登場人物は全然違います。春、夏、秋、冬で4つの話を書く予定です。順番は適当ですが前述の通り登場人物が違う短編なのでどこから読んでも大丈夫です。
続きを読む
閲覧設定
名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
1 /
目次
夏のひまわり
今回は登場人物の名前で遊んでみました。楽しんで読んでください。
小学6年生のケントは学校からの帰り道をトボトボと歩いていた。ランドセルの中には夏休みの宿題と通知表、筆箱が入っていた。6年生になって一気に勉強が難しくなった気がするのは自分だけだろうか?周りのみんなはすらすらと問題を解いていた。でも、自分だけ一気に成績が落ちてしまった。
――家に帰りたくないな。
数日前から少しずつ荷物を持ち帰っていたから荷物は軽い。でも、気持ちは重い。ひまわり畑を横切ればすぐ家につく。遠回りしたいけれど、ここを通らないと母さんに怒られる。仕方なくひまわり畑に入る。ひまわり畑の途中、同い年くらいの女の子が倒れていた。ケントは駆け寄り、その子を起こした。
「大丈夫?」
すると女の子は目を開け、
「あ、ありが、と。大、丈夫。」
といった。ケントはそれでも心配で、「家まで来て。」といった。
「分かった。私、ひゅうが あおい。」
ひゅうが?どんな字だろう?そんなことをケントが考えているとあおいは「あなたの名前は?」と聞いてきた。
「俺、ケント。なあ、お前、ランドセルは?学校の帰りじゃねえの?」
「・・・」
「?」
教えてくれない。
「何年生?」
「・・・」
これも教えてくれない。この小さな田舎の小さな小学校で見たことがない人はほぼいないはずだ。しかし、その女の子のことは同年代のはずなのに見たことがない。
――夏休み前だし旅行とか?でもこんな街に大したものなんてないぞ?
「あれがケントの家?」
「そうだよ。」
鍵を開けてあおいを中に入れる。
「おかえり。その子は?」
「ひまわり畑に倒れてた。」
すると、母さんは手を当てて「あら、そうなの?」といってあおいの熱をはかったり色々質問し始めた。母さんは看護師だ。こういうことには慣れている。ケントは自分の部屋へ行き、ランドセルを置いて戻った。
「あおいは?」
「あぁ、ひまわりちゃんね。熱中症だったから寝室で寝かしてるわ。」
――ひまわりちゃん?
---
あの時、そう思った。今、ケントは26歳。上京してサラリーマンとして働いている。ひゅうが あおいというのは、日向 葵 と書くのだろう。ひまわりは漢字で向日葵と書く。あの日以来彼女を見かけることはなくなったが、ひまわり畑に倒れているように見えるぐらい萎れていた向日葵は元気になった。毎日通る道だから分かる。今日は里帰りで帰ってきた。毎年のことだ。ひまわり畑で初めてあおいと出会った場所。リボンを結んだひまわりがあの頃とは違ってまっすぐに伸びている。元気になったひまわりに気づいたときに結んだのだ。あおいかもしれないからなにか目印を、と。風が吹いてひまわりが揺れる。「今年も帰ってきたんだね。」と聞こえた気がした。
いかがでしたか?私は「春、秋、冬の分も書かなくちゃ」と張り切っています。ぜひ楽しみにしてください。前回書いた作品「良薬は口に苦し」をまだ読んでない人はぜひ読んでください。では、また次回の作品でお会いしましょう。さようなら!
春のさくら
今回は明るめの話です!一応シリーズで題名は統一感のあるものにしたいと考えていたため、「夏のひまわり」に合わせて花の名前は平仮名なのですが、主人公の年齢的にぴったりだなと思います。
最初暗めなのでご注意を。
私は、白血病です。
あと3ヶ月後には小学1年生です。
でも、白血病のおくすりのせいで髪がないので、学校にちゃんといけるか不安です。
「ふとーこー」っていう人に私もなるかもしれません。
ある日、病院の外のお庭に遊びに行きました。雪が降っていたからです。
でも、ママは私が体調を崩すのがこわくてあまり遊んじゃだめと言っていたので、歩くだけで我慢します。
きれいな長い黒髪の「こーこーせー」っぽいお姉さんとすれ違いました。私は、お医者さんがお母さんに話していたことを思い出してお姉さんの着ている上着のそでをつかんで話しかけました。
「あのね、、、」
「?」
お姉さんは優しそうな顔でした。
「お姉さんの髪、とってもきれい。だから、ちょっと分けてほしいの」
「??」
「私もよくわからないけど、お医者さんとママが話してたの。へあど、、、?みたいな」
そう言うとお姉さんはにっこり笑ってうなずきました。
--- 2ヶ月後 ---
ママが手を後ろに隠してにこにこしながらびょーしつに入ってきました。そして、手を出して「ウィッグ」という物を頭につけてくれました。
「ねえ、ヘアドネーションって知ってる?」
『へあどねーしょん』それは、私が2ヶ月にお姉さんに言いたかった言葉です。
「このお姉さんが、あなたのために髪をくれたのよ」
お姉さんが入ってきました。お姉さんは確かに髪がとても短くなっていました。
ママが渡してくれた鏡を見ると、「せみろんぐ」という長さのきれいな黒髪の女の子が写っていました。
窓から桜がびょーしつに入ってきます。
それがまるで、私のことをお祝いしているかのように思えました。
これからが楽しみです。
最後の「これからが楽しみです。」に見覚えはありませんか?
私が一番最初に投稿した短編「良薬は口に苦し」
https://tanpen.net/novel/395893cb-00ce-485e-9965-4fd05aaa1160/
の終わりと酷似しています。話によって言葉の持つ意味がどれだけかわるかがよく分かりますね〜
それだけです。((絶対宣伝だ!!みんな、作者を倒すぞ〜!
ボコッ バキッ ドカーン
そうです宣伝ですごめんなさい〜 ボゴッ バキッ ドッカーン
(作者血まみれ)
こ、、、これからも、、、よろしく、、、 バタッ
冬のばら
「好きです!」
突如伝えられた幼馴染の思い。僕は「へ?」と驚くことしかできなかった。僕の顔を見て由希が泣き出す。
――そりゃ驚くでしょ。いきなり自習時間に大声で告白されたら。しかも、泣き出した由希を見てみんな僕の方を見てきた。みんな僕のことを『女子を泣かせたクズ』と思ってるよね?僕の立場になってみて欲しいよ。ていうか、こんなとき、なんて言えばいいの?誰か助けてー!
由希の泣き声しか聞こえない教室に凛とした声が響いた。
「みんな、そんな顔で優希くんを見てる暇があったら由紀さんに声掛けるぐらいしたらどう?」
その一言でみんな由希のもとに駆け寄り、「どうしたの?」と口々に言う。
そして、ゆっくり歩いてきた彼女に僕は小声で言う。
「涼風さん、ありがとう。どうしたらいいかわからなかったから助かったよ。」
涼風海子。美人で勉強できて、スポーツ、ピアノ、歌、裁縫や料理まで得意なモテる彼女が僕を助けてくれるのは死ぬほど嬉しいことだった。
しばらくして、また教室が静まり返った。が、今度はすぐに静寂が破られた。
担任の道野先生が帰ってきた。
「帰ってきたよ〜って、え!?なになにどうしたの?」
みんな、無言。
「えと、とりあえずこの件に深く関わった人集合〜」
僕が前に出ると、由希もついてきた。先生が口を開く前に由希が言う。
「今ここでは言いたくありません」
困惑した顔の先生を見て由希が話を変える。
「それより先生、あの絵はどうなりましたか?」
「え?絵ってなに?」
困り顔で僕の方を見る先生に僕は言った。
「由希は多分、誰もいないところで話したいんだと思います。」
僕がそう言うと由希がこくんと頷いた。
---
『また自習だ、やったー』と感じる人は多いと思うけど、相変わらず僕には冷たい目を向けている。しばらくすると教室の扉が開き、先生と目を赤くした由希が戻ってきた。そして自分の席、言い換えれば僕の目の前の席に座り、笑顔で振り向き、
「今日、電話するからねっ」
「うん、いいけど?そういえば、『絵』ってなんのこと?」
「あれか。『推理小説表紙コンクール』っていうのに絵を出したんだけど、ペラペラの紙に描かなきゃいけない決まりだったのにキャンバスに描いちゃったから落選したの。」
「キャンバスでも良くない?」
「そう思うんだけど、プリントするときの都合とかが理由らしいから、仕方ないよ。」
「そうなんだ。」
---
下校中、僕は『疲れた』しか頭になかった。
一人の帰り道。慣れすぎてなんとも思わないし、家の近くの公園から由希と合流して帰るのも普通だった。でも、今日はいつも公園で合流する由希がいない。由希はいつも、公園を通り抜ければすぐの家へ、わざわざ公園を通り抜けず、僕の家への道に合わせて遠回りをしてくれる。改めてありがたく思っているとズボンのポケットが震えた。電話だ。しかも、由希からの。
「もしもし?」
「あ、優希!おいてっちゃってごめんね」
「大丈夫。」
「あの、今日の告白の返事、聞きたくて」
「ああ、そのことか。えっと、ごめん。由希とは付き合えない。でも、ずっと友達でいたいとは思うよ」
「そっか。ありがとう。今ね、私、ベランダにいるの。」
「?」
「私、死ぬの。優希と最後に会いたいけど、会ったら泣いちゃうから会えないの。最後に顔を見たいんだけど、ビデオ通話にできる?」
僕の足は勝手に動いて公園を突っ切った。そして由希の家のインターホンを鳴らした。電話の中と現実で死ぬほど遅く感じる音が重なる。
「あれ?お客さん?ごめん、ちょっと待ってて。」
扉が空いた途端僕は由希を抱きしめ、言った。
「死ぬな、馬鹿!」
泣き笑いの表情で由希は僕の頭をぽんぽんと撫でた。
「ごめんね。それはできない。優希は私のことが嫌いになっただろうし。」
「全然だけど、なんで?」
「だって、我儘言っちゃったし、心配させちゃったし。それに、優希は海子さんが好きでしょう?」
「そんなことないよ!むしろ昔からずっと、僕は由希一筋だった!」
「え?でもさっき電話では…」
「……恥ずかしかったんだよ」
「そう。じゃあ、改めて言うね。好きです。付き合ってください。」
「は、はい。」
「じゃあ、もう死なない。止めてくれてありがとう。それじゃ、また明日!」
「また明日」
---
次の日、僕は教室で涼風さんと二人で話していた。
「昨日、由希が死のうとしてたから告白OKしたけど、大丈夫?」
「いいわよ。由紀さんはもちろん、他のみんなにも私達のこと、バレないようにね」
そう、僕は涼風さん、いや、海子と付き合っている。このことは誰も知らない。
みんなが狙っている海子が僕の彼女という事実は僕に自信を持たせるのに十分なものだった。
そう思っていると、ロッカーから音が聞こえた。
---
優希と両思いだったなんて!明日はロッカーに隠れて優希を驚かせようかな〜
……なんて、調子に乗った私が馬鹿だった。朝早く教室に来て自分のロッカーに隠れたら、何も知らない優希と海子さんが手を繋いで仲良く入ってきた。
――え?二人、付き合ってんの?『告白OKしたけど大丈夫?』とか言ってるじゃん。へー。私が死んだら困るから仕方なくOKしたんだ。まあ、NOだったら死ぬつもりだったのは事実だけど。
ロッカーの隙間から二人を見ていたけど距離が物理的にも論理的にも近すぎる。見ていられなくなって顔を背けたら、手があの絵に当たって音を立ててしまった。その時、私の中で何かがぷつりと切れた。
違和感を持った優希がこちらに近づいてきた。私は迷わずロッカーの扉を開けて、血の滴る色とりどりのバラの絵をまっすぐ優希の頭に振り下ろした。優希は当然、気絶した。困惑顔の海子さんにも一撃。そして私は、自分のペンケースの中のカッターナイフで自分の手首を迷うことなく切った。
---
事件の後、警察や救急車が来て大騒ぎになり数日の休校の後日、静まり返った音楽室で先生が話す。
「西川由希さんは亡くなられました。皆さんが知ってのとおり、自殺です。自殺する前日の西川さんの日記には、『昨日、涼風さんに優希に告白するように言われた。自習の時間に告白したけどだめそうだから、死のうと思う。でもきっと、優希は助けてくれると信じてる。』そして、この次の日に西川さんは亡くなられました。警察の見解や入院中の喜多優希さん、涼風海子さんの意見を合わせると、教室で揉め事が起こり、由希さんが二人を殴打した後に自殺をした可能性が高いようです。」
「せんせー、しつもん。涼風さんは日記のことに関してなんて言っているの?なんでゆっきーは自殺したの?なんでゆっきーは幼馴染のゆーきくんを殴ったの?」
「涼風さんは日記のことを認めているわ。喜多さんと付き合う一方で別の人に恋をした涼風さんは喜多さんと別れるためにそう言ったそうよ。西川さんの自殺の原因ははっきりしていないわ。多分、涼風さんと喜多さんが付き合っているのを何らかの形で目撃したから…などではないかと警察も言っていました。教室が使えるようになったら西川さんに花を捧げ、入院中の二人のお見舞いにも行きましょう。それまでは学級閉鎖です。今から、課題のプリントを配ります。」
学級閉鎖になっても、誰も喜ばなかった。むしろ、重い空気がさらに重くなるだけだった。
--- 数年後 ---
こんにちは!あたし、坂井ユリです!今日、先生が授業中急に『今日は、君たちの先輩が亡くなった日です』とか言い出したの!普段嘘とかつかない真面目な先生だし本当なんだろうけど、嘘みたいな話。女の子がこの学校のあたし達の教室で手首を切って自殺しちゃったらしいの。先生はその子の自殺に自分も関係してるって。先生にその話を放課後詳しく話してもらおうと思ってる。
「喜多せんせー。寝てるの?喜多優希せんせー?さっきの話を詳しく聞かせてよー。起きないなー。また後で来るね!」
「起きてるよ。」
「わ!?うつ伏せになってたから寝てると思った」
「悪いけど、今は話しかけないでくれる?」
先生はだいぶそのことを引きずっているみたい。私は素直に「じゃあね」と言って先生から離れた。
――先輩って、どんな人なんだろ?先生の初恋相手とか?
外に出ると、やっぱり寒い。冬だもんね。ふと、肩を見ると花びらがついていた。バラ?冬なのに?しかも青いじゃん。不思議に思って花壇を見ると、そこには赤、黄色、青、白など、色とりどりのバラが確かに咲いていた。近づいてよく見ると、赤い筋のような模様がついていて美しかった。