かあったときは部屋から夜空を眺めるのが好きだ。今日はちょうど流れ星が見えた。
流れ星こっちに飛んでこないかな〜そう思った瞬間
「ピカッ」
辺り一面がその輝きに包まれた。眩しい光の中に誰かがいる。誰かがこちらを見ている...?もう少しでわかりそうなのに...見とれていた私は不思議なことに暫くの間その光が消えたことに気づかなかった。
きっと見間違いだよね。そう思い私は深い眠りに落ちていった。
「おはよー」「きょうも〇〇君朝早いね〜」「ねむいよ〜」
学園の校門はそんな声で賑わっていた。よかったみんな大丈夫だったんだね
「ドンッ」
見るのに夢中になっていた私は誰かとぶつかってしまった。
「すみませんよそ見していました」
私が必死で謝ると相手が首をブンブンと振った。
「あなたってもしかして集会で倒れた子?檻の中でもちゃんと見えてたよ〜」
この声聞き覚えがある!もしかして...その瞬間いろんな感情が込み上げてきた
「ネズミからもどって良かった...(泣)」
そこにいるのはあの双子の姉の方だった。泣いていた私をそっと抱きしめてくれて一輪の花を渡してくれた。”スノードロップ”という花らしい。
「あなたの名前は?私はつきといいます。」
そう私が言うと双子の姉はニッコリと笑い私の手を掴んだ。
「わあ!カミツキの子ね〜!私は二年の”ひづ”よ〜よろしくね〜」
嘘はこの町の掟違反#7
私がひづと会話していると校舎の方から「ドンッ!」という音が聞こえた。急いでその場に駆けつけると、そこには長と一人の生徒が何やら口論しているようだった。生徒は後ろに何かを隠していた。
「ちがう...!私はやってないの!なんでそうなったかはわからないけど....」
一人の女子生徒が涙目で何かを訴えている。
「根拠のないこと言わないでもらえます?さっさとどいてください」
長がニッコリと笑い生徒に語りかけていて、生徒の頭に銃を突きつけている。
「やめて...やめてよ...!なんでよ...」
次に生徒が口を開いて何かを言おうとしたとき
「バンッッ!」
辺り一帯に銃声が響いた。私は思わず目をつむった。怖くて見ていられなかった。もう誰も苦しむのを見たくなかった。
「ピッピ!ピピピ」
目を開けるとそこには女子生徒はいなかった。小さな小鳥と長がいるだけだった。ああ、また変えられてしまった。助けられなかった...
「もう遅かったようですね。どうやら」
長が言った。その姿は私には怪物に見えてしまった。あの時のように足が震える
「大丈夫だよ」
そういってひづは私の手を握ってくれた。なんて優しいお姉さんなんだろう。そうして、私達はその場を去った。
今は授業の間の5分休み。私は次の授業に向けて復習中だ。特にこの前のテストの点がやばくてお母さんが烈火の如く怒っていたからだ。
「おい...」
誰かに肩を強めに叩かれた。振り向くと長の側近の執事だった。
「執事さん、なにか御用ですか?」
すると執事は深いため息をつき、ムスッとした顔で言った
「長がお呼びだぞ。はやくこい」