名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
1 /
目次
迷ヰ兎とクリスマスマーケット
迷ヰ犬と兎がクリスマスマーケットでわっちゃするだけ。
ルイスside
「うわぁ~!」
凄いです、と辺りを見渡す敦君。
虎の耳と尻尾が見える……。
「昼間は暖かかったけど、流石に夜は冷えるねぇ……」
「僕チュロス食べたい。国木田、買ってこい」
「は、はい……」
国木田君、意外と寒さに弱いのかな。
防寒してるのに寒そう。
僕は乱歩に連れられてストーブ近くの席を取る。
それぞれ食べたいものを買いに行ったようだ。
「ストーブの近くでも寒いんだけど!?」
「まぁ、しょうがないでしょ。カイロあげる」
やった、と乱歩は僕の渡したカイロで指先を温めている。
福沢さんは相変わらず和服だけど、寒くないのかな。
「……。」
あ、顔が死んでる((
「福沢さんもいる?」
「……貰おう」
さて、僕もそろそろ見に行こうかな。
でも寒いから動きたくない。
とりあえず、パンフレットで確認……。
「あ、ここにいたんですね」
谷崎兄妹が帰ってきちゃった。
「私達がいますので、社長とルイスさんも見てきたら如何ですか?」
「……。」
「そうするよ。ほら、行くよ?」
「……動きたくない」
仕方ない。
無理やり引きずっていくか((
「……。」
一ミリも動かないんだけど、この人。
銀狼としての力をこんなところで使うなよ。
どうしたものかな……。
「福沢さん」
「……なんだ、乱歩」
「僕、ココアが飲みたいなぁ」
「……。」
「飲みたいなぁ」
「早く行くぞ、ルイス」
「えぇ……」
小走りで行く福沢さん。
乱歩の方を見るとウインクしていた。
「……行ってきます」
仕方なく、僕も福沢さんを追いかけることにした。
---
No side
「愛されてますね、乱歩さん」
「まぁね」
「それにしても、社長ってあんなに寒がりだったんですね……」
「僕より寒がりだからね、福沢さんは」
---
ルイスside
乱歩の云っていたココアを探しながら歩くこと数分。
「……全く見当たらない」
「まぁ、あの席から本部挟んで反対側だからね」
福沢さんからの返事がなくなった。
顔を覗いてみると、「うわぁ」と云いたそうな表情をしている。
「あ、与謝野さん」
「おや? 寒がりなのに社長も買い物に来たんだねぇ」
「乱歩がココア飲みたいって」
なるほどねぇ、と与謝野さんが笑う。
「……早く行くぞ、ルイス」
「あ、うん。それじゃまた後で」
与謝野さんの手にあったのはホットワインかな……。
僕も飲みた──。
『止めておきなさい』
「(えぇ……)」
『面倒見るの誰だと思ってるのよ』
アリスに止められた……。
「ルイス、乱歩のココア以外に何かいるか?」
「え、いや、うん、自分で買うから良いよ」
そうか、と福沢さんはココアとフィッシュ&チップスだけ買って帰っていった。
ワイン買っちゃ駄目だからな。
じゃあビール((
『ルイス?』
「……何でもないでーす」
さて、と僕は改めてパンフレットを開く。
「どうしよう……」
「ん?」
聞き覚えのある声。
振り返ると、敦君と鏡花ちゃんがいた。
困っているのは敦君だよな。
「どうしたの?」
「あ、ルイスさん」
「ここは……クレープが売ってるところか」
財布を見つめている敦君的に、何を買うか迷ってるのかな。
「二人とも、どれが食べたいの?」
「……苺」
「僕はチョコのやつなんですけど、まだプレッツェルを買えてないのでどうしようかと……」
「すみませーん」
有無を云わさず、僕は購入する。
「ルイスさん!?」
「子供なんだから大人しく奢られてな。みんなはあっちのストーブのところにいるよ」
「……ありがとうございます、ルイスさん」
どういたしまして。
それだけ云って、僕はまたパンフレットに視線を戻す。
やっぱりウインナーが良いかな……。
でも、チュロスとかプレッツェル食べたい。
あ、ホットミルクティーのタピオカとか美味しそう。
「ルイスさん?」
「……おや珍しい」
お疲れ様、と僕は笑う。
声を掛けてきたのは芥川兄妹。
まさか二人がこんなところにいるとは思っていなかった。
「今日は探偵社とご一緒ですか?」
「そうだよ。二人は今日非番?」
「はい。折角なので私が兄さんを誘ってみたんです」
「兄妹の仲が良さそうで何より」
でも芥川君がこんな場所にいるの意外だな。
どうせなら樋口さんと一緒に来れば良いのに((
「芥川先輩! どこですか!?」
「樋口君、そう叫ばずとも芥川君は子供ではないのだ。銀と一緒にいるのではないか?」
「まぁ、十中八九そうだろうな」
この声は、と思っていると芥川君が頭を抱えていた。
気持ちは分かるけど。
「それでは、私達はもう行きますね」
「探偵社の面子に会っても問題起こさないでね」
「……はい」
芥川君の返事が遅かったんだけど???
「相変わらず芥川君は仏教面だねぇ」
「僕は昔より表情豊かだと思うよ、太宰君」
ねぇ、と僕は背後から声をかけてきた人物へ云う。
彼は笑いながら僕へ飲み物を渡してきた。
「お酒なら遠慮するよ」
「何故です?」
「アリスに止められてるから」
僕は別にお酒に弱くはない。
でも、最近あんまり飲めなくなってきたんだよな。
正確には二日酔いが酷い。
「一杯ぐらい良いじゃないですか」
「……まぁ、確かに」
『ルイス???』
「大丈夫だよ。一杯目がペトリュスとかじゃないんだから」
『ペトリュスだったら無理やりにでも止めてるわよ』
じゃあ良いってことか。
「……あ」
ルイスさん、と太宰君が空を指差す。
ふわりと雪の結晶が落ちてくる。
「ホワイトクリスマスなんて、何時ぶりだろう」
「雪を見ながら飲むのは良いですね」
「そうだね」
「じゃあ乾杯しますか」
僕は差し出されたコップを受け取り、笑う。
「迷ヰ犬に」
「……ルイスさんに云われるとは思ってませんでした」
「良いじゃん、たまにはね」
「|迷ヰ犬《ストレイドッグ》に、乾杯」
Merry Christmas, stray dogs.
てことで、いつも太宰さんと乾杯して終わってる気がする天泣です。
なんか書きやすいんですよね。
「迷ヰ兎シリーズ」はとりあえず、一話完結のルイスくんの話を入れていこうと思います。
是非ファンレターで感想をください。
それじゃまた。
番外編(?)
雑談ですね、はい。
ちゃんとルイス君関係です。
文マヨやってる人は分かるかな?
あの異能力名が書いてあるカード((語彙力は横浜湾に沈みました。
可愛いよなぁ…カッコいいよなぁ…
てことで、書いてみます←ゑ???
絵を描くことは正直苦手です。
でも私は
--- SSR[不思議の国のアリス]ルイス・キャロル ---
を作りたいんじゃあ。
もちろん他のキャラも作りたい。
けど画力のない私には無理だ。
まぁ、そんなこんなでアナログで下書き(?)を書いたから見て欲しい。
学タブとかじゃ開かないかも…
ガチで下手だから、そういう系のファンレターは送らないで欲しい…
自己責任でお願いします…
今日から33日間見れるから、
まぁ、うん、見なくてもいいよ
それじゃまた。
注意⚠︎
・下手
・アナログ
・本当にこれはルイス君なのか?
https://firealpaca.com/get/kOZmcOBU
迷ヰ兎と正月
ルイスがいつも以上にダラけてるだけ。
てか、雑。
天泣side
ワンダーランド。
そこはルイス・キャロルの異能力で生まれた異能空間であり、存在するが行くことは不可能な場所。
様々なエリアに分かれているのは、海嘯時代から読んでくださっている神読者様達ならご存知だろう。
過去の私を知らない人は是非「英国出身の迷ヰ犬」で検索してみてくれ。
おっと、露骨な宣伝はこの辺にしておこうか。
そんなこんなで、今回は私“海嘯”目線で送らせてもらう。
簡単にいうなら第三者目線だ。
さて、そろそろルイスくんの様子でも見に行こうか。
先ほど説明した通り、ルイスくんにはワンダーランドという自分の世界がある。
正月とか関係なく、彼はワンダーランドにいた。
その中でも、お気に入りの“ぬいぐるみのエリア”にいることだろう。
「……。」
おっと、ぬいぐるみの山から足が出ている。
あの足はルイス君で間違いない。
文スト世界ではチビに分類される162cmで、足のサイズは|4inch《22cm》と小さい。
話が脱線したね。
とりあえずあのままぬいぐるみの山に埋まっていたら、そのうち窒息するのではないだろうか。
誰か救出してくれないか、とは思ったけど普通の人は外からワンダーランドに入ってこれない。
あれ、これルイスくん詰んでね?
「うぇ?」
ガシッ、と足の掴まれたルイスくんがぬいぐるみの山から引っ張り出される。
もちろんルイスくんを救出したのは━━。
「何やってるのよ、ルイス」
「……疲れたから休憩中」
「今年始まったばかりなのだけれど」
それに何もしてないじゃない、とアリスがため息をついている。
初詣も初日の出も何も行ってないからね。
ルイスくんも、もちろん私だって。
そんなこんなで足を掴まれたままのルイスくんはアリスに引き摺られていく。
え、何この絵面めっちゃ面白いんだけどwww
幾つかエリアを超え、二人がやってきたのは謎のエリア。
そのエリアに足を踏み入れると、真ん中に炬燵が置いてある。
「え? 何で?」
「入らないのを福沢さんからもらったのよ」
ワンダーランドに電気はないのに、どうやって電気炬燵を使うのだろうか。
私もルイスくんも同じことを考えている。
とりあえず入ったルイスくん。
「……。」
え、そのまま炬燵へ潜ったんだけど。
出てこないし。
炬燵の中を覗いてみると、電気がついていた。
え、何故???
「ちょっとルイス。猫じゃないんだから出てきなさい」
「ジャパニーズ、コタツ、サイコウ」
「はぁ…(クソデカため息)」
呆れて何もいえない表情をしてるアリスって珍しいな。
ルイスくんの足を引っ張ると、炬燵ごと移動してくる。
炬燵の足でも掴んでるのか?
え、馬鹿だろ。
「ぼく、ここでいきる」
「駄目よ。まだ最終章とか季節ものの小説書き終わってないんだから」
ていうか、とアリスがまた溜息をつく。
「ワンダーランドに寒いも暑いもないでしょ」
ひょこ、とルイスくんが炬燵布団から顔を出す。
暫く無言が二人を包む。
「まぁ、いいじゃん」
完。
「“完”じゃないわよ!?」
「ありすぅ…うるさぁい…」
炬燵を転送するアリス。
ニコニコと笑っているものの、ガチギレしているのは言うまでもない。
「まだ14:23よ?(現在時刻)」
寒くて震えるルイスくんの足をまた掴んで引き摺りながら、アリスはまた別のエリアを目指す。
「……引きずられるの痛い」
「そう」
「……アリスが冷たくて辛い」
「へぇ、それは良かったじゃない」
「(´;ω;`)」
「え、気持ち悪」
「え?」
「え?」
二人を、また無言が包み込んだ。
完((
ということで、新年の挨拶は此方!
https://tanpen.net/novel/9697a788-094f-4d63-87b8-2edf30720ae8/
Chop! Chop! Chop! Chop! Chop! Chop! Chop!
ある日♪
隠れ家で♪
帽子屋は♪
遊んでた♪
三月ウサギ「ねぇマッドハッター!」
マッドハッター「何?」
三月ウサギ「やりたいことあるからぁ、ちょっと手を貸して欲しいのぉ」
マッドハッター「良いけど……何するの?」
三月ウサギ「えへへっ、それはやってみてのお楽しみぃ!」
マッドハッター「(可愛い)」
そうして、マッドハッターは三月ウサギに言われた通りに手を差し出した。
手は机の上に置かれ、動かないように指示を出される。
マッドハッター「(本当に何をするつもりなのかな)」
三月ウサギ「それじゃあ行くよぉ!」
三月ウサギが指を鳴らすと──。
--- 異能で小さくしていたナイフが現れた ---
三月ウサギ「──Oh!」
|I have all my fingers,《指が5本も揃ってる》
|The knife goes chop! Chop! Chop!《ナイフでチョップ!チョップ!チョップ!》
|If I miss the spaces in between《もしも狙いが外れたら》
|My fingers will come off!《指が落ちちゃうね》
|And if I hit my fingers,《刃が指に当たったら》
|Blood will soon come out.《血が出るかもね》
|But all the same I play this game《それでもゲームは続いてくよ》
|Cause that's what it's all about.《そういうものなのさ》
Oh!
Chop! Chop! Chop! Chop! Chop! Chop! Chop!
|I'm picking up the speed.《もっと早くしよう》
|And if I hit my fingers《指に刃が当たったら》
三月ウサギ「|hen my hand will start to bleed!《出血がはじまるよ》」
マッドハッター「で、一体さっきのは何だったの?」
三月ウサギ「分かんない!」
マッドハッター「……はぁ」
マッドハッター「(どうせ、どこかの動画配信サイトで見つけてきたんだろうな)」
たまに料理を作るよう見せてくるし、とマッドハッターはまた溜め息を吐いた。
もしも失敗して指が落ちたら中々の問題だ。
といっても、マッドハッターが痛い思いをするだけだが。
落とされた指を治すぐらい、コナンなら朝飯前。
マッドハッター「因みに、練習はどれくらいしたんだ?」
三月ウサギ「え? 練習ぅ?」
マッドハッター「……まさか」
三月ウサギ「一回もしてないよぉ」
マッドハッターは、何度目か分からない溜め息を吐いた。
三月ウサギにやらせたかっただけの小説でした☆
迷惑なんだが byマッドハッター
Happy Birthday,Lewis
Q.アリスと違って真面目に書いてないの(特に始めの方)は何故?
A.深夜テンション&思い付いてしまったから
1月27日。
今日はルイス・キャロルの誕生日だった。
ルイス「……うーん」
本日の主役は、何やら考え事をしている様子。
ルイス「何だっけなぁ……」
天井を仰ぎながら、何度も腕を組み直す。
その様子を見ていた探偵社員は、何も云わない。
否、云えないのだ。
ルイス「今日、何かの記念日だった気がするんだけど……」
何だっけ、とルイスは何度目か判らないため息を吐いた。
この阿呆はなんと、自分の誕生日を忘れていたのだ。
何かの記念日、までは出ているのに全く思い出さない。
しかも、この状況は一時間ほど続いている。
ルイス「敦君、心当たりない?」
敦「え、ぁ、そういうのは自分で思い出した方がいい気が……」
ルイス「まぁ、そうだよねぇ……」
この場にいたルイスを除く全員が思った。
「「今すぐにでもツッコミを入れたい……!」」
自分の誕生日を忘れる阿呆がいるだろうか。
否、実際此処にいるのだが。
この金髪の少年(26歳)は一体、日々なにを考えて生きているのだろうか。
誕生日は年齢を重ねるごとに迎えたくなくなる(|天泣《個人》の感想です)
しかし、この阿呆のようにド忘れする人間はいない。
因みにもう半日終わっている。
このまま残り半日も終わってしまうのではないだろうか。
そんな不安が探偵社には漂っていた。
しかし、そうはならない。
何故なら定時になった瞬間、マフィアの面々が『誕生日の歌』を歌いながら事務室へ入ってくるからだ。
定時は17時。
それまでの辛抱と思いながらも、探偵社員達の不安や緊張は募るばかりだった。
ルイス「……ぁ」
国木田「ど、うかされましたか?」
まさか思い出したのか。
国木田が恐る恐る声を掛ける。
ルイス「卵の特売……」
よくあるバラエティのように(?)全員同時に転びたくなった。
誕生日だったことを思い出したのかと思えば、まさかの“卵の特売”。
確かに卵の特売は12時からスーパーでやっていた。
今行っても、もう完売していることだろう。
ルイス「やらかした……早めに休憩もらおうと思ってたのに、最悪だ」
鏡花「ただいま」
探偵社の扉が開いたかと思えば、鏡花と谷崎兄妹が入ってくる。
三人の手には、大きなスーパーの袋が。
中身は━━。
谷崎「卵、お一人様三パックまでだったんですけどすぐ完売しちゃいました……」
ナオミ「でも鏡花ちゃんのお陰で九パック手に入りましたわ!」
鏡花「大変だった」
谷崎兄妹が卵を配り始め、ルイスも受け取る。
ルイス「本当にいいの?」
ナオミ「勿論ですわ。遠慮なさらないでください」
まだ夏よりはマシだが外に置いとくのは良くない、とルイスはすぐに異能空間へしまう。
ルイスは卵が手に入り、満面の笑みを浮かべている。
福沢「すまない、依頼が入ったのだが誰か行けるか?」
乱歩「パス」
敦「あ、僕が行きます!」
鏡花「私も」
国木田「いや、ここは俺が」
谷崎「僕が行きますよ」
与謝野「妾が行こうか?」
賢治「僕も行けます!」
福沢「……そんなに必要ないのだが」
太宰「間を取ってルイスさんでいいのでは?」
ルイス「君と僕にしようか」
太宰「ゑ」
この流れであの有名な「どーぞどーぞ」じゃねぇのかよ。
ルイスは福沢から資料を受け取った。
そして逃げようとする太宰の首根っこを掴み、ずるずると扉へ向かう。
太宰「ちょ、敦君助けて!?」
敦「気を付けてください、太宰さん」
太宰「ねぇ敦君!?」
ルイス「行ってきまーす」
さて、本日の主役が消えたがどうしたものか。
とりあえず時刻を確認する探偵社一同。
現在時刻12:45。
依頼にどれだけ時間が掛かるかは不明。
もしかしたら、17:00までに帰ってこない可能性も。
国木田「社長、どうされますか?」
福沢「……プランBに変更する」
説明しよう!
プランAはマフィアが突撃してくる。
そして、プランBはルイスがいない間にパーティーの撮影を終わらせるというものだ。
国木田「太宰に連絡をしておきます」
福沢「私は森医師に電話する」
残った探偵社員は思った。
「「本当に何してるんだ、彼奴」」
もちろん太宰もプランAについて理解している。
しかし、あの場をどうにかするにはルイスを連れ出すしかなかった。
太宰自身も出ることになるのは予想外だが。
森『まぁ、探偵社員の誰かがパーティーに参加できないよりは良かったんじゃないですか?』
福沢「そう思うことにする」
森『それにしても、私達が突撃するのはどうしましょうか。戻ってくる時間が判らないことには動けないのですが』
福沢「帰社については、太宰から連絡が来ると思われる」
それならまぁ、と森は頭を掻く。
森「では、連絡をお待ちしてますね」
中也「どうかされたんですか?」
森「太宰君のせいで5時に突撃できなくなっちゃった」
紅葉「何しとるんじゃ、太宰は」
全く、と紅葉は頭を抱える。
他の面々も何とも言えない表情をしていた。
ポートマフィア本部内にある、一番広い会議室。
そこに構成員、幹部、首領という中々おかしな面子が集まっていた。
もちろん彼らの目的は誕生日であるルイスを祝うため。
老若男女、役職関係なく愛されているルイスは凄い(?)
広津「では、どうされるんですか?」
森「彼方から帰社するときに連絡が来る手筈になった。だから、電話が来たら移動開始しようね」
立原「早くなるかもしれないし、遅くなるかもしれねぇってことか……」
樋口「まぁ、いつでも移動できるように準備しておきましょう」
各々がリラックスしている中、芥川は壁際で目を閉じていた。
仮眠を取っていると思い、誰も近づかない。
そもそも、あの“禍狗”に近づこうと思う者などいないが。
銀「兄さん」
あ、いたわ。
芥川「……銀か」
銀「昨日も遅くまで仕事だったんですから、寝るなら仮眠室を使った方が━━」
芥川「眠いわけではない。少し、昔のことを思い出していたのだ」
銀「昔のこと、っていうとマフィアに入る前ですか?」
あぁ、と芥川は開いた目をまた閉じた。
昨日のことのように思い出せる出来事の中の一つ。
ルイスとの出会いは、それほどまで芥川の中で大切な記憶になっていた。
銀も同じだ。
芥川「……こうやって生誕を祝えるのは良いことだな」
銀「そうですね、兄さん」
少し時が経ち、探偵社。
太宰もいるというのに中々依頼を解決せず、ルイスは帰ってこなかった。
敦「何かあったんですかね……?」
国木田「救援が必要なら連絡が入るはずだ。そもそもあの二人に助けが必要とは思えないが」
敦は国木田の言葉に納得してしまった。
現在、マフィアとは休戦中であり組合戦のような大変な状態でもない。
そもそもルイスは元英国軍で、太宰は元マフィアだ。
戦闘面でも、頭脳面でも心配はいらない。
賢治「そういえばルイスさんって幾つになるんでしょうか?」
乱歩「26」
賢治「え、でも今の年齢も26ですよね?」
与謝野「賢治、深く考えちゃ駄目だよ」
谷崎「僕らも年齢変わってないですからね、10年間」
国木田「メタいな」
鏡花「でも、確かにずっと14歳やってる。原作は10周年迎えたのに」
敦「つまり僕は18歳じゃなくて28歳……?」
何メタい話をしてるんだ、こいつら。
え、させてるのは|作者《天泣》?
それは云っちゃ駄目だろ。
国木田「……ん?」
ふと、国木田が携帯を取り出す。
画面に映るは「ルイス・キャロル」の文字。
国木田「もしもし」
ルイス『あ、国木田君。ごめん」
国木田「ごめん?」
国木田は首を傾ける。
対してルイスは苦笑いを浮かべていた。
ルイス「迷っちゃった」
国木田『はい?』
いつもの地下鉄使ったのに、とルイスはため息を吐く。
何度か同じ場所を回っており、なかなか目的の八番出口に辿り着かない。
ルイスも太宰も、少し疲弊していた。
ルイス「まぁ、どうせ異能力の暴発か敵意を抱かれているかの二択だしすぐに帰るよ」
国木田『大丈夫なんですか?』
ルイス「うん。だから気にせず仕事とかしておいて」
国木田『わ、かりました』
電話を切り、ルイスはもう一度異能を使おうとする。
しかし、何も起こらなかった。
|異能空間《ワンダーランド》に行くことも出来なければ、鏡を出したりすることも出来ない。
太宰「ルイスさん、これについてなんですけど」
ルイス「なにこれ」
ご案内 Guide
異変を見逃さないこと
Don't overlook any anomalies.
異変を見つけたら、すぐに引き返すこと
If you find anomalies,turn around immediately.
異変が見つからなかったら、引き返さないこと
If you don't find anomalies,do not turn back.
8番出口から外に出ること
To go out from Exit 8.
ルイス「今の表記は……“0”か」
太宰「異変ってなんですかね」
ルイス「まぁ、とりあえず進んでみようよ」
角を曲がり、何度か通った道が目の前に広がる。
前からは|勤め人《サラリーマン》であろう男性が歩いてきた。
右手には三枚の扉。
“分電盤室”に“従業員専用”、それから“清掃員詰所”。
一般人のルイス達は、もちろん何処にも入ることはできない。
左手には六枚の広告があった。
“歯科医院”、“アルバイト募集”、“ドッグサロン”、“司法書士”、“メイクアップ写真展”、“ミュージックフェス”。
太宰「順番とか時間も覚えておきましょうか」
天井にある案内看板の表は“ ↑ 出口8”、裏側には“↑ 地下広場”と書かれている。
まぁ、ルイス達が戻っても地下広場なんてないわけだが。
ルイス「太宰君なら覚えられるだろうし進もうよ。早く帰りたい」
太宰「私任せですか? まぁ、良いですけど」
ルイスと太宰が進み、案内の表記は“1”に変わる。
今のが異変のない状態。
つまり先ほどの状況と次の状況を比較すれば良いということだ。
太宰「……異変はなさそうですね」
一度覚えたことは、なかなか忘れない。
ルイスも太宰もそんな天才だったのでサクサクと進む。
たまに扉が開いたり、広告が怖い画像になっていたりしたが即座に気づく。
普通にこの二人を閉じ込めたのは間違いだろう。
そんなこんなで、ルイス達は“7”まで進むことができた。
太宰「それにしてもおかしな異能ですよね」
ルイス「……と、云うと?」
太宰「何て云ったら良いんでしょうか。異能者に触れなければ解除できないのはまだ良いのですが、こういう場合って外部との連絡が取れない筈では?」
確かに、とルイスは携帯を見る。
特に使えない機能もなく、メールなどもしっかりと届いていた。
太宰「もしかしたら、これは異能ではないんじゃ……」
ルイス「ま、僕達はただ出口を目指す。それだけだ」
太宰「……そうですね」
異変がないように感じた二人は道を進み、案内を見る。
ルイス「はぁ……やっと“8”だ」
太宰「階段が出ますかね」
安心していた二人の前に見えた人影。
また|勤め人 《サラリーマン》かと思ったが、違う。
こんなに早く此方側にはいなかったのだ。
ルイス「……ぁ」
ルイスは、足を止めた。
白い髪に赤い瞳。
見慣れた英国軍の服は、ルイスが着ていたものと違って女性らしさがある。
何度、会いたいと願ったことか。
ロリーナ「ルイス」
ルイス「ロリーナ……ッ」
無意識に進もうとする足を、ルイスは必死に止める。
これは、確実に異変だ。
でもルイスに戻ることは出来なかった。
異変と認めると云うことは、ロリーナがもうこの世にいないと認めることでもある。
太宰「……ルイスさ──」
ルイス「趣味が悪い」
太宰「……。」
ルイス「ごめんね、太宰君。出来れば手を引いてもらいたい」
太宰「……判りました」
ルイスは太宰に手を引いてもらい、来た道を戻る。
ロリーナ「ルイス! ……ねぇ、ルイス、行かないで」
名前を呼ばれても、二人は止まらなかった。
太宰が一歩前を歩いていき、ルイスが涙を拭いながら進む。
ロリーナ「太宰君」
太宰「……!」
ロリーナ「ルイスとアリスのこと宜しくね」
太宰「……勿論、判っていますよ」
来た道を戻ると、階段が見えてきた。
二人が上っていくと同時に、異能空間は消滅する。
ロリーナ「|何で置いていったの、莫迦《Happy birthday. The person I love.》」
八番出口から出たルイスと太宰を、夕日が照らす。
太宰「帰りましょうか」
ルイス「……うん」
探偵社に着いた太宰が扉を開けようとする。
しかし、足音が止まった。
太宰は振り返り、ルイスの方を見る。
ルイス「今日が何の日か、本当は忘れてなかったんだ」
太宰「……あの方がロリーナさんですね」
ルイス「うん」
太宰「誕生日は嫌いですか?」
ルイス「少し、僕だけ年を重ねるのが怖くてね。ロリーナも、みんなも、あの戦争で死んでて、」
ルイスの手は震えている。
ルイス「僕は、幸せになっても良いのかな……?」
今にも泣き出しそうな、そんな少年のような顔をしているルイス。
太宰は少し考える振りをしてから、微笑む。
太宰「この先に、答えが待ってますよ」
太宰が扉を開き、恐る恐る目を開く。
ルイスは、その先の光景を決して忘れない。
昔も、今の仲間も。
どんな自分でも受け入れてくれた。
──Happy birthday, Lewis
時間がなくてとりあえずで投稿。
また後でちゃんとしたの書く。
お礼のファンレターは明日になるかもです。
すみません。
誕生日おめでとう、ルイスくん。
誕生日を迎えるのが怖かった
土日忙しくて、昼休みに頑張って完成させた((
ファンレターとか見てます!
良かったらこれにもください((
お祝いしてくれた方々、本当にありがとうございます!!
あ、よかったら前回の小説からどうぞ
https://tanpen.net/novel/7e06664a-a7ed-47f1-b189-92dfd26b656e/
誕生日を迎えるのが怖かった。
また、あの戦争で命を落とした皆と違って僕は一つ歳を取る。
善人である皆が死んでいる事実が辛い。
そして何より、僕が今も生きていることに気持ち悪くなる。
僕は、生きているべきじゃない。
そう何度思ったことか。
でも僕は気付いてしまった。
否、やっと目を背けることを辞めた。
辛くても、苦しくても。
僕は迷いながら、生きていかなくちゃいけない。
そしてこの街には、この場所には共に歩む仲間がいる。
「幸せになってもいいのか」
太宰君の言う通りだ。
その答えは、扉の向こうで待っていた。
僕は、恐る恐る先を見る。
目を開けると同時に、クラッカーの音が鳴り響いた。
「「happy birthday !」」
少し前の僕に教えてあげたい。
組織に入り、仲間を作ることは確かに怖い。
けど今、この繋がりを後悔していない。
人は、一人じゃ生きていけない。
そんな簡単なことを、どうして気付いてなかったんだろう。
まぁ、視界が狭くなりすぎていたんだと思う。
「……ぁ、りがと、みん、な……ッ…!」
視界が歪む。
涙が溢れて止まらない。
僕、生きてて良かった。
---
流石にマフィアの面々もいると、少し探偵社は狭く感じるわね。
でも、この場に全員がルイスの為に集まっている。
ルイスはもうこの街の一員と云えるでしょうね。
森「誕生日おめでとう、ルイス君」
ルイス「あ、森さん」
森「昔と違って、今年は楽しめそうで何よりだよ」
ルイス「……まぁ、やっと気付いたって云うか、目を背けることを辞めたので」
森「……そうか」
優しく笑った森さんを見て、ルイスは何とも云えない表情をしている。
嬉しいそうな、恥ずかしそうな。
そんな笑みを浮かべながら。
エリス「誕生日おめでとう、ルイス!」
ルイス「ありがとう、エリス」
エリス「ルイスみたいなぬいぐるみを見つけたのよ。可愛いでしょ?」
ルイス「凄く可愛い…」
エリス「私が選んだんだから当然ねっ!」
それにしても、とルイスは振り返る。
ルイス「皆ぬいぐるみしかくれないんだけど。え、僕がぬいぐるみ好きなの馬鹿にしてる?」
乱歩「仕方ないでしょ。ルイス=ぬいぐるみ大好き人間のイメージが強いんだから」
ルイス「ぬいぐるみ大好き人間!? なにそれ!?」
乱歩「事実でしょ?」
ルイス「ま、まぁそうだけど……」
谷崎「結局、殆どの人がぬいぐるみですよね。僕達もですけど」
ナオミ「違う人と云えば……マフィアの幹部さんですかね。あと太宰さん」
敦「芥川も違いましたよ」
鏡花「……意外」
敦「待って、双黒でぬいぐるみあげてるの僕だけじゃ((愚者め。 あ、芥川」
芥川「ぬいぐるみ等、ルイスさんは幾つでも持っている。そして被る可能性を考えたら、別のものを送った方がいいに決まっているだろう」
敦「……お前、太宰さん太宰さん云ってる割にルイスさんのこと好きだよな」
芥川「貴様より付き合いが長いからな」
ルイス「何喧嘩してるの、そこ」
鏡花「喧嘩じゃない。二人は仲良し」
敦「え?」
鏡花「二人ともルイスさんが大切で、尊敬してる。勿論私も」
ルイス「……そっか」
鏡花「あの人から何を貰ったの?」
ルイス「芥川君? えっとね、お茶とか和菓子のセット。凄い綺麗だったよ」
銀「私も一緒に選んだの。兄さん、一生悩んでいそうな感じがしたから」
芥川「銀!」
敦「……やっぱり僕もぬいぐるみにしなければよかった」
ルイス「僕は貰えるだけで嬉しいよ」
ルイスが笑うと、窓からノックが聞こえた。
視線を向けてみると、そこには見慣れた二人の姿が。
三月ウサギ「ハッピーバースデー!」
ルイス「うわっ!?」
窓を開けると同時に、三月ウサギは飛び込んでくる。
それを見ながら、マッドハッターもゆっくりと入ってきた。
緑のカラースーツと、赤のカラースーツ。
二人とも相変わらずハットを被っているわ。
敵意はないと判っていても、全員窓から入ってきた二人に集中してしまっているわね。
マッドハッター「誕生日おめでとう、ルイス。窓から入ってきて悪いね」
ルイス「どうせ転移に失敗したんでしょ?」
マッドハッター「あんま云わないであげてくれ。本当に人前に出なくなる」
三月ウサギ「はい! これ私達からのプレゼントだよぉ!」
ルイス「……これって」
マッドハッター「いつも通りクッキーを焼いたのと、君に合いそうなブローチ。兎だし、可愛いだろう?」
ルイス「ブローチなんて、何時つけろって云うんだよ」
そう云いながらも、ルイスは笑っていた。
その様子を見て、帽子屋の二人は顔を見合わせる。
マッドハッター「必要なのは僕達じゃなくて、新しい仲間だったんだね」
三月ウサギ「……ちょっと寂しいかもぉ」
隣に並ぶことはできないのか。
そう云いたそうな三月ウサギの頭を、マッドハッターは優しく撫でた。
それを見て、ルイスは二人を抱き締める。
三月ウサギ「る、いす……?」
ルイス「君達が、道を示してくれたから僕は此処にいる。この街が今の居場所だけど、僕にとって君達は……|英国軍《あの場所》は……っ……」
アーサー「……莫迦、全部云わなくても判ってる。ただ俺も、エマも寂しいだけだよ」
エマ「たまに連絡してよね、ルイス」
ルイス「勿論だよ。|御茶会《ティーパーティー》も沢山しよう」
彼女のところにも、行かないと。
ルイスが小さく呟いたことは、アーサーとエマしか知らない。
マッドハッター「それじゃあ僕達はもう行くね」
三月ウサギ「またねぇ!」
ルイス「……うん!」
それから数時間後。
日が沈み、すっかり暗くなった街をルイスは見下ろしていた。
探偵社の入っているビルの屋上にいるのだ?
太宰「改めて、お誕生日おめでとうございます」
ルイス「うん、ありがとう」
太宰「……答えは見つかりましたか?」
ルイス「君の言う通り、扉の先に待っていたよ。今じゃ“幸せになってもいいのか”なんて考えてた自分が馬鹿らしい」
太宰「そう思えたなら何よりです」
にしても、とルイスはポケットからあるものを取り出す。
ルイス「僕、君の前で吸ったことあったっけ? というか、煙草吸うことを話した覚えもないんだけど」
太宰「何度か見かけたことはありますよ。まぁ、ルイスさんは気付いてませんでしたけど」
ルイス「……煙草臭い?」
太宰「いえ全く」
ルイス「なら良いけど。敦君辺りにはバレてるかもなぁ……虎の嗅覚凄いし」
太宰「バレていても気にされてないのなら良いのでは?」
ルイス「まぁ、今は殆ど吸ってないからね。何か云われたら完全に辞めるかも」
太宰「別に私は辞めなくて良いと思いますけど。あ、一本ください」
ルイスは太宰君に煙草を渡す。
そして彼から貰ったライターで火をつけた。
煙草の細い煙は、空高くへ上っていく。
太宰「なんで始めたんですか?」
ルイス「“かぐや姫”を読んで、この煙もロリーナのいる場所に届くかなって。自分の誕生日とロリーナの誕生日、後は終戦日とかに吸ってる」
太宰「へぇ……なんかロマンチックですね」
ルイス「……そう?」
中也「あ! こんなところにいたんですか!?」
ルイス「どうかしたの?」
中也「解散しようってのに主役がいなくて困ってたんですよ。太宰はいなくても問題ないが、ルイスさんはいてください」
ルイス「中也君も吸う?」
中也「……珍しいですね、煙草なんて」
太宰「因みに中也からのプレゼントって何だったんです? ワイン?」
中也「残念だったな、太宰。正解は“日本酒”だ」
太宰「何で!?」
中也「あんま日本酒飲まないらしいから、お猪口とかもセットにして渡したんだ」
ルイス「中也君が一番お金かかってそうだよね」
中也「そんなことないと思いますが……」
太宰「予想外れたの不満しかないんだけど」
中也「まぁ、しょうがないだろ。俺も昨日思いついたし」
ルイス「そうなの?」
中也「ワインじゃ面白くないと思って、ずっと迷ってたんです。そしたら日本酒をあんまり飲まないこと思い出して」
太宰「むー……」
中也「って、こんな話してる場合じゃなかった。早く戻りますよ。そんな薄着じゃ風邪引きますって」
ルイス「はーい」
全く、中也君の言う通り風邪を引いたらどうするのかしら。
とりあえず、私の出番はこの辺で終わりかしらね。
ここまで読んでくれてありがとう。
まだ少し続くから、最後まで付き合ってくれると嬉しいわ。
それじゃ、また会いましょうね。
一応ナレーターのアリスでした。
---
解散して数分後。
ルイスに非通知で電話が掛かってきた。
『もしもし』
「色々と云いたいことはあるけど、最初に一つだけ云わせてもらうね」
『何でしょうか』
「趣味が本当に悪いな、お前」
『その口調、昔に戻ったみたいですね』
「君は僕の昔を知らないだろ」
『そういうことにしておきましょうか』
今はまだ、と電話の向こうで笑う声が聞こえる。
「最悪の誕生日プレゼントをありがとう、魔人君」
『おや、感謝は伝えてくれるんですね』
「祝う気持ちはあるんでしょ、一応」
『一応ではなく、ちゃんとありますよ?』
「何処までが本当なんだか」
『信用されていませんね』
「それにしても随分暇なんだね。僕の為に“頁”を使うなんて」
『……よく気づきましたね』
「未観測の異能とも考えられるけど、太宰君が“異能じゃない可能性”を教えてくれたからね。そして彼女が登場すれば、君のせい以外あり得ない」
『“お陰”ではなく“せい”ですか。誕生日に彼女に会えて嬉しくなかったんですか?』
「君への怒りの方が勝ったね」
『残念です。では、逆探知とかされたら嫌なので切りますね』
「……そう」
電話の切れた音が、ルイスの耳元で響き渡る。
携帯をしまい、深呼吸をし、ルイスは|異能空間《ワンダーランド》へ帰るのだった。
この後はアリスとお茶会して、英国軍でパーティーして、墓参りに行きましたとさ((
「いや、雑すぎでしょ」
もう書けないんだもん。
「えー……」
改めまして、天泣です。
ルイス君と歩んで一年ちょっと。
最終章もちょっとずつ更新していくと思うので、応援よろしくお願いします。
気が向いたらファンレターください((
あと、学タブ勢が見れない可能性があるんですけど良かったら。
ピクルーで立ち絵(?)作って作りました。
https://d.kuku.lu/s5cw86c6v
ルイス君、これからもよろしくね。
迷ヰ兎とチョコマフィン
今日はこれを投稿するから最終章はお休み☆
因みに最終章のネタバレ的なの含むよ☆
No side
今から十年以上前の2月14日。
そう、その日はルイスとロリーナが英国軍に入って初めてのバレンタインだった。
しかし、戦場に立っていた軍人達にはチョコレートを贈り合う余裕なんてない。
送り合うのは互いの国の兵士。
型にチョコレートを流し入れることはなく、ただ血が流れる。
ロリーナ「甘いもの食べたい」
ルイス「急だね」
戦闘と戦闘の合間。
二人をはじめとした英国軍異能部隊はつかの間の休息を取っていた。
ロリーナ「だって今日は2月14日だよ? バレンタインだよ?」
ルイス「それぐらい知ってる」
ロリーナ「対して美味しくない料理を毎日食べて、戦って、寝て、奇襲で起きて。今日ぐらい甘いものが食べたい!」
ルイス「君、それ何かの行事ごとに云ってるよね」
だって、とロリーナは手に持っていた剣で地面に絵を描く。
ケーキにプリン、果物。
地に描かれた食べ物達を見て、ロリーナは微笑む。
ロリーナ「いつか一緒に食べようよ、ルイス」
ルイス「……僕と?」
ロリーナ「うん。ルイスは英国軍のご飯しか知らないでしょ? この戦争が終わったら、私のおすすめのお店に連れてってあげる!」
ルイスは少し首を傾け、そして小さく笑った。
ルイス「──……楽しみにしてるよ」
ロリーナ「あ、ルイスが笑った!」
ルイス「……。」
ロリーナ「あぁ! いつもの真顔に戻っちゃった!」
シャルル「楽しそうだな、二人とも」
ルイス「あ、隊長」
ロリーナ「隊長! さっきルイスが笑ったんですよ!?」
シャルル「……そうか」
笑ってー、とルイスの頬を引っ張るロリーナ。
シャルルは二人の様子を見て、優しい笑みを浮かべるのだった。
その日の夜食。
ロリーナ「なっ……!?」
コナン「どうしたんですか、このチョコマフィン」
シャルル「秘密だ」
コナン「……まぁ、隊長が用意したものなら毒の心配はないか」
シャルル「全員分あるから、焦らずにちゃんと並んでくれ」
ロリーナ「はーい!」
ルイス「……これ、何?」
ロリーナ「チョコマフィン!」
ルイス「美味しい?」
ロリーナ「美味しい!」
じゃあ、とルイスはシャルルから貰う。
そして一口食べてみた。
ロリーナ「ど、どう……?」
ルイス「……美味しい」
ロリーナ「──っ、そっか」
コナン「お、ルイスが笑ってるじゃねーか。珍しい」
シャルル「……最後の一つも食べていいぞ、ルイス」
ルイス「隊長の分は?」
シャルル「私は毒味で食べているからな。余っていたこれはルイスが食べるといい」
ルイス「でも……」
コナン「最年少なんだから我慢すんな」
ロリーナ「私も最年少なんですけど!」
ルイス「じゃあ、ロリーナが食べたらいいよ」
コナン「心配すんな、ルイス。ロリーナには俺のやつを渡すからな」
ロリーナ「良いんですか!? いや、でも一人一個だし……」
コナン「正直、俺は甘いものがそんなに好きじゃない。遠慮するな、ロリーナ」
ロリーナ「あ、ありがとうございます……!」
---
「……懐かしい夢を見たな」
時は現在に戻り、英国軍の拠点のある一室。
シャルル・ペローは少し首を回したりした後、窓の外に広がる青空を眺めた。
窓を開ければ、少し冷たい風が部屋に入り込んでくる。
「失礼しまーす」
そんな声と同時に扉が開く。
シャルルが振り返ると、そこには箱を持ったコナン・ドイルがいた。
「チョコマフィン、食べません?」
「……頂こう」
(ルイスによる飛び蹴りが天泣を襲う…‼︎)
四月莫迦で投稿したかった奴です。
正直、存在忘れてた。
まだ四月だから良いよね((ルイスによる飛び蹴りがry
国立|迷兎《めいと》学園。
それはヨコハマにある、世界一入学の難しいと呼ばれる中高一貫校。
元々の偏差値が高いことはもちろん、一番な理由は募集人数が30名というところだろう。
在籍生徒は全校で180名と少なく、まさかの倍率は例年10倍前後。
これは、そんな学園に通う迷ヰ兎達の物語。
---
季節は春、4月上旬だった。
3月中旬から咲いている桜も散ることなく、今日から学園に通う中学一年生達を祝福しているようだ。
???「━━よいしょ、っと……」
“立ち入り禁止”の張り紙が貼られている扉が開かれる。
屋上へやってきたその生徒は、立ち入り禁止にされていることなど気にしていない様子で寝転がった。
空は真っ青で、雲がゆっくりと流れている。
???「……ふわぁ」
眠い、と生徒は目をこする。
今日は中等部も高等部も、入学式があった。
今の時間帯は、高等部の入学式が行われていることだろう。
生徒のネクタイは緑色、つまり二年生だった。
在校生は教室で入学式の中継を見なくてはならないが、その男子生徒は今もなお屋上にいる。
まぁ、普通にサボりだ。
???「こんな暖かい日は昼寝か入水に限るね」
茶色の蓬髪、そして身体中に巻かれている包帯。
そんな個性豊かな生徒━━太宰治は、起き上がって大きな欠伸をした。
一眠りしよう。
そう太宰が思った次の瞬間、扉の開く音が静かな屋上に響き渡る。
???「サボりは感心しないよ、太宰君」
太宰「……うわっ」
太宰は思わず、顔を歪ませる。
金髪に翡翠の瞳。
外国の血が流れているであろう生徒━━ルイス・キャロルは開いた扉が閉じないように寄り掛かる。
ルイス「“うわっ”と云われると傷つくね」
太宰「中也ならまだしも、ルイスさん相手に鬼ごっこはしたくないです」
ルイス「相変わらず呼び捨てにしてくれないんだね、君」
同じクラスなのに、とルイスは屋上へと足を踏み入れる。
何故か太宰は入学時から彼のことを“さん付け”で呼んでいた。
本人曰く特に理由はないらしいが、ルイスは気になって仕方がない。
さて、とルイスが仰向けになっている太宰の顔を覗き込む。
ルイス「早く帰ろうか。先生も待っているよ」
太宰「待たせておけば良いじゃん。時間の無駄だよ、入学式のリモート参加なんて」
太宰は視線を逸らし、目を閉じる。
ルイスはため息をつくことしかできない。
太宰「━━?」
ふと、起き上がった太宰が辺りを見渡す。
ルイス「……どうかした?」
太宰「何か違和感があって」
ルイス「違和感?」
立ち上がった太宰は、格子の先に広がる校庭を見る。
誰もいない筈の校庭に見える、一つの影。
太宰「……あれは━━」
その瞬間、今まで経験したことのないような揺れがルイスと太宰を襲った。
初めのうちは地震かと思っていたが、確実に違う。
学校の塀の内側から空高くへと伸びる壁。
壁は空までも覆い尽くし、二人の脳裏にある仮説が浮かぶ。
━━閉じ込められた。
学園に閉じ込められるなど、意味が分からない。
状況把握の為にも、二人は教室に戻ろうとするがそれは叶わない。
太宰「ルイスさん━━?」
ルイス「うっ……ぐあぁ……」
しゃがみ込んだかと思えば、ルイスは床を転がり回る。
ずっと頭を押さえて、全く離さない。
太宰「何が起こって……っ」
--- 英国出身の迷ヰ兎~番外編~ ---
--- 国立迷兎学園物語 ---
--- 2024/04/01 連載開始━━ ---
ルイス「━━するかぁ!?」
天泣「え、しないの?」
ルイス「今やってる連載完結させてからにしろ!」
天泣「ルイスくんのキャラが崩壊してます」
太宰「理由? もちろん二週間サボってたからだよ」
天泣「サボってませんけど???」
太宰「どうやら天泣は“異能学園バトル”が書きたいみたいだね。でも一からは書けないから二次創作になって、私達が登場したと」
天泣「その通りです流石太宰さん」
太宰「この先の展開を簡単に話すと生存者と合流して、化け物と戦うらしいよ」
ルイス「誰か死者が出るの確定でワロタ」
天泣「ルイスくんの口調どうにかならないかなぁ…」
太宰「因みに後書きみたいなところは今(4/5)に書いてるよ」
天泣「だからキャラ崩壊してます☆」
太宰「とりあえず君はさっさと最終章(笑)でも書いたら?」
天泣「(笑)じゃないし!? ちゃんと最終章ですけど!?」
太宰「それじゃあ、また会おうじゃあないか」
ルイス「またねー!」
天泣「ばいばーい!」
太宰「あぁ、伝え忘れてた。
この物語を読みたいというコメントが一通くれば一話、三通くれば三話分書くらしいよ。
最終章は矛盾が生まれないように丁寧に書いてるけど、これはあくまで“四月莫迦”で創られる番外編。
つまり、適当でも構わないわけだ。
私はもちろん出るけど、他のキャラで優先して欲しい人がいれば是非教えてね。
天泣が書けるかは判らないけど、多分次の話で合流させてもらえると思うよ。
じゃあ、私はこれで帰らせてもらうよ。
今度こそ本当に“さよなら”だ。
また会おうじゃあないか、親愛なる読者の諸君」
Let's meet again
その日は突然やってきた。
世界一、否宇宙一の名探偵でも予想できなかった。
あれは確か、夕焼けが街を綺麗に染めていた秋の日のこと。
気がつけば周りには誰一人もいなかった。
頼りになる先輩も。
小言の五月蝿い相棒も。
こんな自身を慕ってくれる後輩も。
窓から街を見下ろせば、静寂が包み込んでいる。
涼しい風が彼の肌を優しく撫でるばかりで、音なんて何処からも聞こえない。
誰一人いない街。
そこに太宰治はたった一人だけ残されてしまった。
会社を出て、この街は全て見て回った。
やはり誰もいない。
人だけがまるでパッと消されてしまったようだった。
これがマジックならどれ程良かったか。
マジシャンが指を鳴らして全て戻ってくれば良かったのだが。
どうしたものか。
いや、どうもしなくていい。
いつも通り川に入水して海まで流されてしまえばいい。
網に掛かろうと、誰も助けてはくれないだろう。
迎えに来る人もいない。
やっと⬛︎⬛︎⬛︎のもとへ行けるのだ。
だが、太宰は橋の上でずっと立ち尽くしていた。
何を躊躇っているのか、彼は判らなかった。
良い川だ。
夕日が綺麗に映っているし、流れも穏やかだ。
こんな川で入水しないのは勿体ない。
ただ気になってしまうのだ。
本当に太宰しかこの世界にいないのか。
こんな疑問を残したまま死ぬのは惜しい。
太宰はヨコハマの街を飛び出して、一人旅を始めた。
とりあえず日本を一周することにした。
まぁ、誰も見つからなかったが。
次に目指すは海外。
海はどうにか船で渡った。
荒れて一時はどうなるかと思ったが、死にはしなかった。
自身の存在は紙に書き残し、各国に置いている。
だが道中手に入れた無線機に反応がないということは、そういうことだ。
そもそも日本語が読めるとも限らないが。
この無線機が使えるのかも判らない。
何だかんだあって太宰は日本へ、ヨコハマへ戻ってきた。
見た目が植物などで変わり果てた街でも、道が無くなったりはしていない。
記憶を頼りに戻ってきた彼の居場所は、不思議なことに綺麗なままだった。
会社のあるフロアだけ、綺麗に保たれている。
「……やぁ」
声が聞こえた。
人が消えてから初めて聞いた、自身以外の声。
「君なら世界一周して此処に戻ってくると思っていたよ」
久しく話していなかったからか、太宰の声は出なかった。
風が喉を通りすぎるだけ。
そんな彼の様子を見て、お茶を用意していた青年は抱き締めた。
青年と呼ぶには少々幼すぎるが。
男と抱き合う趣味はない。
それは、いつか太宰が云った台詞だ。
でも今だけは、このままでいたい。
そんな太宰の気持ちを知ってか、はたまた知らずか。
青年は優しく頭を撫でていた。
「さて、落ち着いたかな?」
コクリ、と太宰は小さく頷く。
180cmを超えている筈の彼がまるで迷子の少年に見えた。
昔の彼は幼子の皮を被った神のようだったが、時の流れというのは凄いものだ。
「とりあえず僕が此処にいるのは人間じゃないからだ」
「い、なり……ぃこと、ますね」
「……無理してしゃべらなくて良い。それに、長旅で疲れてるでしょ?」
そんなことは、と少し云うも青年は立てた人差し指を唇に当てた。
「大体なら君の云いたい、というか聞きたいことは判る。この世界には君しかいないよ」
「……!」
「或る異能力の暴走で人間が全員いなくなった。否、僕達が別世界に飛ばされたのかもしれないね」
「そ、れは──」
もう誰にも会えないと云うこと。
太宰はいつも冷静で、他人にさほど興味がない人間だった。
でも今は少しだけ動揺しているように見える。
「……。」
そんな彼の様子を見て、青年はお茶を一口含む。
何を考えているのか分かりにくい表情をしていた。
「……る、ぃすさ、」
「何かな」
「ど、して……嘘をつく、ですか?」
「──。」
何かを云いかけて、微笑む。
青年は嘘をついた。
彼ら二人以外に誰もいないのは事実だ。
だが理由に気づいていないのは、嘘。
流石だね、と青年は立ち上がった。
そして彼へと近づき、また頭に手を乗せた。
「外はもう安全だよ。君以外は全員無事」
「待ってください、ルイスさん──!」
「……夢から醒める時間だ」
「──あ、れ……?」
太宰が気がつくと、そこは見慣れない天井だった。
自身が目覚めたと同時に抱きしめてくる敦。
動揺は隠せず、思わず抱き返した。
「心配したんだぞ、この大莫迦者」
「……国木田君」
彼が眠っていたのは或る病院の|寝台《ベッド》。
どうにか起き上がると、探偵社が殆ど全員いた。
三人の姿だけない。
社長に、乱歩に、与謝野。
嫌な予感がした太宰は青年の、居場所を問い掛ける。
すると、カーテンで遮られていた隣の寝台から名探偵が顔を覗かせた。
「太宰、落ち着いて聞いてほしい。ルイスは──」
良かったのか、と私は問い掛ける。
青年はその問いに首を傾げていた。
「ちゃんと挨拶は出来なかったけど、乱歩に預けてある。それに僕なんて居なくても問題ない」
問題しかないだろう。
「君がそれを云う?」
確かに、私が云うのもおかしい話だ。
けれども残された側の傷はそう簡単に癒えない。
それはお前が一番わかっていると思っていたのだが。
「……。」
青年は何とも言えない表情をしていた。
思ったことを素直に伝えることしか、私には出来ない。
それで何か心境の変化があろうが、なかろうが。
私達はこの場所に囚われているのだから変われない。
「……ねぇ、織田作さん」
ことん、と青年は私へ体重を預ける。
「僕、もっと色んなものを見たかった。これから皆がどんな道を歩むのか、世界がどう繋がっていくのか」
どう反応したら良いか分からず、とりあえず青年の頭に手を乗せた。
少しすると目に涙が浮かんでくる。
「太宰君、僕のこと恨んでるかなぁ……?」
ぽつぽつと、青年は誰かの名を呼んだ。
もう会うことの叶わない、仲間達の名を。
世界の狭間。
彼岸と此岸の間に位置する、不思議な空間。
普通なら迷い込むことのなどなく、何もない筈だった?
何故か此処へやってきた私と、
この世界から嫌われて此処へ追いやられた青年。
二人だけの狭間世界。
亀裂から見える彼らの姿を私達は見守るだけだ。
迷ヰ犬の幸せを、心から願っている。
「……織田作?」
探偵社。
自分の机で目を瞑っていた太宰は、ふと顔を上げた。
「太宰」
「……乱歩さん」
「これ、預かっていたものだ」
事件から数日。
いつも以上に生きているのか死んでいるのか判らない太宰に、名探偵は一通の封筒を渡した。
誰からの手紙かは、聞くまでもない。
太宰は受け取り、謎の焦燥感に駆られながら封筒を開けた。
「━━Let's meet again, Mr.Lewis」
---
**誰得!?解説コーナー!!**
ということでやってまいりました第127回「誰得!?解説コーナー!!」です特にコーナー名を強調した意味はない今日この頃の|私《わたくし》天泣は私にわざわざルビをつけた意味もありませんそして127回もこのコーナーやってないでしょうやってませんよねこれ初回ですよね誰か教えてくださいと書いたところで読者がブラウザバックしそうだから一旦落ち着きましょう。
まぁそんなこんなで「誰得!?解説コーナー!!」を始めます。
なんか異能組織との戦いがあって、一人異能じゃない力を持ってる人がいました。
力自体は「死ぬまで悪夢に囚われる」ってやつで、無効化しようとした太宰に掛かっちゃいました。
で、ルイスがどうにか昔の繋がりをワーってやって太宰の夢の中に入りました。
太宰を夢から追い出してルイスが囚われることで目覚めたけど、ルイスはそのまま永眠…
一応|「」《かっこ》以外は織田作の台詞(?)をイメージしてみた。
あとはルイスのことをなるべく青年と呼ぶようにしてます。
彼=太宰にしたくて。
ちょくちょく織田作を書きたいシーズンがあるのは何だろうね。
やっぱり好きだからかな。
そして死ネタを久しぶりに書いたけど、ムズイなやっぱり。
あんまり死ネタっぽくなかったかも。
ここからは妄想。
太宰の夢に誰もいなかったのは、意外と人間を愛していたから。
今の日常を心地よいと思っていたから、誰もいなくなった。
結局ルイスと織田作はどこにいたのか問題。
一応、文中にもあるように「狭間世界」です。
太宰達のいる「此岸/この世」と六蔵少年達のいる「彼岸/あの世」の間にある世界。
願えば大抵のものは手に入り、織田作はルイスが来るまで紙とペンを願って小説を書いていた。
たまに「亀裂」で彼岸を見守っていた。
何か他にも書きたいことあった気がするけど、とりあえず解散で。
衝動書きand後書きにお付き合いいただきありがとうございました。
Let's meet again/また会いましょう
2025のエイプリルフールは雑だ☆
英国ロンドン。
栄えている街にも裏社会というものはある。
武器に麻薬に、人だって。
一歩路地裏へ足を踏み込めば其処はもう裏の世界が広がっている。
そんなロンドンには表社会でも裏社会でも有名な組織があった。
構成員は、前の戦争で生き残った英国軍人が五名だけ。
軍は終戦と同時に抜け、現在は万事屋として活動している。
そんな彼らだが、活動拠点は不明だった。
ロンドン内、とは云われているが本当のことは誰も知らない。
否、一人だけ知っていた。
ヴィルヘルム「…はぁ」
ヴィルヘルム・グリム。
終戦後も上層部として軍の運営などをしている男。
何故、彼が万事屋のことを知っているのか。
理由は簡単。
軍警では「Yes」と云えない案件を流しているからだ。
世間的に英国軍は正義の味方でなければならない。
そんな規約の中で出来ることなんて、たかが知れている。
ヴィルヘルム「欧州諜報員が行方不明、って云われてもな」
彼奴らに頼むしかないじゃないか。
そう、ヴィルヘルムは何度目か分からないため息を吐いた。
ヴィルヘルム「おい、ルイス・キャロル」
ヴィルヘルムは姿見の前に立って語り掛けた。
すると鏡から光が放たれる。
鏡としての機能は失い、少年の姿が映し出される。
金髪に、鮮やかな新緑の瞳。
見た目の割には、表情は大人びて見える。
ヴィルヘルム「あの女に良いように使われるのは癪だが、放置しておけないのも事実だ」
ルイス「前置きは結構。僕達はどうしたらいい?」
ヴィルヘルム「…喜べ。日本へ無期限の旅行だ」
何か云おうとして、口を閉じる。
それを何回か繰り返したところでヴィルヘルムは説明を再開した。
ヴィルヘルム「女王暗殺未遂は覚えているか? で、その犯人は暗殺王“ポール・ヴェルレヱヌ”という話だ。対象は日本にいる。どうやら弟を探しているようだな」
ルイス「情報量が多すぎるから一度黙れ」
ヴィルヘルム「……上司に向かってその言葉使いはどうかと思うが」
ルイス「敬っていないからな」
ヴィルヘルム「そうか。話を戻すと《時計塔の従騎士》はメンツを潰されて激おこぷんぷん丸なわけだ」
ルイス「ざまぁないな」
ヴィルヘルム「“ポール・ヴェルレヱヌ”の確保が今回の依頼だ」
???「その件はもう|欧州刑事警察機構《EUROPOLE》が動いてるはずじゃないのかしら」
いつの間にかいた少女に、二人は驚くことはなかった。
ルイスと同じ金髪だったが此方の方が圧倒的に長い。
窓から入ってきた優しい風で金髪と資料が揺れる。
ヴィルヘルム「その通りだ、アリス。だが念の為、らしい」
アリス「面倒ねぇ。それこそメンツを潰されて激おこぷんぷん丸なら《時計塔の従騎士》自体が動けば良いじゃない」
ヴィルヘルム「女王暗殺未遂で人手が足りてないんだか何だかで此方へ回ってきた。兎に角、無期限旅行に行ってこい。私にも君達にも悪い話じゃない」
ルイス「と、いうと?」
ヴィルヘルム「日本の旧国防が行っていた人工異能研究。あれの成功例──《荒覇吐》改めA5158の中原中也。ヴェルレヱヌが弟と呼んでおり、今回の暗殺対象のようだ」
ルイス「《荒覇吐》ねぇ……」
アリス「もしも本当に暗殺対象なら、私達も狙われないとおかしくないかしら?」
ヴィルヘルム「……目的は確保だ。歩く国家機密であるヴェルレヱヌから何か聞けば君達の立ち位置がより危うくなるぞ」
アリス「なら、大人しくしてようかしら」
ルイス「……。」
アリス「ルイス?」
ルイス「……いや、何でもない」
---
🌧️「という夢を見たのだ〜☆(フランドールスカーレットの真似)」
🕰️「そのネタが通じる人がどれくらい居るんだか」
🌧️「え、結構いるんじゃない? 東方の小説書いてる人多いじゃん」
🕰️「その中でこの小説の雑談部分まで見る人がどれほどいると思ってる?」
🌧️「さぁ?」
🕰️「ぶん殴りたい」
🌧️「ということで毎年恒例|四月莫迦《こんな漢字だったきがする》!」
🕰️「ルビで何を言ってるんだ君は」
🌧️「正直なところ、1月にこの後書きを書き始めておりまして」
🕰️「はい???」
🌧️「どこまで小説が進んでるかは4月1日に予約投稿されるまでわからない☆」
🕰️「莫迦なのか???」
🌧️「まぁ、どうせエイプリルフールだからね。雑でなんぼだよ」
🕰️「誰かコイツの頭を叩いて直してください」
🌧️「誰が昔のテレビだ」
🕰️「天泣☆」
🌧️「泣くぞ」
ということで一体何処までどうなってるのかしら???
面白かったらファンレター欲しいなぁ…
面白くなくてもファンレター欲しいなぁ…
それじゃまた!
ルイス・キャロル、十九歳
「……灰色なら、と思ったけど」
改めて考えると真っ黒だな、と高い高いビルを見上げながら呟く。
入口にはスーツにサングラスの銃を忍ばせている男達の姿。
ハットを外し、トランクを漁っていると目的の物はすぐに見つかった。
“銀の託宣”。
それはポートマフィア首領が直筆で書いた、幹部ほどの権力を持つことができる証明書。
なぜ僕が持っているのか。
それは配送屋を通じて届いたからだ。
依頼内容はポートマフィアをヨコハマで最も恐れられ、国も手を出せないほどの組織にする手伝い。
正直なところ、僕にできることはそう多くない。
戦場から下がった僕が出来るのは、作戦の指揮を取ることぐらいだろう。
この手で武器を掴むことは、もう出来ない。
「おい」
「……ん?」
「ここはガキが観光に来るところじゃねぇぞ」
あぁ、と僕は頭を抱える。
この身長のせいで子供に見えるのは仕方がない。
そして普通の格好でトランクを持っていたら観光客に見えることだろう。
「聞いてんのか、ガキ」
「ルイスだ」
「あ"?」
「僕はルイス、ルイス・キャロルだ。君より年下かもしれないけど、これでも立派な十九歳だ」
言葉を紡ぎながら、腕を持って脚をかける。
黒服の驚く声と同時に、同じく入口の警護に当たっている男が銃の|安全装置《セーフティー》を外した。
「本当に大丈夫なの、港街のマフィアさん?」
片脚は軸にしたまま一回転して銃を蹴り上げる。
宙を舞った拳銃は地に落ちても勢いが止まることがなく、入口から出てきた人物の足元に当たってようやく停止した。
「そもそも人を見た目で判断するのはどうかと思うよ? それに僕の手にある|銀の託宣《この紙切れ》が見えないわけ?」
あぁ、本当に視力が悪い奴らしかいないのか。
「出迎えが遅くなったな」
「……どーも。君が依頼人で合ってる?」
「あぁ。私がこのポートマフィアの首領だ」
「とりあえず、ちゃんと下級構成員まで指導した方がいいよ? 統率や報連相の出来ないんじゃ最恐の組織になんてなれやしない」
「彼らは処分する」
来い、と云った首領についていく。
後ろからは大人らしくない叫び声やら泣き声が聞こえる。
「……処分、ね」
ここは随分と人の命が軽いらしい。
強大な組織にしたいのなら、それこそ人数は必要だろうに。
そんなことを考えながら僕はなるべく後ろの音は気にしないようにした。
ポートマフィア本部前など、普通の人間は寄り付かない。
銃声が鳴り響いても、誰も気にしない。
角を曲がる時に見えた黒服の亡骸に、多少の罪悪感はあった。
ただ、裏社会で生きるなら──特に最近のポートマフィアに属しているなら言動には気をつけないとね。
「……というか、体調でも悪いの?」
「少し風邪が長引いてるだけだ」
「そっちは医者?」
「私はしがない闇医者だよ」
見覚えがある。
日本の軍の情報を見た時にいた筈だ。
「ま、何でもいいや」
僕は万事屋として依頼されたことをこなすだけ。
期間は三年。
それだけの報酬は用意されている。
あとは、ヨコハマから海を越えて英国に来たら面倒だから監視も兼ねている。
裏社会の争いは影でやってほしい。
じゃないと、僕が駆り出される。
「改めて依頼内容だが、潜入と作戦立案を頼みたい」
「……前線には立たされないんですね」
「それが“万事屋”のたった一つの規則だろう」
まぁ、と執務室より奥の私室へ通されていた。
首領は横になっている。
銀の託宣でそこそこ指示は出せるし、報酬分は働くか。
---
「莫迦なの? 正面から突っ込んだって無駄死にするだけだよ」
パンッ、と机に叩き付けた資料が起こした風で彼の髪が揺れていた。
これで準幹部か、と組織の壊滅的な状況に呆れる。
まぁ、溜息までは出なかったが。
とりあえず全て駄目な点は指摘しておいた。
「す、すぐに作り直してくるので命だけは……!」
「僕のことなんだと思ってるの」
「マフィアは失敗したら処刑されるのでっ、ぼ、僕の先輩も作戦立案の時点で──」
「それは上が狂ってるだけで、まだ“案”なんだから完璧じゃなくて当然でしょ。其奴は余程の完璧主義か、、、」
逆らえないのをいいことに、権力を振り回して人を殺すクソ野郎のどちらかだ。
「あ、あの……?」
「とりあえず相手組織の拠点をもう一度見直して、この人数なら奇襲作戦に切り替えることだね」
「奇襲作戦……」
「……何、そんな顔して。変なこと云った?」
「まぁ……って、いえっそんなことは!?」
「云っておくけど僕は人殺しはしない。例えそれが間接的だったとしても」
引かれている、というわけでは無いのだろう。
相変わらず考えていることの読みにくい準幹部くんの表情に、僕は混乱するばかりだ。
そんなことを思っていると、準幹部くんが無言に耐えられないのか口を開く。
「……“マフィアは畏怖されるべき存在で正面から敵を圧倒しないといけない”と、先輩たちから教わってきました」
「はぁ……それで?」
「奇襲は、先輩が処刑された原因なんです。誰もが当時動けるメンバーから奇襲を考えていたのに! 《《アイツ》》は笑いながらっ、莫迦にしながら先輩に銃を向けた! 周りも一緒に笑うしかなかった!!」
「……はぁ」
「最近のマフィアはどんどんおかしくなっているんだっ、君のような子供が何者かも分からないっ! だのに君は、君は僕の思っている本当の作戦をスラスラと……っ」
何となく状況は分かった。
「一ついい?」
「……何ですか」
「なぜ僕に確認を取りに来た? 仮のマフィア──“銀の託宣”を持ってるだけの万事屋だとしても君の処刑することなんて容易い」
“銀の託宣”とは、そういうものなのだ。
幹部さえも顎で使える。
そんな効力を持った只の紙切れ。
「……自殺する勇気もなければ、敵組織の拠点に突撃する勇気もない。この作戦が通れば沢山の黒服が命を落とすのが、僕は許せなかった」
「つまり部外者の僕に殺されたかったと」
「ははっ、よく分かりますね」
「それなりの死線は潜り抜けてきたからね」
悪いけど、と僕は立ち上がって執務室を出ようとする。
「人殺しの趣味はないんだ。他を当たってくれ」
廊下に出て、扉を閉めると僕は壁に寄りかかりながらしゃがみこんだ。
他の組織と戦っていて死者が多い。
三年という期間が長く感じる。
正直、今のポートマフィアは組織として最悪でしかない。
「紅茶でも飲もう」
そう給湯室に向かって扉を開く。
「……。」
そして、そっと閉じた。
「Why would you hang yourself in a place like this!?」
咄嗟に取り出したナイフを投げれば、ロープは切れた。
壁に刺さっているのとか関係ない。
意識は、息は、心臓は動いているか。
焦りながら確認をしようとすると、《《少年》》は──「痛いなぁ」──なんていいながら起き上がる。
「誰?」
「What are you doing in a place like this!?」
「自殺。……てか、マフィアに外国人なんていたんだ」
そう少年に云われ、ようやく気づいた。
驚きすぎて話すのが英語になってる。
でも、この子は何も気にせずに返事してくれた。
焦りすぎだ、僕。
でも疑問はぶつけなければいけない。
「何故!?」
「あ、日本語喋れるんだ」
「話せますけど!?」
「とりあえず落ち着いたらどう?」
「落ち着けるかぁ!?」
騒ぎを聞きつけてか、人が徐々に集まってくる。
ただ紅茶が飲みたかっただけなのにどうしてこうなるんだろう。
「あぁ、こんなところにいたんだねぇ」
聞き覚えのある声に振り返ると、そこには“自称”しがない闇医者がいた。
どうやら彼を探していたらしい。
闇医者が探してるのなら手伝いか何かなのだろう。
少年でもマフィアにいるのかと、本気で信じてしまうところだった。
「ねぇ森さん、この人誰?」
「君に渡した戦争戦略本は読んだかい?」
「……質問返し嫌いなんだけど」
「彼はルイス・キャロルだよ」
「あぁ、英国の戦神──」
刃が照明で煌めく。
不思議と手は震えていない。
「……なに、殺してくれるの?」
「それ以上続けるつもりなら」
「良かったじゃん、英国の戦神ルイス・キャロル。落ち着けるかぁ、ってさっきまで大声だしてたし」
「太宰くん!?」
ふざけているのか、否か。
目の前の少年──闇医者によれば太宰というらしい──は、目を閉じながら笑っている。
うっすらと開いたかと思えば、光がない。
この国は一体どうなっているんだ。
先程の準幹部の青年といい、彼といい、おかしすぎる。
---
「サキホドハスミマセンデシタ」
闇医者に無理やり頭を下げられている少年。
謝罪の言葉にしては棒読みすぎないだろうか。
「で、戦神さんがなんでこんなところにいるの?」
「太宰くん!」
「……依頼だよ。今は休暇をもらって万事屋をしてる」
「こんな裏社会の組織にいて良いわけ?」
良いわけがない。
自分でもアウトだと思っている。
彼に云われなくても分かっていたことだが、改めて自分の選択に後悔している。
「何でも屋をするなら、依頼は選びなよ。それともそんなにお金がないわけ?」
「別に金銭の為に働いてるわけじゃない」
「じゃあ何で?」
「……ただの自己満足だよ。殺してきた分だけ、誰かを救いたい」
「戦神と呼ばれるぐらい英国に貢献してるんだから、そんな罪滅ぼし必要ないでしょ」
「自己満足なんだよ、さっきも云ったようにね」
---
最初より信頼されるようになってきて、首領よりも支持されるようになってきてしまった。
“銀の託宣”で幹部すらも黙らせられる。
ほぼ首領と変わらない僕は、戦闘を強制させなければ特攻させるわけでもない。
「……殺すだけがマフィアじゃない」
でも、と僕は机に伏せた。
「この街をまとめるのなら此処がいい」
人数も、立地も、色々と都合がいいことだろう。
はぁ、と溜息しか出ない。
とりあえず首領のとこに行って、今後どうしたらいいか聞くかな。
「失礼しま──」
扉を開いて感じたのは、鉄のような匂い。
暗く、静かな室内。
そこには二つの影があった。
黒外套の少年──太宰治。
闇医者──森鴎外。
壁に飛び散った血の跡と、呼吸をしていない首領。
何となく察した。
「……これが目的だったのか」
飛んできたメスをナイフで弾き返すと、少年の足元に刺さった。
何かもう、呆れて声も出ない。
依頼主は殺されたことだし、もうこの組織にいる必要はない。
「首領を殺してどうするつもり?」
「治療しようとした結果、亡くなってしまっただけだよ」
「……それにしては酷い挨拶じゃあないか」
とりあえず一呼吸置いて、僕は首領の元へ行く。
「……完璧に死んでるね。それで次の首領は元軍医の、自称しがない闇医者?」
「先代はそう遺言を遺したからね。太宰くんも聞いていただろう?」
「戦神に隠し事なんて無理でしょ」
「まぁ、別に口外するつもりないけど」
じゃあ、と部屋を出ていこうとすると殺気が冷たく刺さる。
「……本当に口外するつもりはないよ、嘘つきの新しい首領さん?」
---
なんだかんだあって蘭堂さんが亡くなって中原中也くんがポートマフィアに入りました((
「それで中也がのぉ──」
紅葉の部下になったことで中也くんは色々と良い経験を積めているようだった。
何か作戦が成功する度にこうやって茶会を開くのはどうかと思うが。
「これルイス、聞いておったか?」
「あー……ごめん。ちょっと考え事をね」
首領があの闇医者になって、ポートマフィアは大きく変わったと思う。
それを紅葉もよく感じているだろう。
マフィアを抜けるのは、相変わらず難しそうだが。
「……私は、闇でしか咲けぬ花は美しいかえ?」
「紅葉?」
「お主が云ったのじゃろう、今のポートマフィアなら私でもやっていけると。こうして幹部にまで上り詰め、中也と云う良い部下も持った」
「あの闇医者は確実に先代と違うからね」
お茶を飲んで、僕は小さく笑う。
「闇であろうと光であろうと、紅葉はいつでも可憐で美しいよ」
「……。」
「紅葉?」
「そうやって私で遊んで楽しいかえ?」
「いや、あの、え? 何か僕変なこと云った?」
「そういうところじゃ」
この女誑し、と紅葉は着物の袖で顔を隠す。
僕は何回か頭の中で“女誑し”という言葉を繰り返してから、勢いよく立ち上がる。
「誰が“女誑し”だ!?」
「へー、ルイスさんって“女誑し”だったんだ」
「姐さんにルイスさん、何やってるんですか」
「只の茶会じゃよ。それにしても中也や、その資料はどうしたのかえ?」
「あー……実は──」
「ルイスさんと行ってこい、って森さんが」
「巫山戯んなよ、手前。今は俺が説明するところだっただろうが」
紅葉が喧嘩している間に資料を手に取り、パラパラと捲っている。
「……ふむ」
僕も覗こうかと思ったが、先に閉じられてしまった。
ポイッ、と投げるかのように渡されたかと思えば紅葉が立ち上がる。
「これを二人と共に行かせるとは……鴎外殿も、人が悪いのぉ……」
「紅葉?」
「気をつけるんじゃよ、ルイス」
荒覇吐について。
そう、渡された資料を開くと一頁目に書かれていた。
簡単に云うのならば、“人工異能”について。
「……行こうか」
---
人工異能。
それは言葉の意味の通り、人によって作られた異能力。
どうやら中也くんの“汚れちまった悲しみに”改め、“重力操作”は人工異能らしい。
荒覇吐というのは擂鉢街を作った原因で、研究所から出された時に能力が暴走したとか何とか。
詳しい話は知らないけど、ランポーさんがマフィアから姿を消した。
記憶喪失だったから詳しくは踏み込まないでおいたけど、二人の話を聞くに僕は彼を手伝うべきだった。
マフィアに雇われているが、まだ僕は英国の異能力者だ。
まぁ、何も見なかったことにしよう。
裏社会では深く踏み込みすぎないのが良いのは、結構前から知っている。
「──で、何それ」
「縄です」
「そうじゃねぇだろ」
太宰くんは何故か首に輪になっている縄をかけている。
「いつでも木に引っ掛けて自殺できるよう準備してるんですよ」
「つまり前の長いのは引っ掛ける用と」
「そういうことです」
「莫迦か」
「中也よりは何千倍も頭良いから」
また喧嘩が始まった、と頭を抱えるしかない。
とりあえず太宰くんの前に垂れている縄を引っ張って物理的に二人を離す。
ついでに縄は切っておいた。
「あぁ、私の縄がぁ」
「そのまま永遠に泣いてろ、自殺野郎」
「うるさい牧羊犬」
「誰が狗だ!」
「……もうヤダこの二人」
そんなことを呟いていると、ある建物の前についた。
ランポーさんが使っていた洋館で、大きな穴が空いている。
「あ、」
「……んだよ、太宰」
「彼処で首を吊るの良さそう」
「手前! 待ちやがれ!」
とりあえず放置でいいかな。
色々と見渡していると、一冊の本が目についた。
綺麗な緑──僕の瞳と同じく翡翠色の本だ。
「……日記、ね」
そういえばランポーさんの相棒は何処荷姿を消したのだろうか。
確か、|英国《うち》の女王の殺人未遂を起こしたりしてなかったっけ。
まぁ、何でもいいや。
これは太宰くんに預けよう。
チラッと中を見たが、森さんに渡すかは彼に任せた方が良い。
中也くんの出生に関わる可能性がある。
「……。」
中也くんは、ある時より前の記憶がない。
まるで僕みたいだ。
でも、彼と違って孤児院にいたという記録が残っている。
それが作られた経歴──かもしれないとは考えるが、そんなことをしていたら時間なんてあっという間に経ってしまう。
やめよう。
今はここの資料を整理して、ついでに──。
「──銃声…っ!」
ポートマフィアが裏社会の中でも大きな組織になってきたとはいえ、まだ牛耳ることが出来るほどではない。
もう一つは邪魔になるであろう組織の壊滅任務。
僕は銃を──武器を、握ることができない。
戦争から戦えなくなったから、きっと資料整理が仕事なのだろう。
でも、彼らのサポートぐらいなら出来る。
そんな気がして、翡翠色の本を棚に戻して銃声のする方へと向かった。
「おい! 手前も戦えや!」
「ごめん縄が絡まって解けないから無理」
「巫山戯んなよ手前ぇぇぇ!?」
キンッ、と嫌に響く金属音。
「何やってるの、君」
太宰くんへ向けて放たれた銃弾が、僕の投げたナイフで軌道が逸れる。
彼の綺麗な顔へ傷はつけてしまったけれど、まぁすぐに癒えることだろう。
「いやぁ、首を吊ろうとしたら変なところに絡まっちゃって」
「……何をどうしたらそうなるのかな」
「私も分かりませんよ。何故か腕と足にも絡まって解けませんし」
動かないで、と縄を切ろうとすると後ろから声が聞こえる。
「ルイスさん!」
中也くんの声だ。
銃声も聞こえたから、充填が終わってまた放たれたのだろう。
仕方なく太宰くんを抱えて、近くの壁を少し駆け上がる。
弾は僕の耳に少しかすったけど、まぁ問題はない。
痛いぐらいだ。
「ルイスさん、めちゃくちゃ目が回るんですけど」
「恨むのなら、莫迦なことをやっていた自分を恨むんだね」
太宰くんの縄を解くことは難しく、抱えたまま洋館を走り回る。
敵の数は中也くんが少しずつ倒してくれて入るけれども、確実に此方の人数不足だ。
まともに戦っているのは中也くん一人。
それに対して相手の数というのは一向に減らない。
正確には、減る度にドンドン増えているのだが。
「……流石に中也くん一人じゃキツいか」
「あの、ルイスさ──って、うわあああぁぁぁぁぁぁ……っ!?」
「太宰!?」
「大丈夫だよ、ぶん投げただけだから」
「ぶん投げた!?」
「ほら、敵は待ってくれない。見るべきは味方じゃないよ、中也くん」
ドンッ、と中也くんの前にいた敵兵に蹴りが入る。
アーサーほどではないけど、蹴りには自信があった。
中也くんには絶対言えないけど、小さいお陰で綺麗に敵に入った。
---
---
「うわっ、痛そぉ……」
そんなことを呟いている僕──太宰治──はルイスさんにぶん投げられたせいで天井にぶら下がっていた。
縄が解けてきてるし、きっとそのうち降りられる。
“戦神”ルイス・キャロル。
彼の戦歴やもらった勲章などは、森さんに叩き込まれたからよく分かっていたつもりだけど本物は違う。
あれだけの強さを持っているのに“本気を出していない”のは、力を振るわないのは傲慢だろうか。
いいや、きっとそんなことはない。
あの人はどんな風に殺してくれるだろうか。
中也の作戦を当てるよりも、考える方が楽しくて仕方ない。
というか、本当に何するか分からなくて怖い。
ぶん投げられるとは思ってなかった。
この高さは|あの筋肉ゴリラじゃないから《重力操作を持たない生身の人間だから》、流石に死にそう。
いや、死ねることはいいのだよ?
ただ落下死というのはこのぐらいの高さなら落ちるまでに気を失うことができず、全身に走る痛みを感じながら死へ向かっていくのだよ。
つまりは、最低最悪の状況というわけだ。
「……心の中で色々喋りすぎだろ、僕」
はぁ、と溜息を吐いていると見えたのは銃口。
確実に此方へ向けられている。
このまま銃弾が放たれたら──。
---
---
「ル……イスさん、?」
太宰くんの困惑する声が聞こえる。
幼い少年が見るには、過激すぎるだろうか。
いや、マフィアにいる時点で関係ない。
「中也くん……まだ敵は…、グッ」
ゲホッ、と血が服を《《より》》染めた。
太宰くんに向けられた銃口から放たれた弾は、そこそこの強度なのだろう。
咄嗟に用意した鏡では防ぎきれず、僕は文字の通り身体を使って彼を守った。
銃弾が通り抜けていない。
きっと、変に鏡で速度が落としてしまったせいだろう。
「どうして僕を守ったんですか」
「理由を聞いて、君はどうするんだい……?」
「さぁ、何故だが僕にも分かりません。でも貴方はこんなところで死んでいい人間ではない」
「死は平等だよ……良いも悪いもなく、いつかは訪れる人生の終わり──なんて、君は知っているだろうね」
---
---
「太宰!」
「……気を失ってるだけだよ」
「手前についてる血は──」
「ルイスさんのだよ」
そう淡々に語る太宰に怪我がないことに、俺──中原中也──は少しばかり安堵する。
「怪我してねぇならさっさと帰んぞ!」
「……怪我はしてるよ。銃弾は頬に掠ったし、縄の跡が綺麗に残っている」
「そういう細かいのは聞いてねぇ!」
「知ってる」
「それなら──!」
「きっと、っ!」
「……太宰?」
「きっとルイスさんは森さんに頼まれて僕を守っただけだ! 今さっきのもそうに違いない。じゃないと、こんな僕を心配して身を挺して守るわけが──っ、!」
パンッ、と乾いた音が響く。
俺が叩いた。
この頭が良すぎるが故に考えすぎて正解から遠のく莫迦を、叩いた。
「手前がどう思おうが自由だ! でもルイスさんをこんなところで死なせていいのかよっ!」
「……。」
「死なせたくねぇなら今すぐ離れろ。俺が|運ぶ《異能を使う》のに|手前《異能無効化》は邪魔だ」
「……そう、だったね。僕は役に立たない」
「そうじゃなくてだな──!」
「僕は邪魔なんだよ! 強い異能もなければ、力があるわけでもない!」
太宰の、あの大人のような子供の一面に困惑する間もなく車の止まる音が聞こえた。
「|首領《ボス》……!」
「避けなさい、太宰くん」
「……はい」
あの太宰が、素直に|首領《ボス》の言うことを聞いている。
まだ出会ってそう時間は立っていない。
でも、今の彼奴がおかしいことぐらいは理解できた。
---
---
「──んーっと……?」
ココドコ。
「やっと起きたね、ルイスくん」
「……|首領《ボス》」
「ここまで怪我するのも珍しいんじゃないかい?」
前線に立たないから、と|首領《ボス》は起き上がろうとした僕をゆっくりと寝かせる。
とりあえず、僕は死んではいないらしい。
包帯が結構巻かれていて、太宰くんみたいだ。
「……っ、あの任務は!」
「中也くんが壊滅させたから心配はいらないよ。太宰くんも無事だ」
「そう、か……」
良かった。
その一言しか出てこない。
疲れているのか、元からなのかうまく言葉に出来ない。
「さて、私は紅茶でも淹れてくるよ」
「……。」
「暫くは休んでなさい。これは|首領《ボス》としての命令だからね、ルイスくん」
「動きたくても動けませんよ」
確か銃弾が身体に残ってた。
それを取り除いたということは、そこそこ大掛かりな手術だった筈だ。
|首領《ボス》もきっと顔に出さないだけで、疲労が溜まっている。
「──失礼します」
そんな声が聞こえたかと思えば、中也くんが部屋に入ってきた。
「お見舞いなんていいのに」
「いや、俺がやりたいことなので」
ひとまず受け取ると、中也くんは帰ろうとする。
話し相手が欲しいと言えば残ってくれたが。
「……太宰くんは」
「俺が叩いておきました」
「ちょっと待ってどういうこと???」
~説明中~
「──という感じです」
「彼の過去は?」
「知りません。本人はもちろん、|首領《ボス》に聞いても適当に流されました」
そうか、と僕は傷口を撫でる。
「“生きるなんて行為に何か意味があると本気で思ってるの?”」
「……それ、太宰の──」
「正直なところ、僕は君達より数年だけ先に生まれただけで他は何も変わらない」
「そんなことは……!」
「でもね、僕は思うんだよ」
死は、この世に生まれたすべての生物に訪れる終わりだと。
「“生”の反対が“死”というのは、確約されてない誰かが云った適当なことだ。生きる意味が、価値なんてものがないと思うなら人生を使って探すべきだ」
多くの死を見送ってきた僕も、まだ探している途中だ。
結論を出すにはまだ早い�。
「一つ良いかな?」
「何ですか」
「太宰くんのことなんだけど」
うげぇ、と顔を歪めた中也くん。
嫌なのは分かるけど、もう少し隠す努力をしてくれないだろうか。
一周回って面白く思えてくるけど。
「僕がマフィアから居なくなったら、君が止めてあげて」
「……そうか、ルイスさんは──」
「こうやって組織に長い間いることは避けてきた。理由はもちろん、迷いが生まれるからね」
「でも、俺じゃ止められませんよ。飛び降りを助けようとして触れた時点で、俺の異能が機能しなくなります」
「大丈夫。彼は君のことが嫌いだから」
ニコニコ笑っていると、中也くんは引いていた。
「……太宰くんが死ぬときは、きっと一人だよ。君と一緒に──心中なんて、死んでも死にきれないだろうからね」
「なんで俺なんですか。|首領《ボス》とか姐さんでも良いじゃないですか」
さぁ、と僕は起き上がって中也くんの頭に手を置く。
「同世代じゃないと遠慮するから、かな」
---
---
--- “花楸樹の夢”の後 ---
---
---
「そういえばルイスさん、眠っている時に夢とか見てたんですか?」
そんな質問をされ、僕は仕事をしている手を止める。
「誰も触れてなかったところに触れるとは……やるじゃあないか、敦くん」
「太宰さん、それ褒めてます……?」
「さぁね」
また後輩で遊んで、と溜息を吐く。
「夢は……どうだろうね。過去のことなら最近よく思い出すけど」
過去と言ったけどそこまで古い記憶ではなく、マフィアにいた頃だ。
いつかの任務で向かった、洋館の記憶。
あの時に見つけた欧州諜報員の手記はどうしたか、覚えていない。
「……太宰くん」
「どうかしましたか?」
「“生きているなんて行為に何か価値があると本気で思ってる?”」
少し瞠目したかと思えば、彼は笑う。
「──さぁ、どうでしょうね」
「ついでにもう一つ」
「えっ、まだあるんです?」
「或る人に僕、君の自殺を止めるように頼んでいたんだよね」
「……、まさか」
「そのまさかだよ。君があんなことを云うってことは《《彼》》と偶然か、わざと話をしたんじゃないかな?」
あぁー、と太宰くんが頭を抱えて机に伏せた。
僕が笑っているとアリスに引かれた。
(引かないでくれ)
『引くわよ』
周りにアリスの声は聞こえないので、一人で一喜一憂してるヤバい人だ。
「大切な人たちが生きてくれているのが、どれだけ嬉しいか」
『……ルイス』
「ねぇ、アリス。この前の返事をちゃんとするよ」
--- 僕は、幸せだよ ---
天泣です。
眠り姫さんの方にルイスくんがお邪魔しているの、皆さんはご存じですか?
何あの設定神すぎん???、ということでコラボのリクエストしたらまさかのOKでビックリしました。
てことで、少し補足じゃないけど昔の話を書いてみました。
最後は勝手に後日談の後日談を作りました((
すみません眠り姫さん本当にごめんなさい
コラボの経緯はこの辺にしましてっ!
まずタイトルが最高なんですけど!?
花楸樹(ナナカマド)というか、ルイスくんの誕生花とか気にしたことなかったんだけどヤバすぎ…好きです…
元々「藤夢」の話も好きだったのにこうやってルイスくんが関わることでめちゃくちゃ大好きになりました…っ!
本当にリクエスト書いてくださりありがとうございました!!
ということで、ぜひ眠り姫さんの小説を読みに行って下さい!
下にリンク貼っておきます!!
それじゃ、また来週お会いしましょう。
花楸樹の夢(眠り姫さん)
https://tanpen.net/novel/e24f5ef7-b8df-472f-bd30-d8a8c85b6bbb/