私が作った単発・ショートショートまとめた物です。単発では色々なジャンルを描いております。
ショートショートを書くことが少ないので単発とまとめています。
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【ショートショート】天気予報の冒険
小春日和。都会の喧騒が小さく思える程には、日曜日の|長閑《のどか》な早朝、洗顔後の少し湿った顔のまま、私はふとテレビをつけた。
どうやら天気予報がやっているようだった。
普段はあまり見ずに、すぐにチャンネルを変えてしまうはずなのに、どうしてかその日は、なんとなくその天気予報に見入ってしまった。
それが始まりだったのだろう。天気予報を見てから数秒、いつの間に景色がガラッと変わっていた。
少し散らかっていた床は後かともなく消えており、代わりに宙に浮く私の足があった。
周りの小花柄のペールホワイトの壁紙は、ビルが立ち並ぶ首都圏の風景にたちまち変わっていた。
足より下に目をやろうとすると、バランスを崩して足と頭がひっくり返ってしまう。ようは逆さだちのような状態だ。そのまま空を掻き前に進むと、明るい色の板のようなものが見えた。
もう少し空を掻くと、それが天気を知らせる物だと気づいた。
気温を知らせる折れ線グラフ、太陽のマークに近づくと、少し熱くて、火傷しそうになった。
そんなことをしている束の間、いつのまにかその板は消え、飾り気のない日本地図が聳え立っていた。
その佇まいでありながら、親しみやすい雰囲気があるようだ。よく見る日本全体の天気予報だろうか。また空を掻くと、お天気マークにぶつかったり、北海道に登って本州を滑ったり、たくさんのことをした。
それもあっという間だったようだ。今度は詳細な天気図に移った。日本の天気図とは違い、頭が下の状態で、お天気マークにぶつかりながら、滑り落ちていった。
太陽の温もりや、雲と太陽が重なった時の暖かな温度、雨予報の少ししんみりした空気が、一瞬のうちに過ぎていくようだ。
また画面が変わったようだ。関東地方の地図に、黄色や橙色が散布している。
どうやら今日は花粉予報が出されているようだ。テレビの中に花粉なんてないのに、なんだかくしゃみと鼻水が止まらないようだ。おかしくて笑ってしまう。
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しばらく笑っていたら、もうあの時の景色は無くなっており、いつも通りの自分の部屋に転がっているような状態だった。
その状態から体を起こす。何もしてないはずなのに、何か走った後のような疲れがあった。
きっと違いない。あの時の冒険、そう、`天気予報の冒険`は、本当にあったのだと思う。
そんなことを思いながら、ベランダへと繋がる大きな窓という外への扉を開ける。
「…へっくしゅん!」
思わずくしゃみをしてまった。天気予報の言う通りに、花粉は本当に飛んでいたんだな、なんて、またくすくすと笑ってしまった。
青くて広大な空を見ながら、太陽のシャワーを浴びる。
この1日は、「天気予報の旅」から、広大な空のように、暖かい1日になったのだった。