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目次
私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?プロローグ
プロローグ:我が家の日常は、画面の向こうと違いすぎる。
「キャーーーッ! 蓮くんこっち見てーーーっ!」「拓実ーーー!」
「柾哉くん今日もビジュアル最高ーーー!!」
テレビの画面から、鼓膜を突き破らんばかりの黄色い大歓声が響いている。
ステージの上で、一糸乱れぬ完璧なダンスと、カメラ目線の鋭いウィンクを決める男たち。今をときめく超人気グローバルボーイズグループ、JO1とINIだ。
「……はぁ。画面の中では、あんなにキラキラしてるんだけどなぁ……」
私は手元のスマホを消して、大きなため息をついた。
世間の女子たちが「結婚して!」「尊い!」と絶叫しているあの22人の国宝級イケメンアイドル。
実は、全員が私の「お兄ちゃん」である。
正確に言うと、親同士の再婚やら何やら(大人の事情)が重なりに重なった結果、私たちは今、信じられないほど巨大な一軒家で一緒に暮らしているのだ。
「おーい、ここな? テレビ消して何してんの?」
背後から、眠そうな声がした。
振り返ると、さっきまでテレビの中で国宝級の笑顔を振りまいていたはずのINIのセンター・木村柾哉が、髪を爆発させた寝癖だらけの姿で、首元がよれよれたスウェットを着て立っている。
「あ、柾哉にぃ。今、お兄ちゃんたちの歌番組観てた」
「えっ、観ててくれたの!? 恥ずかしいなぁ、でも嬉しい。……あ、そうだ。瑠姫くーーーん! ここなが俺たちの番組観ててくれたってーーー!」
柾哉にぃがリビングに向かって大声を出すと、ドタバタと地響きのような足音が廊下から迫ってきた。
「ちょっと待って、俺のウインクのところ観た!? ちゃんと格好良かった!?」
勢いよくドアを開けて入ってきたのは、JO1のプリンスこと白岩瑠姫。ただし、手にはなぜか食べかけの激辛スナック菓子の袋を持っている。王子様のイメージ崩壊である。
「観た観た。めっちゃキザだった」
「キザって言うな! 画面の前の全姫たちが気絶したやつなんだからね!?」
ふくれっ面をする瑠姫にぃの背後から、今度はエプロン姿の與那城奨と、寝癖を帽子で隠した西洸人がひょっこりと顔を出した。
「ほら瑠姫、ここなを困らせない。……ここな、学校の準備はできた? 今日は雨降るみたいだから、ちゃんと傘持ったか?」
「奨にぃ、過保護すぎ。ここな、もし荷物重かったら俺が学校まで送ってこうか?」
「洸人くん、それ絶対に学校の周りがパニックになるからダメ!!」
朝から22人分の視線と愛情(と、ちょっとのウザさ)が、一気に私に集中する。
世間の皆さん、騙されないでください。
画面の向こうの王子様たちは、家ではただの「超絶過保護なシスコンお兄ちゃん」なんです――!
(第1話 へ続く)
私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?1話
第1話:秘密の学校生活と、過保護なお迎え
「ねえ聞いてここな! 昨日のMVの威尊くん、見た!? あのビジュアルはさすがに国宝指定するべきだと思うの!」
昼休み、教室。友人のりんかが、スマホの画面を私に突きつけながら大興奮で語っている。
画面の中で、INIの後藤威尊がカメラに向かって不敵に微笑んでいた。
「あ、あはは……。うん、格好いいね……(昨日、家で一緒にたこ焼き焼いて、マヨネーズ口にくっつけてた人だなんて絶対に言えない)」
そう、私の日常は常に『秘密』との戦いだ。
学校では、普通の女子高生。でも一歩家に帰れば、JO1とINIの22人が私の兄。
「あーあ、あんなイケメンがお兄ちゃんだったら毎日学校頑張れるのになぁ」
「いや……実際いたらいたで、結構大変だよ?」
「え? ここな何か言った?」
「ううん! なんでもない!」
危ない危ない。
そんな冷や汗モノの学校生活を終え、放課後。ポツポツと雨が降り出した。
「うわ、傘忘れた……」
憂鬱な気分で下駄箱に向かうと、スマホがブブッと震えた。
画面を見ると、JO1の木全翔也からメッセージ。
『翔也にぃ:いま学校の近くの路地に車止めてる! 蓮くんと迅と迎えにきたよー!』
「ええっ!?」
嘘でしょ、あの3人が来たら目立ちすぎる!
私は慌てて荷物をまとめ、極力目立たないように裏門から外へ飛び出した。少し離れた路地に、見覚えのある黒い高級ワンボックスカーがハザードランプを点滅させて止まっている。
スライドドアが静かに開くと、そこには――。
「ここな、こっちこっち!」
バケットハットに黒マスク、伊達メガネという、お決まりの「芸能人変装スタイル」の松田迅が手を振っていた。いや、隠せてない。隠しきれない芸能人オーラが漏れてる。
「ちょっとみんな、なんで来たの!? バレたらどうするの!」
車内に滑り込み、ドアが閉まると同時に抗議する。すると、運転席の川尻蓮がバックミラー越しにふにゃっと目を細めて笑った。
「だって、ここなが傘持ってってないって奨くんが心配してたからさ。はい、タオル」
「ほらここな、俺の分のエナジードリンク飲む?」
「翔也にぃ、高校生にそれはいらない」
文句を言いつつも、タオルで髪を拭いてくれる迅にぃの優しさがちょっと嬉しい。
「あ、そうだここな。今日の夜ご飯、純喜くんと大夢くんが唐揚げ作ってるよ。急いで帰ろ!」
迅にぃの言葉通り、家に帰ると玄関を開けた瞬間からジューシーな良い香りが漂っていた。
「おかえりここな! ほら、特製唐揚げ揚がったぞー!」
キッチンから河野純喜がテンション高く声を上げ、その横で髙塚大夢が「純喜くん、油跳ねるから危ないって」と冷静に突っ込んでいる。
「こっちゃんおかえり。学校お疲れ様」
リビングでは、JO1の川西拓実とINIの藤牧京介がゲームのコントローラーを握ったまま、こっちを向いて微笑んだ。
「ただいま。……今日ね、学校でマイが威尊にぃのこと国宝って絶賛してたよ」
私がそう言うと、ちょうどリビングに入ってきた後藤威尊が、あからさまに嬉しそうな顔をしてポーズを決めた。
「おっ、見る目あるねぇ。ここなにとっては、どんな威尊お兄ちゃん?」
「マヨネーズつけたまま、たこ焼き30個食べるお兄ちゃん」
「ちょ、それは内緒にしてって言ったやん!」
ドッとリビングが笑いに包まれる。
テレビの中ではあんなに遠い存在の22人。でも、私の前で見せるこの笑顔だけは、私だけの特権。
世界一贅沢で、世界一騒がしい私の毎日は、今日も明日も大忙しになりそうだ。
(第2話 へ続く)
私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?2話
第2話:リビングの特等席は、譲り合い(奪い合い)?
美味しい唐揚げでお腹がいっぱいになった後。
私はリビングの大きなソファに座って、スマホで動画を見ていた。
すると、トコトコと近づいてきたINIの癒やし担当・佐野雄大が、私の隣にすぽっと収まる。
「ここな、何見てんの〜? あ、これ俺も好きな動画や! 一緒に見よ!」
「うん、いいよ。雄大にぃ、それちょっと体勢きつくない?」
「ええねん、ここなの隣が一番落ち着くから……」
そう言って私の肩に頭を乗せてくる雄大にぃ。大型犬が甘えているみたいで可愛い。
……と、そこへキッチンからコーヒーカップを2つ持った許豊凡(フェンファン)が歩いてきた。
「雄大、ここなにベタベタしすぎ。ここな、はい、温かいココア。少し勉強するって言ってたから、頭が働くように少し甘めにしておいたよ」
「フェンファンにぃ、ありがとう!」
「ふふ、どういたしまして。頑張ってね」
知的で優しいフェンファンにぃの笑顔に癒やされていると、ソファの背もたれ側から、ひょっこりと顔を出した人物が。池﨑理人だ。
「なになに〜? ここな、フェンファンくんのココアだけじゃなくて、俺が買ってきた高級チョコも食べる?」
「あ、理人にぃ。食べる!」
「よし、じゃあ『あーん』して……」
「ちょっと理人、何どさくさに紛れて甘えさせてんの」
呆れたような低音ボイスとともに現れたのは、西洸人。
理人の頭を軽く小突くと、私の前にしゃがみ込んで、私の足をトントンと叩いた。
「ここな、学校で疲れたろ。足、マッサージしてやるよ。俺、ダンスで足の解し方には詳しいから」
「えっ、洸人にぃが!? 贅沢すぎる……!」
世間のファンが見たら気絶するような状況だけど、我が家ではこれが日常茶飯事。
リビングのあちこちを見渡すと、さらに贅沢な光景が広がっていた。
少し離れたテーブルでは、JO1の金城碧海が、じっとこっちを見つめている。
目が合うと、碧海にぃはいつものクールなポーカーフェイスのまま、すっと手元にあったイチゴのタルトを私の方に差し出してきた。
「……食べるか? ここなの分、残しといた」
「碧海にぃ……! ありがとう、後で食べる!」
不器用だけど、実は誰よりも妹想いで優しい碧海にぃ。
その横では、INIのツインメインボーカル、藤牧京介と髙塚大夢が何やら揉めている。
「ちょっと大夢、さっきのハモり、俺の方が半音高かったって」
「えー? 京介の気のせいだよ。なぁここな、どっちが合ってたと思う?」
突然話を振られて困っていると、JO1の川西拓実がゲーム機を片手に、ふにゃっと笑いながら参戦してきた。
「大夢くんも京介くんも、ここなを困らせたらアカンで。ここな、そんなことより一緒にゲームしよ? ほら、コントローラー」
「拓実にぃ、私それ一瞬で負けちゃう」
「大丈夫、俺が全部守ったるから!」
ゲームの中だけでなく、現実でも過保護な兄たち。
すると、リビングのドアが開いて、お兄ちゃんたちの中心人物、川尻蓮、白岩瑠姫、木村柾哉、後藤威尊、松田迅の5人が入ってきた。
「ただいまー。あ、ここな、みんなに囲まれてる」
柾哉にぃが柔らかく笑うと、迅にぃが「ずるい! 俺も〇〇の隣がいい!」と雄大にぃの隣に無理やり割り込んでくる。
「こら、迅、静かに。ここながびっくりしてるでしょ」
蓮にぃが優しく迅を嗜めつつ、私の髪をポンポンと撫でてくれた。
「ここな、今日もお疲れ様。みんな、ここなのことが可愛くて仕方ないんだよね」
瑠姫にぃが王子様スマイルでそう言うと、威尊にぃが「当然やろ! ウチの妹は世界一やからな!」と胸を張る。
「……もう、みんな本当に過保護なんだから」
呆れつつも、愛おしさが止まらない。
22人の大好きなお兄ちゃんたちに囲まれて、私の夜は今日も大賑わいで更けていくのだった。
(第3話 へ続く)
私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?3話
第3話:遭遇、接近、絶体絶命!?
「ねえここな、ここのパンケーキ、ずっと食べたかったんだよね!」
土曜日。私は学校の親友・りんかと一緒に、原宿のオシャレなカフェに来ていた。
焼き立てのパンケーキを前に目を輝かせるマイを見て、私も「美味しいね!」と笑顔になる。
……が、実はこのカフェ。
JO1とINIの所属事務所からめちゃくちゃ近いのだ。
(大丈夫、今日はお兄ちゃんたち、みんな仕事か練習のはず……)
そう自分に言い聞かせていた、その時だった。
カランカラン、とお店のドアが開く。
入ってきたのは、黒いバケットハットを深く被り、マスクをしたスタイルの良い2人組。……嫌な予感がして視線を向けると、一瞬で背中に冷や汗が流れた。
(嘘でしょ……拓実にぃと京介にぃじゃん!!!)
オーラで一発でわかった。川西拓実と藤牧京介だ。
2人はテイクアウトの列に並びながら、小声でボソボソと話している。
「あ、ねえここな! 見て、あの並んでる人たち、スタイル良くない!? モデルかな……」
りんかが小声で興奮し始めた。心臓が跳ね上がる。
「え、あはは、そうかな? よくある服だよ!」
必死にりんかの視線を逸らそうとした瞬間、京介にぃが店内のこちらに気づいた。マスク越しでも分かるほど、彼の目が「あ」と大きく見開かれる。
そして、隣の拓実にぃの腕を小突いた。拓実にぃもこっちを見て、嬉しそうに目を細める。
(こっち来ちゃダメ!! 手を振らないで!!)
私は目線で必死に「あっち行って」とビームを送る。幸い、2人は察してくれて、小さく親指を立て(グッジョブのポーズ)、コーヒーを受け取ると急いで店を出て行ってくれた。
「ふぅ……」
大きな危機を脱し、心底ホッとして紅茶を一口すすった、その直後。
「すみませーん、ここ、お皿下げちゃって大丈夫ですか?」
聞き覚えのありすぎる、低くてハスキーな超絶イケボが頭上から降ってきた。
「え……?」
顔を上げると、そこには店員の制服(エプロン姿)を着た、池﨑理人が立っていた。
(えええええ!? 理人にぃ!? なんでここにいるの!?)
パニックになる私をよそに、りんかは理人の顔(マスクなし!)を見た瞬間、借りてきた猫のように硬直している。
「あ、はい、大丈夫です……!」
りんかが蚊の鳴くような声で答えると、理人にぃは私に向かって、片目をカシャッとウインクしてみせた。
「ごゆっくりどうぞ、お嬢さん」
そう言って、爽やかに去っていく理人にぃ。
(後でメールしたら『今日からここのカフェでバイトの役作りの撮影なんだよね〜』と呑気な返信が返ってくることになる)。
「ちょっと……ここな……今の店員さん、ヤバない……? 芸能人じゃん、もうINIの理人くんに声そっくりなんだけど……!」
りんかが私の腕を掴んでガタガタ震えている。
「そ、そうだね! 似てる人っているんだねぇ……!」
乾いた笑いしか出ない。一刻も早くこの店を出なければ命が足りない。
「りんか、そろそろ出よっか!」
「うん、お会計しよ……あ、待って、外すごい雨降ってきたよ?」
ガラス窓の外を見ると、いつの間にかゲリラ豪雨のような大雨。
傘を持っていない私たちは足止めを食らってしまった。
「うわぁ、どうしよう……」とりんかが困り果てた、その時。
私のスマホが震えた。
『蓮にぃ:ここな、いま大雨だけど傘持ってる? 近くにいるから車で迎えに行こうか?』
(絶対にダメ!!! 蓮にぃが来たら今度こそ一発でバレる!!!)
『私:大丈夫! 友達と一緒だし、すぐ止みそうだから来ないで!』
と猛スピードで返信を打つ。
しかし、そのわずか3分後。
カフェの前に、スモークガラスの黒い高級ワンボックスカーが静かに停車した。
「あれ、あの車……」
りんかが指差す。
その車の助手席の窓が、ほんの数センチだけウィーンと開いた。
隙間から覗いたのは、綺麗なハイトーンヘアと、圧倒的な美貌の目元。
白岩瑠姫である。
瑠姫にぃは私と目が合うと、ちょいちょい、と「乗れ」と手招きをした。
(瑠姫にぃまで来ちゃったよ……!!!)
「……ここな? あの車の人の髪型、JO1の瑠姫くんにそっくりなんだけど……気のせい、だよね……?」
りんかの目が、いよいよ疑惑の目へと変わっていく。
「あ、あはは! ほら、最近インフルエンサーとかで真似してる人多いじゃん!? ……あ! あの車、私の親戚のおじさんの車だ! 迎えに来てくれたみたい!」
「え? おじさん……?」
「りんかも乗ってく!? ほら、送るよ!!」
私はりんかの手を引っ張り、半ば強制的に車へとダッシュした。
スライドドアが開くと、中には川尻蓮、白岩瑠姫、そしてなぜか後部座席で小さくなっている木村柾哉と佐野雄大の姿が。
「ここな、お疲れ〜!」
「シーーーッ!!!!!(友達いる!!!)」
私が血相を変えて人差し指を口に当てると、お兄ちゃんたちは一瞬で「あ、やべっ」という顔になり、サッと全員がマスクと帽子を深く被り直した。
「初めまして、ここなの友達のりんかです……」
緊張でガチガチのりんかを乗せて、車は走り出す。
バックミラー越しに、蓮にぃが「おじさん」になりきって、わざと低い声で話しかけた。
「あ、どうも〜。ここなの、親戚の……おじさんです。駅まで送るね〜」
「(声が良すぎるおじさんだな……)」と怪訝な顔をするりんか。
後ろの席では、雄大にぃが声を出さないように口を両手で押さえて必死に笑いを堪えており、柾哉にぃがそれを必死にホールドして静止している。
学校の友達にバレるまで、あと残りライフ1。
お兄ちゃんたちの過保護さは嬉しいけれど、私の心臓は毎日、持ちそうにありません――!
(第4話 へ続く)
私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?
第4話:秘密の共有と、おもてなし大作戦
「……ねえ、ここな。隠さなくていいよ」
車内で降ろしてもらった翌日、学校の放課後。りんかに教室の隅へ呼び出された。
りんかの目は、完全にすべてを察している。
「あの『おじさん』、川尻蓮くんだよね? あと、後ろで必死に気配消してたの、木村柾哉くんと佐野雄大くんでしょ」
「うっ……!」
「それに、あのカフェの店員、理人くんだったよね? ここな、あんた何者なの!?」
これ以上は嘘をつけない。私は覚悟を決めて、りんかの肩を掴んだ。
「……りんか、落ち着いて聞いて。実は、親の再婚とか色々の事情があって……JO1とINIの22人が、全員私のお兄ちゃんなの」
「は……?」
りんかは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした後、10秒ほどフリーズし、「ギャーーー!?」と叫びそうになったので、私は慌ててその口を手で塞いだ。
事情をすべて話すと、りんかは「あんた、前世でどんな徳を積んだの!?」と大興奮。でも、さすが親友。「誰にも言わないし、全力でカモフラージュに協力する!」と約束してくれた。
「お礼と言っちゃなんだけど……今日、うち来る?」
「行く!!!!!!!!」
こうして、親友りんかを連れて、禁断のラポネハウスへ帰宅することになった。
ピンポーン。
「ただいまー。…あ、みんな、今日は友達のりんかちゃん連れてきたよ」
玄関を開けると、そこはすでに『おもてなしモード』に突入したお兄ちゃんたちがスタンバイしていた。
「あ、りんかちゃん! 噂はここなから聞いてるよ。昨日はいきなり車に乗せちゃってごめんね?」
リビングから現れたのは、INIのリーダー・木村柾哉。優しすぎる100点満点の笑顔に、りんかは玄関先で早くも卒倒しかけている。
「りんかちゃんいらっしゃい! 狭いところだけど上がって〜(全然狭くない)」
JO1の川西拓実が、これまた破壊力抜群の笑顔でスリッパを差し出す。
リビングに入ると、そこはもう「推しメンのパラダイス」だった。
「りんかちゃん、これよかったら食べて。ここなの友達だから、気合入れて作ったよ」
キッチンから出てきたのは、エプロン姿のハッピーオーラ全開・後藤威尊。手にはオシャレなウェルカムスイーツ(しかも手作り)が乗っている。
「ちょっと威尊、グイグイ行きすぎ。りんかちゃん緊張してるじゃん」
ソファから、JO1のクールビューティー・金城碧海が、低音ボイスで優しくフォローを入れる(ただし、ビジュアルが強すぎてりんかのライフはすでにゼロに近い)。
「りんかちゃん、お茶何がいい? 緑茶、紅茶、それとも……俺?」
「迅、お前は黙っとけ(笑)」
松田迅のいつもの悪ノリを、西洸人が笑いながら頭をコツンと叩いて止めている。その男子校のような小気味いいやり取りすら、りんかちゃんにとっては聖書の1ページのようだ。
「りんかちゃん、昨日カフェでウインクしちゃってごめんね? 驚かせちゃった?」
隣の席に、あのイケメン店員こと池﨑理人がひょっこり座る。
「い、いえ……! 生きててよかったです……!」
限界突破したりんかちゃんが、ついにボソッと本音を漏らした。それを見て、少し離れたところで、川尻蓮と白岩瑠姫がふにゃふにゃと楽しそうに笑っている。
「ね? ここなのお兄ちゃんたち、みんな格好よくて優しくて最高でしょ?」
佐野雄大が自分のことのように胸を張ると、髙塚大夢と藤牧京介の2人が「雄大が威張ることじゃないでしょ」と同時に突っ込み、リビングは大きな笑い声に包まれた。
最初は緊張していたりんかちゃんも、お兄ちゃんたちの圧倒的なフレンドリーさと「ここなといつも仲良くしてくれてありがとうね」という温かい言葉に、最後はすっかり打ち解けていた。
「ここな……私、一生あんたの秘密守る。そして、全力でお兄ちゃんたちからあんたを守るカモフラージュ役になるわ!」
帰る間際、りんかちゃんは固い握手を交わしてきた。
最強の味方(オタク友達)をゲットした私。
これで学校生活のヒヤヒヤは少し減る……かもしれないけれど、22人の過保護なお兄ちゃんたちとの刺激的な日々は、まだまだ始まったばかりだ。
(第5話 へ続く)
私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?
第5話:全校生徒がザワついた日
その日の昼休み、学校の廊下は異様な熱気に包まれていた。
「ねえ聞いた!? 朝、校門の前にヤバいイケメンがいたって!」
「見た見た! 黒髪のハーフっぽい人で、背が高くてモデルみたいだった!」
「JO1の碧海くんにめっちゃ似てない!? っていうか本人!?」
教室に戻るなり、女子生徒たちがスマホを片手に大騒ぎしている。
私は机に突っ伏したまま、心の中で頭を抱えた。
(……碧海にぃ、何やってんの、本当に……!)
今朝、私が家を出る時、碧海にぃはいつものポーカーフェイスで「今日、学校の近くで仕事あるから」と言っていた。まさか本当に学校の目の前まで来るとは思わないじゃん!
「ここな、大変だよ……!」
親友のりんかが息を切らせて教室に駆け込んできた。
「裏門の方にも、別のヤバいイケメンが目撃されてる! 金髪で、目がクリッとしてて、INIのフェンファンくんそっくりの人が本を読んでたって!」
(フェンファンにぃまで巻き込まれてるーーー!!)
どうやらお兄ちゃんたち、私が最近「学校で男子に話しかけられた」と家でポロッと言ったのを根に持っているらしい。「ここなに悪い虫がつかないか、俺たちが交代で見守る」とか言ってたけど、行動力がバグりすぎている。
さらに放課後、事態は最悪の方向に動いた。
「キャーーーーーーッ!!!」
校舎の窓から、割れんばかりの黄色い悲鳴が響き渡る。
何事かと私がりんかと一緒に下駄箱へ向かうと、校門の前に人だかりができていた。
人だかりの中心にいたのは、黒いキャップを被り、ラフなパーカーを着た3人組。
……西洸人、木村柾哉、そして松田迅だ。
変装しているつもりらしいが、スタイルの良さと顔の小ささ、そして隠しきれない王者のオーラで、女子生徒たちが完全にロックオンしている。
「嘘……マジでINIじゃん……!」「なんでウチの学校にいるの!?」
ざわざわとパニック寸前の全校生徒。
すると、人だかりを割って、迅にぃが私を見つけてぶんぶんと手を振った。
「あ! ここなーーーっ! お疲れー!」
(ストーーーップ!!! 名前呼ぶなぁぁぁ!!!)
一瞬で、全校生徒の視線が私に突き刺さる。
「え、3年のここなさん……?」「なんでINIが名前呼んでるの!?」と周囲がざわついたその時、りんかが最高のコンビネーションを発揮した。
「あ、アハハハ! ここな、ほら! あんたの親戚の『お兄さんたち』が迎えにきてくれたよ!!」
りんかの大声フォローに、柾哉にぃが「あ、そうそう! ここなの、い、従兄弟です!」と機転(?)を利かせて爽やかに微笑む。その笑顔に、周りの女子高生が3人ほどバタバタと倒れそうになっていた。
洸人にぃが私の荷物をひょいと持って、私の頭をポンポンと叩く。
「ほら、帰るぞ。みんな家で待ってるから」
「……うん(早くこの場から消え去りたい)」
全校生徒の羨望と驚愕の視線を浴びながら、私はお兄ちゃんたちの車へと逃げ込んだ。
車内に入ると、助手席の川西拓実と後部座席の藤牧京介が、スマホで学校の掲示板やSNSをチェックしていた。
「あ、ここなおかえり。見て、もうSNSに『ここなの学校の前にJO1とINIがいる』って書かれてんで(笑)」
「拓実くん、笑い事じゃないって。ここな、学校で変な男に絡まれなかった? 大丈夫?」
心配そうに顔を覗き込んでくる京介にぃ。
「学校の男の子より、お兄ちゃんたちの方が100倍怖いから大丈夫だよ……」とため息をつくと、運転席の蓮にぃがミラー越しにふにゃっと笑った。
「あはは、ごめんねここな。でも、これで学校の男子も、ここなに簡単に近づけなくなったでしょ?」
過保護のレベルが世界クラスのお兄ちゃんたち。
翌日、学校で質問攻めに合うことは確定だけど……まぁ、これだけ最強の味方が守ってくれているなら、私の高校生活は(いろんな意味で)世界一安全かもしれない。
(第6話 へ続く)
私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?
第6話:緊急招集!妹の彼氏条件判定会議
土曜日の夜。ラポネハウスの巨大なリビングに、異様な緊張感が漂っていた。
大きなテーブルを囲むのは、JO1とINIのメンバーたち。
「――よし、全員揃ったな」
JO1のリーダー・與那城奨が重々しく口を開く。その隣では、INIのリーダー・木村柾哉が腕を組んで真剣な面持ちで頷いた。
「今日の議題は一つ。ここなの『未来の彼氏の条件』についてだ」
「ちょっと待って、なんでそんな会議開かれてんの!?」
ソファの端っこで、私は思わず立ち上がって抗議した。しかし、お兄ちゃんたちの目は本気(マジ)だ。
「当たり前だろ、ここな」
JO1のプリンス・白岩瑠姫が、大真面目な顔で髪をかき上げる。
「ウチの可愛い妹をどこの馬の骨ともわからない男に渡せるわけないじゃん。まずは書類審査から始めないと」
「書類審査とかあるの!?」
「当たり前やん!」と参戦してきたのは、後藤威尊。「まず、挨拶がちゃんとできること。初対面で俺より綺麗な姿勢で一礼できへん奴は論外!」
「威尊くん、それ基準高すぎ」
藤牧京介がツッコミを入れつつも、「でも、歌が下手な奴はダメだな。ここなに聴かせる子守唄が音痴だったら俺が許さない」と、これまた独自の厳しすぎる基準を提示する。
「えー、そこ?」と笑う髙塚大夢が手を挙げた。
「俺は、ペットの気持ちが分かる優しい人がいいな。動物を大切にできない奴はここなも大切にできない!」
「大夢にぃの基準は可愛いから許す……」私が癒やされていると、隣から低音ボイスが響いた。
「……男なら、やっぱり力強さやろ」
金城碧海が、じっと拳を見つめながら呟く。
「俺と空手のスパーリングをして、3分間持ちこたえられたら第一関門突破や」
「それ彼氏死んじゃうから!!」
「まぁまぁ、みんな落ち着いて」
川尻蓮がふにゃっと柔らかく笑いながら、ホワイトボードにペンを走らせる。
「とりあえず、今のをまとめると……『姿勢が良くて、歌が上手くて、動物に優しくて、碧海より強い男』だね」
「そんなサイボーグみたいな完璧超人おらんわ!!」
松田迅が爆笑しながら突っ込むと、隣の佐野雄大が「じゃあさ、ゲームが強くて一緒に遊んでくれる人は?」と提案。すかさず川西拓実が「ゲームなら俺がいつでも相手したるから、彼氏にそのスキルは求めん。それより、美味しいご飯をいっぱい食べさせてくれる人がええなぁ」と、自分の好みを混ぜ始める。
すると、今まで静かに聞いていた西洸人が、ふっと鼻で笑った。
「お前ら、条件とか色々言ってるけどさ……結局、最後に決めるのはここなだから」
(お、洸人にぃ、さすが大人……!)と私が感動しかけた、その瞬間。
「まぁ、俺よりカッコよくて、俺よりオシャレで、俺より男気がある奴じゃないと、俺の前に連れてきた時点で威嚇するけどね」
「洸人くんが一番ヤクザみたいなこと言ってる!!」
池﨑理人が大口を開けて爆笑している。
「とにかく!」
柾哉にぃがパンッと手を叩いて、綺麗にまとめた。
「ここなを世界一幸せにできる自信があって、ここにいる22人全員の面接をクリアした男の人だけ、お付き合いを許可します!」
「「おーーー!!」」
リビングに響き渡る、22人の無駄に息の合った大歓声。
「……もう、私は一生独り身でいいです……」
私が遠い目をしながらココアをすすると、お兄ちゃんたちは口々に「それがいい!」「ずっとこの家にいな!」と大喜びし始めた。
世界一高すぎる彼氏のハードル。
でも、これだけたくさんの愛情(と、ちょっと面倒くさい過保護さ)に守られているなら、焦って彼氏を作る必要なんて、本当にないのかもしれない。
(第7話 へ続く)
私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?
第7話:本日の妹は、ばぶちゃんにつき。
ことの始まりは、私がリビングのソファでうたた寝をしてしまったことだった。
最近、学校のテスト勉強で少し寝不足が続いていたせいか、お気に入りのクッションを抱きしめたまま、完全に意識を飛ばしてしまっていたらしい。
「……ん……」
ふと目が覚めると、視界がピンク色のモコモコした何かに覆われていた。
ゆっくり体を起こすと、私の体にはこれでもかと何枚もの毛布が掛けられており、さらに頭の下には、いつの間にか可愛いキャラクターの枕が敷かれている。
「あ、起きた? ばぶちゃん、よく眠れた?」
目の前にいたのは、JO1の川西拓実だった。ふにゃふにゃとした100点満点の笑顔で、私の頭を優しく撫でてくる。
「拓実にぃ、ばぶちゃんって呼ばないで……。てか、この毛布の量なに?」
「だってここな、寝顔が完全に赤ちゃんやったからさ。蓮くんと『風邪引いたらいかんね』って言って、みんなで毛布持ち寄ったんよ」
見ると、隣には川尻蓮が座っていて、私のために温かいミルクココアをフーフーと冷ましてくれていた。
「はい、ここな。まだちょっと熱いから、ゆっくり飲んでね」
「蓮にぃ、ありがとう……って、だから扱いが赤ちゃんすぎるってば!」
「あはは、可愛いからいいの」
蓮にぃが目を細めて笑うと、キッチンから良い香りと共に、INIの木村柾哉と後藤威尊がやってきた。
「ここな起きたの? ちょうど良かった、はい、あーん」
柾哉にぃがスプーンですくい上げたのは、細かくすり下ろされたリンゴだった。
「え、柾哉にぃ、私これ普通にシャキシャキ食べられるよ!?」
「ダメだよ〜、寝起きは胃に優しいものじゃないと。ほら、威尊が頑張ってすり下ろしたんだからね?」
「そうやでここな! 栄養満点、愛情満点やからな。ほら、あーん!」
威尊にぃにキラキラした目で見つめられ、断りきれずに口を開けると、シャリシャリとした甘いリンゴが口に広がる。美味しい。美味しいけど、絵面が完全に離乳食である。
「なになに、ここな、起きたの?」
そこに、JO1のプリンス・白岩瑠姫と、金城碧海が入ってきた。
瑠姫にぃは私の前にしゃがみ込むと、私の前髪が目にかからないように、持ってきた可愛いイチゴのヘアピンでパチン、と留めた。
「うん、これで可愛いお顔がよく見える」
「瑠姫にぃ、これ外でつけられないやつ……」
「家の中だからいいの。なぁ、碧海?」
話を振られた碧海にぃは、ポーカーフェイスのまま、そっと私の背中に「トントン」とリズミカルに手を当て始めた。
「……寝不足なんだろ。もっと寝てていいぞ」
「碧海にぃ、そのトントンは本当に赤ちゃんを寝かしつけるやつだから……っ!」
不器用な優しさに包まれて私が悶絶していると、さらにINIの年下組とボーカル組が乱入してきた。
「あ! ここなが赤ちゃんになってる! 洸人くん見て、めっちゃ可愛い!」
松田迅がはしゃぎながら、私の両頬をぷにぷにと突っついてくる。
「おい迅、あんま突っつくなよ」と言いつつ、西洸人も「……まぁ、確かにちょっと小さくて赤ちゃんっぽいな」と、私の頭を優しくわしゃわしゃと撫で回した。
「ここな、これ俺が選んだ超柔らかい素材のクッション。使いな」
「こっちゃん、喉痛くない? 痛かったら俺が子守唄歌ってあげよっか?」
藤牧京介と髙塚大夢の2人が、過保護全開で両サイドからクッションを詰め込んできたり、声をかけてくれたりする。
「うわぁ、ここな、なんか雛鳥みたいに囲まれてるなぁ(笑)」
池﨑理人が大口を開けて笑うと、佐野雄大が「よし、じゃあみんなでここなをハグする会、開催しよか!」と両手を広げた。
「ちょっとみんな! 近い、近いってばーーー!」
22人の圧倒的な包容力と「可愛い!」の嵐に包まれて、私の顔は真っ赤。
学校では「しっかり者のここなさん」なんて言われてるけど、この家でお兄ちゃんたちに囲まれている限り、私は一生、彼らの可愛い「ばぶちゃん」から卒業できそうにない。
(第8話 へ続く)
この次が忙しくて書けそうにないです…泣
まぁ気長に待っていてください!泣
私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?
第8話:ラポネハウスの料理対決(胃袋を掴むのは誰だ!?)
「ばぶちゃん」扱いされた怒涛の週末が明け、新しい一週間が始まった。
今日も学校で親友のりんかと「今日のお兄ちゃんたちのバグ度」について報告会を済ませ、平穏に(?)帰宅した夕方。
玄関を開けた瞬間、私は異様な空気に包まれた。
「……あれ? 静か……?」
いつもなら「ここなおかえりー!」と誰かしらが突進してくるはずの我が家が、不気味なほど静まり返っている。ただ、奥のキッチンの方から、ただならぬ熱気と、ものすごく美味しそうな香りが漂ってきていた。
恐る恐るリビングのドアを開けると――。
「あ、ここな。おかえり」
JO1のリーダー・與那城奨が、なぜか「審判」と書かれたタスキを胸にかけて腕を組んでいた。その横には、同じくタスキをかけたINIのリーダー・木村柾哉。
「奨にぃ、柾哉にぃ、これ何……?」
「ふふ、ここな。今日はね、君の『お疲れ様会』を兼ねた、【第一回・ここなの胃袋を掴め!ラポネ男の料理対決】の開催日だよ」
柾哉にぃが爽やかに100点満点の笑顔で告げる。
見ると、広大なアイランドキッチンには、エプロンをきっちり締めたメンバーたちが火花を散らして立っていた。
「ここなおかえり! 今日はここなが一番好きな、ハンバーグ対決やで!」
JO1のメインボーカル・河野純喜が、フライパンを片手にテンション高く叫ぶ。
「純喜くん、うるさい。ここながびっくりしてる。……ここな、俺の和風おろしハンバーグ、楽しみにしててね」
その横で、INIの藤牧京介が、職人のような真剣な目でタマネギをみじん切りにしている。目が全然痛くなさそうなのはさすがアイドルだ。
「ちょっと待って、参加者多くない!?」
キッチンには、純喜にぃ、京介にぃの他に、川西拓実、後藤威尊、許豊凡(フェンファン)、大平祥生、尾崎匠海の姿が。他のメンバーたちはリビングのソファで「いけー!」「そこ焦がすなよ!」と野次馬(観客)として大盛り上がりしている。
「ここな、こっち座って待ってて」
JO1のプリンス・白岩瑠姫が、私のために特等席の椅子を引き、頭をポンポンとしてくれた。その隣では、INIの癒やし担当・佐野雄大が「ここな、どっちが勝つと思う〜? 俺は拓実くんのハンバーグに一票!」とすでにワクワクしている。
「はい、お待たせ! まずはJO1チームから!」
最初に運ばれてきたのは、純喜にぃと拓実にぃ、祥生にぃが作った「特製チーズインデミグラスハンバーグ」。
お皿が置かれた瞬間、じゅわぁぁと良い音が響く。拓実にぃが「ここな、はい、あーん」と、フォークで小さく切ったハンバーグを口元に運んできた。
「あ、自分で食べるよ……!」
「アカン、これは俺が食べさせたいねん。ほら、あーん」
拓実にぃのふにゃっとした笑顔の圧力に負け、口に運ぶ。
肉汁が口いっぱいに広がって、中からトロットロのチーズがあふれ出た。
「おいしい……! めっちゃジューシー!」
「よっしゃあああ!!」純喜にぃがガッツポーズで叫び、祥生にぃが「良かった〜、ここなのために隠し味に蜂蜜入れたんだよ」とふんわり微笑む。
「ちょっと待った! INIチームも負けてへんで!」
次に威尊にぃ、フェンファンにぃ、匠海にぃ、京介にぃが運んできたのは、「彩り野菜の和風おろしハンバーグ」。
盛り付けが完全に高級和食レストランのそれである。フェンファンにぃが「寝不足のここなの胃に優しいように、大根おろしと大葉でさっぱり仕上げたよ」と知的に解説してくれた。
京介にぃがじっとこちらを見つめる中、一口食べる。
「……んん! さっぱりしてて、お肉の旨味がすごい! いくらでも食べられる!」
「だろ?」京介にぃがドヤ顔で少し照れくさそうに笑い、匠海にぃが「やったー! 京介とタマネギ炒めた甲斐があった!」とはしゃいでいる。
「うわ、どっちもマジで美味そう……。ここな、俺にも一口ちょうだい」
ソファから身を乗り出した西洸人が、私の皿を覗き込んできた。
「洸人くん、ここなの分を取っちゃダメでしょ!」と髙塚大夢がすかさず突っ込む。
「俺もここなが残したら食べよ〜っと」と松田迅がニヤニヤしていると、
「迅、ここなは全部食べるから残らないぞ」と金城碧海がクールに牽制した。
「さあ、ここな! 判定の時だ!」
奨にぃと柾哉にぃが、ホワイトボードを前にして私を促す。
キッチンのお兄ちゃんたちも、リビングの観客席のお兄ちゃんたちも、全員が固唾をのんで私を見つめていた。22人分の超絶イケメンな視線が私一人に集中する。この空間、やっぱり贅沢すぎて頭がクラクラする。
「ええっと……選べないくらい、どっちも世界一美味しいです!」
私が両手を挙げてそう言うと、一瞬の静寂の後、
「まぁ、ここなが幸せならドローでええか!」と川尻蓮がふにゃふにゃと笑い、全員が「そうだね!」「ここなが喜んでくれたなら合格!」と大歓声に変わった。
「じゃあ、残りの22人分、みんなで食べよーーー!」
結局、全員で大試食会が始まり、リビングは一瞬でいつもの賑やかな男子校状態に。
私の胃袋は、お兄ちゃんたちの規格外の愛情で、今日もパンパンに満たされるのだった。
(第9話 へ続く)
私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?
第9話:まさかの三者面談!?我が家の代表は誰だ会議
「――というわけで、来週、進路指導の三者面談があるから。保護者の方にプリント渡しておいてね」
担任の先生の言葉に、私は目の前が真っ暗になった。
三者面談。それは、普通の高校生にとっては少し憂鬱なイベント。しかし、私にとっては【国家機密(家族の正体)が崩壊しかねない大ピンチ】を意味していた。
案の定、その日の夜。リビングでプリントを提出した瞬間、ラポネハウスに激震が走った。
「三者面談……!? ここなの学校に、保護者として行けるっていうことか!?」
JO1の河野純喜が、プリントを両手で掲げながら目を見開いている。
「ちょっと純喜、声が大きい。ここなが耳塞いでるでしょ」
INIのリーダー・木村柾哉が窘めつつも、その目は完全に「やる気」に満ちていた。
「でも、これは一大事だよね。ここなの将来を決める大事な面談だし、誰が保護者代理として行くべきか、ちゃんと考えないと」
「待って。誰が行くかって、普通に奨にぃか柾哉にぃのどっちかでしょ?」
私が慌てて言うと、ソファの奥から「いや、それは認められないね」と、JO1のプリンス・白岩瑠姫が綺麗な脚を組んで割り込んできた。
「こういうのは、一番頼りになる大人の男が行くべきでしょ。例えば、俺とか」
「瑠姫くんが学校行ったら、そこだけ白い薔薇とか咲き誇って面談どころじゃなくなるからダメ」
INIの藤牧京介が、冷静極まるツッコミを入れる。
「ここはやっぱり、勉強を教えられる知性派が行くべき。フェンファンくんとか、……まぁ、百歩譲って俺とかさ」
「京介にぃ、自分をねじ込まないで!」
キッチンからハーブティーを持ってきた許豊凡(フェンファン)が、優しく微笑みながら私の隣に座った。
「ふふ、でも京介の言う通り、僕ならここなの進路の相談にも論理的に乗れると思うよ。先生との対話も任せて」
(フェンファンにぃなら安心かも……)と私が思いかけた、その瞬間。
「あーーーっ! ズルイ! フェンファンくんずるい! 俺もここなの学校行きたい!」
INIの末っ子・松田迅が、大型犬のごとくソファにダイブしてきた。
「俺が一番ここなと年齢が近いから、先生ともフランクに話せるって! ね、洸人くんもそう思うよね!?」
話を振られた西洸人は、雑誌から目を離さないまま、ふっと鼻で笑う。
「迅、お前が行ったらただの保護者参観じゃなくてファンミーティングになるだろ。……まぁ、俺がビシッとスーツ着て行けば、先生も舐めた態度取ってこないと思うけどな」
「洸人くん、それじゃ保護者っていうか、カタギの人に見えなくなるからダメだって(笑)」
池﨑理人が大口を開けて爆笑している。
「みんな、ちょっと落ち着いて〜」
JO1の川尻蓮が、ふにゃふにゃと笑いながらみんなをなだめる。
「ここは公平に、オーディションで決めない?」
「オーディション!?」
「うん。志望動機と、先生への挨拶のシミュレーション。ここなが審査員ね」
なぜか始まった【第一回・ここなの三者面談・保護者枠争奪オーディション】。
トップバッターは後藤威尊。
「失礼します! ここなの兄の後藤です! ここなは家でも毎日欠かさずストレッチをしており、体幹がブレない素晴らしい妹です!」
「学校の面談で体幹の話はしないの!」
続いて金城碧海。
「……先生。ここなに何かあったら、俺がいつでも守るんで。……あ、これ、つまらないものですが(実家から送られてきた高級メロンを出す)」
「碧海にぃ、それ賄賂(わいろ)みたいになってるから!」
さらに川西拓実。
「先生、ここなはいつも頑張ってます。だから、宿題は少なめにしてもらえると助かります。あと、給食のおかわりって余ってますか?」
「拓実にぃ、高校は給食じゃなくてお弁当! あと自分のこと聞かないで!」
佐野雄大は「先生、ここなが可愛すぎて毎日生きてるのが幸せです!」と号泣し始め、髙塚大夢は「先生、学校の飼育小屋のウサギの体調はどうですか?」と斜め上の質問をくり出す始末。
次々と繰り広げられるカオスな面談シミュレーションに、私のライフはすでにゼロ。
「……あの、もう、りんかちゃんのお母さんに頼もうかな……」
私が遠い目をしながら呟くと、リビングにいた22人が一斉に「それはダメ!!!!」と絶叫した。
「俺たちの可愛いここなの面談を、他の人に譲れるわけないでしょ!」と與那城奨が保護者の顔(本物)で迫ってくる。
結局、会議(オーディション)は深夜まで長引き、最終的に「一番落ち着いていて、スーツが似合って、先生を緊張させない人」という超厳正な審査の結果、奨にぃと柾哉にぃの『Wリーダーコンビ』が2人で同行することに決まった(2人行く時点で普通じゃないけれど、22人来るよりはマシだと自分に言い聞かせた)。
「ここな、安心して。俺たちが完璧にサポートするからね」
「うん、先生にここなの良いところ、100個くらい言ってあげるから!」
優しく微笑む奨にぃと、キラキラした笑顔の柾哉にぃ。
……いや、良いところ100個も言われたら、逆に先生が困っちゃうよ!
最強で、最愛で、やっぱりちょっと過保護すぎるお兄ちゃんたち。
来週の三者面談、一体どうなってしまうの――!?
(第10話 へ続く)
私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?
第10話:前代未聞の体育祭!ガチ勢すぎる応援団
三者面談は、奨にぃと柾哉にぃの完璧な(ただし過保護ワード満載の)大人の対応のおかげで、なんとか先生を気絶させずに乗り切ることができた。
しかし、一難去ってまた一難。
次に待ち受けていたのは、高校生活最大のイベント、【体育祭】だった。
「ここな、今年の体育祭、何の種目に出るの?」
リビングでハサミを片手に、JO1の大平祥生がふんわりと聞いてきた。彼は今、私のために可愛いヘアアレンジの動画を熱心に研究してくれている。
「私はね、クラス対抗のリレーの第一走者と、玉入れに出るよ」
「リレー!? ここな、走るん!? 転んだら大変や、怪我せんように俺が特製のプロテイン作ったる!」
キッチンから河野純喜がプロテインシェイカーを激しく振りながら飛び出してきた。
「純喜くん、ただの体育祭だからプロテインはやりすぎ」
INIの藤牧京介が呆れ顔で突っ込む。
「それよりここな。リレーで走る時、頭の中で4つ打ちのビートを刻むとリズムよく走れるよ。……あ、当日、俺たちも応援行くから」
「えっ!? 応援……って、みんなで来るの!?」
私の頭に、第5話の校門大パニックの記憶がよぎる。
「あったりまえじゃん!」
JO1のプリンス・白岩瑠姫が、ソファで優雅にコーヒーを飲みながら言った。
「ウチの姫が全力で走る姿を、見逃すわけないでしょ。22人分の特等席、学校のグラウンドに用意してもらえるのかな?」
「瑠姫にぃ、そんな席ないから! 一般の保護者席に紛れて!」
そして迎えた、体育祭当日。
親友のりんかが、朝から顔を真っ青にして私の席にやってきた。
「ここな……大変……。保護者席のエリア、あそこだけ完全に『LAのセレブ街』みたいになってる……」
「嘘でしょ……」
恐る恐るグラウンドの保護者席に目をやると、バケットハット、高級サングラス、黒マスクでガチガチに変装した、スタイルの良すぎる11人×2の集団が、ものすごいオーラを放って一列に並んでいた。
変装しているはずなのに、隠しきれない芸能人オーラ。周囲の保護者や他校の生徒たちが「え、何あのイケメン集団……」「モデルの撮影?」とざわざわしている。
「位置について、よーい……」
パンッ!とピストルの音が響く。
リレーの第一走者として、私は必死に地面を蹴った。
その瞬間、保護者席から地響きのような大声援が湧き上がった。
「ここなーーーっ!! 行けーーーっ!! 前だけ見ろ!!」
西洸人がマスクを半分外して野生的な声を張り上げ、その横で松田迅が「ここな可愛いよーーー!! 世界一速いよーーー!!」と特大の団扇(いつ作ったの!?)をぶんぶん振っている。
「ここな、そのまま、右足から一歩踏み出して! フォーム綺麗だよ!」
川尻蓮がふにゃふにゃと笑いながらも、ダンスの指導並みに的確なアドバイスをメガホンで叫んでいる。
「キャーーーーーッ!?」
私の周囲を走っていた他クラスの女子たちが、お兄ちゃんたちの顔(チラ見えする国宝級イケメンビジュアル)と美声に気を取られ、次々と失速していく。
(みんな、前見て走ってーーー!!)
お兄ちゃんたちの「顔面兵器」のおかげ(?)で、私のクラスは見事リレーで1位を獲得した。
お昼休み。木陰でお弁当を食べようとりんかと歩いていると、
「ここな、お疲れ様。はい、冷たいタオル」
木村柾哉が100点満点の爽やかスマイルで現れた。
「あ、柾哉にぃ、ありがとう。……みんな、目立ちすぎだよ!」
「ごめんごめん、つい熱くなっちゃって。あ、これ、純喜くんと威尊くんが朝4時に起きて作った特大三段重お弁当!」
後藤威尊が「ここな、お肉いっぱい食べてリカバリーや!」とエプロン姿(を想像させる私服)でドヤ顔をしている。
「ここな、本当にお疲れ。格好よかったぞ」
金城碧海が、私の頭をポンポンと大きな手で撫でてくれた。
「はい、これご褒美のイチゴタルト。潰れないように俺が死守して持ってきた」
川西拓実が、宝物のように大事に抱えていたケーキの箱を差し出してくれる。
「あの……ここなのお兄ちゃん方、本当にありがとうございました……眼福です……」
隣でりんかが、お弁当のおかずを喉に詰まらせそうになりながら拝んでいた。
「ここな、午後の玉入れも俺たち全員で、心のカゴに入れる勢いで応援するからね!」
與那城奨が頼もしく胸を張ると、22人が「おーーーっ!!」と拳を突き上げた。
学校行事のたびに心臓が縮む思いだけど、誰よりも大きな声で自分を応援してくれる22人のお兄ちゃんたちがいる。
恥ずかしいけれど、やっぱりちょっと誇らしい。
私の騒がしくて贅沢な青春は、まだまだ加速していきそうだ。
(第11話 へ続く)
私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?
第11話:妹、まさかの発熱!ラポネハウス救急隊、出動!
「……うぅ、頭が痛い……」
朝、目が覚めた瞬間、体が鉛のように重かった。
なんとか起き上がろうとしたけれど、視界がぐわんぐわんと揺れる。枕元のスマホで熱を測ってみると、体温計に表示されたのは『38.2℃』の数字。
(うわ、完全に風邪引いた……。体育祭で張り切りすぎたかな……)
学校を休む連絡をしなきゃ、とおぼつかない足取りで部屋のドアを開けた瞬間。
廊下を通りかかったJO1のメインボーカル・河野純喜とばったり目が合った。
「あ、ここな、おかえり……って、え!? ここな、顔真っ赤やん! どうしたん!?」
「純喜にぃ、ちょっと風邪引いちゃったみたいで……」
「大変や!!! みんなーーーっ!! ここなが倒れたぞーーーっ!!!」
「倒れてない、ただの風邪!!」とツッコミを入れる間もなく、純喜にぃのハスキーボイスが巨大な一軒家に響き渡り、次の瞬間にはドタバタと22人分の地響きが階段を駆け上がってきた。
「ここな!? 大丈夫!?」
最初に部屋に飛び込んできたのは、INIのリーダー・木村柾哉。いつもの100点満点の笑顔はどこへやら、完全にパニック顔で私の wおでこに手を当ててくる。
「うわ、熱い! 奨くん、冷えピタ! 洸人くん、体温計!!」
「おう、冷えピタ持ってきた! ここな、じっとしてろよ」
西洸人が、真剣な目で私の前髪を優しくかき上げ、冷えピタをそっと貼ってくれた。手つきがめちゃくちゃ優しい。
「ここな、ポカリ飲む? それともゼリー? 何でも言って、俺が今からコンビニの棚ごと買ってくるから!」
JO1の木全翔也が財布を握りしめて今にも飛び出していきそうだ。
「翔也にぃ、棚ごとはいらない(笑)」
気がつくと、私のベッドの周りは、心配そうな顔をした超絶イケメン22人で完全に埋め尽くされていた。部屋の酸素濃度が薄い。
「ほらみんな、ここなが窮屈そうでしょ。看病チーム以外は一回リビングに下りて」
JO1のリーダー・與那城奨が、頼もしいお父さん(お兄ちゃん)の顔でみんなを仕分ける。
「じゃあ、僕が特製のお粥作るね。ここなの好きな味にするから」
INIの許豊凡(フェンファン)がエプロンを締め直してキッチンへ向かう。その横で後藤威尊が「俺、リンゴのすりおろし(リベンジ)の準備します!」と鼻息を荒くしていた。
数分後、部屋に残ったのは、私の両サイドをがっちり固めるメンバーたち。
「ここな、しんどいねぇ……。俺がずっと手握ってたるからな」
INIの癒やし担当・佐野雄大が、大型犬のようなウルウルした目で私の手を両手で包み込んでくる。
「雄大にぃ、風邪うつっちゃうよ?」
「ええねん、ここなの風邪なら喜んで貰うわ!」
「雄大、バカなこと言ってないでここなを寝かせなよ」
JO1の川西拓実が呆れつつも、私の頭をふにゃっと笑いながら撫でてくれた。
「ここな、喉痛い? もし退屈なら、俺が耳元で優しい子守唄歌ってあげようか?」
INIの藤牧京介が、世界一贅沢な提案をしてくる。
「京介の歌声は贅沢だけど、今は静かに寝かせてあげなって(笑)」
髙塚大夢がツッコミを入れながら、枕元に新しく買ってきた可愛い加湿器をセットしてくれた。
その時、コンコンとドアが開き、JO1のプリンス・白岩瑠姫が入ってきた。
手には、なぜか冷えピタを何枚も貼った木村柾哉と松田迅、そして池﨑理人の姿が。
「ここな、こいつら『ここなの風邪を代わりに引き受ける!』って言って、おでこに冷えピタ貼って部屋の前で念力送ってたから連れてきた」
「何やってんの、お兄ちゃんたち……!!」
パニックになりすぎておかしな行動に出るお兄ちゃんたちが愛おしすぎて、熱があるのに笑ってしまう。
「……ここな」
最後にひょっこり顔を出したのは、金城碧海。
ポーカーフェイスのまま、私のベッドの足元に、そっと手作りの「お守り」を置いた。
「……早く良くなれよ。ここなが元気ないと、家の中が暗い」
不器用だけど、誰よりも優しい碧海にぃの言葉に、胸がじーんと温かくなる。
そこへ、フェンファンにぃ特製の出汁が効いためちゃくちゃ美味しいお粥が運ばれてきて、柾哉にぃに「あーん」されながら完食。
川尻蓮が「ここな、おやすみ。ずっと側に入りからね」と、私の髪をトントンと規則正しく叩いてくれる心地よいリズムに包まれながら、私は再び深い眠りに落ちていった。
◇◇◇
夕方、目が覚めると、熱はすっかり下がって体も軽くなっていた。
リビングへ下りていくと、そこには。
「ゲホッ……ハクション!」
「うぅ、なんか頭が重い気がする……」
冷えピタをおでこに貼った柾哉にぃ、迅にぃ、理人にぃ、そしてなぜか隣にずっといた雄大にぃの4人が、ソファで丸くなって倒れていた。
「ちょっとみんな! 本当に風邪うつってるじゃん!!」
「あはは、有言実行だね」と蓮にぃが笑う。
どうやら本当に、私の風邪を全部引き受けてくれたみたいだ。
「よし! 今度はここなが、みんなの看病する番だね!」
奨にぃが笑うと、倒れていた4人が「え! ここなが看病してくれるん!?」「やったー!」と、病人とは思えない大歓声(ただしハスキーボイス)を上げた。
過保護で、バカげてるくらい真っ直ぐで、世界一愛おしいお兄ちゃんたち。
今度は私が、22人分の愛情を返す番になりそうだ。
(第12話 へ続く)
私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?
第12話:ラポネ救急隊、立場逆転!?今度は妹がナース!
「はい、雄大にぃ、次はお水飲んで。迅にぃは冷えピタ貼り替えるよ!」
「ここなナース……優しすぎて、俺もう一生このままでええわ……」
「迅、贅沢言うな! ここな、俺のおでこも、その、トントンして……」
リビングの巨大なソファは、完全に『ラポネハウス臨時病棟』と化していた。
私の風邪を文字通り引き受けてダウンした、柾哉にぃ、迅にぃ、理人にぃ、雄大にぃの4人。マスク姿の私がテキパキとお世話をする様子を、看病免除(元気な)メンバーたちがリビングの端から微笑ましく、そして激しいジェラシーの目で見つめている。
「……いいなぁ。俺もここなに冷えピタ貼ってもらいたい」
JO1の川西拓実が、ゲームのコントローラーを握ったまま、あからさまに羨ましそうな声を漏らした。
「拓実くん、不謹慎(笑)。でも、ここなのエプロン姿、ちょっと新鮮で可愛いよね」
INIの髙塚大夢がハーブティーを淹れながら、ふにゃっと目を細める。
「ほら、みんな羨ましがらない。ここな、あまり無理しないでね? 4人分一気に看病するの大変でしょう」
JO1のリーダー・與那城奨が、心配そうに私の肩をポンポンと叩いた。
「大丈夫、奨にぃ! だって私、みんなにいつもこれ以上のことしてもらってるもん」
私が胸を張って笑顔を見せると、キッチンから良い香りが漂ってきた。
「ここな、4人のために、特製のスポーツドリンクゼリー作ったよ。冷やしておいたから」
INIの許豊凡(フェンファン)が、ガラスの器に綺麗に盛り付けたゼリーを運んできた。
「あと、俺がビタミンCたっぷりのフルーツカットしたで! ここなの愛情(スパイス)も入れといたからな!」
河野純喜がテンション高く、綺麗にウサギ型に切られたリンゴの皿を差し出す。
「純喜にぃ、ありがと! 4人とも、フェンファンにぃのゼリーと純喜にぃのリンゴだよ、食べて」
私がスプーンを手に取ると、寝込んでいたはずの池﨑理人が、ガバッと起き上がった。
「ここな、もしかして……『あーん』してくれる感じですか……!?」
「え? うん、起き上がるのしんどいでしょ?」
「理人、ずるいぞ! 次は俺な!?」
木村柾哉が熱で潤んだ目をさらに輝かせて順番待ちを始める。
世間のファンが見たら間違いなく絶叫する『国宝級イケメンへのあーんループ』。
しかし、当の私は完全に「お母さん」の心境である。大きな男の子たちが、美味しそうにゼリーを頬張る姿は、なんだかちょっと大型犬の餌付けみたいで面白い。
「ふふ、ここな、本当にお姉ちゃんみたいだね」
ソファの背もたれから顔を出した川尻蓮が、嬉しそうに目を細めて私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「蓮にぃ、これでもう看病はバッチリだよ」
ひと通り4人のケアを終え、ほっと一息ついてリビングの椅子に座ると、すっと目の前に温かいココアが置かれた。
「ここなもお疲れ様。はい、これ。頑張ったご褒美」
見上げると、JO1のプリンス・白岩瑠姫が、優しい王子様スマイルで私の隣に座った。
「瑠姫にぃ、ありがとう」
「ここなが元気になって本当によかった。……でもさ、次から風邪引いた時は、俺にも真っ先に頼ってよね? 4人にばっかり甘えられて、ちょっとジェラシーなんだけど」
綺麗な顔を少しだけふくれっ面にする瑠姫にぃ。過保護の方向性がやっぱりどこかおかしい。
「……ここな」
その時、いつの間にか後ろに立っていた金城碧海が、私の肩にそっと自分の大きな上着を掛けてくれた。
「ぶり返したら意味ない。看病もいいけど、お前が一番大事だからな」
「碧海にぃ……うん、ありがとう!」
不器用な優しさに胸がじーんとしていると、
「あーーーっ! 碧海くんだけずるい! 俺もここなに上着掛けたい!」
熱が下がってきたらしい松田迅が、冷えピタを貼ったままベッドから飛び出してきた。
「迅、大人しく寝てろって(笑)」
西洸人が笑いながら迅の襟首を掴んで引き戻す。
結局、夜になる頃には4人の熱もすっかり下がり、ラポネハウスはいつもの、うるさいくらいに賑やかな男子校状態へと戻っていった。
「やっぱり、我が家はこうじゃなくっちゃね」
リビングの真ん中で、22人のお兄ちゃんたちの笑い声を聞きながら、私はココアを一口すする。
お互いに過保護で、お互いに全力で。
世界一騒がしくて、世界一贅沢な私の毎日は、これからもずっと、この大好きな22人のお兄ちゃんたちと一緒に続いていくんだ――。
(第13話 へ続く)
私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?
第13話:専属スタイリストが22人!?クローゼット大爆発警報!
「……うーん、着る服がない……」
日曜日。本格的な夏を前に、私は自分の部屋のクローゼットを開けて頭を抱えていた。
去年着ていた服はなんだか今の気分と違うし、丈も少し短くなっている気がする。
「おーい、ここな? お昼ご飯できたぞー……って、何してんの?」
部屋のドアをコンコンと叩いて入ってきたのは、JO1の木全翔也。手にはマヨネーズをたっぷりかけたトースト(彼の定番)を持っている。
「あ、翔也にぃ。今、衣替えしてたんだけど、今年着る服が全然なくて困ってたんだよね」
「えっ、服がない!? それは大変じゃん! みんなーーー!! ここなの服がないってーーー!!」
「だから翔也にぃ、声が大きいってば!」
第11話の風邪のときと同様、翔也にぃの特大ボイスは一瞬でラポネハウスに響き渡り、次の瞬間には「何事だ!?」とドタバタ足音が廊下に響いた。
「ここな、服がないって本当!? よし、今すぐパリのコレクションから買い付けよう!」
JO1のプリンス・白岩瑠姫が、冗談抜きでスマホの画面(高級ブランドサイト)をタップしながら部屋に滑り込んできた。
「瑠姫にぃ、そんな大ごとじゃない! 普通に原宿とかで買えるやつでいいの!」
「原宿行くなら、俺がトータルコーディネートしたるわ!」
INIの「オシャレ番長」こと後藤威尊が、目をキラキラさせて参戦してきた。
「ウチの可愛い妹には、世界一洗練された服を着せなあかんからな。ちょっと待って、俺のクローゼットから参考になりそうな服持ってくる!」
「いやいや、威尊のコーディネートはたまに個性的すぎるから。ここなには、もっとシンプルで洗練されたストリート系が似合うって」
雑誌を片手に現れたのは、西洸人。
「俺が普段着てるようなオーバーサイズのTシャツを、女の子がダボッと着るの、絶対に可愛いから。な? ここな、俺のTシャツ貸してやろうか?」
「洸人くん、それただの自分の趣味押し付けでしょ(笑)」
池﨑理人が大口を開けて笑いながら、私のクローゼットを覗き込む。
「俺は、ここなにはちょっと落ち着いた、古着mixみたいなオシャレをしてほしいな〜」
気がつくと、私の狭い(といっても普通の広さの)部屋に、JO1とINIのオシャレ自慢たちが続々と集結。
ベッドの上には、お兄ちゃんたちが「これここなに似合うんちゃう!?」「いや、こっちのセットアップの方が絶対可愛い!」と持ち寄った、彼らの私服(どれもハイブランドや超オシャレな服ばかり)が山積みにされていく。
「なになに〜? 楽しそうなことしてるやん!」
INIの癒やし担当・佐野雄大が、松田迅を引き連れてひょっこり顔を出した。
「ここな、これ着てみて! 俺が最近買った、ピンクのモコモコパーカー!」
「雄大にぃ、それ今の季節に貸されたら熱中症になる(笑)」
「あはは! じゃあ、俺が選んだこのシースルーのシャツは!?」と迅にぃ。
「迅、高校生にそれはちょっと露出が高すぎるからダメ!」と、後ろから木村柾哉と與那城奨の「Wリーダー保護者フィルター」が鋭くかかった。
「……ここな、これ」
人だかりの後ろから、金城碧海がすっと差し出してきたのは、シンプルな黒のキャップと、小さめのスポーティーなショルダーバッグ。
「……お前、この前『こういうの欲しい』って言ってたろ。やる」
「えっ、碧海にぃ! 覚えててくれたの!? ありがとう!」
不器用だけど、一番実用的なプレゼントをくれる碧海にぃ。それを見ていた川西拓実が「あ、碧海ずるい! 俺もここなにスニーカー買ってきたのに!」と、箱ごと差し出してきた。
「ちょっとみんな、ここなをオモチャにしないの(笑)」
川尻蓮がふにゃふにゃと笑いながら、私の頭をポンポンと撫でてくれた。
「でも、せっかくだから今日の午後は、みんなで大きいショッピングモール貸し切って、ここなのお買い物ツアーにしよっか」
「「賛成ーーー!!」」
「ええっ!? 貸し切りとか本当にやめてね! 普通に買い物させてーーー!!」
結局、その日の午後は、徹底的な「変装スタイルの22人」に代わる代わるエスコートされながら、大型ショッピングモールへ行くことに。
「ここな、これ試着室で着てみて!」
「次はこれ!」
と、藤牧京介や髙塚大夢、大平祥生たちにお洋服を次々と渡され、試着室から出るたびに22人から「可愛いーーー!!」「国宝指定!!」と大歓声(小声)が上がるという、恥ずかしさで爆発しそうな1日を過ごしたのだった。
両手いっぱいのオシャレなショップ袋と、お兄ちゃんたちの規格外の愛に包まれて、私のクローゼット(と心)は、これ以上ないくらいパンパンに満たされるのだった。
(第14話 へ続く)
私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?
第14話:誘惑が多すぎる勉強部屋!ラポネ家庭教師団の襲来
「……あかん、数式がゲシュタルト崩壊してきた……」
お買い物ツアーの翌週、私の部屋の机の上には、うず高く積まれた教科書とノート、そして絶望的な点数が予想される数学のプリントが広がっていた。
やってきてしまったのだ。一学期の【期末テスト期間】が。
「ここな〜、入るよ〜」
トントン、と控えめなノックと共にドアを開けたのは、INIの知性派・許豊凡(フェンファン)。手には、脳の活性化に良いという自家製のナッツとドライフルーツの小皿を持っている。
「あ、フェンファンにぃ……。数学が全然分からなくて、もう泣きそう」
「ふふ、どれどれ? ああ、この微分積分の公式ね。これはね、こうやってグラフに置き換えて考えると、すごくシンプルなんだよ」
フェンファンにぃが私の隣に椅子を引いて座り、滑らかな手つきでシャーペンを走らせる。教え方が天才的に分かりやすい。
(さすがフェンファンにぃ! これなら赤点回避できるかも!)
そう思ったのも束の間、部屋のドアが勢いよく開いた。
「ここなーーー! テスト勉強頑張ってるか!? 応援の歌、歌ったるわ!!」
JO1の河野純喜が、信じられないほどの声量で部屋に突進してきた。
「純喜にぃ、うるさい! 集中できないから歌わないで!」
「なんでや! 魂の応援ソングやぞ!」
「純喜くん、勉強の邪魔。ここな、純喜くんはシカトしてこれ食べな」
INIの藤牧京介が、冷たいココアのグラスを持って入ってきた。
「京介にぃ、ありがとう! ……って、なんかみんな集まってきてない?」
純喜にぃの声を聞きつけたお兄ちゃんたちが、次々と私の部屋に吸い込まれていく。気づけば、私の勉強部屋はまたしても超絶イケメンたちで超密状態になっていた。
「なになに、英語の長文読解? どれ、俺が発音してやろうか?」
JO1のプリンス・白岩瑠姫が、テキストを手に取って流暢な(そして無駄に甘い)英語を囁く。
「瑠姫にぃ、発音はめっちゃ良いけど、ただの耳の保養になって訳が頭に入ってこない!」
「じゃあ、歴史の一問一答は俺が相手してやるよ」
西洸人がベッドにドカッと腰掛け、問題集をめくる。
「ここな、鳴かぬなら殺してしまえ、ホトトギス。これは誰だ?」
「織田信長!」
「正解。じゃあ、俺よりカッコよくて、ここなに近づいていい男は誰だ?」
「……そんな男は地球上に存在しない?」
「よく出来ました、100点」
「洸人くん、どさくさに紛れて変な洗脳教育しないで(笑)」
池﨑理人が大口を開けて爆笑しながら、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ここな、世界史なら俺に任せて!」
INIのリーダー・木村柾哉が、100点満点の笑顔でノートを広げる。
「俺、暗記モノはダンスの振り付けみたいに体で覚えるの得意だからさ! はい、一緒に動いてみよう、ルネサンス!」
「柾哉にぃ、ルネサンスのポーズって何!? 逆に覚えられないよ!」
部屋の中が完全にカオスと化していく中、JO1の川尻蓮がふにゃふにゃと笑いながら私の肩をポンポンと叩いた。
「あはは、みんなここなに構いたくて仕方ないんだよね。ほら、ここな、これ俺からの差し入れ」
蓮にぃがくれたのは、糖分補給用の可愛いイチゴのチョコレート。
「……ここな」
その時、部屋の隅でじっと教科書を見つめていた金城碧海が、私のノートを指差した。
「……ここの計算、符号が逆。マイナスじゃなくてプラス」
「えっ!? あ、本当だ! 碧海にぃ、よく気づいたね!」
「……まぁな。俺、こういう細かいミス見つけるの得意だから。……頑張れよ」
ポーカーフェイスのまま、少しだけ耳を赤くして部屋を出ていく碧海にぃ。ツンデレの破壊力が凄まじい。
「ここな、もしテストで良い点取ったら、俺が遊園地連れてったるからな!」
川西拓実がこれまた最高のモチベーションを提示してくる。
「本当!? 拓実にぃ、じゃあ頑張る!」
「雄大も一緒に行くー!」と佐野雄大と松田迅が後ろではしゃぎ、それを與那城奨が「お前ら、ここなを誘惑するな(笑)」とまとめてリビングへ連れ戻していった。
22人の過保護すぎる家庭教師団による、最高に贅沢で、最高に集中できない勉強会。
翌日、学校で親友のりんかに「昨日、お兄ちゃんたち全員に勉強教えてもらった」と報告したら、「贅沢の極みすぎて、逆にバチが当たりそう」と頭を抱えられた。
お兄ちゃんたちの(少々うるさい)愛のおかげで、なんとか赤点は回避できそうだけど……彼らが近くにいる環境そのものが、私にとって一番の「集中力を乱す誘惑」なのかもしれない。
(第15話 へ続く)
私のお兄ちゃんは【国宝級イケメンアイドル】!?
第15話:世界一騒がしくて、世界一愛おしい我が家(最終回)
期末テストの結果は、お兄ちゃんたちの(賑やかすぎる)スパルタ指導のおかげで、なんと過去最高得点をマーク!
約束通り、拓実にぃや雄大にぃ、迅にぃたちに遊園地へ連れて行ってもらい、私の高校生活の一学期は最高の形で幕を閉じた。
そして迎えた、夏休みのある日の夕暮れ。
いつもは誰かしらの声で割れんばかりに賑やかなラポネハウスのリビングが、なぜかその日は、オレンジ色の夕日に染まったまま静まり返っていた。
「……あれ? みんな、まだお仕事から帰ってないのかな?」
学校の部活帰りの私は、誰もいない広大なリビングを見渡して、少しだけポツンとした気持ちになった。
いつもなら玄関を開けた瞬間から「ここなおかえりー!」と突進してくるお兄ちゃんたち。
「ばぶちゃん」と私を赤ちゃん扱いして毛布をかけてくれたり、学校の前にSPばりに現れて全校生徒をザワつかせたり、彼氏の条件で大真面目に会議を開いたり……。
「……私、すっかりあのお兄ちゃんたちの過保護さに慣らされちゃってるなぁ」
苦笑いしながらソファにカバンを置き、キッチンでお水を飲もうとした、その時だった。
カチャ、とリビングのドアが開く。
「あ、ここな。おかえり」
入ってきたのは、JO1のリーダー・與那城奨と、INIのリーダー・木村柾哉。いつもの『Wリーダー保護者コンビ』だ。2人とも、どこかソワソワした表情をしている。
「奨にぃ、柾哉にぃ、おかえり! みんなはまだお仕事?」
「ううん、みんなもう帰ってきてるよ」
柾哉にぃが100点満点の爽やかスマイルで、私の手を優しく引いた。
「ここな、ちょっと目、閉じててくれる?」
「え? なんで?」
「いいからいいから。はい、奨くん、ここなを案内して」
奨にぃの大きな手に優しく背中を押されながら、私は目を閉じたまま、ゆっくりとリビングの奥、そしてテラスへと繋がる大きな扉の前に導かれていく。
「よし、ここな。目を開けていいよ」
奨にぃの声に合わせてゆっくりと目を開けると――。
パンッ!!! パンパンッ!!!
「「「ここな、一学期お疲れ様ーーーっ!!!!」」」
鮮やかなクラッカーの音と同時に、テラスに広がっていたのは、信じられないほど豪華なホームパーティーの光景だった。
色とりどりの風船、飾り付けられたライト。そして何より、そこには大好きな22人のお兄ちゃんたちが、全員満面の笑みでスタンバイしていたのだ。
「ここなお疲れ! テスト頑張ったご褒美に、俺と威尊とフェンファンで、ここなの好きなメニュー全部作ったで!」
エプロン姿の河野純喜が、テンション高く特大のピザを掲げる。
後藤威尊と許豊凡(フェンファン)も「栄養バランスもバッチリやからな!」「たくさん食べてね」と優しく微笑んだ。
「ほら、ここな、こっち座って」
JO1のプリンス・白岩瑠姫が、私のために用意された主役の席をエスコートしてくれる。その隣では、藤牧京介と髙塚大夢が「はい、これ」と、冷たい特製ジュースを差し出してくれた。
「みんな……これ、私のために……?」
驚きと嬉しさで胸がいっぱいになって言葉に詰まっていると、川尻蓮がふにゃふにゃと柔らかく笑いながら、私の頭をポンポンと撫でてくれた。
「そうだよ。ここな、いつも俺たちのスケジュールに合わせて、色々我慢してくれたり、秘密を守ってくれたりしてるでしょ? だから、みんなで感謝を伝えたかったんだよね」
「そうそう! ウチの妹は世界一頑張り屋さんやからな!」
川西拓実がそう言って、唐揚げを私の口に「あーん」と運んでくる。
「拓実にぃ、おいしい……!」
「ここな、これ俺からのプレゼント。夏休みに一緒に出かけるとき、使ってよ」
西洸人が、オシャレな夏物の小物を私の頭にひょいと乗せた。
「洸人くんずるい! 俺もここなにプレゼントあるのに!」
松田迅と佐野雄大が後ろからわちゃわちゃと飛びついてきて、池﨑理人が大口を開けて爆笑している。
「……ここな」
ふと横を見ると、金城碧海がクールなポーカーフェイスのまま、小さな花束をすっと差し出してきた。
「……いつも、ありがとな。お前がいるから、俺たちも頑張れる」
不器用だけど、心の底からの碧海にぃの言葉に、ついに私の目から涙がポロリとこぼれ落ちた。
「あーっ! 碧海くんがここなを泣かせたー!」大平祥生と木全翔也が突っ込む。
「違う、嬉しくて……!」
私が涙を拭いながら笑うと、22人が愛おしそうに目を細め、リビングとテラスは温かい拍手と笑い声に包まれた。
テレビの中では、世界中を魅了する国宝級のトップアイドル。
でも、私の前で見せてくれるこの全力の笑顔と、ちょっとウザいくらいの過保護な優しさだけは、私だけの特別な特権。
「みんな、大好きだよ!」
世界一贅沢で、世界一騒がしくて、世界一愛おしい22人のお兄ちゃんたち。
私の、最高にハッピーでスリリングな毎日は、これからもずっと、この場所で続いていく――
(大好きなラポネハウスにて・完)
これで最終話になります!ありがとうございました!