編集者:神無月
クトゥルフ神話TRPGで使用したキャラクターを深堀りするSS。
続きを読む
閲覧設定
名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
1 /
目次
朧の夢
朧が真名
異端の影法師は夢を視るか?
この小説はパスワードがかかっているため表示できません。通常の閲覧ページから閲覧してください。
運命の歯車は狂い始めた。
籠の中のカナリアは何を見る
僕は忘れない。あの日までの空白を。
勉強は普通。
運動はそこそこ。
コミュニケーションも苦手ではない。
家族仲は悪くない。
家計が苦しい訳でもない。
友達が居る、家族が居る。
皆はいつも、僕は「恵まれている」と言う。
何故?
僕の心はぽっかり穴が空いたようで、満たされないのに
本当に僕は恵まれている?
僕の代わりは、いくらでも居るのに?
ヒーローが嫌いだった。
なりたかった。憧れた。焦がれた。
でもそんな結末、僕には用意されていない。
何でも持っている。故に満たされない僕の欲。
いつだって、僕の世界は色褪せている。
こんな世界、僕は…
「嗚呼、丁度いい。」
「恨んでくれるなよ、少年。」
ヒーローに憧れ、慈善活動を初めて5年。
中学から始めたこの活動も、大分慣れてきた。
オレ1人では、まだ全員を助けることはできない。…けれど
いつか、なってみせる。
世界一のヒーローに!
__『からっぽのくせに。』__
---
高校を卒業して、本格的に事務所を立ち上げようとしていたある日。
いつもの公園、いつもの風景。
その中に、1人。ベンチにぐったりと座っている人が目に入る。
「どーしたの、大丈夫?」
顔を上げた彼女と、目が合う。
新緑か、それともエメラルドか。
言葉では表現し難い程、美しい瞳が椎名を射抜く。
「…えっと、私…」
彼女が言葉を紡ぐと同時に、きゅう、と腹の虫が鳴く。
「お腹減ったの?」
「…はい、1週間なにも食べてなくて…」
「えっ1週間!?死んじゃうよ!あ、オレ菓子パン持ってるからこれ食べなよ!」
彼女は初めは申し訳なさそうにしていたが、椎名の圧に負け、パンを頬張る。
「……おいしい」
一言、そう呟いた彼女は、ふっと笑みを浮かべる。
それに釣られてか、椎名も自然と笑みを浮かべる。
「…そうだ、もし行く宛てがないならさ!」
「オレと一緒に、ヒーローになろうよ!」
そこから、彼女と共にヒーロー活動をすることになった。
彼女は面倒見も良く、何より賢い。
今まで以上に助けられる人が増え、次第に町内では有名になっていった。
からっぽだった心が、満たされる。
世界が彼女を中心に色付いていく。
嗚呼、自分に足りなかったのは彼女だったんだ。
自分を覆っていた鳥籠は、彼女にいとも簡単に壊されてしまった。
…けれど、飛び方を知らない鳥は大空に焦がれても、それに届くことは無い。
彼女はそんな鳥に飛び方を教える。
籠のない空を、自由に、優雅に飛んでゆく。
「小鳥ちゃん」
「なぁに、しーちゃん」
鳥は、自由に飛んでいる時が1番美しい。
…だから。
君が、鳥籠に閉じ込められることがないように。
僕は君を護るから。
……だって、
1度でも閉じ込められてしまえば。
その鳥は、もう羽ばたくことは無いのだから。
『仮初の正義だとしても、この出会いだけは。嘘じゃない。』
オレは忘れない。あの日生きる意味をくれた君を。
四葉の誓い
この世界で僕だけ、俺だけが覚えてる。
今日もまた夢を見る。
赤髪の子が2人、黒髪の子が2人。
いつも同じ場面を俯瞰して見せられる。
「桜真、蓮華!あんまりはしゃぐなよ、怪我するぞ!」
「まぁまぁ、いいじゃないか四葉。ほら、俺たちも行こう。」
「ちょ、緋彩!ひっぱんな!」
四葉と呼ばれた黒髪の少年が、赤髪の少年、緋彩と共に少女たちの元へ向かう。
「ちょっと!お兄ちゃん遅い!」
「あっ3人とも!見て!」
そう言った赤髪の少女、桜真の目線の先には、花畑が広がっていた。
それを見た黒髪の少女、蓮華は目を輝かせる。
「お兄ちゃん!お花!いっぱいあるよ!」
「……綺麗だな。」
「そうだね……孤児院だと、あまり外に出て遊ぶことは無かったから。」
「お父さんのおかげだね。」
4人は花畑へ向かう。
そこからはダイジェストのように映像が流れる。
花冠を作ったり、鬼ごっこをしたり。
蓮華を抜いた3人は、見た目に反して大人びているようだった。
その映像は、ある場所で止まる。
「いいか?俺たちは孤児院のころから、4人で1つだ。みんなで幸せに。」
「今更だね、四葉。私たちはもう苦楽を共にしてきた仲でしょ?」
「今までも、これからも。みんなで支え合って生きていこう。」
「お兄ちゃんも、緋彩にぃも、桜真ねぇも!みーんな家族だもんね!」
大きな花畑の真ん中で、それぞれが作った花冠を交換した。
幼い少年少女の、誓い。
破ることのないよう、破られることのないよう。
花に誓い合った約束。
暫くして、それは破られた。
睡蓮は散った。
英雄は殺された。
……桜は消えた。
残されたクローバーは枯れることを望んだ。
後悔、憤怒、悲壮、自責。
ありとあらゆる負の感情が、四葉を包んだ。
暗闇の中に飲み込まれそうになる。
そのとき
どこからか、桜の花びらが舞い落ちてくる。
人の暖かさと、少しの虚無感を持って。
目を覚ます。
いつもと同じ夢、いつもと同じ結末。
いつもと同じ感覚。
「……最悪の気分だ。」
「四葉…?大丈夫ですか?顔色が悪いですが…」
「…桜真、敬語。」
「あっ…ごめん、まだ慣れなくって…。」
「いや、すまん。俺も強制する気は無かった。少し気が立ってるみたいだ、気にしないでくれ。」
「う、うん…わかった。」
その後四葉は、記憶をなくした桜真を敵組織から取り戻した。
……しかし、彼女は何も覚えていなかった。
戸籍の情報から自身の名前は分かったが、それ以前のことは、何も……。
四葉は日々考える。
『こいつは本当に桜真なのか』、と。
そしてそれに伴って、嫌な結論にたどり着く。
『あの日々は本当に存在していたのだろうか』
今となっては、あの日々を証明出来るのは四葉の記憶だけ。
そう、記憶だけなのだ。
写真も何も残っていない。本当にあったのかも分からない。
あの日々は、本当は妄想だったのではないか?
本当に自分たちのしていることは正しいのか?
「……本当に最悪の気分だ。嫌になる。」
《理想には程遠い》
それは真か幻か。