むかしむかし、あるところに月下人狼がありました。
月下人狼を創った神様は、さまざまな役職たちをつくりました。
役職たちは神の言うままに村を作り、その村を平和にするために頑張っています。
でも...
役職たちにも苦悩がありました。
役職たちにも慈しみがありました。
役職たちにも思考がありました。
...役職たちそれぞれに、物語がありました。
これは、頑張る役職たちの声に耳を傾けて文字に起こしたものです。
さあ、みんなの声を聞いてみましょう。
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目次
村人の話
苦労者のお話。
僕は村人。
なんの能力も持たない人間。
占い師さんとか、狩人さんとか、能力を持っている人たちを見てると...
うん、たいへんだなっておもう。
だってそうでしょ?
みんなから期待されて、都合の悪い結果を出すと存在を否定されて。
あげくのはてには狼にたべられて...
本当にさんざんだよね。
でも、そんな中でも村を平和にしようと頑張ってることを、僕はすごいとおもった。
また邪険にされて泣いてた占い師さんをなぐさめたら、「私はあなたのために戦います。」っていわれた。うん、ありがたい。
...まあ、僕には僕なりの戦い方があるけどね。
占い師の話
重要なのに邪険にされがち。
だけど、村のために働く頑張り屋さんのお話。
私は占い師。
私の中に眠る占いの力によって狼を見破ることができます。
ですが...
最近、私の扱いがひどいです。
あるとき、占い師は私しかいないはずなのに、もうひとり占い師を名乗ったものがいたのです。
あ、狼じゃん。
処刑、一択じゃん。
そう思ったのですが...村人さんたちは口を揃えてこういいました。
「両方吊ればいいんじゃね?」
...え?
結果、エセ占い師は狼に加担する裏切り者の狂人くんでした。
結果、村人たちは全員狼に食べられてしまいました。
....もぉっ!
だったら吊らなきゃよかったじゃないですか!
私なら村の平和に|貢献《こうけん》できました!
なのに...なんでっ....くぅ...
よよよと泣き崩れる私に、村人たちが同情の目を向けていました。
その後、一人の村人が「大変だね」となぐさめてくれました。
次からも頑張ろうと思います。あの村人くんだけのために。
裏話
占い師をなぐさめた村人くんは「村人の話」に出演した村人です。
頑張れ占い師!負けるな占い師!
霊能者の話
能力持ちなのに役に立たないと言われ続けているけど、本当は結構メンタル強い能力もちの話。
|私《わたくし》は霊能者。
死んだ者が狼か村人かを見破れます。
占い師さまと違って私はみなさんの役に立たないと言われ続けております。
自分でも、そうおもっております。
ある日、占い師さまがこきおろされているのを発見しました。
なんでも結果をアピールしなかったせいで全員狼に食べられてしまったとか。
...ちょっとすっとしました。
そうです、私は能無しの村人さまたちとはちがって能力もちなのです。
それにくわえて私は占い師さまのようなへまはいたしません。
そうです、私はもっと評価されるべきなのです!
次の日から、私は狼さまにに食べられないよう、狂人さまになりすまして狼をかばってみました。
これが大当たり。狼さまはすっかり信用して油断し、占い師さまに正体を見破られて処刑されてしまいました。
村人さまたちは占い師さまを褒め称えました。
...私は?
どうやらあまりよくなかったようです。他の方法も試しましょう。
これからも私の待遇をあげるため、努力していきたいと思います。
占い師の手柄になりがちだよね、こういうの。
狩人の話
本当は守られたいけど身を呈して村人たちを守る漢の話。
俺は狩人。
夜、村人を食べに来る狼からみんなを守る正義の味方さ!
そう、俺は正義の味方なんだが...
すみません。ぶっちゃけ、狼怖いです。
できれば家でぶるぶるふるえていたいです。
銃をもつのもいやです。暴発とかこわくね?
とにかく!俺はこんな役職いやなんだ!
でも、なんだかんだびびりながらも毎日みんなを守っているよ。
え?なんでそこまでして守るのかって?
そう、あの日もそんなことを自問してたんだよ。
いまから逃げれば間に合うかな?なんて思ってたら...
きちゃいました。狼。でかいやつ。
ガクブルになった足を無理矢理動かして俺は銃を握った。
もう狙うとかそんなんじゃなくてバンバン乱射してたら...
狼のやつ、あっというまに逃げやがった!
どんなもんだい!とでも言うと思うだろ?
いや、無理だから。
そんなの言えないから。
そんなこんなでガクブルのまま朝までそこに座り込んでいた。
その朝、狼の正体がばれてあっというまに狼は処刑された。
村には平和が訪れたってわけよ!どんなもんだい!
....はい。いきりました。すみません。
でも、このときに確かに「村人を守った」っていう感じがしてさ。
それが忘れられなくて、俺は今でもみんなを守り続けている。
俺はビビリでこわがりな情けない、短所しかないようなやつだ。
だけど、俺はみんなの役に立てるよう頑張れる!
それがおれの唯一の長所だ!
狩人って難しいんですよ。
ピンポイントで食べられちゃう場所を狙うのはとっても難しいんです。
人狼の話
必死に生きて生きて生きようとする狼の話。
俺は人狼。
村にいるおろかな人どもを食べる狼だ。
俺は腹が減ってるから、もっともっと多くの村人を食べたいんだ!
だから、俺は村人を食べ尽くすために行動するんだぁぁぁぁぁぁっ!!
...あ、素を出していいんですか?
そうですか。飾らなくても大丈夫ですか。
一応こんなキャラでやってるんですよ。悪役ですし。
はい、こんな気弱そうなやつじゃあ狼っぽくないですもんね。
大変ですけど、なりきるのが意外と楽しい役職です。
狂信ちゃんとかは僕のうわべを見て崇拝してくれてますけど...
やっぱり人を騙すのはいけませんよね。
素直なのは大事です。
...僕が村人を食べちゃう理由、ですか。
実を言いますと...僕、人間の肉は苦手なんです。
はい。ちょっと苦いとこが特に。
B型の人食べたことあります?特に美味しくないんですよねぇ...
...ですよね。食べたことなんてありませんよね。
でも、村の中にある食料も限られていますし...
野菜とかも狼は食べられないんですよね。
そんな中だと...やっぱり、人間ぐらいしか食べるものがないんです。
もちろん、これがいけないとこだっていうのはしってます。
それでも食べなきゃ生きていけないので。
僕たちは生きるために食べているんです。
...なので、なるべく襲った村人は食べ残さないようにしてます。
骨までしっかり平らげるようにしています
それが、これまで生きてきた村人さんへの敬意の表し方だと思うので。
狼にだって事情はあるのです。
....僕は食べませんよ?誰も食べませんよ?
僕はチョコレートと卵焼きがすきな狼ですから!
狂人の話
狼くんを尊敬してるちょっとずれた子の話。
僕は狂人。
狼くんについていくことにした変な村人。
みんなは僕が狼くんと仲良くしてるって分かると「狂ってる」だの「おかしい」だの、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせてくる。
だけど...みんなは、狼くんのことを全然知らない。
狼くんは、とってもやさしい。
なぜか「狼らしいキャラ」に憧れているようで、ちょっと演じてる節もあるけど...
僕は知ってる。
狼くんは、いつも村人を食べるとき「ごめんなさい」って謝る。
謝ってから、骨ものこさないように全部食べる。
...あれは、狼くんなりの謝罪と感謝なんだとおもう。
自分を生かすために死なせてしまう村人への「ごめんね」
食べさせてくれた相手への「ありがとう」
いろんなものがつまってる。
そんな狼くんの気持ちに、僕は惹かれたんだと思う。
...あ、ちがうよ?人として好きってことだよ?ちがうからね?
あ、そういうのいりません。狼って人じゃないよねとか、そういうのいいです。
とにかく、僕は狼くんのことを尊敬してるんです。
たとえ村が壊滅しようと、僕が食べられちゃおうと...
僕は狼くんを尊敬して守り続けるんです。
狂人いるだけで狼のやりやすさが段違いなんだよね~^^
妖狐の話
実は生きていれば勝てるので強いと言われつつもビビりな狐の話。
僕は妖狐。
村を守ることもしないけど、村人を食べるわけでもないから狼くんともつるまないぼっちだ。
というか…多分狼くんには苦手と思われている節がある。たぶん、いや絶対、狼くんに噛まれかけたときに狐火をけしかけて追い払ったからだと思う。
そう、僕は狼に食べられることはない。全部追い払える。
最強だとおもったでしょ?だよね、僕も最初はそう思って天狗になってたんだ。
でも、ある日の晩、死ななーいってウハウハしてたら急に息ができなくなって…はい。そのままあっさり死にました。バカみたいですね。
死因が占い師に占われたせいだって知ったときにはもう占い師ちゃんが怖くなっちゃった。
先輩の仙狐さんにも助けてーって泣きついて見たけど、その先輩もあっさり死んじゃった。死因はやっぱり占い師ちゃん。
もう占い師ちゃんが怖すぎて占いとかおまじないとか、ああいうのが全部怖くなっちゃって…
ん?突然なんですか、血液型なんて聞いて。あ、僕はAB型ですよ。
…その本はなんですか?まさか血液型占いというやつなのでは…??そうじゃん!うわ、言っちゃったよ!
え、なになに?今日の運勢?
…水晶玉に注意、だって?やっぱダメじゃん!
火焔龍さん、ファンレターありがとう!初めてダァ(*゚▽゚*)
月下人狼には役職が100種類以上あるので、思いついたものから書いていきたいと思います。
爆弾魔、ニート、ストーカー…危ない名前ばっかりですけどね!
巫女の話
自分だけ助かってしまうことに負い目を感じている病み気味の子の話。
わたくしは巫女。
生まれつき持っている聖なる力で己をあらゆる邪の者から守ることができます。
…あの、その目で見ないでください。
明らかに「こいつ厨二病じゃんwww」って思ってる目ですよ、それ。
潰しましょうか?
ああ、申し訳ありません。いつもの癖で暴言を…治そうとは思ってるのですが、生まれつきの癖とはなかなか治らないものですね。
ああ、生まれつきといえばわたくしの力ですね。貴方はまだ馬鹿にしていらっしゃるようですが、貴方が思っているよりかはすごい物ですよ?
わたくしが能力を使えば狼様が食べに来ようが村人様方が処刑しに来ようが余裕で耐えられます。
それだけ巫女の力とは素晴らしいものなのです。
...はい。もちろん後ろめたさもあります。自分だけ生きてしまうのも、わたくしが食べられないからといって狼に食べられてしまう他の村人たちも、すごくいやです。
ですが、だからといって力を使わずにいようとはおもいません。今まで代々力を受け継いできてくれた先代や先々代の巫女様たちに申し訳ありませんからね。
だから....だから、わたくしは精一杯生きようと思います。洞察力を磨き、推理力を鍛え、少しでも村の平和に貢献できるように頑張りたいと思います。
わたくしは、聖職者様とちがって万能ではありませんから。
みなさんと同じように過ごし、眠り、平和を取り戻したいと思います。
聖職者ちゃんは、巫女の力を自分以外の誰かに使える子です。
爆弾魔の話
ちょっと変だけど...いや、完全に変な子のお話。
俺は|爆弾魔《ばくだんま》!
他人にこっそり衝撃によってドーンと二人ふっとばす爆弾を仕掛けて、スリルを楽しむ変人だ!
自分で変人とかいってる俺はちょっといたいと思われてるだろうが、俺はまちがいなく変人だ!
なんで爆弾なんてしかけるかって?そりゃあ、ワクワクするからだ!
知らないやつにこっそり爆弾を仕掛ける時のドキドキ感、そして爆発したときの爽快感がいいんだ!
村人とつるんでるとあーだこーだいわれるから狼の野郎といっしょにはいるが...俺はどうにもあいつは好かねぇ。なんか...人を喰うのにためらっているかんじがあるんだよなぁ。
食べなきゃいきられないなんていう大義名分がありながら楽しまないなんておかしいとおもうぜ!
だから、俺は狼に遠慮なんてしねぇ!爆弾をしかけたやつに干渉しようとするやつは狼でもヴァンパイアでも狩人でも全員爆発させてやるぜ!
自分で作った爆弾で誰かを吹っ飛ばす...やっぱり最高だな!
ファンレターありがとう!
嬉しすぎてグループチャットで絶叫したら友達が便乗して一緒に絶叫しましたwww
がんばろうとおもいます!
求愛者の話
お相手のことが好きで好きでたまらない子の話。
私は求愛者。
愛するあの人と添い遂げるために|奮闘《ふんとう》する女の子。
ねぇきいて!今日、彼に告白してみたの!
そしたらなんと...OKもらえちゃった!きゃーっ!!
彼は優しくて、女の子にも男の子にも人気で、かっこよくて、イケメンで、もう...好きになるところしかないの!
彼が好きな子も多かったから、私の彼氏になるっていってくれたときは心臓がばくばくしてこのまま死んじゃうんじゃないかと思った!
でも...今は、恋なんかしている場合じゃないよね。
今、村に人狼が潜んでいて、そいつを処刑しようと村人全員で頑張っているんだって。
だから、私も頑張らなきゃいけない。
だって、彼が狼に食べられちゃったら私もう....生きていけない。
そう、私は彼が死んだら後を追おうと思ってる。
村人に怪しまれて処刑されても、私の想いは変わらない。
たとえ...彼が、狼だったとしても。
私は彼が人であろうとなかろうと想い続けるって決めたんだ。
ただ...そうだなぁ。もしも、彼が狼じゃなくて、村に平和が訪れたら...
...私は、村人全員殺しちゃうと思う。
だってこれはチャンスだよ?人狼騒ぎに乗じて村人は私たち二人っきりになれたら...すてきだとおもわない?
そもそも、村人たちは私たちが結ばれるのをいやがってたそぶりさえあるもの。
そんなやつら...殺しちゃって、いいよね?
大丈夫、私たち二人なら村を受け継いでも生きていける。
だって...私たちは、強い愛の絆で結ばれているんだもの!
質問があったので答えます。
この世界には、月下人狼という大きいひとつの村があるわけではなく、月下人狼のなかに小さい村がたくさんあります。
例えば、「村人の話」と「占い師の話」の村と、「求愛者の話」の村は別です。
いうなれば、国の中に都市があるようなものです。
ややこしくてすみません。
赤ずきんの話
何度食べられても蘇ろうとするメンタル強めの女の子の話。
あたしは赤ずきん。
可愛くて健気なおばあちゃんっ子だよ。
…なんだい、思ってたのと違うって。あたしはもともとこうだよ。
はぁ、童話だぁ?あんなんイメージアップのための|脚色《きゃくしょく》が盛り込まれてるに決まってんだろ!つまり、性格を変えてでも出演オファーしたくなるくらい、あたしの顔はかわいいってことだな!おばあちゃんもそういってたし!
…うるさいね。確かにここは狼の腹の中だけど、ここでギャーギャー騒いでもどうにもならないだろ?それならあたしの顔を眺めてる方がずっと価値のある時間を過ごせるってもんだ。だからこうやって自己紹介してるんだよ?
あ!言っとくけどな、あたしはここでくたばるつもりはないよ。あたしはおばあちゃんにクッキーとワインを届けて、元気を出してもらわなきゃならないんだからね!
あたしを食べやがった狼さえ死んだら腹を突き破って出られる。そうしたら、今度こそおばあちゃんに美味しいものを届けるんだ!
だから…ちょっとだけ、狼が死ぬまでの間でいいからさ。
あたしとおしゃべりしてくれよ。
べっ別に!
寂しい訳じゃないからな!
ファンレターありがとう!
名前を入れてくれれば名前を呼んで感謝できるので、入れてくれたら嬉しいです!
今回は赤ずきんの話を書いてほしいとのリクエストがございましたので、筆を取らせていただきました。
今後もそういうリクエストは出来るだけ叶えていく所存です。
これからもよろしくお願いします!
サンタクロースの話
半人前だけど、それでも半人前なりに村に尽くそうとする見習いくんの話。
読者様からのリクエストより
僕はサンタクロースです!
みんなにプレゼントをあげるのが仕事です!
僕はまだ未熟者で、プレゼントの中身を選ぶことができません。
たまにはずれが届いたりして、プレゼントを届けた人を殺しちゃうときもあります。
誰が狼かもわからないので、狼くんにプレゼントを届けちゃうときもあります。
村の人たちみんなにプレゼントを届けたら、サンタはそっと村を去ります。
次の村にプレゼントを届けに行くのです。
優秀なサンタたちはみんな去っていきました。
僕はまだまだだからずっと村に残り続けるんだ。
僕が届けたプレゼントが、僕ら村人たちが狼に立ち向かうすべになりますように。
リクエスト作品です。
僕が書いたらコミカルになっちゃうと思うので、こういうしっとり系も書けたらいいなと思っております。
めっちゃ秀逸!
ニートの話
もうすべてがどうでもいいので推しにすべてを捧げるやつの話。
俺はニート。
就職活動に失敗して実家で引きこもった社会のゴミ。
いや、自分でもわかってるんだよ。自分が社会のゴミだって。
でもそこから抜け出そうとは思わないんだよなぁ。
だって、俺もう26だし。
就職とかもう無理だし?
もう諦めた。
最近村に狼が出たらしい。
まあ、どうでもいいけど。関係無いし。
別に食われたってこの世界に未練なんてないしなぁ。
...あったわ。未練、あるわ。まだ推しのミラベルちゃんに愛を伝えてない!
別に狼はいてもどうでもいいけど、ミラベルちゃんのグッズだけは死守したい!
投票?狼を吊るための?どうでもいいわ!
狼がグッズを奪いに来たらどうするんだよ!
俺は推しさえ守れれば勝ちなんだ!幸せなんだ!
---
お久しぶりです。狼です。
今、僕の目の前で男が寝ています。
この人を食べようと思ってたんだけど...
...なんか、女の子のイラストとかいっぱいついたやつを抱えて寝てます。
なんですかこれ。かわいいですけど。
なぜでしょう、この男は食っても美味しくない気がします。
他にいなかったら食いますけど....
さすがに今は、ね。
とりあえず帰ります。
この人からはいやな臭いしかしないので。
---
おれは守りきったぞ!
よっしゃああああああ!
ああ...なんか達成感で眠くなってきたわ。
寝よう。寝たいし。
村人たちが呼んでるけど...しったこっちゃない...
....ぐー....ぐー.....
大量のファンレターありがとうございます!
一、二通ほど「君を離さない」だの「ぐへへへへ」だのとやばいのが来てましたが。
まあ、うちの教祖様ですから!
こういう友達がいるんです!
はい!()
共有者の話
さびしがり屋なかまってちゃんの話。
僕は共有者。
いわゆるテレパスで、同じテレパスのやつと夜の間にこっそりしゃべることができる。
ひとりぼっちだと誰ともしゃべれないので寂しい限りだけど、僕が今住んでいる村には、僕の他にもう一人テレパスがいる。
てなわけで、今回は寂しさなんてないはずなんだが...
{お前さぁ、なんだよ今日の投票は!あいつは狼じゃないって俺はなんどもいったのに!}
「だぁーかぁーらぁー!あれは完全にあの人が悪いって!疑うしかないよ!」
{はぁーん!?お前さっきから生意気!すっっげぇ生意気!}
頭に直接怒りの思念が伝わってくるせいで、僕の頭も爆発寸前だ。
「っつ......誰が、生意気だって?」
{お前以外にいねーよ!このバーカ!}
「ふんだ!なんでこんなやつと夜になってまで話さなきゃならねーんだよ!もういい!」
バカと正面から...いや、正面ではないけど言われて腹がたった僕は無理矢理思念の回路を切って寝転んでいたベッドから起き上がった。
なんだあいつ。年上だからって僕をガキ扱いしやがって。僕はもう子供じゃないし、村に貢献できるんだ!
僕はさんざん頭の中でぐちぐち言うと、そのままベッドにばふんと倒れ込んで、そのまま深い眠りについた。
---
翌日、相方が死んでいた。
みんなは「これも必要な犠牲だ」と割りきって議論を再開させていた。
そのことに文句なんてない。僕もいつもそうするからだ。今回はあんなこともあったから清々してもおかしくない。だけど...だけど、胸の内に現れたもやもやは消えなかった。
---
ひとりぼっちの夜がやって来た。
「...ねぇ、聞こえてる?」
そっとテレパシーで呼び掛けてみても返事はない。あたりまえだろう、死んでいるのだから。
でも、僕は必死になって呼び掛け続けた。
「返事をしてよ、ねぇ!...ねぇってば...」
最後の方は、涙で顔がぐっちゃぐちゃになっていたと思う。
「なんで...なんで涙なんかでてくるの...」
僕はいやだ、帰ってきてと子供のように泣きながら眠りについた。
---
翌朝も、彼はいなかった。あたりまえのように議論が進み、当たり前のように人が殺されていく。
--- ーーああ、お兄ちゃんも辛かったのかな。痛かったのかな。ーー ---
とてつもない後悔を感じるとともに、猛烈に相方に会いたくなってしまった。
僕が黙っている間に処刑は終わったようだ。一人の村人が吊し上げられていく。
その途端、その村人からすさまじい光が放たれ、思わず目を覆う。
周りを見ない間にこの世界の理によって、世界は夜になった。
{...ありゃ?なんで俺生き返ったんだ?}
そのときだ。今はもう絶対に聞こえないはずの声がしたのは。
「なんで....なんで、お前が」
{…あー、多分今日処刑されたやつが転生者だったんだろ。あいつのことだから、自殺願望こじらせたんじゃね?}
「...............」
もう限界だった。もう聞けないと思っていたあいつの声に何度も「ごめんなさい」って言いながら、僕は泣きじゃくった。
狼がいなくなり、平和になった村でも僕たちは夜の間に話し続けている。たまに喧嘩もしちゃうけど…僕たちは、変わらず二人仲良くおしゃべりし続けてる。
それがどれほどの幸せかを、僕は知っていた。
ファンレターありがとう!
ミルクティーさんのファンレターがはじめての長文で、ものすっごく褒めてくれて嬉しかったです。応援してくれてありがとう!
ファンレターは敬語でもタメ口でもオラオラ調でも大丈夫!応援してくれるみんなの心が伝わってきて嬉しいです!
これからもよろしくお願いします!
前にファンレターを書いてくれた噂の教祖様がまたファンレターをくれました。
ぐへへって笑っててちょっと悪寒がしたけど、丁寧に読んでくれたからこその笑いだと思っておきます。
…そう、ですよね?
パン屋の話
自分でできることを懸命にやりとげる漢の話。
俺はパン屋。
毎日パンを焼いて村人たちに提供する、この村の人気店の店長だ。
ああ?今何やってるかって?見りゃわかるだろ、パン種の準備だよ!明日はクロワッサンを焼く予定だ。楽しみにしておけ。
…毎日楽しみ?そうかい、照れること言ってくれんじゃねーか。
最近は狼が出てみんな死にそうな顔してるし、空気がピリピリしてるから久しぶりにそんなこと言われたよ。
…俺は何もできねぇからな。狼を見つける手助けも、誰かを守ることもできねーからこうしてパンを焼いてみんなに食べてもらうぐらいしかできやしねぇ。なら、より美味しいパンでやる気を出して欲しいんだ。
おい、何泣いてんだ。…感動しただぁ?おう、そうかい。でもくしゃみだけはするなよ…ああっ!
…だからくしゃみだけはって言ったんだ!ありゃりゃ、小麦粉で周り真っ白じゃねーか、これは分量足りなくなるな…どうしたもんか。とりあえず商人に小麦粉くれるか頼んで見るか。
---
翌日、俺の元に届いたのは
「誰でも簡単占いセット」だった。
…いらねーよ!
ファンレターが山のようにきてて嬉しくて嬉しくて嬉しいです!(?)
発狂教祖のファンレターも相変わらず狂ってて元気そうで安心しました。(?)
…「発狂教祖の応援記録」って感じでシリーズ化したくなるくらいやばい。やらないけど。
通訳の話
最近のど飴のこだわりが増えた子の話。
私は通訳者。
二人の村人に専属として就くことで、夜の間口頭でお話ししていただくことができます。
私と話すこともできますが…それはあまり人気ではありませんね。通訳であると分かっている私と話しても、面白くないと思われるお客様が大半ですので。
今回のお客さまは自称占い師の方と自称狩人の方でございます。
「おい通訳!俺の邪魔はすんなよ!」
「通訳なんぞいなくても狼は排除できるというのに…本当に役立たずだな。」
これもいつものことでございます。慣れればそう辛くはありません。それに役立たずであることは事実ですしね。
ちなみに、ここまで嫌われている通訳は私ぐらいのようです。いわく、男のくせに自分を「私」と言うのが気持ち悪いそうで。こればかりは私の癖ですので…直しようがございません。
私の仕事は夜に行うものですので、その分徹夜です。苦しいですが、仕事は仕事なので頑張るしかないでしょう。あ、さっそくお二人が会話を始めたようです。
[…ガハハ!村の奴ら、すっかり騙されてやがった!俺を狼だなんて誰も思ってないだろうなぁ!]
[そうですね!もう狼様の勝利は確実といえましょう!]
…あ、これは当たりですね。
翌日、通訳の内容をみなさんに伝えたところ、本人様方は慌てた様子で釈明しておりました。でももう手遅れです。通訳は嫌われてはいるものの、能力としては絶対的な証明を約束されています。
つまり何が言いたいかというと…通訳は、絶対に|騙れない《ダマセナイ》のです。
あっさりと狼は吊られ、村は平和を取り戻しました。
今回は良い仕事をしたと上司にも褒められてボーナスを頂けました。せっかくですので…自分へのご褒美に、ちょっと高くていいのど飴を買おうと思います。
役職のリクエスト大量で嬉しいです!
選ぶの大変なので嬉しいです。なるべく…というか被りとかなければほぼ確実に採用されますのでよろしくお願いします!
埋毒者の話
無邪気な子の話。
ぼくはまいどくしゃです。
いえのにわにはえているくさでつくったおだんごを、むらのひとたちにあげるのがぼくのおしごとです。
おかあさんがおしえてくれたすずらんというおはなをこねこねしたおだんごをきんじょのおばあちゃんにあげると、とてもよろこんでくれます。
おっきなおててでなでなでしてくれると、むねがほんわかしてたのしいので、まいにちつづけています。
---
あさがきたら、おばあちゃんがげんかんでねてました。
てをにぎるとひんやりしてて、おててについてたとまとがぼくのてにもつきました。べとべとしてくさくて、ちょっとだけなまあったかいとまとでした。たぶん、くさったとまとなんだとおもいます。
おばあちゃんのよこに、おっきなわんちゃんがねてました。わんちゃんはまっかになってなくて、おっきなおくちからぶくぶくしたあわをだしてました。かにみたいでおもしろかったです。
きんじょのひとたちがおばあちゃんがねてることにきづきました。みんな、おばあちゃんよりわんちゃんにむちゅうでした。あんなにおっきなわんちゃんだったぢ、しかたないとおもいます。
おとなはむずかしいことばでおしゃべりしてました。「おおかみがなんで」とか「すずらんのどくで」とか「どくでしぬなんて」とか、「だれがやった」とか、ぜんぶぼくのわかんないことばばっかでした。でも、すずらんっていうことばはわかりました。みんなもおだんごほしいのかな?
こんど、おとなたちにもおだんごをあげようとおもいます。
無邪気さが怖い話です。
こういう話も書いてみたかったんですよね!
病人の話
病魔と戦う強い子の話。
こんにちは、病人です。
ちょっと重めの病気を抱えてます。
病名はちょっと聞かないでください。その、感染するやつで。聞いたら話してもらえなくなる気がするので。
最近は外に出てないのであんまりよく知らないんですけど…狼が出てるらしいですね。お医者さんは「君は気にしないで病気を治すことに集中しなさい」って言いますけど、自分のすぐそばで人が死んでいると思うと気にしないというのは無理な話です。
とりあえず、今日の分の薬を飲みます。最初は20ほどある錠剤に吐き気がしてましたが、いつの間にか慣れました。そうなんです、それぐらい重い病気なんです。
…いいこと思いついちゃいました。狼が病人である自分を食べれば、病気が狼に移って少しぐらいは村を守るのに|貢献《こうけん》できるんじゃないでしょうか。そう、一日寝込んで誰も襲えなくなるくらいには…なにせ、重い病気ですから。
…止めてくださるんですね。優しい方です。でもこれぐらいしか貢献できないですよ。病人ですし。
だから、明日は狼が食べたくなるように立ち回ってみようと思います。はい、この話は秘密でお願いします。
あなたと最期に話せてよかったです。ありがとうございました。
ネッ友とはなんぞと思い始めた今日この頃です。でもリアルでの友達が少ないのでネッ友いると嬉しいです。ネッ友になりましょう!(唐突)
そしてネッ友である教祖様の笑い声がだんだんとやばくなってきております。ニゲヨウカナ
猫又の話
偉そうだけどしっぽを握られるのが苦手な猫の話。
我は猫又なり。
死人どもを|蘇《よみがえ》らせ、我を殺そうものなら道連れに殺す古代から住む化け猫である。
|汝《なんじ》は死人に会う資格なし、今すぐ|此処《ここ》から去るがいい!
…ぬあっ!な、何をする!?我のしっぽを掴むな、この無礼者が!あだっ、あだだだだだだ!
わ、わかった!話は聞いてやるからその手を離せ…ふにゃあっ!
---
結局死者の蘇りを約束させられるとは…お主、なかなかやりおる。だが我の力は万能ではないぞ?失敗することもあるし、見知らぬ者が蘇ることもある。お前が蘇らせたい者は狼かもしれないのだぞ?…あ、そう。お主、共有者なの。そんなもん知らんわ!
言うておくが、お前がもし狂人だったとして、狼を蘇らせ我を襲わせるのはやめた方が賢明だ。狼を返り討ちにすることはできなくとも、道連れにするぐらいは造作もないのだ。…違う?ならいい。どうせ死んでも我だけ蘇るし。己に己の力を使って蘇るし!
…アテが外れて拗ねている、だと?お主、ついに我を怒らせたな。もう我慢ならん、そもそも我を脅している時点で気に食わん!我の怒りを知るがいい!
あ、待って。しっぽはなしで。そうだ、しっぽは反則にしよう。我も|鬼火《おにび》は使わないようにするから…じゃんけん?しっぽを使わないならいいぞ?
猫はチョキを出せないのでは?と思ったあなた。大正解です。
教祖のメッセージがどんどん狂ってきています。ついに笑い声が半角になりました。
犬の話
いい意味でも悪い意味でもご主人様に忠実なわんこの話。
おっはよー!犬だよ!
ご主人様を狼から守る番犬、そしてご主人様専属の|癒《いや》し担当ですわん!
今回のご主人様はちょっと頭が回らないけど、そんなとこも可愛い。守ってあげたくなっちゃう!ご主人様がなんの役職ちゃんなのかはわかんないけど、全力でお供させていただきますわん!
---
僕の仕事は夜。ご主人様が寝入ってる間、狼から守るのが僕の役目だわん。
…仕方ないんだとは思うけどさ、冷たいコンクリの前で眠らせるのやめてくんない!?せめて近くの犬小屋で寝たい!もっといえばご主人様と一緒にフカフカベッドで寝たい!
「…オォーン…」
…部屋の中から、狼の声がする?まずい、どっかから入られたか!
僕は息を切らしてご主人様の家の前まで戻った。間に合ったかな…?
その時、部屋の中からご主人様の声がした。
「アオォーーーーーン…」
…狼の遠吠えという形で。
つまり。これは。そういうことで。
僕は。
狼を。
おおかみからまもっていたってことか。
ソンナノ…アンマリダ。
そうだ
そうだよね
ご主人様が道を|違《たが》えたなら
誰かが手を下さなきゃ
僕には爪も牙もあるんだから
僕がご主人様を殺すんだ
せめて最期ぐらいは
ご主人様の最期ぐらいは
隣に僕が座っていたいから…
「アアアアアァァァァァアァァァァァァッッッッッッッ…」
---
ある日、ひとりの村人が息絶えました。
その家には忠犬がおり、狼は襲ってこれないそうです。
じゃあ、一体誰がこの人を殺した?
生きている村人たちは首を傾げました。
そうそう、もう一つ。
忠犬は死んだご主人様の隣を絶対に離れませんでした。
雨が降っても雪が降っても槍が降っても。
死体に囁きかけるように鳴きながら、ずっとそばにいたそうです。
--- ご主人様。ずっと、一緒だよ? ---
なんか怖いテイストになりました。ナンデダロウ
匿名希望のわんこさん、リクエストありがとうございます!
…これ本当に匿名なん?
Another story #1 身代わりくんの話
死を繰り返すシステムの話。
僕は身代わりくん。
初日だけは村人全員で話し合えるように、神様に創られた|お人形《システム》だ。
どこかの村で産まれても、それは狼が出る前兆だから、みんなからは「身がカス」とか呼ばれてる。いつものことだから仕方ない。でも、狼が出た時にすぐ僕を差し出すのはやめてほしい。縄で縛られて村の大広場に置いてかれるんだけど、縄がきつめで食い込んで痛いんだよね。
それに…どうせ、差し出すようなことをしなくても僕は一番最初に食べられる。それがこの世界の決まりだからだ。
狼に食べられて死んで、別の村に産まれて、食べられて死んで、新しく産まれて、死んで、産まれて、死んで、産まれて、死んで、産まれて…
もう何回目かなんて考えない。考えたってこの運命は変わらないし、どこを噛まれれば痛くないかを考える方がずっと有意義な時間を過ごせる。
でも…たまに考えるんだ。この苦しみに終わりはあるのか、とか。
僕は今日も産まれて死ぬ。いつか、本当の人間みたいに誰かと笑って生きられることを願って。
死に|脅《おびや》かされないことを。
産まれたことを祝福される日を。
みんなと一緒に…狼に、立ち向かえる日を。
僕は願い続けている。
絶対に叶えられないものと知りながら。
重めです。
これを読んだ月下民が身代わりくん使いにくくなったらゴメンナサイ
でも、どうしても身代わりくんのことも書いておきたくて書きました。
トナカイの話
主を慕っている子の話。
僕はトナカイ。
|主人《あるじ》であるサンタクロースさんと一緒に子供たちに夢を配ってるんだ。
今日はプレゼントを作る日。キラキラピカピカなおもちゃをカラフルな箱に入れて、フワフワのリボンで飾り付ける。これだけで僕は子供たちの喜ぶ顔が見えてきて、幸せな気分になれるんだ。あ、|主人様《サンタさん》がきた。手に持ってるのは…ココア!やった、休憩タイムだ!
この寒い北極ではあったかいココアが欠かせない。というか、これが無いと死ぬと思う。絶対に。だから、ココアで労ってくれる主人様は村のみんなからも慕われている。もちろん僕も慕っている。
…別に食べ物で釣られてるわけじゃないよ?本当に主人様のことは慕ってるよ?本当だってば。
さて、押し問答はこのぐらいにしてトナカイ小屋に帰ろうか。そろそろ眠くなってきたし。
ちょっとふらつく体をサンタさんに支えてもらいながらトナカイ小屋へ急ぐ。最近は狐とか狼が出てるっていうし、主人様に迷惑かけるわけにはいかないよね。
雪の中を一生懸命進んで、ようやくトナカイ小屋が見えた時、それはやってきた。
降り積もった雪を踏み締めてやってくる黒い影。
こちらを値踏みするような目。
唸り声が漏れる口元には大きな牙。
…そう、狼だ。
狼はこちらを|睥睨《へいげい》すると飛び掛かってきた。…主人様の方に。
気づいたら僕は雪雲を視界いっぱいにおさめていた。どうやら倒れたらしい。少し視線をずらせば、泣いている主人様が見えた。なんで泣いてるんだろう。
自分の手をそっと見てみると真っ赤に染められていた。雪の冷たさすら感じないこの体はもう手遅れだろう。ああ…主人様はこのことで泣いてくれてるのか。やっぱり主人様は優しいなぁ。
そうだ、と僕は自分の体に自分の血を塗り込んだ。毛皮まで真っ赤に染め上げられるように。
「…何、してるの?」
「えへへ、主人様とお揃いだよ?」
僕の体は血で真っ赤になって、まるでサンタクロースの衣装を着ているようだった。それを見て主人様はまた泣き出してしまった。
---
昔々、ある村に若いサンタクロースとトナカイさんが住んでいました。
トナカイさんは真っ赤なお鼻ではなかったけれど、サンタクロースのために役に立とうと頑張りました。
でも、悪い狼からサンタクロースを守ろうとして死んでしまいました。
サンタクロースは泣いて泣いて泣いた後に、トナカイさんの毛皮を家に飾ることにしました。
たまに村人から聞かれます。
「どうしてこのけがわはまっかっかなの?」
サンタさんは答えます。
「この毛皮の持ち主は、とても良い子だったのさ。この子は、僕とお揃いになってくれたんだよ」
「ふぅん…よくわかんないや。あ、これきょうのぶんのおだんごだよ!おいしいからたべてね!」
「ああ、ありがとう」
今日も村は平和です。
友情(?)出演:埋毒者くん
この先は察してください。はい。
ファンレターありがとうございます!
褒められるっていいもんですね。ほんと。
おばけの話
誰にも見てもらえないけど頑張る子の話。
僕はおばけ。
悪いおばけじゃないよ?ただみんなから見えないだけの透明人間みたいなもの。声とかは聞いてもらえるし、狼を吊ることもできる。だけど、僕はとっくに死んだ人間だから村人からは住民だとは思われていない。いうならば村全体で飼ってるペットだ。
犬くんとか猫又っちとかは村人と同じようにみんなと仲良くしてるのに...ちぇ、僕もみんなといっしょにおしゃべりしたいのに。
今日も僕はふよふよとあたりを|漂《ただよ》う。
近くの桜の木がいつのまにか枯れていた。桜の木の霊は最近見てないと思ったんだけど…なんてことを考えていたら、暇を持て余した占い師ちゃんが寄ってきた。僕も暇だし、大人しく占い師ちゃんの話に付き合う。
「実は、私の水晶玉が壊れてしまったのです」
「それは困ったね」
「多分妖狐さんに壊されたのかと。すぐ見つけ出して呪い殺してやりますわ」
「う、うん」
「でも、呪い殺すために必要な肝心の水晶玉がございませんの」
「えっと…」
「…あなたの体なら透けていて綺麗なので、もしかしたら水晶玉の代わりになるのでは、と思いまして」
「ならないよ?」
「いえいえ、物は試しですよ」
「え、ちょ、まって、僕を撫でても占いはできなひゃああああああああ……」
翌日も妖狐は生きていたが、それ以来占い師がおばけにまとわりつく姿が多くの村人に目撃されているという。おばけはいつも鬱陶しがっているけど、毎日話しかけられるのが嬉しくてたまらないんだって。
ハッピーイズザベスト!
子狐の話
まだ子供だけど、精一杯に親の役に立とうとする子の話。
はっはちめまして!子狐でしゅ!
妖狐おにいちゃんのお手伝いをするのが好きでしゅ!
おにいちゃんは私がいることは知らないけど、私はおにいちゃんのことずっと見てましゅ!応援してましゅ!
えっとね、私はまだまだ力が弱いからね、怖い狼が来たらおにいちゃんとちがってぱくってた食べられちゃうの。でもそのかわり、私は占い師さんにうらなわれても狐ってばれないんでしゅ!ねっ、すごいでしょ?
おにいちゃんも「その能力くれ。頼むから。」っていってまちた。おにいちゃんは怖がりやさんだから分けてあげたいけど、どうしたらいいのかわかりましぇん。こんど、仙狐おじちゃんにきいてみようとおもいましゅ。
そうだ!わたしね、もっとすごいことができましゅ!うらないごっこができましゅ!
おっきなスギの下でひろったきらきらボールをじぃってみると、夜の間に一人だけだれかのやくしょくがわかっちゃうの!すごいでしょ!
...でもね、私はまだまだ力が弱いからね、占い失敗しちゃうときもあるんでしゅ。そーすると、なんだかその人がちょっと怪しく見えてくるだけで、なんにもわかりましぇん。失敗しちゃったときはとっても悲しくなりましゅ。
でも、私はもっとおにいちゃんの役に立ちたいのでしゅ!おにいちゃんに「がんばったな」って頭よしよししてもらって、一緒に楽しく暮らすんでしゅ!
そのために、今日も私はがんばるましゅ!
誤字はなんども確認したのでありません。誤字っぽく見えるのは口調です。気にしないでください。
読者が増えているのをファンレターから感じます!応援誠にありがとうございます!
竜騎士の話
村人の平和とかどうでもいいけど、とにかく飼ってる竜が可愛くてたまらない男の話。
俺は竜騎士。
小さな村でみんなを守る|古《いにしえ》より続く一族の末裔だ。
…一族とかそういう難しいのはどうでもいい。俺が話すべきは俺が飼っている竜についてだ。
竜のララちゃんは今年で7歳。闇夜を映し出したかのような瑠璃色の鱗にルビーがはめ込まれたかのような真紅の瞳、美術品を思わせる純白の爪や牙を持つ俺の最愛の子だ。
「グルアアアアァァァァァァッッ!」
今日もララちゃんは愛らしい声で俺に語りかける。可愛さのあまり背中を撫でると甘えたように炎を吐き出した。
俺の手はララちゃんの炎で火傷だらけだが、ララちゃんの前では些細なことにすぎない。ララちゃんと一緒にいられるのなら腕の一本ぐらい安いものだ。いやむしろ俺の命をララちゃんに捧げたい。ララちゃん天使。神。
いつものようにララちゃんを頭の中で賛美しながら抱き締めると、ジタバタ暴れ出した。きっと照れているのだろう。シャイなララちゃんも可愛い。
---
翌日、俺の腕に爪をつきたてながらじゃれるララちゃんを散歩につれていくと、狩人とばったりあった。同業者のよしみでララちゃんの可愛らしい顔を拝ませてやる。
「…ねぇ、前から気になってたんだけどさ」
「なんだ?」
「お前絶対ララちゃんに嫌われてるよな!?」
そんなことはない。現に今も俺の首を甘噛みしてきている。ちょっと血がでているが、全く問題ないのだ。そう、ほんのちょっとだけなのだ。地面に血だまりが二つ三つほどできるだけの。
「...お前ほんとポジティブだよな。うん、まあそのまままっすぐ生きてくれ」
狩人が遠くを見るような目をしている。きっとララちゃんのあまりの眩しさに目がやられそうになっているんだろう。分かるぞ、俺もよくなる。
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家に帰ってくると、ララちゃんは俺の腕を振り払って寝床に帰っていった。お散歩して疲れたんだろう。そんなララちゃんも最高にかわいい。天使。
ララちゃんを拾ったときはとかげのような大きさだったのに、今は大型犬ほどの大きさになってしまった。俺はララちゃんが恐竜のようになろうと愛し続けるのは変わらないのだが、問題は村人どもだ。
竜が怖い、恐ろしいだのとのたまっている。あげくのはてに、村に狼が出たとたん猫なで声で「竜の炎で狼を焼き殺せはしないか?」だと?俺の大切なララちゃんにそんなことさせるわけないだろう。俺は狩人と同じように村人を守ることで十分に食っていけるし、なにより狼が出たのは村の不始末によるものだろう。ララちゃんにやらせることではない!
だが...もしも。もしもララちゃんに危険が訪れるなら。
ララちゃんがそれを望むならば。
俺に止めることはできない。
...まぁ、ララちゃんが何も言わない限りはそんなことさせないがな!
俺はララちゃんが幸せに過ごせるようならそれでいい。
ララちゃんを守れればそれでいいんだ。
そんな俺の考えを読んだかのようにララちゃんがすぃっと飛んできて。
俺の腕の中に飛び込んできた。
そのまま珍しく素直にほおずりをしてくる青竜を見て、俺は決めた。
俺は一生、ララちゃんを幸せにし続けてやる。
今回のお話はクレイジーさを全面に押し出しました。
そうです、モデルは噂の教祖様です。
そうそう、教祖様ことberiが復活したらしいですよ!
嬉しいですね!ほんとに!
オカルトマニアの話
いろんな事件に首を突っ込む物好きの話。
俺様はオカルトマニアッ!!
実は俺様の右手にはすさまじいほどの漆黒の力が宿っている。この力で世界を支配するために、今は普通そうな青年としてその時を待っている...
「あんた、さっさと|支度《したく》しなさい!遅刻するわよ!」
チッ、うるさいな...まあいい。俺様はこんなところで止まっているような男ではないのだから、俺様の素晴らしさを隠すためにはこれも必要なことだろう。
「学校遅刻するわよーっ!!」
でもやっぱうるせぇ!俺様がしゃべってるんだから邪魔すんじゃねぇぇぇ!!
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俺様は今日も空気に溶け込む。この俺様のオーラに気づかれてしまったら野望が潰えてしまうかもしれないからなっ!
「...お前なにしてんの?」
「勉強だけど」
「天井張り付いてたら参考書持ってても勉強できねーだろ!」
「そう?以外と落ち着くよ?」
「うそだろ...」
うんうん、うまく溶け込めているようだな。
---
今日は大事な日だ。
長年の準備を経て、一生に一度しかできないという儀式の舞台は整った。
聖本(オカルト本)を読み漁り、闇の組織(オカルト部を廃部にしようとする生徒会)と闘い、師匠(オカルトオタクの先輩)に教えを乞い…思えば長かったようで短い時間だったな。
でもやっと!俺様は真なる力を手に入れられるのだ!
師匠もこの儀式のおかげで占い師の力に目覚め、今や界隈では有名人となっている。
それなら、俺はさらに素晴らしい力を手に入れられるだろう!
さあ、舞台は整った。あとは覚悟を決めるのみ!
「…我々の願いを聞き届けたまえ」
その呪文を唱えた瞬間、世界が暗転した。いや、俺のまわりのみが暗くなったというべきだろうか…
「俺を呼んだのはお前か…?」
突然、地獄の底から響いてくるかのような恐ろしい声が聞こえた。体全体を震わせるようなその声に、思わず返事をしてしまう。
「そうか。なら話が早いな。俺を呼んだからには力が欲しいのだろう?くれてやる」
力…?本当に力をくれるのか?
「ああ。俺と同じ[狼]の力を授けよう…」
その途端、自分の中に何かが産まれた。
ソレは弱々しいようで荒々しく、俺様の心をいともたやすく掴んだ。
本当はわかっていた。俺には力なんかない。どこにでもいる「普通」にすぎないんだって。
俺はただ怖かっただけなんだ。周りが自分を見つけていく中で、俺だけが取り残されていくのが。俺だけが、「普通」のままでいるのが…
でも、この力さえあればそんなことに悩まされなくていい。凄まじい力が俺に存在意義を与えてくれる。
俺に、生きる理由を与えてくれる…
もう俺は、変わったんだ。
コメディかシリアスか迷ったんですけど、シリアスにしました。
これの失敗バージョンも書きたいなー
こうもりの話
世渡り上手な陽気小僧の話。
おいらはこうもり!
最近森の奥の洞窟で一人暮らしを始めた|勇猛果敢《ゆうもうかかん》な…ちょ!なんで逃げんのさ!おいらの自己紹介は始まったばかりだぜ!?
…なるほどな、話はわかった。最近|流行《はや》ってる感染症がこうもりの死体から発生したから、こうもりのおいらに近づくのが怖いと。うん、確かに怖いよな。パンデミックとか言われてたし。
けどな、感染症を発生させたこうもりはもうちょい東に住んでる奴らだ。でもって、おいらの出身は南。つまりおいらには感染症とかそういうやばそうなのはついてねぇ。話すのはもちろん、撫でてくれてもいいんだぜ!
…あ、撫でない?あっそ。まあ座れや。お茶ぐらいは淹れてやるさ。
---
そういえば、最近村では狼が出てるんだってな。|野暮用《やぼよう》でちょっくら森の外に出た時に村人から聞いた。人を喰うようで怖がってたが、やっぱりこうもりも喰うのか?まあ、喰われたらそのときはそのとき。どうにかするさ。
…実はここだけの話、おいらは狼が村に住み着こうが、狐の野郎が支配しようが、村人が敵を皆殺しにしようが正直どっちでもいい。おいらは生きてさえいればいい。ここの森でちょいと冬を越せたらまた別のとこに飛び去っていくだけだ。
そうだな、お前さんはおいらを人でなしとか言うだろう。ここに住まわせてくれた村人に恩すらも感じないのか、と。
事実、おいらは村人たちに恩なんぞ持ってねぇ。だが、協力せずに知らんぷりしてると「お前が狼だ」なんていわれて処刑されちまう。それは何があっても避けたいんで、おいらは最低限村に協力する。だがおいらの命が危なくなるようなら話は別だ。命を捨ててまでやるようなことではないしな。
…そもそも…おいらと村に協力なんてされちゃあお前さんが困るだろう?
はっは、鳩が|豆鉄砲《まめでっぽう》くらったような顔してくれてんじゃねぇか。そんなわかりやすくおいらを探りにきて、わからないとでも思ったのか?
…わかった、無駄口はやめるからその牙をしまえ。ったく、【狼】は気が荒いから苦手なんだよ…
お前さんの言いたいことはわかってる。明日、狼側について村人を処刑しろってことだろ?おいらがお前さんに協力したらお前さんは確実に勝てるからな。まぁ、おいらに断るっていう選択肢はねぇな。美味しいところしかないし。
お前さんとおいらの利害が一致してるんだ。お互い住み分けて仲良くしような!
こうもりって狼に寝返りやすいよね。ホント。