閲覧設定
名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
1 /
目次
アステシアの探し物 0 設定
アステシア
名前:アステシア
名前の理由:ジェミニと考えた。星を連想するらしい......
呼ばれ方:シア、シアさん
職業:元殺し屋、魔法使い
年齢:17歳
誕生日:1月21日(本人は誕生日を覚えていません。)
身長:168cm
血液型:AB型
好きな物: 効率がいいこと、クリームパン
苦手な物:特になし
クレア
名前:クレア
名前の理由:夢雲ふわりさん考案
呼ばれ方:クレア
職業:戦士(弓使い)
年齢:15歳
誕生日:6月7日
身長:153cm
血液型:B型
好きな物:猫、可愛い物
苦手な物:幽霊、人気のない場所
カイル
名前:カイル
名前の理由:なんか明るくて強そうだから
呼ばれ方:カイル、カイルくん
職業:戦士(剣使い)
年齢:16歳
誕生日:9月30日
身長:182cm
血液型:O型
好きな物:辛い物、剣の手入れ
苦手な物:クレアのお説教
これから頑張ります!
アステシアの探し物 1 ルピナの涙と銀の髪
その銀髪は、風に吹かれるたびに冷たい光を撥ねのけた。
肩先で切り揃えられた銀髪の間から、長い横髪がカーテンのように揺れ、感情の読めない白い瞳を縁取っている。
アステシア。今はただ「シア」と名乗るその魔法使いは、道の真ん中で足を止めていた。
「……シアさん、 またそんなところで止まって! 今日中に次の街の宿に着かないと、夕食なくなりますよ!」
背後から弾けるような明るい声が飛んでくる。桃色のポニーテールを跳ねさせ、大きなリュックを揺らしながら駆け寄ってきたのはクレアだ。彼女は手にした弓を肩にかけ直し、少し怒りながらシアの顔を覗き込む。
「ほら、カイルくんも言ってやってください!」
「まあまあ。シアのことだ、きっと高度な索敵術式でも展開して、魔物の気配でも探ってるんだよ。なあ、シア!」
栗色の短髪をくしゃりとかき上げ、身の丈ほどもある大剣を背負ったカイルが、明るく笑いながら追いついてきた。期待に満ちた二人の視線を受け、シアは道端に咲く一輪の水色の花を見つめたまま、淡々と答えた。
「……いや。ただ、この花の名前を思い出せなくて」
二人は一瞬、きょとんとした顔で固まったが、すぐに顔を見合わせて「わあ!」と声を上げた。
「それ、『ルピナの涙』ですよ、シアさん! 昔のお姫様の涙から咲いたって伝説があるんです。もしかして、ロマンチックなものがお好きなんですか? 意外です!」
「へえ、さすがシアだ。花一つにも深い魔道的考察を巡らせてるんだな。俺、一生ついていくぜ!」
シアは無表情に、しかし少しだけ困ったように眉を寄せた。かつての彼女なら、足元の花など踏み潰して最短距離を突き進んでいただろう。標的を殺すための角度、魔法を放つための最短秒数。効率こそが、裏社会で「死神」と呼ばれた彼女の世界のすべてだった。
---
ふと、脳裏に懐かしい声が蘇った。
ルピナの涙。あの人が好きだった花だ。
---
「……非効率ね。けれど、音の響きは悪くない。クレア、カイル。そんなに騒ぐと、周囲の魔物を寄せることになる。」
「大丈夫ですよ! 魔物が来たら、シアさんが瞬きする間に片付けちゃうんでしょ?」
「そうそう! 俺たちの師匠は最強だからな!」
屈託のない笑顔で笑い飛ばす二人。
かつて死線を潜り抜けてきた彼女の鋭い「殺し屋の感覚」は、今やこの明るすぎる二人組が呼ぶ「シアさん」「シア」という響きに、少しずつ、けれど確実に浸食され始めていた。
「……行くわよ。暗くなると、夕食の効率が落ちる」
シアは再び歩き出した。二人に合わせるため、少しだけ速度を落として。
探し物は、まだ見つからない。
けれど、血の匂いしか知らなかった彼女の視界に、今はクレアの桃色の髪と、カイルの透き通る声が、シアの心に響いていた。
結構自信作!
アステシアの探し物 2 焼きたてのパンと旅の目的
一日二話公開できた!
翌朝。街の片隅にある小さなパン屋に、場違いなほど鋭い銀髪の少女の姿があった。
シアは陳列棚を凝視し、獲物を定めるような手つきで、丸みを帯びた黄金色のパン――クリームパンを手に取った。
「シアさん、それにするんですか? すっごく甘そうですけど……」
クレアが不思議そうに覗き込むと、シアは眉一つ動かさず、事務的なトーンで断言した。
「……勘違いしないで。このパン切り込みにより食べやすくなっていて、食べるのに時間をかけずに栄養がとれる。つまり、戦闘時間を考慮して選んだまでよ。」
「へえ! さすがシアだ! パン一つ選ぶのにも、戦場での生存戦略が組み込まれてるんだな!」
感心して拳を叩くカイルがトレイに乗せたのは、パンからはみ出すほど巨大なカツが挟まった厚切りカツサンドだった。
「俺はこれだ! シンプルに肉。肉を食えば力が湧く。これこそが、大剣を振り回すためのもっとも原始的で強力な攻撃力ブーストだろ? なあ、シア!」
「……短絡的ね。けれど、タンパク質を短時間で大量摂取するという点では、評価できなくもないわ」
シアが冷淡に、しかしどこか肯定的に評すると、最後にクレアが、色鮮やかなといちごとブルーベリーのデニッシュをトレイに置いた。
「もう、二人とも理屈ばっかり! クレアはこれです。見てください、このベリーの輝き。朝から可愛いものを見て、心が弾めば、索敵の集中力も上がるっていうものです。これこそが、クレアの心の運用効率を上げる秘策なんですよ!」
三人はパンを購入すると、近くの公園に向かった。シアは効率の無駄よ、と切り捨てたが、強引なクレアに抗えなかったのだ。ベンチに座ると紙袋を開けてパンを頬張った。
シアは、溢れ出しそうになる濃厚で甘いクリームを受け止める。彼女のガラス玉のような白い目が微かに、でも確実に泳いだ。
かつての「死神」の指先が、今は血の匂いではなく、温かなパンの温もりと砂糖の香りに染まっている。クレアとカイルも美味しそうにパンを食べている。
「ところでこの旅の目的って何なんだ?」
カイルが言う。三人は仲が良さそうにしているが、旅を始めて三ヶ月。まだまだ知らないことの方が多いのだ。
「世界一美味しいクリームパンを探すことよ」
シアが冷静に告げる。
「えっ、本当ですか!?」
驚いたのは聞いたカイルではなくクレアだった。
「冗談よ。これがクレアの言う心の運用効率よ。」
口の中に広がる甘いの香りが、記憶の扉を叩いた。かつて、同じ匂いの中で誰かが言った言葉が蘇る。
---
「君は私がいなくなったら、世界一美味しいクリームパンでも探すといい。」
---
「もう!本当は何ですか?」
シアが少しだけ沈黙してから答えた。
「生きる意味、かな」
「何ですか、それ」
ぽかんとする二人を置いて、シアは続ける。
「行くわよ、早くしないと効率が落ちる」
「はい。」
「おう!」
二人は弾んだ声で返事をする。
シアは少しだけ重くなった足取りで、二人の背中を追った。次の街まで、あと少し。エネルギー効率は、悪くないはずだった。