カラフルピーチ所属のヒロは、悩んでいた。
悩みの種は、最近出没するようになったアンチである。メンバーに相談しても改善の様子はなく、心無いことを言われる日々。
彼の心の居場所は少しずつ、なくなりつつあった。
とうとう、ヒロは最近バズっていた『心の星』と言うチャンネルに助けを求めた。
そのチャンネルは、様々な悩みを持つ実況者を招いて雑談すると言う、実況者達にとってのお悩み相談室であった。
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目次
一章 その壱
真弘「また・・・?これで何度目なんだよ・・・」
カラフルピーチ所属のヒロこと、|灰瀬真弘《かいせまひろ》はコメント欄を見ながら絶望した。
『またのあ様と戯れやがって』
『るなじゃなくてお前がいなくなればよかった』
『お前がいるとカラフルピーチが汚れる。さっさと消えろデブ』
どれも同じアカウントから送られてくるアンチコメだった。真弘ばかりを攻撃する刺々しいその言葉に、真弘は辟易していた。
もう我慢できないと思った真弘は、リーダーのじゃぱぱこと|竜王大和《りゅうおうやまと》に相談することにした。
真弘「じゃっぴ、最近俺にばっかりアンチが湧くんだよ。どうにかならない?」
今までの動画のコメント欄を見せ、攻撃的なコメントであることも説明したのだが。
大和「うーん・・・でも俺もこんなコメント来たことあるし、アンチに悩まされてるのはみんな同じだよ?ヒロくんばっかり融通効かせられない。わかってるでしょそれくらい」
少し強い口調で、きっぱりと言われてしまった。
その途端、真弘の心はぽきりと折れた。
それ以降、真弘は日に日に生気を失っていった。
コメントは相変わらず止むことはなく、真弘の心は少しずつ衰弱していた。
部屋に篭ることが増え、動画でもあまり喋らなくなり、動画に出ている日すらも減っていった。
ここまで弱った真弘の心の支えは、たっつんこと|黄瀬辰哉《きせたつや》だった。彼だけはアンチコメの悪質さを問題に捉え、たびたび大和に訴えていた。大和はその度にアカウントに注意をしてくれていたが、それだけで止まるはずもない。
辰哉は真弘をいつも気にかけ、メンバー達にも気を使うように言ってくれた。
そんな日々が過ぎて、真弘の精神が限界を迎えようとしていたある日。
辰哉「ヒロくん、これ知っとる?数年前からある程度の人気を保ってるチャンネルなんやけど」
真弘「心の星・・・?」
それは、悩める実況者を招いて雑談するという、単純でありながら実況者達の心の支えとなっているチャンネルだ。
辰哉「このチャンネルの人に相談してみ?俺らもやれるだけのことはやったけど、この人達の方がもっと頼りになるはずや」
真弘「たっつん・・・ありがとう」
真弘はそのチャンネルに上がっていた最新動画に、コメントをした。
『最近悩んでいることがあります。よかったら話を聞いてくださいませんか』
そのコメントに返信が返って来たのは、真弘がコメントしてから1分後だった。
一章 その弐
数日後。
メリス「皆さんこんめり〜」
カルマ「こんかる〜」
メリス「『心の星』相談室長のメリスです」
カルマ「副室長のカルマです」
メリス「本日もようこそお越しくださいました。今回は相談者を2人お呼びしています」
『2人?珍しいね』
『いつもは1人しか呼ばないのに』
『前回は莉犬くんだったよね。今回は誰だろう』
メリス「それでは相談者をお呼びします。カラフルピーチのヒロさん、いんくのしゅうとさんです」
カルマ「どうぞ、入って来てください」
真弘は通話に参加した。
真弘「カラフルピーチのヒロです。よろしくお願いします」
しゅうと「いんくのしゅうとです。お招きいただきありがとうございました」
真弘「しゅうとさんも相談しに来てたんだね」
しゅうと「ヒロさんも・・・まさかここで会うなんて」
メリス「2人とも夏コラ企画で話したことあるんじゃない?今回は知り合いがいた方がいいかなと思って、2人を呼んだの」
カルマ「初対面の人よりかはマシかなって。ここではタメ口で話をしたいんだ。無理はしなくていいけど、よかったら楽にしてって」
そうして、穏やかな配信がスタート。4人であつ森をしながら、メリスが話し始めた。
メリス「まずは、貴方達の相談内容を聞きたいわ。何があってここに相談しに来たの?」
真弘「最近コメント欄で羊いじりのネタが増えて来てて。困ってるんです」
しゅうと「俺は歌が下手くそだってよく言われます。もう歌ってみたの投稿、やめようかと思ってて」
メリス「なるほど、2人ともコメントのことでお悩みということね。どうしてそのことで悩んでいるのか、詳しく教えて。黙秘権も使えるわよ」
こんな感じで配信は平穏に進んでいき、真弘も少し心の傷が癒えた気がした。
でも、本当の悩みは言えなかった。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、配信終了の時間が来た。
メリス「2人とも来てくれてありがとう。今日のことが、2人の心の支えになってくれると嬉しいわ」
カルマ「また辛くなったら、いつでも遊びにきてね」
2人は気を悪くする様子もなく、そう言ってくれた。
配信終了後、メリスは突然こんなことを言い出した。
メリス「それで、貴方達の本当の相談内容は?」
真弘「・・・」
メリス「わかってるの。そんなに配信では言いたくない?」
カルマ「あなた達から連絡が来てすぐに、動画のコメントを調べたんだよ。2人とも、同じ被害に遭ってたんだね」
真弘は黙り込んだ。画面の向こうのしゅうとも喋らない。
真弘「おっしゃる、通りです・・・」
しゅうと「嘘ついてるのわかってたの・・・?」
カルマ「うん。動画で聞かなかったのは、公然で言いたくないんだろうなって思ってさ」
メリス「ここなら誰もいない。詳しく話を聞かせて欲しいの」
一章 その参
真弘は全てを話した。
しゅうとも話してくれたが、ほぼ同じ内容の嫌がらせを受けていた。
メリス「なるほど、突然すごい攻撃的なコメントが来るようになった・・・と」
カルマ「そして、リーダーに相談したけど注意だけで終わり、みんな同じなんだから我慢しろと言われた・・・。リーダーならありえない対応だね」
メリス「コメントからしてやばい雰囲気は出てるはずなのに、それでも注意しかしないなんて・・・。いくらみんなアンチに困らされていると言っても、流石におかしいわよ」
真弘「俺・・・どうすればいいんですか?」
メリス「うーん・・・2人とも精神的にかなり疲弊してるみたいね。一旦グループでの活動は休んだ方がいいと思うわ」
カルマ「どっちもメンバーとシェアハウスしてるんだよね。メンバーと会うのが嫌だったら、うちに来なよ」
しゅうと「いいの⁉︎迷惑になると思ったんだけど・・・」
メリス「迷惑?そんなはずないわよ。困ってる人は助ける。それが私達のモットーだもの」
真弘「じゃあ・・・行ってもいい?」
メリス「いつでも大歓迎よ」
メリスは真弘に家の場所を教えてくれた。
その日の夜、真弘は裏口から家を抜け出した。辰哉の部屋に、置き手紙一つを残して。
そして近所の公園でしゅうとと待ち合わせして、教えてもらった住所に向かった。
家の前で2人の少女が立っていた。
メリス「2人とも来てくれたのね。嬉しいわ」
カルマ「早く上がって!」
メリスとカルマは2人を家に招き入れ、お茶を出してくれた。
メリス「改めまして・・・私はメリス。本名は|有栖川綾女《ありすがわあやめ》よ。カルマの姉なの」
カルマ「私はカルマ。本名は|軽井沢由麻《かるいざわゆま》。苗字が違うのは気にしないで」
真弘「俺は灰瀬真弘・・・。ヒロって活動名でからぴちに所属しています」
しゅうと「|登山秋葉《とやまもみじ》です。いんくに所属してるしゅうとです」
綾女「この家ではみんな本名で呼ぶことにしましょう。敬語もなくていいわ」
由麻「グループでの活動は休むの?続けたいならその決断を尊重するね」
真弘「もうグループでの活動は休止するってポストしてきたんだ。理由は音楽活動に専念したいってことにしてる」
秋葉「俺も、同じ理由で。もともと歌みたは出してたから、誰も違和感持ってないみたいで」
綾女「そう。それならいいのだけど」
綾女はそれだけ言い、ソファに腰掛けた。
二章 その壱
2人が有栖川家にやってきて数日後。
綾女は秋葉と真弘にとある提案をした。
「『健康鯖』に参加してみないか」と。
真弘「健康鯖?」
綾女「日常組、まじヤバ、ワイテルズなどが参加してるサーバーよ。ワイテルズが復活して、いんくもあまり健康鯖には来なくなった。からぴちはもともと参加してない。マイクラ実況やりたいなら、私がらっだぁさんに掛け合ってみるわ」
2人とも迷う時間はなかった。即座に頷いたのを見た綾女は、にっこり笑って電話をかけた。
そして一週間後。
配信外の健康鯖に合流すると、日常組の七味組、ワイテルズの借金組がいた。
真弘「ぺいんとさん、しにがみさん!こんにちは!」
ぺいんと「おー!ヒロさんじゃないっすか!」
しにがみ「からぴちの活動休んでますよね。やっぱりアンチコメですか?」
真弘「そうです。メリスとカルマに救われて、この鯖に参加しました」
秋葉「シャークんさん、きんときさん、お久しぶりです」
シャークん「おー、あん時のコラボぶりっすね」
きんとき「音楽活動に専念するんですよね。ポスト見ましたよ」
秋葉「はい。いうほど歌みた出してませんけど・・・」
メリス「これからは配信外で、2人も参加することになるわ。構わないわよね?」
ぺいんと「もちろん!」
しにがみ「仲間が増えるのはいいことですよね!」
シャークん「賑やかになりそーだな」
きんとき「よろしく。・・・そういえばメリー、museプロジェクトってどうなってる?」
メリス「あぁ、そういえばそうだったわね。私の配信友達のマイ、るかが参加することになったわよ」
真弘「みゅーずぷろじぇくと?」
カルマ「実況者だけを集めて、歌ってみたを出そうって話なんだ。私とメリス、ぺんちゃん、きんちゃんも参加するよ。しゅうととヒロも一緒にやってみない?」
メリス「それいいわね!2人とも歌上手いし、人数もぴったりだわ!」
真弘「楽しそう・・・やりたい!」
秋葉「俺もやってみたい」
きんとき「本当に?2人が一緒に歌ってくれるなら心強いよ」
ぺいんと「てことは!人数集まったくね⁉︎」
メリス「そうね!これでプロジェクトが進められるわ!」
カルマ「2人ともありがとう。後でLINEグループ招待しとくね」
秋葉「ありがとう!楽しみだね、ヒロくん」
真弘「そうだね!どんな歌を歌うんだろ?」
メリス「歌うものはすでに決まっているわよ。今回、大獏波新さんがこのプロジェクトを手伝ってくれてるの。最初は彼の曲を連続で歌わせてもらうのよ」
二章 その弐
そうして『muse』というチャンネルが開設され、自己紹介文が更新された。
@muse
muse(ミューズ)は、とある8人の実況者で構成された音楽グループ。プロデューサーは大獏波新さん。これからいろんな楽曲を出していくので、楽しみにしててね。
そして最初に投稿されたのは、大獏波新さんの『でんしのうみ』。
歌ったのはマイだった。
投稿されてすぐ、たくさんのコメントが寄せられた。
『声めっちゃ可愛いんだが⁉︎』
『まいちゃんの歌声聞いたことなかったけどこんな綺麗なんだ!』
『てぇてぇてぇてぇてぇてぇぇぇぇぇぇぇぇ!』
muse最初の歌は、とんでもなく大ヒット。
そして翌日に出したのは『あいのうた』。歌ったのはマイときんときだ。
こちらも『でんしのうみ』を超えて大バズり!
多くの好評コメントが届いた。
『きんちゃんこんな高い音出せんの⁉︎やばすぎだろ⁉︎』
『マイちゃんとのセッションが綺麗すぎる!』
『ミクちゃん役はマイさん固定なんだね、めっちゃいい!』
さらに連鎖は止まることを知らず、また翌日に出した『のだ』は、前の2曲を超えてヒット!
とんでもない再生数を叩き出した。
コメントの数もとどまることはなく、
『マイちゃん・きんちゃんに加えてるかちゃんが⁉︎』
『なかなかの高音なのに凄すぎない⁉︎』
『配役が素晴らしい・・・次も期待!』
3人の歌は瞬く間に拡散されていった。
さらにさらに、毎日投稿はまだ続く。
投稿された曲は『わかれみち』。前回のメンバーからるかが外れ、ヒロとしゅうとが入った。
こちらは『のだ』には及ばなかったものの、なかなかの再生数を記録。コメントも
『推しペアきちゃああああ!』
『毎日投稿ありがたすぎる』
『ヒロしゅうとの低音がきんマイの高音とちょうどよくハマってる・・・』
と、かなりの好評。翌日に出した『かんせい』も、さらに大きく再生数を伸ばした。
『ヒロしゅうとだけ⁉︎めっちゃいい!』
『低音の曲だから歌いやすそう!』
『すごい早口なのによくいけるな⁉︎』
コメントも1000件近くと、とんでもないことに。
その中にはあのアンチコメも混ざっていたが、多くのコメントに埋もれて見えなくなった。
そしてその翌日に出た『ほんとうのきもち』も、初めてカルマ、メリスが歌ったということで話題に。
ぺいんともGUMIの役で歌っていた。
『メリカル〜!透明感ある歌声サイコー!』
『ぺんちゃん高い音出るんだな〜!すげーよマジで!』
『そういや、なんでこの配役になってんだ?』
このコメントの答えは、翌日に出された楽曲で判明した。
二章 その参
翌日投稿されたのは『V.S』。
この楽曲で、今までの配役に隠された真相が明らかになったのだ。
多くのコメントの中から例を挙げると、
『ちょっととんでもない考察思いついたかもしれない。
今までの歌の配役、全部意味があったんでない?
ミク→まい テト→きんとき ずんだもん→るか ゲキヤク→ヒロ カゼヒキ→しゅうと リン→メリス レン→カルマ GUMI→ぺいんとだったやん?
それを最後のサビ前の歌詞に当てはめたら、すごい納得いくんよ
“人間とか(ミク)”→設定上では妖精ってことになってるマイちゃん
“年齢とか(テト)”→この中で1番年上(32歳)であるきんときさん
“性別とか(ずんだもん)”→立ち絵は男っぽいけどガッツリ女の子なるかさん
“血統とか(リンレン)”→姉妹じゃないけど姉妹ぐらい仲良しなメリカル
“今っぽいとか(ゲキカゼ)”→この中で活動歴が特に短いヒロしゅうと
“昔っぽいとか(GUMI)”→この中で一番活動歴が長いぺいんとさん
こう考えたら納得いくと思うのよ』
このコメントには多くの反応が寄せられ、たちまち拡散されていった。
真弘「綾女、もしかして大獏波新さんに協力してもらったのって・・・」
綾女「そうよ。この歌詞にぴったりなメンバーを探していたところだったのよ。血統は私とカルマ、人間は妖精設定のマイ、年齢は最年長のきんときくん、性別は男っぽい口調と立ち絵のるか、昔っぽいは活動歴が最長のぺいんとくんに決まってた。あとは今っぽいに合う人を見つけるだけだったの」
秋葉「それで活動歴がそこまで長くない、俺達を誘ったんだ」
由麻「そうそう。2人とも歌うまだったし、ぴったりじゃんって」
ぺいんと「アンチコメとか見えなくなるくらい考察コメ来てたな。メリス、アンチどーすんの?」
綾女「それなら問題ないわ。今回送られてきたアンチのアカウントを調べて、開示請求をしているところよ。人を傷つける言葉は犯罪になる。これで誰がやったのかはっきりすれば、ヤツを罪に問えるはずね」
秋葉「ありがとう、綾女」
真弘「俺たち世話になりっぱなしだな・・・。なんてお礼をすればいいのか」
きんとき「メリーとカルはお礼を受け取らない人間。見返りを求めず、ただ多くの人を助けたいって思いで動いてるから。『ありがとうって言われるのが1番嬉しいのよ』って本人も言ってたし」
マイ「めりりんとかるるはそういう人間なんですよ〜。慈悲の塊って言葉がぴったりです」
るか「お人好しすぎるのもよくないが、2人とも尊敬するよ」
マイとるかは呆れたように言っていた。
意味わからん人!MV見ろ(((殴