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目次
紅茶と珈琲
時計の騎士
その名前を聞いた人はそれぞれ違う人物像を思い浮かべるだろう。
希望の灯
国の礎
花の兵
一族の重鎮…
様々な異名がある騎士だが、
まだ二十歳にも及ばない少女だということは誰も思わないだろう。
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「スカーレットと申します」
風に遊ばれる淡い薄紫色の髪を抑えながら無表情に彼女は言った。
私は半分訳もわからず玄関に入れたが、誰だ。屋敷の使いの者ではないはずだ。それなら誰かから連絡が来るはずだ。
この家で誰かが来るのは最近はめっぽう減ったが襲撃か、はたまた亡き父を訪ねてくる人か、のニ択だ。
この屋敷は父から受け継いだ。
母は私が生まれたすぐあとに亡くなった。
由緒正しくとても歴史のある屋敷だと言っていたが、私は気味が悪くて受け継ぐのを頑なに拒否していた。
それが次第に言い争いから口論に、口論から喧嘩へと勃発したとき、父が事故で亡くなった。
スカーレットと言った、彼女は父と何か関係があったのか。
もしそうなら丁重に扱わなければならない。
それにしても、本当に整った顔立ちの人だ。
靴を丁寧に脱ぐ姿でさえ美しい。
「何の御用で?」
「少しお話があり、参りました」
部屋への階段をとても静かに上がった彼女は扉を閉めた途端、息をつく間もなく言葉を紡いだ。
「私はあなたをお守りするために参りました。」
「……守られる理由は何一つ無いはずです。私たちは初対面でしょう。」
あまりに急な言葉すぎて思考を巡らせるのに間をとってしまった。すると彼女は藍色の瞳をすこし陰らせて何か呟いた。
「…何か、ご不満がおありでしょうか。あなたのためなら命を賭けられます」
不満だなんてそんな滅相もない。
ただ初対面で守らせてくれという人は初めてだ。
普通じゃない。
…刺客か?
こちらを擁護するふりをして屋敷の内密情報を外に出す手口が何件かあった。
彼女の言っていることが本当だとして、他人に守られるほどこの家も、私も落ちぶれていないはずだ。
「シルバーニードルズ家の皆は稚拙とはいえ戦う術は身につけていますので。
それに先ほども言いましたが私とあなたは初対面です。
どこの馬の骨かもわからない人に守られていたくはありません。
……あなたのような見目麗しい人が命を賭けてまで私を守る理由は何もないです。」
怖がらせないように少し微笑むとスカーレットは少し安心したのかほっと息をついた。無表情のまま。
「けれども……お側で守らせていただきたいのです。いざというときの武器とでも思っていただけたらよろしいのです。」
ひゅっ、と息をのむ音がした。誰だろうと辺りを見渡すが私とスカーレットしかいなかった。
まさか、私?
足の力が抜けて床にへたりと座り込んでしまう。
客人なのに、情けない。
彼女はきっと何も知らない。
けれど思い出してしまう。
昔、同じ事を言って逃げ出した人がいた。昔、同じ事を言って死んでいった人がいた。昔、
「リエラさま」
スカーレットの声に意識がふっと戻される。
ひどく取り乱したところを見せてしまった。
「僭越ながら、ブローチが壊れそうでございます。そろそろ吸い出しをしたほうがよろしいのでは」
無表情ながらも声色は心配の色が含まれている。
私の突然の行動に驚きもせず、ただブローチのことに気が付いて言うなんて、変人なのか?
「…あぁ、しばらく忙しくて吸い出せてなかったんです。ありがとう。あとでやることにします」
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この世の中は`紅茶`と呼ばれる種族のものと`珈琲`と呼ばれる種族のもので構成されている。
紅茶の者にはブローチが与えられるが、ストレスが溜まるとそれが壊れてしまう。
壊れることを恐れた先代の紅茶は「吸い出し」という、穢れのみを取り除く機械を発明した。
紅茶には紅茶の掟、
珈琲には紅茶の掟が存在する。
「紅茶は如何なる時も争いがあればその場に赴き、戦乱を鎮める
また、珈琲はいつ如何なる時も紅茶のために生きよ」
当時の紅茶の長が決めたこの掟がなければ、後にドロップ戦争と呼ばれる、悔やんでも悔やみきれないほどの死者数を出した戦争が起こることもなかった。
紅茶に使えることに不満を持つ者。
珈琲よりも立場が上だと慢心して傲慢に振る舞う者。
それらが対立したらどうなるか。
小さな火種が後に大きな火事となる。
この戦争に勝利したのは、__紅茶一族__だった。
私が知っている珈琲と紅茶についてはここまで。
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「それより、スカーレット…さんは何故、私を守ろうと」
「私が花の騎士だからです」
「…は?」
花の騎士。
いわば、力があると見込まれ戦争に駆り出された少女兵のことだ。
しかし、これは戦争のあった頃の話。
「どうして花の騎士を」
「知っているのか、ですか。
私はその頃のことを全て知っています」
冗談も言えるのか、なんてことを頭の片隅で考えながら私はとても混乱していた。
「ご、冗談を」
「本当、なのです。
理由はまだ聞かないでください
私のとても大事な秘密に関することですので。」
スカーレットがこちらと初めてしっかりと視線を合わせた。
笑っていた。
それよりも、彼女の瞳がとても奇麗だった。
蜂蜜色の瞳に見られると、
頭が惚けてまともに考えられなくなってしまう。
「わたくしに、あなたを守らせてください」
これにどのような返事をしたかは分からない。無意識に頷いていたかもしれない。
「改めて、スカーレット・ドロップと申します」
はじめまして
まりあと申します
趣味で小説書いてます