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目次
三階のつきあたり
『三階のつきあたり』
古い校舎には、使われていない教室がある。
三階のつきあたり。
今は物置になっているはずの「理科準備室」。
でも、その部屋には変なうわさがあった。
放課後、ドアをノックすると、
中からノックが返ってくる。
先生はそんな話を笑い飛ばす。
「誰も入れないように、鍵は閉めてあるんだから」
だから私は、確かめたくなった。
放課後。
オレンジ色の夕日が廊下をのばしている。
三階のつきあたり。
そこだけ空気が冷たい。
コン、コン。
私はドアをノックした。
……
三秒後。
コン、コン。
返ってきた。
私は固まった。
「だ、だれかいるの?」
答えはない。
でも、ゆっくりと、ドアノブが回った。
ギ…ギギ……
鍵、閉まってるはずじゃなかったの?
ドアは、ほんの少しだけ開いた。
中は真っ暗。
なのに――
教室のいちばん奥。
誰かが立っている。
制服を着た、女の子。
でも、その制服は今のものじゃない。
古い、昔のデザイン。
顔はよく見えない。
でも、確実にこっちを見ている。
「……ねえ」
声が、頭の中に直接ひびいた。
「どうして、帰っちゃったの?」
意味がわからない。
その瞬間、廊下の電気が全部消えた。
バチン。
真っ暗。
私はとっさにスマホのライトをつけた。
でも――
光の先にあったのは、
三階のつきあたりじゃなかった。
見慣れた一年生の教室。
黒板には、白いチョークでこう書いてあった。
『転校生へ
ようこそ』
私は、転校なんてしていない。
ゆっくり、背後でイスが引かれる音がした。
ギ……。
クラス全員分のイスが、同時に。
ギギギギギギギギ……
振り向くと、
誰も座っていないイスが、
全部、こちらを向いていた。
そして黒板の文字が、にじんで変わる。
『やっと きたね』
私のスマホの画面が、勝手に暗くなる。
最後に表示されたのは、知らない番号からの着信。
発信者名。
――『三階のつきあたり』
電話が鳴る。
校舎のどこからかじゃない。
私のすぐ後ろから。
もし、放課後に三階のつきあたりへ行くことがあったら、
ノックはしないほうがいい。
返ってくるから。
しかも――
今度は、あなたの名前を呼んで。