この世界には魔法少女がいる。なぜならこの世界は魔法少女アニメの世界だから。 ただ、この世界の魔法少女は少し変わっていて、魔法少女の状態でついた傷は変身解除時にも反映されたり、魔法少女が途中で死亡することも珍しくない。でも、魔法少女は政府公認で妖精から魔法少女に選ばれると高い地位につくことができる。まぁ僕はそこまで関係はない話だが。だって僕はただのモブだから。 この世界では役職が最初から決められている。その中で最も現世の人間に近いのがモブだ。 僕の名前は前田はるき。私立静藍学園(しりつせいらんがくえん)という中高一貫の学園の中等部に通っている13歳だ。黒髪のクセのない長い前髪のザ・陰キャみたいな容姿をしている。完全に帰宅部(不正)の自分はいつもの大通りを通って家に帰ろうとしていた。 　しばらく歩いて大通りに着くと、人々は大騒ぎになっていた。.....まさか。 「え....なにこれ....?」そう呟くと近くの人が教えてくれた。「ま..魔法少女が！魔法少女がやられたんだ！」 またか。今回の魔法少女は2年半で全滅した。俺は前にもこういった現場を見たことがあった。 .....と、いうことは。新しい魔法少女が選ばれるってことだ。魔法少女が変わることは人々にとって悲しくも楽しみなことである。でも妖精が見当たらない。辺りを見回そうと思って振り向くとそこには探していた妖精がいた。邪魔なのかと思って避けてみると思わぬ言葉が飛んできた。 「なんで避けんのさーw君に用があるんだよ？」「...........は？」 思わず問い返してしまった。え？俺が魔法少女？嫌なわけないなわけない。 「次の魔法少女君に決定ーw」「え？いや俺男っすよ？いやいやいやもっと適正な人いるでしょ？」 「だーかーら！君が魔法少女なの！はいはい変身して！」 いやそんなこと言われても、と思っている間に変身道具を渡されてしまった。 ...いやこのままグダグダしてたら国滅ぶな。一回だけ。一回だけならまぁ.....ね？ 「そのステッキを持って、マジカルチェンジって叫んで！！」 「.....っマジカルチェンジ！」 ｼｭﾙﾙﾙﾙ....ﾎﾞﾝｯ! 煙が晴れると自分は、普通の魔法少女が着るような可愛らしいリボン付きの衣装を着ていた。 「.........⁈」 「あはは〜w似合ってる似合ってる〜w」「ちょ...もっとマシなのないの...?」 「これでもいい方じゃーん文句言わなーいww」 なんだかものすごくスピーディーに物事が進んでいてついていけている気がしない。渋々前の魔法少女を負かした怪人に向かって飛び立つ。これでも魔法少女のファンだったから戦い方はわかるのだ。前の魔法少女を全員倒したんだから一人じゃ無理じゃないかと思うかもしれないが、魔法少女の法則として、一人の時の方が強い傾向がある。どうやら俺の能力はなにをしても切れないリボンを作り出すことらしい。....弱そうだな⁈おい⁈もう少しマシな能力なかったのかよ⁉と思いつつ怪人に一蹴り入れる。怪人が低い声で少しうめき声を上げる。あ、この怪人意外と弱い。もう必殺技出すか。必殺技を出して倒さないと物語として成り立たないというか面白みがなくなってしまう。よし。 「おりゃぁ！リボンクラッシュ！！」 ﾍﾞｼﾍﾞｼﾍﾞｼﾍﾞｼｯ ｸﾞｵｫｫｫｫｫｫ....ｼｭﾜｧｧｧｧｧｧ..... 「ふぅぅ...とんだ災難だ....」 「結構強かったじゃーんw結構ガチなファンだった感じー？w」 「え..あぁ....まぁ......」 「へーwんじゃぁ今日からよろしくねー♪魔法少女くん♪」 この日から、俺は魔法少女アニメのモブだったはずなのに、魔法少女になってしまった。

　今日も学校が終わる時刻のチャイムが鳴り響く。僕はぼっち陰キャなので一人で教室を抜けて玄関から外へ出る。 はるき「はぁ.....今日も魔法少女ならなきゃいけないんだろうか...」 そう。僕は昨日、魔法少女になってしまったのである。せめてもう一人くらいは欲しい。一人は精神的にもかなり辛い。そんなことを考えながらとぼとぼ歩いていると、後ろから ？「あ！いた！はるきー！！」 はるき「出たチャラ男....間違えたナンパ男....間違えた陽壱先輩。」 陽壱「いや間違えすぎだろ俺への印象が全部丸分かりなんよひでーなお前」 そんなに遠くから叫ばれるとこっちが恥ずかしくなってくるからやめてほしい。 園田陽壱はいかにも陽キャオーラが溢れ出ているが、実は俺と同じモブだ。 だが、金髪にオレンジメッシュ、オレンジカラコンで少しくせっ毛で とてもモブには見えない容姿をしている。 陽壱「はるき今度さぁー一緒に花見いこーぜ〜」 はるき「え、めっちゃピークズレてるじゃないっすか今四月後半っすよ？」 陽壱「いやいやいやいやそーれーは！関東とか本州の話っしょ？俺は北海道で花見しようぜってことを言いたいの！」 え？あれ？北海道？俺ら学生だけど？県外旅行...? ......忘れてた。この人超金持ちなんだった。 そう。園田は園田財閥の本家の一人息子なのである。 一度だけ写真で見せてもらったが実家も、一人暮らしの今の家もすごい豪邸だった。この学園自体結構お金持ちもかなり通っている気がする。毎日車で登下校送迎してもらうことも可能だが、園田は両親が納得できるような理由を作り、一人暮らしして自分だけで帰っているそうだ。 はるき「あー先輩お金持ちっすからねー…ていうか一人で行けばいいじゃないすか！なんで俺まで？」ﾄﾞｼﾝｯ… 陽壱「いやだってさ、一人だとやっぱおもんないじゃん？ね？みんなで行きたいわけなんですよ？」ﾄﾞｼﾝｯ… はるき「いやでもなんか連れてってもらうのなんか申し訳ない…」ﾄﾞｼﾝｯ… 陽壱「俺が一緒に行きたいっていってるだけだから遠慮なんて要らんよ？まぁまだ時間あるしさ！それまでに考えといて！」ﾄﾞｼﾝｯ… はるき「えぇ…」 やはり俺はこういう陽キャ系の人との会話ではついていけない。......さっきから変な音が聞こえているのは気のせいだろうか。 はるき「…先輩。俺の後ろになんかいます？」 陽壱「んー？ずっと前からいるよー？なんかだんだん近づいてきてるけどさー怪人ー」 はるき「いや早く言ってくださいよそういうことはぁ！」 陽壱「いやぁねぇ？その方がアニメ的にはね？いいじゃん？」 はるき「メタ発言厳禁！！！」 園田の声を聞き流し急いで変身する。二人目が登場する前に二体目か。なんというか、ちょっと悲しい。 ちなみに変身時間はアニメでは30秒くらい尺を使うが現実では0.5秒くらいしか経っていない。 また昨日とは違い、何をしても切れないリボンで叩いていく。予想はついていたが効いている気配はない。結局また蹴りを入れる。すると蹴った瞬間ｶﾞｧｰﾝと鈍い音がした。 はるき「足痛ったぁぁ⁈」 今回の怪人の体はとても硬い。音からして中は空洞みたいだ。爆音を鳴らして中で反響させられれば倒せるかもしれないが俺の能力じゃできっこない。今だって避けてばっかりいるのにこれじゃ勝ち目がない…！どうすれば…⁈ --- 陽壱side --- 陽壱「は⁈はるきって新生魔法少女だったん⁈」 はるきは鉄の様な怪人と戦っている。…可愛いリボン付きのスカート姿で。 それよりなんだかはるきがさっきから苦戦している様にも見える。確かにこの怪人の倒し方は難しそうだ。やられてばっかりじゃいつか体力の限界が来る…！何か俺にできることは…⁈ ？「…いや..も…いおと…ろ⁈…な..じゃ…」 ？ 「大丈夫だってーw」 ？「それでもやっぱりダメだろ…」 遠くから誰か寄ってきた。 陽壱「えっと…誰？なんか用？」 ？「あー…えーっと…俺らは妖精だ。それでお前を魔法少女に任命しにきたんだが…嫌だよn「嫌じゃないよね？(圧)」 陽壱「は？え、は？」 ？「まぁ普通はそうなるよなぁー…」 陽壱「…あ！あんたらメローとロンロンだろ！ずっと前からいる妖精！イケメン無理！」 メロー(人)「あ、当たりーwよく分かったねー」 ロンロン(人)「今は人状態なのにな。ってそれより魔法少女にはなってくれるのか⁈」 陽壱「え…どうしよ…はるき助けたいけどあぁいう衣装になるのは嫌だ…」 ロンロン(人)「衣装はあぁいう衣装を思い浮かべなければ大丈夫だから！早く！」 陽壱「え、じゃぁなろ！おっしゃあ俺結構なオタクだったから変身方法知ってる！よぉーっし！」 かっこいい衣装思い浮かべて……待てよ一人だけかっこよかったらなんか浮くくね？どうしよ…とりま変身する！ 陽壱「マジカルチェンジ！」 ﾎﾞﾝｯ… 陽壱「あっ失敗したわ。終わったわこの衣装は。」 スカートではないだけいいがショートパンツがショートすぎる！ほぼ生足全見え！ショタコンの餌食になる…男子高校生がショタの内に入るのかは微妙そうなところだが。 ...とりあえず加勢しに行く！ 陽壱「はーるーきー!!」 はるき「陽壱先ぱ…先輩⁈」 陽壱「俺まで魔法少女になっちまったけどまぁいいっしょ！」 ﾌﾞｫｫﾝ 陽壱「きいゃぁぁぁぁぁぁぁぁ⁈(発狂)」 突然近くに攻撃が来たので思わず叫んでしまった。そうするとマイク型のステッキが音を拾ったのか、さらに爆音になった。 はるき「うるっさ…でも効いてる！先輩！このまま叫び続けて！」 陽壱「え？あ、おっけ！いっちょ叫びまくるか！」 陽壱「ｳﾜｧｧｯｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｫｫｫｯｫｫｫｫｫｫｩｩｩｩｩｩｩｩﾝ(発狂)」 ｸﾞｵｫｫｫｫｫ… 陽壱「ｳｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｷｨｨｨｨｨｨｨｱｧ(発狂)」 ｸﾞｧｧｧｧｧｧｫｫｫｫｫ… なんか…なんか効いてる！このまま必殺出すかぁ！ 陽壱「おっしゃ！イヤーブレイクボイス!!」 ｷｨｨｨｨｨｨｨｨｨｳｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｳﾜｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｫｫｫｫｫｫｩｩｩﾝ(爆音) ｸﾞｫｫｫｫｫｫｫｫｫｫｩｫｨｫ… ｼｭﾜｧ… 陽壱「ふぅ…なんか…倒せたわ！」 はるき「すっごいうるさかったっすけどね。とりあえず一人じゃ無くなって一安心。」 ロンロン(妖精)「すごいロン！あっという間に倒せちゃったロン！」 陽壱「あれ？メローどこ行った？」 はるき「どっか行っちゃったっぽいっすね…」 ロンロン(妖精)「ずっと同じところにいる方が珍しいロンね…とりあえず陽壱！次からもよろしくロン！」 陽壱「可愛い顔して呼び捨てか…っつかマジで魔法少女やだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 園田陽壱、魔法少女生活が開始したのであった…