俺は今日、とあるスーパーへアルバイトに来たのだが......そのスーパーでの(自主規制)消費者はサービスに飢え、(自主規制)マネージャーは金の事しか考えていない(自主規制)野郎と言う始末。
そして何より、その(自主規制)消費者が常人ではない、能力持ちのチート野郎と言う事である。俺は凡人先輩と共に超次元の(自主規制)消費者との接客・仕事に挑む。
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目次
〖ようこそ、アットホームな職場へ〗
自主企画は開催中ですが、雰囲気だけでもと思いまして。
---
〖労働〗
それは、人間が自然に働きかけて、生活手段や生産手段などをつくり出す活動のこと。
つまり、寿命、体力、気力の無駄消費をして金という報酬を得る行動のこと。
そんな地獄のようなことをサービス業という形で行っている我々は...
#労働に対する暴言#である。
---
「|Stupid! Garbage! Shit! Oh, God, no!《バカ!ゴミ!クソ!もう、やだ!》」
「やかましい!」
時刻は午前3時。本店の開店から約六時間前、三人の店員が小さなテーブルを囲う形で立っている。
その中の黒髪に赤い瞳の18歳くらいの男性は|橘一護《たちばないちご》。本作の|主人公《被害者》である。
そこから右の白髪に染めた凛々しい顔の男性は先程、英語で文句を言った人物で、|空知翔《そらちしょう》。
更に右の黒い長髪の男性は「やかましい!」と制したバイトリーダー兼、店長の|柳田善《やなぎだぜん》。
その三人が囲むテーブルに置かれた柳田の携帯にはある人物の名前がある。
|上原慶一《うえはらけいいち》。バイトやパートから言わせれば、金の亡者のマネージャー。
〖お客様第一、お客様は神様〗といった古臭い考えをしている(一護曰く、頭クソ硬ジジイマネージャーと述べている)。
その人物との会話には、『今日から全商品50%引きセールですね!補充をしっかり入れて、お客様に満足いただけるようサービスを頑張りましょう!』と記載されていた。
「...あの、バイトリーダー......」
「言わないで、一護君。言いたいこと、分かるよ」
「|Do you really know?《本当に分かるんですか?》」
「|Naturalmente!《もちろん!》」
英語をイタリア語で返す柳田。あ~、これはダメだ、今日は何が何でも休もう...と考えた空知を見透かしたかのように柳田が空知を睨む。貴重な戦力を失うわけにはいかないのだ。
「...さて、仕事しようか?」
「僕、アルバイトォ......」
「アルバイトでも働いてもらうんで...」
「僕、アルバイトォ......」
「だから、アルバイトでも働いてもらうんだってば」
「バイトリーダー、多分空知先輩、溶けかかってます」
「なら、冷蔵庫にでもぶち込んで冷やして。固形のままでも働けるでしょ」
そもそも人間そのものが個体かつ物体です...後、比喩表現です...、なんてツッコミを呑み込んで「そうですね」と答える一護。
そんな頼りない主人公を横目に柳田は説明をしていく。空知は放置で。
「じゃ、一護君。復習しよう。この店の目的は?」
「えっ...客を殴る?」
「よくできました!...じゃないんだよ。僕もそうしたいけどさぁ...。
正解はとにかくサービスをする!これだよ。お客様はサービスに飢えてるわけ。挨拶だったりご飯だったり...その過程で、|接客《バトル》をする。分かるね?」
「分かりました!つまり、客を殴るってことですね!」
「ねぇ、君どんだけ殴りたいの?そもそも殴れないと思うよ?」
「そうなんですか?」
「うん。例えば、消費者...お客様は能力を持ってるんだよ。様々な物体を爆発させたり、瞬時に傷を癒したり...とにかくチート!」
「ヤバい?」
「もう激ヤバ」
どこかの若者のような会話をしながら、説明は続く。
「だから、接客って言ってるけど、ただの迷惑クレーマーとかカスハラの奴の成り果てみたいな人外チート能力盛り盛り丼☆みたいな|お客様《化け物》の駆除みたいなもん。それで、お金は行政からガッポガッポ貰える。そりゃあ、守銭奴がマネージャーになるよね」
「...要は、サービス業施設の通常業務をしながら、化け物と闘えば良いと?」
「そういうこと。でも気をつけてね、そのバイト時の支給服。
高性能だし、どんな衝撃も吸収して安全だとは言え、たまに服を溶かすとかそんなのがいるらしいから...戦場で油断はするなよ、ってこと」
「はぁ、なるほど。それで防御面は安全だとして、攻撃はどうするんですか?」
「う~ん...それが、人によるんだよね。銃器だの剣だの...まぁ、正直これは重要じゃなくて、戦闘時には機転が大事。消費者の能力を分析して、弱点を探る。その探った弱点に合わせた攻撃を仕掛ける...常に冷静に物事を捉えろってことね」
「なるほど、なるほど...倒した後の消費者はどうなるんです?」
「その能力を解析して、データを取ったら普通の一般人として世に放つか...」
「世に放つか?」
「...従業員として、働いてもらうだろうね」
「安全なんですか?」
「ちょっとやそっとじゃ崩れない建物だし、店員も身体能力が良いのばっかだし大丈夫だと思う。
それに、従業員化した消費者はその能力を保持した状態で働くことになるから案外便利だよ」
「了解です。開店するまでは通常業務ですか?」
「だねぇ...このまま、消費者が来なけりゃ楽なんだけど」
柳田がそう苦笑いをして、一護の手を引っ張る。
「じゃあ、業務内容を教えながらやるから、今日一日中、着いてきてよ」
「分かりました!じゃあ、」
元気よく話す二人。柳田が扉のノブに手をかけ、一護を促して部屋を出ていった。
もちろん、空知は放置で。
「無視しないで下さる???」
なんだ、起きてたのか。
「起きてますよ、ええ、起きてますとも」
そして、空知が起き上がる。
「ヤバい?激ヤバの会話から起きてたんですけどね」
じゃあ、起きろよ。
「説明の邪魔しちゃ悪いかなって...」
うわ~、顔が良くて気遣いできるけど弄られるタイプの残念なイケメンだ~。
「煽らないでくださいます?...主人公君、行っちゃったよ、どうするの?」
お前も起きて部屋から出てくか、そのまま寝させてるで終わるつもりだったんだよ。
「えぇ?雑!」
文句を言うな。起きたなら部屋から出て仕事しろ。
「えぇ~...だる~い」
今からでも遅くないから醜男って設定でも...。
「あ~!仕事します、仕事します、今すぐ取り掛からせていただきます」
空知は、急ぐようにして部屋から出ていく。その途中、テーブルの角に小指をぶつけたが、脅迫に勝る痛みはなかった。
そして、
従業員専用とかかれた部屋の扉を再度、開けて言った。
「ねぇ、シゴデキって設定も追加しといてよ!」
〖頭の悪い人には見えないあとがき〗
お読みいただき、有り難うございました。
次回ほどから自主企画のキャラクターの能力を反映できたらなと思います。
...あとがきの全文、見えましたよね?
〖不可視の襲撃〗
こちらの至らぬ点がありまして、次回から出す参加者様のものを後回しという形にさせていただきました。大変申し訳ありません。
タイトルの者は本来、粗方出した後にオリジナルとして出す予定だったものです。
以上のことを踏まえて、お読み下さい。
初手からふざけていますが、ちゃんと反省しています。信じて下さい。
また、初期から本作のみ書き方を変える感じにしています。
語り手:橘一護
太平洋などに囲まれ、ほとんどが温暖湿潤気候に属する島国、日本列島。
その温暖湿潤気候の県におそらく、いや、きっと存在し、施設マニアックな人しか知らないところに木々に囲まれ、山に位置する大きな商業施設(アルバイト、募集中)があるだろう。
そこには、様々な異能力を持ちサービスに飢えた消費者を相手にする従業員がいる。
金にがめついマネージャー、理不尽な消費者、少ない給料...従業員は今日も行く。
...多分。
●橘一護
18歳、男性。大学生。彼女はいない。彼氏もいない。明日も明後日もいない。
いるのは、労働。あるのは、労働。それだけだ。
---
バイトリーダーの柳田善と共に食品の期限切れを調べる橘一護の姿。
牛乳、パン、チーズ...乳製品は腐りやすいですから。しょうがない。
「あ、これ5月9日までですよ」
「え?あ、ホントだ。ありがと~」
柳田が一護の指定した商品を廃棄箱と印された箱へ入れていく。
次々と入っていく商品は様々でその商品のパッケージに反射して映る妙な格好をした空知翔のことなど、気にもしない。
「ねぇ、ちょっと...店長!バイトリーダー!柳田さん!善さん!!」
吠える空知翔のことも気にしない。しかし、柳田だけが振り替えって言葉を返した。少し、吹き出した。
「...なぁ、なぁに~?」
「僕の格好!言うことはっ?」
そこで一護も振り替える。そして、吹き出した。
「っは、はは、ははははっ!!」
「うぉい、笑うな!」
空知翔。従業員専用の扉を開けて、任されたのは子供の接客だった。
かと言って、その凛々し...醜...
「あんだって?」
その凛々しい顔では少々怖がられるだろうとのことで、着ぐるみを着用してでの対応になった。
その着ぐるみは、アヒルの着ぐるみ。白くふわふわとしたボディに丸く黒い瞳、尖った黄色の嘴と二本の脚。
そんな可愛らしい着ぐるみの中に成人男性が入っているなんて考えたら、笑わずにはいられないのである。
「だって、空知先輩!こんなの笑うなって言う方が難しいじゃないですか!」
「やかましい!お前、今度お前の番になったら盛大に笑ってやるからな!」
そう文句を垂れているが、実際は可愛いアヒルがぷりぷりと怒っている状況。全く怖くない。むしろ可愛い。中身は成人男性だけど。
「あ~...うん、っふ、は、かわ、可愛いんじゃ、ない?」
「笑うのを堪えろよ」
男性らしい低音の声。着ぐるみに合わないそれが更に笑いを引き立て、この場にいる全員が笑いの渦に包まれる。やがて、それが収まった辺りで一人の女性がやってきた。
「すみません、店長。惣菜担当の日村さんが手を包丁でちょっとやっちゃったみたいで...」
「マジ?今行く、怪我は浅い?」
「はい、指を軽く切っただけなので」
「了解~...救急箱持ってく」
柳田がそう言って女性についていく。女性の外見?そうですね、じゃ黒髪の密編みの眼鏡っ子ってことにしましょう。可愛いですね、そこのアヒルよりは。
そして、残された二人は...いえ、一人は隣の着ぐるみに笑いを堪えながら黙々と作業をしていった。
『開店時間です!』
そうアナウンスが鳴った。
「開店時間ですって、アヒル2号君」
「そうですね、アヒル1号先輩」
お前ら実は仲良しだろ。
---
開店時間になって、多種多様な人種の一般市民が続々と入ってくる。
レジに立ちながら少しの間、暇をしている一護と柳田の話も続く。
「あれ、普通の方もいるんですね」
「そりゃあね。行政の金で補っているとは言え、収入低いから」
「へぇ~...国家様々ですね」
しかし、今の日本は...おっと、この話は別の機会にしましょう。
アヒルの着ぐるみを着た空知は見立て通り、子供に人気で抱っこをせがむ子供、後ろのジッパーを開けようとする子供、着ぐるみそのものを引っ張る子供...厄介な子供ばかり。
「...ちょっと、あの業務だけはやりたくない気がしてきました」
「分かるよ。人様の子供の面倒なんて、金貰わないかぎりやりたくないよね」
性格が出ています。ちなみにこの時点で1692文字です。あっ、1700文字を越えました。
「...メタいなぁ...」
大抵、1000文字越えの作品しか書いてないんで。
やがて商品を手に取った消費者がレジに並び、「遅い」だの「もっと上手くやれ」だのと新人にもきつい言葉を浴びせる。しかし、
「中学ん時の剣道部の頑固顧問爺よりはマシだな」
一護は慣れていました。悲しいですね。
その業務が昼頃になった頃。
ジリリリリと警報が鳴り響いて、一般市民が外へ出ていく。従業員は惣菜や清掃、精算担当なども同様に出ていった。
残ったのは、橘一護、柳田善、見知らぬ女性...そして、アヒル...失礼、空知翔。
一護の見知らぬ女性は救護・情報担当の山田さんという方です。つまり、戦えるのは|男性《野郎》三人です。
「華がない!」
アヒルが叫びました。クワッとは鳴きませんでした。
山田さんは残りましたが、三人とは別のところで万が一、怪我をした時の処置の準備をしています。
「あの、山田さんって...?」
「|山田純子《やまだじゅんこ》さんだね。覚えなくていいよ」
と言われたので、一護はメモりませんでした。
「了解です、それで消費者の方は?」
「それが、ねぇ...いるんだけど、いないらしい」
「...どういうことですか?」
「そのままの意味。山田さんから訊いたんだけど、いる反応はあるけど姿を確認できていない。
つまり_」
その言葉の続きを言おうとした瞬間、何かが風を切る感覚がした。
店内の商品棚が豪快に倒れている。そこにいた。
また、商品棚が倒れてる。姿は見えないが、確かにそこにいる。
「...ああ、なるほど」
柳田が納得するような声を出して、アヒル...あ、もう良いですか、そうですか。空知に指示を出した。
「翔。君さ、銃ある?」
「あるよ、撃とうか?」
「撃てば良いよ」
「了解」
空知がアヒルの着ぐるみのどこから出したのかそこそこ大きめの銃器(FN P90のような形状のサブマシンガン)を両手でしっかり持って、乱射していく。
色々な物に当たって、例えば、某馬鈴薯スナックの袋が蜂の巣になりました。中身はきっと粉々でしょう。
物凄い轟音を響かせながら、やがて悲鳴が挙がりました。動く細長い何かがお店の商品を複数持って赤い液体を垂らしながら逃げていきました。
「...あれ、ですかね?」
「おそらく。多分、能力のメインは...」
--- 〖透明〗 ---
でも、体液は透明にならないんですね。あくまで自分の身体だけのようです。
「能力が分かったのは良いとして、どうするんですか?」
「う~ん...万引きの透明能力の消費者っぽいよね」
「店長。他にも能力があるかもしれないよ。例えば、範囲型とか」
「いやぁ、流石にないんじゃない?個人での透明っぽいし。だから、多分...早めに終わるかもね」
物凄い早さで傷が完治していく人型の透明人。
銃だけにじゅぅと傷が治り、部屋の周りの段ボールを倒して壁を作っていく。
そして、中央にてふんぞりかえると先程の野郎三人を今か今かと待ち続ける。
その部屋の扉看板には、〖倉庫室〗とかかれていた。
〖芸術は爆発である〗
早めに片付けなければならないので...()
参加者様がどちらの方から反映するかは適当にルーレットでも回そうと思います。
(楽な描写のだといいなぁ...)
語り手:黒髪の密編みの眼鏡っ子ちゃん(そして、抜かされた空知翔)
どどごーんと音がして、我等が突撃部隊の銃撃が聞こえる!
(※空知翔:えっ、今回僕...)
からんと落ちる空薬莢の音!けたたましい消費者の咆哮!店内の潰される商品!
(※空知:あの、食品ロスが...)
負けるな、店長!橘君!あと、アヒルちゃん!
(※空知:アヒル呼ばわりやめてくんない?え、無視?マジ?)
●空知翔
23歳、男性。突撃部隊(対消費者突撃部隊)担当。
他と比べ凛々しい顔をしているが、残念なイケメンに属する人間。
最近の趣味はクルー射撃。彼氏はいない。彼女はもっといない。
●黒髪の密編みの眼鏡っ子ちゃん
可愛い。名前はまだ、ない。
撫でたいくらい、可愛いね。
---
二手に別れて消費者を探す二人とアヒル。
早めに事が済むだろうとたかをくくって橘一護、柳田善の一つが店内、アヒル(空知翔)の一つが従業員専用通路を探していました。
場面は一護へ移ります。
「...いませんね」
「だねぇ...なにしろ、透明だからしょうがないんだろうけど...」
やや呆れたように蜂の巣になった棚や商品を見ながら柳田が一言。
「派手にやったよねぇ、許可出したのはこっちだから別に良いけど...ここまでとはねぇ」
もう使い物にならなくなった品々を見ていく中、どうやら奥へ展示されたものが無事だったのは確認できるようで、特に図工コーナーのものが残っていた。
「あ、まだ残ってるものもありますよ」
「んー...いいよ、どうせ皆廃棄することになるから、置いておいて」
「了解で...」
言葉が途切れる。それを妙に思ったのか、柳田がすぐに訊いた。
「なに、どうしたの?大丈夫?」
一護は応えない。ただ、ある物を見ている。そして、考えがまとまったのか口を開いた。
「透明でも、さっきみたいに目印になるものがあれば封じ込めますかね?」
一護の瞳には大量の絵の具やペンキ、遠くに予約客用の温水プールが映っていた。
---
一方、空知翔...アヒル...もう良いですか、ならやめます。
でも、彼が脱ぐまでアヒルの着ぐるみを着ていることは忘れてはいけません。
良いですね?
「しつこい」
そうですか。生意気なアヒルめ。
アヒルが従業員専用通路をよたよた歩いていく。
道中、椅子を見つけて、これ幸いとアヒルの着ぐるみを脱いだ。
むわぁと蒸気が微かに洩れ、首筋に汗が伝う男性の顔と白いジャージ姿が露になった。
臭そう。
そして、置かれた銃器を取って通路の横にあった倉庫室のノブがひしゃげたぶ厚い扉に耳を当てた。
何か、ごそごそとした音が微かに聞こえてくる。当たりのようである。
ノブがひしゃげていようと関係はない。手には銃器。銃器はFN P90のような形状のサブマシンガンです。つまり、ただ、撃って、ぶち壊せば良いのです。
そこからは速かった。一瞬にしてぶ厚い扉が蜂の巣になり、跡形もなくなり、大量の空薬莢だけが残されました。
その空薬莢を踏まないように中へ入ると、目の前には段ボールの巨大な壁が広がっていました。
ええ、もうお気づきでしょう。彼には、空知翔の目の前にそれは何も意味を成しません。
ロープのように繋がった弾を入れ、両手でしっかりと持ち、引き金をひけば...。
そこからはもう、オート連射なので心配ナッシング。
長い、長い、長い、長い銃撃音が木霊しました。
そして、熱を持った銃器を下げると、そこには粉々になった段ボールの破片と何か人型で目に見えない重いものがのしかかって潰れた段ボールだけが残されていました。
やがて、その重みで潰れた段ボールの方向からすたすたと足音がして、しっかりとこちらへ走る音が聞こえてきました。
そのまま空知は撃とうとして...気づきました。リロードをしていないことに。
慌てて銃器を掴んで、走ってくる奴をグリップで殴ろうとした瞬間に間に合わず、腹を逆に殴られました。そのままの要領で身体が流れて、壁に強く打つけられました。
「慈悲は、な...!!!...っぐ...」
何か言いかけていますが、どの口案件です。サブマシンガンをぶっ放した誰かさんが言うことではありません。
そのまま壁と一体化するわけにも行かないので、すぐに起き上がって脚を動かす空知さん。
そのまま空知を追いかける透明な消費者さん。
ここだけの話、背景を海辺にすれば誰得のカップルごっこができますね。
書きませんけど。
従業員専用通路を走って、そろそろ息が乱れて来た頃、裏口の扉が見えました。
その先は、予約制の温水プールと大きな庭や駐車場が広がっています。
その温水プールの扉の近くに柳田と一護がいました。
---
向こうから必死に走る空知の姿が見える。その姿を確認して、温水プールの扉を開ける柳田を見つつ、叫んだ。
「空知先輩!こっちです!」
---
そう呼ばれて、前を見る。何か、策があるのか。もしや、温水プールに閉じ込めるのか...?
急いで開かれた温水プールへ入る。水はない。ただ、プールのタイルと同じ色の白色の大地が広がっている。
打開策がない。今は後ろの奴を撒かなければと思い、元々水があった場所がコンクリートか何かで床になったところへ足を入れ、そのまま奴と共に柔らかい床へ落ちた。
---
バシャンとした水音が耳に入る。目をやればプールの水へ落ちた空知と消費者がいる。
双方、真っ白に染まり飛び出た突起物になっている為、非常に狙いやすかった。
その後は、人型のもう透明でなくなった消費者の脳天に一発、弾を贈る仕事だった。
---
「それで?この絵の具どうやったら落ちるの?服とか落とせなさそうなんだけど?」
同じように白く染まった消費者の身体を抱えながら、愚痴を溢す空知。
消費者と空知に水をかけると皮膚や髪についた“絵の具”だけはなんとか洗い落とせた。
消費者は青髪に白く染まった上下の服のズボンのポケットにたくさんのスナック菓子を詰め込んで、頭に損傷はなく眠っている。
そして、ようやく空知の問いに一護が応えた。
「服についた絵の具は...クリーニングしかないですね。というか、消費者を撃ったけど亡くなりはしないんですね」
「物騒だなぁ、流石に殺さないよ。そもそも、殺せないし...僕らが使ってる武器や弾は暴走化した消費者にしか効かないし、一般市民に撃っても少し痛いな、ぐらいだよ」
「なるほど」
応えるついでに言った疑問を柳田に教えられ、うんうんと頷く一護。
そんな彼を横目に空知がまた、投げかけた。
「んで、絵の具で服に色ついたのはなんで?普通の絵の具だったら、水で洗い流されちゃうでしょ」
「ああ...“アクリル絵の具”なんですよ。ほら、水彩画とかで先に塗った後から重ね塗りしたいって時、普通の絵の具は色混ざるじゃないですか。でも、アクリル絵の具は普通に乾いたら何重ねもできるんです」
「へぇ、でもアクリル絵の具が水に飛び込んで服についた理由は?」
「“マーブリング”っていう美術の...えっと、一般的にアクリル絵の具を水に垂らして、服とか紙に水に浮かんだ模様を写し取る手法なんです。それが理由ですね」
「なるほど、なるほど...じゃあ、一護君」
「...?...はい」
「僕の服のクリーニング代、払ってくれる?」
そう言った空知先輩の顔が今日の出来事より、末恐ろしく思えた。
〖夏の救世主〗
ユーザーページの方に全シリーズのキャラクター外見集を貼っておきました。
〖地獄労働ショッピング〗のキャラクターのネタバレ等を含みます。
癖のまま、書いた通りのものを再現したつもりですが、わりとイメージと違う!があるかもしれません。その時は、ご愛敬ということで。
ルーレットにて出す順位を軽く決めましたが、すぐにお出しすると面白くないのでタイトルから推測できるような感じにしています。
語り手:柳田善
午前3時に電話が鳴り、聞こえるのはマネージャーの罵声。
そして、吠えるマネージャー、吠える消費者、吠える従業員。
慣れてしまえば日常茶飯事。社畜になる日は近い...のかもしれない。
●柳田善
26歳、男性。バイトリーダー兼店長。
店の請求書等は全て彼に責任が来る。
お金は払うことはないが、その代わりマネージャーの叱咤が彼を待っている。
彼女はいない。彼氏はいない。労基も来ない。
---
「柳田君さぁ...なに、この紙?」
夕陽の射し込むオフィスの中、上原慶一が椅子に腰を下ろし足を組む姿が目の前にありました。
「...今日の、請求書です...」
柳田が恐る恐るそう言うと、上原慶一はため息をつき頬に手を当て、口を開きます。
「今日、ねぇ...君さ、多額の請求書、払ったことないよね」
「えっ、ええ、まぁ...」
「...一回、払ってみる?」
「.........」
「これ多分、空知君だよね?報告書に蜂の巣状になったら棚とか、倉庫の段ボールとか...。
そこらで4、50万はするんだよね。酷い話だよねぇ、自分で壊したのに責任問われないんだから。
...で、責任はぜ~んぶ、柳田君になるわけだけど...」
「...............」
「どうする?払ってあげようか?」
「......そう、ですね」
「...何が?」
あ~あ、こいつマジで嫌いだ。
柳田が上原から少し目をそらして、低い声を絞り出しお願いをしました。
「...今回、も払っていただけると、助かります...」
「うん、そうだね。《《今回も》》だ」
...マネージャー変わったりしないかなぁ...。
そんなこと思っても、変わりませんよ。柳田善さん。
---
「暑ーーーーーいっ!!!!!!!」
クーラーの効かない従業員専用通路で空知が叫ぶ。アヒルの着ぐるみは、当然着ていません。
え?崩壊した建物はどうなったかって?さぁ、治ったんじゃないですか?
はたまた、数日前経って治った的な...え、なんですか、コメディ小説ですよ?
その叫びに文句を言うように一護が応答します。
「うるっさ...んなこと言わないで下さいよ、皆暑いんですから」
「はぁ!?なに、一護君!暑くないの!」
「《《皆》》暑いって言いましたけど?」
「あらやだ、言ってたの?」
「言ってました!」
大声で抗議する一護を無視して、空知は従業員共有の冷蔵庫を探る。
そして、何かを見つけたのか、
「お...良い物、発見~!...一護君、一護君、これな~んだ?」
「は?...アイス、ですね。それ従業員分あるんですか?」
「あるよ。善さ...柳田さんが買ってきてくれた」
そう言って、赤いパッケージに黄金色の高級っぽいフォントのアイス(あれですね、パ◯ムです)を手渡す。そして、次々に休憩時間中の従業員がアイスに釣られて、わらわらと集まってきます。決して、空知がモテているわけではありません。皆、空知ではなくアイスを求めているのです。
一護はひとまず、そこを離れ比較的涼しいところへ足を進め、腰を下ろしました。
そして、全員に配り終わったのか空知も傍へ。
「...なんです、わざわざ...」
「良いじゃん?仲が良いってのは幸だよ」
「そうかもしれませんけど、あんまり近いと余計暑くないですか?」
「あ~...確かに、そうかもしれないね。ま、たまには良いでしょ」
「......そうですかね」
アイスをもう食べ終わったのか、棒を口から抜き空知が口を開く。
「大人数でさ、海...行きたくない?」
「業務放棄して?」
「いや、休みだって」
「嫌です」
「えぇ...?」
「だって、貴重な休日を平日みたいな人らと集まって過ごすんですよ?」
「あぁ...なるほどね」
アイスの棒を口で咥えて手を後ろで組むように寝転ぶ空知。一護も食べ終えたのか、いつの間にか傍で座っていた。それを確認して、瞳を閉じた。
開かれた窓から心地の良い風が通る。木々は葉を青々と染め、風に踊らされるようにして大きく揺れる。勤務中じゃなければ最高だった。そんなことを思っていると、不意に声がかけられた。
「なにしてるの?君ら、休憩中とはいえ勤務中でもあるんだよ?」
瞼を開けば、そこに柳田の顔があった。一護はどうなのかと横を見れば、ほんの数分で小さく寝息を立てたようだった。
「どうも、柳田さん。どうでした?上原マネージャーの話」
空知がそう聞いて、体を起こし柳田に腰を下ろすよう促す。
柳田はそれに応えるようにそのまま腰を下ろしました。
「散々だよ。翔が壊した棚とか色々な備品の請求について、しつこいぐらい責任に問われたよ」
「へぇ、大変ですねぇ......」
「君のせいでも、あるんだけどね?」
「やだなぁ、柳田さんもパワハラですか?困っちゃうなぁ」
「あのマネージャーよりは良いでしょ」
その言葉に「そうかも」と言葉を洩らして一護の肩に手をやり、優しく起こそうとする空知を見ながら柳田は遠くを見た。
何故か、銀髪の腰までの長髪をハーフアップにし、長年の間、紫外線を浴びていないのかと思うほど白い肌をした白のロングドレスを着こなしビーチサンダルを履いた女性が店内へ入るのが見えた。
この時の柳田は、ただ何の能力もない消費者の一人が来店しただけだと思ったことを、後に後悔する。
---
時刻は正午ぴったり。お腹が空いてくる頃ですね。私は正午と聞くと焼酎が思い浮かびます。
理屈が分からないですか、そうですか。私にも分かりません。
さて、場面は移り変わります。まるで春から夏に変わるように。
人がせわしなく動く店内に例の女性がひたひたと歩く。足跡には水が滴り、口から、腹から、膝から、足先から伝って床へついたことが口元から分かります。
おもむろにその女性は“日村”とネーム札の華奢でどこかの令嬢を彷彿とされる惣菜担当を睨むと、その女性へ話しかけた。
「ねぇ、あなた」
その声かけに女性が顔をあげる。そして、声をかけられた女性の横を水が掠めた。
「.........」
双方、静寂が流れる。先に静寂を破ったのは水を飛ばした女性のようで、次に
「なんで避けたのよ!避けて良い気にならないで!!」
それなりに、理不尽な文句を垂れた。
そして、深く息を吸い込み、口から洪水とも言える量の水を放出した。
---
ジリリリリと警報音が鳴る。反射的に、
「うるせぇ!緊急だってのは分かってんだよ!」
「空知先輩!手を動かして下さい!」
警報音に空知と一護の会話が被る。ある一室にいる二人の膝下は水があり、それが部屋全体に満たされていました。
その水を必死で掻き出すように掃除用道具入れにあったバケツで人が通れない小さな窓へ水を捨てる二人のみのリレーをしますが、もちろん密室では意味がありません。扉の隙間から水が入ってきています。
ちなみにですが、水が扉から入って来ると言うことは、水で施設全域が満たされているので扉は水の圧力によって開きません。詰みです。
「詰みです、じゃないわ!お前、今ここで僕らを殺す気か!」
空知翔 2xxx-2xxx 没。それなりに良い人でした。
「勝手に殺すな!ピンピンしてるわ!」
そう空知が叫んでいると、急に扉から斧の刃がにょっきりと生えてきました。いえ、正確には刺さっていました。そして、その刃が抜かれた時、柳田の顔がひょっこりはんしました。
某ホラー映画のワンシーンみたいに。分からない人に説明すると、シャ◯ニングです。シャイ◯ング。
「店長の登場~!」
「遊ばないで、そのまま斧で壊して下さい」
一護君はシャイニ◯グが分かるのでしょうか。有名な「ジョニーの登場」の台詞です。その台詞は男優のアドリブだった、なんて話があります。まぁ、それは良いとして、斧を大きく振りかぶって、ばこんと嫌な音がしたと思うと、扉の中に大きく人が通れるくらいの穴が開かれました。
これは柳田の株があがりますね、株があがったところで何もないですが。
危うく溺死するところだった二人が部屋の中の水と一緒に出ていく。そして、水に満たされた床に足をつけた。
「なんですか、これ?洪水ですか?」
「いや、警報が鳴ったから消費者だろうね。一面水浸しなんて、厄介だね」
「呑気ですね...商品は無事なんですか?」
「無事だと思う?」
「...いえ」
ご想像の通り、店内は水浸しですから全て水に浸っています。なんなら、銃器などの火器の武器はあんまり使えません。火薬が水に濡れて、上手く着火しなかったり、飛距離が縮んだりします。しかし、現代のリボルバー式は使えるようですね。作中のは昔ながらのリボルバーのものが多いので不可能ですけれど。
「それで、バイトリーダー。今回のは?」
「さぁ?」
「...さぁ?さぁってなんですか?」
「え?分かんないってこと。解析の人にもどっかの水道管が破裂したか、消費者だろうって」
「でも、さっき消費者だろうねって...」
「あくまで憶測だよ。広い店内が水浸しになる水なんて、水道管が一個や二個、破裂しただけでなると思う?」
「ない、ですね...そう考えると水関連の能力なんでしょうか」
「んー...答え合わせは片付けながらでも良いんじゃない?ほら、こんなに暑い夏だから...」
「海に行かずとも、水遊びができる!!」
それまで黙っていた空知が目を輝かせて、キラキラと発光しました。横にいた柳田がすぐさま、サングラスを取り出して装着します。
「...空知先輩、さっき死にかけたのを忘れたんですか?」
「あれはあれ!これはこれ!つまり...」
「働きながら、楽しもうってことだね」
「呑気ですね...」
和気あいあいとする先輩二人を横目に廊下の先を一護は見た。
びしょ濡れになった銀髪と金色の女性を見た。
そして、水面に揺れる全員の姿を見た。