限界の生活を送る、高校一年生 桜花。桜花の憩いの場の河原に現れたのは ハル と名乗る少年だった__。
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目次
曇天
また、朝が来た。
昨日と同じ朝。 一昨日と同じ朝。
そのままいつもと同じ生活を送って、そして、眠る。
__明日こそなにか変わっていますように。
幾度となく願った願い。
叶うことはなく、また、いつもと同じ朝。
---
その日は曇天だった。
ダークグレーに染まった空。
重苦しい風が髪を巻き上げる。
イヤホンを耳に突っ込んで音楽を聞こうとして、やめた。
もう何をする気も起きなくて、視界に何も入れたくなくて、わたしは目を閉じた。
---
また、風の音がした。
人の気配が近づいてきて、ふと目を開くとやけに整った顔がこちらを覗いていた。
白く透き通った肌に、切れ長な目、すうっと通った鼻筋、色素の薄い|瞳《め》と髪。
「綺麗__」
自然とこぼれた言葉に、慌てて口を両手で覆う。
青年は一瞬驚いたように目を見開いて、それからふわっと目を細めて微笑むと
「ありがとう」
といった。
その後会話がつながることはなく、なんとも言えない沈黙があたりを漂い、私はもう一度目を瞑った。
すると青年が近づいてきた気配があって、彼が横で寝転がったのがわかった。
「なにしてるの?」
「__わかんない」
「そっか」
私は決して目を開かなかった。
自分でも愛想悪いなと思ったが、生憎、初めて会う彼に愛想を振りまくほど私の心に余裕はなかった。
しかし青年は懲りずに何度も会話をふってきた。
そして私達は他愛のない会話をした。と言っても一問一答のような感じであったけれど。
青年はハルと名乗った。高校二年、一年年上だった。
「君の名前は?」
「言いたくない」
私が頑なに拒否してもハルは諦めない。
あまりに熱心に聞いてくるものだから、折れた。
「__|桜花《さくら》」
「桜花ちゃん__いい名前だね」
いい名前なんて思ったことはなかったけれど、ハルにそう言われるのはなにかくすぐったかった。
そしてかすかに隣から感じる体温はすごく心地が良かった。