初めてのシリーズ作品です。暖かく見守ってください。
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目次
孤独な私と臆病鬼は、今日も光を探してる。〜Prologue〜
--- ---ある雪山にて--- ---
__はぁ……__
__はぁ……__
__はぁ……__
はぁ…………
……もうどれくらい走っただろうか…
体を裂くような冷たい風が私の体を殴りつける。
周りに見えるのは雪だけだった。
振り返ると、私の歩いた道が赤く染まっている。
しかし、そんなことを気にしている時間はなかった。
?「…はやく……もっと…とお…い……ばしょ……に…………!!」
そう口にした途端、私は雪の中に倒れ込んだ。
低体温症だろう。動こうとしても動けなかった。
気づけば手足の感覚がなくなっていた。
?「……!…いや…だ………しに………た………く……ない…………」
そう願っても、私を助けてくれる人は誰一人いない。
当たり前だ。《《これまでもいなかったのだから》》。
右腕と左足に深く刺さった矢の痛みだけが強く伝わってくる。
私の頬が、涙で温かくなる。
__?「………なんで……わたし…が………こん……な………め……に………………」__
そこで私の意識は途切れた。
---
__「ーーーーー?ーーー。」__
__「ーーーー。ーーーーーーーーーー。」__
__「ーーーーーー!ーーー?」__
?「………あ!ねぇ!いたよ!!」
?「この娘が、《《あの人》》が言っていた人間か。」
?「なぁなぁ。こいつほんとに生きてんの?」
?「ああ。ほとんど死にかけだがな。今すぐに連れ帰って治療すれば助かる。」
?「…おい。この腕に刺さってる矢ってよ…」
?「…強力な魔除けの術がかけられているな。我らではどうしようもできん。」
?「じゃああの人にやってもらうしかねーか。」
?「ね…ねぇ…!早く家に運んであげないと、この人凍えて死んじゃうよ…!!」
?「…あー、それもそうだな。あーめんどくせー!」
?「うるさい。ーーー、足を持ってくれ。私は首を持つ。」
?「わーってるよ!俺に命令すんな!」
?「いちいち騒ぐな。ーーーは炎で人間の体を温めてやってくれ。」
?「う…うん…!人間さん、もうちょっと頑張ってね…!」
---
--- ーそこから、私たちの不思議な生活が始まったのだ。ー ---
こんにちは、「読書が好き🍵」です。
今回から連載作品
「孤独な私と臆病鬼は、今日も光を探してる。」
を書いていきます。
初めての長編作品となるので、緊張してます。
登場人物もいつもの短編小説と比べて、かなり多くなる予定です。
そこで、皆様に是非とも教えて頂きたいことがあります。
皆様が好きな『妖怪』を教えていただきたいのです。
リクエストされた妖怪は大体採用します。
読者様の名前を書いていただければ、ファンレターも送らせていただく予定です。
自分勝手で申し訳ないです。心優しい方々、どうか私にアイデアをください!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
またどこかでお会いしましょう。
第一話
【前回のあらすじ】
とある雪山で満身創痍で意識を失った少女。
そんな彼女を救ったのは、不思議な3人で…!?
そして数日後、とある屋敷で、
その少女…「|神月《こうづき》 |沙雪《さゆき》」は目を覚ます…。
沙雪「ん…んぅ…?」
あれ…?私雪の中で倒れて…そのまま気絶して…
沙雪「…ここ…は…?」
私は和室のような部屋で寝かされていた。
床は畳で、いい匂いが鼻をくすぐる。
明かりはどうやら照明ではなく、|行灯《あんどん》が使われているようだった。
しかし、寝たままでは部屋の様子がよくわからなかった。
右手を見ると、綺麗に包帯が巻かれていた。誰かが治療してくれたのだ。
私はとにかく状況を確認しようと考えて、ゆっくりと体を起こ
**?1「お!目ぇ覚めたか人間!!」**
**沙雪「きゃあああぁぁ!!?」**
突然耳元で大声を出され、私は飛び起きた。
が、足の痛みで思わずうずくまる。
?3「なになにどうしたの!?って人間さん!?大丈夫…!?」
?2「ようやく起きたか。」
沙雪「え!?え!!?な、なに!!?!?」
私が驚いたのも無理はないだろう。なぜなら……
--- 私の目の前にいる彼らは、明らかに人間ではなかったからだ。 ---
---
まず、寝起き早々大声で話しかけてきて、ずっと笑ってる彼。
目がキラキラしていて、先程の声に負けないほど主張が激しかった。
彼は見た目こそ人間だが、頭には小さな帽子(|頭襟《ときん》と呼んだはず)をかぶっていて、
高さがある下駄を履いていて、服装はまるで山伏のようだった。
そして何より……背中から黒く大きい翼が生えていた。
彼の姿は、まるで……まるで…………`天狗`のような見た目だった。
---
次に、少し子供のように見えて、もう一人の後ろから顔だけ出している彼。
彼は背丈が小さく、年齢は10歳ほどに見えた。
しかし、人間とは決定的に違う部分があった。
彼の腕には、鈍く美しく光る緑色の鱗が付いているのだ。
子供のように小さい手には、恐ろしいほど鋭い爪がついている。
そして、頭に枝のようなツノが2本生えていて、
体の後ろから、鱗に覆われた大きく固そうな尾が見え隠れしていた。
彼は…まるで小さな`龍`のように見えた。
---
次に、この中でもかなり冷静で、少し近寄りがたい雰囲気の彼。
彼は、他の二人とは違ってかなり大人びていて、濃い紫の着物がよく似合っていた。
目は少し細く、不思議と緊張感が湧く。
しかし、そんな彼の頭には、まるで狐のような大きな黄金の耳がついていた。
そして背中からは、耳と同じ黄金の毛並みの九つの尾が見えていた。
尾の先には、それぞれ青い火が灯っていた。
彼は、昔話で見たことがある、`九尾`と呼ばれるものにそっくりだった。
---
天狗「ようやく起きたかー!お前丸三日寝込んでたんだぞ!」
龍 「ちょ、ちょっと…!声量下げてよ!人間さんびっくりしちゃうでしょ!」
沙雪「え、ぅえ!?な…なに!!?何が起こってるの!!?ゆ、夢!!!?」
龍 「ほらもう!に、人間さん…!だ、大丈夫だよ…?」
沙雪「ぅわあぁ!!!ごめんなさいごめんなさい夢なら覚めてぇぇ!!?!」
「!!!?………っっ…」
龍 「うわぁ!び、びっくりしたぁ…!に、にんげんさん!そんなに怖かった…?」
九尾「あまり騒ぐな。傷が開くぞ。」
龍 「!?ね、ねぇ…!!傷開きかけてる……!!」
沙雪「……………っ!」
天狗「うっわマジかよ!!?俺救急箱とってくるわ!!!」
九尾「ーー、布を取ってくれ。」
__龍 「う、うん…!!」__
__天狗「ーーーー!ーーー!!」__
__九尾「ーーー。ーーーーーーーー。」__
---
沙雪「はぁ……はぁ…………ふぅー…」
九尾「落ち着いたか?」
沙雪「は…はい……」
龍 「よいしょ…人間さん、お茶どうぞ…!口に合えばいいんだけど…」
沙雪「あ、ありがとうございます……」
「……………あ……あの…………」
九尾「なんだ?」
沙雪「…………あなたたちは一体……?」
天狗「そーいや名乗ってなかったなー。俺は**|天舞《てんま》**だ!」
龍 「ボクは**|竜翔《りゅうと》**だよ。よろしくね…!」
九尾「**|火影《ほかげ》**だ。」
沙雪「…私は…**神月沙雪**です…」
火影「沙雪…か。」
竜翔「そっか…あ…あの…『沙雪さん』って呼んでいい……?」
沙雪「ぅあ……あ…『沙雪』でいいですよ…」
竜翔「…!沙雪ちゃん……!」
沙雪「……………/////」
「………あの……」
天舞「なんだよ?」
__沙雪「……あなたたちって…人間じゃない…ですよね…?」__
天舞「あー…やっぱ気になっちゃう〜?種族聞いちゃう〜?」
どこか楽しそうに、彼は自分の種族を名乗った。
天舞「沙雪!!聞いて驚け!!俺は`大天狗`だ!!すげぇだろ!!?」
沙雪「だ、大天狗ってあの……!!?すごい……!!」
竜翔「ボクは、まあ名前の通り龍…詳しく言うと`緑龍`だよ…!」
沙雪「龍なんて初めて見た…」
火影「私は見て通り、`天狐`だ。」
沙雪「…?九尾じゃないんですか……?」
火影「………………(ムッ)」
竜翔「九尾と天狐は似てるけど違うんだって…(ヒソヒソ)」
沙雪「はぁ…ご、ごめんなさい……」
火影「…別にいい。今までに数え切れないほどに間違えられているからな。」
そうなんだ……
いや、そんなことよりも……
沙雪「………………………」
火影「………『なぜ私を助けてくれたのか』だな?」
沙雪「ふぇ!?なんでわかったんですか!!?」
火影「天狐は千里眼を持っているからな。生き物の思考くらい読める。」
__沙雪「………はい。なんで私なんかを……………」__
天舞「おーい!!ネガティブやめろよー!!」
竜翔「あの人が『山で怪我人が迷ってるから助けてあげて』って言ったからだよ!」
沙雪「……?『あの人』って……?」
天舞「まー、俺らのリーダー?ボス?みたいなもんだよ。」
沙雪「……どんな方なんですか…?」
火影「………我らとは比べ物にならない強さを持つ人だな。」
天舞「お前の態度次第では、お前消されるかもなー。」
沙雪「ぅえ!!?う…うそ………」
竜翔「んもぅ!!沙雪ちゃん怖がらせないでって!!」
火影「消されることはないだろうな。__できないだろうし。__」
沙雪「え?何か言いました?」
火影「いや。しかし、一応覚悟はしておけ。鼓膜が破れぬようにな。」
沙雪「!!?そ、それってどうい
__スーッ…__
天舞「お!噂をすれば…!!!」
竜翔「あー!おかえりー!!」
火影「遅かったじゃないか。」
沙雪「!?」
--- い…一体どんな人なんだ……? ---
---
第一話 〜完〜
こんにちは、「読書が好き🍵」です。
連載小説、記念の第一話です。
うまくできているのでしょうか…
時間があれば小説以外で彼らの紹介をしていく予定です。
アドバイスや感想、リクエスト等があれば、ぜひ教えてください。
では、またどこかでお会いしましょう。
第二話
【前回のあらすじ】
妖怪が住む家で目覚めた沙雪。
困惑する彼女の目の前に突然現れたのは、
大天狗の天舞、緑龍の竜翔、天狐の火影の三人だった。
その3人がいうには、彼らのボスに沙雪を連れてくるよう言われたとか…
彼女とボスはどうなってしまうのか…
__スッ…__
沙雪「………!!」
天舞「お!噂をすれば帰ってきたな!」
竜翔「あ!おかえりー!」
火影「遅かったじゃないか。」
テテテッ…
竜翔「人間さん起きたよ!沙雪ちゃんっていうんだって!」
__「ー?ーー!?ーーーーーーーーーー!!?」__
天舞「『もう』って、あんたが治癒魔法かけ続けたんだろ?」
火影「彼女には話しておいたから、早く来い。」
__「ーーーー!?ーーーーーーーーー!!」__
天舞「あーもう!大丈夫だから来いって!!」
__「ーーーーー!?」__
竜翔「もう!どうせしないでしょ!!!」
**バタバタッッ!!!**
天舞「おい!!やめろって!!!」
沙雪(叫び声!?誰か引きずられてる!!?)
私は必死に『ボス』と呼ばれる妖怪の見た目を考えた。
地面を這う大蛇?
人間を大きく上回る巨大な土蜘蛛?
災害を引き起こしながら走り回る牛鬼?
考えれば考えるほど、私の震えは強くなってくる。
__…シーン…__
お…おさまった……?
気になる…でも怖い……でも……!!
私は少しずつみんなが出ていった襖の近くに移動す
**スパーンッッ!!**
**沙雪「わあぁ!!」**
**? 「!!?」**
突然目の前の襖が開いて、私はまた布団に戻る。
それでも目の前の人物が気になって、そっと顔を上げると…
--- 目の前には『ボス』と呼ばれる男が立っていた… ---
---
彼は、この中で一番背が高く、それでいて細身だった。
雪のように白く、少し癖があり、長くて後ろで括った髪が美しくなびく。
目は前髪で半分以上隠れているが、不思議と澄んだ青色の目がよく見えた。
耳は少し尖っていて、黄金のタッセルイヤリングが輝きを放っている。
服は瑠璃色の着物に黒の羽織を着ていた。
松葉色の長い首巻きの先が、蛇のようにふわふわと動いている。
そして、頭の上には、鈍く光る大きな白いツノが2本生えていた。
誰が見ても、彼の正体は一目瞭然だった。
そう。ボスと呼ばれる男の正体は、`鬼`だったのだ。
---
私は今、『鬼』と向かい合っている。
私は恐怖のあまり、必死に逃げようとした。
しかし、足を怪我していて、うまく歩けない。
私は壁の端まで後ずさっていて、さぞ見苦しかっただろう。
そんな私と比べて、
目の前にいる『鬼』は、
堂々と、
公然と、
--- …襖にしがみついて震えていた… ---
---
**天舞「早く動けよっっ!!!」**
鬼 「無理無理無理無理無理!!!!!」
竜翔「沙雪ちゃん困惑してるからっっっ……!!!早くしてよ…っっ!!!」
鬼 「ぜっったい無理だって…!!」
**天舞「いい加減人見知りなおせっっっ!!!!!!」**
鬼 「治せって言われて治せるものじゃないでしょ…!!」
目の前で、背丈180を裕に上回る鬼が震えながら棚にしがみついている。
よく見ると、少し涙目になっている。耳も真っ赤だ。
引っ張られるたびに悲鳴を上げながら廊下に出ようとしている。
沙雪「………?」
火影「…だから言っただろう。『鼓膜が破れないようにしろ』と。」
沙雪「……そういうことだったんですね…」
火影「………少し待っていてくれ。」
そういうと、火影さんは立ち上がって、鬼の方へ向かった。
火影「……。」
**ドンッッ!!!**
鬼 「!!!?!?」
**バタンッ!**
火影さんが鬼の背中を思いっきり押し、鬼は床に倒れた。
何が起きたか分からずに硬直した鬼の背中を、天舞さんと竜翔くんが押さえる。
鬼がパッと顔を上げた。
その瞬間、私と鬼はしっかりと目が合った。
鬼 「……!!!!…………//////」
**「わああぁあぁあぁぁぁ!!?!」**
**バタバタバタッッ!!!**
沙雪「!!?」
天舞「竜翔!!離すなよ!!!」
竜翔「落ち着いてってばーー!!!!!」
なんだか、私よりも慌ててない…?
---
鬼 「…はぁ……」
火影「落ち着いたか?」
鬼 「うん……グスッ…」
天舞「なんで泣いてんだよ…?」
鬼 「だって…恥ずかしいんだもん…」
竜翔「『ここに連れてきて』って頼んできたのあなたでしょ?」
鬼 「そりゃそうだけどさ…まさかこんな早く目を覚ますと思わなくて…」
火影「お前は自らの力の強さを自覚しろ。」
天舞「あの矢をさわれるやつなんて大体バケモンなんだしよ!」
火影「そんな人の治癒魔法なんて、強力に決まってるだろ?」
鬼 「そんなに怒んないでよぉ…」
ボスが…鬼が…怒られてる…?
沙雪「…………あの…」
鬼 「……ん…?」
沙雪「…あなたがここのボス…ですか…?」
鬼 「え!?……天舞、また変なこと言って脅したの…?」
天舞「えー俺知らなーい(棒)」
鬼 「………はぁ。違うよ。ここにボスなんていないよ。」
沙雪「そうなんですね………あ…あの……名前…聞いても…?」
鬼 「あ!そうだね。自己紹介がまだだったね…!」
「僕の名前は**|灯和《ひなぎ》**。よろしくね。」
沙雪「あ…神月沙雪です…よろしくお願いします…」
灯和「そっか、いい名前だね。」
沙雪「…ありがとうございます…!」
「…………あの…なんで私をた
**ガラッッ!!!!!**
**天舞「おいっ!!外で妖怪が暴れてる!!」**
灯和「!?ほんと!!?」
沙雪「えぇ?!大丈夫なんですか…?」
灯和「ごめん沙雪ちゃん!少しついてきて!!」
ヒョイっ
沙雪「え、ええぇ!!?」
火影「灯和から離れるなよ。」
竜翔「説明は後でするからっ!」
**ダッ!!**
**沙雪「え…ええぇえぇぇ!!!!?!?」**
---
第二話 〜完〜
第三話
【前回のあらすじ】
沙雪は、遂にボスと呼ばれる妖怪、鬼の『灯和』に出会う。
しかし、彼は沙雪を見るなり泣いて大暴れした。
そう、鬼である灯和は、実はとんでもない人見知りだったのだ…!!
二人がようやく落ち着いて挨拶し合っていたところに突然きた速報は、
『山で妖怪が暴れている』と言った内容だった。
すると突然、沙雪は彼らに連れて行かれて……!!?
__ヒュオオォォォ…__
**沙雪「きゃああぁぁぁあああ!!!!??」**
私は今、空を飛んでいる。
いや、正確に言えば、崖から飛んで、落ちていってる。
しかも、鬼に抱えられ、龍に励まされながら。
**沙雪「どうなってるのーー!!!?!?」**
竜翔「ごめんね!でももう少し我慢して…!」
灯和「………!!いた!!!」
沙雪「!?」
思わず下を見ると、天舞さんと火影さんがそこにいた。
天舞さんは大きな翼で宙に浮き、火影さんは近くの大樹の上に立っていた。
木から少し離れたところで土煙が上がっている。
灯和「…よっと!!」
私を抱えてる鬼…灯和さんは、高さ200mはある崖から飛び降りた。
そして、大樹の枝に難なく着地した。
灯和「沙雪ちゃん大丈夫?怪我とかしてない…!?」
沙雪「は…はい…!!」
竜翔「妖怪が暴れてるのはどこ?」
火影「あそこだ。」
火影さんが指差す先には、土煙に紛れて白い影が見え隠れしていた。
天舞「多分、大蛇だろーな。居場所を横取りしてんだろ。」
沙雪「え!?」
灯和「説得はした?」
天舞「してみたが、まるで聞く耳持ってねーなありゃ。」
灯和「………そっか……僕が行ってみるよ。竜翔、火影、沙雪ちゃんをお願い!」
竜翔「!…うん!」
火影「わかった。」
灯和「天舞は僕と一緒に来て!」
天舞「はいはーい。」
そう言いながら、天舞さんと灯和さんは下へ行ってしまった。
……大蛇が暴れてる…?
竜翔「よいしょ…!沙雪ちゃん、ボクが支えるけど、気をつけてね!」
沙雪「うん…ありがとう、竜翔くん…」
竜翔「!うん…!!」
火影「あまり大事にはしないで欲しいがな。」
沙雪「………あの……なんで私はここに連れてこられてるんですか?」
火影「……屋敷にいたら危なかったからな。」
沙雪「?」
竜翔「…上、見てみて。」
そう言われ、私は上を見上げる。
その瞬間、私は衝撃で絶句してしまった。
沙雪「………お屋敷が……崩れてる……!?」
さっきまで私たちがいた屋敷が、無数の白蛇に覆われているのだ。
おそらく、白蛇たちがそこらじゅうを噛んで、柱を何本も折ったのだろう。
火影「下の大蛇の子分たちだろうな。恐らくだが、我らを探してる。」
竜翔「…ボクら、他の妖怪さんに狙われることが多いんだ。」
沙雪「……だから…逃がしてくれたんですか…?」
火影「そういうことだ。」
沙雪「あ…ありがとうございました…!!」
竜翔「大丈夫だよ!…それより……下の二人、大丈夫かな…?」
灯和さんと天舞さんが下へ行ってしまったことをハッと思い出す。
下では、灯和さんと大蛇が睨み合っていた。
その少し上から、天舞さんが大蛇を見下ろしている。
`大蛇`「シュウウゥゥゥゥゥゥ………」
灯和「ごめんね。でもここは僕らの山なんだ。だからこれ以上暴れないで欲しい。」
私は驚いた。
灯和さんに、先ほどの人見知りの影は見れなかったから。
そこにいたのは、まるで山の守護神だった。
灯和「もし君が僕らに攻撃した時は…」
「…………申し訳ないけど、こちらも攻撃せざるを得なくなる。」
天舞「今ならまだ引き返せるぞ?」
`大蛇`「…………………………」
**「ジャアアァァァァアア!!!!」**
沙雪「!!!!」
ヨロッ
沙雪「………!?」
**ギュッ!**
竜翔「だ、大丈夫!?」
火影「腰が抜けてしまったか?」
沙雪(あぶない…!火影さんが腕を掴んでくれなかったら落ちてた…!!)
「ごめんなさい……」
火影「構わない。」
沙雪「!!そ、それより下は!!?」
下の二人は、全く動じてはいなかった。
天舞「………今のは宣戦布告と捉えていいか?」
灯和「……だね。大蛇は僕がやるよ。天舞は他の白蛇たちを相手して。」
天舞「おけ。じゃあ一つ片付けますかー。」
**`大蛇`「シャアアアアアアアァァァァアア!!!!!!!!!」**
大蛇はその声と同時に、尾を大きく振りかぶった。
その尾は私たちが立っている大樹に強く当たった。
**バキッ!**
その瞬間、私の足場が音を立ててなくなった。
沙雪「………!!?」
火影「!竜翔!!」
竜翔「わかった!!沙雪ちゃん!掴んで!!」
そういって竜翔くんは、私に手を差しのばした。
私はどうしようもなくて、反射的にその手を強く掴んだ。
気付けば火影さんもその手を掴んでいる。
沙雪(…!!地面に…ぶつかる……!!!!)
「…………ッッ!!!」
**竜翔「沙雪ちゃん!火影!離さないでね!!」**
**ぼわんっ!**
---
……目の前が真っ白だ。
開けているはずなのに、閉じているような気さえした。
風が強い。何が起こったのか理解できない。
私は地面にぶつかりかけて…目を瞑って…それから…
火影「沙雪、目を開けろ。」
声が聞こえ、私はそっちの方に顔を向ける。
隣に、火影さんが座っていた。
沙雪「!ここは!?竜翔くんは!!?」
火影「一度落ち着け。竜翔ならここにいる。よく周りを見ろ。」
そう言われ、私は足場を確認する。
そこには、目を疑うものがあった。
沙雪「………?緑の…鱗?」
突然目の前の景色が開ける。
煙から抜け出せたのだ。
私は周りを見渡す。
そして、衝撃の事実に気付いた。
--- 私たちは、巨大な竜の手の中にいたのだ。 ---
緑に輝く美しい鱗。鋭い爪。10mを裕に上回る身体。金色のたてがみ。
…しかし、私には正体がすぐにわかった。
沙雪「……!!竜翔くん……!!?」
竜翔「沙雪ちゃん!?大丈夫!!?」
火影「ああ、二人とも無事だ。」
沙雪「…すごく大きくなれるんだね…」
竜翔「一応緑竜だからね!!」
火影「それより、下の2人を気に掛けた方がいいんじゃないか?」
竜翔「!忘れてた…」
竜翔くんが空中で止まる。
私と火影さんは指の隙間から下を見た。
下では、大蛇と灯和さん、白蛇たちと天舞さんが対峙していた。
---
天舞さんの手には、|羽団扇《はうちわ》が握られていた。
天舞「ほいっと!!!」
そういって彼は手の団扇を一振りした。
**ビュオオォォォオオ!!!**
その瞬間、突風が巻き起こり、白蛇たちは一掃されていった。
こちらにも風が来て、思わず飛んでいきそうになる。
竜翔「ちょっと天舞!気をつけてよ!!」
火影「…力加減を知らないのか?(イラァ)」
天舞「してるっつーの!!」
この突風で、手加減あり…!?
でも、こちらは大丈夫そうだ。
灯和さんは大丈夫だろうか……
私はそちらに目を向けた。
---
**`大蛇`「ジャアアアァァ!!!!」**
灯和「…………」
一見、彼らは互角のように見えた。
大蛇が攻撃して、灯和さんが避ける。
それの繰り返しのように見えた。
--- そう、見えていたのだ。 ---
**`大蛇`「ジャアアアアア!!!!!」**
灯和「………ごめん…」
**ガァン!!!!!**
突然の爆音に肩が跳ねる。
そして、次の光景に、私は目を疑った。
`大蛇`「……………!!!!」
灯和「…………本当に…ごめんね…」
大蛇が、灯和さんの横に倒れていたのだ。
灯和さんの手には、どこから出てきたのか、紫の炎を纏った金棒が握られていた。
彼の優しい見た目とは真逆の、重々しく鈍い漆黒の金棒だった。
沙雪「!!あれは……!?!!?」
最初の人見知りで怖がりな印象があるからか、目の前の光景が信じられない。
本当に、何が起きたのかわからなかったのだ。
先ほどの優しい灯和さんと、目の前にいる金棒を持った彼の像が重ならない。
竜翔「……!そういえば灯和、沙雪ちゃんに種族言ってなかったね…」
火影「沙雪。灯和の種族は、ただの鬼じゃない。」
沙雪「!!?」
緊張が背中を走る。変な汗が額を伝う。
ゴクリ、と唾を飲み込み、火影さんの目を見つめる。
竜翔「一度は耳にしたことはあるだろう。あいつの種族は……」
--- **「世界最恐の鬼、`酒呑童子`だ。」** ---
沙雪「………!!!!」
---
竜翔「灯和!大丈夫!?」
灯和「……僕は大丈夫だよ。」
火影「竜翔、下に降りてくれ。」
竜翔「うん!」
__シュルルルルル…__
竜翔くんは地面に降りて、元の幼い姿に戻った。
天舞「……そいつ、死んだのかよ?」
灯和「…ううん。気を失ってるだけだよ。力加減はした。」
天舞「…………そうか。」
火影「………………」
竜翔「………………」
灯和「…白蛇は元々、神の使いとも言われてる神聖な生き物なんだ。」
「……よっぽどのことがない限り、山を荒らすなんてことしないはずなんだ。」
「多分…自分の家を。山を。奪われたんだろうね…」
そう言いながら、灯和さんはゆっくりと大蛇に近づく。
そして、大蛇の顔に、自分の額を合わせた。
`大蛇`「………」
灯和「……………ごめんね…」
「………君だって……必死だったんだよね………」
沙雪「……………」
…私には、妖怪たちから『ボス』と呼ばれた鬼の横顔が、ひどく哀しく見えた。
---
第三話 ~完~
孤独な私と臆病鬼は、今日も光を探してる。〜人物紹介〜
連載小説「孤独な私と臆病鬼は、今日も光を探してる。」のキャラ紹介です。
物語が進むにつれて内容も変わっていくので、たまに確認しといてください。
__今書かれている情報が真実とは限らない…かも?__
---
名前 :|神月《こうづき》 |沙雪《さゆき》
性別 :女
種族 :人間
年齢 :16歳
誕生日:1月19日
身長 :156cm
見た目:目の色・・・黒
髪の毛・・・銀髪、セミロング、直毛
服装 ・・・白と水色の着物
装飾品・・・特になし
その他・・・右腕と左足に矢で射抜かれたあとアリ
能力 :ない
---
名前 :|天舞《てんま》
性別 :男
種族 :大天狗
年齢 :219歳
誕生日:6月18日
身長 :162cm
見た目:目の色・・・黒
髪の毛・・・黄土色、癖っ毛、外ハネ
服装 ・・・赤の結袈裟、黒の着物
装飾品・・・黒い頭襟、腰に羽団扇、高さがある下駄
その他・・・背中に大きな切り傷アリ
能力 :空中浮遊、羽団扇でいろいろ
---
名前 :|竜翔《りゅうと》
性別 :男
種族 :緑龍
年齢 :149歳
誕生日:4月25日
身長 :人間・・・122cm
竜 ・・・15m
見た目:目の色・・・茶
髪の毛・・・茶髪、ちょい癖っ毛
服装 ・・・深緑の着物、白色の帯
装飾品・・・腰に黄色い小さなお守り
その他・・・手にまだらに鱗、背中に尾アリ
能力 :人間・・・動物を癒したり植物を育てる力
竜 ・・・空中浮遊、火を吹く
---
名前 :|火影《ほかげ》
性別 :男
種族 :天狐
年齢 :1187歳
誕生日:9月9日
身長 :184cm
見た目:目の色・・・黄
髪の毛・・・黒髪、ちょい癖っ毛
服装 ・・・濃い紫の着物、黒の帯
装飾品・・・袖部分に一つずつ鈴
その他・・・黄色の狐耳、背中に九尾、尾に青い火、右腕に黒い波紋アリ
能力 :神通力、千里眼による思考の読み取り、変身、不老長寿
---
名前 :|灯和《ひなぎ》
性別 :男
種族 :酒呑童子
年齢 :1453歳
誕生日:12月1日
身長 :195cm
見た目:目の色・・・青
髪の毛・・・白髪、肩くらいまで、一つくくり、直毛
服装 ・・・瑠璃色の着物、黒の羽織、松葉色の首巻き
装飾品・・・金のタッセルイヤリング
その他・・・頭に大きな白い角が二本、右肩に矢で射抜かれた跡あり
能力 :金棒の呼び出し、驚異的な運動神経
---
名前 :|猫葉《ねこは》
性別 :女
種族 :猫又
年齢 :98歳
誕生日:2月14日
身長 :147cm
見た目:目の色・・・深緑
髪の毛・・・黒髪、セミロング、先が外ハネ
服装 ・・・緑の着物、薄黄土の袴
装飾品・・・腰に小さめのダガーナイフ
その他・・・少し鋭い爪、頭に猫耳、二つに分かれた尻尾アリ
能力 :変化、軽い呪い、強力な脚力
---
書き加えて欲しい情報等があれば是非教えてくださいね。
その時に、できればユーザー名も教えてください。
ファンレターをお送りしたいので。
読書が好き🍵
第四話
【前回のあらすじ】
突然屋敷から連れ出された沙雪。
外では、なんと大蛇とその手下が暴れ狂っていた!
止むを得ず戦闘を繰り広げる中で、全員の能力が明らかになった。
火影は心を読み、天舞は羽団扇で突風を起こし、竜翔は巨大な龍に変身…
そして、あの怖がりな灯和は、異様な金棒を召喚したのだ。
彼の正体は、なんと鬼の首領とも呼ばれる『酒呑童子』だったのだ…!!
しかし沙雪は、彼らに戦慄することはなかった。
それどころか、どこか哀しい雰囲気を感じるのだった……
………シュル…
灯和「……………よし、あと少しだね…!」
天舞「やっとここまできたかー…」
沙雪「ふぅ…体が大きい分、包帯を巻くのも大変ですね…」
灯和「沙雪ちゃん、天舞、お手伝いありがとうね。」
天舞「おー。」
沙雪「はい…あ、火影さんと竜翔くんは大丈夫でしょうか…」
__竜翔「おーーーい!」__
天舞「お、帰ってきたな。」
ふわっ…
**ぼわんっ**
竜翔「ただいまー!」
火影「倒れた植物の手当てと、崩れた家の立て直しが終わったぞ。」
沙雪「え!?もうあのお屋敷を建て直したんですか!!?」
火影「ああ、あれは私の神通力で建てていたものだからな。」
沙雪「え…?そうなんですか…!?神通力ってそんなこともできるんですね…」
火影「神の力だからな。」
灯和「もう少しで終わるから待っててね。」
竜翔「うん!」
__シュル…__
__シュルルル……__
灯和「…………え?」
天舞「どーしたー?」
沙雪「どうしたんですか…!?」
灯和「…これみて。」
そういって、彼は震える手に持っている者を見せてくれた。
その手には、一本の矢があった。
しかし普通のものとは違い、全体が真っ黒だった。
竜翔「……っ!!それって…!?」
天舞「うおっ…!?」
火影「…………これはかなり特殊な術だな…」
みんなの焦りように、私も緊張してしまう。
沙雪「!?ど、どういうものなんですか…?」
火影「我らのような『人外』と呼ばれる者を暴走させる術がかけられている。」
「しかも掠っただけで掛かるほどの強力な術だ。」
沙雪「……!!」
竜翔「詳しく言うと、その人の持つ強い感情を過度に昂らせるものだよ。」
天舞「こいつの場合、土地を奪われた怒りと恨みと不安だろーな。」
沙雪「…………」
灯和「……彼の目が覚めたら、詳しく話を聞いてみようか…」
火影「そうだな………だが、それより今は…竜翔。」
竜翔「うんっ…!!」
***ボワッ!!***
沙雪「!!?」
(急に矢が燃えて……!!?)
竜翔「……危ないからね。」
天舞「こーやって消しとくのが一番いいんだよ。」
---
__キュッ!__
灯和「よし…とりあえず治療は終わったよ…!」
天舞「あ゛ーづかれだーー!!!」
沙雪「疲れました…」
火影「やるべきことは終わったことだし、一度家に帰るか。」
竜翔「はーい!」
沙雪「わ…私はどう帰れば…?」
天舞「あー、俺が背負ってこうか?」
沙雪「疲れているのにいいんですか…?ありがとうございます…!!」
---
天舞「ふーー!!」
火影「やはりここが一番落ち着くな。」
灯和「落ち着くねー…」
竜翔「……はい!お茶入れてきたよー!!」
沙雪「あ、ありがとうございます…!」
竜翔「…………………(ムッ)」
沙雪「え…!?きゅ、急にどうしたの…?」
天舞「……沙雪、少し気になったんだけどよぉ…」
沙雪「な…なんですか……?」
天舞「さっきからずっと敬語使ってるけど、別に使わなくていいぞー?」
沙雪「……えぇ!!?」
竜翔「そうだよ!!普通におしゃべりしよ!」
火影「…………(コクコク)」
沙雪「で、でも…!__なんか緊張するし…__」
__モジモジモジ…__
__天舞「……どーするよ?」__
__竜翔「絶対緊張してるよね…?」__
__火影「……仕方がない。竜翔、《《アレ》》をしろ。」__
__竜翔「…うん…わかったよ……」__
竜翔「……沙雪ちゃん……?」
沙雪「は、はい…?」
「………って!!?」
**キュルルーン♡**
竜翔「……これでも…だめぇ…?♡」
沙雪「…………!!?」
__ウルウルウル……__
__沙雪「………………わかりました……」__
竜翔「!わーーい!!」
沙雪「えっと……竜翔…くん…?」
竜翔「………!!(パアァァ…)」
沙雪「…て…天舞……?」
天舞「おぅ!」
沙雪「……火影…………__さん__…」
火影「……まあ、その呼び方の方が落ち着くならそれでいい。」
沙雪「はい……ごめんなさい………」
「あとは………」
灯和「……………………!!(ワクワク)」
沙雪「……ひ…灯和…!!////」
灯和「…!あらためて呼ばれると緊張するね……////」
沙雪「緊張しました………/////」
火影「…まあ、自己紹介も終わったことだ。今日はゆっくり休もう。」
沙雪「は…はい………」
**グラッ**
あれ…?
**ドサッ!!**
私…なんで倒れて……?
あ……そういえば私…怪我……してたなぁ………
しかも今日……色々あって……すごく疲れてた……………
__竜翔「!?沙雪ちゃん!!?」__
__天舞「うおぉ!!?急に限界来たか!?」__
__火影「……無理はないな。初めての場所で急にあんなことになったのだから。」__
__灯和「…今日はもうゆっくり寝かせてあげようか…」__
ああ……声が遠く聞こえる………
でも…この声……なんか安心するなぁ…………
私を…大切にしてくれる人がいたら……こんな感じだったのかなぁ………
まだ…彼らに聞きたいことはあるけど………
__………今日はもう…………………__
灯和「おやすみ。沙雪ちゃん。」
---
第四話 〜完〜
第五話
【前回のあらすじ】
大蛇を一度気絶させることに成功した一同。
治療をしていると、大蛇の体から不思議な矢が刺さっていることに気づいた。
それは、自分の感情を過度に昂らせて暴走させるという術がかかった矢だった…!!
大蛇が暴走したのも、その矢のせいらしい……
矢を処分したのち、一同は大蛇の治療を終え、家に帰った。
しかしそこで、怪我していることもあってか、沙雪の体力が底をつきてしまった。
そして沙雪はそのまま気絶するように眠ってしまったのだった……
__……チリン……__
沙雪「……………んぅ……」
あれ…私寝ちゃってた……?
確か…みんなと自己紹介しあって…急に疲れが来て……そのまま……?
沙雪「……ここ…は……?」
私は部屋を見渡した。
朝起きた場所とはまた違う部屋だった。
しかし、相変わらず畳の良い香りが漂っている。
どこかから風鈴の音がする。
水が優しく流れる音が聞こえる。おそらく近くに川があるのだろう。
行燈は消えていて、どこか寂しい。
襖から微かに漏れ出る弱々しい光を見るに、今はもう夜なのだろう。
私は状態を確認しようと、ゆっくりと上半身を起こす。
沙雪「あれ…?服が変わってる……?」
私の洋服が、綺麗な浴衣に変わっていたのだ。
水色を基準として、まだらに小さな白の花模様が入った美しい浴衣だった。
しかし、問題はそこじゃない。
沙雪(誰かが私の服を脱がせた……!?)
顔が一気に熱くなるのを感じる。
恥ずかしさと焦りだろう。
沙雪「………っ!////」
__〜〜〜〜♪__
私が一人で黙り込んでいると、どこかから何かが聞こえてきた。
私は目を瞑って、そっと耳を澄ます。
__ヒュ〜〜♪__
沙雪「………………!」
それは、本当に綺麗な笛の音だった。
自然の音と調和して、まるで笛の音色が自然の一部になったのようだった。
私は思わず、まだ痛む腕で体を支え、よろよろと立ち上がった。
沙雪「もっと…近くで聞きたい……」
そう思って、私は足を引き摺りながらゆっくりと襖に近づいた。
---
外には森が広がっていた。
木では、生き物たちが思い思いの場所で静かに眠っていた。
川の音は聞こえるが、もう少し離れているようだ。
笛の音は、真上から聞こえた。
私はゆっくりとお屋敷の屋根を見上げる。
ひゅ〜〜♪
笛の音色の主に私は目を向けた。
そこには、意外な人がいた。
沙雪「りゅ…竜翔…くん…!?」
竜翔「……ん?…ってえぇ!?さ、沙雪ちゃん…!?」
---
竜翔「………っしょっと!」
沙雪「引っ張ってくれてありがとう…」
竜翔「ううん、大丈夫だよ。」
沙雪「……なんでこんな時間に笛を吹いてるの?」
竜翔「これはね、森とか灯和たちを守るおまじないなんだよ!」
沙雪「え!?その笛すごいんだね…!」
竜翔「そうなの!ボクの力なんだぁ!」
沙雪「竜翔くんすごいね!」
竜翔「えへへ…///」
沙雪「………ここはすごくいいところだね…」
竜翔「うん……すごく綺麗だよね………」
私はゆっくり辺りを見る。
周りは青々とした木々で囲まれていた。
草木が擦れる音が心地いい。
屋根の上からだと、川も見ることができた。
ゆったりと流れていく川に、月の光が反射してキラキラと輝いている。
虫も鳥もとても幸せそうだった。
沙雪(…………………………)
私は、どうしても聞きたかったことを尋ねることにした。
沙雪「……………ねぇ。」
竜翔「んー?」
沙雪「………なんであなたたちは私を助けてくれたの?」
竜翔「…………………あぁ………」
私の方に体を向けて、静かに微笑んだ。
しかし、その笑みには、今までとは少し違う緊張した空気が混じっていた。
竜翔「…………ここはね、居場所を無くした生き物が集まる場所なんだ。」
「ボクも。火影も。天舞も。灯和も。他のみんなも。居場所がなかったの。」
沙雪「………!」
竜翔「……あんな雪山で倒れてるくらいなんだ。君も逃げてきたんでしょ?」
沙雪「!」
図星をつかれ、思わず肩が跳ねる。
竜翔「………多分灯和は、見捨てられなかったんだろうね。」
沙雪「…え?」
竜翔「……灯和はね、昔、人間さんに殺されかけた事があるんだ。」
沙雪「!!?」
竜翔「うん。住んでた山に強い呪いがかけられて、死にかけたんだって。」
沙雪「…!!」
私は朝の灯和の怯えようを思い出す。
人見知りにしては異常なほどの怯えよう。
あれは…過去に人間に殺されかけたトラウマがあるからなんだ…
沙雪「…………それなのに…私をここに匿ってくれたの……?」
竜翔「……灯和はそういう人なんだよ。困ってる人を見捨てられない性格。」
「たとえそれが…自分にとって脅威になるかもしれない存在でも。」
沙雪「………………」
__ポロ…__
沙雪「……………っっ!!(ポロポロ)」
竜翔「ぅえ!?な…泣かないでよぉ……」
__沙雪「……ごめんなさい……ごめんなさいっ………」__
竜翔「…………!?あ、謝らないで……大丈夫だから…ね?」
__さすさす…__
沙雪「……………っ!」
私は、生まれて一度も、優しくされたことなんてなかった。
《《こんな私》》だから、仕方がないものだとばかり思っていた。
でも、私は今こうして、暖かな優しさを確かに感じていた。
---
沙雪「………グスッ…グスッ…」
竜翔「……落ち着いた…?」
沙雪「…うん…ありがと…」
竜翔「………ううん。大丈夫だよ。」
沙雪「……灯和たちに『泣いてた』って言わないでね…?」
竜翔「言わないよ。」
「………じゃあここでの話は、二人の秘密…ね?」
沙雪「…うん…!」
---
__チュンチュン__
外では小鳥たちが朝の挨拶をしている。
草木も太陽の光を取り込んで、とても生き生きとしている。
みんな幸せそうだ。
……私の目の前の人たち以外は。
天舞「……すまない…」
天舞が地面に埋まるほど頭を床につけて土下座している。
いや、詳しく言えば、火影さんに頭を押さえつけられている…?
灯和と竜翔は隅で火影さんのお怒りモードに震えてる。
火影「……私が神通力でお前に服を着せていた時に天舞が部屋に入ってきてな…」
沙雪「あっいやっ別に気にしてないので大丈夫ですっ!!」
火影「…本当だな。」
パッ(頭から手を離す)
天舞「……ごめんな…」
沙雪「大丈夫だよ…?」
灯和「……あ!着物といえば…」
話を逸らすように灯和はそういうと、棚から綺麗な着物を取り出した。
灯和「これ、沙雪ちゃんが寝てる間に友達に貰ったんだけど…」
火影「……その柄は《《あいつ》》か。」
灯和「一回着てみてくれる…?気にいるといいんだけど…」
沙雪「う…うんっ!」
---
沙雪「わあぁ…!」
綺麗な着物を着て、思わず感嘆の声が漏れる。
白を基準にして、下へ続くにつれて小さな水色の花が増えていく柄だった。
しかし、普通の着物とはどこか違う、淡麗な美しさを感じた。
沙雪「……すっごく可愛い…!ありがとう!」
灯和「…………そんなに言われると照れるよ…/////」
竜翔「あの人性格に見合わずこういうの得意だよね〜。」
天舞「それなー。」
__キュルルルル……__
竜翔「ん?」
灯和「………?」
沙雪「………………っ!!//////」
天舞「……あー、そーいや朝飯まだだったな。」
灯和「そっか!じゃあ作ってくるね!」
火影「私も手伝おう。」
沙雪「あ…!私も手伝う…!」
---
朝ごはんは、白米、山菜、漬物、お味噌汁、焼き魚だ。
天舞「なんか火影のやつの方が多くね?」
火影「気のせいだ(イラッ)」
天舞「確かめねーとわかんねーだろ!一回見せろ!!」
火影「来るなっ!!」
**ドタバタッッ**
竜翔「んもー!ご飯の時に騒がないでってばー!!」
灯和「……ごめんねぇ…いっつもこうなんだ…(ヒソヒソ)」
沙雪「全然大丈夫!」
--- …なんでだろう… ---
--- この人たちとの面識なんてないはずなのに ---
--- 私は愛されないものだと思ってたのに ---
--- …すごく幸せだなぁ… ---
灯和「じゃあ、命に感謝して…」
一同「いただきます!」
---
第五話 〜完〜
こんにちは、『読書が好き🍵』です。
私、一つイベントを思いつきました。その名も『キャラ質』です!
今作に出てきているキャラクターたちへの疑問や質問を送ってください。
私がそれを答えさせていきます。じゃんじゃん送ってくださいね!
では、またどこかで会いましょう。
キャラ質コーナー!
連載小説 「孤独な私と臆病鬼は、今日も光を探してる。」のキャラ質です。
ファンレター・リクエスト等で来た、キャラに関する質問を回答していきます。
どんどん質問してくださいね。
---
Q1.九尾と天狐の違いってなに?
火影「『九尾』は九つの尾を持つ狐の総称だ。」
「そして『天狐』は九尾の中でも千年以上生きて神格化した狐のことだ。」
「………間違えるなよ…?(圧)」
天舞(どっちでもいーだろ…めんどくせー奴だな…)
火影「……ちなみに天狐は思考の読み取りもできるんだぞ。なぁ天舞…?」
天舞「やべ…」
---
Q2.天舞と火影は結構な年齢差があるのに、なんでそんなに馴れ馴れしいの?
**火影「私が聞きたい。」**
竜翔「んー、多分だけど、天舞の性格の問題じゃない?」
「天舞って年上年下関係なくあんな感じだし。」
火影「あいつはもう少し年上に対する敬意を持った方がいいな……」
__竜翔「でも悪い気はしてないんでしょ?」__
__火影「……………」__
竜翔「…おっと、読者さんの前だったね!《《あの時の話》》はまたどこかで…ね?」
---
Q3.天舞と火影って仲良しなの?
**天舞「な訳ないだろっっっ!!!」**
火影「愚問だ。」
天舞「誰がこんなイキリ気取り野郎と仲良くしたいんだよ!?」
火影「同感だな。私も騒がしい能無しとは仲良くはしたくない。」
天舞「誰が能無しだと!?」
火影「お前以外に誰かいるか?」
天舞「んだとこの野狐!!」
火影「…………(カチーン)」
**ワーギャー!!**
灯和「……またやってるよ…」
__竜翔「…………火影、《《あれ》》いつまで続けるつもりなんだろうね…?」__
__灯和「……わからない…でも火影はよくやってると思うよ……」__
---
Q4.火影ってもしかして怒りっぽい?
竜翔「いやいや!全然そんなことないよ!」
灯和「そうだよ!あ、でも周りからはそう見られてもおかしくないのかな…?」
竜翔「あー確かに……」
灯和「でも本当はすごく優しいんだよ!いつも怒ってるのにはわ
__ヒョコッ__
火影「なんの話をしているんだ?」
**灯和「うわああぁあああぁあぁ!!!!?!?」**
**バターン!!**
火影「…!?」
竜翔「うわぁ!!落ち着いてーー!!!」
---
Q5.それぞれの性格を教えて!
沙雪:誰にでも優しい。少し控えめ。怒れない。自己肯定感が低い。
天舞:とにかく天真爛漫。小さい頃のことを忘れてる。
竜翔:幼いのにしっかり者。だから結構疲れやすい。苦労者。
火影:実はすごく優しい。いつもの厳しさの奥には少し事情が…?
灯和:ビビり。困ってる人に手を差し伸べずにいられない。とにかく甘い。
今の所はこんな感じ。
---
Q6.竜翔の尻尾って日常生活で邪魔にならないの?
**竜翔「すっごい邪魔。」**
沙雪「すごい食い気味だね…?」
竜翔「寝る時もゴツゴツするし周りに当たるしもう邪魔で邪魔で……!!」
ヌッ…
火影「私もだ。」
沙雪「わっ!?いつの間に来てたんですか…!?」
火影「歩いただけで埃がつくし、動物たちに遊ばれるし……」
沙雪「!?そうなんですか……!!?」
(…………ちょっと見てみたい……)
火影「……沙雪、お前今何を考えた……?」
バサッ…
天舞「俺の羽も嵩張るんだよなー……」
火影「天舞もか。」
竜翔「でも天舞は畳めるだけまだマシじゃん……」
沙雪(みんな大変なんだな……)
---
Q7.竜翔って逆鱗に触れたら怒るの?
竜翔「イラつきはするけどそんなに怒りはしないかなー。」
天舞「え、俺昔触って尻尾でぶっ飛ばされた記憶があるんだけど……」
竜翔「猫じゃらしで執拗に触ってきたらそりゃ怒るでしょ。」
天舞「えー辛辣ーー(棒)」
---
第六話
【前回のあらすじ】
夜、とある和室でふと目を覚ましてしまった沙雪。
すると、外からの美しい笛の音に気がつく。
笛の音を辿っていくと、なんとその音の主は竜翔だった。
そして彼女は、ここに住む者たちの秘密を知ってしまう。
竜翔によると、『ここにいる者の殆どが人間に居場所を奪われた』という…
そしてなんと、灯和は昔、人間に殺されかけてトラウマとなっていたのだ…!!
そんな中でも楽しそうに生きている彼らを見て、紗雪は不思議な安心感を覚えた…
こうして、沙雪と妖怪たちの生活が幕を開けたのだ。
--- 昼の縁側にて ---
__チュンチュンチュン…__
__サラサラ…__
竜翔「……ん〜…」
灯和「…………………(スヤスヤ)」
__……サッ…サッ…__
火影「……寝ている…」
沙雪「寝てますね…」
火影「掃除まで手伝ってもらって悪いな沙雪。」
沙雪「全然大丈夫です!……あ、そういえば天舞は…?」
火影「『見回り』を言い訳に遊びに出ていったぞ。」
沙雪「あらら…」
火影「沙雪、そっちの柱を拭いてくれないか?」
沙雪「はい!」
__サッサッサッ……__
__…フキフキ……__
火影「………?」
沙雪「…?どうしたんですか?」
竜翔「…………んぅ…?」
沙雪「!竜翔くん!ごめん、起こしちゃった?」
竜翔「あ…おはよぉ…いや、なんか嫌な予感がしたから…気のせいかな…?」
火影「……いや、多分気のせいじゃないな。私も悪寒がした。」
沙雪「え…?どんな感じのですか…?」
竜翔「なんかこう…厄災が迫ってくるみたいな……」
バサッバサッ…
天舞「たっだいまーー!!!」
灯和「ん…?あぁ、おかえり天舞。」
天舞「あ、わりぃ。起こしたか?」
灯和「いや、大丈夫だよ。ちょうど起きようと思ってたし。」
火影「…お前も何か感じたか?」
天舞「そんな感じ。なんか変な気配したから帰ってきたんだよ。」
沙雪「……?全然わからない……」
---
--- そして夜… ---
__スッ…__
沙雪「みなさん、お待たせしました…!」
竜翔「はーい、ご飯できたよー!」
灯和「わー!ありがと!」
火影「天舞、配膳を手伝え。」
天舞「ほいほーい。」
__ブルッ__
竜翔「……んん…?」
沙雪「ど、どうしたの竜翔くん…?」
竜翔「なんかずっと寒気が……」
天舞「……俺も同じだ。」
火影「…嫌な予感がするな……」
天舞「……?」
突然、天舞が動きを止めて一点を見つめ始めた。
沙雪「天舞?どうしたの…?」
天舞「………なんか聞こえね?」
火影「…ああ、聞こえたな。」
竜翔「ボクわかんない…」
灯和「……いや、確かに何か聞こえる…これ…誰かが走ってくる音……?」
沙雪「え?何も聞こえな
__ドドドドド…__
その時、私は確かに聞こえた。
何かが走っている音を。
私以外のみんなも聞こえたのか、同じ方角を見ている。
沙雪「…!」
天舞「…やっぱなんか聞こえんな。」
火影「だな。」
竜翔「……なんだろうね…?」
沙雪「動物…かな…?」
灯和「……………いや…違う。もっと何か……不思議な……」
ドドドドドドド…
竜翔「……ねぇ、近づいてきてない…?」
火影「そうだな。確実にこっちにきている。」
天舞「マジかよ……」
沙雪「誰…!?」
灯和「……もしかして…《《あの子》》かな……?」
天舞「!!」
竜翔「!?だとしたら大分まずくない!!?」
火影「………沙雪、少し下がっていろ。あいつなら何をしでかすかわからん。」
沙雪「!はい…!!」
**ドドドドドドドドッッ**
天舞「火影!方角わかるか?」
火影「北西。目の前の障子の方角からだ。」
灯和「…!!もしかして…突き破ってくるつもり…!!?」
竜翔「えぇ!!?」
沙雪「!!?障子を突き破るって…!?」
***ガタッ!!***
**火影「!沙雪!!しゃがめっ!!!」**
---
ダダダダダッッッ!!!!
??「……お!見えたなっ!灯和の屋敷っ!!」
ガサガサッッ!!
**??「どけどけおぬしらっ!」**
** 「天下一!世界一!可愛くっ!!キュートなっ!!」**
** 「|猫葉《ねこは》様が通るぞーー!!!!」**
***ガッシャーーーンッッ!!!!***
沙雪「……!!?」
火影「…っ!!」
**猫葉「ニャハハハハハッッ!!!」**
---
第六話 〜完〜
第七話
【前回のあらすじ】
夜の秘密の会話の後、正式にそこで暮らすことが決まった沙雪。
その日の夜、天舞たちが「嫌な気配がする」と警戒していた。
すると突然、遠くからこちらへ走ってくる音が聞こえてきたのだ!!
そして、なんとその音の主が、障子を突き破って入ってきて…!?
**ガッシャーーーンッッ!!!!!**
沙雪「きゃっ!!?」
火影「っ!!」
ガバッ!
---
沙雪「………!?」
私は何かと壁の間に挟まれている。なぜが顔が暖かい。
横を見ると、天舞、竜翔くん、灯和も一緒だ。
というか、4人がおしくらまんじゅうの如くギュウギュウになっている。
私は唐突すぎて何が起こったのか全くわかっていない。
でも私以外は状況がわかっているようだった。
竜翔「……立て直したばっかなのに……」
天舞「…っ!どけっ…!!」
灯和「火影大丈夫!?」
火影「……大丈夫だ…」
火影さんの声が聞こえると同時に、圧迫感がなくなって視界がひらけた。
目の前には、狐の尻尾がゆらいでいる。
その時、私は理解した。
私は火影さんに庇われて、壁に挟まれてたんだ。
沙雪「!!あ、ありがとうございます…!!」
火影「…別にいい。」
どうりで顔がもふもふしてたわけだ。__正直すごく気持ちよかった。__
そんなことを考えていると、、私の前方から知らない声が聞こえてくる。
??「ニャハハッ♪着地成功じゃっ!」
火影「もう少し反応が遅れていたらどうするつもりだったんだ…?」
??「んぁ?避けれたんじゃから別にいいじゃろ!」
火影「……………(イラァ)」
天舞「おー久しぶりだなー!!」
??「おお!天舞か!久しいの〜!!」
竜翔「もう!こっちくるたびにお屋敷壊さないでよっ!」
??「別に良いではないか!!」
そんな天真爛漫な態度で彼女は話続ける。
一方の私は大混乱だ。
当たり前だ。目の前の彼女もまた、人間ではなかったのだから。
---
彼女は、私よりも少し小柄なのに、私よりも存在感があった。
綺麗なセミロングの黒髪が風に靡いている。
目の色は綺麗な緑色で、少し引き込まれる。
口からは少し八重歯が出ていて、どこか愛嬌がある。
服は、緑の着物に薄黄土の袴と、まるで巫女さんのようだった。
しかし、綺麗な髪の上に、可愛らしい猫の耳が動いていた。
後ろから二つに分かれた猫の尾が見え隠れしている。
彼女の正体はおそらく…`猫又`だろう。
---
私があたふたとしていると、彼女と目が合ってしまった。
その瞬間、彼女の楽しげな目が警戒で揺らいだのが分かった。
??「……ん?誰じゃおぬし。」
沙雪「…わ、私は神月沙雪です…!」
??「…ふんっ!図が高いぞ人間っ!ワシにひれ伏せっ!!」
私は思わず姿勢を正す。
すると彼女は自信に満ちた表情で仁王立ちになった。
??「よく覚えておけ沙雪っ!ワシは猫又の**|猫葉《ねこは》**じゃっ!!」
沙雪「は、はいっ!?」
猫葉と名乗る彼女は、私が困惑する姿を見て満足げに頷いた。
しかし、私をみる目から警戒は抜けきれていない。
私はこっそりと竜翔たちに話しかけた。
__沙雪「か、彼女は…?」__
__竜翔「ごめんね…昔からあんな性格なんだ……」__
__沙雪「え、何回か会ったことあるの…?」__
__火影「猫葉が腹を空かせていたから魚を食わせたら付いてくるようになった。」__
__沙雪「え…野良猫ちゃんみたいだね……?」__
__灯和「それが、本当に野良猫だったんだよ……」__
__天舞「だから警戒心が結構高いんだよ…下手に絡んだら呪われるぞ…」__
__沙雪「えぇ!?」__
__竜翔「猫又っていうのは、相手を化かしたり呪う力があるとされてるんだよ……」__
__天舞「そう。だから気ぃつけろよー。」__
沙雪「……………!!」
私はまた猫葉ちゃんの方に目を向ける。
猫葉ちゃんは自分の頭を整えていた。
沙雪(…………やってみるしかないか…)
私は覚悟を決めて、彼女に近づく。
当然気づかれてしまった。
猫葉「なんじゃ人間。」
__沙雪「………あの…」__
猫葉「ハキハキ言わんと何も聞こえぬぞ?」
**沙雪「………失礼しますっ!」**
ナデナデ…
**一同「!!?」**
私と猫葉ちゃん以外が飛び上がった。
明らかに動揺している。
猫葉「はぁ!?何をしておるのじゃおぬしはっ!!?」
沙雪「…………!!」
ナデナデナデ……
猫葉「ニャッ!?やめろ人間っ!その手を離せっ!!」
竜翔「さ、沙雪ちゃん!?さっきの話聞いてた!!?」
火影「…!?」
天舞「うおぉ!!?何してんだ急に!!?」
猫葉「お…ぬし…!そ…れをっ…やめ…ろ…と…言っ…ておる…じゃろ…!!」
沙雪(考えるな考えるな…!!手を動かせ……!!)
ナデナデナデナデ……
猫葉「………………!」
ナデナデナデナデナデナデ………
竜翔「…ん?何か聞こえない…?」
火影「ああ…何か聞こえるな。」
天舞「なんの音だ…?」
__ゴロゴロゴロ……__
その時、猫葉ちゃんがゆっくりと口を開いた。
猫葉「………おい人間。」
沙雪「!な、なんですか…?」
猫葉「……そこもっと撫でろ…」
沙雪「……!!」
ナデナデ……
__グルルルルル……__
***一同「!!?!?」***
全員が今まで見たことないような顔をした。
目が丸くして、空いた口が塞がらないと言った感じだ。
灯和「あ…あの猫葉が……!!」
天舞「甘えてるっ…!!?」
火影「沙雪、手にマタタビでも仕込んだのか!?」
沙雪「う、ううん……撫でただけ…だよ…?」
__ゴロゴロ……__
猫葉「……ん〜…気持ちいいのぉ…♪」
沙雪「う、嬉しいですっ…!////」
竜翔「…… !!ご、ゴッドハンドだ……!!」
そしてしばらく、このナデナデ作戦は続いたのだった。
---
第七話 〜完〜
新キャラ『猫葉』の情報は人物紹介に載せています。