虹野町には、7つの都市伝説がある。
そしてその噂の場所に近寄った人は、忽然と姿を消してしまうらしい。
そしていつしか、『虹野図書館』以外の場所で起こった失踪事件は、『神隠し』と呼ばれるようになった。
神隠しが気になった『カラフルピーチ』、『日常組』、『ワイテルズ』、『らっだぁ運営』の4グループは、事件を調べることに。
彼らは都市伝説の恐るべき秘密を解き明かし、隠された真実に辿り着くことができるのか・・・?
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目次
一
虹野町のあるお屋敷にて。
|大和《やまと》「そうですか・・・。・・・はい、はい。ご報告ありがとうございます・・・」
竜王大和は沈んだ声で受話器を置いた。
|乃愛《のあ》「じゃぱぱさん?どうされたんですか?」
大和「実は俺の妹がずっと失踪しててさ。警察に捜索願を出してるんだけど、見つからないらしくて」
乃愛「心配ですね。生きて帰ってきて欲しいです」
|里音《りおん》「なぁ、失踪で思い出したんだけど、これ見てくれよ」
宇野里音がスマホに映ったネット掲示板を見せる。それを大和と桃瀬乃愛が覗き込む。
大和「都市伝説の神隠し・・・?うり、これが何?」
里音「この町の都市伝説の場所に行くと、その人が消えるらしい」
乃愛「なんだか不穏ですね・・・。これに巻き込まれたのかな」
大和「調べに行ってみる?」
里音「流石に12人だけってのも心配だな・・・」
プルルルルルルル!
大和「なんだ?」
|辰哉《たつや》「俺が出るわ」
藤本辰哉が受話器を取ると、「なんやて⁉︎」と声を荒げた。
辰哉「日常組のトラゾーさんからやったわ。奥さんのイナリちゃんが消えてしもたらしい」
大和「イナリさんが・・・?あの人達新婚さんだったよな」
辰哉「トラゾーさんが言うには、イナリちゃんが消える前日、友達と買い物行く言うてたらしいわ。それでその店の場所聞いたら・・・」
大和「聞いたら・・・?」
辰哉「ここやって言うんよ」
乃愛「⁉︎こ、ここって・・・!」
里音「例の『踏切のテケテケ』の踏切を通らないと行けない場所だ!」
乃愛「日常組さんと一緒に捜索しますか?」
大和「そうだね、これ以上被害が出る前に調査しよう!」
|優亜《ゆうあ》「経緯はわかったけどさ・・・」
一つ目の都市伝説、『図書館の魔女』の場所である虹野図書館にやってきた姫澤優亜は、少し不服そうな顔で
優亜「なんで『ワイテルズ』さんと『らっだぁ運営』さんもいんの?」
とだけため息を吐きながら言った。
|裕太《ゆうた》「いやぁ、俺の大学の後輩も行方不明になってて・・・。日常組の方達に相談してたんです」
らだ男「同じく。レウの従姉妹と連絡が取れなくて心配してたもので」
中村裕太と猿山らだ男は、苦笑いしながらも冷静に答える。
優亜「たいして関わったことないし・・・どうすればいいの俺」
大和「ごめん、調査するなら大人数の方がいいと思って」
|恵麻《えま》「いいじゃん別に。とりま全員来てるっぽいし、図書館の魔女の噂調べよ」
ここで話をしていても仕方ないと、みんなで図書館に入って行った。
今回の登場人物
竜王大和(りゅうおうやまと)
カラフルピーチのじゃぱぱ。23歳。妹の明希がどこかに消えてしまった。
桃瀬乃愛(ももせのあ)
カラフルピーチののあ。24歳。手作りスイーツのブログを書いている。
宇野里音(うのりおん)
カラフルピーチのうり。21歳。現役音大生で昔バンドをやっていた。
藤本辰哉(ふじもとたつや)
カラフルピーチのたっつん。25歳。プログラミングが得意な厨二病。
姫澤優亜(ひめさわゆうあ)
カラフルピーチのゆあん。17歳。副業でプログラマーをしている高校生。
中村裕太(なかむらゆうた)
ワイテルズのnakamu。20歳。突如失踪した大学の後輩を探している。
猿山らだ男(さるやまらだお)
らっだぁ運営のらっだぁ。22歳。メンバーの従姉妹捜索を手伝っている。
二
図書室内は静かで、利用客もあまりいなかった。
流石は町1番の図書館。本棚が館内にずらりと並んでいる。
大和「すご・・・」
|文彦《ふみひこ》「ここにはよく来てるけど、この本棚の半分くらいしか読めてない」
本好きな森山文彦でさえ、全く読めていないと言う。
|絵斗《かいと》「ここに都市伝説なんてあるんですかね?」
天野絵斗がふと通路に目をやった、その時。
絵斗「・・・ん?」
紫色の服の怪しい少女が、その通路を通った。
絵斗「じゃぱぱさん!」
大和「どうしました、ぺいんとさん」
絵斗「あの子、追いかけてみましょうよ」
大和「そうですね」
2人でその少女を追いかけると、ある壁際の本棚にたどり着いた。
少女「えーと、あ、あった」
少女は緑の背表紙の本に指をかけ、手前に引いた。
ウィーン ガチャッ
大和&絵斗「⁉︎」
壁の一部が開き、明らかに金属製の扉が現れた。
少女はスイッチを押して扉を開け、中に入っていった。扉は少女がいなくなった途端、すぐに閉まった。
大和「今、この本を・・・」
絵斗「小説ですかね?『秘密警察』・・・?」
大和「みんなを呼ぼう」
恵麻「ここに隠し扉が⁉︎」
橙野恵麻は「信じられない」と言った顔で壁を叩く。
|玲《れい》「見た目は普通の壁と変わらないんですけどね・・・」
東雲玲も不思議そうに本棚と壁を見比べた。
大和「俺とぺいんとさん、nakamuくん、らっだぁさんで入ってみます。結果は外で話すから、少し待ってて」
大和は『秘密警察』と書かれた本を手前に引き出し、扉を開けた。
中は暗く、階段が続いている。
絵斗「なんも見えないっすね・・・。明かりつけます」
絵斗がスマホの光で足元を照らし、ゆっくり進んでいく。
らだ男「お、部屋が見えてきました」
裕太「ドア、開けますね」
裕太は3人に確認し、ドアをそっと開けた。
少女「あら、晴翔?おかえ、り・・・」
さっきの少女と4人の目があった。
少女「え・・・?だ、誰なの⁉︎どうやってここに来たの⁉︎」
大和は混乱している少女に、これまでの経緯を説明した。
少女「なるほど、神隠しについて調べていたら、私が隠し部屋に行くところを見かけた、と」
絵斗「勝手に来てすみません」
少女「いえいえ。私は|高木李由《たかぎりゆ》です。正直なことを申しますと、図書館の魔女は私のことですね」
裕太「君が⁉︎」
李由「はい。・・・そろそろ晴翔達も帰ってくる頃ね。詳しくはみんなが帰ってきてから説明します」
李由は4人を会議室のような場所に案内した。
今回の登場人物
森山文彦(もりやまふみひこ)
カラフルピーチのもふ。21歳。現役大学生で頭脳明晰。
天野絵斗(あまのかいと)
日常組のぺいんと。21歳。消えたトラゾーの妻を捜索中。
橙野恵麻(とうのえま)
カラフルピーチのえと。19歳。元々オカルトは信じていない。
東雲玲(しののめれい)
らっだぁ運営のレウクラウド。20歳。消えた従姉妹を探している。
高木李由(たかぎりゆ)
掴みどころがなく、ミステリアス。16歳。図書館の隠し部屋にこもっている。
三
※第四境界様『かがみの特殊少年更生施設』のネタバレを含みます。詳しくは下のURLから公式サイトを開くことができます。
https://kagamino-jrep.net/
キャラクター名等はこちらからお借りしています。
李由「あ、晴翔達が帰ってきた」
奥からただいま、と言う声が聞こえてくる。
李由「紹介しますね。私の仲間で、|蒼乃晴翔《あおのはると》、|乙坂響《おとさかひびき》、|駒澤千夏《こまざわちなつ》、|花城璃子《はなしろりこ》。みんな、座って」
4人は椅子に座り、李由は淡々と語り出した。
都市伝説の秘密を・・・。
大和「つまり、図書館の魔女っていう都市伝説は、いつも図書館にこもっている君で・・・」
絵斗「それぞれの都市伝説も、人為的なものだった・・・と」
李由「ええ。元々都市伝説はもう一つあったの。それが『藤棚に残る白骨死体』」
裕太「藤棚?そんな話調べてもなかったような・・・」
李由「・・・抹消されたのよ。国家によって、ね」
らだ男「抹消って、どういうことなんですか⁉︎」
李由「2年前の話になります。長くなりますが、聞いていただけますか」
4人「もちろん」
李由「ありがとうございます」
更に李由は2年前のことを語った。
璃子「ほんとに、ここに蒼乃君が・・・?」
李由「わからないわ。でも、藤棚の都市伝説がここであることは間違いないのよ」
千夏「ぱぱっと調べて、ささっと本部に連絡しよ」
李由達は『未成年秘匿捜査一課』の一員で、都市伝説を調査するよう言われた。
そしてそこが、『かがみの特殊少年更生施設』であり、璃子の友達の蒼乃晴翔がいる施設だったのだ。
李由「千夏、透明化つけて」
千夏「合点」
3人の姿は見えなくなり、施設の扉が開いた瞬間に忍び込んだ。
李由(この施設の謎を解いて、晴翔君を探さないとね)
李由は施設内を駆け回り、とうとう怪しい場所を見つけた。
李由は持っていた拳銃で監視カメラを撃ち、部屋を見張っていた職員に拳銃を突きつけた。
職員「ひっ⁉︎」
透明化を解除した李由は、低い声で
李由「大きな声は出すんじゃないわよ。あと応援を呼ぶのも禁止ね。あの扉の鍵を開けなさい」
と脅した。
職員は怯えながらパスワードを入力し、扉を開けた。李由は下へと続く階段を下り、扉の鍵穴を撃った。
逃げようとしていた職員を縛り上げ、李由は中に入った。
李由「・・・っ、うるさいわね!」
中では大音量で音楽が流れている。李由は咄嗟にスピーカーを撃って、音を消した。
李由「晴翔君よね。怪我はない?」
晴翔「は、はい。あなたは?」
李由「私は李由。さっさとこんな施設から逃げましょ」
晴翔「え?」
李由は窓ガラスを撃って割り、窓枠に足をかけた。
李由「私の手を掴んで!」
晴翔「うん!」
晴翔が手を掴み、李由はそのまま部屋から晴翔を引き上げた。
四
李由「・・・って話。そのあと施設のもう1人の被害者で、晴翔の親友の響も、施設の近くで気絶してたのよ。2人一緒に図書館に連れてきたんです。もちろん警察に連絡して、施設は内部調査が入ってる」
裕太「あの、結局その施設って、何だったの?」
李由「簡単に言えば、人体実験施設。響はすでに実験台にされた後だったから、元に戻すの苦労したわ。晴翔は手術をされる寸前で、なんとか間に合ったけどね」
大和「あなたは一体・・・何者なんですか?」
李由「私達は『政府公認未成年秘匿捜査課』の人間よ。いわゆる秘密警察というやつね」
千夏「秘密警察は世間に知られるのはまずい存在。だから司書さんに協力してもらって、図書館の地下を改造したんだ。藤棚の都市伝説はタチが悪いってことで、政府が抹消したよ」
絵斗「簡単に言うけどやってることエグいなぁ・・・」
らだ男「それが都市伝説と何の関係が?」
晴翔「・・・李由、俺も話したほうがいい?」
李由「無理しなくていいわよ。トラウマでしょうし」
晴翔「大丈夫、・・・あの施設には、藤棚があったんだ。それでその下を掘り起こしたら、職員が埋めた実験体の遺体が、ゴロゴロ出てきて・・・。しかも全部白骨化してた。誰が都市伝説の噂を流したのか知らないけど、都市伝説と人体実験施設には、何か関係があるかもしれないって話になって」
璃子「偶然かもしれないけど、都市伝説の場所では失踪事件が多発してますし、何もないとは言い切れません」
響「それで今、オレ達で都市伝説を調査中。でもオレ達はここを出るのは厳しいから、ずっと協力者を募ってた」
にわかには信じられない話だが、確かに辻褄は合う。
絵斗「つまりさ、『他の都市伝説の場所にも、実験施設が隠されてるかもしれない』ってこと、だよね・・・?」
璃子「はい。信じたくは、ないですが」
大和「じゃあ、俺の妹もイナリさんも、nakamuさんの後輩もレウクラウドさんの従姉妹も、みんな実験施設に・・・⁉︎」
大和は青ざめ、李由は小さく頷いた。
李由「時間がない。私達はここから動くことはできないけれど、遠隔で指示を出すことはできます。皆さんには、私達の代わりに都市伝説を調査していただきたいんです」
李由は深々と頭を下げた。
千夏「あたしからもお願い!」
他の4人も頭を下げて、必死に頼み込んだ。
大和「もちろん協力します!みんなもそうだよね?」
絵斗「当たり前ですって!」
裕太「俺にできることなら!」
らだ男「当然のことですよ」
李由「皆さん・・・!ありがとうございます!」
李由は嬉しそうに、もう一度頭を下げた。
五
大和「実は、上にもまだ20人近い仲間が待ってて」
李由「わかったわ。『空間魔法』」
李由が何かを唱えた途端、部屋がたちまち広がった。
4人「ええええええ⁉︎」
李由「私が『図書館の魔女』と言われる所以よ。私は魔法使いだったってこと」
李由はいたずらっぽい笑顔を浮かべた。
全員「ええええええええええ⁉︎」
上にいたメンバー達は、大和達4人から大方の話を聞き、驚きの声を上げた。
どぬく「君が図書館の魔女なの⁉︎」
|薫《かおる》「どうりで普通じゃねぇ格好してたわけだな・・・」
白井どぬくと鮫島薫も目を白黒させる。
李由「場所は全て特定済みよ。みんなの相性とかバランスとか考えてチームを組むわ」
大和「いいのか?」
李由「ええ。みんな、一緒がいい人や同じチームが嫌な人を教えて」
数時間後
李由「決まったわ。都市伝説は図書館の魔女を除くと、全部で『口裂け女の呪い』『踏切のテケテケ』『人形館のメリーさん』『井戸に眠る幽霊』『廃病院の笑い声』『黒い化け猫』の六つよ」
口裂け女・・・大和、どぬく、|火山琉偉《ひやまるい》、|田宮藍人《たみやあいと》、|虎蔵宗真《こくらそうま》
テケテケ・・・乃愛、|柴本賢治《しばもとけんじ》、|金森時哉《かなもりときや》、玲
メリーさん・・・里音、辰哉、裕太、|金豚恭介《こんとんきょうすけ》、|式神秀都《しきがみしゅうと》
井戸・・・恵麻、文彦、|桐谷八雲《きりたにやくも》、|吉川碧《よしかわみどり》
廃病院・・・|片霧直斗《かたぎりなおと》、優亜、|須磨笑太《すましょうた》、らだ男、絵斗
化け猫・・・、|水瀬瑠奈《みずせるな》、|灰瀬真弘《かいせまひろ》、薫、|黒野葵《くろのあおい》
李由「この組み合わせでいい?」
全員文句はないらしい、うんうんと頷いた。
李由「じゃあこれで決まりね。みんなにインカムを配布するわ」
千夏「このインカムは、制御監視室にあるパソコンに繋がるんだ。何か行き詰まったりしたら、ここに繋いでくれたらサポートするよ」
瑠奈「インカムなんて初めて見ました・・・。カッコいいですね」
響「ちなみに作ったのオレ!」
瑠奈「すごいです!こんなのどうやって作ったんですか⁉︎」
響「気になるなら、今度教えてあげる」
乃愛「そういえば李由さん、気になってたんですけど」
李由「何?」
真弘「仕掛けを動かすヒントになってたあの本、どんなことが書いてあるの?」
李由「あぁアレね。ただの仕掛けだから、厚紙と段ボールで作ったハリボテよ。中身はないし、みんなが出入りする時わかりやすいように、『秘密警察』って題名にしただけなの」
真弘「そうだったの⁉︎」
李由「びっくりした?響って意外と器用なのよね笑」
今回の登場人物(今回めちゃ多いので3回に分けます)
白井どぬく(しらいどぬく)
カラフルピーチのどぬく。19歳。刀オタクで半人半狐。
鮫島薫(さめじまかおる)
ワイテルズのシャークん。22歳。ワイテルズ随一の体力オバケ。
火山琉偉(ひやまるい)
ワイテルズのブルーク。21歳。のんびりやで結構鈍臭い。
田宮藍人(たみやあいと)
らっだぁ運営のコンタミ。23歳。ツッコミ担当の毒舌家。
虎蔵宗真(こくらそうま)
日常組のトラゾー。21歳。突然妻が失踪してしまった。
柴本賢治(しばもとけんじ)
カラフルピーチのシヴァ。24歳。動画外ではいつも人間態。
六
そして翌日、調査が始まった。
大和「ここが口裂け女の場所・・・」
宗真「どこかにイナリがいればいいんだけど」
どぬく「みんなあっち!誰かいるよ!」
どぬくが指差した先に、赤いコートの女性がいる。
どぬく「どうしたの?大丈夫?」
女性は振り向いて顔を見せた。
その顔を見た瞬間、大和達5人は絶句した。
口が裂けている・・・!
大和「うわぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
琉偉「絶対そうじゃん!口裂け女だぁぁぁぁ!」
藍人「・・・っ⁉︎」
みんな青ざめて逃げ出そうとしたが、
どぬく「待って!この子、普通の人だと思う!」
どぬくが大和達を呼び止め、顔をよく見るよう促す。
大和「あ・・・あれ?くっついてる・・・」
どぬく「この子、多分怪我とかして、口の横に傷跡が残っちゃってるんだ」
女性は涙目になっていた。周りが暗く見えなかったが、口裂け女のように、赤黒い傷跡が線になって残っていた。
女性「いっつも怖がられる・・・なんでこんなことに・・・っ!」
女性は顔を覆って泣き出した。
大和「何があったのか、どうしてここにいるのか。話してもらえませんか」
女性「わかりました。・・・私は|神崎怜羅《かんざきれいら》、今までは普通の大学1年生でした・・・。一月前に大学の友達と肝試しに来て、黒ずくめの男達に捕まって・・・。私は口を切り裂かれ、友達もみんな殺されてしまったんです。私の顔は気味悪がられるばかりで・・・。どうすることもできなくてここにいました」
琉偉「もしかして、李由ちゃん達が言ってた実験施設が⁉︎」
怜羅「実験施設・・・そうかもしれませんね。周りに人間が入っているカプセルや、沢山の薬とか手術台がありました。病院では無いと思います」
宗真「あの・・・そこにさ、狐のお面持ってる女の子いなかった?」
怜羅「えーと、いなかったと思います。でも置いてあった資料を持ってきたんですけど・・・狐のお面被ってますよね、練馬稲荷って書いてあります」
宗真「それ!俺の妻のイナリだ!」
どぬく「ええ⁉︎トラゾーさんの奥さんのイナリさんって、稲荷お姉ちゃんのことだったの⁉︎」
宗真「・・・ん?」
どぬく「あ、えーと・・・練馬稲荷は、俺の従姉妹なんです・・・」
藍人「マジか、そんなことある?」
怜羅「この子は踏切にいるみたいです・・・。漢字が難しいけど、多分そんな感じのこと書いてますね」
琉偉「踏切だから、きんさんがいるとこか!あの人達なら多分大丈夫だね!」
大和「怜羅さん、施設の場所わかりますか⁉︎」
怜羅「はい!こっちです!」
怜羅は5人を連れて歩き出した。
前回の登場人物
金森時哉(かなもりときや)
ワイテルズのきんとき。19歳。ワイテルズイチの歌唱力。
金豚恭介(こんとんきょうすけ)
らっだぁ運営の金豚きょー。24歳。苗字がコンプレックス。
式神秀都(しきがみしゅうと)
日常組のしにがみ。20歳。声も見た目も女性っぽい。
桐谷八雲(きりたにやくも)
ワイテルズのきりやん。22歳。マイクラの知識量がエグい。
吉川碧(よしかわみどり)
らっだぁ運営の緑色。20歳。よく喋り方がカタコトになる。
今回の登場人物
神崎怜羅(かんざきれいら)
口裂け女に勘違いされた女性。19歳。施設で口を切られてしまった。
練馬稲荷(ねりまいなり)
どぬくの従姉妹でトラゾーの妻。20歳。施設に囚われている。
七
賢治「ここが例の踏切ねぇ」
乃愛「レウクラウドさんの従姉妹さん、ここにいるんでしょうか?」
玲「|果林《かりん》ちゃん・・・無事でいて」
時哉「廃線してるから、電車は通ってないと思う。とことん調べよう」
4人が踏切をくぐって線路に入ると、音が聞こえてきた。
時哉「・・・?テケテケかな」
近づいてみると、ソレは這いながら猛スピードで襲いかかってきた!
乃愛「きゃあぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
賢治「やばい逃げろぉぉぉぉぉぉぉ!」
時哉「待って!」
時哉は冷静に、ソレを観察した。
時哉「やっぱりだ。この子、足あるよ」
テケテケだと思われたソレには、ちゃんと足がついている。暗がりで見えなくなっていたのだろう。
時哉「大丈夫?」
少女「ハァ、ハァ・・・ゲホッ」
賢治「相当疲れてるな・・・」
乃愛「落ち着いて呼吸してください!」
少女「すみません、もう大丈夫です・・・」
玲「何があったのか話せますか?」
少女「はい。私の名前は|有川友里《ありかわゆうり》です。私は下半身付随で、車椅子が無いと動けない体で・・・。生活に負担をかけてしまうせいで、両親には嫌われていました。それで実験施設に売られちゃって・・・。まずいと思って、車椅子のままなんとか逃げ出したんですが、この踏切で車椅子を壊されてしまいました。助けを求めようと手だけで這って移動していたのですが、何故かみんな逃げてしまって。今度こそはと必死でここまできました」
玲「何それ、ひどい親だね」
賢治「いくら足が不自由だからって、それは無いわ」
乃愛「車椅子が無いと移動できないのは不便ですね・・・。車椅子の代わりになるものはあるでしょうか」
時哉「見つかるまで俺が何とかするよ」
友里「そんな!ご迷惑をおかけするわけには」
時哉「施設への入り口に案内してもらえる?それなら迷惑じゃないでしょ」
友里「わかりました、そういうことでしたら」
玲「えーと・・・友里さん、花海果林ちゃんって子、聞いたことある?」
友里「ごめんなさい、ちょっとわからないです・・・」
賢治「練馬稲荷、はどう?」
友里「同じ施設にいたと思います。狐のお面の子ですよね」
乃愛「じゃあ、イナリさんはここにいるんですね」
玲「果林ちゃんがいないのは心配だけど、助けられる人がいるなら助けなきゃね」
時哉「それじゃあ友里さん、施設まで案内して」
友里「わかりました」
時哉に抱き抱えられた友里は、指差したり方向を言って案内を始めた。
前々回の登場人物
片霧直斗(かたぎりなおと)
カラフルピーチのなおきり。25歳。オカルト大好きな兄貴キャラ。
須磨笑太(すましょうた)
ワイテルズのスマイル。20歳。無口で無愛想で名前負けしてる。
水瀬瑠奈(みずせるな)
カラフルピーチのるな。18歳。天然で憎めないドジっ子。
灰瀬真弘(かいせまひろ)
カラフルピーチのヒロ。20歳。内気で恥ずかしがり屋王子。
黒野葵(くろのあおい)
日常組のクロノア。22歳。穏やかで温厚な猫好き。
今回の登場人物
有川友里(ありかわゆうり)
テケテケだと思われた少女。18歳。下半身麻痺で車椅子が手放せない。
花海果林(はなみかりん)
レウクラウドの従姉妹。19歳。どこかの施設に囚われている。
八
辰哉「人形館はここか・・・」
里音「前に行った人形屋敷とはまた違うな」
裕太「ここのどこかに、実験施設があるってこと・・・?」
プルルルルルルル!
突然恭介の電話が鳴った。
恭介「出てみるね・・・」
?「私、メリーさん。今、あなたの後ろに・・・」
言い終わる前に恭介は振り向く。
そこには、豪華なドレスを着た女性が立っていた。
恭介「ひぇっ⁉︎メリーさん・・・あれ、これ石像⁉︎」
里音「何だ石像かよ・・・」
秀都「ほんとにびっくりしたぁ・・・」
5人はほっと胸を撫で下ろした。しかしそれも束の間。
カタカタカタカタカタ!
裕太「うわっ⁉︎動いた⁉︎」
辰哉「中に誰かおるんか⁉︎」
里音「そこにハンマー落ちてる。割ってみようぜ」
里音はハンマーを拾い上げ、石像に振り下ろした。
バキィン!
秀都「割れました!」
恭介「やっぱり人が入ってた・・・。大丈夫ですか⁉︎」
女性「うぅ・・・大丈夫、ですっ」
裕太「あれ、君はうららちゃん⁉︎」
|麗《うらら》「裕太先輩⁉︎」
辰哉「まさか、nakamuさんの後輩ちゃんか?」
麗「あ、はい。|芳井麗《よしいうらら》です」
恭介「無事でよかった・・・。あんなところにいて、苦しかったでしょ?」
麗「ずっと同じ体制だったからきつかったよ」
秀都「何でこんなことになったんですか⁉︎」
里音「わかることでいいから教えてくれ」
麗「はい。私、ただこの辺を散歩してただけです。写真部なのでいい写真スポットが有れば・・・くらいの気持ちでここにきました。そしたら、ここに誰かが遺体を埋めてるのを見てしまって・・・。掘り起こしてみたら、やばそうな見た目の薬の瓶も埋まってたんです。通報しようとしたら、誰かに殴られてこんな状態に・・・」
辰哉「施設の噂はほんまやったんか⁉︎入り口は見えたか?」
麗「はい。実は隠しカメラをこの髪飾りに仕込んでたんです。入り口に誰かが入っていく様子を見て、咄嗟に撮影しました。スマホに接続すれば見られると思います」
恭介「できた。どうやら花壇の下が隠し階段になってるみたいだ」
裕太「ここに入り口が・・・⁉︎」
里音「早く行こう。犠牲者が出る前に片付けなきゃな!」
秀都「ですね!本格的な調査開始です!」
麗「私を殴った奴がどこかで聞いているかも・・・。見張りをしますので、入り口を開けて中に入ってください!私もご一緒します!」
辰哉「危ないけど大丈夫なんか?」
麗「私は写真部ですよ?写真をバンバン撮って、警察に証拠として提出しなきゃいけませんもんね!」
裕太「心強いよ。ありがとう!」
今回の登場人物
芳井麗(よしいうらら)
nakamuの大学の後輩。19歳。写真部として事件捜査に協力。
九
文彦「奥すぎるだろ・・・」
八雲「ここに幽霊の井戸が・・・?」
恵麻「みどりくん大丈夫?」
碧「ツカレタ・・・」
八雲「井戸が見えてきた!もう少しだ!」
文彦「これが幽霊の井戸?確かにぼろぼろで不気味だな」
恵麻「あ、待って!中に誰かいる!井戸に落ちちゃったのかな?」
碧「ライトアルカラテラシテミル」
碧はペン型ライトで井戸の底を照らした。
中に女の子が座り込んでいる。
恵麻「ねぇ!大丈夫⁉︎聞こえる⁉︎」
女の子「誰か・・・いる!すみません、助けてください!」
文彦「今ロープを下ろすから、それを掴んで上がってきて!」
文彦は近くにあったロープを下まで下ろし、女の子を上まで引き上げた。
八雲「君は?」
女の子「私は冬本瑠美です。誰かにここに呼び出されて、井戸に突き落とされました。突き落としたのは男です。あいつは『お前には施設の囮になってもらう』とか意味のわからないことを言っていて・・・。スマホのカメラっぽいのも見えたんですが、すぐにどこかに行ってしまいました。それから人が近づく度に助けを求めたんですが、何故かみんな悲鳴を上げて逃げてしまうんです」
碧「タブントシデンセツノウワサニツカワレタンダネ」
八雲「多分そいつが言ってた『施設』は、実験施設のことだ!瑠美さん、施設の入り口についてヒントはなかった?」
瑠美「あ、それなら録音データがあります!何かボソボソ言っていたので、あとで聞こうと思って録っていたんです。何か手がかりが残されているかも!」
恵麻「聞かせて欲しい」
瑠美「わかりました!」
〜再生中〜
文彦「なるほど、この踏み石の一つが取り外せるのか」
碧「デモ、ドレガハズセルノカワカンナイ」
恵麻「片っ端からやってみる?」
瑠美「いえ、どの石かは大体わかると思いますよ」
八雲「え⁉︎ほんとに⁉︎」
瑠美「聞いてください、この音は落ち葉を踏む音です。落ち葉が周りに落ちている踏み石は少ないです。そして、『この木ほんと邪魔だな』と言っていますね。木が近くにあるということでしょう。そして、カタカタという音が何度か聞こえます。なかなか外せないくらいに滑る・・・つまりコケが生えているんです。これらから導き出される答えは・・・」
瑠美は一つの踏み石に近寄り、それに指をかけて持ち上げた。
カタリ
八雲「開いた!」
恵麻「すごい、ボタンが出てきたよ!」
文彦「瑠美さん天才だよ!」
瑠美「いえいえ。私をこんなことに巻き込んだ報いを受けさせてやります。ボタンの暗号を解けば中に入れるはずです」
今回の登場人物
冬本瑠美(ふゆもとるみ)
井戸に落とされた少女。17歳。閃き力と推理力に長けている。
十
直斗「ここが笑い声の聞こえる廃病院ですか・・・」
優亜「なんかもう怖いんだけど?」
笑太「さっさと調査終わらせますよ」
廃病院にやってきた5人は、早速病院に入って調査を始めた。
らだ男「廃病院だから誰もいないね・・・」
絵斗「掲示板によると、『診察室に行くと笑い声が聞こえる。1分以上聞くと地獄に落ちる』らしい。どこかに診察室があるんだ」
優亜「あまり長い間聴いちゃダメなんだな・・・。地図でも有ればいいんだけど」
笑太「これ、院内マップ・・・?」
直斗「診察室は・・・ありました。2階みたいです」
絵斗「じゃあ早速行くか。懐中電灯はあるから、これで照らしていこう」
5人で2階に上がるための階段を探し、歩き始める。
らだ男「うわっ」
優亜「どうしたの?・・・うぎゃっ⁉︎」
笑太「これ、死体か⁉︎」
らだ男「俺こんなのに躓いたの⁉︎」
直斗「ご冥福をお祈りいたします・・・」
優亜「血が乾いてる・・・。亡くなってからかなり経ってるよ」
絵斗「まさか施設の人間が・・・⁉︎」
笑太「階段があったぞ。これで上に上がれそうだ」
階段の無機質な音が、廊下に嫌に響く。
らだ男「なんかこの音嫌だな・・・」
優亜「なお兄、診察室はどこにあるの?」
直斗「確か、この突き当たりを右です」
笑太「血のシミがあちこちに・・・。ここで一体何があったんだ?」
絵斗「このまま進んでみよう」
不気味で長い廊下を黙って進むと、『第4診察室』と書かれた部屋が見つかった。
らだ男「・・・入るよ」
がちゃり、と嫌な音を立てて扉が開いた。
さらに奥に入っていくと・・・
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!
直斗「これが笑い声⁉︎」
優亜「爆笑してるやん・・・」
笑太「いや、違う!これラジカセから流れてる音源だ!」
絵斗「こいつか!」
ロッカーの中に男が隠れていた。
男の後ろにはしっかりラジカセが置かれている。診察室に人が入った時、笑い声を流して人を追い払う役目だったようだ。
優亜「やっぱりここにも実験施設があるのかも!」
笑太「この男が何か知っていそうだな」
絵斗「施設について知ってることを教えろ」
男「わ・・・わかりました」
男から聞いた情報によると、やはりこの廃病院には、人体実験施設が隠されていたようだ。
そして入り口は、入院棟444号室にあるらしい。不吉な数字になっているのはよくわからないが。
直斗「ここに行方不明者が・・・?」
らだ男「早く行こう!」
5人は入院棟に向かうため走り出した。
十一
真弘「黒い化け猫の目撃証言って、ほんとにここ・・・?」
葵「合ってるはず・・・。黒猫がいれば多分それですね」
瑠奈「一応るる連れてきました!」
薫「そうか、るなさんは猫飼ってたんだったな」
4人は化け猫の目撃証言があった空き家にやってきた。
瑠奈「あ!黒猫いましたよ!」
瑠奈が指差した先に、黄色い目の黒猫がいた。
瑠奈はるるを抱えたまましゃがみ込み、黒猫を興味津々に見た。
黒猫「ニャー!」
葵「見た感じ普通の猫だね・・・」
真弘「あれ・・・?なんか尻尾二本生えてない?」
真っ暗で見えにくいが、確かに二本の尻尾が揺れている。
薫「聞いたことあるぞ・・・。化け猫の特徴は尻尾の数だって」
瑠奈「じゃあ、この子が噂の化け猫・・・⁉︎」
黒猫はるると何かを話しているのか、ニャーニャー鳴いている。
その時、黒猫が茂みの中に入って行った。るるが瑠奈の腕から飛び出して、黒猫を追う。
瑠奈「るる⁉︎待って!」
真弘「追わなきゃ!」
4人も茂みに入って、黒猫とるるを追った。
中は獣道のようになっていて、背の高い葵が通れるほどの高さはある。
瑠奈「るる!待ってよ!」
葵「早すぎるって!」
2匹を追って茂みを抜けると、明らかに人工物と思われる石碑が、ポツンと設置されている。
薫「なんだこれ・・・?」
真弘「何か書いてあるけど」
瑠奈「全然読めないです・・・。外国語ですかね?」
黒猫は石碑の前に座り込んで、首を掻いた。
葵「・・・あ、この子の首輪、何か引っ掛かってる」
薫「紙だな。なんて書いてる?」
それは、|弥勒院《みろくいん》ちゆりという少女が書いた手紙だった。
今みなさんの前に黒猫がいると思いますが、それが私です。
私は実験施設の秘密を知ってしまったので、口封じに猫になる薬を飲まされてしまいました。
そして尻尾を二本にされ、化け猫の噂に使われているんです。
詳しいことは、私の仕事仲間である李由に聞いてください。
李由と私は『未成年秘匿捜査員』の一員で、都市伝説と実験施設の関係性を探っていました。
実験施設は都市伝説によりカモフラージュされ、誰も近寄らないようにされていたんです。
私が元に戻る薬は、施設のどこかにあります。
そしてそこにある石碑が入り口です。
入り口を開く暗号は別の紙に書いておきました。
どうか私の代わりに施設の秘密を解き明かしてください。
弥勒院ちゆり
真弘「これが入り口・・・?」
葵「暗号は・・・あった、これですね」
暗号が書いてある紙を、4人で覗き込んだ。
十二
怜羅「ここが入り口です」
大和「このドアの先が・・・?」
6人はドアを開けて、階段を降りていく。
しばらく進むと、『第一研究棟』の入り口が姿を現した。
大和「これは・・・パスワードが必要なのかな」
怜羅「この暗号にヒントがあるんじゃないですか?」
11、12、451、93→アイドル
612、94、14、451→パレード
⁇⁇??→答え
藍人「何かの法則性があるんだろうな」
宗真「ドは451で確定みたいですね」
琉偉「?が答えになるから、6桁かな?」
どぬく「なんだろ・・・。五十音?」
怜羅「・・・あ、もしかして」
怜羅はテンキーの前に立ち、数字を打ち込み始めた。
大和「もしかして、パスワードがわかった・・・?」
怜羅「ええ、多分ですけどね」
怜羅が打った数字は、『254114』だった。
琉偉「なんでこの数字なの?」
怜羅「五十音表を思い浮かべればわかると思います。最初の一桁は五十音表のどこの縦列か、次の桁はどの横列か、最後の桁は濁点を表すんです。『あ』で有ればあ行の1番目、『い』で有ればあ行の2番目、と言った感じです。伸ばし棒はひらがなにしてから変換するのでしょう。今回は『パレード』を『ぱれえど』にするんですね」
藍人「それで『こたえ』をその法則に習って変換したのか」
宗真「えーと、『こ』はか行の5番目、『た』はた行の1番目、『え』はパレードと同じ要領だから・・・。ほんとだ、254114になる!」
そのままエンターキーを押すと、なんと扉が開いた。
どぬく「すごーい!怜羅さん頭いいですね!」
怜羅「言葉遊びは得意なんです」
琉偉「これで先に進めるね!」
扉の先には、たくさんの檻があった。ヤバそうな薬品が入っているフラスコや、溶けかけのビーカーが机に置きっぱなしだ。
大和「こんな感じなのか・・・」
怜羅「あった・・・こんなところに」
どぬく「これは・・・?」
怜羅「殺された私の親友の遺品です・・・。親友はいつもこのキーホルダーを腰のベルトにつけていました。拾えてよかった・・・。助けられればもっとよかったんですけど」
怜羅は涙目になりながらキーホルダーを握りしめた。
藍人「あなたが無事で、親友も安心してると思いますよ」
宗真「これ以上被害者を出さないためにも、ここで食い止めないと」
怜羅「そう、ですね!ありがとうございます。ここに閉じ込められている人を助けなきゃ!」
怜羅は涙を拭いて、施設の奥に歩みを進めた。
十三
時哉「ここで合ってる?」
友里「うん、ここだよ」
時哉に抱えられたまま、友里は4人を案内した。
賢治「普通の煉瓦塀にしか見えないけど・・・」
友里「色が違うレンガを外してみて」
友里の言う通り、少し色褪せたレンガに指をかけてみると、パカリと開いてボタンが現れた。
乃愛「赤と青と白と黒のボタンがありますね」
友里「ボタンを押す順番で隠し扉が開くの。間違えると電流が流れるから気をつけて」
玲「順番わかる?」
友里「うん。多分・・・。車椅子を壊した奴がこれを落としてたの。何かわかるんじゃないかな」
友里の手には紙切れが握られていた。
鳥→龍→亀→鳥→亀→虎→龍
時哉「なんだろうこれ・・・」
友里「おおよその見当はついてる。赤、青、黒、赤、黒、白、青で押してみて」
玲「もう一回言ってもらえる?」
友里「赤、青、黒、赤、黒、白、青」
ガチャ!
乃愛「開きました!」
友里「よかった、開いて・・・」
賢治「どういうこと?答え教えてよ」
友里「『青龍』『朱雀』『白虎』『玄武』って聞いたことない?」
時哉「なんだっけ、四神?」
友里「そうそう」
乃愛「なるほど!朱雀は赤い鳥だから、鳥を赤に変換するんですね!」
玲「青龍は青い龍、玄武は黒い亀、白虎は白い虎だから、鳥→龍→亀→鳥→亀→虎→龍を赤→青→黒→赤→黒→白→青に変えるんだね」
友里「そういうことだよ。私はボタンに手が届かなかったから、あそこで這いつくばって、誰かに押してもらうしかなかったの」
時哉「なるほど・・・。とにかく、この中に車椅子が残ってるかも」
友里「被害者は他にもいるはず。助けに行かないと。時哉さん、引き続きお願いします!」
時哉「おけ!」
賢治「下は階段になってるのか・・・」
乃愛「暗いですね」
玲「あ!車椅子はないけど松葉杖があったよ!」
友里「松葉杖があれば大丈夫。貸してくれる?」
友里は松葉杖を使って歩き出した。
時哉「檻がいっぱい置いてあるな」
友里「私、あの中にいたの。車椅子の跡があるはず」
乃愛「タイヤの跡が残ってますね。ん?あの空き瓶は・・・?」
玲「ええええ⁉︎これ、痺れ薬だよ⁉︎まさか友里さんはこれで⁉︎」
友里「そんなはずないよ!私の下半身麻痺は生まれつきなんだよ⁉︎」
賢治「どういうことだ・・・?けど、痺れ薬があるなら、それを治す薬もあるかも!」
時哉「だとしても、生まれつき足が悪い友里さんに痺れ薬を飲ませるのは謎だな・・・もう少し調べたほうがいいかも」
十四
裕太「ここが入り口・・・」
秀都「行きましょう」
麗「入れました?」
裕太「全員入ったよ〜!」
麗「すぐ行きます!」
花壇の下の入り口には、ハシゴがあった。
恭介「こんなところあったんだ・・・」
里音「うわっ、死体が・・・。あっちにもこっちにもあるやん」
辰哉「もう人が死ぬのは当たり前の環境なんやな・・・」
裕太「すごい匂いだな、うららちゃん大丈夫?」
麗「はい・・・最初は見るのも辛かったけど、もう感覚が麻痺してる自覚はあるんで・・・」
秀都「目の前で人が殺されるのも普通だったんですね・・・」
裕太「これからは俺の後ろにいれば大丈夫だから。離れないで」
麗「うん、ありがとう」
恭介「あ、鍵付きの箱がある」
里音「正しいボタンを押すっぽいな・・・」
麗「何かヒントは・・・」
辰哉「これか?なんか書いとるで」
秀都「暗号ですかね?解くの難しそう」
📖 × マ 🍎 📱 ☀️ ◎
仲間はずれを一度だけ押せ
麗「なんだろうこれ・・・。先輩、何かわかります?」
裕太「いや、ごめん。何もわからない」
恭介「何気に『マ』が気になるな」
秀都「絵文字じゃないのが違うのかな?って思いましたけど、バツと二重丸も絵文字じゃないですよね」
里音「やべえ、バカしかおらんここ」
辰哉「・・・あっ」
麗「辰哉さん?何かわかったんですか?」
辰哉「多分、スマホが正解ちゃうか?」
恭介「あ、そうか!俺もわかった」
麗「あ!私もわかりました!『地図記号』ですね!」
裕太「地図記号・・・?」
秀都「なるほど!本は図書館、バツは警察か交番!でもマは・・・?」
里音「多分傾けたら針葉樹の記号になるとかじゃね?」
辰哉「そうなんよね。俺もそれでピンときたんよ」
裕太「なるほど・・・。りんごは果樹園、太陽は工場、二重丸は市役所ってことか」
恭介「じゃあ、スマホのボタン押すよ?」
カチッ
恭介「開いた!」
麗「これは・・・研究棟の牢屋の鍵?マスターって書いてるので、全ての牢屋を開けられるんでしょうか」
秀都「じゃあ、早速研究棟に行きましょう!被害者をこれ以上出さないためにも、助けないとですね!」
里音「やべえ頭全然追いつかん」
辰哉「後で説明したるから!早よ行くぞ!」
裕太「研究棟のマップがある。牢屋はこの先だ!」
麗「皆、無事かな・・・」
不安はあるが救出しなければ。
ただそれだけの思いで、麗は5人に着いて行った。
十五
瑠美「こうなってたんですね」
恵麻「ただ通路が続いてるだけみたいだよ」
文彦「研究棟って書いてあったから、ここのどこかに被害者が閉じ込められてる?」
八雲「使われてない檻がたくさんあるね」
瑠美「うーん・・・あ!」
瑠美は一つの檻に駆け寄った。
瑠美「まこちゃん!大丈夫⁉︎」
?「瑠美!なんでここがわかったんだ⁉︎」
瑠美「ここの近くの井戸に落とされたの。そしたらたまたま入り口のヒントを聞いて・・・」
碧「ダレ?」
誠「私は|桜庭誠《さくらばまこと》だ。瑠美の中学からの親友でね、ヘマをやって捕まっちまったんだ」
瑠美「今助けるから!待ってて!」
誠「鍵は4桁のパスコードで開くはずだ。監視員から奪ったヒントがある。これを解読してパスコードを導き出してくれ!」
最初の一桁は5以下
二桁目は偶数
三桁目は2乗の数
四桁目は素数
最初の二桁はその二桁を足した数と三桁目をかけた数
最後の二桁は素数
真ん中の二桁はは2乗の数
四桁を全て足すと20
同じ数字と0は入らない
瑠美「難しすぎない⁉︎」
文彦「とりあえず当てはまる数字をメモしよう」
八雲「一桁目の数は5から1のどれか、二桁目は2468のどれか、三桁目は149のどれか、最後は2357のどれかだね」
恵麻「やばい、全然わかんねぇ」
碧「アタママワラナインダケド」
文彦は黙ってヒントを見ている。そしてきっかり10分後。
文彦「解けた!」
瑠美「え⁉︎」
恵麻「はやっ」
八雲「早すぎね?」
文彦「3647!皆計算して確認してみろ!」
文彦がその数字を入れると、ガチャリと音がして鍵が開いた。
瑠美「まこちゃん!」
誠「瑠美!」
2人はしっかり抱き合って喜んだ。
誠「あんた達が助けてくれたのか。ここを見つけてくれたこと、心から感謝する」
誠は深々と一礼した。瑠美もそれにならい、ぺこりと頭を下げる。
誠「ここは恐ろしい人体実験施設だ。私も出来る限りこの施設について調べてみたんだが、この街にある各施設の収監者のリストが出てきたぞ。あんた達の知り合いもいるかもしれない、確認するといい」
誠がくれたリストには、100人近い人の数が書かれていた。
文彦「『竜王明希』・・・。これ、じゃっぴの妹じゃない?」
八雲「芳井麗・・・!この子nakamuの後輩だ!」
碧「花海果林、レウノイトコダネ」
恵麻「知らない名前もあるけど、どこに何人囚われているかわかったね」
誠「収監者をさっさと助けるぞ」
誠は先立って歩き出した。
今回の登場人物
桜庭誠(さくらばまこと)
瑠美の中学からの同級生。17歳。男らしい言動が目立つ女の子。
竜王明希(りゅうおうあき)
大和の行方不明だった妹。18歳。どこかの施設に収監されている。
十六
優亜「・・・あった」
絵斗「ここが、入院棟444号室?」
笑太「開けるぞ・・・」
扉は嫌な音を立ててゆっくりと開いた。
らだ男「暗いし不気味だね」
直斗「ここに入り口があるんですよね。早く見つけないと」
優亜「あっ!これ見て!」
優亜は5本の鍵が入った箱を持ってきた。中には天秤も置いてある。
笑太「注意書きが書いてある。・・・どうやらこの鍵の中に本物の鍵があるらしい」
入っていた説明書には、こう書かれていた。
本棚の裏にある鍵穴にぴったりハマる鍵は一つだけ。
間違った鍵を刺すと鍵が爆破する仕組みだ。
確かめるには、天秤を使って本物を見極めるほかない。
偽物の鍵は爆弾が入っている分、重くなっている。
天秤にも爆弾が仕込まれていて、3回以上使うとこれも爆破する。
2回だけ天秤を使って、本物の鍵を見つけろ。
優亜「まるで俺らが来ること知ってたみたいだな・・・」
絵斗「2回で見つけられるもんなのか?」
らだ男「適当に使うのも危ないね」
直斗「手に持ってもわかりませんね・・・。どうしましょう」
笑太「・・・とりあえず二つずつ乗せてみるか?」
絵斗「その後どうするかが問題だけどな」
手始めに、右に赤い鍵と青い鍵、左に黄色い鍵と緑色の鍵を置いた。
カタンッ
右が傾いた。
笑太「・・・あっ!そうか、じゃあ今度はこれをこうして・・・」
笑太は手早く赤い鍵と青い鍵を取り除いた。
カタンッ
天秤は左に傾く。
それを確認し、笑太は黄色い鍵だけを右に置いた。
天秤は動かなかった。
左に傾いたままだったのだ。
笑太「本物わかった。黄色い鍵だ」
直斗「ええっ⁉︎」
らだ男「い、入れるよ・・・?」
本棚を押し倒し、現れた鍵穴に黄色い鍵を刺すと、さらに横にあった本棚が動き、四つん這いになれば通れるくらいの穴が姿を見せた。
優亜「すげえええ!スマイルさん見かけ通りの天才!」
笑太「見かけ通りは余計だ」
絵斗「これで中に入れる!」
直斗「懐中電灯を見つけたので、これを使って進みましょう!」
穴に入ると、中は意外と広かった。
直斗「通路みたいになってる・・・。血もついてますしホラーゲームみたいですね」
らだ男「誰か倒れてる」
女の子が通路に倒れている。助け起こすと、なんとその子は左手がなかった。
絵斗「手がない・・・まさか実験のために切られた⁉︎」
優亜「とにかくどこかに運ばないと!」
笑太「この先に安全なところがあるかもしれない。急ぐぞ」
直斗が女の子を背負い、小走りで通路を進んだ。
十七
真弘「ヒントって、これ?」
葵「すごい難しそうだけど・・・」
石碑には18のパネルがはまっています。
簡単に言えばあるなし問題です。
上にはまっているパネルを移動させて、正しく配置してください。
組み合わせが合っていれば石碑の下が開いて、入り口が現れます。
石碑に書いてある文章を日本語に直しておきました。
これを使って暗号を解いてください。
🐁🐯🐍🐔🐮🐎⬜︎⬜︎⬜︎
🐹🦁🐢🐦⬛🐷🫏⬜︎⬜︎⬜︎
🐇 🐻 🦊 🐕 🐱 🐉
6つのパネルを正しくはめろ
瑠奈「動物のパネル・・・?違いが全くわからないです」
薫「いやこんな簡単なのないだろ。干支じゃねぇの?」
真弘「まぁそうだよね・・・」
葵「こんな簡単でいいのかな?」
瑠奈「えと?えとさん今いないですよ」
薫「そうじゃなくて!干支!十二支!」
瑠奈「十二支・・・ああああああああ!」
葵「だから🐁の列に🐇、🐕、🐉をはめて、🐹の列に🐻、🦊、🐱をはめれば・・・」
カチャ
ギギギギギギギギギギギギギギギ・・・
瑠奈「開いたーー!」
真弘「穴が出てきた!」
薫「さっさと行ってちゆりさんを元に戻すぞ」
どこまで続いているかわからない縦穴に、全員で飛び込んだ。
もちろん瑠奈はるるを抱えたままだ。そして黒猫は葵が抱いている。
下にはネットが張られていて、全員怪我はない。
真弘「ここが施設・・・」
葵「早く人間に戻す薬を探さないと」
薫「箱がある。鍵付きだ」
瑠奈「もしかしてこれですか?」
薫「多分それだな。貸してくれ」
鍵を刺すと、箱が開いた。
中に入っている薬瓶には、『ヒト戻し薬』と書いてある。
葵「もしかしてこれか⁉︎」
真弘「とりあえずシャーレに入れて飲んでもらおう!」
薬をシャーレにうつし、黒猫に与えると、人間に戻ることができた。
ちゆり「皆さん本当にありがとうございました!改めまして、私は弥勒院ちゆりです。この施設の秘密を知ってしまったために猫にされていました」
葵「ちゆりさん、教えて欲しい。施設の秘密って、なんですか?」
ちゆり「この施設は、生物兵器を作り出す施設なんです。各地の施設で違う人間兵器を生み出し、日本政府を襲撃して戦争を起こし、作った兵器で世界征服をするつもりです。私は記者で、都市伝説を調べているときにたまたまそれを知ったんです」
瑠奈「生物兵器・・・⁉︎」
薫「思ったよりエグいな・・・」
ちゆり「奴等の計画を早く止めないと。牢屋はこっちです!」
ちゆりは4人を案内し始めた。
弥勒院ちゆり(みろくいんちゆり)
化け猫にされていた記者。22歳。施設の真相を知ってしまう。
十八
怜羅「いました!被害者達です!」
怜羅の指の先には、何人もの人が牢屋に囚われていた。
そしてその中には・・・。
大和「あ・・・明希⁉︎」
明希「お兄ちゃん!」
大和の妹の明希もいた。
大和「今鍵開けるから待ってろ!」
明希「お兄ちゃん、ここの檻の鍵はそこの作業台の上にあるよ!」
大和達は置いてあった鍵束を使って、檻を次々に開けていった。
大和「明希!」
明希「お兄ちゃぁぁぁん!」
明希は大泣きして大和に飛びついた。
明希「怖かったよ、寂しかったよぉぉ・・・」
大和「無事みたいだな、本当に良かった・・・」
檻に閉じ込められていた人たちは、次々に施設を飛び出していった。
?「ありがとうございました!」
2人の女の子が駆け寄ってきて、頭を下げた。
梨月「私は|御上梨月《みかみりつき》です!」
美来「|小鳥遊美来《たかなしみく》です」
2人はこの施設の秘密を教えてくれた。
大和「生物兵器・・・?」
梨月「はい、こんなのを作る予定だったみたいです」
梨月がくれた書類には、この世のものとは思えない怪物が描かれていた。
どぬく「何これ⁉︎手が6本ある⁉︎」
琉偉「四つん這いだし、人間じゃないみたい・・・」
ソレは四つん這いで、手足が6本、肌はどす黒く染まり、口は大きく裂けている。
どうやら母体となる人間に、他の人から切り取った両手を取り付け、集めた血を体に塗り、母体の口を切って怪物を作ろうとしていたらしい。とんでもない施設だった。
藍人「バケモノだな・・・」
宗真「早めに止められて良かった」
美来「まだ誰も改造されてないのでギリギリセーフですね」
梨月「皆さんのおかげです。本当にありがとうございました!」
明希「私達も、早く地上に戻ろう!」
9人で来た道を戻り、地上に上がった。
大和「李由さん!」
李由「どうしたの?」
大和「施設の被害者を全員救出した!」
李由「おおお!ナイスよ!すぐに応援を向かわせるわ!」
李由に報告した大和は、ほっとした顔で空を見上げた。
警察「ご協力感謝致します!」
施設を運営していた人間は全員逮捕され、他の研究棟に捕まっていた人々も解放された。
連れて行かれる職員達を見ながら、明希はほっと息を吐いた。
明希「ようやく・・・終わったんだね」
大和「あぁ。ここでこれ以上被害者が出ることもない」
明希「悪夢を見ていた気分。短かったはずなのに、すごく長かった」
大和「これからは俺が明希を守るからな。彼氏ができるその日まで」
明希「何それ笑。でも、ありがとうお兄ちゃん!」
2人の兄妹は顔を見合わせ、笑っていた。
御上梨月(みかみりつき)
怪物の腕にされるはずだった。21歳。施設の目的を調べていた。
小鳥遊美来(たかなしみく)
怪物の肌にされるはずだった。19歳。囚われてたのに軽く考えている。
十九
乃愛「みんな!牢屋がありました!」
玲「鍵があったよ。扉開けるね!」
玲が牢屋の鍵を開けていき、中に入っていた人が次々に出てきた。
?「ユリ!」
?「友里ちゃん!」
友里「蓮さん!稲荷ちゃん!」
|蓮《れん》「良かったわ、無事に逃げられたのね!」
|稲荷《いなり》「助けを呼びに行くって出ていったまま、ずっと帰ってこないから心配してたんです!」
友里「いやーごめん、車椅子ぶっ壊されちゃって・・・」
時哉「知り合い?」
友里「うん、私の友達だよ。ここで知り合ったんだ」
蓮「|小田蓮《おだれん》よ。名前だけは男ってよく言われるわ」
稲荷「|練馬稲荷《ねりまいなり》です。トラゾー殿は?」
賢治「多分無事だよ。早くここを出て会いに行こう」
蓮「待って!」
蓮は友里を呼び止めた。
友里「何?」
蓮「・・・あなたはショックを受けるかもしれないけど、下半身麻痺について書かれた資料を見つけたわ。見る?」
友里「え、見たい!」
友里は嬉しそうに資料を受け取って開いた。
その途端、友里の顔から笑顔が消えた。
割愛すると、友里の両親は離婚している。
離婚事由は母の不倫。当時0歳の友里は母に引き取られ、不倫相手と暮らすことになったのだが、不倫相手と母の間に新たに子供が産まれてしまった。
友里は母にとって邪魔な存在になり、母の不倫相手が施設の職員だったため、自身の不倫を隠す目的として痺れ薬を購入。幼い頃から痺れ薬を飲ませて下半身麻痺と思わせることで、今の父が母の不倫相手であることと、相手の素性を悟られないように細工していた・・・というわけだった。
つまり全ては友里を嫌っていた母親の、友里を違和感なく施設に送るための策略だったのだ。
賢治「なんちゅう悪知恵だ・・・」
稲荷「これが、痺れ薬無効化薬です。飲んでください」
友里が薬を飲むと、松葉杖がなくても立てるようになったのだが・・・。
友里「そん、な・・・。お母さんのこと、大好きだったのに・・・。いつか愛してくれるって、信じてたのに・・・っ!」
友里は顔を覆って泣き出し、時哉と乃愛は泣きながら友里の背中を摩った。
李由達に連絡し、施設の職員はみんなお縄についた。不倫相手も見つかり、母の居場所が判明した。
稲荷「トラゾー殿〜〜!」
宗真「稲荷さぁぁぁぁぁん!」
踏切の施設を潰したと連絡を受け、大和達も合流した。
宗真と稲荷も再会することができ、他の被害者達も家族と会えたそうだ。
友里「お母さん・・・」
時哉「今度、お父さんに会いに行こうか」
友里の背中をそっと叩いて、時哉は笑っていた。
小田蓮(おだれん)
踏切の施設に閉じ込められていた。24歳。友里の心の支えになっていたらしい。
二十
麗「あった!牢屋です!」
早速マスターキーを刺し、全ての牢屋を開けた。
麗「皆さん大丈夫ですか⁉︎」
?「ありがとう!」
裕太「もう大丈夫です!」
恭介「あなた達は?」
杏奈「杏奈!|樫宮杏奈《かしみやあんな》です!」
ひかる「|光樹《みつき》ひかる。助けてくれてありがとう」
和泉「|西岡和泉《にしおかいずみ》です!本当に怖かったです・・・っ!」
秀都「ここは一体・・・」
ひかる「恐ろしい生物兵器を作ってる研究所。メリーさんの噂に隠されていたんだよ」
和泉「メリーさんの電話は、この機械を使っていたんです。職員達は『コールジャック』と呼んでいました」
辰哉「電話がかかってきたんは、これやったんか!」
里音「まじでびびったぁ・・・。人がやってたのかよ」
ひかる「ここでは、人の体に銃器を仕込む実験をしてたの。私達以外にも大勢の人が捕まっていたんですが、全員実験に失敗して死んだ」
恭介「さらっとすごいこと言うな、君」
杏奈「早く出ましょう!こんなとこもうごめんですよ!」
麗「私、お父さんが警察なので通報しますね!あ、お父さん⁉︎実は・・・」
麗が撮った写真数枚が証拠となり、研究所はあっという間に包囲された。
麗達は見事救出され、家族達と再会することができた。
麗「お父さん!」
麗父「よかった、麗!無事だったんだな!」
麗「あの研究所はどうなるの?」
麗父「安心しろ。お前がメールで送ってくれた写真のおかげで、あそこにはじきに捜査が入るだろう。もう大丈夫だぞ!」
麗「よかった!」
麗父「中村くん、君がうちの娘を助けてくれたんだね」
裕太「あ、はい!」
麗父「ありがとう、中村くん。君のことはずっと前から娘に聞いているよ。大学でお世話になっているらしいね」
裕太「いえいえそんな!俺はやるべきことをしただけなので!」
麗父「流石は麗が好きになった男だ。とても勇敢で素晴らしい!」
裕太「え」
麗「お父さん⁉︎ちょ、黙っててって言ったじゃない⁉︎」
麗が真っ赤になって弁解していると、辰哉がやってきた。
辰哉「晴翔に連絡したで。もうすぐで秘密警察の職員が来るらしいわ」
裕太「ありがとうございます。これでひとまず安心ですね!」
和泉「後で、あそこで何があったのか全てご説明します」
次々検挙されていく職員達を見ながら、ひかる達は安堵のため息をついた。