空に浮いたら。番外編。
蓮くん視点のお話。
空に浮いたら。1↓
https://tanpen.net/novel/series/38caa453-71d1-46ca-a5a1-6f9f504e1a01/
空に浮いたら。2
https://tanpen.net/novel/series/38ef3c53-4884-4d1e-aa13-d52f0f7b676a/
空に浮きたい。(彩花視点)↓
https://tanpen.net/novel/series/cc965046-6d14-4f52-889b-9833c569de7a/
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目次
空へとばそう。1
物語が長くなりすぎて自分で前回の物語を忘れることが悩み。
⚠大分暗いお話
空へとばそう。あの、二人を。
そして自分の恋情も風船に詰め込んで_________________
---
「龍にーちゃん。いってらっしゃい。」
これは、蓮が麗王に記憶を渡した直後。
『そういえば、なぜ主は麗王のことを龍にーちゃんと呼んでおる?龍の遺伝子も、ついさきに知ったことであろう?』
素朴な疑問だった。龍の遺伝子についてはゼルラが教えたこと。知っていたとしても、なぜそれを麗王に例えたのか....
「.......本で、読んだんだ」
『本...』
本。無数にある本の中で、麗王をりゅうと呼ぶ理由があったのだろうか。
「『龍人フレール』って物語だったんだけど....」
---
人間が生まれてすぐの頃だった。
あるところに、龍と人間から生まれた龍神が誕生した。その赤子は双子だった。
兄のライルは優しい人だった。何があっても弱き者の味方をし、自分の強い力で守った。弟は兄を尊敬していた。兄がしたいことならなんでも手伝い、ときには自分の命を犠牲にしてまで兄の命を守ろうとした。
そう。命を犠牲にしてまで、だ。
兄が平民のために戦った。弟もそれを手伝った。だが二人で何百人もの軍勢を相手にするのは多勢に無勢。兄は命を落とした。誰もがそう思った。
弟が守った....いいや、交換したという方が正しいのだろうか。
兄にすべてを捧げたのだ。自分の命までも....
しかしその対価は大きいものだった。『魂そのものの消滅』。
それが命交換の条件。人間は魂を持っている。一度死んでもリセットされ、魂が肉体に憑依する。しかしそんなことも許されず、もう生き返ることさえも許されない。それが魂そのものの消滅。
「それでも兄さんを救いたい.....」
そう願った弟は、魂ごと、兄に捧げた。
そして兄の悲しみは。声は。届かないまま、弟の魂は灰と化した。
---
『悲しい話じゃな......』
「だから、自分と龍にーちゃんがこんな状況になっても、僕は弟のようにするって決意で、龍にーちゃんって呼ぶようになったんだ。」
ここでゼルラは思った。
(ここであの物語のようになってしまったら.....)
『蓮の魂が消える.....?』
不思議と声に出たその予想は、嫌な予感と身震いを引き起こした。
「あ、気づい、ちゃ、った....?」
段々と蓮の身体が薄くなっていく。
段々、空中へ舞っていく。
『蓮!!!』
(だめだだめだ。消えてしまっては)
『絶対に駄目だ!!!!!!!!』
https://www.youtube.com/watch?v=chfbkNNGpj0
人生疲れた
(病み期にとつにゅーしました!)
空へとばそう。2
「ゼルラ...今までありが.........ぅ」
少しずつ消えていく蓮の体を見ながら、ゼルラの頭は急回転をしていた。
(どうすれば、どうすればどうすればいい!?どうすれば蓮を助けられる!?)
そしてゼルラののうには、 一つの答えが生み出された。
『自分の全てを渡す』。
彩花は神だ。そしてゼルラも_____
神は様々な能力がある。その一つに他人に自分のすべてを受け渡すというものがある。しかし受け渡すと、自分は神として地上に降りることができない。
『この方法しか、ない....じゃな。』
ゼルラは特別な感情を蓮に抱いているわけではない。しかし、蓮と周りの人間との関係に特別な感情...『興味』というのだろうか?それを抱いている。そして、全員が幸せになって欲しいと考えている。
自分がここで命を投げ出しても必ず幸せになるわけではない。だがここで蓮を生かさないと不幸へと繋がっていくということがゼルラには分かった。
『.....蓮。』
そっと告げた。
『あとは、頼んだよ。』
「え?」
蓮が状況を理解する前に、ゼルラは動いた。
ゼルラの手から紐のような輝いた薄いものが飛び出し、蓮に向かっていく。
そして蓮の手にそれがくっつくと、段々と色が変わっていく。
エネルギーを流し込むように。
「は?おま、なにして...!!!」
『.......』
無言の沈黙のなか、抵抗する蓮を押さえつけにっこりと微笑んだ。
「ゼルラ!?そんなことしたらお前....」
『だい..........じょぅぶ........』
段々言葉を発せなくなってきた。
『........あの二人を.....』
空へとばそう
最後に、ゼルラはそういった。身体が消えていくなかで。
美しい着物、顔、髪....段々と空へ帰っていく。
「ゼルラ.................?」
不思議と涙が出てきた。ポロポロと、大粒の涙が。
「うわあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
いつのまにか大事な存在の一つとなっていた。
それが、崩されていく....
でも、きっとゼルラはこう言うだろう。
妾の分まで。しっかりと生きてくれ。
「........もち.......ろん」
ここで、蓮の意識が途絶えた。
空にとばそう。3
「明日修学旅行ってことすっかり忘れてた〜....」
姉の風が、焦りながら明日の支度をしている。
(いや修学旅行を前日に思い出すことってないだろ...)
と、思いながらも準備を手伝っている自分の甘さに嫌気が差す。
「こんなんだから...きっと...」
あんなことに、なってしまったんだろうな...
かといってそんなことを思っている暇はなかった。ゼルラの力を借りてようやくこっちの世界にたどり着いたと思ったら。神の力を使えるようになっていたり、龍にーちゃんの弟ではなく見知らぬ人の弟になったと思ったら麗王に恋心を抱いたり。そうかと思えば彩花の本性がけっこうエグかったり...
(こっちの身にもなってくれよ...)
この物語(中々なメタ発言すまねー...)のなかで、唯一善の心を持ちながら、本音で話せる相談役が居ない蓮はすこしこころを病ませていた。
「ねぇ、姉ちゃんはいつ龍にーちゃ...じゃなかった麗王にーちゃんに、こ、告白とかしないの?」
少し頬を赤らめながら聞くと、風の顔はみるみるうちに赤く染まっていった。
「ぁ、明日....ちょ、ちょびっとだけ」
(いや告白にちょっともないだろ)
心のなかでツッコミを入れながらよかったねがんばれ、と応援の声を送る。
だが、一つ心配なことがあった。
(彩花日和...)
蓮が彩花の本性...まあ、能力の試運転をしていたときに偶然見ただけなのだが、それはえぐい、もう人間じゃなかった。
(...あいつも。俺と同じか。)
彩花の家での様子を見ると、自分と同じ力を使って居るように見えた。
「だとしたら....」
すこしまずい。蓮はゼルラの力を受け継いだだけだし、どんな力ががあるのかをまだあまり知らない。一言で言うと、経験不足なのだ。
彩花はきっとたくさんのことを知っている。熟練というのだろうか...
蓮は少し人より頭の良い自信はあるが、彩花はまえの高校時代でも相当頭が良かったと聞く。
「ちょっとだけ、本気を出すしかないな...」
---
『蓮は頑張っているようじゃな〜』
『彩花は熟練の神、笑わせる』
腹を抱えて大声で笑っているゼルラに、美青年が話しかけてきた。
『声を慎め、ゼルラ。』
『...シュテルネンリヒトか。お前も笑えるだろう。彩花が熟練の神だと言っておる。』
『それは笑えるが...声量には気をつけたほうが良い。彩花は容姿が極めていい。そのせいで味方もたくさんおるのだ。』
ヒソヒソと話し声が聞こえてくる。
『そのようなことは関係ない。妾の力を受け継いだのだ、彩花程度などゴミクズ同然じゃ。』
『................それもそうか。』
フッとわらったシュテルネンリヒトは、膝を地面につけ、少し声のトーンを下げて声を発した。
『序列一位女神兼序列一位堕天使ゼルラ様。』
『よすのだ、序列一位天使兼序列一位悪魔シュテルネンリヒト様。』
神々の世界で最も強いとされる称号は3つ。
序列一位女神、序列一位堕天使、序列一位悪魔。
その3つを所持するのは二人。ゼルラとシュテルネンリヒト。神々の世界で最も強く、最も権力を持っている。同時に最も恐れられている神である_______。
そして、もう一つ強さとは関係のない称号...というよりこれはこの二人が勝手に考え、勝手につけて遊ぶ称号。『八方美人狼の皮を被った羊。』ただの暴力である。だがこの称号をつけられた神は、その称号にふさわしいといわれていた。
『最弱女神、彩花日和。』
この称号をつけられたそのひとである。
蓮の一人称がコロコロ変わるのはひみつ