あなたは今、辛いですか?
こんな世界から逃げ出したいですか?
それなら「白い本」の世界に逃げ出しませんか?
「白い本」は、あなたのための世界。この世界は、今ものすごく辛い人にしか表示されません。
あなたが壊れてしまう前に、この世界に逃げませんか?
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逃げない 逃げる
作者クレジット(?)
原案 だいこん 紅虹 蚯蚓
キャラ提供 だいこん 紅虹 蚯蚓
プロット 紅虹 蚯蚓
ディテール だいこん
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目次
プロローグ
~ side ?? ~
あぁ、疲れた。
勉強机の上のスマホを切った。
私は今、学校でいじめられてる。
最初にいじめられてた友達をかばったら、今度は私の番になってしまった。あの友達も、今はあっちの仲間だ。
学校に行けなくなってからは、お母さんが異常な勉強量をさせてくる。私をいい大学に行かせたいらしい。
だから最近では家にも居場所がなくなって、家にいる間はいつも部屋。
勉強している「ふり」をしながら、スマホを触る日々。
そうでもしないと、心がもたない。
勉強をちゃんとやらないとご飯もだしてもらえないし。
|琉莉奈《ルリナ》「……消えたい」
ボソッと、誰にも聞こえないように呟いた、はずだった。
スマホの通知が鳴った。私は無意識に、それに目をやった。
『白い本 あなたは今、辛いですか?』
その、「辛い」という言葉が、私の心を撫でた。
恐る恐るスマホに手を伸ばした。
通知をタップすると、質問が出てきた。
『あなたは今、辛いですか? NO YES』
私は、藁にも縋る思いで「YES」を押した。
『こんな世界から逃げ出したいですか? NO YES』
YES。
もう、逃げたくてたまんないよ。
『それなら「白い本」の世界に逃げ出しませんか? NO 詳しく』
白い本……?なにそれ。詳しく……。
『「白い本」は、あなたのための世界。この世界は、今ものすごく辛い人にしか表示されません。
あなたが壊れてしまう前に、この世界に逃げませんか? 逃げない 逃げる』
壊れる……。
怖い、のかもしれない。
逃げたい。
けど、行くのも怖い。
……いや、どうせこんな命。別に、捨てたっていいじゃないか。
それに、要らない命を懸けて、それで助かるのも得だ――。
……震える指で、「逃げる」を押した。
そのとたん、激しい光が私を覆った。
気がつくと、私は広々とした校庭のど真ん中に座り込んでいた。
琉莉奈「ここは……?」
??「あら、貴方……今、“こっち”に来た子かしら?」
後ろから声がした。赤い長髪をツインテールにした、お嬢様感溢れる、同い年かそれくらいの制服姿の女の子だった。
??「貴方、名前は?」
琉莉奈「あ……|東雲《しののめ》琉莉奈です」
??「分かったわ。琉莉奈ね。じゃあ琉莉奈、ちょっと来てくれるかしら」
彼女は私の袖を引っ張った。
琉莉奈「え、ちょ……!」
私は、彼女の(大して強くはない)力のままに、その校庭の側の校舎に連れて行かれた。
出会い
校舎は甘くて不思議な匂いで、真新しい病院みたいな白さだった。
琉莉奈「あ……あの!ここって一体……あと、貴方って……」
|杏《アンズ》「私は|茅部《かやべ》杏。で、ここは……あ~……え~っと……」
彼女は、ちょっと困ったような顔を見せてから、言った。
杏「先生がちゃんと教えてくれるはずよ……多分……きっと……1人を除いては……」
かなり不安そうな苦笑を浮かべながら……。
杏「まぁ、行きましょ」
琉莉奈「え、あ、はい……」
着いたのは、見るからに職員室な場所。
杏「琉莉奈は何年?」
琉莉奈「高校、2年生です」
杏「あら、同い年ね」
そして、杏さんは「失礼します」と職員室の扉を開けた。
杏「高等部2学年の先生、いらっしゃいますか?」
先生「今は美波先生が取り合えますよ~」
そう、1人の先生が言うと、杏さんは見事に硬直。
杏「じゃ……じゃあ、お願いします」
先生「美波せんせ~い、C組の茅部さんが呼んでま~す」
|百々《モモ》「は~いっ‼」
呼ばれたその先生、立ち上がり、その勢いで、
**ズシャァァァァッ‼**
茶封筒から、書類を、ひっくり返した‼
百々「ひゃっ、あぁぁっ⁉」
杏「あっ、あぁ、またやっちゃったのね先生……」
百々「う、うん……」
琉莉奈「あ……えっと……手伝います!私!」
私はその散らばった書類の所に行くと、さらに酷い先生のドジに気付く。
琉莉奈「ト……トイレ?」
お便りらしきものの写真が、全部和式トイレになっていたのだ。
百々「え、トイレ?何が――」
そして杏さんと百々先生、硬直。
杏「……印刷ミスって、こうなるものなのかしら?」
百々「さぁ……」
先行きが不安になってきました……。
ひと通り拾い終わると、百々先生は「さて」と立ち上がった。
百々「あなた……転校生だよね」
琉莉奈「え、私」
百々「大丈夫。こっちではここに通うことになってるから」
杏「想像通りのすっ飛ばし具合ね……」
百々「大丈夫大丈夫。もうあなたの学力データは届いてるから、クラスもどこにするか決めてあるし。あとは制服だね」
琉莉奈「はい……」
そして、とんとん拍子に話は進み、教材の話とか、寮生活とかの話をしてもらった。
その間、百々先生は1分に1回ペースでドジをしでかしていた……。
クラスメイト
百々「さて!ここがあなたのクラスです!」
そう言われて、明らかな違和感を感じる私と杏さん。
杏「先生?ここ、3年棟よ?」
百々「え?3年生じゃないの?」
琉莉奈「私……2年生です……」
百々「え、あ…あれ!?ホントだ!!」
私のデータらしきものを見ながら納得する先生。
杏「もう……しょうがないわね、先生は」
百々「えへへ……まぁ、気を取り直して!」
と、背中方向に早歩き。
百々「……っと」
今度着いたのは、さっき通った棟だった。
百々「っていうか、なんで通った時に教えてくれなかったのよ杏~」
杏さんが少し気まずそうに言う。
杏「だって先生、自信満々で歩いてたもの、注意しづらいったらありゃしないわ」
百々「も~……!あ、ここだよ、2年B組」
杏はC組戻ってていいよ、琉莉奈は一旦待ってて、と、一足先にB組の教室に入る百々先生。
百々「は~い!こんにt」
ツルッ **ズデッッ**
音だけで、何が起こったのか容易に想像がついた。あははは、とあきれたような笑いが聞こえる。
「先生、また~?」
しかも今回だけではないらしい。どこまでドジなんだ、この先生……。
百々「あはは、やっちゃったよ、また~。じゃ、お知らせがあるから静かに!」
教室から、外にいる私を手招きした。私はロボットみたいにぎこちない動きで教室に入った。
ざわざわ、ざわざわ。
ふと、あの教室を思い出す。あの不快な空間を。けれど、此処はなにかが違う。
……あ、そうだ。この空気は、ただの純粋な興味だ。嘲笑とか、そういうものじゃない。
けれど、それがいつ牙を剥くか。分からない。警戒心は、まだ解けない。
琉莉奈「わ、私の名前はっ!しのぬっ」
背中を冷や汗がつたった。
噛んでしまった。よりによって、自分の名前を。
……けど、私が思っていた反応とは、まったく違った。
私を笑う人はいなかった。
百々「大丈夫だよ、深呼吸」
先生が、私をゆっくり諭した。
琉莉奈「……東雲琉莉奈です」
「ようこそ~!」「よろしく!」
みんな、笑顔だ。綺麗な笑顔。
百々「はい、拍手もそこまでにして。じゃあ、琉莉奈は、この席ね!その、空いてる席!」
百々先生が、手前の空席を指差した。私はまだぎこちない動きで、その席に向かった。
椅子を引いて座りながら、ちらっと隣の子を見た。明るい顔の、活発そうな女の子。
緊張。
隣の席の子っていうのは、敵に回すと厄介。なにかと一緒に行動することが多い。
??「ねぇ」
突然、彼女に話しかけられた。
琉莉奈「えあ、はっ」
??「名前、ルリナちゃん、だよね?」
呼び捨てでもいい?と聞かれ、とりあえずはいと答える。
|璃心《リコ》「私、|鈴鹿《すずか》璃心。よろしくね、琉莉奈!」
いつの間にか、私の緊張は笑顔にほぐされていた。
琉莉奈「よろしく、お願いします……!」