_黒い憎しみと甘い菓子、混ざり合うとき破滅の力生まれる_
主人公のリフがその祖母ネイタスを救うためにお菓子で得た能力で戦う物語。
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目次
第1話 憎しみと甘い菓子
新シリーズです!
主人公(私服)のイメージイラスト↓
https://firealpaca.com/get/LbjWwbZq
--- 黒い憎しみと甘い菓子、混ざり合うとき破滅の力生まれる ---
---
ピピピピピ…
朝がきた。リフはまだ寝ていたい気持ちを押しつぶし、布団から体を起こした。
窓から見た空には目が眩むほどの眩しい青空が広がっている。
リフ:「おはよ…ばあちゃん…」
リフは大あくびをしながら隣の台所へ行き、祖母に挨拶をした。
リフの両親は存命しておらず、今は祖母のネイタスがリフの親代わりなのだ。
ネイタス:「おはよう。」
ネイタスがサニーサイドアップ(目玉焼き)を焼きながら振り向くと、
ガァン!
リフは寝ぼけて膝を机に思い切りぶつけていた。
リフ:「イッッテェ!」
リフはあまりの痛さにその場にうずくまる。
ネイタス:「まーたぶつけたのかい?全くドジだねぇ…大丈夫かい?」
ネイタスは呆れた表情をしながらも心配そうに聞く。
リフ:「まぁ…だ、大ジョーブ…いつものことだし…」
リフは痩せ我慢をして洗面所に向かう。
ネイタス:「無理はしないでよ。」
リフ:「はーい…」
---
洗面所で座り込み、リフは膝の状態を確認する。
リフ:「あちゃ〜…こりゃしばらくは走れないわ…」
赤くなった膝を優しくさすりつつ用を済ませる。
台所に戻ると朝食が出来上がったところだった。
ネイタス:「さっさと食べてスクール行っちゃいなさい。」
リフ:「はいはい…」
テーブルに着き、リフは大好きな祖母の手料理を口へ運ぶ。
リフ:「…!」
あまりのおいしさに一気に目が覚め、とんでもない勢いで食べ始める。
その様子を嬉しそうに眺めるネイタスであった。
---
朝食を食べ終え、家を出た頃には余裕を持ってスクールに着ける時間帯だった。
リフ:「今日も俺は優等生だなぁ」
上機嫌で一人呟きながら、制服のポケットから丸いフーセンガムを取り出して口の中に放り込む。
大好きなアニメのオープニングテーマをハミングしながら軽やかに歩いていると、
空に何か雲とは違った白っぽい透明なもやが見えた気がした。
リフ:(ん?…気のせいか?)
そんなことはすぐに忘れて、通っているスクールの門の前に立つ。
リフが通っているスクールは武術に特化したスクールで、
ここを卒業していずれはリフもこの国、アドバンポリスの兵士になるのだ。
リフは校内に足を踏み入れ、教室へと向かう。
---
昼休み。リフは待ちに待ったお弁当タイムを一人で満喫しようと、
人のあまりいない裏庭にやってきた。
リフ:「今日の弁当は…おぉ!オムライスだ!いただきます!…うま!」
無我夢中でオムライスを頬張っていると、誰かの話し声が聞こえてきた。
生徒1:「だからぁ、出たんだって!幽霊!これほんとのマジだから!」
生徒2:「何だよ、ほんとのマジって…んじゃ、証拠は?」
生徒1:「いやぁ…ないけどさぁ…マジなんだって。」
生徒2:「ふーん、ま『ドルチェネーロ』が退治してくれるだろ。」
生徒1:「は?お前、そんな都市伝説信じてんのかよ!幽霊信じないくせに…」
生徒2:「だって俺見たことあるし?」
生徒1:「証拠は?」
生徒2:「…ないけど…」
リフは何食わぬ顔で盗み聞きしていた。
リフ:(『ドルチェネーロ』?最近アドバンポリスに現れたっていう異能集団のことか…まぁ、ただの噂でしょ。)
会話の内容はあまり気にせずに弁当に意識を戻した。
---
午後の授業も終えて、帰り道。
リフ:「今日も疲れた〜…膝痛えし、こんな時こそガムだよな〜」
丸いガムを口の中に放り込む。
甘いコーティングが溶けていく。家が見えてきた。
リフが今日の夕飯は何か考えていると、
バリン!
リフの暮らしている家の窓が突然割れて、ガラスの破片がキラキラと飛び散った。
それと同時にネイタスが白い透明な何かに連れ去られていく。
リフ:「…は?」
リフは一瞬思考が止まったが、ネイタスの姿を認識して思い切り叫んだ。
リフ:「ばあちゃんっ!?」
ネイタスは気絶しているようだった。
透明な何かは瞬く間に遠いところに行っていた。
リフ:「…っ待て!!」
必死で追いかけたが、今朝膝を痛めたせいで思うように走れない。
リフ:「待て…待って、待ってよ…!」
リフは|躓《つまず》き転んでしまった。
リフ:「なんで、だよ…返せよ…」
憎悪が心のうちを満たしていく。
すると、喉の奥に重いものがのしかかるような威圧感のある低い声が響いてきた。
『黒い憎しみと甘い菓子、混ざり合うとき破滅の力生まれる』
リフ:(な…なんだ…これ…?)
その声を聞いた途端、突然心臓が苦しくなり歯を食いしばる。
その時、透明な何かが町中に何体か現れた。
さっきのネイタスを連れさったやつとは違い四足歩行である。
その透明な化け物を見たとき、ある言葉が咄嗟に口をついて出た。
リフ:「バルーンボム」
その瞬間、目の前にいた透明な何かが膨らんで破裂した。
キラキラとした粒が散乱してリフの顔にも降りかかる。
リフ:「…え。」
何が起きたのか、これからどうすればいいのか、さまざまなことが頭を駆け巡った。
そしてネイタスの顔がリフの脳裏に蘇る。
リフ:「ばあちゃん…どうして…だよ…」
リフはなすすべもなくその場で気を失った。
始めっから文章がド下手ですが、どうか温かい目で見守っていただけると嬉しいです!
次回から募集したキャラクターもバンバン出てくるのでお楽しみに!
〜主人公と基本説明〜
<主人公について>
名前:リフ
性別:男
年齢:15歳
身長:165cm
職業:学生
容姿:https://firealpaca.com/get/srzkyA5m
マゼンタの真ん中分けショート、目は茶、ダウンジャケットにニット帽
イメージカラー:マゼンタ
性格:お人好し、ちょいオタク、素直、図々しい、時に残酷、ドジ
好きな〇〇:お菓子全般(特にガム)、ゲーム、ばあちゃんの料理
嫌いな〇〇:持久走、辛いもの、歯磨き
能力発動菓子:フーセンガム
能力名:バルーンボム
能力説明:ターゲットをフーセンガムのように破裂させられる。
ガムの味が残っている間だけ能力を使える。
一人称:俺
二人称:君
三人称:あの人
口癖:「ガムないと困るんだけど!?」
サンプルボイス:
「俺はリフ。ガムが大好き!持ってたらくれると嬉しいな。」
「君はどんな能力なの?…すご。俺より強いじゃん…」
「俺はばあちゃんを助けに行かなくちゃならないんだ。だからさ、そこ、どいてよ。」
「ごめん。でもこうしないと前に進めないから…」
「えぇ!このゲーム知らないの?この作品はね、ペラペラペラペラなとこらがペラペラペラ…」
家族構成:祖母
`基本情報`
**⚫︎アドバンポリス**
主人公リフの暮らす国。昨今幽霊が出没する国として巷で噂になっている。
(イメージとしてはイタリア)
**⚫︎スクール**
主人公リフが通っている3年制の学校。「兵士訓練施設」とも言われる。
規律はそこまで厳しくなく、お菓子持ち込み可でほぼ高校みたいなもの。
(あまり物語には関係しないかも?)
**⚫︎能力の発現について**
能力発現の条件はお菓子を食べている状態で、黒い感情に心が支配されること。
黒い感情とは例えば「憎悪」「嫉妬」「罪悪感」など人を苦しめる感情のこと。
**⚫︎透明な謎の生物**
正体不明の生き物。人を襲って誘拐したり、時には食らったりする危険な存在。
**⚫︎ネイタス**
主人公リフの祖母。料理がとてもうまい。
少し負けん気が強いが優しい人で面倒見がいい。
物語の進み具合によって随時更新していくので、用語などわからないものがあった場合これをお読みください!
第2話 理解者
気を失ったリフは気がつくと知らない家のソファの上で横たわっていた。
リフ:「どこだ…ここ…?」
身体を起こして周りを見渡すと、
???:「あぁ!よかった…大丈夫?怪我はない?」
声の聞こえた方に目を向けるとふわふわとした雰囲気の女性が
心配そうな顔をして立っていた。
リフ:「…カシミアさん?」
カシミア:「そうそう!隣人のカシミアよ。帰っている途中でリフ君が倒れてたからびっくりしちゃって…もし何か怪我とかしていたら病院へ連れて行くけど大丈夫?」
カシミアは心配そうな表情をしながらも、リフのためにお茶を入れながら優しく聞く。
リフ:「あぁ…だい、じょうぶです…そんなことよりもばぁちゃんが!」
リフは取り乱しながらカシミアの家を飛び出す。
カシミア:「リフ君!?」
カシミアがリフを追いかけて玄関から外に出るとリフは呆然と立ち尽くしていた。
リフ:「ばぁちゃん…一体どこに…」
リフのただ事ではない様子に、事情を知らないカシミアは問いかける。
カシミア:「どうしたの?私でよかったら、話してくれない?」
---
全てを話すとカシミアはショックを受けた表情で|狼狽《うろた》えた。
カシミア:「え…ネイタスさんが…!?」
そして考え込む。
カシミア:「透明な謎の生き物が…どうしてネイタスさんを…」
リフは声を荒げて
リフ:「絶対許さねぇ…!絶対ばぁちゃんを見つけ出して、攫ったやつを…」
そう言って憎しみのこもった拳を握りしめる。
今にもどこかへ走り出してしまいそうな形相だ。
カシミア:「リフ君…__だめだ、私がしっかりしなきゃ!__」
カシミアは覚悟を決めた表情でリフにこう伝える。
カシミア:「リフ君。感情的になる気持ちは私にもわかる。だけど、まずは情報を集めることから始めないと。謎の生物の情報、ネイタスさんがどこへ連れて行かれたのかとか…じゃないと助けに行けない。私も協力するから…」
リフは冷静にそう言うカシミアを見て少し落ち着きを取り戻して言った。
リフ:「そうですね…ありがとうございます…」
---
身寄りのないリフは一時的にカシミアの家で過ごすこととなった。
そして翌日の朝がきた。
リフは昨日家から持ってきた制服を着て、その他諸々必要なものをカバンに詰め込み
カシミアの家の玄関でスニーカーを履く。
カシミア:「今日から私が親代わり…なんて、ネイタスさんの代わりにはなれないけど。プリントとか貰ったらちゃんと私に渡してね。」
カシミアはコンビニで買った弁当をリフに手渡しながら穏やかな笑顔で言った。
リフ:「ありがとうございます。行ってきます。」
リフはいまだ冴えない表情をしながらも弁当を受け取り家を出る。
カシミア:「いってらっしゃい。」
カシミアは心配そうな表情でリフの後ろ姿を見送った。
---
教室にて。
リフは廊下側、一番後ろの席からまるで魂が抜けたかのように窓の外を見つめていた。
???:「おい。テメェ、大丈夫か?」
後ろから呼びかけられる声に振り向くとベリーショートモヒカンの
目つきの悪い不良みたいな生徒がリフを見下ろしていた。
リフ:「あ…はい!な、なんですか…?」
リフは驚いて怯えながら聞き返す。
???:「何って、テメェのこと心配してんだろうがぁ“。」
リフ:「ひぃっ!」
リフはあまりの怖さに本当に魂が抜けそうになった。
???:「ファイくん、何をしているんですか?」
不良?の後ろから別の生徒が現れた。
その生徒は不良とは対照的に落ち着いた雰囲気で
水色のサラサラヘアーを後ろで一つ結びにしている。
ファイ:「あぁ…なんか、こいつが一人で死人みてぇな顔してたからさ。」
???:「そんな人のことなんてどうでも良いではないですか。さぁ、行きますよ。」
ファイと呼ばれた生徒ともう一人の生徒は教室の窓際の席へと行ってしまった。
リフ:「…何だったんだ?」
リフは困惑しながらもチャイムの音に気がつき、慌てて一限目の準備を始めた。
---
放課後になり、リフは昨日の謎の透明な生き物について調べることにした。
インターネットでも調べたのだが、ヒットしたのは全然関係のないものばかりで
大した情報は得られなかったため、スクールの図書館にやってきた。
リフ:「どうやって調べればいいんだ?」
リフが広めの図書室内をうろうろとしていると
ファイ:「おい。さっきの奴じゃねぇか。」
そう言って図書館の奥から近づいてきたのは今朝話しかけてきた不良?だった。
???:「またあなたですか。…もしかしてファイをつけまわしているのでは?」
さっきの失礼な生徒があらぬ疑いをかけてくる。
リフ:「つけ回す訳ないだろ。」
リフがそう否定すると、
???:「まぁ、それならいいのです。」
そう言ってファイにまとわりついた。
リフ:「(君のほうが付き纏ってるんじゃ…)」
そんなことを考えていると
ファイ:「そういえば名乗ってなかったな。俺はファイ、正式にはファイ・フォレスター・レリーバルだが。ヨロシクな。」
シェフリ:「シェフリ・ロイドです。ファイくんとはお付き合いをしているので邪魔し…何故です?僕は貴方のものですよ♡」
ファイが微妙に嫌そうな顔をしながらシェフリを押し返す。
シェフリのことは無視してリフも自己紹介する。
リフ:「俺はリフ。あのさ、知ってたら教えてほしいんだけど、最近アドバンポリスに現れたあの『透明な生き物』について書かれた本知らない?…俺、それを探してるんだけど…」
ファイとシェフリが顔を見合わせる。
ファイ:「透明な生き物ってあいつらのことか。それならここで調べるよりも俺たちと来た方が早いぜ。」
リフ:「え?」
ファイはリフと纏わりつくシェフリを連れてとある場所へと向かっていった。
カシミアの設定(キャラ原案:あまへびさん)
https://tanpen.net/novel/b53cdb48-a8f3-453a-9878-60c2387b0202/
ファイの設定(キャラ原案:ミルクティさん)
https://tanpen.net/novel/9270daef-693b-422f-b13a-75f070223463/
シェフリの設定(キャラ原案:ミルクティさん)
https://tanpen.net/novel/d20e099c-56c9-4632-9d1f-514dca329bf8/
ありがとうございました!
第3話 ドルチェネーロ
ファイに連れられてリフがやってきたのは、
アドバンポリスのはずれにあるコンクリートの廃墟だった。
ファイ:「ここだ。」
リフ:「え?ここ?」
周りには雑草と野生の花があるだけだ。
リフ:「ここに何があるって言うんだ…?」
不信感が募るリフだったが、ここはひとまず二人について行くことにした。
建物の中に入るとリフたちの他にも何人か人がいた。
全員が学生のようだ。
???:「ん?誰その人?もしかして新入り?鉄分足りてる?チョコあげる!」
???:「新入り?…あ、じゃあこれあげる。さっき作ったサンドイッチ。余ったから。」
???:「私もクッキー作ったよ!どうぞ!」
リフ:「うわぁぁ!」
リフは次々に食べ物を渡され思わず慌てふためいた。
シェフリ:「相変わらずここは食べ物が飽和していますね…」
シェフリもファイも呆れている。
ナオ:「私はナオ。チョコが大好きな中学生だよ!」
黒髪ロングのおとなしそうな少女が名乗る。
レイ:「…僕はレイ。和菓子かチョコくれると嬉しい。…あったらでいいけど。」
オリーブ色の髪をしたパーカーの少年が笑顔で名乗る。
ナナ:「私はナナ!!よろしくね!あ、身長のことに関しては厳禁!」
ミルクティ色の猫耳パーカーを着た小学生くらいの少女が元気に名乗る。
リフ:「俺はリフ。ガムが大好き。持ってたらくれると嬉しいな!…って、俺は新入りじゃ…」
ついこの場に流されていらないことまで言ってしまったリフの目の前に、
ガムを持つ手が伸びてきた。
???:「はい、ガムだよ!」
その方向から男の声が聞こえたので振り返ると、そこには少女がいるだけだった。
リフ:「…あれ?さっき男の声が聞こえたような?」
少女は口を開く。
セイム:「それは俺だね。」
リフ:「え。」
リフの頭は真っ白になった。この状況がうまく飲み込めない。
セイム:「俺はセイム。...男の声してるのになんで見た目女かって?元が女顔だったから有効活用してるだけ。」
セイムは固まるリフの手にガムを無理やり握らせて
セイム:「リフ。お前は紛れもない新入りだよ。…『能力』持ち、みたいだしな。」
セイムはそう言ってそこら辺のソファにどかっと座った。その拍子に埃が舞う。
近くにいたナオ、レイ、ナナはセイムと共に巻き込まれて咳き込む。
「ゴホゴホゴホ…!」
ファイ:「ところで、本題に入るが。」
ファイが何食わぬ顔で話し始める。
ファイ:「コイツ、『奴ら』について詳しい情報が欲しいんだってよ。」
急に建物内が緊張感のある空気に包まれる。
レイ:「『奴ら』って、僕らが追っている奴らのことだよね。」
レイが先ほどまでの穏やかな表情とは打って変わって真面目な顔をして聞く。
ファイは頷いてリフの方を向く。
ファイ:「こっからは自分で話せ。」
リフ:「うん。」
リフはこれまでのことを大まかに説明した。
ナオ:「そんな…おばあさんが…」
ナオは憐れむような目でリフを見る。
ナナ:「そうなんだね…でも、大丈夫!」
ナナは元気づけるようにリフに向かって拳を突きつける。
ナナ:「私たち、一応『奴ら』についての情報を多少は持ってるよ!まだ完全に解明はしてないけれどね!」
その言葉でリフの顔は明るくなった。
リフ:「…早く!早く教えてくれ!今すぐに!」
リフは身を乗り出して懇願した。
ナオ:「まず『奴ら』がなぜ人を攫っているのかについてだけど…」
リフは息を呑む。
ナオ:「それが、全然わからないの。」
リフ:「は?」
リフは拍子抜けして間抜けな声を出した。
ナオ:「今現在わかっていることは、『奴ら』が何者かの命令によって動いているということ。そして、『奴ら』が人を連れ去る日にはいつも空に大きな雲の橋がかかっていること。」
リフ:「…雲の橋?それとこれとに何の関係があるんだ?っていうか、情報を持ってるって言った割には内容薄すぎじゃない!?」
リフががっかりしてうな垂れる。
セイム:「まぁ、俺らが持っている情報はこのくらいだな。…それと、」
セイムはソファから立ち上がり、少し嫌そうな顔をして服についた埃を払う。
セイム:「俺たちが何者か知っているか?」
セイムの問いにリフはきょとんとする。
ナナ:「その様子じゃ知らないみたいですね。」
ナナが意味ありげにふふんと笑う。
セイム:「俺たちは『ドルチェネーロ』。『奴ら』を退治する異能集団の NPO(非営利組織)だ。」
リフ:「え、えぇ!?」
ナオの設定(キャラ原案:夜珊瑚さん)
https://tanpen.net/novel/b6a071e1-cc25-4f60-b262-40872dbb96f9/
レイの設定(キャラ原案:くおるさん)
https://tanpen.net/novel/19b615bf-0f1d-4cad-9bb5-28bb8d005aa3/
ナナの設定(キャラ原案:和音さん)
https://tanpen.net/novel/69e96e1f-3aa2-42d5-a42f-cdc98db47b5a/
セイムの設定(キャラ原案:星守伊織さん)
https://tanpen.net/novel/6047c9fc-eded-4eef-8b53-74d6dbe50e9b/
ありがとうございました!
第4話 発動
目の前にいる人たちが巷で噂の都市伝説『ドルチェネーロ』だということを知り、
驚いて言葉が出なくなるリフ。
リフ:「ぇぁ…『ドルチェネーロ』って、都市伝説…じゃないの!?」
シェフリ:「都市伝説?そんなわけないじゃないですか。今この国の平和を守っているのは政府でも国家の犬でもなく、僕らですよ。」
シェフリが相変わらずファイにまとわりつき、そして押し戻されながら言った。
ナナ:「ちょうどいいや!今さっき『奴ら』が現れたっていう情報が入ったから、私たちの活動を見せてあげようよ!」
ナナは元気に飛び跳ねて扉のところに向かう。
レイ:「そうだね。リフはもう『ドルチェネーロ』の一員なんだし。」
ナオ:「安心して!あなたには危険が及ばないようにするから。」
そうして7人は透明な謎の生物が現れたという場所へと向かった。
---
現場に着くと、半透明な奴らがウジャウジャとしていた。幸い人は誰もいないようだ。
セイム:「みんな充填の準備は完了した?」
ファイ:「あぁ…だから、テメェ、離れろつってんだろうが!」
シェイム:「きゅん♡」
レイ:「準備は万端だよ!」
ナオ:「オッケー!大丈夫!」
ナナ:「バッチコーイ!」
リフはその様子を後ろから眺めていた。
リフ:「一体何が始まるというんだ?」
戦いの火蓋が切られる。…と思った瞬間。
『ドルチェネーロ』の面々は突然お菓子を食べ始めた。
リフ:「え?揃いも揃っておやつタイム!?」
皆美味しそうな表情でお菓子を頬張っている。
何をやっているんだこの人たちは…とリフが呆れていると、
板チョコを食べていたナオが
ナオ:「マッドチョコレート!」
そう唱えた瞬間、ナオの足元にドロドロとした茶色の液体が広がり始め、|蠢《うごめ》き出した。
リフは驚嘆して後退りする。
リフ:「何…これ…?」
他のメンバーも
ナナ:「ダークチェンジャー」
レイ:「スワンプチョコ」
セイム:「インフェルノクリーム」
ファイ:「|𝕯𝕺𝕽𝕺𝕽𝕴《ドロリ》」
そう唱えた瞬間、周りにいた『奴ら』はクッキーになったり、
チョコの沼に飲み込まれたり、シュークリームの中に閉じ込められたりした。
リフ:「…すごい!これが、噂の『ドルチェネーロ』…」
リフが感心していると、『奴ら』の残党がリフに向かって襲いかかってきた。
リフ:「!!」
リフが身構えると、
ファイが熱気を放ちながら鋭く変形した両腕で『奴ら』を薙ぎ倒していった。
シェフリがその様子をうっとりとした目で見つめている。
リフ:「あの…君はやらないの?」
リフがシェフリにそう聞くと
シェフリ:「貴方こそ戦ったらどうですか?僕は殺傷性のある能力ではありませんので。」
シェフリがリフの方を見向きもせずに、ぶっきらぼうに言い放った。
リフ:「はは…(なんか嫌われてる!?)」
そんなことをしているうちに『奴ら』はほとんど片付いていた。
最後の一体をレイが倒したところで、
???:「なーんだ、急いで来たのにもう終わってんじゃん。」
声の持ち主の方を振り向くと高校生ぐらいの歳の少年が少し残念そうな顔で歩いてきた。
よく見るとその後ろに同じく高校生ぐらいの少女がいる。
???:「…ん?そこにいるのは新入りか?」
黒髪ショートで赤色ぱっちり吊り目の少年がリフの顔を覗き込む。
リフ:「俺はリフ。新入りっていうか…何ていうか。」
リフがゴニョゴニョと言っている間に少年が名乗る。
シェイ:「そうか!俺の名前はシェイ!こっちはリオル、男だからな!よろしく!‥ちなみにコイツのネガティブ思考は昔からだから気にすんなよ!!」
リオル:「ひぃ!…ど…どうも…」
リオルと呼ばれた少女…いや少年が仰々しく頭を下げる。
リフ:「え!?男!?『ドルチェネーロ』性別不詳多すぎぃ!?」
そんなこんなでなぜか巷で噂の組織の新入りとなったリフ。
無事にネイタスを救うことはできるのだろうか。
シェイの設定(キャラ原案:鈴蘭.さん)
https://tanpen.net/novel/b9c76f8d-ed72-4e3e-b0a3-b4d81faa8526/
リオルの設定(キャラ原案:鈴蘭.さん)
https://tanpen.net/novel/b2461dcf-0282-411f-93be-ef117acfc89f/
ありがとうございました!
第5話 閃光
ところで、とアジトに戻り話を切り出すリフ。
リフ:「…俺、勝手にメンバーにされてるけど、能力もないし…そんなに人手が足りないの?」
リフが不安そうな表情で問いかけると
セイム:「え?お前、気が付いてなかったのか?自分が能力者だってこと。」
セイムが驚いたような顔で聞き返す。
リフ:「えぇ!?マジで!?」
リフも驚いたあとに疑問に思ってセイムに問いかける。
リフ:「…てか、なんで逆に君にはわかるんだよ!?」
セイム:「そりゃ……勘?俺、勘がいいんだ。」
勘かい!とのけぞるリフ。
ファイ:「とりあえず、テメェ今日からここの一員だから、『奴ら』の情報なら活動の中で勝手に調査しろ。」
ファイが相変わらず気味の悪いつまらなそうな真顔で言い放ちドアから出ていった。
シェフリ:「ファイくん!待ってくださーい!」
シェフリも後をついていく。
ナナ:「ねぇ!さっき渡したクッキー、もう食べた?感想を聞かせて欲しいの!」
ナナが机に置かれたクッキーを無邪気にリフに渡してくる。
リフ:「いいの?ありがとう!」
他のメンバーは止めようとしたがリフは知らなかった。
これが彼の身にとんだ悲劇をもたらすということを…
---
次に目が覚めたのは、アジトではなかった。
リフ:「…!?なんで、カシミアさんの家にいるんだ?」
そこにはまだ見慣れていないが、安心感のある景色が広がっていた。
下にはふかふかの布団が敷かれており、暖かい掛け布団が体の上にかけられている。
リフは混乱しながらも起きあがろうとするが、気持ちが悪くてお腹に力が入らない。
すると聞き覚えのある声が聞こえた。
ナナ:「あ!起きた!ごめんなさい…私のせいで…」
レイ:「僕にも監督責任はあるよ。ごめんね、リフ。」
???:「とりあえず、今のところ大事には至ってなさそう…だよね?」
ナナとレイ、そして謎の飴色の髪のタートルネックの青年は
心配そうにリフの顔を覗き込んだ。
リフ:「だ、だれ…うぷ…」
まだ口内にあの味が残っているため、リフは気分が悪くなる。
ナナ:「わわ私、バケツ持ってくる!…えと、どこ!?」
ナナが慌ただしくウロウロとしていると、
カシミア:「バケツならこっちよ!…はい。」
そう言ってカシミアはナナに空っぽのバケツを手渡した。
ナナ:「ありがとう!」
ナナは急いで戻ってくる。
バケツを受け取り、少し安心したリフは途切れ途切れ質問をする。
リフ:「あの、君…誰…」
タートルネックの青年はハッとして自己紹介を始める。
ミディアメスト:「…あ!ボクはミディアメストっていいます。名前が長いので覚えにくいかもしれませんね~…お好きに呼んでくださいっ」
少し天然そうなミディアメストは申し訳なさそうに笑ってそう言った。
リフ:「じゃ…ミディ、で…」
少し間を置いてもうひとつ質問する。
リフ:「なんで…俺の、家…知ってるの…」
あぁ、それはね、とレイが答える。
レイ:「セイムの勘だよ。」
リフ:「『セイムの勘』…便利すぎじゃない…?」
するとミディアメストのスマホの着信がなり出した。
ミディアメスト:「…ピ(機械音)は〜い。…承知しました〜……また、『奴ら』が出たそうです〜。」
ナナ:「えぇ!また?」
レイ:「今日は『奴ら』の出没が多いね…」
ミディアメスト:「サクッと終わらせましょうか。それではリフくんまた明日っ。」
3人は素早く別れの挨拶をして、暮れかかる街を駆け抜けていった。
リフ:「…酷い目に、あった…」
リフはキリキリと痛む腹をさすりながら、眠りに落ちた。
---
翌日。
昨日のことがまるでなかったかのように腹の調子は元通りになっていた。
リフ:「おはようございます。」
リフはカシミアに朝の挨拶をする。
カシミア:「あら、おはよう。調子は大丈夫?休んでもいいのよ?」
カシミアが優しく問いかける。
リフ:「う〜ん…いえ、大丈夫です。早く風呂入って学校行きます。俺、優等生なんで!」
リフが胸を張ってそう言い、風呂場へと向かう。
カシミアはふふっと笑い、朝食用のパンを机に並べ始めた。
---
一限目のチャイムがなる。
窓際の席を見ると、ファイはいなかった。同じくシェフリもいないようだ。
リフ:(今日は休みか。)
空っぽな頭でおじちゃん教師の話を耳から耳へと聞き流しながらノートをとる。
リフ:(ばぁちゃん…生きてるよな…)
その時だった。突然、窓の外が閃光弾でも撃たれたかのような眩しい光に包まれた。
教室中、いや国中がこの異常事態にパニックに陥った。
やがて、その光は消えたが混乱は未だ消えない。
リフ:「なんだよ…今の…」
ざわめく教室内から廊下に教師たちが召集されているのが見える。
先程まで授業をしていたおじちゃん教師も廊下へと出ていった。
しばらく席についたまま待っていると、
担任のローザが落ち着いた様子でやってきて教室内に呼びかけた。
ローザ:「みなさん、先ほどの光についてですが、正体は未だ不明です。状況が分かり次第お伝えしますので、しばらく教室内で静かに待っていてください。」
そう言って足早に教室から出て行った。
リフ:「…一体何が起きてる?」
そんなアドバンポリスの上空には、雲の橋がかかっていた。
ミディアメストの設定(キャラ原案:♱𝖑𝖎𝖊𝖓𝖆♱さん)
https://tanpen.net/novel/e8231932-9037-4b3b-987a-a8668bcbf964/
ありがとうございました!
第7話 日常
人数が多くなってきたのでキャラ設定集乗せておきます!
https://tanpen.net/novel/series/71e01e24-d6a8-43aa-a364-8348f3326862/
ちなみにまだ登場していないキャラも入ってます…
日曜日の朝。
『ドルチェネーロ』のアジトの扉の前で、リフは悶々としていた。
リフ:「…入るか。」
躊躇しながらもリフはゆっくりと扉を開けた。
扉の向こうでは『ドルチェネーロ』の面々が揃いも揃ってテレビ画面に釘付けになっている。
リフ:「何してんだろ?」
テレビ画面には分割された4つの映像が流れている。
???:「キサマも飴細工にしてやる!いけぇ!」
シェイ:「おい!何すんだ!やめろっ!」
???:「貴方たち泥試合はやめたら?」
レイ:「そっちこそ余裕ぶっこいてると追い抜かれるよ?」
リオル:「みみみなさん…ここここわいぃ…」
やんややんやの大騒ぎである。
リフはワナワナと震え出し、手こずっている様子のシェイの肩を掴み早口で捲し立てた。
リフ:「ここはカートが密集してるからスリップストリームして。あと後ろから青リンゴに追尾されてるからきのみで加速して。そしたら回避できるから。そんでここはペラペラペラペラペラペラペラペラ…」
シェイ:「え?なに?何言ってるかわかんねぇ!」
そんなこんなで結局勝ったのは謎の白髪のロングの人物だった。
???:「まぁ、当然の結果だよね。」
レイ:「悔しい…」
???:「負けちったかァ〜」
シェイ:「はは…無理ゲー…」
するとシェイは赤い瞳でリフを見る。
シェイ:「にしても、アンタ…いやリフ、だっけ?すんげ〜早口だったな!わっけわかんなかったわ!」
シェイが八重歯をきらつかせながら笑う。
リフ:「あぁ…ごめん。ちょっと熱くなりすぎた。」
リフは頭をかきながら反省する。
シェイ:「いや、全然いいけどな!」
するとその様子を眺めていた白髪の人物が
レン:「もしかして君が噂の新入りのリフ?僕はレンって言うんだ。よろしく。」
レンは落ち着いた様子でそういうと
レン:「いや、それにしてもさっきの早口はすごかった。今度君とゲームで勝負してみたいよ。」
そう言って笑った。
リフ:(あれ?この人どこかで見たような…?)
リフは引っかかることがあったが、深くは考えなかった。
イオ:「あぁ、キサマがリフかァ。ボクはイオだ、話は聞いてる。確かばァちゃんを助けたいんだってェ?」
眼帯をつけた軍服姿の青年が明るい調子で話しかけてくる。
リフ:「あ、うん。あの透明なやつの正体を調べたくてここにいるんだけど…まだまだ情報がないんだよね。」
リフはため息をつく。
イオ:「ん〜…前から思ってたんだが、『透明なやつ』だとかァ『奴ら』じゃなくてさァ、まどろっこしいから『クリアモンスター』で統一しねェ?」
一同:「クリアモンスター?」
イオ:「あぁ、ボクさぁ、それのコト"クリアモンスター"って呼んでんの。そのまんまだけどそっちの方がいいだろ?」
レイ:「確かに。その方がいいな。」
レン:「てか、なんで今まで決めてなかったんだろ。」
シェイ:「マジでそれ。」
リオル:「ととととても、よ、呼びやすい…です…」
レイ:「そういえばリフ。君、僕らのグループに入ってないよね。ほら、スマホ出して。」
レイはリフがスマホを出すと、リフをグループメンバーに入れた。
イオ:「これでいつでも戦いに呼び出せるなァ。」
イオはにひひと笑う。
リフ:「あっははは…」
リフの顔は少し引きつった。
レンの設定(キャラ原案:𝑟𝑎𝑢 _ 羅羽さん)
https://tanpen.net/novel/b51bfe26-759a-49da-8c0b-ad165591bdb0/
イオの設定(キャラ原案:奏者ボカロファンさん)
https://tanpen.net/novel/444b61f8-e498-4ad0-87d5-fab5ad25ff6f/
ありがとうございました!
第6話 恩人
アドバンポリス全土が目の焼けそうなほどの眩しい光に包まれ、
混沌としている最中、学校中に放送が入った。
放送:「先ほど謎の閃光がありましたが、特に異常はありませんでしたので授業を再開します。生徒の皆さんは速やかに席につき授業に戻ってください。」
えぇ〜と抗議の声が教室中から聞こえてくる。
リフ:(本当に異常はなかったのか?)
リフは疑問に思いながらも言われるがまま授業を受ける態勢になった。
---
帰路にて。
リフはガムを噛みながらダラダラと歩いて帰っていた。
リフ:「どうしよっかな〜また、あそこに行ってみるかな〜?」
リフが『ドルチェネーロ』のアジトに行こうかどうか迷っていると、
突然後ろから女性の叫び声が聞こえた。
リフ:「なんだ!?」
リフが振り返ると、女性が一人透明な生き物に連れ去られる一部始終が見えた。
リフ:「なっ…!」
リフは後先考えずに走り出す。
そして脳内でネイタスのことが思い出される。
リフ:(ばぁちゃん…!!)
黒い感情がリフの心を埋め尽くしかけると言葉が口をついて出た。
リフ:「バルーンボム」
すると、屋根の上を飛び移っていた透明な生き物は急に膨らみ、やがて弾けて割れた。
リフ:「あっ!?」
透明な生き物に担がれていた女性は、屋根の上から地面へと向かって落ちてくる。
リフは必死で手を伸ばしたが、
リフ:「まに、あわねぇっ!」
その時だった。
???:「よっと。」
何者かの腕が、見事に落下する女性をキャッチした。
???:「貴方、能力を使う時はちゃんと考えなきゃダメでしょう。…ドジなのね。」
ダークブラウンの長髪の高校生くらいの少女は軽々と気絶している女性を持ち上げる。
リフ:「あ、ありがとうございます…」
危うく人殺しになるところだったリフは、安堵してその場にへたり込んだ。
すると少女の後ろから二人走って来た。
???:「ショコラルテさん…足、早すぎ…」
ナオ:「本当、すごい…って、そこにいるのはリー君?」
見知らぬ顔と知っている顔はゼエゼエと肩を上下させながら、少女、ショコラルテに追いつく。
リフ:「リー君って…あ、俺のことか!」
リフは立ち上がって制服のズボンについた砂埃を払う。
ショコラルテ:「あら、ナオ知り合いなの?」
ショコラルテが女性を抱えたままナオの方を振り返る。
ナオは走って崩れた前髪と呼吸を整えながら頷く。
ナオ:「うん。昨日入ったばかりの新入りのリフ君。リー君、こちらショコラルテちゃん。そして、こちらがミリィちゃん。」
ショコラルテ:「はじめまして。私はショコラルテ。…変な名前でしょ?うちの親がね、「チョコレート」を名前に入れようとした結果のこれよ。」
ミリィ:「えっと、リフ...さん?ですか、あ、よろしくお願いします...ミリィです…」
二人は軽く会釈する。
リフ:「どうも。俺はリフ。よろしく。」
挨拶が済むとショコラルテは女性を優しくコンクリートの地面におろし、軽く肩を揺する。
少しすると女性は目を覚ました。
女性:「…ここは?…さっきのは!?」
ショコラルテ:「安心してください。もう大丈夫です。」
ショコラルテがそういうと女性は少し安心したような表情になって、
女性:「あ…ありがとう…」
そう言って立ち上がって帰っていった。
周りを見るといつの間にかナオとミリィがいなくなっている。
リフ:「あれ?」
リフがキョロキョロとしていると
ナオ:「ふぅ。残党は一匹残らず始末しておいたよ。疲れた〜…チョコ…鉄分…」
ミリィ:「ガリガリ…なかなか飴がなくなりません…」
二人が疲弊しながら歩いてきた。
ショコラルテ:「二人ともお疲れ様。…そろそろ日も暮れてきたし、帰りましょうか。リフも気をつけて帰りなさい。」
リフ:「うん。さよーなら。」
それぞれはそれぞれの帰る場所に向かって歩き出した。
ショコラルテの設定(キャラ原案:二ルートの雑談さん)
https://tanpen.net/novel/f204eb52-1628-4119-b383-cca6de05d66b/
ミリイの設定(キャラ原案:Ririnaさん)
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ありがとうございました!
第8話 情報採取
キャラ設定集です!
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学校にて。
リフは真面目に授業を受けるフリをしながら、とあるものを書いていた。
ノートの見開き1ページに、書き連ねていく。
「クリアモンスターは人をどこへ連れ去っている」
「なぜ人が連れ去られる前に空に雲の橋がかかる」
「クリアモンスターを操っているのは何者」
「どうしてばぁちゃんが連れ去られた」
今考えても仕方がないことを、次々にノートに並べていく。
リフ:(俺、何やってんだろ。)
そんなことをふと思ったその時だった。
「ブー」
周りに聞こえないくらいの小さな音で、スマホのバイブレーションがなった。
着信が来たようだ。内容を見てみると、
ファイ:(ヤツが現れた。早く来い。)
という文面だった。
リフ:(はぁ?俺だって今行ける状態じゃ…)
すると再び着信が来た。
ファイ:(奴らの情報が掴めるかもしれない。)
その文章を見た途端、リフの中で優等生の肩書きはないものとなった。
リフ:「すみません。トイレに行ってきます。」
そうかこつけて教室を飛び出した。
---
リフ:「ファイ!」
リフが呼ばれた場所は、広い公園だった。
ブランコや滑り台など懐かしの遊具がそこかしこにある。
リフ:「シェフリはいないのか?」
リフがそう聞くとファイは黙れというふうに制止する。
ファイの目線の先に目を向けると、
見たことのない巨大なクリアモンスターが公園内を這いずり回っていた。
あまりの気持ち悪さにリフの顔はサァ…と青ざめる。
ファイ:「組織の結成からしばらく経つが、あんな気持ち悪りぃもんは見たことがねぇ。」
ファイは真顔で呟く。
そのクリアモンスターは背中の部分に数えきれないほどの突起があり、
全体的にみると気持ちの悪い巨大なウーパールーパーという感じだった。
ファイ:「まぁ、俺なら一瞬で殺れるだろうが…」
ファイはキャラメルを頬張りながら、リフの方を振り向く。
ファイ:「…情報が欲しいだろ。ならついてこい。」
そう言ってクリアモンスターに向かって駆け出した。
リフ:「あ、待ってよ!」
リフも後から急いでついていく。
ウーパールーパーのようなクリアモンスターは、近くで見るとさらに気持ちが悪かった。
奴が歩いた後の砂には粘り気のある粘液のようなものがこびりついている。
リフ:「絶対触りたくないっ!」
リフは身の毛がよだつ思いをしながらも、ガムを口に放り込んだ。
甘いコーティングが溶けていく。
ファイ:「…いいか。コイツから直接粘液を採取するんだ。」
リフ:「え。地面にこびりついているやつじゃダメなの?」
ファイ:「あぁ。」
結局触らなきゃいけないのか!とショックを受けながらもリフは戦闘体制に入った。
---
なんとか採取した後、リフが疑問に思って問いかけた。
リフ:「でも、この粘液って何に使うんだよ。」
ファイ:「ヤツはどこから来るのかすらも明らかになってねぇ。だから、この成分を調べたら何かわかるかもしんねぇだろ?普段はカス一つ残さねぇで消えちまうからな。」
リフ:「なるほど…(てかめっちゃ手ベトベトなんだけど。…もしかして俺、採取のために利用された?)」
リフがなんとも言えない表情でいると
シェフリ:「僕のファイくんと馴れ馴れしくするな!!|𝓖𝓤𝓐𝓡𝓓𝓘𝓐𝓝《守護者》!」
突然シェフリが現れて、リフをプニプニとした盾で跳ね飛ばした。
リフ:「ぐふぅっ!!」
跳ね飛ばされたリフはなすすべもなく近くの遊具に叩きつけられる。
シェフリ:「ファイくんっ!!どうか、どうか僕のそばから離れないで‥!」
ファイ:「近づくなって言ってるだろ‥!!ッ“」
ファイはシェフリを押し戻そうとする。
リフは叩きつけられ背中を強打した衝撃で気を失った。
第10話 指導
キャラ設定集です!
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ローザ:「リフさん、ちょっと来ていただけますか。」
ローザは教室からリフを連れ出して、中庭のベンチで話を切り出した。
ローザ:「リフさん、昨日無断で帰宅しましたよね?宿題のプリントです。……それから、昨日、何をしていたのかについて訊かせてもらえませんか?」
リフ:「えと…なんのことですか?」
リフはとりあえずとぼけてみる。
ローザは少し柔らかい表情になり、
ローザ:「怒っているわけではないのです。だから、安心して話してください。リフ君がなんの理由もなくサボるとは思っていないので。」
ローザは何もかもわかっているかのような口ぶりで、引き下がる様子はない。
リフは意を決して話すことにした。
リフ:「…ということなんです。」
リフの話を聞いて、ローザは少し考え込んだ。
ローザ:「なるほど。お祖母様が…そういうことでしたか。」
ローザは真剣な表情で冷静にこう言った。
ローザ:「そういうことであれば、私も微力ながらお手伝いさせていただきます。」
ローザは思ったよりもリフの話をすんなりと受け入れた。
リフは驚いて
リフ:「疑ったりしないんですか!?」
そう聞くと
ローザ:「…実は、私も能力者なんです。巷で出没しているバケモノのことも知っています。」
ローザはそう言って遠い目をした。
リフ:「えっと…過去に何かあったんですか?」
リフがそう聞くとローザは過去に思いを馳せるようにして話し出した。
ローザ:「…雪の降る日でした。まだ私が10歳の頃です。私にはどうしても欲しいものがあったんです。」
そう言ってローザは胸の辺りにさりげなくつけていたブローチを指し示す。
それは複雑で美しい形の雪の結晶があしらわれたガラス製のブローチだった。
ローザ:「このブローチは『雪の女王のブローチ』といって、かなり人気のものでなかなか手に入らず、母は隣町にまで行って探し出してくれました。しかし…」
ローザは少し顔を歪めたが、一瞬で元の柔らかな表情に戻り話を続けた。
ローザ:「…母はその時に交通事故に遭い、そのまま凍死してしまいました。そしてその日から私は力を使えるようになりました。…今は使いませんが。」
リフはその話を聞いて、絶句した。
リフ:「そんな…」
ローザは真剣な表情に切り替えてリフに言い聞かせる。
ローザ:「リフさん。協力をするとは言いましたが、危険なことに首を突っ込みすぎることは本当は良くないことですからね。ですが今のあなたにやめなさいと言っても止まるとは思えないので協力するという決断を下しました。理解していただけますね。」
リフも真剣な顔をして
リフ:「はい。もちろんです。」
ローザは安心感と不安の混ざった表情で頷くと
ローザ:「お時間を取らせてしまいすみませんでした。もう間も無く授業が始まりますので行きましょう。…絶対に無理はしないでくださいね。何かあれば相談してください。」
ローザはベンチから立ち上がり
最後にリフの方を振り返って釘を刺してから校舎に向かって歩き出した。
リフ:「無理はしない…か。」
リフは空を見上げてネイタスのことを思い出すのだった。
ローザの設定(キャラ原案:甘味さん)
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ありがとうございました!
第9話 災難
キャラ設定集です!
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気を失って、目が覚めた時にはすでに夕方だった。
リフ:「俺…何をして…」
ハッとして今までのことを思い出す。
リフ:「そうだ!クリアモンスターと戦って、その後…」
リフのいる公園は夕陽に照らされてオレンジジュースのように赤く染まっていた。
ファイとシェフリはもういない。
時計を見るとすでに6時を回っていた。
リフ:「あ。終わった。」
リフはとりあえず学校に戻ろうかと思ったが、
怒られるのが怖くなってトボトボとカシミアの家に向かって歩き出した。
---
カシミア:「あら?どうしたの。疲れた顔をして。カバンも持ってないし…」
カシミアがまじまじとリフの様子を伺う。
リフ:「何でもないですよ!学校に忘れちゃって!あはは!」
そう言って足早に部屋に入る。
カシミア:「そう…なの?」
カシミアは心配そうにその後ろ姿を見送った。
---
リフ:「はぁ…全く、とんだ災難だ…」
リフは噛んでいたガムをティッシュに包んでゴミ箱へシュートし、
そのままベッドにダイブした。
リフ:「…ってか、あの二人も薄情だよな…起こしてくれればいいものを…」
|大欠伸《おおあくび》をしながら一人呟いているうちに、リフはいつの間にか眠ってしまった。
---
少ししてふと目を覚ますと、焦げ臭い匂いがした。
リフ:「……か、火事!?」
慌てて起き上がり、匂いの元へ向かうと台所でカシミアがあたふたとしていた。
リフ:「カシミアさん!火事ですか!?」
リフが慌てて聞くと、
カシミア:「いやっ…違うの…《《火事》》というよりは《《家事》》、かな?」
苦笑いをしながら、炭と化した謎の物体を差し出す。
カシミア:「これ…オムライスなのだけれど…」
カシミアは困ったようにため息をついて、
カシミア:「実は私、料理が苦手で…いつもネイタスさんにお世話になりっぱなしだったの…今夜こそは美味しい手料理を振る舞おうと思ったのだけど…まだ早かったみたい。」
悲しそうな表情をして、調理場を片付け始める。
リフはそんなカシミアの様子を見て、思わず吹き出した。
リフ:「す…すみません…笑うべきじゃないとは思うんですけど…なんか、安心しました。ありがとうございます!」
リフがお礼を言いながら、換気のために窓を開け始めると
カシミアはきょとんとして不思議に思いながら片付けを進めた。
---
次の日学校に行くと、案の定担任のローザに捕まった。
ローザ:「リフさん、ちょっと来ていただけますか。」
リフは覚悟を決めてローザについていった。
第11話 賑々
キャラ設定集です!
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放課後、『ドルチェネーロ』のアジトに行くと、またまたメンバーが騒いでいた。
ナナ:「んん!レイさんの作ったチョコおいし〜!」
セイム:「どれどれ…うんま!もう一個頂戴?」
レイ:「もちろん、いいよ。」
ミディアメスト:「僕も貰うね〜」
リフ:「ここはいつも騒がしいんだな…」
リフが呆れていると、アジトの奥にある隣の部屋に繋がる扉から誰かが出てきた。
???:「あのさぁ…ちょっと静かにしてくんない?…今、仕事中だから。」
紺のウルフカットにラフな格好をした眼鏡の女性がだるそうにこちらを睨む。
ナナ:「あ。ごめんなさい〜」
ナナが全く悪びれていない様子で謝る。
ミディアメスト:「ここでやってるのも悪いと思うけどな〜」
ミディアメストが指摘する。
???:「それは言わないお約束でしょ?」
すると、ウルフカットの女性がリフに気づいた。
ロアヌ:「あなた、もしかしてリフ?あー…私はロアヌ。よろしくね。…ふふ、ちょっと変な名前でしょ?私、webデザイナーなんだ。今どきはテレワークが多くて…」
そう言った後に周りを見渡して再び釘を刺した後、また扉の奥に消えていった。
リフ:「『ドルチェネーロ』って一体どのくらいメンバーがいるんだ?」
リフが独りごちていると
???:「たっだいま〜!」
元気な少年の声が聞こえて振り返ると
子供が3人、外につながる扉を開けてアジトに入ってきていた。
???:「ちょっと声が大きい…」
???:「う…うるさい…」
白髪の美少女とオドオドとした青髪の少女が耳を塞ぎながら茶髪の少年を睨む。
???:「二人とも同じ反応してておもしろ!l…って冗談、冗談〜ニコッ」
少年は悪びれるふうもなくアジトの中に入って、綺麗に掃除されたソファに座る。
すると白髪の少女が見慣れない顔を見て首を傾げた。
???:「…君、誰ですか?」
真顔でリフに向かって問いかける。
リフ:「あ、俺はリフ。ちょっと前に入った新人だよ。」
リフがそう返すとソファの方から
リオ:「あぁ!君がリフさんか。初めまして〜。レオです!仲良くしてね〜」
ユキ:「はじめまして、ユキです。よろしくお願いします。」
そして名乗った二人とリフは青髪の少女の方を見る。
???:「…」
青髪の少女はそろ〜っと扉から外へ出て行こうとしているところだった。
ユキ:「メイ?」
メイと呼ばれた少女はビクッとして
メイ:「…メイ、です。…よろしくはできません。メイに関わらない方が良いです。」
そう言ってアジトから出ていってしまった。
リオ:「あ〜…せっかく連れ出してきたのにな。」
ユキ:「無理させすぎたかも。」
出ていくメイを見送りながら二人は少しため息をついた。
その時だった。
突然ミディアメストのスマホの着信音がなった。
ミディアメスト:「は〜い。」
愉快なコール音の後に電話に出るとショコラルテの切羽詰まった声が聞こえてきた。
ショコラルテ:「緊急事態発生!誰でもいい!できれば大勢!早く西地区のショッピングセンターに来て!」
そして通話は切れた。
ミディアメスト:「何やら、緊急事態のようだ〜みんな〜行こう!」
ミディアメストは緊急事態ということを忘れそうなほどのんびりとした口調でそう言った後、
外への扉に向かって走り出した。
ナナ:「私たちも行こう!」
そうして他のメンバーも駆け出した。
ロアヌ:「仕事めんどぉ…よし!憂さ晴らしにひと暴れしよっと!」
ロアヌも扉から出ていった。
リフは少し出遅れて
リフ:「…あ!待って!」
後からみんなを追いかけた。
ロアヌの設定(キャラ原案:栞奈さん)
https://tanpen.net/novel/02d0531a-4dfd-4ec8-b7df-257d4bda135a/
リオの設定(キャラ原案:るるさん)
https://tanpen.net/novel/51f2e0d5-90a6-499a-a611-72bee8f0bae4/
ユキの設定(キャラ原案:るるさん)
https://tanpen.net/novel/924f227c-e7bb-45f5-91ff-bc430ff84d39/
メイの設定(キャラ原案:猫宮めめさん)
https://tanpen.net/novel/1363161a-255e-4d40-96aa-68d47fbe54c9/
ありがとうございました!
第12話 協力
キャラ設定集です!
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ショコラルテが電話で言っていたショッピングセンターの入り口に着くと
そこには異様な光景が広がっていた。
リフ:「何これ…?」
ショッピングセンターには数え切れないほどのクリアモンスターがいて
逃げ惑う人々を襲っていたのだ。
ショコラルテ:「やっと来た。こんなの一人じゃ捌き切れないわ。」
ショコラルテの顔には疲労の色が見える。
セイム:「またせたな。こっからは任せろ!…インフェルノクリーム!」
セイムはそう言ってミニシュークリームを口に放り込み、
クリアモンスターの群れの中に飛び込んでいった。
ユキ:「何これ。気持ち悪い。」
クリアモンスターの群れを見て辛辣な一言を真顔で言いながらも
ユキは白うさぎの饅頭を頬張った。
リオ:「俺が守るから安心しろ。ユキは、俺のお姫様だから。 ん?冗談冗談。ニコッ」
リオは小さなりんご飴にかぶりつき、一気に平らげた。
他のメンバーも追いついてくると早速それぞれのお菓子を食べ始めた。
ロアヌ:「何これ!?うじゃうじゃしててキモ…」
ナナ:「流石に数が多すぎない…?」
ミディアメスト:「大量大量〜」
レイ:「そんな大漁みたいに言わないでくださいよ。」
リフもあとから追いつき肩を上下させながら周りの様子を見る。
リフ:「クリアモンスター…なんでこんなに多いんだよ。」
床に壁に階段、手すり…さまざまなところでクリアモンスターが|蠢《うごめ》いている。
その様子はまるで甘いものにたかるアリのようだった。
そのクリアモンスターの群れの中のところどころでメンバーが戦っているのが見える。
セイム:「それっ!シュークリームの味はどうだ?」
セイムはクリアモンスターを次々とシュークリームの中に閉じ込めていく。
ユキ:「ちょっと…!セイムさん!少しは周りのことも考えてください!」
ユキは盛大に暴れ回っているセイムに合わせて技を放つ。
ユキ:「スノーラビット!」
そう唱えるとポンポンっと白いウサギが出現する。
そのウサギたちは群れでクリアモンスターに向かって駆けてゆき、
見事な脚力で奴らを粉砕していく。
リオ:「相変わらずウサギかわいいな〜、よし!俺もいっちょ戦うか!ライフクリエーション!」
そう言ってリオはりんご飴のように艶やかな赤い刀を生成する。
リオ:「覚悟しなよ!クリアモンスター!」
3人は息もつかせぬバトルを繰り広げている。
ロアヌ:「私たちも負けてられないね。」
ナナ:「はい!」
ミディアメスト:「ここは彼らに任せようか。」
レイ:「それがいいですね。」
ロアヌ、ナナ、ミディアメスト、レイは
別のクリアモンスターのところへ向かって駆けていった。
リフ:「…俺、どうしよう。」
リフは一人立ち尽くした。
第17話 集結
キャラ設定集です!
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ちなみにまだ登場していないキャラも入ってます…
ショッピングセンター内のクリアモンスターを殲滅した頃。
セイムが周りを見渡して呼びかける。
セイム:「新入りもいることだし、改めてそれぞれ自己紹介と行くか。足りないやつもいるみたいだがな。」
セイムの掛け声に応じて最初に名乗り出たのはナナだった。
ナナ:「はいはーい!私から!えっと、名前はナナです!能力は周りの敵をクッキーにしちゃう『ダークチェンジャー』!好きなものは本を読むこととお菓子作り!あ!食べるのも大好きですよ!」
レイ:「できれば作るのはもうやめて欲しいんだけど…」
レイがぼそっと言う。
ナナ:「何か言いました?」
ナナが曇りなきまなこできょとんとする。
ショコラルテ:「次、私。ショコラルテよ。能力は『ボンボン』。爆弾を作り出す能力なのだけれど、10秒のロスタイムがあるのがちょっと難点。ちなみにこのポシェットは冷蔵機能があってボンボンショコラが20個ほど入ってるわ。」
セイム:「頼れる姉貴。」
ショコラルテがをギロリと睨む。
ショコラルテ:「姉貴言わない。」
ミディアメスト:「この流れだと次はですね。ミディアメスト、能力は『フラックスナッグ』。挟んだり閉じ込めたり〜まぁ、いろんなことができますっ!〜あとはトレカやシール集めが趣味です〜そしてアイスは絶対コーン派!」
リフ:「ヘぇ〜俺はコーンよりカップの方が好きかな。」
ミディアメスト:「ん?今、何か言いました?」
リフ:「いえなんでもないです。」
ニコニコと笑っているが、何か異様な圧を感じリフは後退りした。
イオ:「ボクはイオ・フィリベルト・バイオ・ドリーム・エリザード。名前長いし呼びづらいからイオでいいよ。あとは〜秘密☆」
ロアヌ:「能力ぐらいは教えなさいよ。」
ロアヌの冷めた視線がイオに突き刺さる。
イオ:「ま、いいけどさ。ぼくの能力は『飴細工』。食った飴の動物を巨大化させられるんだぁ☆って、そんなとこ。」
ユキ:「次は私ですかね。名前をユキと言います。能力名は『スノーラビット』。うさぎさんを召喚したりできます。」
リオ:「ユキは実はTi__グム__…」
何かを言おうとしたリオをすかさずユキが止める。
ユキ:「…」
無言の圧と冷めた瞳でイオを見る。
イオ:「ご、ごめんってば!じゃ、じゃあ、次は俺の紹介!リオです!能力は『ライフクリエーション』!刀や弓を作ったり、回復するキャンディーも作れるよ、よろしくっ!」
イオの自己紹介が終わると次はレイが名乗り出た。
レイ:「僕はレイ。能力名『スワンプチョコ』。チョコの沼のようなものを作り出して敵の動きを止めたり、溺れさせたりできるよ。…だけど話すと解除されちゃうからちょっと不便かな。あとはゲーム好きだから今度リフと一緒に遊びたい。」
リフ:「やった!ゲーム好きだ!」
リフは顔をぱっと輝かせながら喜ぶ。
レン:「僕もゲーム好き、ってかめっちゃ得意だよ。」
そう言ってこちらに近づいてきた白髪の人物はレンだった。
レン:「遅れてごめんごめん!ちょっと配s、用事があって間に合わず…おっと、まずは名乗ってからか。レンっていうんだ。よろしく。能力は『Snow Creation』。雪玉作ったり雪降らせたりできるよ。」
リオル:「__じじ__実は僕もゲーム__好きで__…ぁ、名前はリリリリリオル…です。」
ロアヌ:「リリリリリオル?変わった名前だね〜」
ロアヌが少し|揶揄《からか》うとリオルは怯えた様子で訂正する。
リオル:「す…すみません…!__リ__リオル__です。__のの能力は『Happy Ramune』。特にサポートが得意です…__どうも__」
シェイ:「そんな怯えないでもいいのになーちなみに俺はシェイ!能力名は『Colorful starch syrup』!里で鬼滅の無◯郎がやられた感じで水飴に閉じ込めることができるぞ!欠点は3人までしか閉じ込められないことだな。ゲームは苦手!」
シェイはにかにかと笑って元気よく自己紹介を終わらせた。
ロアヌ:「それじゃ次は私、ロアヌでーす。能力の『マジックグミ』はグミの味によって色んな魔法を出せるの。でもランダムだから何が出るのかわからないんだ〜そこが面白いんだけどね。ちなハードグミ限定。」
ナオ:「じゃあ次私が名乗るね。名前はナオ。能力は『マッドチョコレート』!ドッロドロのチョコレートを自由自在に操れるっていうすごい力だよ。」
ミリィ:「ところで…ああの、ナオさんって二重人格者なんですか?」
ナオの紹介が終わるとミリィが弱々しい声でそう尋ねた。
ナオ:「二重…人格…?」
ナオはきょとんとした表情で首を傾げる。
ミリィ:「い、いえ…なんでもないです…あ、私の紹介ですね。ミリィです…能力は『飴創作』といって、想像できるものはだいたい作れます…生き物とかは無理ですが…」
ミリィは自己紹介が済むと俯いて隅っこに行ってしまった。
リフ:(引っ込み思案かぁ)
ジューン:「次あたし。リフにはさっきも名乗ったけどジューンです。能力は『アインシュレーヴェン』、生き物を発火させられる力だよ〜生き物型のビスケットじゃいといけないという制約はあるけどね。かっこいいでしょう?」
ジューンはニコニコとした笑みを顔に貼り付け紹介を終える。
リフ:(なんかちょっと怖い)
リフがそんなことを思っていると最後の人の自己紹介が始まった。
セイム:「最後は俺か。俺の名はセイム。ご存知の通り美少女…ではなく男だ。能力は『インフェルノクリーム』。シュークリームに閉じ込めて窒息させちゃうよーだけど食べちゃうと脱出できちまうのが難点だな。」
イオ:「ボク閉じ込められたことあるけど意外と美味かったぜ☆」
リフ:「仲間同士で何やってんだ…」
リフは少し呆れた。
ショコラルテ:「あと数人足りないメンバーがいるけど、まだ会ってないメンバーともいつか会う機会があると思うからその時にね。」
総勢15名の紹介が終わりドルチェネーロの仲も少し深まったのであった。
更新遅くなってしまいすみませんでした!
現時点で登場しているキャラ(一部除く)の自己紹介はしましたが、すぐに他のキャラも登場させますのでお楽しみに!
第16話 二面
キャラ設定集です!
https://tanpen.net/novel/series/71e01e24-d6a8-43aa-a364-8348f3326862/
ちなみにまだ登場していないキャラも入ってます…
リフ:「『バルーンボム』!」
リフはショコラルテ、ジューンと別れたあと
息を切らしながらひたすらにクリアモンスターを割って回っていた。
リフ:「やっと、慣れてきたけど…全然…全滅する気配がないっ…」
今まで戦力外だったのでなんとか挽回しようと必死に戦うが
体力の限界も近くなり、リフはその場で膝をついた。
ミリィ:「うぅ...怖いぃ...」
するとどこかからか情けない声が聞こえてきた。
顔を上げて近くを見ると、ニセの観葉植物の影でミリィが|蹲《うずくま》っていた。
リフ:「君、大丈夫?」
リフが後ろから声をかける。
ミリィ:「ヒィッ!来ないでっ!『飴創作』!!」
ミリィはリフの方を見向きもせずに能力を放って飴の鋭い棘を作り出した。
リフ:「うわぁぁぁ!!」
リフはのけぞってなんとか避ける。
ミリィは今の状況に気がつくと、リフに向かって震えながら謝った。
ミリィ:「あ、あ、ごごめんなさいい…」
リフ:「気にしないで…」
リフは気を取り直して辺りを見渡すと、ナオが交戦しているのが見えた。
リフ:「ナオー!俺も手伝う…」
近くに行くとナオの様子がいつもと違うことに気がついた。
ミリィが震えながら呟く。
ミリィ:「あぁ…怖いナオちゃんだ…」
怖いナオ?とリフが疑問に思っていると、
ナオ:「`『マッドチョコレート』!あっはは!やっぱり弱いや!おらっ!あははは!`」
チョコレートの波がクリアモンスターを次々に巻き込んでいく。
ナオの朱色の目は不気味に鈍く光っていた。
リフ:(いつものナオじゃない…)
リフとミリィは怯えながらその様子を見ていることしかできなかった。
ナオ:「`あはっ!たのし〜!`」
---
あっという間にリフたちのいるエリアのクリアモンスターは倒されてしまった。
リフ:「まじすごい。」
ミリィ:「助かりました…」
ナオはいまだに楽しそうに高笑いしている。
二人は恐る恐る笑い続けるナオの方へと近づくと、ナオは急に床に倒れて突っ伏した。
ナオ:「チョコ・・・鉄分・・・。」
ナオはさっきまでとは打って変わって、弱々しい声でチョコ、鉄分と繰り返し唱えている。
リフ:「ミリィ、チョコ持ってる?」
ミリィ:「ごめんなさい。あいにく今は…」
二人が困っているとレイとロアヌとナナとミディアメストご一行が偶然通りかかった。
ナナ:「あ!リフさんたちだ!」
ロアヌ:「元気〜…そうではないね。」
ミディアメスト:「また能力を使い過ぎてしまったんですか〜?」
レイ:「残ってるチョコ、少しだけならあげてもいいよ。」
レイが一口チョコを持ってこちらに歩いてくる。
ナオ:「きゅ、救世主だ…」
ナオが受け取った一口チョコを頬張り、幸せそうな表情をする。
ナオ:「やっぱりチョコレートは美味しいな・・・。もう一つ・・・やっぱもう三つ・・・。」
レイ:「美味しい?ありがとう。だけどなくなったら戦えなくなるから、ごめん。」
レイたちはさらにチョコをねだるナオを放置し、戦線に戻っていった。
ナオはがくりと肩を落とした。
---
周りのほとんどのクリアモンスターを倒して
やることがなくなったリフたちはなんとなく歩いていると、
セイム:「さて、ちょうどいい。全員揃ったな。」
他のメンバーは全員ショッピングセンターの広場に集合していた。
セイム:「新入りもいることだし、改めてそれぞれ自己紹介と行くか。」
小説の終わりの文の書き方って難しいですね〜
次回、自己紹介です!
第20話 大雨
キャラ設定集です!
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ちなみにまだ登場していないキャラも入ってます…
突然のコールに驚いたドルチェネーロの面々は安らかに眠る幼いミィを見て思案した。
ロアヌ:「誰かが残らないといけないね。ミィをひとりにはさせられないし…」
ナナ:「それじゃ私が残る!私だってもう立派なおねぇさんだよ!」
ナナが胸を張ってお守りに名乗り出る。
レン:「ありがと!それじゃ、行ってくるな。」
リフ:「雨の中で戦闘か〜…」
ロアヌ:「わかる…わかるよ…だるぅいよね…」
レン:「二人とも、頑張ろう。」
3人はそれぞれのお菓子を準備して、戦いに赴いた。
---
連絡が入ったのはとある学校だった。
ナオ:「あぁ!きてくれた!ありがと〜!」
ナオが半泣きでリフに|縋《すが》ってくる。
リフ:「どうしたの!?あの時の気迫は!?」
リフは二重人格状態の時のナオを思い出しながら問いかける。
ナオ:「私の能力…雨の中では無力なんだよ〜…助けて〜…」
ナオはそう言って悔しそうに拳を握る。
ロアヌ:「そうか…チョコが雨で流されちゃうから。」
レン:「水に弱いんだな…」
辺りを見回してみると他にも青髪の少女メイがいた。
メイ:「どうして…珍しく登校した日にこんなことに…」
何やら一人でぶつぶつと言っている。
ナオ:「ここは名門小中高一貫校『シェルタスクール』、私たちはここの生徒なの!」
ナオがさっきの半泣きはどこへやら、そう言って誇らしげに自慢する。
リフ:「へぇ。頭いいんだ。」
リフが度肝を抜かれているとナオがニヤリと笑って小突いてくる。
ナオ:「勉強でわからないところがあったら教えてあげるよ〜」
リフはハハハと笑いながらも、本当に年下なんだよな…?と疑うのであった。
そんなことを話していると、名門校の豪華な茶色の校舎の方で何者かが暴れ回る音が聞こえた。
メイ:「そんなこと話している場合ですか…?」
メイが白い目をナオに向けながら轟音の聞こえる方を見やる。
ナオ:「そうだね。行こう。」
そうして5人はクリアモンスターが暴れている現場へ走って向かった。
---
レン:「この学校…広すぎ…!」
ロアヌ:「目的地までかなり走ったよね…つら…」
レンとロアヌが肩を上下させて息を切らしている。
リフ:「二人とも体力ない…」
かく言うリフも息を切らしている様子だ。
メイ:「あの怪物…いつもの姿じゃありませんね…」
メイの言うとおり、
目の前で暴れているクリアモンスターの形状は普段見るものとは違っていて、
まるでホタテ貝のように硬い殻で覆われていた。しかも巨大だ。
ロアヌ:「かったそ〜…だるぅい…」
レン:「でもやるしかないか。」
ロアヌはハードグミ、レンはスノーボールクッキー、メイは虹色のゼリー、リフはガムを頬張る。
ナオ:「あ、私は今回はパスで。雨の中だときっと足手纏いになるから…」
そう言ってナオはそそくさと帰っていく。
ロアヌ:「りょーかい!気をつけて帰ってね。」
ナオは大きく手を振りながら正門に向かって走って行った。
レン:「それじゃ、始めよう。」
戦いの火蓋が切って落とされた。
第18話 解明
キャラ設定集です!
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ちなみにまだ登場していないキャラも入ってます…
窓の外ではザアザアと雨が降っている。
クリアモンスターの大量発生事件から丸二日経った。
その間はまるで嵐の前の静けさのようになんの問題も起こらなかった。
ナナ:「暇だな〜」
どこからか退屈そうな声が聞こえてくる。
レン:「平和ってことじゃん。良いじゃん。」
ソファの上でダラダラとくつろぎながらレンが反応する。
ロアヌ:「それに今奴らが出てくると雨の中戦うことになるし…」
ロアヌは眼鏡をかけてパソコンをカタカタと鳴らしながらだるそうに言う。
この二日間『ドルチェネーロ』はずっとこの調子だ。
リフも暇を持て余し、そろそろ帰ろうかと考え始めたその時だった。
ファイ:「テメェら朗報だ。この前の検体の調査結果が判明した。」
チームの面々は一斉に扉を開けて中に入ってきたファイの方を見る。
ファイ:「調べたところ…」
全員が息を呑む。
ファイ:「あいつらの正体はほぼ『砂糖』だった。」
面々:「…は?」
驚くのも無理はない。砂糖が動いて人を襲っているというのだから。
ファイは調査結果の紙をひらひらとさせながら、
ファイ:「砂糖と言っても成分が類似しているというだけで、完全な砂糖ではない。だから食ったりはできねぇがなァ。」
そう言ってファイはよだれを垂らして瞳をキラキラと輝かせているナナを見る。
ナナはハッとして我に返った。
レン:「つまり奴らは完全に未知な存在ではないということか。」
レンが頷いて呟く。
ロアヌ:「他に何かわかったこととかないの?」
ロアヌがパソコンを打つ手を止めてファイに尋ねる。
ファイ:「あァ…この調査であいつらの成分がわかった時、ある言い伝えと事が類似していることに気がついたんだよ。」
レン:「その言い伝えってもしかして…」
レンが何かに気がついたようにハッとする。
シェフリ:「そう。”フィーネ”ですよ。」
どこからともなくシェフリが現れて解説してくれる。
シェフリ:「大昔から伝わる話です。かつてこの地を治めていた支配者がいました。」
シェフリは静かに語りだす。
_支配者は暴君でした。民衆の怒りを買ってばかりか、他国にも喧嘩を売る始末。
しかしそんな支配者も長くは玉座に居座ることはできなかった。革命を起こす者が現れたのです。
革命を起こした新たな支配者は暴君を玉座から引きずりおろし、元支配者は落ちぶれてどこかへ消えてしまいました。しかし…
元支配者は二年後にまた現れたのです。もちろん国民は盛大なブーイングを起こし元支配者を追い出そうとしました。すると、元支配者はこうべを垂れて謝ったそう。国民たちは唖然としました。その時でした。
元支配者は突然、砂糖の像になってしまったのです。その砂糖の像は今もどこかにあるという_
シェフリ:「まぁ、アドバンポリスの民なら誰でも知っている話ですよね。」
リフ:「え、俺知らないんだけど。」
リフが思わずそう口に出すと、周りのメンバーは驚いた顔をしてリフの方を振り返った。
ファイの表情は変わらなかったが。
ファイ:「じゃ、俺はもういく。じゃあな。」
そう言ってファイとシェフリは扉から出ていってしまった。
ナナ:「クリアモンスターって砂糖だったんだ!」
レン:「確かに言われてみれば粉っぽかったし、ジャリジャリしてたし…」
ロアヌ:「そう思うとちょっと可愛い?」
リフ:「砂糖…謎が謎を呼んでない?」
そんなドルチェネーロのアジトの前に、土砂降りの中
何者かの足音が近づいてきていたのであった。
第19話 被検体
キャラ設定集です!
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ちなみにまだ登場していないキャラも入ってます…
土砂降りの中、小さな足音がドルチェネーロのアジトの階段に冷たく響く。
するとその足音の持ち主は階段を降りてくるファイ、シェフリとすれ違った。
シェフリ:「…?あんな子、うちの団にいましたっけ?」
相変わらずファイにまとわりつきながら、不審そうに階段を登っていく小さな少女を見る。
ファイ:「…」
ファイも疑わしそうに小さな背中を見上げる。
少女はボロボロな姿でドルチェネーロの扉のノブに手をかけ、中に転がり込んだ。
リフ:「ん?ファイたちが戻って…ってあれ?」
リフとメンバーはアジト内に転がり込んできた少女を見て呆然とする。
少女はクリーム色のボサボサ髪で、疲れ切った表情をしていた。
???:「たす…けて」
少女はそう言ってパタリと倒れてしまった。
---
レン:「ナナ、とりあえずこのタオル水で濡らしてきてくれない?…ありがと。」
ナナ:「この子…大丈夫だよね?助かりますよね?」
ロアヌ:「きっと大丈夫。…こんな時にリオとかがいてくれたらね、回復を頼めるんだけど…」
そんなことを話していると、謎の少女は目を開けた。
リフ:「あぁ!起きた!よかった…!」
少女はむくりと起き上がり、こう尋ねた。
???:「ここ…どるちぇねーろの、あじと、か…?」
4人は顔を見合わせた後、少女の方を見てうん、と頷いた。
???:「よかった…やっとたどりついた…」
少女は安心した様子でほっと息をついた。
ロアヌ:「ところであなた名前は?どうしてこんなにボロボロなの?」
ロアヌがそう尋ねると少女は少し俯きがちに話しだした。
ミィ:「なまえは…みぃ。とあるそしきから…ぬけだしてきた」
ナナ:「え?組織?」
リフ:「抜け出してきたって…?」
二人が興味津々な様子で問いかけるとミィは複雑な表情で口をつぐんでしまった。
レン:「まぁ、一旦休ませてあげようか。質問はまた後で…」
レンがそう言うとミィは安心した様子で眠りに落ちた。
するとその時、リフのスマホがゲームBGMのコール音を鳴らし始めた。
発信元はナオだった。
ナオ:「誰か〜…来て〜!」
面々は雨の中戦いに駆り出されるのであった。
ミィの設定(キャラ原案:遥兎らいさん)
https://tanpen.net/novel/70d76e17-a6aa-49d0-8ac9-d90f5875256b/
ありがとうございました!
第13話 名案
キャラ設定集です!
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ショッピングモールの東エリアではシェイとイオとリオルが合流していた。
シェイ:「おい!アンタがクリアモンスターって名付けたんだってな!クリモンにしたらもっとわかりやすくね?」
シェイが名案をひらめいたように満面の笑みで胸を張って言う。
イオ:「キサマ、センスねぇな。正直ダセェぞ。…しかもパクリじゃねぇか。」
イオがはっきりと物申したところ、シェイは少しショックを受けた様子だった。
リオル:「そそそそんなこと言ってる場合ですか!?後ろ後ろぉ!!」
リオルがシェイとイオの後ろを指差して腰を抜かしている。
後ろには大勢クリアモンスターが集まって3人に襲い掛かろうとしているところだった。
シェイ:「これは…燃えるね。」
イオ:「キサマも飴細工にしてやろうかァ?」
シェイは水飴を、イオは狐の形をした飴細工を食べて構える。
リオル:「__ふふ__二人とも、__サササ__サポートは僕にお任せ…__ください。__」
リオルもラムネを頬張り立ち向かう。
シェイ:「Colorful starch syrup」
イオ:「飴細工」
リオル:「Happy Ramune」
3人がそう唱えた途端、巨大な飴細工の狐が現れクリアモンスターを薙ぎ倒していく。
イオ:「見たか!ボクの凄まじい力を!」
シェイ:「いや〜やっぱすごいな!俺の力は攻撃向きじゃないから頼りになる!」
シェイはそう言いながらイオに襲い掛かろうとするクリアモンスターを水飴の牢に閉じ込める。
シェイ:「だけど俺とリオルも負けてないぜ!」
リオルの方を振り返ると彼は焦りながら
リオル:「ヒィッ!__ボボ__ボクの能力には限度があって…1日に6回が限界なんです!だからお役には…」
イオ:「十分だろ。あいつらにとっては。」
イオがリオルに向かってサムズアップしたその時
パリーン!と巨大な狐の飴細工が割れて破片が飛び散った。
イオ:「あ、割れた。」
シェイ:「おっと!Colorful starch syrup!」
リオル:「Happy Ramune!」
シェイとリオルは同時にバリアを張り、鋭い飴のかけらを防いだ。
イオ:「悪りィ悪りィ☆この飴細工、壊れやすいんだ!」
2人は先に言っておけよと言わんばかりに冷たい目でイオを見た後、
再びクリアモンスター討伐に向けて奴らの群れの中に飛び込んでいった。
第14話 連携
キャラ設定集です!
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ちなみにまだ登場していないキャラも入ってます…
シェイたちがクリアモンスターと戦っている頃、ロアヌたち4人も奴らと対峙していた。
ロアヌ:「マジックグミ!」
ロアヌが赤い色のハードグミを食べてそう言い放つと
たちまち足元から赤い魔法陣が現れて光り出した。
ロアヌ:「燃え上がれ。」
そう言って手をクリアモンスターの群れの方向に向けると放射状に炎が吹き出す。
ミディアメスト:「僕らも負けてられませんね〜フラックスナッグ!」
ナナ:「私も!ダークチェンジャー!」
レイ:「僕の能力は喋ると効果が切れるからアイコンタクトでよろしく。…スワンプチョコ!」
他の3人もそれぞれウエハース、クッキー、一口チョコを口に入れ、戦闘体制に入る。
クリアモンスターは炎を浴びてもなおとどまることを知らず、津波のように襲いかかってくる。
ナナ:「全然減ってる気がしないよ〜…!」
レイ:「…(持久戦になるかも知れないな…)」
ミディアメスト:「サクサクサク…ウエハース美味しいです〜でも、もう、食べられない…」
ロアヌ:「だるぅい…なかなかに厄介…って、もう食べなくていいでしょ。」
ロアヌはミディアメストを若干白い目で見つつ、次は青いグミを口に入れる。
ロアヌ:「これならどう?」
手を向けた先に渦潮が現れてクリアモンスターを巻き込み、ぐるぐるとかき混ぜていく。
しかし依然、数は減っていないように見える。
ミディアメスト:「そうだ〜!レイのチョコ沼でクリアモンスターを一網打尽にしてから攻撃するのはどうですか〜?」
ナナ:「レイさんできそうですか?」
レイはやってみる、というふうに頷き、大量のクリアモンスターがいる方向に意識を集中させる。
レイ:「(この数を相手にするのは初めてだけど…やってみるか。)」
レイが瞳を閉じて力強く念じるとジワリジワリとチョコの沼が広がっていき、
クリアモンスターたちを沈めていく。
ロアヌ:「これで大体ここらのやつは捕まえられた…かな?」
ナナ:「それでは、一斉攻撃ー!」
メディアメスト:「いっちゃいましょ〜!」
3人はレイが動きを止めてくれているクリアモンスターの軍勢に向けて能力を解き放つ。
ナナの能力で敵をクッキーにしてから、ミディアメストの能力で敵を挟み粉々に粉砕していく。
ナナ:「突然だけど、ミディアメストさんっ!今度からミディアさん、そう呼んでいいですか?そっちの方がお気に入りです!」
ナナが唐突にミディアメストに向かって質問する。
ミディアメスト:「え!?急に?もっちろんいいよ〜!」
ミディアメストはクリアモンスターの相手をしながら二つ返事で了承する。
ロアヌ:「それじゃ私もミディアって呼ぼうかなー。ミディアミス…みであむs…って言いにくいし。」
レイは喋れないのでアイコンタクトと頷きで賛同する。
ミディアメスト:「んー?なんか失礼な言葉が聞こえましたねぇ、まぁ気持ちはわかりますが〜」
ミディアメストは複雑な表情をしながらも嬉しそうにそう言う。
ミディアメスト:「さて!ここらのクリアモンスターはボクらでサクッと片付けてしまいましょうか〜!」
そして4人は連携プレーで敵を薙ぎ倒していくのだった。
第23話 大人
キャラ設定集です!
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ちなみにまだ登場していないキャラも入ってます…
どんよりと曇った日曜日。
リフ:「ばあちゃん…」
リフが灰色に濁った空を見つめながら小さく呟く。
その様子を見ていたジューンはリフに優しく声をかける。
ジューン:「必ず助けようね。…でも、今は息抜きも大事でしょう?」
そう言ってゲーム機のコントローラーをリフの元に差し出す。
リフ:「…ありがとう。」
リフはコントローラーを受け取り、テレビの前に座る。
ジューン:「あたしが対戦相手になるよ。あと二人敵が欲しいすね…」
ジューンはそう言ってアジト内を見渡す。
他にアジト内にいたライアーとミリィを呼び寄せ、
一緒に『大健闘クラッシュシスターズ』というゲームをやることにした。
---
ライアー:「おりゃあ!日頃の|鬱憤《うっぷん》晴らしてやりゃあ!」
ミリィ:「ひぃ!うぅ...怖いぃ..」
リフ:「ライアーさん、子ども相手に本気でかかってくるなんて…最高じゃん!」
ジューン:「あ。間違って落ちちゃった、ははっ」
4人はそれぞれ思ったことを口々に言いながらコントローラーをカチャカチャと操作する。
バトルももう少しで決着がつくというところで、
突然窓から眩しい光が差し込んできた。
リフ:「急になに!?」
ジューン:「これは…あれだね。」
ミリィ:「あれですか…」
ライアー:「あれか〜…ちょうどゲームも佳境に入ったところだったのにねぇ」
リフは察して眉を|顰《ひそ》める。
リフ:「あれって、あれか?」
4人はコントローラーを床に置いてアジトから駆け出していった。
---
4人は急いでクリアモンスターの現れた場所に向かって走っていく。
すると向こうから歩いてくるローザとすれ違った。
ローザ:「…!リフさん!」
リフはローザの声に気がつき慌てて振り向く。
リフ:「ローザ先生!」
ローザ:「急いでいる様子ですが、何かあったんですか?よければお力添えいたします。」
ローザは冷静な様子で協力を申し出る。
リフ:「そっか!先生も能力者だった!」
他の3人は誰?というふうに困惑している様子だ。
リフ:「あ、俺の担任なんだ。」
ローザ:「ローザと申します。あなた方はもしかすると噂の…?」
ローザは表情こそ変えないが、驚いた様子で他の3人を見つめる。
ライアー:「そだよ〜俺らが今話題の『ドルチェネーロ』!」
ライアーが軽くそういうとローザはふむと頷き、
ローザ:「そうなんですね。では、私も共に戦わせていただけませんか。」
ミリィ:「でも…危険ですよ…」
ローザ:「子どもが戦っているというのに大人…しかも教師である私が逃げ出すわけにはいきません。」
ローザは覚悟を決めた様子でそういった。
ジューン:「ほんとに大丈夫なの?……まぁ、無理には止めないけど。」
ドルチェネーロの大人二人もローザを受け入れたようだ。
ローザ:「よろしくお願いします。それでは私はアイスクリームを買ってきます。」
ローザはそう言って近くのコンビニに向かって走り出す。
リフ:「…ア、アイスクリーム?」
リフはポカンとしたがすぐに能力のためだと理解した。
---
クリアモンスターが現れたというアドバンポリスの南地区に到着すると一同は信じられない光景に目を疑った。
ライアー:「なんじゃこりゃ!」
ミリィ:「こんなの…見たことないです…!」
南地区一帯が巨大なガラスドームのようなバリアで包まれており、出入りができないようになっていた。
ジューン:「どういうこと?中にクリアモンスターはいるの?」
5人は目を凝らしてみるがドームはすりガラスのようになっていて中の状況がよく見えない。
しかし中で微かに何かがうごめいてる様子が確認できる。
ジューン:「とりあえず割ってみるか。『アインシュレーヴェン』!」
ジューンが動物型のビスケットを口に放り込み唱えると、白い炎が燃え上がりドームを包む。
しかしドームには傷一つつかなかった。
ジューン:「あれれー?おかしいぞー?」
ライアー:「強度が高いみたいだな。」
ミリィ:「炎が熱い…」
ドームはかなり強度があるらしく簡単には割れないようだ。
するとローザがある提案をする。
ローザ:「これ、まるでガラスのようですね。もしかしたら熱膨張と熱収縮で割れるかもしれませんね。…憶測ですが。」
リフ:「熱…膨張?」
リフはポカンとして聞き返す。
ローザ:「理科の授業でやりませんでしたか?ガラスは温度を急激に上げると膨張し、逆に下げると収縮するのでその急激な温度差でガラスが割れてしまうんです。」
リフはなるほどと相槌を打つが、真面目に聞いていた授業の内容を覚えていなかった自分に少し呆れた。
ジューン:「熱するのは私がやるとして…どうやって冷やす?」
それを聞いたローザはコンビニで購入したアイスクリームを取り出して開封する。
ローザ:「それは私に任せてください。」
二人はドームに向かって構える。
ジューン:「『アインシュレーヴェン』!」
ローザ:「『スノウクイーン』」
ジューンの炎がドームを熱した後、ローザの能力でドームの表面温度が急激に下がっていく。
すると、パリィン!とドームは割れて中に入れるようになった。
リフ:「すごい、二人とも!」
ミリィ:「さすが…!」
ライアー:「じゃ、いこかー!」
そうして5人はドームの中へと入っていく。
---
ドームの中に入ると5人は唖然とした。
ビルは倒壊し、信号機は止まり、道路は陥没していた。人の気配もしない。
リフ:「なんか、気味が悪い…」
この辺はアドバンポリスの中でも特に人通りの多い繁華街なのだが、今はまるで人がいないようだった。
一行は元凶を見つけ出すべく、奥へと進む。
すると少し遠くから何者かが応戦しているかのような音が聞こえてきた。
ライアー:「こっちだ!」
5人は音のした方へ向かって走っていく。すると…
カシミア:「『スウィートチャーム』!」
クリアモンスターと対峙するカシミアと鉢合わせたのだった。
第15話 参戦
ショッピングセンターの入り口付近では、
ショコラルテが疲労の浮かんだ表情で未だ戦っていた。
ボンボンショコラから生成した丸い爆弾を狙って投げていく。
ショコラルテ:「そろそろボンボンショコラも切れそうだわ…」
リフも加勢していたがまだ能力に慣れていないので
クリアモンスター相手に苦戦を強いられている。
リフ:「『バルーンボム』!…あ、当たらない!操作がむずいっ!」
ショコラルテ:「リフ!後ろ!」
リフがショコラルテの声に反応して振り返ると
真後ろにクリアモンスターが迫ってきているところだった。
リフ:「うわぁぁ!」
リフが反応に遅れて絶体絶命のその瞬間。
???:「『アインシュレーヴェン』」
その声が聞こえてきた瞬間、
襲いかかってきていたクリアモンスターが真っ白い炎に包まれた。
その後ろから誰かが歩いてくる。
???:「待たせたかしら?」
黒髪ロングの女性が微笑みながらこちらへ向かってくる。
ショコラルテ:「…やっと来た。」
リフ:「…誰?」
リフとショコラルテがその人を見ると、
ジューン:「キミがリフくん、ね。あたしはジューンっていいます。絡みにくいかもしれないけど、宜しくね?ショコラルテも待たせてメンゴ〜」
ジューンと名乗ったその人物は黒いロングスカートを揺らしながら手を小さく振る。
ショコラルテ:「遅かったわね。連絡したのに…」
ジューン:「ちょっと外せない用事があってね。ボンボンショコラ持ってきたから許して頂戴?」
ショコラルテは澄ました顔でジューンの差し出すボンボンショコラを受け取りながら
それを口に放り込む。
ショコラルテ:「あなたの能力は私の能力と相性がいいから助かるわ。…『ボンボン』!」
ジューン:「それはどうも!『アインシュレーヴェン』!」
ショコラルテの投げた爆弾にジューンが炎をつける。
するとその瞬間に爆弾は爆発し、脅威的な威力で大量のクリアモンスターを弾き飛ばした。
ショコラルテとジューンの二人は連携して戦い、
みるみるうちに周辺のクリアモンスターは減ってきた。
ジューン:「リフくん、ここは私が変わるから少し休憩してもいいよ?」
ジューンは微笑んでリフに優しくそう言う。
リフ:「…ありがとうございます。」
リフは少しシュンとしながら別のクリアモンスターのところに向かって駆け出した。
ジューンの設定(キャラ原案:♱𝖑𝖎𝖊𝖓𝖆♱さん)
https://tanpen.net/novel/38114d7b-896a-4658-985b-0bd6f711982c/
ありがとうございました!
あと能力発動の文言がわかりにくかったので、今回から二重かぎかっこ(『』←これです!)をつけることにしました!
第27話 記憶〜イオ編〜
キャラ設定集です!
https://tanpen.net/novel/series/71e01e24-d6a8-43aa-a364-8348f3326862/
ちなみにまだ登場していないキャラも入っています…
---
今回はイオくん視点でお話が進んでいきます。
《エピソード.イオ》
星ひとつない漆黒の夜空の下、『ドルチェネーロ』のアジトであるコンクリートの建物に背中を預けてうずくまる影があった。
彼の名はイオ・フィリベルト・バイオ・ドリーム・エリザード。
空と同じく真っ黒な軍服を着た、ごくごく《《普通》》の青年だ。
彼は首にかけたペンダントのふちを右手の親指でなぞる。
イオ:「レオ…」
誰のものかわからない名前を呟く。その声は寂しげな野原に吸い込まれて消えていく。
冷たい風が彼を責めるように吹きつけてくる。
イオは立ち上がり、アジトの中に戻っていった。
---
翌日。
イオは昼過ぎに起き、その後街へと繰り出した。
イオ:「なーんかおもしれーことねーかなぁ」
独り言を言いながらぼんやりと歩いていると、街のゲームセンターで何やら盛り上がっているのが目に入る。
イオ:「お!なんだなんだぁ?」
近づいてみるととある人物の後ろ姿が見えてきた。
ニット帽を被ったマゼンタ色の髪の人物。
リフ:「いけ!そこだ!」
ゲーセン客:「うっわ!また負けた!兄ちゃんつよいね〜」
リフとゲーセンの客は立ち上がって互いに握手をする。スポーツマンシップというやつだ。
イオはその様子を見て周りの観客と同じように拍手をする。
イオ:「リィ!キサマやるじゃねぇか!」
リフ:「お!イオじゃん!なんでここに?」
リフは驚いた顔をしてイオのもとに来る。
イオ:「偶然通りかかってな。つかリィ、俺とも対戦しろ。飴細工にしてやるからな☆」
イオがおちゃらけた様子でゲーム機へ向かって爪先を向ける。
リフは困ったような表情で
リフ:「実は先客がいてさ…ほら、あの人。」
リフが指差した先には薄紫色の背中まである髪をもつ女性がいた。
イオはその後ろ姿にどこか懐かしさを覚える。
すると彼女が振り向いた。
???:「あの…そろそろ…お手合わせ願えますか。」
リフの方を見て真剣な表情で立っている。
リフはもちろん、と言って自己紹介をする。
リフ:「俺はリフ!」
ホルン:「私はホルン。ホルン・フローリア」
ホルンはそう名乗るとイオの方を見る。
ホルン:「貴方は…えっと…」
イオ:「ボクはイオだ!よろしくな☆」
イオが明るく名乗るとホルンは何かいいたげな顔をしたが、よろしくお願いしますとだけ言って再びリフの方に向き直った。
ホルン:「この勝負に勝てたら、あの商品がもらえるって本当なんですよね?」
彼女はゲームセンターの目立つところに置かれたショーケースの中のドーナツを指差す。
どうやら商品目当てでリフに勝負を挑んだらしい。
リフ:「そうみたいですね。俺もドーナツ食べたいんで絶対負けない!」
ホルン:「こちらこそ…」
二人の間に闘志の火花が散る。
イオ:「二人とも頑張れー」
---
二人は音ゲーで勝負をすることになった。
ルールは一発勝負。リズムに合わせてボタンを押し、スコアの高い方が勝者だ。
リフとホルンは音ゲーの機械の前に立ち、両手を構える。
観客たちは賑やかな様子で喋っていたが、二人の放つ真剣なオーラに黙って息を呑む。
「それでは、はじめ!」
合図とともに曲が流れ出し、緊張感もマックスになる。
最初の音符が流れてきた。
---
結果は僅差でホルンの勝利だった。
ホルン:「やった…!勝った!」
ホルンは嬉しそうに賞品のドーナツを抱えている。
リフは意気消沈して魂が抜けたようにぼーっとしている。
リフ:「初めて負けた…あそこでこうしていれば…ぶつくさ…」
何やら一人反省会を開いている様子だが、気を取り直してホルンのもとにやってきて握手をする。
リフ:「楽しかった!またやりましょう!」
リフは少し悔しそうにドーナツを見たが、
ホルン:「私、絶対音感なんです。だから勝てたのかも。」
ホルンは賞品を鞄にしまいながら照れ笑いを浮かべる。
するとイオはずっと気になっていたことをホルンに聞いてみる。
イオ:「キサマ、以前にどこかで会ったことないか?」
イオは記憶を辿ろうとして顎に手を当てて考え込む。
ホルン:「キサ…いやまぁいいんですが……というか確かに…どこかで…」
ホルンはハッとしてイオの顔を見上げる。
ホルン:「…もしかして…え…?じゃあ、なんでここにいるの!?貴方…自分の国の戦争で、兵士として、出兵したはずじゃ···!?」
ホルンは何かを思い出したらしく、混乱した様子で言葉が途切れ途切れになっている。
その言葉を聞いてイオの記憶の蓋も開いたようだ。
イオ:「あぁ!もしかしてあの時のか…?」
---
---
---
今から4年前のある日のことだった。
アドバンポリスの外にある国で二人の兄弟が暮らしていた。
兄の名前はイオ、弟の名前はレオといった。
15歳のイオは13歳のレオとともに戦争の激しいこの国で兵士として活躍していて、上層部からも認められるほどの強さを誇っていた。
---
レオ:「にいちゃん!今日も倒した敵の数で勝負しようよ!負けたら料理当番ね!」
レオが無邪気な顔で物騒なことを言いつつ兄に駆け寄る。
イオ:「ボクに勝てると本気で思ってるのか?その提案…後悔すんなよ?」
イオはニヤリと笑って倒した敵の数を言う。
結局負けたのはレオで兄は誇らしげに胸を張る。
イオ:「やっぱりこのボクにはまだまだ追いつけないようだな☆」
はっはっはと高笑いするイオを、膨れっ面で見あげてレオは悔しそうに唇を噛む。
すると、近くで乱戦の音が聞こえてきた。
イオ:「ボクたちも助太刀に向かうか!よし、ここでの成果もさっきの勝負に反映させよう!ゲーム開始だ!」
イオは未だ膨れっ面のレオを見て、鼓舞させる言葉を放ってから戦場に向かう。
レオ:「よぅし!今度こそぼくが勝つ!」
二人は荒れ狂う戦場の地へと赴いた。
---
戦場に着くとあちらこちらで首領蜂火花が散らされていた。
イオとレオは武器を構えてニヤリと笑う。
イオ:「それじゃ、はじめだっ!」
レオ:「望むところだ!」
二人は縦横無尽に戦場を駆け回り、どんな巨漢でも易々と薙ぎ倒していく。
あっという間にここら一帯は血の海へと変貌した。
二人は一息ついて合流する。すると、
???:「たす…けて…」
どこかから少女のか細い声がかすかに聞こえてきた。
イオとレオは顔を見合わせて、その声の主を探し始める。
声を頼りに歩を進めていくと、肩を抱いて一人でうずくまっているイオやレオとあまり変わらないくらいの年頃の少女を見つけた。
イオ:「おい、キサ…キミ、大丈夫か?」
二人が近づくとその声に気がついた少女は途切れ途切れの声で何かを伝えようとしてくる。
???:「あ…あの、あの…」
その少女は二人の顔を見ずにただボロボロと涙をこぼして泣きじゃくっている。
その近くには大人の死体が二つ転がっていた。
イオ:「……。ちょっと待ってろ。大人を呼んでくる。」
もしかしたら少女の両親かもしれない、そう思ってイオは周りの大人に助けを求めにどこかへと走っていった。
レオは泣きじゃくる少女を泣き止ませるため少し話しかけてみることにする。
レオ:「キミ、名前は?」
ホルン:「…わた…私は、ホルン。ホルン・フローリア…貴方は?」
ホルンは涙を堪えようとして益々大粒の涙をこぼしながらも名前を言う。
レオ:「俺はレオ。…よかったらこれあげるよ。」
そういってレオは一つのドーナツをホルンに手渡した。シンプルで素朴な見た目のドーナツだ。
ホルン:「ありがとう…」
ドーナツを受け取ると、ホルンは少し落ち着いた様子で泣きじゃくるのをやめた。
レオはホルンの隣に座って空を見上げる。
レオ:「さっきの人はぼくのにいちゃん!名前はイオって言うんだ。ちょっとぼくの名前と似てるでしょ?戦場ではめちゃくちゃ強いけど、家ではとんでもなく優しくて。」
さっきまで人が大勢戦っていたとは思えないほど静かになった戦場を見て、レオは少しため息をつく。
レオ:「ぼくもあんなふうになりたいな。」
そんなレオを見てホルンは涙声で呟く。
ホルン:「貴方も強いわ…こんな戦場で人に優しくするのは難しいこと…それができるのは強い証だと思うの…」
貰ったドーナツを両手で持ってホルンはうずくまる。
ホルン:「私は…弱い。」
悲しみに暮れるホルンをどうしたものかとレオが戸惑っていると、イオが数人の大人を連れて戻ってきた。
イオ:「コイツらが避難所まで送っていってくれる。キサ…キミは安心してついていけ。」
イオが連れてきた大人たちは満身創痍のホルンに優しく声をかけて避難所へと向かっていった。
ホルンは時折後ろを振り返りながらレオからもらったドーナツを大事そうに抱えているのであった。
---
一年後、イオとレオは二人きりでアドバンポリスに移住した。
戦争が激化したので平和な地で安息を取ろうとしたのだ。しかしその数日後。
__レオは死んだ。
不運な事故だった。
新しく見つけた住処で少しずつ非常食の飴をつまんでいる時だった。
突然窓が怪物に破られ、レオの頭部を掻っ攫っていったのだ。
あまりに急な出来事だったのでイオの反応は遅れて目の前で最愛の弟を失ってしまった。
イオ:「…は?…レオ?…何がどうなって…」
突然部屋に飛び込んできた透明な怪物は牙を剥き出しにして三本の足で立っている。
背中から伸びる触手はレオの頭部を持ったまま。
イオ:「キ…サマ……ボクの弟に…何しやがるんダァッ!!」
鬼のような形相で舐めていた狐の形の飴を噛み砕き、イオはこの世のものとは思えない咆哮を放つ。
透明な化け物も大きく唸り声を上げてイオに立ちはだかっていく。
イオ:「『飴細工』」
出現した飴細工の狐はイオの思いを汲んだように透明な化け物をあっという間に粉々に粉砕した。
イオ:「…レオ。…クソッッ!!」
イオはなき別れになったレオの頭を優しく持ち上げて抱きしめる。
その瞳には黒い光が宿されているのであった。
ホルンの設定(キャラ原案:奏者ボカロファンさん)
https://tanpen.net/novel/f1ef6cc9-18c6-40f0-baa3-4c55b7044a00/
ホルンちゃんの登場ながらくお待たせしてすみません!ご参加ありがとうございます!
あと更新もしばらくぶりですね。少しサボっただけで文を書く勝手がわからなくなり、かなり苦戦しました…継続って大事なんですね…
キャラの過去編や深掘りのお話を書き終えたらそろそろクライマックスに入れそうなので最後までお付き合いいただけるととても嬉しいです!
(*ちなみに少し文の書き方を変えてみたので、以前の書き方の方が良かったと感じたら教えてくださると嬉しいです!何もなければこれからはこの書き方でいこうと思います!
ちょっと文章の雰囲気変わるかもしれません!)
第21話 災害
キャラ設定集です!
https://tanpen.net/novel/series/71e01e24-d6a8-43aa-a364-8348f3326862/
ちなみにまだ登場していないキャラも入ってます…
ホタテ型のクリアモンスターと対峙している面々。
最初に一撃を繰り出したのはレンだった。
レン:「『Snow Creation』!」
能力を発動すると、たちまち硬い雪玉を作り出し、それをクリアモンスター目掛けて投げつける。
バシュン!という音を立てて雪玉は殻に阻まれて粉砕してしまった。
レン:「これは相当硬いな。」
状況を冷静に分析してクリアモンスターの様子を伺う。
メイ:「硬くて攻撃が阻まれるなら…こうします。『レインボーゼリー:|赤《ロッソ》』!」
メイが能力を放つとクリアモンスターがものすごい勢いで爆発した。
リフ:「うわぁ!すごい力だっ!」
メイ以外の3人はあまりの風圧に吹き飛ばされそうになりながらも必死に耐える。
クリアモンスターの様子を今一度確認すると、
メイ:「だめ…ですか。」
多少の傷はついていたが、それでもまだ殻の中の本体にダメージは与えられていなかった。
メイ:「一応…動きは止めておきましょうか…『レインボーゼリー:|青《アッズーロ》』」
クリアモンスターは凍りつき、5分間は動けないようになった。
リフ:「俺の能力も本体が見えないと使えないし…どうしよ。」
ロアヌ:「とりあえず私も攻撃してみる。ランダムな能力だから何が出るかわからないけど…」
そう言ってロアヌは両手の平をクリアモンスターの方に向ける。
ロアヌ:「『マジックグミ』!」
その途端ロアヌの足元に魔法陣が広がる。色は緑色だ。
…しかし何も起こらない。
レン:「なんも起きないけど…」
ロアヌ:「あは。これ眠気が吹っ飛ぶ魔法だ。あ〜!すっきりした〜」
ロアヌは清々しそうに背伸びをする。
リフ:「しょぼいっ!」
ロアヌ:「仕方ないじゃん…ランダムなんだからさ…」
ロアヌは少し気を悪くしたようだ。
レン:「思ったより手強いし…雨もあってモチベーションがどんどん低下していく…」
メイ:「はぁ…」
全員疲れた様子で万策尽きてしまった。
するとその時だった。
突然近くで台風が発生し、リフたちの方へ向かってきた。
リフ:「えぇ!?なになに!?」
レン:「これ相当まずくないか。」
ロアヌ:「やっばぁ…」
メイ:「『レインボーゼリー:|黄《ヴェルデ》』」
メイの能力で4人はバリアの中に避難することができた。
障壁の中で台風が通り過ぎるのを待っているとクリアモンスターの真上から溶岩が流れてきた。
一同:「はっ!?」
流石のバリアもこれには耐えきれないと直感し、4人は即座に逃げ出した。
幸い台風は通り過ぎていたので吹っ飛ばされることはなかったが、
命からがら逃げ出した面々は信じられない光景に目を疑っていた。
ロアヌ:「何あの、風邪引いた時に見る悪夢みたいな状況!?」
レン:「肝が冷えた…」
クリアモンスターの方を振り返ると|外殻《がいかく》は溶岩によって炭になっており、
本体が剥き出しになっていた。
???:「今だよ!リフ!やっちまえ!」
するとどこからか聞き馴染みのない声が聞こえてきた。
リフ:「えぇ!?あ、うん!?『バルーンボム』!」
クリアモンスターの本体はリフの力によって爆散した。
キラキラとした粒が空から降り注ぐ。
???:「さすがだね。リフさん。」
突然、真後ろから声が聞こえて4人は振り向いた。
するとそこにはピンクのマフラーを巻いた猫とも狼とも言えぬ
60cm程の小さなモンスターが2体佇んでいるのであった。
リフたちは顔を硬直させて後退りした。
リフ:「新種のモンスターか!?」
戸惑いながらも新しいガムを口に入れ、攻撃の態勢を取る。
???:「ちょっと待ってよ!」
???:「僕たち悪い奴じゃないよ!?」
モンスターの見た目をした双子は焦って弁解する。
ディザ:「俺はディザ!双子の兄さ!」
スター:「僕はスター。双子の弟。よろしくね。」
ディザは顔の右半分が緑色、スターは顔の左半分が橙色だった。
二体とも黄色いコートを着ていて、腕が異常に長い。
レン:「…怪しすぎる。何よりなぜリフの名前を知っている?」
レン、ロアヌ、メイは戦闘態勢を解かずに二体を警戒する。
ディザ:「やっぱり…受け入れてもらえないか…」
スター:「僕たち、モンスターだもんね。仕方ないよ…」
二体はしょんぼりとした様子で肩を落とす。
リフ:「もしかして、さっきの台風と溶岩は君たちが…?」
リフが気になって尋ねると二体はうんと頷く。
ディザ:「そうだよ!せっかく助けてあげたのに…」
スター:「僕らはリフさんを助ける使命を背負ってここにいるんです!」
一同:「使命?」
リフたちは困惑して聞き返すが、全員雨に濡れているのでブルブルと震えている。
ロアヌ:「とりあえず悪い奴らじゃなさそうだし、一旦アジトに戻らない?」
ロアヌの一言にみんなは頷き、ドルチェネーロのアジトに戻ることにしたが
その頭上では謎の影が4人と2体を見下ろしているのであった。
ディザの設定(キャラ原案:奏者ボカロファンさん)
https://tanpen.net/novel/084b851c-3fc8-4133-8dd5-9e384ee4b11c/
スターの設定(キャラ原案:奏者ボカロファンさん)
https://tanpen.net/novel/0b31b525-595a-4535-b0b3-f743f5939d3a/
ありがとうございました!
第22話 落着
キャラ設定集です!
https://tanpen.net/novel/series/71e01e24-d6a8-43aa-a364-8348f3326862/
ちなみにまだ登場していないキャラも入ってます…
アジトに戻るとナナとミィ、そして見知らぬ顔の大人がいた。
ライアー:「お、君がリフか!よろしく!俺はライアーだ。」
ライアーと名乗った男は懸命に型抜きをしている真っ最中だった。
リフ:「…誰?なぜ型抜き?」
リフはその様子に困惑する。
ロアヌ:「あいつもドルチェネーロのメンバーだよ。ギャンブラーだからあんまり影響されないようにね…」
ロアヌがこっそりと忠告してくる。
ライアー:「聞こえてるけどー」
ライアーはジトリとロアヌを白い目で見た後、リフに向かって笑顔で答える。
ライアー:「なぜ型抜きしているのかって?それはだな…ちょっと待っててくれよ」
ライアーはいそいそと型抜きを終わらせる。
ライアー:「いくぞ!『|人生の賭博者《ライフギャンブラー》』」
彼がそう唱えた途端、ボロボロの姿だったミィの傷が癒えていく。
眠っているミィの表情は心なしか穏やかになっていくようだった。
周りのメンバーはその光景に息を呑む。
ライアー:「これが俺の能力、『|人生の賭博者《ライフギャンブラー》』型抜きに成功すると半径30mの生き物を回復させられるんだぜ!」
リフ:「スッゲー…」
ディザ:「おぉ!ドルチェネーロにはそんなおもしれー能力を持っている奴もいるんだな!」
スター:「侮れないですね。」
モンスターの双子は感心して唸る。
ライアー:「…って、うお!新種のモンスターか!?」
ライアーは驚いてのけぞった。
メイ:「デジャブ…」
レン:「だね。」
ディザとスターはとりあえずライアーに事の成り行きを説明し、本題に入る。
スター:「僕たちはとある森で暮らしてたんだけど、突然怪物ハンターに襲われてね。」
ディザ:「リフって人を助けるという使命を受けることで解放されたんだ。そんで、頑張って君を探してたってわけ。」
スターとディザは話を続ける。
ディザ:「もう気がついているかもしれないけど、俺らの名前を合わせると『ディザスター』、そう、俺らは災害魔獣なんだ。」
スター:「かといって、悪いことをしたりは全然してないですし、むしろすっごい良い子!」
ディザとスターはわかってくれ!と、必死に説明する。
レン:「うん、話を聞いていると悪い奴らって感じじゃないしな。」
レンは頷いて周りの反応を見る。
ロアヌ:「同感。」
ライアー:「災害魔獣?ってのは気になるけど危険ではないんだよな?んじゃ全然オッケー!」
メイ:「…」
ナナ:「ようこそ!ドルチェネーロへ!」
ディザ・スター:「よかった…わかってもらえて…」
双子のモンスターはそういうと白いグミを口に放り込んだ。
すると、みるみる二体の姿は変化し、やがて人の姿になった。
リフ:「えぇ!?人間になった!?」
ドルチェネーロの面々は驚いて腰を抜かす。
ディザ・スター:「へへ!びっくりさせちゃった?」
水色の髪の少年の姿になったディザと緑髪の少年の姿になったスターは
いたずらっ子のような笑みを浮かべている。
こうしてドルチェネーロのメンバは増えて、より一層賑やかになったのであった。
ライアーの設定(キャラ原案:海音 かいとさん)
https://tanpen.net/novel/ed691428-4f70-4680-b03a-0abe02fbf848/
ありがとうございました!
第29話 記憶〜レイ編〜
キャラ設定集です!
https://tanpen.net/novel/series/71e01e24-d6a8-43aa-a364-8348f3326862/
今回はレイくん視点です!
《エピソード.レイ》
片田舎のファミレスはなかなか人が来ない。
掃除をしたり外を眺めたりしながらレイは時間を潰していた。
今はバイト中だがやることもないので仕方がないのだ。他のもう一人の従業員も退屈そうにスマホをいじっている。
レイ:「誰か来ないかな。」
そうつぶいやいてみると、願いが叶ったように店内に客が入ってきた。
レイ:「いらっしゃいませー」
笑顔でお客様をお迎えすると、その客というのがまさかのリフだった。
レイは驚いて目を丸くする。
レイ:「リフ!?…どうしてこんな辺鄙なファミレスへ?」
レイの頭の中が疑問符で埋め尽くされる。
リフも同じく驚きながら、実は…と話し出す。
リフ:「実はかくかくしかじかで田舎のトンネルを探してて…で、その途中で具合が悪そうな人を見かけたから休ませようと思って。」
リフの後ろにはオリーブ色の髪の少女が項垂れた様子で具合が悪そうにしている。
レイはその姿に見覚えがあった。
レイ:「…ミオ…姉?」
ミオ姉と呼ばれた少女はその声に反応して顔を上げる。
???:「…レイ!?」
---
3人は誰もいないファミレスの窓際の席に座っていた。
レイはバイト中のはずだが、誰も咎める人がいないので普通にくつろいでいる。
レイと具合の悪い少女ミオは互いの顔をまじまじと見つめていた。
ミオ:「ゴホッゴホッ…まさかレイとこんなところで再会するなんて…」
レイ:「ほんと…信じられないね。」
ミオが咳をしながら話していると、レイが水を持ってきて彼女に渡した。
ミオ:「ありがと」
ミオはほんの少しだけ水に口をつけたが、ほとんど飲まずにそのままテーブルの上に置いた。
リフ:「ちなみに…二人ってどういう関係なの?」
リフは先ほどからずっと気になっていたことを尋ねる。
レイとミオは声を揃えて答える。
レイ、ミオ:「|姉弟《兄弟》だよ。」
---
レイとミオは双子の姉弟としてそこまで裕福でも貧しくもない普通の家庭に生まれた。
幼い頃はたくさん愛してもらった。双子というのは珍しいらしく、近所の人たちにも大層可愛がられていた。
しかし二人が5歳になったのを境に、二人は両親から虐待を受けるようになった。
それはひどいもので1日ずっと何も食べない日だってあったし、暴力だって受けていた。
児童相談所に駆け込んで、なんとか一命を取り留めることができたので二人は今生きている。
ミオ:「レイ、あんた彼女できたんだって?」
とある公園のベンチにて。
少し柄の悪い格好をしたかつてのミオは不機嫌そうな目でレイにガンつける。
レイは苦笑いを浮かべながら否定も肯定もしなかった。
ミオ:「彼女なんてやめとき。」
ミオは明らかに機嫌が悪い様子でそこらの柵を蹴った。
レイ:「ミオ姉こそ、そろそろ不良ぶるのはやめたら?」
レイは心配そうに姉の様子を見てため息をつく。
ミオも同時にため息をつく。
ミオ:「あんたに言われる筋合いないし…ゴホゴホッ!」
ミオの体調が急変して急に咳き込み始める。
レイは姉の背中を優しくさすりながら咳を鎮めるためにミオを水道の近くに連れて行く。
ミオが少し水を飲んでようやく咳が落ち着いてきた時。
レイの彼女︎:「あ。レイ!」
レイの彼女が偶然公園近くの道を通りかかり、レイに向かって大きく手を振ってきた。
その姿を見てレイは姉から離れて彼女の元へ向かう。
レイ:「ごめんミオ姉、僕行ってくる。」
そうしてレイは彼女の元に走っていってしまった。
ミオは一人、水道の横で立ち尽くす。
ミオ:「バカレイ…」
そう呟いたミオの表情はどこか寂しそうだった。
---
二人が中学2年生の頃。
レイは付き合っている彼女の家に押しかけていた。
レイ:「ねぇ、浮気してるって…ほんと?」
風の噂で聞いた話を鵜呑みにしていたわけではない。鵜呑みにしていなかったからこそ彼女に否定して欲しかった、だから家まで来て詰問したというのに彼女の口から飛び出したのはレイにとって信じられない言葉だった。
彼女:「そうだけど?」
レイの彼女は悪びれるふうもなく、ただ当たり前とでもいうようにそう答えた。
レイは目の前がぐらりと揺れるような錯覚に陥る。
彼女に否定してもらえなかっただけでなく、なんの未練もなさそうなのが相当ショックだった。
レイ:「僕のこと…嫌いになったってこと?」
彼女の真意を探るため、震える声でそう尋ねる。
彼女:「うーん…嫌いになったというか…他に好きな人ができたの。」
彼女の言葉にレイは首を振って否定する。彼女の肩を掴み、必死に言い聞かせる。
レイ:「ってことは…まだ僕のこと好きってことなんだよね?じゃあ浮気なんてやめて戻ってきてよ。このことは全部水に流すからさ…浮気相手のことなんて忘れてさ…もう二度とそいつとは会わないで。僕を一人にしないで…?」
レイは一気に捲し立てて、ハッと気がついた時にはもう遅かった。
彼女は呆れたようにため息をついてレイに冷たい視線を向けている。
彼女:「…そういうとこだよ。重すぎるの。」
レイ:「重い…?僕が…?」
レイはさらにショックを受けて彼女の方を掴んだまま身動きが取れなくなった。
すると彼女の新しい彼氏が家の扉を開けて入ってきた。
男:「君がレイ?…ふーん、奴隷にちょうどいいじゃん♪」
男は性悪な顔をしてレイを品定めするように見る。
レイは奴隷という言葉に嫌悪感を抱き、彼女を取られた悔しさも込み上げてきて男に殴りかかった。
しかしなすすべもなく強烈なパンチを左頬にくらい、目の前が真っ暗になった。
目覚めた時にはレイは二人の奴隷と化していた。
その日から彼女の家に軟禁状態になり、学校にもろくに行けなくなってしまった。
彼女たちが出かけている間に掃除や家事諸々やらされることになり、憎悪と嫉妬で心が蝕まれる。
レイ:「どうして…あんなやつのところに…僕はこんなに君のことを…__なのに__!」
軟禁生活の唯一の楽しみであるポケットに普段から忍ばせているチョコレートを奥歯で噛み締めながら、愛する彼女と憎たらしい男のことを考える。
レイ:「『スワンプチョコ』ッ!」
奇妙奇天烈な言葉を口走ったが、全てがどうでも良くなったレイは脱力してその場に座り込んだ。
しばらくして二人が帰ってくる予定の時間になった。
しかしいつまで経っても二人は戻ってこない。
レイは怪訝そうな顔をして外に出てみようと試みる。
いつも外側からチェーンがかけられているはずの扉が簡単に開いた。
レイ:「あれ…?外に出られる…」
数週間振りの外の空気を目一杯肺に取り込む。
レイは二人と鉢合わせるかもしれない恐怖を抱きながら挙動不審な様子で辺りを見渡して、誰もいないことを確認しつつ、夕焼けに照らされた道を全速力で駆け出していった。
---
その後の記憶はほとんどないようだ。
ただミオが大泣きしながらレイに抱きついていたことだけはレイの脳裏に強く焼き付いている。
ミオの設定(キャラ原案:くおるさん)
https://tanpen.net/novel/19a5139f-2f8f-4c16-bdfe-16114c6807eb/
ありがとうございました!
*追記
第23話、第24話のエピソードでローザさんの二人称に誤りがありました(リフさんであるべきところがリフくんになっていました)。
一人称、二人称とかの部分ってキャラの個性が出やすいのでとても重要なところなのに…気がついてからすぐに直しました!すみません!
第24話 白状
キャラ設定集です!
https://tanpen.net/novel/series/71e01e24-d6a8-43aa-a364-8348f3326862/
ちなみにまだ登場していないキャラも入ってます…
クリアモンスターと応戦するカシミアと出くわしたリフたち。
リフ:「カシミアさん!?」
カシミア:「って…ほわぁ!?リフくん!?…と誰ですか?」
カシミアはふわふわした髪を|靡《なび》かせながら、またふわふわとした煙を放っている。
近くには獅子の姿をしたクリアモンスターがいる。
リフ:「カシミアさんどうしてここに?ってかこの煙なに!?」
周りのメンバーは何が何だかわからないという困惑した表情で突っ立っている。
カシミア:「私は…休日出勤で。ここは私の仕事場が近くにあるから…ってあんまり近づかないで!巻き込んじゃう!」
カシミアは5人を制止してそれ以上近づかないようにと警告する。
するとカシミアの放つ甘い煙が風の影響でこちらへ向かってくる。
ミリィ:「ガリッ!『飴創作』…!」
ミリィは雨を力強く噛み砕き、盾を生成した。
煙は盾に遮られてなんとか5人は煙を浴びずに済んだ。
リフ:「カシミアさん!その力は?」
煙たい視界の中、リフは目を凝らしてカシミアに問いかける。
カシミア:「話は後!今はこの子をどうにか…キャッ!」
煙が|蔓延《まんえん》しているのでよく見えないが、カシミアが獅子のクリアモンスターの攻撃を喰らったようだ。
リフ:「カシミアさん!」
ジューン:「とりあえずあいつ、やっちゃおうか。」
ライアー:「サポートは俺に任せろ!『|人生の賭博者《ライフギャンブラー》』!」
ライアーは型抜きを取り出し、いそいそと型抜きを始める。
ローザ:「型抜き…?」
ローザは困惑している。
ミリィ:「あ…大変…さっきので飴最後だった…誰か、飴持ってませんか…」
ミリィは焦って周りに助けを求める。
ローザ:「一つだけならちょうど持ってます。どうぞ。」
ローザはポケットを漁り一粒の飴を見つけミリィに手渡す。
カシミア:「事情はわからないけど、必要なら私も2つだけなら持ってるわ。はい。」
煙で混乱した様子のクリアモンスターを気にしながら走り寄り、ミリィに飴を渡す。
ミリィ:「ど…どうも…」
周りをよく見ると煙は完全に晴れていた。カシミアの能力が切れたらしい。
ライアー:「おっし!型抜き完了!それじゃいくぜ!」
ライアーが型抜きを終えた瞬間、リフたちの体に力が|漲《みなぎ》ってきた。
リフ:「うぉ!スッゲー!バフかかった!ゲームみてぇ!」
リフは一人興奮して大騒ぎしている。
ライアー:「おもしれーだろ?そいじゃ、いくか!」
ジューン:「おっけ〜」
6人はそれぞれのお菓子を頬張り、獅子のクリアモンスターへと向かっていく。
ジューン:「『アインシュレーヴェン』」
ミリィ:「『飴創作』!」
ミリィは剣を生成し、ライアーに渡す。
ライアー:「サンキュー!おりゃぁ!」
ライアーはジューンの能力で白く燃え上がるクリアモンスターを切り付けていく。
クリアモンスターは強力な攻撃に怯むが倒れない。そして切りつけた部分が修復していく。
ジューン:「へぇ…なかなかやるじゃないすか。」
ローザ:「私も行きます。『スノウクイーン』」
ローザがクリアモンスターに触れて能力を発動すると、急にクリアモンスターが大人しくなった。
リフ:「なんで!?」
ローザはなんでもないというふうに
ローザ:「ライオンは寒さに弱いですからね。…どうやら弱点も見た目通りのようです。」
クリアモンスターは動きが鈍くなったがまだ立ち上がるようだ。
大きな咆哮をあげて襲いかかってくる。
カシミア:「『スウィートチャーム』!」
カシミアがそう唱えるとクリアモンスターの足元にベタベタとした強い粘着性のあるものがへばりつき、クリアモンスターは動きを封じられた。
リフはガムを3粒ほど頬張り唱える。
リフ:「『バルーンボム』!」
獅子のクリアモンスターは咆哮を上げながら破裂して、砂糖の粒のようにキラキラと散っていった。
6人はふぅ、と一息つき力を抜く。
リフ:「終わった…」
周りの景色は散々な状態だが、とりあえず一段落して6人はリラックスする。
カシミア:「…ってそんなことより、リフくんのこと!大丈夫なの?」
カシミアは心底心配そうな表情でリフの肩を掴む。
カシミア:「なんでここにきたの?さっきの力は?この人たちは誰?」
カシミアの弾丸クエスチョンにたじろぎながらもリフは正直に白状する。
カシミア:「こんな危険なことしてるなんて全然知らなかった…どうして…」
リフ:「…ごめんなさい。」
リフは黙っていた罪悪感で表情を暗くする。
その様子を見てカシミアは
カシミア:「そうなのね…だったら。」
カシミアは決意のこもった目で周りのドルチェネーロメンバーを見つめる。
カシミア:「私も、ドルチェネーロに入ります!」
リフ:「えぇ!?」
ミリィ:「突然です…」
ライアー:「今日二人目だな。仲間が増えるのはめちゃ嬉しいけどな!」
ジューン:「カシミア…さんはリフの保護者、ってこと?」
カシミアとリフは頷いて事情を説明する。
ジューン:「ふーん…なるほどね。それじゃリフの秘密とかも色々知ってるってことすか?」
ジューンは冗談まじりにそう言って笑う。
ローザ:「新人同士、よろしくお願いします。」
ローザは微笑んでそれから付け足す。
ローザ:「それと、リフさんにキツく言っておいていただきたいのですが。こちらでの活動が忙しいことは分かりますが、先週の課題が未だ提出されていないので忘れずにやっておくように、と。…進級にも関わりますからね。」
ローザとカシミアは白い目でリフを見る。
カシミア:「…リフくん。」
リフ:「あはは…」
リフは笑って誤魔化したが、その後積み上がった課題を遅くまでやる羽目になったのであった。
第35話 暴食〜前編〜
キャラ設定集です!
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アドバンポリスに解き放たれた無数のクリアモンスターたちは、日の暮れかけた空を縦横無尽に飛び回っていた。一部のクリアモンスターは飛び回りながらナナを追いかけてきている。
ナナ:「うわぁ!来ないでくださいぃぃ…!!」
ナナは今、河川敷の草むらの中をドルチェネーロの仲間を探しながら駆け抜けている。
ナナ:「えいっ!『ダークチェンジャー』!」
ナナはクッキーを頬張り近くにいたクリアモンスターたちをクッキーに変換した。
しかし、数が多すぎて一向に減る気配がない。
ナナ:「ひえーん…」
ナナが弱気になって泣きそうになっていたところ、道の向こうからこちらに向かってメイ、リオ、ミリィが走って向かってくるのが見えた。
リオ:「おー!大丈夫か?」
ミリィ:「今そちらに行きますぅ…!」
ナナは仲間と会うことができてホッとする。
メイ:「ナナさん後ろ!」
すると突然メイが鬼気迫る顔でナナに向かって叫ぶ。
ナナ:「え?」
ナナが振り返る隙もなくクリアモンスターがナナを飲み込む。
リオ、ミリィ、メイ:「!?」
クリアモンスターに飲み込まれたナナは気を失っている様子だった。
それを見ていた3人は急いで救助に向かう。
メイ:「『レインボーゼリー:緑』!」
リオ:「『ライフクリエーション』!」
ミリィ:「『飴創作』!」
3人はそれぞれゼリー、ミニりんご飴、普通の飴を口に放り込み、ナナの方へと駆け出す。
するとナナを飲み込んだクリアモンスターが突如ナナの形に沿うように変形した。
その中でナナがかすかに微笑む。
ナナ:「`もっとお菓子ちょうだい?`」
ナナは今まで見たこともないような邪悪な表情をして瞳を開いた。
その目は全てのものを食らってしまいそうなほどの強いオーラを秘めていた。
ミリィ:「ど…どういうこと…ですか!?」
救助に向かっていた3人はナナの放つ邪悪なエネルギーに怯んで足がすくみ立ち止まる。
リオ:「いつものナナじゃない。」
3人が動けないままでいると、ナナの姿がみるみるうちに変化していった。
|髑髏《どくろ》マークが刻印された羽、頭には大きなツノが二本、そして虎の尻尾が生え、歯はワニのような鋭い牙に変わったのだ。
そしてナナは不敵な笑みを浮かべながら再びこう言った。
ナナ:「`…とりあえずお菓子ちょうだい?`」
邪悪ながらも穏やかな笑みで3人に向かって話しかけてくる。
3人は困惑してナナの様子を観察する。
ナナ:「`私、本当に空腹なの。君たちの持っているお菓子、くれない?`」
まるでロボットのようにひたすらに同じようなことを言い続けるナナの目は虚ろだ。
そして答える暇もなくナナは猛火を放ちいながら襲いかかってくる。
メイ:「火っ……!」
ナナが火球を投げてよこした時、メイはなぜか動かなくなった。
リオ:「おいっ!!」
咄嗟にリオがメイを引っ張って後ろに下がらせる。
メイの様子がなにやらおかしい。
ミリィ:「ど、どうしました!?」
ミリィが心配そうにメイの様子を伺うが、メイは依然として固まったままナナの放つ炎を見つめている。
よく見ると額に汗が滲んでいる。普段冷静なメイからは想像もつかないほど焦っているようだ。
リオ:「メイ。何か事情があって戦えないのなら下がってて。ナナのことは俺とミリィでなんとかするから…」
ミリィ:「無理は…しないでください…」
リオとミリィがメイを案じて休むように言う。
しかしメイは首を振って一歩前に進み出た。
メイ:「…いえ、大丈夫です。メイが逃げるわけにはいきませんから。」
そして炎の矛先を向けるナナに向かって構える。
メイ:「『レインボーゼリー:青』!」
メイが相手の動きを止める能力をナナに向かって発動する。
ナナ:「`!`」
ナナは瞬きの間に凍りついた。
ミリィ:「だ、だだ大丈夫ですかっ?」
ミリィは心配して駆け寄ろうとするがリオがそれを制止する。
リオ:「無闇に近づかない方がいい。」
固まって動かなくなったかと思ったが、すぐに氷は溶け始める。
そしてナナは急に笑いを堪えるように腹を抱えて震え出した。
その笑いは徐々に大きくなっていく。
3人はどうしたら良いものかと立ちすくんだ。
その間もナナは笑い続けていたが突如笑うのをやめて3人の方を見据えた。
ナナ:「`お菓子くれないならイタズラしちゃうからね。`」
---
メイ:「とにかくっ…ナナさんの動きを止める、それが最優先事項です。」
ミリィ、リオ:「はい!」「うん。」
3人は未だ止まることを知らないナナの攻撃と、クリアモンスターの猛追から逃げつつ会議している。
メイ:「動きを止められるのはメイの能力だけ。だから二人はメイが動きを止めている間にナナさんを取り込んだクリアモンスターを引き離してください。」
ミリィ:「でも…どうやって…?」
3人はクリアモンスターの群れとナナの放つ火球を避けるが、さすがの猛攻に息も絶え絶えだ。
するとリオが閃いたように顔をパッと明るく輝かせる。
リオ:「それじゃあさ、ミリィと俺の能力でナイフ作ってさ、外側のクリアモンスターの薄皮を切ってナナを外に出すってのはどう?」
ミリィ:「ナイフなら想像で作り出せそうです…!」
メイ:「いいと思います。」
リオとミリィの二人はそれぞれ思い思いのナイフを作り出し、片手に構えた。
ナナ:「`3人で内緒話して私は仲間外れなんだ。お菓子もくれないし…いじわる!`」
ナナはだんだんと機嫌が悪くなってきた様子で3人を恨めしそうに見下ろしている。
3人は顔を見合って合図する。
メイ:「二人とも、メイから50m以上離れてください。…『レインボーゼリー:藍』!」
メイが呪文を唱えると、ナナは困惑した表情でキョロキョロと周りを見回し始めた。
どうやら視覚が機能しなくなったようだ。
その隙を見計らってリオとミリィが飴で作った小型のナイフを片手にナナに向かって走り出す。
二人がナナを包むクリアモンスターの薄皮を切り裂こうとしたところ、
ナナ:「`そろそろ限界だよ。もう我慢できない!`」
ナナが痺れを切らしたようにそう言い放った。そして一瞬その場の時が止まったような威圧感に包まれる。
ナナ:「`ダークチェンジャー`」
ナナが能力を発動する。すると普段のナナの技とは比にならないほどの強力な力が解き放たれた。
周りにあった木や家々、電柱や鳥などもクッキーに変わっていく。
ナナの至近距離に居た二人にもその影響が及ぶ。
メイ:「『レインボーゼリー:黄』!」
しかしその瞬間にメイが咄嗟の判断で二人の周りに障壁を貼り、リオとミリィの二人を庇った。
リオ:「メイ!」
ミリィ:「メイさんっ!」
二人は自分以外を守って攻撃をもろに受け倒れるメイの方を振り返る。
身体の末端から狐色に染まっていき、やがてこんがりとした固い質感に変わっていく。
メイ:「二人とも…ごめ…」
メイの姿はクッキーへと変貌し、そして動かなくなった。
投稿期間しばらく開いてしまいすみません。
言い訳をさせてもらうと、どうも続きのシナリオがうまくいかず…迷走中です!
やはりクライマックスなのでしっかり考えて書きたいのですが難しい!なるべく早く書き上げたいとは思っているのですが…
そしてまた長らく投稿できないことがあるとは思いますが、読んでくださっている方いらっしゃいましたら最後まで見届けてくださると嬉しいです!
僭越ながらお詫びのイラストです…
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これからもどうぞよろしくお願いします!
第39話 怠惰〜前編〜
キャラ設定集です!
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〜39話主要人物〜
◉イオ
◉ホルン
◉セイム
「イオっ…」
ホルンは片膝をついてコンクリートの地面の上にうずくまっていた。
その様子を見たセイムはホルンに駆け寄る。
「大丈夫か!?」
声に振り返ったホルンはギョッとする。男かと思ったら美少女がそこにいたからだ。
セイムはホルンの顔を見て、言いたいことを察して先に名乗る。
「俺はセイム。一応男でーす。と言うか今はそんな場合じゃなくて…お姉さん立てる?早くにげて」
セイムはホルンに肩を貸そうとするが彼女はそれを拒む。
「私…ここから離れるわけにはいかないんです。」
そしてその目線の先には、
「`あー…だりぃ。`」
とてつもなくだるそうな様子のイオが高いところから、人を蔑むかのような目をしてこちらを見下ろしていた。
体は元々の巨躯よりもさらに一回り大きくなっており、鋭い爪と頭の捻じ曲がったツノが黒光りしている。
まるで熊、牛、|驢馬《ろば》、ナマケモノを混ぜ合わせたような見た目をしているかのようだ。
「…お姉さん、あいつの知り合い?」
「えぇ、あ、私はホルンと言います。…もしかして『ドルチェネーロ』の方ですか?」
「よく分かりましたね。その通り。だからここは俺に任せて…」
「私もイオを助けたいんです、私も戦える力は持っています!『|想像制作《クリエイト》』!」
ホルンは能力で手元にピストルを出現させる。そして真剣そのものの目で必死に訴えかける。
セイムは一瞬目を丸くしたが、ホルンの真剣さに頷いて
「まぁ、今は猫の手も借りたいところだしな。よろしく頼みます。」
二人は共闘する事になり、イオに向き直る。
イオは相変わらずダラリとした猫背のまま、だるそうに嫌な顔をした。
「`あー…俺のことはほっとけってんだが`」
ホルンがイオを見上げて言う。
「あなたを元に戻すまで放っておくわけにはいかない!」
「さっさといつものイオに戻ればほっといてやる。」
セイムもミニサイズのシュークリームを頬張りながらイオに向かって言い放つ。
イオは心底めんどくさそうにため息をついた。
そして瞳が鈍い赤色に光ったかと思うと、瞬間もの凄い圧力が二人を襲った。
「なんだこれっ…!」
「立ち…上がれないっ…」
二人は凄まじい圧力になす術もなく地面に押し付けられる。
「バッカみたいな…力だな!?」
セイムはそう言いつつも、空中でダラダラとツノをいじるイオに狙いをすます。
「『インフェルノ…クリーム』!」
なんとか技を放ち、イオを巨大なシュークリームに閉じ込める。
しかし圧力の威力は落ちることもなく、依然身動きができないままだ。
「チッ…」
セイムが舌打ちをして項垂れる。
しかししばらくするとシュークリームが微かに動き出した。
そして四方八方に爆散して飛び散った。
それと同時に二人を襲っていた圧力も消え去る。
「`ゲホッゴホッ…`」
中から咳き込んだイオがヨロヨロと出てきた。
「`めんどくせぇな…`」
するとホルンがハッとする。
「もしかして、今のイオは必要以上の動きはしない超省エネモードなのかもしれないわ。」
「だからギリギリまでシュークリームの中から出てこなかったのか?」
セイムは顎に手を当てて考え込む。
「それじゃもしかしたら………お姉さん、俺の作戦聞いてくれる?」
ホルンは真剣な表情で頷いた。
第36話 色欲〜前編〜
キャラ設定集です!
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リフが走り去った後しばらくのこと。
突如として現れたクリアモンスターの群れがローザ、ファイ、シェフリの周りを飛び交っている。
ローザ:「シェフリさん。ファイさんを頼みます。ここは私が請け負います。」
ローザは戦いの後で疲れているシェフリと、力を使った後で自由に動くことのできないファイを庇うように構える。
シェフリ:「先生、この数を一人で相手にするなんてそんな無茶な…」
するとファイが固くなった体を無理矢理に動かして、再び能力を発動させようとする。
しかしローザは無理をしようとする二人を冷静に|宥《なだ》める。
ローザ:「生徒を守ることは教師の役目です。お二人にはもう戦えるほど力が残っていないでしょう。」
そう言われた二人は返す言葉もない様子で俯いた。
ファイ:「だが、俺もできることはやる。」
シェフリ:「僕も。」
ローザは少し考えた後、静かに頷いた。
ローザ:「…わかりました。しかし無理はしないようお願いします。」
3人はクリアモンスターと向き合い、相対した。
ファイはキャラメルを、シェフリはグミを、ローザはアイスクリームを手に取る。
ローザ:「アイス…溶けていても効果はあるのでしょうか。」
シェフリ:「さぁ?」
ファイ:「………」
しばらく外に置いていて溶けかけていたアイスクリームを見てそんな心配をよぎらせながらも、それぞれにお菓子を頬張る。
ローザ:「『スノウクイーン』」
ファイ:「『|𝕯𝕺𝕽𝕺𝕽𝕴《ドロリ》』」
シェフリ:「『|𝓖𝓤𝓐𝓡𝓓𝓘𝓐𝓝《ガーディアン》』」
能力を発動させてローザを筆頭に大量のクリアモンスターたちを次々に倒していく。
しかし倒しても倒しても一向にいなくなる気配はない。
ローザ:「かなりの苦戦を強いられそうですね…」
全員が息を切らし始めたそのときだった。
満身創痍のファイのところに一体のクリアモンスターが突進してきたのだ。
ファイは突然のことに反応が遅れてしまった。
シェフリ:「ファイくんっ!」
するとクリアモンスターに襲われそうになっていたファイを突き飛ばしてシェフリが身代わりになった。そしてクリアモンスターに飲み込まれる。
ファイ:「シェフリッ!」
ローザ:「シェフリさん!」
クリアモンスターに飲み込まれたシェフリは苦しそうにもがいていたが、やがてぷつりと糸が切れたように動かなくなった。
ファイ:「テメェ!!」
シェフリを助けるためにファイがそのクリアモンスターに向かって捨て身で突進していくが、クリアモンスターに飲み込まれたシェフリは顔を両手で覆い、唸り声を上げ始めた。
そして足はガチョウのような容貌になり、蛇の尾が生え、両肩のあたりからは羊と牛の顔がそれぞれ現れた。そして手元には槍が握られている。
ファイはシェフリのその変貌ぶりに目を見開いて身動きが取れなくなった。
シェフリはしばらく動かなくなり、やがて動いたかと思うとファイを見つめてこういった。
シェフリ:「`opport oilgov iT`」
ファイ:「……は?」
困惑した表情でファイはシェフリを見つめる。
ローザも同じく訳がわからないと言う様子だったが、なんとか解読しようと試みていた。
その間にシェフリはファイの近くに歩み寄る。
シェフリ:「`oim ieS`」
そしてファイに向かって満面の笑みで__
槍を突き刺した。
ファイ:「!!」
ファイは危険を感じて横に転がりかろうじて避けられたが、先ほどまでの戦いが響いているらしく機敏さは失われているようだった。
ローザもファイも何がどうなっているのかさっぱり見当もつかないという表情で、豹変したシェフリをただ呆然と見つめている。
その間にもシェフリは何やら奇妙な言葉をつらつらと吐き続けていた。
しかしその表情はどこか、|恍惚《こうこつ》としていて幸せそうにも見えた。
ファイ:「シェフリ!テメェ、一体どうしちまったんだ!」
ファイがそう尋ねてもシェフリは自我を失ったようにただ不気味な笑みを浮かべているだけだ。
そして手に握った槍をファイに向けて身軽な動きで再び突進してくる。
ローザ:「まるで…シェフリさんではないみたいです…」
ローザは考え込んだが、ふとあることに気がついた。
シェフリはファイのみを認識しているかのように、ただひたすらファイだけを攻撃し続けていたのだ。そしてローザはある一つの結論に辿り着く。
ローザ:「ファイさん、これは私の憶測ですが、今のシェフリさんにはあなたしか見えていないのかもしれません。」
その言葉を聞いたファイは無表情だったが、少しげんなりしたようだった。
ファイ:「__ん__でだよ…」
ファイがげんなりとしても、シェフリは攻撃の手を緩めない。
このまま避け続けるのは体力的にも限界が近いファイには厳しいと判断したローザは、早急に解決の糸口を見つけようと思考を巡らせたが、その間にもクリアモンスターたちはローザたち目掛けて攻撃をけしかけてくる。
猛追を|躱《かわ》し、|去《い》なしながら考える。
ローザ:「シェフリさんを取り込んだクリアモンスターを引き離す方法……」
するとあの飲み込まれる一瞬の隙に、ちらりと気になったものが見えたことをローザは思い出す。
ローザ:「そうです…そういえばあのとき………!」
ローザはシェフリとファイを助けられる可能性のある方法を見つけ、実行に移すのであった。
短いかもしれませんがお許しを!
最近脳の衰えを感じますねぇ…
インプットが足りていないのかもしれません。もっと本読みます。
ちなみに
シェフリくんが発した謎の言葉についてですが、どーしても解読したい方だけこの下のヒントを読んでください!
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ヒント!
『ペトロクロス』
もしわからなかったり聞きたいことがありましたら、ファンレターで教えてください!
(*小説内で答えを語ることは 今の所 しないつもりです)
第37話 強欲〜前編〜
キャラ設定集です!
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※お知らせ※
今回からスマホでも執筆をすることになりました。それに従い、急ですが台本書きを辞めさせていただきます!登場人物が多いので、誰のセリフかわからなくて大変なこともあるかもしれませんが、なるべくわかりやすくなる工夫を模索していきます。何卒よろしくお願いします!
〜37話主要人物〜
◉ジューン
◉ロアヌ
◉レン
「`あっははっ!あれもこれも全てあたしのもの!`」
ロアヌとレンが合流し、二人で周りを飛び回るクリアモンスターを相手していた時のことだった。
突然頭上から聞き慣れた声がして見上げると、そこには邪悪な笑みを貼り付けた黒い髪の女が宙に浮かんでいた。
「ちょ、ちょっと!あんたジューン!?」
「空を飛んでいる…?」
ジューンは烏のような黒い羽を纏い、そして蜘蛛のような長い足を背中から生やしている。
両手には自身の身長近くある針鼠のように刺々しい針を持ち、その針の先には数体のクリアモンスターが刺さっていた。
ロアヌとレンは彼女のただならぬ様子に驚いて言葉を失う。
その間もジューンはクリアモンスターを串刺しにして楽しそうに笑い声を上げ続けている。
「`欲しいものはすべて手にいれる。二度と返さない!`」
二人は様子のおかしいジューンを少しの間警戒して見ていたが、意を決して声をかける。
「ジューン、一体どうしたの!?」
声に気がついたジューンは上からロアヌとレンを見下ろす。
すると口の端を釣り上げてニヤリと笑った。
「`…なぁに、鬼を見るみたいな目。そうだ、キミたちもあたしのものになってよ。`」
ジューンはそう言って両手の針を持ち替えて二人を鋭く見つめ、瞬間襲いかかってきた。
二人は突然のことに驚きつつもその攻撃を避けてジューンと距離を取る。
「話は、通じないのか。」
「…そうみたいだね。」
二人は渋々ジューンに向かって戦闘体制をとる。
それぞれスノーボールクッキーとハードグミを口に放り込む。
「ジューン、仲間だからって、|刃《やいば》を向ける奴には容赦しない。」
「`お菓子美味しそ。欲しい。ははっ…`」
「『マジックグミ』」
「『Snow Creation』」
ロアヌが足元に白色の魔法陣を出現させると、瞬く間にロアヌの姿が透過して見えなくなった。
「`…へぇ、いい能力持ってるじゃないすか。…欲しいなぁ。`」
ロアヌは透明のままジューンに近づき、さらに青い魔法陣を発動させる。
魔法陣から渦潮が現れてジューンを巻き込んだ。
「`あたしが火使いだから水攻めってことかぁ、いいね`」
間髪入れずにレンが巨大な雪玉をジューンに向かって投げつける。
「ジューンさんごめん!」
雪玉はジューンの頭にヒットして粉々に砕け散った。
一瞬気を取られそうになったジューンだったが、たちまち立ち直って余裕の笑みを浮かべた。
「`二人ともすごいね。その力、あたしのために使って欲しいっすよ。でも無理なんすね?`」
ジューンはそう言って、凄まじい速さでレンとの間合いを詰める。
そして素早く生成した火炎をレンにぶつける。
「いっ…!!」
「レンっ!!」
レンはジューンの放った火炎を真正面から食らって吹っ飛ばされる。
ロアヌはそれを防ぐことができずにレンの方を見た。
レンはかろうじて受け身は取ったが、背中を強く打ち付けて気を失いかけている。
「レン!」
意識が朦朧とするレンを引き止めるように、ロアヌはレンを支えて声をかける。
「…ねぇ…さん、」
ロアヌの声かけも虚しく、レンは気を失ってしまった。
---
---
「ねぇ、レンには夢があるの?」
朧げな景色の中でレンの姉が子供をあやすように優しく問いかける。
「僕の…夢は………歌手になることかな」
そう答えるとレンの姉は驚いた顔をして、少ししてから微笑んだ。
そして優しく抱きしめた。
「私と同じじゃないの」
輪郭のはっきりしない、本当にあったのかどうかもわからない記憶が、夢のようにレンの頭に雪崩れ込む。やがて白い湯気のようなもやが、その記憶すらも覆い隠してしまった。
「…真っ白だ。」
掴みどころのないぼやけた空間を歩き出す。
すると、少し先で幼い少女の鳴き声が聞こえてきた。
「あああぁっ…!おかぁさん、おとぉさんっ!」
その子はレンの妹らしかった。白くまどろんでいて顔はよく見えないが、聞き慣れた声だった。
レンは妹に近づく。
「辛かったね。僕がいるよ。」
そう言って優しく抱きしめる。
「おねぇちゃんっっ…!ひっく…うぅ…うわぁん…!」
次に目を開けた時には何もかもが消え去っていて、ただ白とも黒とも赤とも青とも言えないような空間が広がっていた。
「ここはどこ?…僕は、何をしていたんだっけ…」
どこからか微かに、安心するような声掛けが聞こえてくる。
その声は何度もレンの名前を呼んでいる。
「ねぇ、さん…どこにいるの…」
レンはそのままコトリと、夢の中で眠りに落ちていった。
更新お待たせしてすみませんでした!(何度目だろう…)
今回台本書きを廃止してみた感想ですが、書く側はとても楽になるもんですね!
しかし読み手の皆さんにとってはどうなのか…
どのキャラのセリフか分かりやすかったでしょうか?
もし読みやすくなるアイデアなどがありましたらぜひ教えていただけると嬉しいです!
第38話 憤怒〜前編〜
キャラ設定集です!
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〜38話主要人物〜
◉ミディアメスト
◉ディザ
◉スター
◉ライアー
ディザとスターは飛び交うクリアモンスターたちをまるでゲームでもしているかのように易々と打ち落としていく。
「この調子だと俺の勝ちだな。」
「ム、まだ勝負はわからないだろ。僕にも勝機はある!」
ライアーは近くの電柱に寄りかかって、その様子を平和そうに眺めていた。
「やっぱ強キャラがいると安心だな〜、運良く合流できてよかったぜ。」
すると、突然いつもと違った雰囲気のミディアメストが近づいてきた。
よく見るとミディアメストは狼男のような風貌をしており、ドラゴンの尻尾とユニコーンの角が生えている。
「んお?ミディじゃん。こっちは人手足りているからだいじょ…」
するとミディアメストは鋭い目をして一人と二体を睨んだ。
睨まれた面々の背筋に悪寒が走る。
「`『フラックスナッグ』`」
ミディアメストはウエハースを噛み砕き、能力を発動させる。
ライアーを挟むように二枚のウエハースの壁が現れた。
「おっと!」
ライアーは挟まれる前に避けることができたが、ウエハースが閉じた衝撃で中のチョコレートとウエハースのくずが飛び散る。
「わーチョコだ〜!おいしー!」
「ディザ、そんなこと言ってる場合?」
「`いつでも呑気ですね、あなたたちは。`」
益々機嫌が悪くなった様子でミディアメストは眉間に皺を寄せた。
ディザとスターはきょとんとしている。
「型抜きってウエハースに似てるよね〜」
ライアーが冗談を言うが、ミディアメストの耳には入っていないようだ。
「ミディ、なんかいつもと違うな。偽物、なのか?」
その間にもミディアメストは攻撃を仕掛けてくる。
ウエハースが四方八方からライアーたちを取り囲む。
「見た目もいかつくなってるし…冗談も通じないなんておかしい!」
「ミディさんが好きなウエハースについてくるカードでも見せてみる?」
そんなことを話していると、ミディアメストは痺れを切らしたように言い放つ。
「`…あ~あ、つくづく時間の無駄ですね。もう少しサクッと死んでしまってもいいのに`」
ウエハースが横からプレス機のように勢いよく閉じる。
一人と二体はかろうじて避けることができたが、そもそも戦闘要員ではないライアーは少し足首を捻ってしまったようだ。
「イッテ…」
「大丈夫かよ!」
「回復回復…」
二体は顔を見合わせる。
なぜなら自分たちを回復する能力はあるが、人を直す力はないからだ。
「いいよ、俺のことは放っておいて。とりあえず今はミディを元に戻してやってくれ…」
ライアーはヘラヘラと笑いながら、しかし真面目さを含んだ瞳でミディアメストの方を見る。
ミディアメストは何やら苦しそうに頭を抱えている。
「`何もかもっ…消してしまいたい…!!`」
ディザとスターは先ほどまでとは打って変わって真面目な様子で頷いた。
「わかった、俺(僕)たちに任せて!」
今回は短めですが二話投稿するのでお許しを!
そしてだんだんマンネリ化してきてる気がして心配ですね。
やっぱり長期連載の漫画家さんとかすごいって実感します。どんな脳をしていたらあんなに内容が被らない作品が書けるのか…
あとライアーさんリオくんユキちゃんの資料を紛失(おそらく考案者の方々がアカウントを消してしまったようです)してしまったので、過去を書くことができなくなってしまいました…
書き写していなかったこちらの不手際です。誠に申し訳ありません!
第25話 聖夜〜前編〜
キャラ設定集です!
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ちなみにまだ登場していないキャラも入ってます…
今日はクリスマス。
リフはカシミアの家で目覚めるが、あまりの寒さに再びふかふかの布団の中に潜り込む。
昨日夜遅くまで勉強したのも相まってさらにふとんが心地よく感じる。
すると下の階から優しい声が聞こえてくる。
カシミア:「リフくーん!」
リフは居候のため迷惑をかけたくないと思い、だるそうにしながらも布団から抜け出す。
ぼーっとした頭を起こすため、窓からその景色を見て伸びをする。
リフ:「…眠いー」
そう一人呟きながらボサボサの寝癖を直しつつ下の階へと降りていった。
---
リフ:「おはようございます。」
カシミア:「おはよう。ご飯用意してあるから、顔洗ったら食べてね。」
カシミアは穏やかに微笑んでリフを洗面所へと促す。
リフ:「はーい」
リフはノロノロと洗面所へと向かっていった。
---
顔を洗いながらリフは考え込む。
ネイタスのいない朝は何度目だろうか、本当に無事なんだろうか。
いまだにこれといった手がかりは掴めておらず、リフは少しずつ焦りを感じてきていた。
リフ:(早く見つけないと…手がかりを。)
朝から暗い気分になりつつも、適当に身だしなみを整えてカシミアの待つテーブルへと向かう。
カシミア:「リフ君、昨日のことなんだけど…」
二人が机を挟んで向かい合わせ座ると、カシミアは真面目な顔をして話を切り出す。
カシミア:「ごめんね。気づいてあげられなくて…まさか一人で戦っていたなんて。…いや、『ドルチェネーロ』の皆さんがいたんだろうけど…」
カシミアは申し訳なさそうに謝る。
カシミア:「今日、ドルチェネーロさんのところに行こうと思うのだけど、リフくんもついてきてくれない?」
リフ:「もちろん!俺も行こうと思ってたし。」
リフは二つ返事で了承した。
---
ドルチェネーロのアジトに着き、リフは階段を上り扉を開け放つ。
リフ:「おはよ…」
リフがアジトに一歩足を踏み入れるとメンバー全員が一斉にクラッカーを鳴らした。
メンバー:「リフ!誕生日おめでと〜!!」
リフは突然のことに腰を抜かして驚く。
リフ:「え…あ、…ん?どういうこと?」
カシミア:「実は…昨日リフ君の誕生日のこと成り行きで話してたら祝おうってなって…」
カシミアがニコリと笑ってそう話すと、セイムが
セイム:「お前、最近元気なかったみたいだしな。まぁ、サプライズだ。」
と言ってリフの頭をポンポンと叩く。
リフ:「そういえば俺、今日が誕生日だったんだ…忘れてた。」
ライアー:「ショッピングにでも行こうぜ!気分転換も兼ねてな!」
---
かつて大量クリアモンスター発生事件が起きたあの西地区のショッピングセンターに着くと
未だに少し崩れた壁や壊れたオブジェなどあったが、
イルミネーションがキラキラと輝いていてクリスマス一色にデコレーションがされていた。
リフ:「うわぁ…めっちゃ綺麗じゃん!」
イオ:「これがクリスマスツリーってヤツか!でっけぇな!」
ライアー:「あ!向こうに『年末宝くじ』あんじゃん!行ってくる!」
スター:「なにそれ?面白そー!」
ライアーとスター(人の姿)は楽しげな様子で宝くじの売店に向かっていった。
ショコラルテ:「あの二人ここへきた理由忘れてるのかしら…」
周りのメンバーが呆れる中、ユキとリオはなぜかいい感じになっていた。
リオ:「ツリー綺麗だね〜…ユキの方が綺麗だけど!」
リオが巨大なデコレーションツリーを見上げて言う。
ユキ:「またいつもの冗談?」
ユキは白いため息をついてそっぽを向く。
リオ:「いや。本当さ。」
リオはいつもとは違う真剣な顔でユキを見つめる。
ユキ:「……え?」
ユキがその言葉に反応した時にはすでにリオは他のメンバーと談笑しに行っていた。
ユキはいつも崩さない真顔を少し緩めたのであった。
---
レイ:「何か欲しいものとかないの?」
誕生日プレゼントを買うため、レイがリフに欲しいものを尋ねる。
リフ:「それじゃ…服が欲しいかな。」
リフは自分の着ている服を見て言う。
リフ:「この服…小学生の頃から着てるからさ。」
周りのメンバーは驚いた顔をする。
ローザ:「物持ちがいいんですね。…しかしそんなに長く着られるものなんですか?」
ローザが質問するとリフは少し照れながら言う。
リフ:「実は小学生の頃から5~6cmくらいしか身長変わってなくて…」
ナオ:「そ〜なの?確かに小柄っちゃ小柄かも?」
ナオはニヤリと笑って少しからかう。
リフ:「やめろ〜!これからもっと伸びるんだよー!」
ナナ:「身長小さいって言われるの…やだよね…私からしたらみんな大きいけど。」
ディザ・スター:「わかる〜!」
4人は意気投合して頷く。
するとファイが手を叩いて催促する。
ファイ:「時間ねェんだ、とっとと行こうぜェー」
シェフリ:「はい♡」
ファイ:「お前…くっつくなって言ってんだろうがあ…!」
シェフリ:「いいじゃないですか。だって今日はクリスマスですよ?」
ファイ:「んなこと知るかっ…!」
相変わらず離れたいファイと離れたくないシェフリで格闘している。
ミディアメスト:「いこいこ〜」
ジューン:「ほっとこ〜」
ファイ:「オイッ”!無視すんなァ”!」
シェフリの首をマフラーで締めているファイを放って、メンバーはブティックエリアに向かう。
---
多種多様なブティックが揃っているエリアにつくと、
カシミア:「まあ、ステキ!!」
カシミアは瞳をキラキラと輝かせて服に飛びつく。
カシミア:「これもいい…これも素敵…ふむふむなるほど、最近はこのレイヤードした服が流行っているのね…ぶつくさぶつくさ」
カシミアはリフ顔負けの様子で早口で何か語っている。
カシミア:「…貴方、この服とっても似合うんじゃない?着てみて!」
そして大量の服をリフに押し付けてくる。
リフ:「あ…はい。」
するとシェイが服を持ってリフの方へ向かってくる。
シェイ:「こんなのどうだ?クールじゃん?」
シェイはいつもの笑顔でリフに自分でコーディネートした服一式を見せる。
それは赤と紫を基調としたコーデで、節々に|髑髏《どくろ》のあしらいが施されており、
お世辞にもオシャレとは言い難いものだった。
リフ:「だっさ!無理無理絶対着たくないっ!」
リフはシェイの持つ服から距離を取る。
ロアヌ:「てかそんな服…どこから持ってきた…逆に才能だよ。」
ミリィ:「すごく…個性的です…」
メイ:「ださ。」
ショコラルテ:「ええ、ファッションセンスが壊滅的ね。」
イオ:「コイツ、ネーミングセンスもないんだよー」
シェイ:「ネーミングセンスは関係ないだろっ!…リオルはどう思う?」
周りから一斉にヘイトをくらい、シェイはリオルに|縋《すが》るように尋ねる。
リオル:「えと…その…__ダサいと思う__」
シェイは殴られたような顔でショックを受けて、こわばった笑顔のままその服を元の場所に戻しに行った。
---
カシミアや他のメンバーたちが選んでくれた服を数着購入すると、
次はパーティーのご馳走の準備のためにスーパーエリアへと向かった。
ショッピングセンターに併設されたスーパーに到着すると、
レン:「着いたね。ホームパーティーの材料を手分けして探そう。その方が早いし。」
レンの呼びかけに応じてチームを組むことになった。
サラダ担当はミディアメスト、ユキ、リオ、メイ、カシミア
スープ担当はナオ、ショコラルテ、ジューン、シェイ、リオル、レイ
メイン担当はセイム、ファイ、シェフリ、ローザ、ライアー、ミリィ
そしてケーキ担当はリフ、ナナ、ディザ、スター、ロアヌ、レン、ミィ、イオ
となった。
**サラダ担当**
ミディアメスト:「サクッと終わらせましょうか〜まずはどんなサラダを作るか決めます〜」
ユキ:「サラダといえば…レタス、ですかね。」
リオ:「トマトとローストビーフも忘れずに!」
メイ:「…ドレッシングは、オリジナル…とか。」
カシミア:「それいいわね!オリジナルドレッシングをかけたローストビーフサラダ。とっても美味しそう!」
サラダ担当はテキパキと決めていく。
ミディアメスト:「あとは…食感が欲しいですね…そうだ!」
ミディアメストはお菓子売り場からカードが付属したウエハースを持ってきてニコニコとしている。
リオ:「おー!かっこいいドラゴン!」
ミディアメスト:「ですよねぇ〜!サラダにこれを入れたらいいんじゃないでしょうか?」
メイ:「サラダにウエハースはちょっと…」
ユキ:「お菓子はダメです。カツカツなんですから。」
カシミア:「賑やかね〜」
そんなこんなでサラダチームは買い物を終えた。
**スープ担当**
ナオ:「スープか〜味噌汁とかどう?」
ショコラルテ:「クリスマス、ましてや誕生日に味噌汁?」
ジューン:「うーん、今は味噌汁の気分じゃないすね〜」
シェイ:「そっちかよ!…それじゃあさ、クラムチャウダーとか?」
リオル:「あ…__しし__施設でクリスマスによく…__だだだ__出されてた…__よね__」
シェイとリオルが共感して頷きあう。
レイ:「あ、二人って施設出身なんだ。初耳。」
シェイ:「まぁね。」
ショコラルテ:「クラムチャウダーね。一度食べてみたいと思っていたの。」
ナオ:「私もさんせーい!」
スープチームはクラムチャウダーに決定して材料を集め、会計を終えた。
**メイン担当**
セイム:「やっぱクリスマスならメインは七面鳥っしょ!」
ファイ:「だな。それしか思いつかねェ。」
シェフリ:「僕もそう思います♡」
ローザ:「七面鳥は決まりとして、何羽買いますか?」
ライアー:「そうだな…メンバーが25人いるからな…」
ミリィ:「大喰らいの方も…いるかもしれません…」
6人が悩んでいると
店員:「よってらっしゃい見てらっしゃい!今なら特大七面鳥出血大サービスでお買い得だよ!」
店員のおじさんのしゃがれ声が6人の耳に轟く。
ローザ:「特大七面鳥…お買い得…」
ファイ:「こりゃ行くしかねぇな。」
セイム:「誰かに先を越される前に行くぜ!」
そうして壮絶な取り合い合戦が始まったのであった。
結果はパーティーまでのお楽しみである。
**ケーキ担当**
レン:「リフの好きなガム乗せる?」
レンが真面目腐った顔で提案する。
リフ:「流石にそれは…」
ロアヌ:「まずそう…だね。」
ナナ:「クリスマスといえばジンジャーマンクッキー!」
ミィ:「あと…マシュマロ…乗せたい…」
イオ:「それなら飴細工のサンタとかも乗せたら面白そうじゃん?」
皆口々に提案し始める。
ディザ:「想像しただけでお腹すいた〜」
スター:「早く食べたい!」
ディザとスターはお腹を減らして今にもモンスターの姿に戻ってしまいそうな様子だ。
ロアヌ:「とりあえず土台の材料から用意しようか。そしたらクッキーとマシュマロと…」
イオ:「飴細工だ☆」
リフ:「いや飴細工むずくね?」
リフが反論すると
イオ:「おいおい、ボクに反抗する気ィ〜?赤黒く染め上げるぞキサマ」
イオはニヤリと笑ってリフの胸ぐらを掴む。
リフ:「え!?俺、今日の主役なんだけど!?もっと|労《いた》わって!?」
そうして一悶着あったが、無事に全チーム買い出しは終わったのであった。
人数多くて読みにくかったらすみません!
ほのぼのとしたお話を考えるのはやっぱり楽しいですね!筆が進んでいつもよりも長くなってしまいます…ということで後編に続きます!お時間あれば読んでいただけるとうれしいです!
第26話 聖夜〜後編〜
キャラ設定集です!
https://tanpen.net/novel/series/71e01e24-d6a8-43aa-a364-8348f3326862/
ちなみにまだ登場していないキャラも入ってます…
そして内容長めです!
ドルチェネーロのアジトにつくと皆それぞれの担当ごとに調理を始める。
あちこちから楽しそうに作業する声が聞こえてくる。
リフ:(初めてだな。こんな楽しい…でも、ばぁちゃんは…)
リフは急に罪悪感と不安に襲われる。
その様子を感じとり、セイムはリフに声をかける。
セイム:「大丈夫だ。リフのばあちゃんは必ず救い出す。それに…絶対に生きてる。それは俺が保証する。なんせ俺は勘がいいからな。」
セイムは自信満々にそう告げる。
ライアー:「でた!セイムの勘!」
ライアーも盛り上げるように明るく笑う。
リフ:「…ありがとう。」
リフは笑顔になってパーティーの準備に戻った。
---
全ての料理が完成すると、大きなテーブルをどこからか引っ張り出してきて、
その上にクリスマス仕様のクロスと完成した料理を並べていく。
ミディアメスト:「それと、これも忘れちゃいけないですよね〜」
ミディアメストは16本の蝋燭を取り出してケーキに立てていく。
ナナ:「あとは火をつけないと。ジューンさんよろしくお願いします!」
ジューン:「承知〜」
そう言ってジューンは近くを飛び回っていた|蝿《はえ》を捕まえる。
メイ:「うわぁあ!虫ぃっ!」
レン:「虫っ!?無理ムリむり!!」
虫嫌いのメイとレンが騒ぎだす。
ジューン:「…え、これ?着火剤だよ。何その顔。」
ローザ:「わざわざ虫を使わなくても…」
メンバーがドン引きしているとジューンは何食わぬ顔で答える。
ジューン:「だって、あたしの能力、クリアモンスターと生き物しか燃やせないし。」
ショコラルテ:「え…?」
その話を聞いてショコラルテがいつもの顔に似合わずぽかんとする。
ジューン:「ん?どした?」
ショコラルテ:「でも…あのクリアモンスター大量発生事件の時に…私が生成した爆弾に着火できてたじゃない。」
ジューンもぽかんとした顔をした後、考え込む。
ジューン:「それって、もしかして…」
何かに気がついたような表情をしたが、言葉を飲み込み、
ジューン:「まぁ、今はパーティーを楽しもう。その話は後で〜」
いつもの笑みを再び浮かべてパーティーの準備に戻り、|蠅《はえ》に着火した。
---
無事に蝋燭に火を灯し終わり、部屋の電気を消す。
一同:「ハッピバースデーディアリフ〜ハッピバースデートゥーユー!おめでと〜!」
リフは満面の笑みで喜びながら
リフ:「みんな…ありがとっ!」
そう言って勢いよく蝋燭のゆらめく炎を吹き消す。
部屋が真っ暗になると、温かい拍手がアジトの中に響き渡る。
リオ:「電気つけるよー」
部屋の明かりがつくと眩しさに瞬きしながら目の前のケーキをもう一度見てリフの顔に笑みが溢れる。
その様子を見て他のメンバーたちは微笑みつつも、一斉に料理を取り分け始めた。
ライアー:「おりゃー!早い者勝ちだー!」
ロアヌ:「ちょっとずるいっ!それは私がいただく!」
ディザ:「美味すぎん!?この付け合わせ!?」
レン:「レイ監修だからね。安心安全信頼の品質だ。」
レイ:「残り物で作ったんだ…美味しい?ありがとう。 __実はこれまずいって言われた事あるんだけど__」
取り合いの声や美味しいの声が溢れ、一瞬で場が賑やかになった。
リフも手始めにローストビーフサラダをとって一口いただく。
リフ:「ん!うま!」
シャキシャキのレタスとプチッと弾けるミニトマト、そして肉厚なローストビーフにお手製のドレッシングが絡み合っている。
スープは濃厚でクリーミー、そして貝やにんじん、じゃがいもなどの様々な食感の具材がゴロゴロと入っていて楽しい。
メインは特大七面鳥。パリッと焼けた皮とジューシーな肉が美味である。この七面鳥は幾多の試練を乗り越えて手に入れた特別な品らしい。
最後にケーキ。ベースはブッシュドノエル、クリスマス定番の切り株のケーキだ。その上にジンジャーマンクッキーやマシュマロが乗っている。流石にガムや飴細工は乗せなかったが。
控えめに言っても今のリフにとって最高の味だ。
みんながそれぞれに頑張って自分のために作ってくれたのだから。
ロアヌ:「ぷはっ!奮発した酒うめ〜」
大人陣は部屋の隅で酒を嗜んでいるようだ。
ライアー:「酒飲んじまうとますます賭博したくなるなー」
ジューン:「やめてよね〜制御できなくなるんだから。」
ローザ:「久々に飲みました。」
カシミア:「私も〜…なんだか眠くなってきたな…」
早々に脱落したカシミアをローザが介抱する。
するとイオが羨ましそうに近づいてくる。
イオ:「ソレ、ボクも飲んでいい?もうすぐでハタチだしさ☆」
大人は白い目でイオを見て大人の輪から追い出す。
ロアヌ:「ダメに決まってんでしょ。」
イオ:「え〜ケチ〜」
イオは追い出されて不服そうな顔をしながら他のメンバーと話し始めた。
---
リオ:「聞いたよ。リフさんのおばあちゃん料理上手なんだって?あ〜俺も食べてみたい!」
リオが明るく聞いてくる。
リフ:「そうなんだよ!ばあちゃんの料理は世界一なんだ!」
リフはネイタスの手料理を思い出して微笑む。
リフ:「早く食べたいな…もう一度。」
ファイ:「そのためにも、調査を進めねぇとなァ。」
ローザ:「絶対におばあさまの居場所を突き止めましょうね。」
リフは決意を改めて力強く頷いた。
宴もたけなわになったが、パラパラと帰宅しようとする人が目につき始めた。
時計を見るとすでに21時である。
リフ:「もうこんな時間か。」
リフは名残惜しそうに呟く。
ナオ:「今日すっごい楽しかった!リー君、誕生日おめでとう!メリークリスマス!」
ナナ:「またねーリフさん!」
ミリィ:「それでは…メリークリスマス…です。」
ローザ:「リフさん、年明けに宿題出してくださいね。」
ゾロゾロとメンバーが帰っていく。
ほとんどお開きになり、残ったのはリフ、カシミア、ミディアメスト、シェフリ、イオ、シェイ、リオル、ロアヌ、ミィ、ディザ、スターだけになった。
リフ:「もう帰るのか…寂しいな。」
カシミア:「そうね…」
するとロアヌが唐突に提案してくる。
ロアヌ:「どうする?泊まってく?」
リフ:「え、泊まるって…みんなここに住んでるの?」
ミディアメスト:「そうですね。みんな帰る場所がないので仕方なく。居心地に関してはなんとも言えませんが無料ですからね〜」
ミディアメストはそう言ったあと、周りを見渡して呼びかける。
ミディアメスト:「それでは皆さん、歯磨きしましょうね~。嫌なことも潔くサクッと終わらせてしまえば、あとは自由にできますからねっ」
ディザ・スター:「はーい!」
リフは『歯磨き』という単語を聞いて逃げ出そうとする。
ディザ・スター:「リフも行くよー!」
モンスターの双子が60cmの見た目にそぐわない力でリフを引っ張って行く。
リフ:「歯磨きやだー!」
リフは抵抗したがなすすべなく歯磨きをすることになったのであった。
---
歯磨きや諸々を終えたリフは風にあたるためアジトの屋上に向かう。
この建物は思ったよりも広いらしく、いつもいる部屋以外にもいくつかスペースがあるらしい。
すると途中でシェフリとすれ違った。
シェフリ:「あ、貴方…その、ファイくんを見ませんでしたか?」
シェフリは珍しく焦っている様子だ。
シェフリ:「いつも22時には4階にいるはずなのに…そして22時20分には歯磨きをして、22時35分に就寝準備、そのあとは学校の課題を終わらせたり、ぼーっとしたり、時折急に笑ったり…」
シェフリは何やらぶつくさと青い顔をして呟き始めた。
シェフリ:「もう!本当にどこに行ってしまったんですかっ!」
そう言ってまたファイを探しに歩いて行ってしまった。
リフ:「分単位で行動パターンを把握してるのかよ…」
リフはドン引きしながらも、屋上へと再び足を向けた。
---
屋上に着くと、二つの影がフェンスに寄りかかって話しているのが見えた。
リフ:(誰だろう?)
聞き耳を立てているとこんな話し声が聞こえてきた。
ファイ:「つまり、俺たちの力はクリアモンスター由来のものって可能性があるっつーことかァ。」
ジューン:「そ。断定はできないけどね。じゃ、一応伝えておいたから、そういうことで。」
ジューンが帰ろうとして屋上の扉の方へ振り返ると聞き耳を立てているリフに気がついた。
ジューン:「…いたんだ。びっくりっすよ〜」
ファイ:「よぉ。聞かれてたか、リフ。」
真顔のファイと微笑みを貼り付けたジューンがリフを見る。
リフ:「俺たちの異能力って…クリアモンスターと一緒なの?」
リフは眉を|顰《ひそ》めて問いかける。
ファイ:「ただの憶測だがなァ」
ジューン:「まだ言いふらさないでね。小さい子を不安にさせたくないし…とっくに気がついてるやつはいるかも知れないけど。」
ジューンは乾いた笑いを浮かべて屋上から出て行った。
リフ:(二人ともなんか抱えてそうで怖いんだよな…)
するとファイがリフに声をかける。
ファイ:「リフ、ここだけの話だがナァ。」
ファイがつまらなそうな顔のままだるそうに話し始める。
ファイ:「以前”フィーネ”の話をしたよな。暴君が砂糖の塊になったって話だ。俺はな、その像を今探してる。伝説だからって存在しないとも限んねぇだろ。もし存在しなかったら馬鹿ミテェなことしてるってことになるがなァ”。…そこでテメェ、協力しろ。」
リフ:「砂糖の像探し…?」
リフはその話に食いつく。もしかしたらネイタスの居場所の解明に繋がるかも知れない。
リフ:「やるよ…!手がかりはあるの?」
ファイはフードを深く被り
ファイ:「手がかりは『チェロカデロ』」
リフ:「え、それだけ?」
そういうとファイはリフの質問に答えないまま屋上から出て行ってしまった。
リフ:「『チェロカデロ』…」
リフはつぶやいてみたが全く聞き馴染みがない。
寒くなってきたのでとりあえず建物の中に戻ることにした。
---
アジトの中に入るとロアヌとばったり会った。
ロアヌ:「あれ〜?リフ?まだ寝てなかったんだ。もう他のガキはみんな寝たよ。」
リフは頭の中で『チェロカデロ』という単語を|反芻《はんすう》してぼーっとしている。
リフ:「『チェロカデロ』…」
ロアヌはその単語を聞いて驚く。
ロアヌ:「へぇ、リフ『チェロカデロ』知ってんだ!」
リフは驚いて顔を上げる。
リフ:「え!?ロアヌ知ってるの?」
ロアヌはうんうんと頷いて
ロアヌ:「よくネット仲間のナオとも話してるよ〜『チェロカデロ』、それは実在するかどうかも怪しい組織…ネット掲示板に載ってる都市伝説の中でもかなり有名な話だけど…」
リフ:「ちょっとその話詳しく聞かせてくれない!?」
リフは身を乗り出して話に食らいつく。
ロアヌ:「もちろんオケ〜」
ロアヌは話し始める。
舞台はアドバンポリス内のどこかの片田舎。投稿主は通学にとあるトンネルを通っていたらしい。
毎日そのトンネルを通って学校に行っていたが、ある日通学に使っていた自転車がパンクして歩いて学校へ向かった。いつものようにそのトンネルを通っていたところ、ある扉を見つける。
その扉には掠れた文字で『チェロカデロ』と書かれている錆びついた看板がかけてあった。
投稿主は好奇心からその扉を開ける。するとその中には井戸が一つあった。
よくないこととは思いながらも投稿主は好奇心に抗えずその部屋の中に入る。
そして部屋の中央にある井戸の中を覗くとそこには…
`ゾロゾロと人間ではない白い何かが大量に蠢いていたのであった。`
リフ:「ひぃぃ!」
リフは雰囲気のある語りをするロアヌの話に腰を抜かしてビビる。
ロアヌ:「あれ?知ってたんじゃないの?…って、反応おもしろ!」
ロアヌは笑いを堪えきれない様子だ。
リフ:「片田舎のトンネルか…ロアヌ、ありがとっ!」
リフは気を取り直して立ち上がり、拳を握りしめてコンクリートの階段を下に降りていった。
ロアヌ:「ん?うん。おやすみー」
ロアヌは手を振ってリフを送る。
---
リフは暖房のついている部屋に来て眠る支度をする。
流石に男女で寝る場所は分かれているようだ。
イオ:「お〜どこ行ってたんだ?まさか女子部屋を覗きに行ってたとか?」
イオがからかってニヤリと笑う。
リフ:「んなわけねぇだろっ!」
リフはさっき胸ぐらを掴まれたこともあり、イオとは少し距離をとって寝ることにした。
リフ:「おやすみなさい」
イオ:「おう、オヤスミ」
---
朝になった。小鳥が|囀《さえず》ることもなく静かな朝だ。
リフが起きて下の階に行くとメンバーのうちの大人陣は全員起きて朝食を作っていた。
リフ:「おはようございます。」
ミディアメスト、カシミア、ロアヌは振り返っておはようを返す。
ミディアメスト:「昨晩はよく寝られましたか?」
リフはうん、と頷く。
カシミア:「今日の朝はサニーサイドアップよ〜__…普段だったら絶対にできない料理ね。__」
火が苦手なカシミアはコンロの火を見て苦笑いする。
ロアヌ:「あ〜…もっと寝てたーい…」
ロアヌは何やらぐちぐちと言ってどさりとソファに寝転んだ。
テーブルに完成された料理が並べられる。
リフ:「美味しい…」
リフは懐かしのサニーサイドアップを食べながら泣きそうになる。
---
朝食を食べ終わると片付けを終えてからアジトの扉へと向かう。
リフ:「みんなありがとう。最高の誕生日だったよ!」
カシミア:「急に誕生日の話したのに、皆さん祝ってくれてありがとうございました!」
一足先に起きていたメンバーは二人を送り出す。
ロアヌ、ミディアメスト:「またね〜(ですっ!)」
カシミアとリフはメンバーにお礼を言って帰宅した。
見上げた空には晴れ晴れとした青空が広がっていた。
勝手にアジトに泊まってる設定にしてすみません…
みなさんはクリスマスイブに何かしましたか?私はブッシュドノエルを作りました!簡単なものですが…久々にケーキを作ったのであまりうまくいきませんでした!でも美味しかったです!
それではメリークリスマス!
第31話 殺意〜前編〜
キャラ設定集です!
https://tanpen.net/novel/series/71e01e24-d6a8-43aa-a364-8348f3326862/
今回微グロ注意です!苦手な方はお気をつけください!
双子姉弟と別れた後、リフは一人で田舎町を足にタコができるまで歩いて探し回ったが、結局「チェロカデロ」を見つけることは叶わなかった。
今日も沈んだ顔のまま、心配そうに見送るカシミアを後にして学校へと向かう。
リフ:「はぁぁぁぁ…」
重く長いため息をついていると正門の前で何やら騒ぎが起きている様子が見えた。
この時間帯はまだ登校している生徒の数は少ないが、そこにだけ多くの人が集まっている。
リフは嫌な予感がしながらも、小走りでその野次馬たちの輪の中に入る。すると、
???:「たす…けてっ…」
スクールの生徒が一人、腹のあたりを抑えて苦しみもがいていた。
よく見るとコンクリートの地面に血液が滴っている。
リフ:「…え。」
リフはその様子に呆然として目の前で起きている惨状がうまく飲み込めない。
思わず負傷している生徒から目を離すと、その先にはさらに信じられない光景が見えた。
リフ:「ファイ…?」
ファイが邪悪な笑みを顔全体に貼り付け、血の滴る両手を震えながら見つめているのだった。
なぜかとても楽しそうな様子で。
するとファイがリフや野次馬たちの視線に今初めて気がついたように顔を上げると、ヘラヘラとした様子でニヤリと笑って
ファイ:「……ハハ、やっちまったなァ…」
力無く笑ってそういうと、ファイは黒いフードを深く被り直してスクールから瞬く間に走り去ってしまった。
その騒ぎを聞きつけて、ローザとシェフリが焦った様子で駆けつける。
ローザ:「これはっ…一体どう言うことですか!?」
ローザはいつもの冷静さはどこへやら、混乱した様子で倒れている負傷した生徒の元へ駆け寄る。
シェフリはというと青い顔をしてファイがさっきまでいた場所に力無く膝をついている。
シェフリ:「僕と言うものが居ながら…!ファイくんを止められ__なかった__……!」
シェフリは涙声でそう力無く呟きながら、その場にうずくまった。
さっきまで固唾を飲んでその場にいた野次馬たちはざわめき始める。皆、恐怖や困惑、心配など口々に話している。校舎にいた教師たちも続々と集まってくる。
するとローザがその場にいる人たちを落ち着かせるため、生徒の止血作業をしながらも冷静な口調で指示を出す。
ローザ:「生徒の皆さんは一旦教室に入ってください。先生方は救急車を呼んでください。…そしてリフさん、シェフリさん、後でこの騒動に関してお話を聞かせていただきます。」
そういうローザの声は冷静を装っているが、明らかに震えていた。
---
リフとシェフリは指導室に呼ばれ、ローザにあの騒動の一部始終を説明した。
リフ:「俺は途中からしか見てないんですが…あの、ファイが…生徒を襲っていて…その…」
リフはあの時のファイの表情を思い出して、ぞくりと体を震わせる。
シェフリは相変わらず元気のない様子で黙り込んでいる。
ローザはそんな二人の様子を見て少し考え込みながらこう話を続ける。
ローザ:「シェフリさん、ファイさんに何があったかご存知なんですか。」
そう聞かれたシェフリは今まで黙りこくっていた口を開く。
シェフリ:「ファイくんは…苦しんでいるんです。決して楽しくてやっていたわけじゃない。」
シェフリは一度口を開くとその後はもう歯止めが効かなくなったように早口で、しかし涙を堪えるように捲し立てる。
シェフリ:「ファイくんは殺害衝動に悩まされているんです。好きでもないのに何度も何度も人を殺めては悔やんで殺めては悔やんで…家族さえも…ファイくんの意思じゃないのにっ!」
シェフリが声を張り上げた途端、ついに堪えきれずに彼の目に涙が溢れてきた。
その話を聞いてリフとローザは居た|堪《たま》れない気持ちになる。
リフは元気づけるようにシェフリに提案する。
リフ:「俺たちでファイを探しだそうよ。そして連れ戻す!」
そういったリフの方を見たシェフリは、涙を止める。
そしていつもの様子でリフに冷たい視線を投げかける。
シェフリ:「僕一人で探せますし。あなたの力は必要ありませんし。」
ローザはその様子を見て軽くため息をつく。
リフも親切にした挙句ふくれっ面で返されて少し腹が立ったが、呆れつつも力強く言う。
リフ:「《《俺たち》》で探そう。」
シェフリはリフの力を借りることを嫌がっていた様子だったが、諦めて一時休戦(?)して同盟を組むことにしたのだった。
第33話 巣窟
キャラ設定集です!
https://tanpen.net/novel/series/71e01e24-d6a8-43aa-a364-8348f3326862/
氷の壁にもたれかかって動かなくなったファイ。
そのファイを壁越しに心配そうに見つめて声をかけ続けるシェフリ。
そしてこれからどうするか、その様子を冷静に見ながら考え込むローザ。
リフは後ろからその景色を眺めていた。なぜだかとてつもなく嫌な予感に襲われながら。
するとその時だった。
喉の奥に重いものがのしかかるような威圧感のある低い声がリフの中でこう言った。
『おまえが求めるものを見せてやろう』
リフはハッとして周りを見回す。
今ここにいる四人以外は誰も見当たらない。そして明らかにあの声は外からではなく、自分の内側から聞こえてきていた。
リフ:「ねぇ!今の声聞こえた?」
リフは他の三人に聞いてみたが、誰も聞いていないらしく困惑している。
リフの頭の中でさらに声が響いた。
『この道をまっすぐに行け』
気がついた時には、リフは誰にも何も告げずひたすらに走り続けていた。
後ろではシェフリとローザが何かを言っている声が聞こえるが、リフはなぜか止まることができずにそのまま走り続けた。
リフ:(まるで…操られてるみたいだ……!)
自分の意思ではなく、何か説明のしようもない異様な力でリフは走らされる。
リフ:(一体、どこへ行くんだ!)
街路を過ぎ、石造りの橋を渡り、ドルチェネーロのアジトの横を通り過ぎ、そのまま草の生い茂る田舎道に入っていく。
リフは見たことのないその景色を見ながら、息を切らしてただ操られるままに走り続けた。
---
辿り着いたところは、古びた|煉瓦《レンガ》造りのトンネルだった。
リフは息を切らしてそのトンネルの前で膝をつく。
周りがだんだんと暗くなっていく。まるで持久走をした後のようだ。
しばらく息を整えていると、何か人間の足音のような音が近づいて来ることに気がついた。
依然として乱れた呼吸のまま顔を上げるとそこには、
ミィ:「なぜ…おまえがいる。」
クリーム色のボサボサの髪の毛をした幼い少女が立っていた。
リフ:「君は……ミィ?」
リフは驚いて大声を上げる。それと同時に少しホッとする。
ミィはそんなリフの大声を聞いて咄嗟にリフの口の中にマシュマロを突っ込む。
ミィ:「うるさい。…てきにきかれたらどうする。」
リフは走って乾いた口の中に急にマシュマロを突っ込まれ、えずきそうになったがなんとか抑えた。
ミィはトンネルの方を向き、リフに尋ねる。
ミィ:「もういちどきくが…なぜここにいる。」
ミィはどこか怪訝そうな顔をしてリフを見下ろしている。
リフは困ったような表情をして答えあぐねた。
頭の中で変な声がして操られるように走ってきたらここについてただなんて、いくら相手が子供でも信じてもらえるだろうか。
リフが黙り込んでいるとミィはふぅとため息をついてトンネルの方へ顔を向けた。
ミィ:「……いいたくないならいい。…それよりもちからをかしてくれ。」
リフ:「ちから?」
---
リフが自分より小さなミィのあとをついていくとトンネルの真ん中あたりでミィは足を止めた。
そして左側の壁に目を向ける。
その視線の先には古びた看板が掛けてありこう書かれていた。
『チェロカデロ』
リフ:「チェっ……!!」
リフは驚いて硬直した。
ミィは『チェロカデロ』の看板が掛けられた扉の前へトコトコと歩いていき、ドアノブに向かって手を伸ばす。全然届いていないが。
ミィ:「りふ、あけろ。」
年上のリフにミィは命令口調でそう言った。リフはこの状況に驚きつつもとりあえず言われた通りにその扉を開く。
中をそっと覗き込むと中には想像していたものとは少し違った景色が広がっていた。
そこには殺風景なコンクリートの壁で囲まれたこぢんまりとした四角い空間があった。
右と奥の壁には何もないが、左の壁には何かのレバーが一つ、真ん中にはコンクリートでできた謎の井戸がある。
リフ:「なんか…黒髪の女の人が出てきそうな井戸なんだけど…」
リフは近づくのに気が引けてきた。しかしミィは躊躇いもせずにその中に突き進んでいく。
リフも自分よりも小さな子に負けじと勇気を奮い立たせてその中に入っていく。
ミィはコンクリートの井戸の中を覗き込んだ。リフも後を追って覗き込んでみる。すると、
その中には無数のクリアモンスターが収容されていた。
リフ:「ヒィ!!」
リフは驚いて腰を抜かす。ミィはどこか慈悲をかけるような瞳で井戸を見て、近くに置いてあった板で蓋をした。その時だった。
???:「リフ。」
突然後ろからリフにとって聞き馴染みのある懐かしい声が聞こえてきた。振り返るとそこには、
リフ:「ば…ばばば、ばあちゃんっ!?」
優しげな笑みを浮かべたネイタスがいたのだ。
第28話 記憶〜ホルン編〜
キャラ設定集です!
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ちなみにまだ登場していないキャラも入っています…
---
今回はホルンちゃん視点でお話が進んでいきます。
《エピソード.ホルン》
ホルンはイオ、レオと別れたのち、大人二人に連れられて戦地のオアシスである避難所へと向かっていた。
赤く泣き腫らした目をひんやりとした風がなでていく。
ホルンは一言も発さずにただ黙々と歩いていく。
大人:「ついたぞ、ここが避難所さ。」
大人が連れてきた場所はテントが張ってあるだけの簡易的な家が集合している土地だった。
周辺には子供からお年寄りまで幅広い歳の人が助け合って少ないご飯を分け合っていたり、年端も行かない子供たちは地面に木の棒で絵を描いたりして気を紛らわしている。
ホルン:「…ここまで、ありがとうございます。」
ホルンは二人にお礼を言って軽く頭を下げる。
大人:「ちょっと待て。」
二人のうちの一人の大人が優しい表情で手に持ったサブレを渡してくる。
大人:「お腹が減ったら食べなさい。」
ホルンは人の優しさに心打たれ、お礼を言って避難所の中へと入っていった。
---
大人たちと別れた後、ホルンは一人で避難所を特に理由もなく歩き回り始める。
両親の死に顔が未だ頭から離れずにこびりついている。
再び溢れてくる涙を止めようとふと手に持っていたドーナツへ視線を落とす。
腹の虫が鳴るのを感じ、包み紙を開けて優しいキツネ色をしたドーナツの生地に触れる。
ホルン:「あったかい…」
ホルンはドーナツをほんの少し齧る。
見た目の通り素朴な、けれど今まで食べたこともないくらい美味しいドーナツだった。
ホルンの暗い表情に微かな笑顔が戻る。
ホルン:「お母さんやお父さんとも…食べたかったな…」
しかし両親のことを思い出すと再びホルンの表情に影がさす。
戦争に対しての憎しみが心の内を支配する。ドーナツを頬張る口の中に血の味も滲む。
ホルン:「戦争なんて…誰が望むというの…」
苦しそうに瞼を強く閉じるホルン。すると、
「みんな逃げろー!」
避難所からそこまで遠くない距離の場所から大声や叫び声、戦々恐々とした声が聞こえてきた。
「敵襲だ!!」
敵襲、その言葉にホルンの肝が冷える。
咄嗟に避難所の中の物陰に隠れるが、恐怖で手足がガタガタと震え上がる。
すぐ近くで数人の人間が何かを話しながら近づいてくる音が聞こえた。
ホルンは息を殺してただひたすらに過ぎ去るのを待つ。
すると近くで同じく震えて縮こまっている女の子がいることに気がつく。
その女の子は今にも倒れてしまいそうなほど顔面蒼白であった。
ホルンは震える足を抑えて女の子に近づき、安心させようとそっと肩に触れる。
女の子はギョッとした表情でこちらを振り返ったが、ホルンを見てほっと胸を撫で下ろした。
女の子:「お姉さんも…逃げてきたの?」
ホルンは敵兵を監視しながら静かに頷く。
ホルン:「うん、一人は怖かったわよね…あの人たちがいったら一緒にここから逃げよう。」
声を顰めてそう言い、勇気づけるように女の子の肩を優しく叩く。
女の子はこくりと頷き、深呼吸して落ち着きを取り戻す。
その時だった。
敵兵が突如として現れ、長い銃口をホルンの後頭部に構える。
女の子:「お姉ちゃん…!?」
女の子は青ざめた顔でホルンの方を見たまま動けないでいる。
ホルンは恐怖で頭が真っ白になるが咄嗟に
ホルン:「貴方は逃げて…!」
この状況では一人の女の子だけでは逃げ延びることは不可能だとわかっていても、そう言うことしかホルンにはできなかった。
女の子は勇気を振り絞ってホルンのことを気にしながらも物陰から飛び出し走っていく。
敵兵:「逃げられるわけないのになぁ。かわいそうに。」
心のこもっていない声で敵兵はそういった後、ホルンの脳天目掛けて銃口を引いた…かのように思えた。
ホルンが目を開けるとそこには大きな輪っかで動きを封じられ、地面に転がっているさっきの敵兵がいた。輪っかはまるでドーナツのようだ。
ホルン:「…え?」
ホルンは目の前で起きた出来事に目を疑い必死に頭を回転させるが、理解できぬまま女の子を追って走り出した。
女の子は少し離れたところで再び物陰に隠れて蹲っていた。
ホルンが近づくと女の子はパッと明るい笑顔になって飛びついてくる。
女の子:「お姉ちゃんごめんなさい…あたし、何もできなくて…でも無事でよかった…」
泣きそうな顔で謝る女の子にホルンは優しい笑顔でさっきもらったサブレを手渡す。
ホルン:「私は大丈夫よ。…はい、これあげるわ。きっと美味しいから。」
女の子は歪な形をしたサブレを受け取り、涙を引っ込めてホルンに抱きつく。
女の子:「ありがとうお姉ちゃん…」
近くに敵兵の気配がしなくなったので二人は一息ついて少し休むことにする。
女の子はサブレを半分に割ってホルンに差し出す。
女の子:「食べ物はね、一人よりも二人で食べる方が美味しいから。」
曇りのない瞳で笑う姿はホルンの暗い心に一筋の光を差した。
ホルンはお礼を言って半分のサブレを一口食べる。
ホルン:「…うん、美味しいね。」
女の子:「きっと二人で食べているからだね。」
ひとときの休息を終えると、再びホルンは周囲を警戒し始める。
まだ周辺に敵兵がいるかもしれない。ここにはもう安全なところはないのか、と考えに耽っていると後ろに敵兵がいることに気が付かなかった。
振り返ると数人の敵兵が少し離れたところからこちらに向けて銃を構えていた。
敵兵:「君たち、来てもらおうか。」
敵兵は二人を連れて行こうと近づいてくる。
ホルン:「何の罪もない人たちを襲って…一体何がしたいの…?」
ドス黒い憎しみがだんだんと腹の底から湧き上がってくる。
その時、ホルンの口をついて呪文のようなものが飛び出した。
ホルン:「『|想像制作《クリエイト》』」
ホルンがその言葉を発すると、ホルンの右手に敵兵が持っているような銃が握られていた。
ホルンは驚きながらも、呆けている暇はないとその銃を構える。
ホルン:「う、動いたら…これで撃つわよ!」
震えた手で銃口を敵に向けながら後退りする。
女の子は後ろでホルンの服の裾を震えた手で掴んでいる。
敵兵:「一体どこからその銃を…まぁいい。いうことを聞かないのなら撃つ。」
敵兵は銃の引き金を引く。
ホルンはかろうじて弾を避け、女の子を連れて走り出す。
周りも顧みずひたすらに走っていると味方の兵がいることに気がつく。
ホルン:「助けてください…!後ろから敵兵がきます…」
息を切らして必死にそう訴えると味方の兵は仲間と連絡を取り合って敵兵の始末に向かった。
女の子:「お姉ちゃん…すごかったよ…!」
女の子はへたり込みながらも
ホルン:「よかったね…無事で…!」
二人は抱き合って無事であることの喜びを分かち合った。
---
---
---
時は現代に戻る。
イオとホルンは思い出話に花を咲かせていた。
リフはその様子を見て立ち去ろうとする。
リフ:「それじゃ俺はこの辺で…」
帰ろうとしたところ後ろからホルンに呼び止められる。
ホルン:「ごめんなさい。つい話に夢中になってしまったわ。」
ホルンは自分の抱えているドーナツを見て問いかける。
ホルン:「これ、お二人にあげます。あと、レオにも…」
ホルンがレオという名を口にした瞬間、いつも明るくておちゃらけた様子のイオの顔が強張る。
イオは暗い感情を隠しきれない様子で呟く。
イオ:「レオは…殺されたよ。透明なバケモン、クリアモンスターにな。」
ホルン:「え」
リフ:「クリア…モンスターに…?」
ホルンはショックを受けた表情をするが、何を言っていいかわからず黙り込んでしまった。
イオ:「ま、とりあえずもらっておくよ。レオに渡せるかはわかんないけどさ!ちょい遠いところにあんだわ、墓。」
いつもの明るいイオに一瞬で戻り、にっこりと笑う。しかしその顔にはレオに対する後悔がちらついていた。
ホルン:「あの…ごめん、なさい…私…」
ホルンの小さな声がゲームセンターの雑音でかき消される。
イオ:「それじゃ、またな。」
イオはホルンにもらった二つのドーナツを持ってゲームセンターの外へと歩いて行ってしまった。
ホルンはただ立ち尽くしている。
リフもなんと声をかけるべきかわからずただイオの背中を見送ることしかできなかった。
第30話 姉弟
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リフ:「そんなことが…」
リフは二人の話を聞いて複雑な表情を浮かべる。
レイ:「今思えばあの時に能力が発現したんだな…記憶の蓋を開けたのが久々だったもんだから、色々と思い出したよ。」
レイもミオもどこか暗い顔をしてしんみりとしている。
リフ:「ところで浮気してたっていうその二人はどうなったの?」
リフが素朴な疑問をぶつけると、レイは首を振って暗い声でつぶやいた。
レイ:「死んだ…いや、僕が殺したんだ。あの脱走の後の数日後、殺人事件としてニュースで取り上げられてた。」
レイの瞳には暗く重い影がのしかかっていた。
その様子を見てミオは慰めるように向かいに座る彼の肩に手を置いた。
ミオ:「不謹慎かもしれないけどさ、あんな奴ら死んで当然だよ。レイは何も悪くないから!」
レイ:「ミオ姉…ありがとう…」
言葉ではそう言ってはいるが、レイの心はなかなか晴れることはなさそうだ。
ファミレスの店内に重い空気が流れ始める。
ところで、とレイは話を切り替える。
レイ:「どうしてミオ姉はこんな|辺鄙《へんぴ》な町に来てるの?何か目的が…?」
そう聞かれたミオは、何かを隠すようにオドオドとしだした。
ミオ:「え?べ、別に…特に何もないけど…ゴホゴホ」
わかりやすく眼が泳いでいる。ミオは再び咳き込み始めたが、今回の咳は偽物だとすぐにわかった。
レイ:「まぁいいや。」
レイは諦めて話を変える。
レイ:「どうして突然孤児院から姿を消したの?それが一番聞きたかった…ずっと一人で寂しかった…」
レイの質問にミオは渋い顔をして黙り込んだ。
しばらくしてから重い口を開く。
ミオ:「実は、レイがいないあの時期に里親が決まってさ。」
レイとリフは顔を見合わせて驚く。
ミオ:「いや…レイがしばらく帰ってこないからもしかしたら裏切ったのかもしれないと思って…一人でその彼女と暮らし始めたのかと思って…そんなわけないのにね!レイが私に何も言わずにそんなことするわけないってわかっているのに…」
ミオは自己嫌悪になって自分を責める。
ミオ:「弟を信じられないなんて、姉失格だ…」
リフはこの姉弟の深い闇を目の当たりにして声も出せないでいた。
するとレイは急に席から立ち上がって声を上げる。
レイ:「ミオ姉が自分を責める必要はないよ。よし、今から失った時間の埋め合わせをしよう!」
ミオ、リフ:「え?」
ミオとリフは素っ頓狂な声をあげ、立ち上がったレイの方を見上げる。
レイ:「お出掛け…しようってこと。」
レイは少し照れながら小さく呟いた。
ミオはくすりと笑って席を立ち上がる。
ミオ:「しばらくぶりだけど可愛いところ、ちゃんと残っててよかった」
冗談まじりにそう言って机に置かれていた水をガブリと飲み干す。
水の入っていたグラスをコトリと置くと、ミオは晴れ晴れとした表情で笑う。
リフは二人のその様子を見て嬉しいような寂しいような顔をしたが、笑顔に戻って手を振る。
リフ:「俺はやることがあるからさ。二人とも思う存分楽しんできてね。」
レイ:「リフ…ありがとう。」
ミオ:「またね、リフ!」
二人は笑顔でリフに手を振った後、積もる話をしながらファミレスを出て行った。
リフは満足そうな表情をして席を立ち上がると拳を握って気合いをいれる。
リフ:「俺も必ず取り戻す。…大切な人を。」
リフはそう呟くと、小走りでファミレスを出て行った。
店員らしき人は何も注文しなかった二人とバイト中にも関わらず店を出て行ったレイを見て驚き呆れていたが、ため息をついて再びスマホをいじり始めた。
最近バトル要素少なくてすみません…
あと数話でバリバリバトルシーンが始まるのでカッコよく描写できるように頑張ります!
バトルシーン好きはしばしお待ちを!
第32話 殺意〜後編〜
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ローザは教師陣に事情を説明し、理解を得たリフ、ローザ、シェフリの面々はファイ探しへと向かった。道中リフはシェフリに話しかけたりしたのだが、彼は一向に心を開こうとする素振りを見せることはなかった。
リフ:「俺なんで嫌われてるの?」
ローザ:「さぁ、なぜでしょう…」
リフとローザは早足で前をずかずかと歩いていくシェフリの後ろ姿を見ながら歩いていたが、ふと車通りの多い交差点に差し掛かったところで何かに気がついた。
リフ:「あれって…」
ローザとシェフリがリフのさし示した方向を見ると、そこの道には誰かの血液と思われる赤い液体が点々と垂れていた。色の鮮やかさをみたところ、まだ新しいもののようだ。
3人は息を呑んでそれが垂れているところを目で追っていく。
リフ:「さっきの襲われた人の血…かな…?」
ローザ:「いえ、先ほどの騒動からは少し時間が経っているのに、この血液は全くもって酸化していません。ということは…」
シェフリ:「ファイ君……!?」
その途端シェフリはその血の道を辿って全速力で走り出した。
後の二人もその後を急いで追いかける。
---
しばらく走っていくと人気のない廃れた街路にたどり着いた。そこで血のあとが途切れてしまっている。
シェフリはキョロキョロと辺りを見渡して、動揺を隠せない様子である。
ローザ:「止血…したのでしょうか?」
ローザとリフも心配と不安の混ざった気持ちで負傷しているであろうファイの姿を探す。
すると、人ひとりがギリギリ入れるような狭い路地裏から禍々しい気が漂ってくる感覚がした。
三人は恐る恐るそこに近づいていく。すると、
獣のような、或いは怪物のような姿をした何かが路地裏で苦しそうな唸り声を抑え込みながら蹲っていた。体はドロドロに溶け、異様な熱気を放っている。よく見るとキャラメルを貪り食っているようだ。その様子はまさしく…
リフ:「バケモノ…!?」
その獣はギラギラとした血走った目をしてこちらをみた。
シェフリは震えた声で呟く。
シェフリ:「ファイくん!!」
その途端、ファイらしきバケモノは路地裏から飛び出し三人に襲いかかってきた。
ローザは咄嗟の判断でリフとシェフリを後ろに引っ張って下がらせる。
ローザ:「…彼は、ファイさんなんですか?」
冷静な様子で状況を整理しようとするローザだったが、その表情には明らかに恐れの色が浮かんでいた。シェフリは力強く頷く。
リフ:「とにかくみんな手持ちの菓子を…」
リフとシェフリはポケットを探ってフーセンガム、グミを取り出し口に放り込んだ。
しかしローザはハッとした表情で一歩後ろに下がった。
リフ:「先生、どうしました?」
リフが聞くとローザは
ローザ:「私、アイスクリームを買ってきます。…しばらくお二人で持ち堪えられますか?」
申し訳なさそうにそう言ったローザに向かって、リフはガッツポーズをする。
リフ:「任せてください!二人ならなんとかできます!」
その言葉を聞いてローザは安心したような、しかし引き締まった表情で頷いた後、全速力で近くのコンビニに向かって走り出した。
リフの言葉を聞いてシェフリはどこか複雑そうな表情をしていたが。
そして再びバケモノ状態のファイに向き直る。
ファイは指先をナイフのように尖らせて、殺傷力の高そうなその切先を二人に向けた。
ファイ:「ヘヘ…_死んじまえよ。」
どうやら正気を失っているようだ。二人の姿を見ても何も感じていないのか躊躇なくその鋭い切先で切り付けようとする。
シェフリ:「『|𝓖𝓤𝓐𝓡𝓓𝓘𝓐𝓝《守護者》』!」
シェフリはブヨブヨとした盾を自らの前に出現させた。
ファイの尖った手はその盾に刺さって身動きが取れなくなる。
ファイ:「アハハっ!」
動けなくなったのも束の間、ファイの手の温度は瞬く間に上昇していき、あっという間にシェフリの盾を溶かしてしまった。
シェフリ:「ファイ君!気を確かに!僕がその苦しみを引き受けますからっ!」
必死にシェフリが声をかけるが、今のファイにはシェフリの声も届かないようで、ただひたすらにシェフリが生成した盾を切りつけている。
顔の原型はとどめていないが、それでもわかるぐらいファイは楽しそうな様子で口が裂けるほどの笑顔をしていた。普段の無表情からは想像がつかないくらいに。
リフは周りの様子を見て何か突破口になるものを探す。すると近くのマンションの貯水タンクが目に入った。リフがその貯水タンクに狙いを定めていると、
シェフリ:「リフくん、僕の能力は…攻撃も何もできない。強いて言うなら拘束ぐらいです。だから…」
シェフリはリフの顔を見ずにそっぽを向いたまま、
シェフリ:「貴方の…力が必要です。一緒に、ファイ君を助けてください…!」
表情は見えなかったが、はっきりとした声で彼はそういった。
リフは一瞬驚いたが、笑顔で引き受けた。
リフ:「もちろんだよ!ファイの頭を冷やしてあげないとね!」
そして再び貯水タンクの方を見上げる。狙いをすまして、
リフ:「『バルーンボム』!」
その途端タンクは弾け、その中にあった水が三人に降り注いだ。
ファイの体は水で冷やされて、熱を放出しだんだんと硬くなっていく。
リフ:「これで少しは時間稼ぎが…」
そう思ったや否や、ファイはまたもや笑い出し、さっきよりも熱く周りの建物すらも溶かしてしまうのではないかというほどの熱気を放ち始めた。体も再び柔らかく溶けていく。
ファイ:「俺を…楽しませてくれるなァ…!」
凄まじい熱風が二人を襲う。
リフ:「暑っ……!」
シェフリ:「……!!」
二人がファイから放たれる熱風に耐えきれず地面に伸びかけたその時。
ローザ:「お二人とも、よく持ち堪えてくれましたね。」
ローザが熱気の溜まる街路に駆け込んできて、両手をファイに向けて指先に全神経を集中させた。
ローザ:「『スノウクイーン』」
空気中から分厚い氷の壁が出現し、ファイを閉じ込めていく。
氷に四方を塞がれたファイは壁を砕こうとするが、あまりの冷たさに段々と熱が奪われてついに固まってしまった。
シェフリ:「ファイ君…大丈夫ですか…!」
シェフリは氷の壁越しにひたすら声をかける。
ファイはかろうじて口元だけは動くらしく、普段の無表情に戻ってこう言った。
ファイ:「わりぃな、巻き込んで…」
その目はひどく黒く光もなかったが、無表情ながらも安らかであった。
第34話 真実
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ネイタス:「リフ、しばらくの間一人にしてごめんね。もうおばあちゃん、どこにも行かないよ。」
ネイタスは優しい笑顔と声色で『チェロカデロ』の外から声をかける。
しかしその喋り方と佇まいからリフはその人物がネイタスではないとすぐにわかった。
リフ:「お前…誰だ!」
リフは今までしたこともないくらい鋭くネイタスの皮を被った謎の人物を見る。
その人物は笑い出したかと思ったら、突然声があの低くて重い声色に変貌した。
そしてネイタスの姿のまま目を釣り上がらせてニヤリと笑う。
???:「…フハハ!まさか気がつくとはな。しかしお前たちがそれを知る必要はない。」
その人物がそう言った瞬間、ミィが井戸に被せた蓋がカタカタと動き出し、中から大量のクリアモンスターが飛び出してきた。
リフ、ミィ:「!!」
大量のクリアモンスターは目で追えないほどのスピードで『チェロカデロ』を飛び出して外の世界へととんでいってしまった。
ミィ:「『スイートスナイプ』!」
リフ:「『バルーンボム』!」
クリアモンスターの大群を止めようとミィは右手を銃の形にして弾丸を放ち、
リフはクリアモンスターを破裂させたが、さすがの多さに全ての量を捌き切ることはできなかった。
二人が『チェロカデロ』を出てクリアモンスターたちを追おうとしたところ。
???:「お前達には行かせない。」
そう言ってネイタスの皮をかぶった人物は『チェロカデロ』の扉を勢いよく閉めた。
リフとミィは内側から開こうとしたがびくともしない。
リフ:「畜生っ!」
リフは扉を拳で強く叩き、あまりの硬さにジンジンと痛む拳を抱え込んだ。
ミィは冷静でいようとしているようだが、明らかに動揺を隠せない様子だった。
ミィ:「とにかく……ここからでるぞ。」
ミィがそう言って左側の壁にあるレバーを指差した。
ミィ:「それをひけ。……ぬけみちにつながってる。」
リフは言われた通りにレバーを引いた。
すると何もなかった奥の壁が自動ドアのように開き、奥に階段が現れた。いまだにショックと混乱で頭の整理がついていない状態であったが、リフはずっと気になっていたことをミィに聞いてみる。
リフ:「あのさ…ミィはなんでここの事を知ってるの?」
ミィはチラリとリフを一瞬見た後、階段を降りて行った。
ミィ:「……それはすぐにわかる。」
リフは何も言わずにミィの後をついていくことしかできなかった。
---
階段を降りて奥へ進んでいくと、いくつかの部屋の扉が立ち並ぶ薄暗い廊下につながっていた。
周りを見回してみたが灯りは無いようだ。
ミィは何も言わずにただ黙々と歩いていく。
するとリフは床に転がっていたものに足を引っ掛けて転んでしまった。
リフ:「いってぇ!」
つまずいたものが何か確認したところ、それは積み上げられた書類のようだった。
ミィはそれをみて呆れたようにため息をつく。
ミィ:「あいつら……またしょるいをかたづけていないのか。」
リフがその書類に目を通すとどうやら人のデータをまとめたものらしかった。その中に見覚えのある顔もある。
猫とも犬とも取れない、顔の左半分が橙色のモンスターと顔の右半分が緑色のモンスター。
リフ:「これって…ディザとスター!?」
さらに書類を見ていくとミィのデータもあった。
リフは理解ができない様子でミィを見る。
ミィ:「……ここは…くりあもんすたーにかんするけんきゅうじょだ……」
ミィは声のトーンを落としてそう呟いた。
リフは信じられないと言う顔でミィを糾弾した。
リフ:「ってことはミィは全部知っていたってこと!?言ってくれれば…なんで言ってくれなかったんだよ!」
ミィは俯いて呟いた。
ミィ:「りふたちがたおしていたのは……もとはいきたどうぶつ……つまり、」
そう言ったあと少しの間ミィは言葉を詰まらせたが、やがて口を開いた。
ミィ:「……そのなかにはにんげんもふくまれている。」
その言葉を聞いた途端、リフは黙り込んだ。あまりにもショックで言葉にならなかった。
リフは自分が、自分たちがやってきたことは|殺戮《さつりく》と大差ないのではないかと、人を守るためにやってきたことが全て裏返されたような感覚に陥った。
リフの絶望の表情を見てミィは痛々しい顔をして呟く。
ミィ:「だから…いいたくなかった。」
そして再び抜け道に向かって歩き出した。
リフはその場に立ちすくんで動けなくなった。
リフ:「俺……」
---
その頃、地上では『チェロカデロ』から放出されたクリアモンスターがアドバンポリスの頭上を飛び交っていた。
ローザ:「なんですか…この大量のクリアモンスターは…」
シェフリ:「これは…?」
ファイ:「クッ……」
---
ユキ:「何よこれ…気持ちわる…」
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ショコラルテ:「前のショッピングモールの時より多いわね…」
---
ナオ:「うええー!何これ!?やばー!」
---
ロアヌ:「流石に多すぎるっしょ…だるぅい…」
---
レン:「うわ、きっつ…」
---
ジューン:「ついにこの時が来た…終末が。」
---
リオル:「ひえええぇ…!」
シェイ:「落ち着けリオル!」
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ミオ:「え?なんか飛んでるー」
レイ:「呑気だなぁ…やるよ、姉さん。」
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ライアー:「うぉーすげーめんどくさいことになりそうだぜ!」
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ディザ:「クリアモンスターがいっぱい!」
スター:「えー…平和に過ごしたいのに…」
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ミディアメスト:「サクッ…とは終わりそうにありませんね〜」
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メイ:「…どんなに数が多くても腐食するだけ。」
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リオ:「うわぁ!危なっ!|掠《かす》った!まさかおちょくってんの!?」
---
ミリィ:「今のうちに飴…!もぐもぐ…」
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ナナ:「…多すぎ!一人は絶対に無理!仲間を探さないと…」
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ホルン:「空が埋め尽くされていく…」
イオ:「キサマら全員飴細工にしてやろうかァ?」
---
セイム:「この個体数…バカじゃないの?」
---
カシミア:「ひぇ……いえ、しっかりするのよ私!」
『ドルチェネーロ』の面々がクリアモンスターの飛び交う空を見上げると、空が眩く光りだしクリアモンスターが地上に向かって降り注いだ。
_戦いの狼煙が上がる。
改めて並べてみるとメンバー多いですね!結構大変でした!
次回から戦闘が多くなると思うのでお楽しみに!
あとストーリーや時系列、キャラなどに矛盾点がありましたら教えていただけると嬉しいです!