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さて、こんにちわ。或いはこんばんわ。今宵も月が綺麗な夜で。ところで皆様、イバラ姫、とはご存知ですか?別名眠れる森の美女。あるお城に王女様が誕生します。一歳満の誕生日には12人の仙女が招待され、お姫様を祝福します。けれど13人目の仙女は招待されなかったことを怒り、お姫様に呪いをかけてしまいます。ここからは、皆さんの知っている通りのお話でしょうか?でも、このお話は少し違っているんです。今回は少し違った、茨姫のお話。
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目次
『茨姫』1 ー 1
さて、こんにちわ。或いはこんばんわ。今宵も月が綺麗な夜で。ところで皆様、イバラ姫、とはご存知ですか?別名眠れる森の美女。あるお城に王女様が誕生します。一歳満の誕生日には12人の仙女が招待され、お姫様を祝福します。けれど13人目の仙女は招待されなかったことを怒り、お姫様に呪いをかけてしまいます。ここからは、皆さんの知っている通りのお話でしょうか?でも、このお話は少し違っているんです。今回は少し違った、茨姫のお話。
< 嫉妬 >
ある国の森の奥深くのお城のお話。そこには、とても美しい王女様と、心優しい王様が住んでいました。ふたりはとても仲が良く、召使い達にも心優しいふたりは心底周りから好かれていたでしょう。そんな二人の中に、ひとつの命が授かりました。それから時は経ち、ついにその命は産声をあげて生まれ落ちます。そう、女の子です。王様と王女様はとても喜び、召使いもそれはそれは大喜び。お姫様が一歳満になる頃には誕生パーティーが開かれ、その場は幸せな空間に包まれました。しかし、それをよく思わない者もまた一人。パーティーに招待した十二人の仙女の中に、一人だけ祝福しない者が現れたのです。
『茨姫』1 ー 2
彼女の名はアメリア。彼女は努力家で、毎晩修行に勤しんでいる若い仙女。昔から王女様と仲が良く、いつでも一緒に居るようなそんな女性。そんな彼女にも春が訪れ、歳の近い男と婚約。幸せの絶頂。そんな時発覚した、アメリアの病気。アメリアの身体はすぐに良くなるだろう、だが子供には恵まれないだろう。彼女を変えたのは、医者のたったそれだけの言葉だった。子供を一番に望んでいた彼女にとって、その言葉たちは残酷なものでしか無かった。そのお陰か、男には見捨てられ、城を出ていき小さな小屋で暮らしていた。そんな時、かつて親友だった彼女から招待状が届いた。嗚呼、何故貴方だけ幸せになっているの。
『茨姫』1 ー 3
パーティーは順調に進んで行き、最後に招待した仙女達からお姫様へ魔法の贈り物を授ける儀式が行われた。一人目の仙女は美徳を、二人目は美しさを、三人目は富を。人々がこの世で望むものをお姫様に与えた。ついに十二番目の女が贈る番に回ってきた。お姫様の顔を見た瞬間、女は目を丸くした。自分が何もかも上手くいっていれば思わないであろう言葉。今は目の前の赤ん坊が憎らしかった。周りが彼女の贈る魔法を待っている。
「...今から貴方は、私達の子供になる。」
彼女はお姫様に、そんな魔法を与えていた。
『茨姫』2 ー 1
< 奪い奪われ >
嫌な夢を見た。私の夫とその子供が、私の知っている誰かと幸せそうに暮らしているのだ。窓から光が差し込み、目が覚めれば儀式は終わっていた。王女様が居る場所はいつもとは違う、小さな小屋の中だった。彼女は飛び起き周りを見渡した。どうやら、城の傍にある小屋で眠っていたらしい。まるで、何かに隔離されたように。王女である自分がこんな扱いとは、彼女は怒って外に出た。すると、傍に居た兵士の一人が怒鳴り声を上げた。周りを見てみると、全員が自分を睨んでいる。嫌な予感がした、それと同時に彼女は一目散に城の中へと駆け込んだ。
『茨姫』2 ー 2
「アメリア…?」
私は目を疑った。かつて親友だったアメリアが、私の夫に肩を抱かれ、アメリアの腕には我が子が抱かれている。夫に向けられる冷たい視線に思わず目を背けたくなる。後ろから追ってきた兵士達は私を押さえつけ、強引に後ろに引っ張っていく。
「待って、!私はあの子の母親よ…こんな事をして許されるはずがない!」
私は必死に目の前の夫とアメリア、周りの兵士に訴えた。しかし誰も聞く耳は持たず、夫は呆れた顔をして口を開く。
「なんて女だ、昨日のパーティーをめちゃくちゃにして、それで尚自分がこの子の母親だと虚言まで...」
耳を疑った。私がパーティーをめちゃくちゃに、?それに虚言ですって?私は気力を失った。その後、私は兵士に抑えられながらその場を去った。最後に見たアメリアの顔は、悪意を持って微笑んだ顔を私に向けた。
…気持ち悪い、。
『茨姫』2 ー 3
私は諦めて牢屋に閉じこもった。もう何月経ったのか覚えていない。暫くすると、兵士が牢屋を開け、釈放だと森へ放たれた。この国では、王族に仕えるか仙女になるかしか女が生きる術は他には到底無かった。私は自身の力で生き抜くため、仙女へなる修行を始めた。
何年か経った頃、聞いた話では王様が亡くなったらしい。突然の病だったのだとか。その上噂で聞いたのは、当時のこと。話を聞いていると、どうやら私はアメリアに罪を被せられたらしい。なんて女だ…親友だと思っていたのに。
『茨姫』最終章 3 ー 1
何年かの月日を得て、私は不老不死の身体を手に入れた。正確には、少しばかり呪文を唱えれば、私は若い頃の姿を保てるような形になった。噂では、あの王族はもう長くはないらしい。ざまあみろ、私から全てを奪ったアメリアへの罰だ、そう思った。私は当時の優しい心を失ってしまった。今ではすっかり意地の悪い魔法使いその物だ。
『茨姫』3 ー 2
ある日、王族からの招待状が届いたらしい。何やら支度をして十二人の仙女は城へ出掛けて行ってしまった。私は招待状の手紙を読み、怒りを覚えた。それはお姫様の一歳満の誕生パーティーへの招待状だった。私はその手紙を読み、支度をすれば招待先へと足を進めた。何故私が呼ばれていないのか、それよりも私は昔の事を思い出して気掛かりでならなかった。
パーティー会場へ着き、会場は終盤の魔法を贈る儀式を行っていた。十二番目の仙女が魔法を贈り終えると、私は会場へと姿を現した。
『茨姫』3 ー 3
会場の視線が私に集まる。その半分以上が嫌な顔をしてこちらを見ていた。そんな視線を気にせず、私はゆっくり姫に近づいた。お姫様は私の顔を見ると、他の誰とも違う、笑いかけた顔をこちらに向けた。無性に腹が立った。自分に微笑みかけたその顔を、今すぐに潰してやりたいくらいには。そんな気持ちを抑え、私はある魔法を送った。
「貴方は永遠に眠りにつく。」
周りはそんな魔法などとは知らずに、掛けられた魔法は15になれば喉から針が出て死んでしまう魔法だ、等と好き勝手に言い放つ。眠っているだけだ、と会場に向けて声を出して笑う私。会場に響くのは、ザワザワとした人々の空気と、私の笑い声のみ。そう言えば、私の名を名乗っていなかったな。マレフィセント、それが私の名だよ。
初めましての方は初めまして、mと申します!この度は『茨姫』最終章までご覧下さりありがとう御座います。最後の話、どうだったでしょうか。素人ながら伏線回収は出来たのでは?と思っております。日本語が可笑しな所があると思いますが、暖かい目で大目に見てやってください。感想やリクエストなど、コメント、ファンレターなどで募集しております。皆様、素敵な一日を。