登場人物は全然違います。春、夏、秋、冬で4つの話を書く予定です。順番は適当ですが前述の通り登場人物が違う短編なのでどこから読んでも大丈夫です。
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夏のひまわり
今回は登場人物の名前で遊んでみました。楽しんで読んでください。
小学6年生のケントは学校からの帰り道をトボトボと歩いていた。ランドセルの中には夏休みの宿題と通知表、筆箱が入っていた。6年生になって一気に勉強が難しくなった気がするのは自分だけだろうか?周りのみんなはすらすらと問題を解いていた。でも、自分だけ一気に成績が落ちてしまった。
――家に帰りたくないな。
数日前から少しずつ荷物を持ち帰っていたから荷物は軽い。でも、気持ちは重い。ひまわり畑を横切ればすぐ家につく。遠回りしたいけれど、ここを通らないと母さんに怒られる。仕方なくひまわり畑に入る。ひまわり畑の途中、同い年くらいの女の子が倒れていた。ケントは駆け寄り、その子を起こした。
「大丈夫?」
すると女の子は目を開け、
「あ、ありが、と。大、丈夫。」
といった。ケントはそれでも心配で、「家まで来て。」といった。
「分かった。私、ひゅうが あおい。」
ひゅうが?どんな字だろう?そんなことをケントが考えているとあおいは「あなたの名前は?」と聞いてきた。
「俺、ケント。なあ、お前、ランドセルは?学校の帰りじゃねえの?」
「・・・」
「?」
教えてくれない。
「何年生?」
「・・・」
これも教えてくれない。この小さな田舎の小さな小学校で見たことがない人はほぼいないはずだ。しかし、その女の子のことは同年代のはずなのに見たことがない。
――夏休み前だし旅行とか?でもこんな街に大したものなんてないぞ?
「あれがケントの家?」
「そうだよ。」
鍵を開けてあおいを中に入れる。
「おかえり。その子は?」
「ひまわり畑に倒れてた。」
すると、母さんは手を当てて「あら、そうなの?」といってあおいの熱をはかったり色々質問し始めた。母さんは看護師だ。こういうことには慣れている。ケントは自分の部屋へ行き、ランドセルを置いて戻った。
「あおいは?」
「あぁ、ひまわりちゃんね。熱中症だったから寝室で寝かしてるわ。」
――ひまわりちゃん?
---
あの時、そう思った。今、ケントは26歳。上京してサラリーマンとして働いている。ひゅうが あおいというのは、日向 葵 と書くのだろう。ひまわりは漢字で向日葵と書く。あの日以来彼女を見かけることはなくなったが、ひまわり畑に倒れているように見えるぐらい萎れていた向日葵は元気になった。毎日通る道だから分かる。今日は里帰りで帰ってきた。毎年のことだ。ひまわり畑で初めてあおいと出会った場所。リボンを結んだひまわりがあの頃とは違ってまっすぐに伸びている。元気になったひまわりに気づいたときに結んだのだ。あおいかもしれないからなにか目印を、と。風が吹いてひまわりが揺れる。「今年も帰ってきたんだね。」と聞こえた気がした。
いかがでしたか?私は「春、秋、冬の分も書かなくちゃ」と張り切っています。ぜひ楽しみにしてください。前回書いた作品「良薬は口に苦し」をまだ読んでない人はぜひ読んでください。では、また次回の作品でお会いしましょう。さようなら!