その名の通りです。
歌詞パロなど、シリーズにならない単話詰
たまにNLが混じりますが、その場合は題名に書いてあります
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目次
きゅうくらりん 歌詞パロ
「ちゅうやぁー」
「ンだよ、太宰」
私は君の名前を呼ぶのが好きだ
返事が返ってくることを確かめる度に、心が暖かくなる
私はこの感情の名前がよくわからない
少し違うが、似たような感情を、私は他の者にも抱いたことがあった
殺さずのマフィアを貫こうとした彼を思い出す
(似たような、ということは、君も彼のように私の手からいなくなってしまうのかい?)
ああ失うのが辛いな
ふと、そんなことを思った
「? 如何したんだよ?」
気がつくと、目の前に中也がいた
「ううん、何でもない」
笑って見せると、彼はまだ怪しんではいたものの一先ずは置いておいてくれた
何時もはいらないところまで突っ込んで来る癖に、こういう所だけは空気を読む
ねえ、中也。私は君のことが多分、好きなんだ
陽の光を思わせる髪の色も、昊を映した瞳も、悪態をつく唇の端まで
君のその瞳を、手を、哀しみで歪ませてしまったら
君にこんな感情を抱いてしまった罰を受けるから
マフィアなのに、甘さを捨てきれない
そんな君は柔らかくて、離れ難い
腕をそっと背に回す
彼方もおずおずと首に手を回してきて、笑みが溢れた
(いつか罰を受けるから──今は、一緒にいて欲しい)
理由もないけれど、泣きたくなるようなこの感情
暖かいなあ、そんなことを思いながら、私は《《瞼を開いた》》
先程までの情景と感覚は、跡形もなく消え去り、目の前には白と黒の二人の顔があった。
私としたことが。
軽く白昼夢を見ていたようだった。
幸せで、憎悪で殺したくなるほどに贅沢な何処かの私。
さあ、これが今回の目玉。
《《此処の》》私の一世一代の見せ場だ。
意識を失う前、一瞬だけ、何時もより澄みきった空が見えた。
眠り姫です
珍しく恋愛ものかきました。
といっても作品数が少ないので何ともいえませんが
きゅうくらりん聴いてて思ったんですよ、最後のところで。これを。
自分で書いといてなんですが……つったない文だな!!真面で!
では、こんな拙い文を読んでくれたあなたに、幸福が届きますように
感電 歌詞パロ
太中か、双黒か……
つまり、ラブかブロマンスか……
まあどっちでもいけるよね!
という乱暴な結論から生まれております。
この時点で「あ、無理」となった人は、ここまで見た証拠をを虫クンの異能力のように完璧に消してもらって、そっとブラウザバックしてください
(与太話ですが、MIU404良いですよ!アンナチュラルも、ラストマイルも!面白かったなぁ……)
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眼下に光が溢れる街を見下ろす。
何時もは煩いとまで思うこの情景だが、今は相応しい。
血の様に紅い液体で満たされたグラスを揺らし、その官能的な香りを深く吸い込んだ。
特別な時に開けると決めていた此の葡萄酒も、今日は全く惜しくはない。
太宰が消えた。
ポートマフィア五大幹部の一柱にして双黒の片割れ。
マフィアでは太宰が何の痕跡も残していない事に騒然としていたが、当たり前だろう。
あの太宰がそう簡単に尻尾を掴ませる筈が無いのだから。
太宰から解放されたという喜びと、彼奴への祝福を込めてグラスを傾ける。
嬉しさに満ち満ちている筈なのに心の何処かで隙間風が吹いた気がした。
何故? 別に半身を無くした訳でも無いと云うのに。
隙間風にそっと蓋をして、俺はグラスを傾けた。
それから四年が経ち、其の中で俺は五大幹部と成っていた。
俺の生きる場所は今も、此の昏く輝く夜の世界。
光の、薄暮の世界を生きているらしい彼奴の真逆。
時折、此の胸を風が吹きさぶる事がある。
倫理も、肩書きも、世界も、何もかもを取っ払って2人で瓦礫の中笑い合っていた時が懐かしい。
誰にも、其れこそ梶井や広津にでさえ漏らした事は無いが。
たった一瞬の この|思い出《きらめき》を。
食べて、食らい尽くしていたい。
願わくば、二人で。そして|模様《おれ》が消えてしまうまで。
できることなら、きらめきを重ねていたい。
けれど、思い出は引っ張り出さないから思い出なのだ。
記憶の中では、俺たちは相棒として、輝きを失わないままだった。
重力も何も関係ない、光のように駆け抜けて行きたかった。
太宰、手前は如何したかったんだ? なんて。
死んでも訊きたくない。
如何にも苛つきが収まらずに目を瞑る。
疲れているのかも知れない。
今は地下に潜っているばかりだ。
だが、其れとは関係なく、何かが欠落ている様な感覚を覚える。
(当たり前か……)
友人は死に、裏切り、私の隣には誰も居ないのだから。
けれど、何故だかそれだけが理由ではない気もする。
一瞬だけ、不愉快で堪らない男の顔が浮かんだ。
全く、折角マフィアから抜けたと云うのに、彼方の事を考えていては駄目ではないか。
馬鹿みたいだと自嘲し、自分に喝を入れる。
私は友人曰く、幾分か素敵だと云う光の世界で、生きるのだと決めたのだから。
それから四年。
ポートマフィアの地下牢で再会した彼は全く変わって居なかった。
揶揄って、喧嘩を売って、買って。
昔と同じ様な感覚に喜びを覚えた。
昔から、彼と関わっている時は飽きなかった。
此の魔都ヨコハマから、ポートマフィアの肩書きから抜け出せる様な感覚がしたから。
殲滅の時の高揚感、終わった後の安堵、言い争う時の愉しさ。
あの満たされた様な感情は何だったのだろう。
その感情は心臓を、刹那に揺らすもの。
けれど、追いかけて指が触れるその瞬間に、いつも消えていってしまう。
きっと永遠のものが何処かにはあるのだ、と希望を持つのもいいかもしれない。
けれど、そんなのは自分らしくはない。
ただ、夜を振り返りながら。水に浸かりながらいる方が。
何倍も“私”らしい。
けど、この満たされない感情は何なのだろうな。
稲妻の様に生きていたいだけ
手前は、君は、如何したい?
返事はいらない
眠り姫です!
ここまでを読んでくれた貴方に、心からの感謝とここからの注意書きです。
ここから私の妄想です。若干腐ってるかもしれませんが、其のつもりはないです。
もう一度言います。私の妄想です☆
嫌な方はUターンを!
この二人について、本軸でも、CPでも、お互いに「世界で一番嫌いで、気に食わなくて、けれど、自らの唯一無二」だと思っています。
鯖さんは、頭脳派で、計算高く、生に意味を見つけられない人間失格。
蛞蝓さんは、肉体派で、直感的で、とても人間らしい(本人曰く)“模様”
二次創作では、鯖さんは偽善、蛞蝓さんは偽悪と描かれ、そこが気に食わないとされることもしばしばです。
けれど、正反対だからこそ憧れる点や、認められる点もあるのではないか。
それが、私の考え、「世界で一番嫌いで、気に食わなくて、けれど、自らの唯一無二」の理由です。
勿論、似ているところも結構あるのです。
(ここ迄シリアスめいた事を書いてますが、CPでは恋愛ほのぼの系も好きです。というか、ほのぼの系を主に摂取しています。じゃなきゃ糖分が少なくなってしまいます!)
一方、BEAST軸です。
あの中で、鯖さんは蛞蝓さんに何一つ明かすことなく、明確な上下関係と心の距離をそのままに、織田作のために(私の中では自分勝手に分類していますが)自殺しました。
蛞蝓さんは、その後心を壊したかの様な振る舞いをしています。多分。(太宰?誰だ、とか言っていた気がする)
ちなみに、あの世界線でストブリが発生していない説を、私は推しています。
16歳で経験するはずだった出来事たちをすっぽかして成長していったなら、本軸の様な、「殺してしまいたいくらいに嫌いだけれど、躊躇いなく背中を預けられる仲」にはなれないのでは、と思っているので。
(太宰を拾った日をまだ読んでないんですよね。sideBからの話が書けない……)
本軸では、黒時代の間、最終的には地位の差はついていますが、多分変わらずに煽り、喧嘩しあっていたと思います。
喧嘩するほどなんとやらと言いますが、二人の場合は「喧嘩するほど信じてる」のでは、と思います。
デップルとかもそんな風に思っています。(私は、ですよ。私は! ですから!)
さて、ここまで二人の違いと関係についての私の妄想をひたすら書き連ねてきました。
一寸3次元の二人についても書きます。(怒られるかな……)
お二方の初対面は、太宰さんが同人誌、「青い花」の刊行を友人(中原さんも含め)と行うことになり、その祝宴的なものの時です。
中原さんはそれはそれは酒癖が悪かったそうで、その日も太宰さんに絡み始めたそうです。
中「青鯖が空に浮かんだような顔しやがって」
中「お前はなんの花が好きなんだい」
太「……モ、モ、ノ、ハ、ナ、」(泣きかけ)
中「ちっ、だからおめえは!」
その後、太宰さんは中原さんの事を「蛞蝓みたいにてらてらした奴」と拒絶するようになりました。
ちなみに、青い花は結局それきりになりました。
しかし、太宰さんは、中原さんが30歳の若さで亡くなった後、こんな事を云っています。
「死んで見ると、やっぱり中原だ、ねえ。段違いだ。立原は死んで天才ということになっているが、君どう思う? 皆目つまらねえ」
嫌っていた割には才能を認めている、というのが史実なようです。
文ストも、それをモデルにしているのならばそんな感じなのかもしれません。
本編、今後どうなるのでしょう。
125.5話が出たばかりですが、旧双黒やゴゴリにシグマが心配です(2025/10/6)
楽しみです!
Aでもなく Bでもない
ほんのり太中
織太は意識してないです。原作(notアニメ)ぐらい。
・
海に面したベンチの前──『人は、父親が死んだら泣くものだよ』
外交官の家の前──『そうだね、其の通りだ』
偶然通った場所──『一寸傷付いた……』
ぼんやりと散歩した港──『強くなったね』
この声は、物心ついた時には存在していた。
行った覚えのない言葉が、自分の声で、頭の中に響く。
最初は、死のうとしても、死にきれないストレスからくる幻聴かと思ったが。
少々訳が違うらしかった。
気まぐれに通った場所からでさえも聞こえてくるこれは、不可解で仕方がない。
私──太宰治の酸化した世界を、その世界たらしめる不愉快かつ一番の要因。
──嗚呼、まただ。
頭を刺す様な一瞬の痛みの後、自分の声が響く。
『失うわけにはいかない』
『君は僕の犬なのだから』
『生きるなんて行為に、何か意味があると、本気で思っているの?』
(!?)
何が、何が起こった?
そんなことを考える間にも、沢山の声が響く。
こんな風に複数の自分の声が一度に聞こえることなど、これまでは無かった。
そして、何よりの違和感は……
『ねえ、 』
『一寸、 』
抜け落ちた部分があること。
これまでも何度かあったが、こんなにも落丁が多いのは初めてだった。
何かの人の名前。
それは分かる。
たかが名前。されど名前。
其の空の名前は、私の心を惹きつけるには十分すぎるものだった。
---
空の名前を知ってから数週間。
私はまだ、その正体を掴む事ができていなかった。
基本的にはどんなものも少し調べれば分かるものだが、今回は難しいらしい。
ため息を吐きつつ本のページを捲る。
私が読んでいるのは、ある小説だった。
作者は、新進気鋭の若手作家。
ある元暗殺者を取り巻く周囲と、その死を描いたものだ。
デビューしたてだというのに、本屋大賞を獲得した作品でもある。
この本は、少々不思議な構成をしていた。
中には、二つの章が存在する。
出てくるのは同じ人々。
ただし、立ち位置がまるっきり違う。年齢も違う。
まるで、一つの世界のパラレルワールドを描いている様な作品だった。
そして、何故か──
私は、この話を知っている、と思うのだ。
読んだ事がある、とかそんな易しいものではない。
経験した、と思ってしまうのだ。
この本を読み始めて、そしてあの日、一度に大量の声を聞いてから。
私はひどく鮮明で、記憶に残ってしまう夢を見る様になった。
出てくるのはいつも、同じ人々。
私たちがいるのは、いつも同じ場所。
年齢は様々。
最初のうちは訝しみながらも、興味深く感じていた。
けれど、流石に混乱する。
ある時、自分の中で消えていったと感じた温度が、翌日には息をして笑っている。
幼かった人物が、次の夜には壮年になっている。
何より──
夢で死んだはずの自分が、息をしている事。
死ぬシチュエーションは様々だった。
幼い頃に、黒い組織に捕まって死亡。
誰かに、ナイフで胸を突かれて死亡。(自分も相手に刺していたが。)
水の中、静かに沈んでいって死亡。
死亡、死亡、死亡、死亡。
幾つもの死に気が狂いそうになりながらも。
自分の死を見た世界は、死を見たその時から、その世界を見ることは無くなっていって。
気づけば、残りの世界は二つになっていた。
そして、それは何の因果か。
今、ページをめくっている本の世界二つにそっくりな世界だった。
名前が一致しているわけでもない。
だが、その《《世界》》が、そっくりだった。
この不可思議な事象を、究明してくれる人物はいないものか。
──いや、いる。
この、作者。
彼に、聞いてみれば良い。
笑われるかもしれない。けれど、何も行動しないよりかはマシだった。
---
それからまた数週間。
家のポストを覗くと、茶封筒が一つ入っていた。
もしや、と高鳴る胸を押さえながら、宛名のところを見る。
『太宰治様 織田作之助』
あの作者からの返事だった。
私は急いで家の中に入ると、震える手で封筒の口に刃を沿わせる。
畳まれた便箋を開く動作でさえもがもどかしい。
やっとのことで開くことのできた便箋には、規則正しい文字が綴られていた。
『拝啓
金木犀が香る季節となりました。
この度は、お手紙有り難うございました。
私の書いた小説が、誰かの心を動かしたとは。小説家冥利に尽きます。
そして、お手紙の中で告白なさった事柄に関してですが。
私は実のところ、とても驚きました。
まさか、同じ様なことを経験している方がいらっしゃるとは思いませんでしたから。
太宰様は、自分の言った覚えのない言葉が聞こえる、と仰られましたが、私は他人の声が聞こえます。
私にとっては、主に文を書いている時に聞こえてくるものです。
手紙の中で、こんなことを書いても良いものか、と思いますが、実は、私の恥ずかしい初作や、それに連なる話の登場人物たちはその《《声》》の持ち主たちをモデルとしています。
太宰様が、共感を私の初作に得られたのならば、私と太宰様が知る声達は、同じ世界のものなのかもしれません。
しかし、私に分かるのはそれ迄です。
偶然というものは、時に未来を見据えた様なものがあるのですね。
そうこうしているうちにも、また《《声》》が聞こえてきました。
私が生来口下手な性故に、こんなにも短い手紙となり申し訳ありません。
太宰様の今後のご多幸をお祈り申し上げます。 敬具
令和◯◯年◯月◯日 織田作之助
太宰治様』
「……ッ」
心が震えた。
笑わずに、真剣に返してくれたということもだが、何よりもこうやって手紙のやり取りをする事ができた、ということに《《私は》》歓喜していた。
何故こんなことに喜ぶのか、気を抜くと泣いてしまいそうになるのか。
またわからない事が増えてしまった。
嗚呼、また聞こえる。
とうとう家の中でも聞こえる様になったらしい。
『悔しいことに、薄く切って醤油で食べると、ものすごく美味しい』
『君をここに招いたのは──』
全て同じ人物に話しかけているらしい。
『さようなら、──』
『今はそれだけが──少し、悔しい』
この日、私は初めてそれらの世界に出てくる人物の名前を知った。
そして、この日の夢を境に、見聞きする世界は残り一つになった。
---
その日から、私は見聞きする世界の人物たちの名前を知る事ができる様になった。
そして、少しずつ容姿も結びつく様になった。
あの作者が、私の友人であり、最初に知った名前の持ち主であることには心底驚かされた。
けれど、まだ名前のわからない人物が一人いる。
私が最初に気がついた、声の落丁部分の名前の持ち主だった。
薄暮の色の揺れる髪に、昊の色の瞳。
私よりもかなり背が小さくて、粗野で、けれどもどこか優雅な。
『 』『 !』『 ……』『 』『ッ !』
『太宰』『手前ッ……』『太宰!』『ケッ 言ってろ!』『太宰……ッ…』
歩くたびに聞こえてくる。
君は誰?
何処にいる?
君は、私の何だったの?
夜な夜な見る夢はまだ続いている。
聞こえる声も増えている。
あの世界の私は、この世界の私と同じ様に、まだ死んでいない。
死んでいないのなら、まだチャンスは潰えていないという事だ。
(いっそのこと、織田作の様に現実で知る事ができたら、早いかもしれないのだけれど)
落丁に気づかせられてから、私に自殺する気を起こさせない不思議な君は、何者?
落丁が埋められたら、私のこの空虚な気持ちも満ち足りるのか?
応えてくれる人は、まだいない。
end……?
・
眠り姫です
私に問いたい。
短編とは。
力尽きました。
多分この後、コンビニだかキャンパスだかで(入れたら終わらなくなるので入れてませんが、大学生くらいです多分)会って色々あるんだと思います。私は脳が若干腐ってるので、あれですが……。
ほんのり太中と言ったのは、双黒として読むにはだざむの執着が強いかな、と。
タイトルについてですが、これは「太宰を拾った日」のsideA、sideBから持ってきました。
Aでも、Bでも無い、異能の存在しない現代社会、ということで。
side何 何だろ sideX ということにしといてください笑
(2025/9/15あとがき加筆)
ビーストでだざむが「織田作が小説を書いているのはこの世界だけだ」とか何ちゃら言っていましたが、私は、それは「織田作と太宰の道が濃く交わる可能性を秘めた上で」という条件があるように思います。この世界では、小説家といちファンという関係が、友人になることはない。そういう設定で呼んでください。
では、ここまで読んでくれたあなたに、心からのありがとうを!
文ストワンライ詰(BL)
ワンライ系です。深夜じゃないけど
リハビリするはずだったのに、お題が彼らすぎてリハビリにならなかった。ちなみに全部一発で出たやつ。
・
①芥敦版深夜の真剣文字書き60分一本勝負
本日のお題は「黒」です。制限時間は60分。(https://shindanmaker.com/719301)
(黒いなぁ)
月もない夜、闇の中へと溶けていく背中を眺めながら思った。
まあ、職業がヨコハマの夜を守るマフィアな上に、異能も「黒獣」とか呼ばれている彼奴なのだから当たり前ではあるのだが。
今日はポートマフィアとの共同任務だった。
作戦の指示をインカム越しに聞きながら背中を彼奴に預けて戦った。
少々厄介な敵がいて、月下獣羅生門を使う羽目になったのだが。
その時に見た彼奴に、一瞬だけ驚いたのだ。
闇の中、少ない明かりに照らされた、真っ白な|寛衣《ブラウス》。
共闘することの増えた今となっては見慣れた光景であった筈なのに、今日だけはそれに目を奪われた。
最近は見ることがなかったからだろうか?
その姿に、数ヶ月前の船上での闘いの姿が重なって。
一瞬だけ、恐怖を感じた。
けれど、その後再開した時の、変化した彼奴を思い出して。
安心したと同時に、最初の言葉が頭に浮かんだのだ。
彼奴は黒い。姿も、異能も、居る場所でさえも夜の中だ。
もしかしたら腹の中まで黒いんじゃないか、とか思うこともある。
彼奴のことを、魂まで黒いんじゃないか、とか云う奴もいるだろう。
彼奴自身でさえもそう云うかもしれない。
けど、僕はそうは思わない。
ここまで言っておいて可笑しいかもしれないが。
けど、彼奴の本質は黒一色では決してないと思うのだ。
それこそ、外套の下が新雪のように真っ白であるように。
顔の横のの毛先が、まるで絹糸のようにきらりと光るように。
彼奴は、人を殺すだけの兵器じゃない。
この数ヶ月で、彼は“人を殺さないこと”を知っているのだから。
僕は、彼奴の優しい面だって知っている。
妹さんのことを話す時に少しだけ柔らかくなる表情。
部下のことを話す時の、ほんの少しの心配。
こんな面を見せる彼奴が、何もかもを闇に堕とした黒な訳がない。
誰がどんなに彼奴を「禍々しい黒色」と云ったとしても、僕はこう云うだろう。
一見黒に見えても、それは白の混ざった、美しい墨色だと。
② 太中は ” 信愛 ” をテーマに ” キスしている ” 作品をつくってみましょう(https://shindanmaker.com/721751)
※映画DEAD APPLE捏造
「一寸、少しは起きたらどうなの」
少しずつ晴れてきた霧の中、そう云って彼を揺さぶってみるが反応はない。
霧が晴れるまではここにいる心算ではあるが、こうも近くで無防備になられると少々障りがある。
(周囲も見えるぐらいにはなってきたなぁ)
風にふわりと揺れたその鉛丹色を撫でる。
その感触に、先刻の空中での出来事を思い出した。
『ああ、信じてたさ。手前のクソ忌々しい程の生命力と悪知恵をな』
仮死状態と云える状態だった私は、彼が私を殴ったことによって(間接的にだが)目覚めた。
彼はそう云ってはいたが、私のことを信じていてくれているのだろう。
実際にそうだし、私がそれを違えたことはないのだから。
けれど、私がその“信愛”以上を抱いていたとしても、それは変わらないのだろうか。
変わらないのならばそれで良い。だが、変わってしまうのならば。
それだけが柄にも無く怖くて、私にしては珍しく、抱え込むなんて真似をしている。
本当なら、私は彼に触れたい。
そうする必要が無くても、ただ、伝えるために触れてみたい。
その碧い目を、自分で満たして欲しい。
その手が愛情を持って触れるものを、私だけにして欲しい。
こんな無防備な姿を、他のものには見せたくない。
死にたがりにしては珍しく、欲まみれだ。
(私らしくないなぁ)
そうだ、この霧の所為にしてしまおう。
殺されかけた所為にしてしまおう。
そうでもないと、この言葉は“私”には到底口に出せないものだから。
「────」
そう云って私はまた、その髪と頬に触れた。
暖かく柔らかなそれをもう少し自分だけのものにしていたいけれど。
(時間かな)
霧が晴れた。
周囲の惨状が明らかになると同時に、空気もまた、殺伐としたものに戻ってしまったようだった。
私は脚に乗っていた頭をそっと退かすと立ち上がった。
地面にみっともなく横になっている彼の体を塀にもたれかけさせる。
彼はまだ目覚めない。
ほんの少しの出来心だった。
「……」
初めて自分のそれが触れた場所は、滑らかで暖かかった。
当の本人は、自身の鼻に当たった柔らかい感触に気づきもしないだろう。
それで良い。それが良い。取り敢えず、今は。
「いつかは唇にしたいなあ」
その呟きは誰にも拾われることなく消えた。
(愛してるよ)
③芥敦のお題
「っは〜〜〜〜〜〜もうお前嫌い!!!」
この台詞をベースに作成してください。
(https://shindanmaker.com/1179446)
※付き合ってる
※芥川を龍呼びしてる
「龍」
「……」
「龍之介」
「厭だ」
「……芥川」
「ッ……厭だ」
ここまで云ってもしないならば仕方ない。
叱るしかないだろう。
「だぁっっっっっもうっ! ご飯食べろって云ってるだろ!」
彼は僕の大きな声に体を縮こませたものの、スッと目を逸らしただけだった。
話は少し遡る。
最近龍之介は遠方へと出張に向かっていた。
今日はその帰宅日。
仮にも恋人であるのだから会いたいと思うのは当然だろう、と云うことで。
不殺チェックもしつつ、彼のセーフハウスへとやって来たのだが。
痩せている。
どう見ても、痩せている。
否、此奴が痩せているのは元々なのだが、それ以上に細い。
痩せこけていると云うわけではない。だが、食べていないのが丸わかりだ。
そんなこんなで、今僕は恋人を床の上に正座させているのである。
「彼方でどうしてたんだよ! 全然食べてないだろ!? 真逆1日を無花果一個で過ごしたとか云うなよ!?」
そう一気に捲し立てると、ぼそりと「一応ヨーグルトも食べた……」としたの方から聞こえる。
ほう、此奴にしては食べるようになった……じゃなくって!
「それでもカロリーになるもの食べてないじゃないか!」
ヨーグルトと無花果って。
なんだ、此奴。女子高生か?
二十歳の成人男性だろ?
「あ〜っもう! それだからこんなに顔色悪いんだよ! 銀さんや樋口さんたちに心配かけて良いのか!?」
そう云うと、ぐっと言葉を詰まらせて罰の悪い顔をした。
大切な妹や部下の名前を出すと、比較的大人しくなる。
このことは付き合って最初の頃に知った。
(食べさせろって云うのは実は中也さんからも言われてるんだけど……)
上司の名前を出すのは最終兵器でも良さそうだ。
「ご飯は食べないと体力つかないし、頭も働かないんだよ。治る病も治らないし。僕は龍之介に元気でいて欲しい」
そう云うと、罰悪そうに顔を俯かせた。
(効いたか?)
そう思って僕が台所に立ち去ろうとすると、彼が突然口を開いた。
「だ、だが!」
反論する気配を察して僕が睨みを利かせようとすると、此奴は予想もしなかった言葉を口にした。
「味がしないから……」
「味がしない?」
どう云うことだろう。真逆、味覚障害か? だったら危ない。
そうだとしたら与謝野先生に相談しよう、と歩み寄った時、此奴は爆弾を落とした。
「敦が作ったもの以外は味がしない……」
その言葉に数秒間フリーズする。
「っは〜〜〜〜〜〜もうお前嫌い!!!」
そう叫んだ僕は悪くないと思う。
・
どうも眠り姫です!
あとがきつっても書くことあんまないな……
シリーズの方で芥敦がかける気がしなかったため、練習用に書きました。
でも太中も混ざってますけど。
では、読んでくれたあなたに心からの感謝と祝福を!
文ストNLワンライ詰(not BL)
16巻と20巻のネタバレがあります。
ですがそれ以降のネタバレはありません。
NLです
一切腐っていません
①乱与版深夜の真剣お絵描き60分一本勝負
乱与版深夜の真剣文字書き60分一本勝負
本日のお題は「居場所」です。制限時間は60分。
https://shindanmaker.com/719301
今日は、あの人の命日だった。
妾に蝶をくれた人。正し過ぎる、と遺した人。
あの人が死んだのは、戦争のせいで、政府のせいで。そして何よりも妾のせいだった。
“死の天使”
周りから見れば妾は|死をもたらす天使《ヘルスケア・シリアルキラー》だったのかもしれない。
否、そうなのだ。
人から死という権利を奪い、精神を死に追い詰めた。
そんな妾は存在する価値すらないと、そう思っていた。
妾は、消えてしまいたかった。
けれど、それは今は全て過去形。
忘れてはいけない。けれど、引き摺られてはならない。
妾の居場所は|武装探偵社《ここ》。あの島ではない。
異能は、記憶は、使役するもの。使役されてはならない。
生きなくてはならない。胸を張って、恥じないように、2度と同じ過ちをしないように。
そしてそれを教えてくれたのは──
「よーさのさん! お菓子買って!」
横で楽しそうに笑う乱歩さんを見る。
妾に、もう一度|蝶《ほこり》をくれた人。|天使《いのう》を必要としないでくれる人。
「ハイハイ、しょうがないねェ」
「やった」
ふんふん、と鼻歌交じりに歩く名探偵。
妾にとっての|止まり花《いばしょ》は、この人だ。
② 立銀のお題
「重ねた傷跡を夢と呼ばせて」
この台詞をベースに作成してください。
https://shindanmaker.com/1179446
兄さんの葬式を行った翌日。
私は首領に呼び出された。
聞けば、黒蜥蜴十人長立原道造は猟犬の間諜だったらしい。
それから、私はどうやって自室に戻ったのか、覚えていない。
真逆。
そう思った。
だって、あんなに子供っぽくて。
だって、あんなに優しくて。
だって、だって。
色んな否定が浮かんだ。けれどもそれは全て、カモフラージュの一言で済ますことができてしまう。
次に出会ったら、殺せ。
私に首領が伝えたということは、そういうことだ。
できるだろうか。
否、できまい。
心ではそう思う。
けれど、私は手練れ。心の震えなど、手には伝わらないように訓練してきた。
きっと、あい見えた時にはその首筋に刃を当てることを躊躇いなくできてしまうだろう。
「っ……っふ……うっ……」
自室でぺたり、と座り込んでしまう。
口から嗚咽が漏れてしまう。
耐えなくては。もう、背に手を当てて支えてくれる人たちはいない。
兄さんは死んだ。
昨日、兄さんの葬儀の後にただただ座り込む私を、優しく抱きしめてくれた人は、間諜だった。
あんなに面白くて、優しくて、そして頼りになったのに。全ては偽りだったのか。
何度も何度も、共に重ねて治してきた傷たちは、全て嘘だったのか。
嘘じゃなくて、夢だったなら。
全て、《《現実に起こったこと》》ではなくて、《《夢現の中で見た幻》》なら。
この胸の苦しさなど、少しも無かったろうに。
「重ねた傷跡を夢と呼ばせて」
そうしたらきっと、胸を締め付けるこれは、共に夢となるから。
床にパタリと、雫が零れた。
どうも眠り姫です!
私は実はこの二つのNL(HL)が好きなんです
私は多分、一個の世界でカプを作ると、それ以外も欲しくなるんですよね……
最初は太中、そこから芥敦、乱与、立銀、ホーミチェ。実は織安も好きです。
まあそれはさておいて。
太中・芥敦短編集と銘打っておいて、NLってどうなのよ!
題名にしっかり入れていますので、どうかそこは目を瞑ってください……
ここまで読んでくれたあなたに、心からのありがとうを!
文スト数年後妄想
ト書き(台本風)です
メモ書きの集大成みたいなものです
かなりの妄想の産物です
キスも何もしていませんが、性的関係をチラッと匂わせる描写が最後の方にちょこっと、少しだけ出てきます。(ハグ程度)
それでも良い方は、どうぞ。
また、縦書きでも見れるようにしています。
・
太中 太宰の旅立ち
中也の家。
夕食をせびる太宰に、中也がキレながら用意する。
中也「ん」
太宰「わー! パスタ?」
中也「残さず食えよ。……味の素はかけんじゃねェ」
二人にしては珍しく、穏やかな時間。
夕食も消え、太宰がソファに寝そべっている。
その傍で中也が本を読んでいる。
突然、太宰が口を開く。
中也、目を本からあげ、本をテーブルの上に置く。
太宰「四年前、ちゃんと『行ってきます』聞いてくれてありがとうね」
中也「……」
中也、その話か、と思い視線を外す。
中也「車の爆破はやりすぎだろ」
太宰「ごっめーん、つい!」
中也「つい、で済む話じゃねェッ!」
てへぺろ、とあざとい表情で返す太宰。
中也はそれを半目開きで睨むと、そっぽを向く。
中也「……『ただいま』にも返してやったろ」
再開した時の地下牢での《《仕込み》》のことだ。
そっぽを向いているが、少し恥ずかしそう。
太宰、それを見て微笑む。
太宰「(微笑)そうだね」
沈黙。
太宰が緊張したように、手を握ったり開いたりしている。
中也、気づいているが何も言わない。
結局言おうとしていたことは言わずに、違うことを言う。
太宰「ねえ」
中也「何だ」
太宰「これからだって。『行ってきます』ちゃんと聞いてね」
中也「……おう」
その日はいつも通り。
何となく夜が更け、いつもと同じような過ごし方をする。
数日後。朝。
中也、サイドテーブルに置かれた高そうな箱が目に入る。
自分が置いた記憶はない。
人を呼んだ記憶もない。
警戒しながらもそれを手に取り、開ける。
中也「ははっ……(まじか)」
呆れた笑いだが、表情は嬉しそう。
箱の中には、真新しいチョーカーが入っていた。
プラチナ色のバックルに施された装飾が美しい。
中也、大切そうにそっと触れる。箱の底にはメモがある。
メモ『À bientôt.』
中也「(苦笑)また会うのかよ…………(小さく笑って)Bon voyage.」
---
芥敦 不殺の約束
どこかのひらけた土地。戦闘の後が色濃く残る。
敦「このままだと死ぬよ? 僕も、お前も」
芥川「……」
二人とも、すでにぼろぼろ。元から瀕死に近い。
芥川は羅生門を敦の首筋に当てている。
対して、敦は爪を芥川の喉元に当てている。
敦「……芥川」
芥川「僕は……この時を待ち望んできた」
敦、静かに頷いて。
敦「そうだな」
芥川「この羅生門に命を下せば、貴様を亡き者にできる」
敦「ああ。多分、僕の爪よりもお前のほうが早いだろうからな」
淡々と返す敦。ゆっくりと爪を下ろす。
敦を見て芥川は苦しげに眉を寄せる。
芥川「だが、何故僕はこの羅生門を動かせぬ!?」
敦、静かに芥川に目を合わせる。
芥川「此処で貴様を倒せば、己が強いという何よりの証拠に……! 太宰さんに認められる何よりの……! っ……!」
焦燥感を滲ませるが、やはり芥川は羅生門を動かせない。
苛立ったのか一度羅生門を引き、一気に当てようとする。
だが、それも寸前で無意識に止めてしまう。
敦「……」
芥川「……何故……僕はこうも弱いのか」
芥川、俯いて独り言のように呟く。
敦、それにやっと口を開く。
敦「弱くない」
芥川、俯いていた顔を上げる。
敦「お前は、弱くない。この僕がいうんだから、間違いない」
芥川「だがっ! 現に僕は貴様を殺せていない!」
敦「それが、弱くない証拠だ」
芥川、驚いたように敦を見る。
此処ではじめて、本当の意味で目が合う。
芥川は敦の目にびくりと肩を揺らす。
敦「人を無闇に殺すことじゃないことを、知ってるんだ。殺すことを、躊躇うように……って、なんか上から目線だな」
敦、軽く笑う。芥川、毒気を抜かれたように呆然とする。
敦「提案があるんだ」
芥川、敦に目で問いかける。
敦「不殺の約束を、改めよう。六ヶ月じゃなくて、どちらかが死ぬまで。どちらかが瀕死の状況になったら、とどめを刺しに行く。どうだ?」
芥川「(困惑して)……」
敦、その反応に慌てる。
敦「別にこれがずっとの契約じゃなくって良い。そうだ! 毎年此処にきて変えていこう。その時の僕らに会うように」
少しの間沈黙が流れる。
敦、緊張した面持ちで芥川を見る。
芥川「(呆れたように)貴様らしい愚かさだな。……だが、よい」
芥川、羅生門を消す。
敦、首から消えた緊迫感に呆気に取られる。
芥川「その契約、受けてたとう」
芥川、いつも通りの余裕ある風体で敦を見る。
敦「(吹き出して)何でそんな上から何だよ! ……わかった、相棒」
芥川「(ジト目で)やはり破棄したくなってきた……」
敦「何で!?」
二人一緒に歩いて行く。
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一、二年後 探偵社の小さな騒ぎ
乱歩「ねー、国木田。テレビ借りて良い?」
国木田「良いですが……。どうされました?」
乱歩「ちょっと面白いものが見れそうだからさ!」
乱歩、テレビをつけて、目当てのものを流す。
テレビ「紛争地やテロ予告のあった都市にいつのまにか現れては、人と未来を救い、消えて行く……ネットではBlackと呼ばれ、ファンも続出する謎の人物。……クローズアップNow。今日は、Blackと呼ばれる謎の人物に、迫ります」
有名なテレビ局の特集。
ナレーションとともに、どこかの停戦地の映像が映る。
テレビ「此処は〇〇国〇〇地方。つい二ヶ月前まで、紛争の続いていた地域です」
ゆっくりとテレビの中のカメラが動く。
瓦礫や、子供たちを映す。
風景はかなりの惨状だが、子供達の表情は何故か明るい。
その時、テレビが何かを映しだし、乱歩が笑い出す。
乱歩「ぶっ! あはっあははは! んふふふ」
笑いが止まらない、と言った様子でソファに寝転ぶ乱歩。
何度も同じ場所を再生する。
それが気になり、与謝野もテレビを覗く。
与謝野「どうしたんだい乱歩さ……ふは! こりゃさいっこうだ! あははは」
与謝野も腹を抱えて笑い転げる。
古参二人の有様に、他の探偵社員たちもテレビに群がる。
ぱりん、という音がする。
国木田がメガネを破って、ふらりと床に倒れてしまった。
そんな社長の有様を気にもとめない社員たち。
全員あっけに取られている。
乱歩によって、同じ場所が再生されているテレビ。
見たものの反応はさまざまだ。
潤一郎「……へっ!?」
ナオミ「まぁっ!」
賢治「あっ!」
鏡花「……うわぁ……(信じられないものを見る目)」
敦「……えぇえっ!?」
テレビには画面端の気づくか気づかないかのところ。
そこにギャルピをして笑う太宰の姿が映っていた。
敦「……太宰さん……(あなた何やってるんですか……)」
その時、足音もなく後ろから声が聞こえる。
太宰「呼んだ?」
一同、声のした方をハッと見る。
玄関前に、スーツケースを引く太宰の姿があった。
太宰「あ、それこの前のじゃないか! BHKの撮影してるなぁって思ったからポーズをとっていたのだよ! 驚いたかい?」
目をキラキラとさせて見詰める太宰。
その胸ぐらを、復活した国木田が掴む。
国木田「太宰ッ! 貴様!」
太宰「痛いよぉ国木田くん。あ、間違えた。国木田しゃ・ちょ・う!」
語尾にハートマークのつきそうな勢いでいう太宰。
国木田が胸ぐらを掴んだまま揺さぶる。
その仲裁に敦が慌てて入る。
敦「お、おお落ち着いてください!」
国木田がハッとしたように太宰を離す。
太宰「(敦をみとめて)敦くん! 大きくなったね」
左手を嬉しそうに振って挨拶する太宰。
それを横から見ていた鏡花が、その左手に目を止める。
鏡花「あなた……結婚したの?」
そう言われて、敦が太宰の左手を見る。
左手の薬指に、プラチナリングが収められていた。
装飾が美しい。
国木田「なっ! 貴様、現地で結婚したのか!?」
慌てたようにいうが国木田。
太宰は手を振って否定する。
太宰「まさか! 現地で色々あるから、既婚者ってことにしてしまおうと思って買っただけだよ」
けたけたと笑う太宰。嘘っぽい。
他の社員も太宰に群がり、質問を始める。
質問というか尋問。
皆、太宰自身の出来事よりも指輪の方に興味津々だ。
太宰「よしっ、じゃあ賭けをしようか!」
一同「賭け?」
太宰「この指輪のもう一人の主を当てられた人に、今日の昼食を奢ってあげよう! 勿論際限なくとは言えないけれどね」
敦「やっぱりお相手いるんじゃないですか」
太宰「わからないよ? 私が嘘をついて賭けを始めようとしているのかもしれない」
ニコニコと笑う太宰。
太宰「さあ、挙げてって?」
一気にみんなから声が上がる。
昼食を奢る、と言われたため、みんな目の色を変える。
敦「依頼人の娘」
太宰「違う」
潤一郎「女優」
太宰「違う」
賢治「喫茶の給仕の方!」
太宰「違う」
鏡花「旅客機添乗員」
太宰「違う」
国木田「旅人」
太宰「違う」
敦「作家」
太宰「違う」
潤一郎「企業の社長」
太宰「違う」
ナオミ「ホステス」
太宰「違うけど……私はそういうタイプに見えるのかい?」
ナオミ「ええ」
太宰「ええー……」
傷ついた、という太宰に、会話の流れが一瞬止まる。
その時、与謝野が爆弾を落とす。
与謝野「森医師」
一同「は?」
空気が固まる。
惚けた面持ちの一同の中でも、太宰が一番ひどい。
太宰「え与謝野女医あの本気で言ってます? あのロリコン? 無理です生理的に無理です無理無理」
此処までを一気に言った。本気で嫌がっている。
鳥肌が立ったのか腕をさすっている。
与謝野「冗談だよ。冗句の積りだったんだが……正直そこまで嫌がるとは思わなかった」
若干引いた様子で眺める与謝野。
ずっと静かな乱歩に気づき、太宰が声をかける。
太宰「良いんですか? 乱歩さん」
乱歩「別に興味がないからな。そもそも僕が入ったら一瞬で当てられるけど、良いの?」
乱歩がニヤリと太宰の方を見る。
太宰「おっと、遠慮しときます」
へらりと笑いながら両手をあげ、降参の意を示す太宰。
それに満足そうな顔をする乱歩。
乱歩が手を叩く。
乱歩「ほらほら、もうすぐ依頼人きちゃうんじゃない? 太宰も。用があるんじゃないの?」
一同「はあい」
太宰「(苦笑)乱歩さんは変わりませんねぇ……」
乱歩「いや? 僕も変わったよ? 与謝野さんに糖質制限始められた」
太宰「おやまあ」
乱歩は、もう用はないというように戻っていく。
敦、太宰に近づくが、声をかけることを躊躇う。
太宰、左手に視線を落とすと、顔を上げる。
太宰「じゃあねー! あ、私はもう少しヨコハマにいるから!」
そう言ってドアを開けて去っていく太宰。
敦「嵐だった……」
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一、二年後 ポートマフィアの小さな会話
ポートマフィアの首領室。
芥川が任務の報告に現れる。
芥川がノックをする。
中也「入って良いぞ」
芥川「失礼します」
中に入ると中也が机につき、書類仕事をこなしている。
中也「お、芥川か。報告書だろ? お疲れ」
芥川「いえ、当然のことをしたまで」
中也が、芥川から渡された報告書を読む。
中也「……ん、良い結果だ。何より、標的を殺さずに吐かせたのが良い。……不殺の掟だろ? よくやってるな」
中也が芥川に小さく笑いかける。
芥川が少し恥ずかしそうに目を逸らす。
芥川「敦の言うこと成すことは突飛なものばかりです……話は変わりますが、首領」
中也「なんだ?」
芥川、ポケットから携帯を取り出す。
芥川「敦からこんな動画が送られてきたのですが……」
そう言って中也に見せる。
見せているのは、先の番組の太宰が映っていた場面。
中也、それを見て呆れ返った顔をする。
中也「……(心底呆れて)彼奴、何してんだ……」
芥川「この後、太宰さんが探偵社に帰ってきたそうで。そう言えば、首領も太宰さんから土産を送られていますよね」
芥川、そう言って首領室の隅の方を見る。
そこには置き場に困って放って置かれた土産の山がある。
おかしな人形、色使いのおかしい何かの壺……。
世界各地の変なものをまとめたような感じ。
中也「……あれに触れないでくれ。俺だってあれを視界に入れないようにしてんだ……」
視界に入っただけで苛つく、と頭を掻きながら言う中也。
芥川「ご愁傷様です……。先ほどの話ですが、その後、太宰さんの指にされたリングの話になったそうで」
中也「はあ……?」
芥川「お相手が誰なのかと言う話になったのですが、誰一人として当てられず」
中也「……」
芥川「して、首領。どなただと思われますか?」
中也「そうくると思ったよ! 俺に訊くんじゃねェ!」
大きな反応を見せる中也。対して芥川はいつも通りだ。
芥川「僕も、作家などではないか、と返事をしたのですが違うとの答えが返ってきました」
中也「勤務中に何でメッセージのやり取りしてんだ手前ら」
中也、呆れたように言う。
芥川「だから言ったでしょう。彼奴……敦の行動は突飛だと」
中也「いや手前が無視しろよ」
芥川「それが難しいもので」
芥川、無表情で答えるが中也に突っ込まれる。
中也、ため息をつくと芥川に口を開く。
中也「(ため息)下がって良いぞ。よくやったな。作戦に入った部下たちにもそう伝えておいてくれ」
芥川「承知」
芥川、一礼して首領室を出る。
中也以外誰もいない部屋。
中也、無意識にチョーカーのバックルに触れる。
五大幹部時代とは違うチョーカー。
あの時の、『行ってきます』の代わりのものだ。
中也、呆れや期待などの混ざったため息をつく。
中也「……はぁ」
---
太中 夜の一幕
中也、セーフハウスのうちの一つにつく。
鍵を開けようとする中也。
だが、オートロックが開いていることに気づく。
中也「……まさか」
中也、そのままドアを開ける。
太宰「あ、お疲れー。流石はマフィアの首領。残業してたの?」
リビングのテーブルで太宰がワインを開けていた。
色味からして、年代物のワインを開けている。
ワインのラベルは、ロマネ。
中也「手ッ前! 俺の秘蔵のワイン開けてんじゃねェ! この不法侵入者!」
太宰を殴ろうと中也が踏み出すが、防がれる。
太宰「当たらないよー、そんなんじゃ。と言うか首領になっても脳筋のままなの? 姐さんやヴェルレーヌさんに迷惑かけてない?」
中也「余計なお世話だッ」
イライラとしながら台所で手早く手を洗う。
玄関近くにはスーツケースが放って置かれている。
挨拶回りを終えた、その足で来た、と言うふうだ。
太宰「吊れないなぁ、君と私の仲じゃない」
中也「どんな仲だよ」
太宰「(少し考えて)……さあ?」
中也「分かんねェなら言うなよ」
中也、悪態をつきながら、下準備をした牛肉を出す。
数分後には美味しそうなつまみが出来上がっていた。
太宰「お、仕事が早い。牛肉の煮込み?」
中也「もともとロマネは今日飲もうとしてたんだよ。ったく、人のワイン取りやがって」
太宰「蛞蝓にはこんな良いワイン勿体無いよ」
中也「ンだと!?」
昔のように悪態をつく二人。
一、二年会っていなかった空気など感じさせない。
数時間後、太宰が中也からグラスを取る。
太宰「そろそろ止めないと明日に響くよ。君弱いじゃない」
中也「ぐっ……(何も言えない)」
ボトルは空になっている。
中也の目がアルコールで少し潤んでいる。
太宰「君ねぇ……それ他の人の前でやってたりしないよね」
中也「は? 何がだよ」
太宰「……なんでもない。あ、私またすぐにヨコハマ出るから」
中也「……そうか」
目を閉じる中也。手に顎を乗せ、リラックスしている。
それを眺める太宰。
太宰、ふいに口を開く。
太宰「こういうのでも良いの?」
中也「何が」
太宰「私たちの関係」
その言葉に中也が目を開けて太宰を見る。
太宰はいつになく静か。
中也「手前が世界を見たいんだろ」
太宰「……うん」
中也「(笑みを浮かべて)なら良いじゃねェか」
その言葉に数秒間押し黙る太宰。
数秒後、中也に寄りかかる。
太宰「そっか。そうだね」
中也「……」
中也、黙って腕を太宰の肩に回す。
その瞬間、中也の体が反転する。
太宰が、してやったり、と言うように笑っている。
中也は、自らの上に乗る太宰を見上げた。
太宰「さて、どうせなら世の恋人がするようなことをしても良いんじゃないかい?」
中也「……リビングじゃねェなら考えてやる」
挑発するように笑って、太宰の首に手を回す中也。
太宰「(少し拗ねたように)可愛くないなァ、もう」
窓の外には、月が上がっている。
・
眠り姫です
妄想してたらなんか……こんなんができてました……
妄想の段階だったのでト書きです
補足を入れると、太宰さんは“ヨコハマに縛られずに織田作の言葉を守ること”“他の世界のあり方を知ること”を目指し、世界を飛び回っています(こんなふうに変わってたらいいなーと言う希望的観測から)
Blackの正体が太宰さんです
なんか誰かに読んで欲しくなった
いつか小説にする、かも
メーベル 太中
(笑えない)
『私たちも変わってしまった』
なんて、どの口が言うのだか。
自分で彼を手放したのに、あの頃が懐かしい、だなんて。
『敵は消滅した。もう休め』
そう言って掴んだ左手の感触が。
『ちゃんと、拠点まで送り届けろ、よ』
そう言って叩かれた胸の痛みが。
少しずつ心を侵食する。
何度も何度も胸の虚しさを誤魔化し乍ら、共に組んでは離れている。
(莫迦だなぁ、私)
織田作を理由にしても、森さんが図ったことだとしても、何も変わりはしないと云うのに。
そんなことを考え乍ら見上げた空は、水の向こうで曇り、暗く。
私は水音を上げながら身を起こすと、何かを振り払うように頭を振った。
髪から舞った水滴が川に落ちる。
私が陸へ上がり、再び眠ったような川に、私は一瞥をくれると帰路についた。
(おやすみ)
だから
この虚しさに向き合うのは闇が明けてから。
朝日を見るまでは蓋をしていたい。
こうやってぽっかりと空いた穴に詰め物をして目を瞑る。
(寂しい)
ふと浮かんだこんな言葉に深い意味などは無いから。
どうか目を瞑って。体を丸めて。
(経た時間ってだけなんだろ)
この四年間、人肌恋しさを何度感じただろう。
何故寒いのか。
其れは時のせい。
どこか噛み合わない自問自答を繰り返しながら、今日も夜を迎える。
『そんな君が大好きだよ』
昔彼奴が口にした言葉を思い出す。
あの頃はひたすらに彼奴が憎らしかったと云うのに。
(分かってるよ)
大した意味などないと。
でも、その“好き”にでも縋っていないとこの寒さが纏わり付いて離れない。
『変わらないね、君』
その言葉にも自分は揺れてしまうのに。
自分を置いて行ったのは。
何故?
この寒さを誤魔化してしまうのは彼奴の言葉が怖いから。
彼奴が自分を嫌いなのは分かりきっているのに、都合の良い部分だけを切り取ってしまいそうで。
否、“嫌い”という感情こそが繋ぎ止める何かのようで。
マフィアにいた彼奴に、最後に会った時。
彼奴は珍しく煙草を燻らせていた。
口をつけるわけでもなく、火の点いた煙草を見つめ続けていた。
『何してんだよ』
『別に』
そんな彼奴に俺は声をかけた。
けれど何も答えなかった。
『またね』
最後に彼奴はそう言った。
彼奴が持った火が、遠く、遠くなっていく。
その次の日、彼奴は去り、車は爆破され、俺は葡萄酒を空けた。
この虚しさの意味に、真剣に応えるにはもう余りに時が経ち過ぎた。
そう思って俺は目を瞑る。
ただただ、目の前の敵を考えていた蒼い時代。
いつだか其れは林檎の様に紅く染まって。
いつの間にか黒く。
この覚束ない想いばかりが募って、|支《つか》えて。
嗚呼、どうしようもない。
だから
彼と、彼奴と、向き合うのは昊が白んでから。
そればかりを思って今日も目を瞑る。
『何故なら私たちは運命の──』
あの後、私は何を言おうとした?
あの後、彼奴は何を言おうとした?
どんなに蓋をしても溢れてきてしまう問を、もう一度仕舞って。
そうすれば、触れられそうな程にその存在を主張する虚しさが、寂しさが残った。
・
眠り姫です!
最近バルーンにハマりにハマっています(紫:遅くね?)うっさい。
なかでもこのメーベル、そしてレディーレやveil、パメラは太中に似合い過ぎていないか!? となりまして
曲パロを公開した次第です
他の曲もしたいなー
では、この辺で
読んでくれたあなたに、心からの祝福を!
SS詰め(notBL)
びーすと注意 すとぶり注意
・
①
ああ、いらっしゃい。君も来たんだね。
此処はいいところだろう? とても快適だ! そう思わないかい?
紅茶はいる? 珈琲の方が良いかい?
ん? ああ、此処では望めばあらかたのものは手に入るのだよ!
ふふ、君の言いたいことはよくわかる。
けれどそれは無理な願いだよ。
さて、私は君に言いたいことが一つある。
あの世界には勿論彼奴がいる。
それ如きで世界を救えた?
笑わせるな。
大きな失態だ。
人の幸いを考えた?
冗談じゃない。
なら、彼は? 彼の行動は?
今の彼は大きな危険分子だ。
そう思うだろう?
ねえ、死んだ“私”。
(何処かの太宰さんと獣軸の太宰さんの話)
②
対象に含まれていた成分
1 ジクロロコバルト(II)Cobalt dichloride 0.00
2 重クロム酸ニナトリウムニ水和物 Sodium dichromate dehydrate 0.00
3 五酸化ニヒ素 Diarsenic pentaoxide 0.00
4 三酸化ニヒ素 Diarsenic trioxide 0.00
5 ひ酸水素鉛 Lead hydrogen arsenate 0.00
:
:
:
248 炭素 carbon 0.00
よって、対象に炭素、もとい《《炭素の同位体》》は含まれている痕跡は無い。
XXXX/XX/XX XX研究所
--- この度の結果について ---
---|⬛︎ ⬛︎ ⬛︎《・・・・・・》 様 ---
この度の結果について、此方がご意向に添えたことを研究者一同願っております。
XX研究所
(誰かが何処かの中也さんが人間では無い可能性を手に入れてしまった話)
とりあえず2個。
眠り姫です!
なんか暗いね!
気分が沈んでいるのか、私?
此処まで読んでくれたあなたに、心からのありがとうを!
ではではー!