超普通なクラス、6年C組の物語です。
短編集的な感じです。
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目次
学級 シリーズ1
これは、この6年C組の物語である。
、、、
ここは、6年C組。
ごくありきたりなクラスだ。
自分は、夏目コウ。
特に目立つところもないけど、陰キャってわけでもない、ごく普通の男子。
このクラスは、どっかの小説で見たことあるってくらい、普通だ。
真面目な生徒会長。
ふざける目立ちたがり屋の男子。
キャピキャピとヘアセットをする女子たち。
、、、
なんだろう。
キャピキャピも、リア充きどりのモテ女子も、みんな額を合わせてヒソヒソ話をしている。
僕は耳を澄ました
「ねーねー、あれ、聞いた?」
「聞いた聞いた!カナコがめありちゃんの悪口ネットに書いたんでしょー!」
「うざいとか、キャピキャピしてるとか書いたらしいよ」
「なにそれー非リア充の嫉妬じゃんwww」
「それなwww」
「めありちゃん泣いてるよー」
それを聞いてめありの席を見ると、めありが泣いていた。
それを慰める取り巻きたち。
めありのことは、ハッキリ言って嫌いだった。
ああいう男を振り回すタイプのやつ。
悪いうわさも多いし、実際くらい感じの女子をいじめているところも目撃してたし。
カナコの友達のうち数名もそちらに参加していた。
でも、カナコのグループの女子の大半は別のところでいた。
「めありってめっちゃ性格悪いらしいよ。ほら、めありと付き合ってるってうわさの男子、木芽!きのめもめありにすりよられて、はんば無理やり付き合わされたって!」
「うそーサイテーじゃん 木芽とカナコって隠れ両思いなんだよね?なのにあめりのせいで引き離されるとか最悪ー」
あー、こういうやつね。女子のドロドロってやつ?
こーゆーのって苦手。
他の男子は基本アウトドア派だから外に出ている。
自分は、昨日買ったファンタジー小説を読みたかったから、教室で読んでいた。
どうせ、いつもみたいに人のうわさも七十五日って感じで終わるだろうけど。
、、、そう思っていられるのは、今だけだった。
学級 シリーズ1 第2話
あれ以来、クラスが変なのは、気のせいだろうか。
クラスで、仲間割れが起きている気がする。
グループをつくって話し合う、みたいな場でも、大抵同じ人たちで集まる。
班が席とかで決まっている場合には、少しピリピリしてる空気がある。
それをクラスメートに話すと、「ああ、それね」って感じだった。
「今、女子がなんかケンカ?してんだよ。めありとその取り巻きと、めありの親衛隊の男子。
そんでもーひとつのグループが、カナコとそのダチ(友達のこと)ってわけ」
なんか、さらにこじれてる。
「まー、めありの方が人数も権力もでかいからどちらかというといじめみたいなやつだけど。」
へー、と言って、そいつとは別れた。
放課後、近くの駄菓子屋で澄んだ緑のサイダーを買って、キュポッと栓を開ける。
さらっといじめ、という言葉が出てくる。
いじめ。
その言葉は、どこか遠い国で起きている出来事について話しているような響きに感じた。
いじめ、って聞くと、机に悪口が書いてあるとか、上靴がびしょ濡れになってるとか、そういうとてつもなく陰湿なことに感じる。
おとなしい良い子が、すっごい嫌なやつで、性格がねじまがってるやつらに叩きのめされて泣いてる、そんなとんでもないことをイメージしてしまう。
でも、あいつの口から、いじめという言葉が、軽々しく出てきた。
それは現実感のない、不似合いな単語に感じた。
ぐびっとサイダーを飲みくだし、栓をしてリュックに直し、家への帰路を歩き出した。
学級 シリーズ1 第3話
クラスの雰囲気が変わってきているのを、薄々感じている奴らは多いのではないだろうか。
なんていうか、クラスのカースト化が進んでいる気がする。
クラスカースト、また不自然に感じる。
カーストは、それこそ小説でしか見ないようなもので、
現実にあると感じるのは、いちごパフェにトマトが乗っかっているような不自然さがあった。
でも、そのクラスカースト化を受け入れざるを得ない雰囲気があった。
そのカーストは、男子の方には侵食していないように感じた。
あくまで女子の、カースト。
一軍は、めあり軍団。
二軍は、その他って感じの奴ら。
三軍は、カナコたち。
なんとなくで入ったクラスチャットが、「非リア充ってうざい」「ほんとそれ」「ブスがでしゃばんなって感じwww」と言う女子の投稿だらけになってきた。
男子は、ゲームのグループで集まる感じになってきた。
けっこうクラスが荒れてきた。
なんでかわからないが、野生のカンみたいなものが働いていた。
でも、いじめでは、、、
まだ、受け入れてない自分がいた。
カナコとはまあまあ仲が良かったから、カナコがいじめられているなんて、信じたくなかったし。
どうせすぐ静まる、、、
と思った時、悲鳴のような声が聞こえた。
「お願いっやめて、、、!」
「だーまーれーっ 泣いちゃあブスが強調されるよーw」
「それなー」
まさかっ、、、!
流石に危機感を覚え、声の発信源を探る。
、、、ここだ。空き教室。
窓からこっそり、中をのぞいた。
中には、めありと取り巻き、そして座り込んだカナコだった。
手には、カナコのものと思しきキーホルダーがあった。
懐中時計の形をしていて、開いたふたからカナコとその友達の写真が見えた。
「だーかーらー 早くミナの悪口いいなって〜」
「私、今日カレシと出かけるんだけど〜」
「ちょwww非リア充に言ったら可哀想でしょwww」
「確かにwww」
そんな会話。
自分は怒りに火照る頬を冷たい指で冷やした。
こんな時に、やめろよ!と叫んで教室に乗り込めたらどれだけいいだろう。
あのキーホルダーは、ミナと2人でお金を出し合って買った大切なものだと、前カナコが話していた。
、、、名案が、浮かんだ。
多分、いける。
自分は気づいたら走り出していた。
学級 シリーズ1 第4話
自分は、運動場に向かって走りだした。
いちかばちか、これしか方法がない。
自分は、少し柔らかめのボールを、思いっきり窓にぶん投げた。
流石に割れはせず、ボイーンと跳ね返る。
その瞬間教室の扉へ猛ダッシュ。
ボールの音気を取られた時、
「ピーンポーンパーンポーン、、、まもなく、下校時刻です。みなさん、家へ帰りましょう。」
放送を鳴らす。
これは、実は音源。
放送委員会は大抵持っている。
「うそっもうそんな時間!?」
「さいあくー!かえろっめあり!」
「帰ろ帰ろー」
自分は猛ダッシュで隠れる。
見つかったらさらにややこしいし。
「カッカナコ!覚えてろよっ!」
なぜか八つ当たりされるカナコ。
でも、少なくとも今日は解放された。
安心して、ぺたりと床に座り込んだ。
学級 5話
あの作戦を実行するのは、かなり怖かった
正直音源と放送では音質が違うし、バレてもおかしくなかった
まあ、教室の扉越しだったのが大きかったかもだけど
しかし、あんな漫画みたいなイジメがあるなんて、、、
イジメ、なんとなくふわふわした言葉だった
自分だって、知っている
イジメっていうのは、どこでも起こりうるとだってこと
イジメっていうのは、本当に現実であるんだってこと
イジメっていうのは、実際に人の命を奪った、恐ろしいものだってこと
イジメっていうのは、明確な、「〇〇をされたらイジメ」っていうものではないっていうこと
でも頭で知っていても、心が追いついていかない
一番馴染む言葉は「嫌がらせ」だった
嫌がらせ、だと、少し自然だ
なんか、笑って許せることのような感じで
イジメが題材の本だって、いくつか読んだことがある
それは、どれも本当に酷いことだった
でも、現実味がなかった
初めていじめの描写に触れたのは、子供の頃見ていたアニメ
アイドルが、他のクラスメートに嫉妬される、という内容
陰口を言ったり、サインを強要してたりして、そのアイドルはなんども転校を繰り返す、というものだった
この話は、とてもわかりやすかった
美人で、性格が良い、そんなアイドルが、他の普通の女子に嫉妬される、というのは、とてもわかりやすかった
それ以降も、まあまあわかりやすいものが多かった
でも、こっちの世界では違う
だって、木芽とカナコが両思い、というのも、木芽とめありが付き合っているというのも事実だから
だから、めありがカナコに怒るのは、ある意味とても普通なことなんじゃないか
自分が「正しい」とか「正しくない」とか決めるのは、無理なんじゃないか
そうおもえてしまう
付き合うとか、そういうのは自分にはよくわからない
だから、そっち側の人間の気持ちなんて、察せないんじゃないか
めありと付き合っている木芽をカナコが好きになるって、実は、自分が思う以上にまずいことなんじゃないか
そう思ってしまう