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目次
第1話 撮影後の「いつもの」特別
「ふぅー!今日のマイクラ撮影もバッチリ!傑作ができたね、ぴの!」
スタジオのソファにドサッと背中から倒れ込み、ちろるは満足げに伸びをした。
ぴのは、飲み物の準備をしながら、ちろるのイヌのフードを被った頭をチョンと叩く。
「もう、ちろる!毎回毎回、私のアイテムを隠すイタズラばっかりしないでよね!視聴者さんにはウケるけど、私は大変なんだから!」
口では文句を言いつつも、ぴのの声は楽しそうだ。ちろるがそういうちょっかいを出してくれるのが、実は嫌いじゃない。むしろ、付き合い始めてからは、動画外でもそのイタズラが愛情表現の一つに変わってきたのを感じている。
ちろるはソファに寝転がったまま、ぴのに向かって片手を差し出した。
「だって、ぴのがちょっとムッとした顔、可愛くてつい…ね?」
いたずらっぽく、そして少しだけ甘い声。カメラの前では絶対に見せない、付き合っている二人だけが知るトーンだ。
ぴのは一瞬ドキッとしたけれど、いつものように顔に出さないようにして、ちろるの差し出す手を無視して、代わりに冷たい飲み物を手渡した。
「ほら、暑いでしょ。今日イケボ出しすぎたから、喉潤しな!」
「サンキュー、ぴの。」
ちろるは起き上がり、飲み物を受け取りながら、今度こそぴのの手を掴んで、自分の隣に座らせた。
「あのさ、ぴの」
「ん?なあに?」
「今日のエンディング、ぴのの天然ボケが炸裂してたところ、あのまま使おうと思うんだけど…ぴののOK出るかな?」
「えーっ!あのミス!?ちょっと恥ずかしいからカットで…」
ぴのは、さっきまでの強気な態度から一転、恥ずかしそうに顔を赤らめる。
ちろるはそんなぴのを愛おしそうに見つめ、いたずらっ子の笑顔を向ける。
「だーめ。あれがあったからこそ、最高の動画になったんだもん。大丈夫、俺がちゃんと面白く編集でフォローするから。な?」
そして、恋人として、そっとぴのの頭を撫でた。ぴののネコのフードが、優しくちろるの手に触れる。
「…もう!ちろるのイケボと、イタズラには勝てないんだから!」
ぴのは観念したように笑い、ちろるにもたれかかる。ちろるの体に触れていると、なんだか安心した。撮影後の疲労も、心地よい二人だけの時間に溶けていく。
「イケボはぴののためだし、イタズラは愛情表現だしね。」
ちろるはぴのを抱き寄せ、耳元でそっと囁いた。
「よし。編集、頑張るぞー!」
そう言って、ちろるはぴのを離すと、すぐさま編集機材に向かった。ぴのは、ちろるが淹れてくれた飲み物を飲みながら、その背中を愛おしそうに見つめる。
ゲーム実況者としての二人は、毎日を全力で楽しみ、みんなに『クスッと笑える動画』を届けている。そして、動画の外では、少しだけ甘くて、少しだけ照れくさい、二人だけの冒険が続いていくのだ。
第2話 初めての「オフライン」クエスト
1. 待ち合わせは、いつもの場所を避けて
週末の昼下がり。二人がいつも撮影に使っているスタジオとは、電車で何駅も離れた、大きな駅の待ち合わせ場所。周りにいるのは、誰も自分たちのことを知らないだろう人々ばかり。
普段のちろるは、イヌのフードを被り、声でみんなを笑わせるいたずらっ子のちろる。 今日のちろるは、シンプルな黒のパーカーにジーンズ。マスクで顔を隠しているけれど、なぜかイケボが漏れてきそうな雰囲気を隠せない。
「…遅いな、ぴの」
時間ぴったりに来るはずのぴのが、珍しく少し遅れている。ちろるはスマホでゲーム実況者の掲示板を見て、気を紛らわそうとした。
その時、背後からポン、と肩を叩かれた。
「お待たせ!ちろる!」
振り向くと、そこにいたのはネコのフードではなく、明るい色のカジュアルなワンピースを着たぴのだった。マスク越しでもわかる、ワクワクした瞳。いつもとは違う服装に、ちろるは思わずドキッとした。
「ぴ、ぴの!…ごめん、いつもと雰囲気が違いすぎて、一瞬気づかなかった」
「えへへ、でしょ?今日は『YouTuberのぴの』じゃなくて、『ただの女の子のぴの』だからね!…って、ちろるもいつもより全然カッコいいじゃん!」
ぴのの屈託のない笑顔に、ちろるの胸の緊張が少しだけ溶けた。
「そりゃ、ぴのと初めてのデートだもん。気合入れないと。」
2. 街歩きという名の「アイテム探し」
二人が選んだのは、賑やかな街をぶらぶら歩く、いわゆる**「お散歩デート」**。
「ねえ、ちろる!あそこのクレープ屋さん、動画で見たことある!すごい美味しそうだね!」
「あぁ、あれか。…って、ぴの、ちょっと待て!」
ぴのが突然、雑貨屋のショーウィンドウに張り付いた。目線の先には、ゲームのキャラクターグッズ。
「あ!これ、マイクラの『エンダーマン』のぬいぐるみじゃん!可愛いー!ちろるに似て、ちょっと影があるところが…」
「似てねーよ!俺がエンダーマンなら、ぴのの家まで一瞬でワープできるだろ!」
いつもの動画のテンポが、自然と会話に戻ってくる。ちろるは安堵した。緊張しすぎてイケボが空回りしなくてよかった、と。
「今日、どこ行こうか迷ったけど、ぴのといろんなもの見て回るだけで楽しいな」
ちろるがそう言うと、ぴのはグッズから顔を離し、ニコッと笑った。
「私もだよ!ちろると二人きりで、こうやって普通に歩いてるのが、なんだかちょっと特別な秘密みたいで…すごくドキドキする!」
3. 公園での「秘密の会話」
歩き疲れて、二人は公園のベンチに座った。
普段、動画のコメント欄には、二人の仲の良さを応援するメッセージが溢れている。けれど、二人きりで向かい合うと、なんだか妙に気恥ずかしくて、会話が途切れがちになった。
「…ねえ、ちろる」
「ん?」
ぴのは、持ってきた飲み物の蓋をいじりながら、小さな声で尋ねた。
「あのね、動画の撮影の時と、こうやってプライベートで会うのって…ちろるにとって、どっちが楽しい?」
ちろるは、少しだけ沈黙した後、ぴのの方を向いた。マスク越しでもわかる、まっすぐな瞳。
「そりゃ、動画は楽しいよ。みんなが笑ってくれるのが嬉しいから。」
ちろるは一度言葉を切り、少し声のトーンを落とした。
「…でも。動画の俺は、『ちろぴののちろる』だろ?このプライベートの俺は、ただの『ちろる』。その俺を、ぴのが隣で見てくれてるのが…一番落ち着くし、楽しいよ。」
イケボではなく、素の声で、まっすぐに。
ぴのはハッとして、俯いていた顔を上げた。マスクの奥で、顔が熱くなるのを感じた。
「…そっか。よかった。私も、ちろると二人でいられる時間が、一番大切にしたい『アイテム』だよ。」
「おいおい。アイテムは大事に使えよな、ぴの。…ずっと使ってくれてる?」
ちろるは、ベンチでそっと手を伸ばし、ぴのの手を握った。
「もちろんだよ。一生もののレアアイテムだもん。」
二人ともマスクの下で照れ笑いをする。初めてのプライベートデートは、大きな事件も、派手なサプライズもなかったけれど、二人にとっては最高の『オフラインクエスト』クリアだった。
第3話 ふたりの未来 🏠
その日のゲーム実況の収録は、いつもより早く終わった。チロルとぴのが並んでソファに座り、編集用のPC画面を眺めている。画面には、今日のマイクラのハイライトシーンがキラキラと映し出されていた。
ぴのがふと、チロルの肩に頭をコテンと乗せた。チロルは「ん?」と小さく声を出しながら、作業の手を止め、ぴのの頭を優しく撫でる。二人が正式にお付き合いを始めてから、こんな風に触れ合う時間は、ごく自然で大切なものになっていた。
「ねぇ、チロル」
ぴのが、少し上目遣いでチロルを見上げた。その瞳が、普段の明るい笑顔とは違う、真剣な光を宿している。
「…あのね。ぴの、チロルと一緒に住みたいな」
ぴのがそっと、小さな声で言った。言葉の後の沈黙が、やけに長く感じられる。チロルは撫でていた手を止め、ぴのを抱き寄せた。
「ふふ、いきなりだね、ぴの」
チロルは笑ったが、その声には優しさと少しの戸惑いが混じっていた。
「だって、いつもこうやって一緒にいるのに、夜になったらバイバイって、ちょっと寂しいんだもん。朝起きた時も、隣にチロルがいたら、もっと頑張れる気がするし!」
ぴのは、チロルの胸に顔を埋めたまま、もごもごと話す。その言葉からは、寂しがり屋のぴのの素直な気持ちが溢れていた。
チロルはぴのをしっかり抱きしめ直すと、そっと頭に頬を寄せた。
「ありがとう、ぴの。ぴのがそんな風に思ってくれるの、すっごく嬉しいよ」
チロルは一旦言葉を切って、ぴのが顔を上げられるように、体を少し離した。
「でもね、ぴの。もうちょっとあとにしようか」
ぴのは、予想していた返事ではなかったのか、目を丸くしてチロルを見た。
「え、どうして?ぴの、何か変なこと言っちゃった?」
不安そうなぴのに、チロルはにこりと微笑みかける。
「違う違う。全然変じゃないよ。むしろ、俺だってぴのともっと一緒にいたいって思ってる。でも、一緒に住むって、今までの『楽しい』だけじゃなくて、お互いの生活の全部を見せ合うってことだから」
チロルは、ぴのの頬に手を添え、親指で優しく撫でた。
「俺たちの仕事のこと、動画のこと、ファンのみんなのこと…。今、すごく大事な時期だよね。だから、もうちょっとだけ、お互いのペースをしっかり守って、仕事も生活も、きっちり分けてやっていきたいんだ」
チロルは続けた。 「いつか、二人で住むって決めたら、それはずっと一緒ってことだもん。その時が来たって、お互いが心の底から思えるように、今はもうちょっと、一つ一つを大事に進めていこう。ね?」
ぴのは、チロルの真剣な瞳を見つめていた。少しだけ寂しそうな顔をしたが、チロルの言葉に含まれた真剣な愛情が伝わったのだろう。やがて、うん、と頷いた。
「…うん。わかった。チロルの考えもわかるよ。ぴの、わがまま言っちゃった」
「わがままなんかじゃないよ。可愛いお願いだ」
「約束。もっともっと、二人で頑張って、胸を張って『一緒に住もう!』って言える日が来たら、その時は、ぴのが好きな家具を全部買ってあげるよ。どう?」
ぴのはすぐに笑顔になり、チロルに抱きついた。
「やった!それ、ぜーったいに約束ね!ぴの、その日を楽しみに、もっと頑張る!」
「もちろんだよ。楽しみだね、ぴの」
チロルとぴのは、お互いの未来の約束を胸に、再び二人並んで、画面の中のゲームの世界に目を向けた。その画面の光が、二人の顔を優しく照らしていた。
第4話💻 ライブ配信:質問攻めタイム! 🎮
夜9時。チャンネル登録者数が表示されたモニターの前で、チロルとぴのが並んで座っている。今日のテーマは「ゆるっと質問&雑談会」だ。チャット欄には、ファンからのコメントが滝のように流れている。
🌟 配信開始!
「こんばんはー!ちろぴのです!」(ぴの)
「今日はゆるっと雑談配信だよー。みんな、来てくれてありがとう!」(チロル)
「たくさん質問来てますね!じゃあ、早速チロル、選んで!」(ぴの)
Q.1 ぴのちゃんからの質問
チロルがチャット欄をスクロールし、一つ目の質問を読み上げた。
「えーっと…『ぴのちゃんが最近チロルさんに言われて、一番嬉しかった言葉は何ですか?』だって。ぴの、どう?」
ぴのは、質問を読んでにっこり笑う。
「んー、たくさんあるんですけどね!でもね、この前、ぴのがちょっと動画編集で悩んでた時に、チロルが『ぴののアイデアはいつも天才的だから、自信持って大丈夫だよ』って言ってくれたんです。あれが一番嬉しかったです!」
「あはは。ほんとのことじゃん」(チロル)
チロルは照れくさそうに笑いながら、ぴのの頭をポンと叩いた。
Q.2 チロルさんへの質問
今度はぴのが、チャット欄から特に盛り上がっている質問を選んだ。
「チロルに質問来てますよ!『お二人は、お互いのどういうところに惹かれましたか?』だって!これは、答えるしかないやつ!」
チロルは腕を組み、少し考えるポーズをした。
「俺は、やっぱりぴのの明るさと元気さだね。ぴのが笑ってると、俺まで元気になれる。あとは…実は、すごく努力家なところ。みんなの前では見せないけど、すっごく真面目に練習したり、考えてたりするのを知ってるから、尊敬してるよ」
チロルが真剣なトーンで答えると、ぴのは顔を赤くして、少し俯いた。
「えー!チロル、今、急に真面目なの反則!」
「ふふ、ごめんね。じゃあ、ぴのは?」
「ぴのはね…チロルの全部!って言いたいところだけど(笑)。やっぱり、優しくて、いつもぴのを守ってくれるところ。あと、ゲームしてる時の真剣な横顔が好きです!」
Q.3 視聴者からの鋭い質問
「次はこれかな。『最近、動画で二人が楽しそうすぎて、もしかして、お付き合いされてますか?』っていう質問が来てますよ、チロル!」(ぴの)
チロルはカメラに向かって、少し意地悪そうに笑った。
「うーん、どうだろうね?(笑)みんなの想像にお任せするけど…俺とぴのの関係って、家族でも友達でもない、特別な関係だよ。これからも、ずっと最高のパートナーとして、みんなに楽しい動画を届けていくよ!っていうことで、どうでしょうか!」
ぴのがチロルの答えに続けて、満面の笑顔でカメラに手を振った。
「そうですね!みんなの想像通りかも、想像以上かも?とにかく、これからもずーっと仲良しなのは間違いないです!応援よろしくお願いしますね!」
二人は、うまく質問をかわしつつ、お互いへの気持ちをファンにそれとなく伝えたのだった。チャット欄は「きゃー!」「やっぱり!」「お幸せに!」というコメントで溢れかえった。
第5話💍 アフタートーク:未来のプロポーズ
ライブ配信が終わり、機材の片付けも済んだ頃。
チロルの部屋は、照明を落として間接照明だけになり、静かな時間に戻っていた。さっきまでファンとのコメントで熱気に満ちていた空間が、今は二人だけの穏やかな空気に包まれている。
ぴのが、チロルのマグカップにお茶を注ぎながら、ふと口を開いた。
「チロル、さっきの質問すごかったね。『お付き合いしてますか?』だって」
「そうだね。まあ、みんな鋭いからね」
チロルは、マグカップを受け取りながら、ぴのの髪をそっと撫でた。
「でも、チロルが『最高のパートナー』って言ってくれたの、ぴの、ちょっと嬉しかったよ」
「本当のことだからね」
チロルはそう言いながら、ぴのを自分の隣に引き寄せた。二人はソファに並んで座る。
「ぴの」
「ん?」
「さっき、一緒に住むのは『もうちょっとあとね』って言ったけどさ」
チロルはぴのの手を取り、自分の大きな手で包み込んだ。
「俺は、ぴのとずっと一緒にいるつもりでいるよ。もちろん、いつかは結婚して、家族になりたいって思ってる」
ぴのは目を大きく見開いた。チロルが、こんなにはっきりと「結婚」という言葉を出すのは、初めてだったからだ。
「ち、チロル…!」
「驚いた?でもね、俺にとってはすごく現実的な話なんだ」
チロルは、ぴのの目をしっかり見つめた。
「俺たちが二人で住み始めるのは、きっと、結婚を考えるタイミングと近いと思う。だって、ぴのが俺の生活の全部に入ってくるんだ。それはもう、ただの同棲じゃなくて、未来の家族の準備だから」
ぴのの手に込めるチロルの力が強くなる。
「だから、まずは仕事と生活のバランスがしっかり取れるようになって。ファンの皆にも、心から祝福してもらえるような状況を作って。それができたら…」
チロルは少し照れたように笑い、ぴのの額に自分の額をコツンと合わせた。
「その時は、ぴのが一番びっくりするような、最高のプロポーズをするよ。そのための準備を、今からしてるんだ。一緒に住むのは、そのお試し期間じゃなくて、結婚までの最終準備期間ってこと」
ぴのの目には、うっすらと涙が浮かんでいた。チロルの真剣な気持ちと、しっかりとした将来の計画が、何よりも嬉しかった。
「チロル…ずるいよ。そんな風に言われたら…」
ぴのは涙を拭い、チロルの胸に飛び込んだ。
「ぴの、絶対待ってるからね!その時が来たら、ぴのは世界一幸せな奥さんになる!チロル、大好き!」
チロルはぴのを優しく抱きしめ、背中をゆっくりと撫でた。
「うん。俺もぴのが大好きだよ。だから、その日を楽しみに、二人で頑張ろう。これからも最高のパートナーでね」
二人の夢と目標は、今、動画投稿のその先にある、温かい家庭へと向かって、着実に歩み始めるのだった。
第6話 💥 ロブロックス配信:初めてのケンカ
💔 配信中のヒートアップ
その日のRobloxのゲームは、協力型の脱出ゲームだった。ファンからも人気のシリーズで、二人は普段、抜群のチームワークを見せるはずだった。しかし、今日の配信は、最初から少し雰囲気が違った。
チロルは真剣になりすぎてピリピリしており、ぴのは少し集中力に欠け、ミスを連発していた。
「ぴの、そこはジャンプじゃなくて、ゆっくり渡るやつだよ!ほら、また落ちた!」
チロルが、少し苛立った声でぴのに注意した。いつもの「どんまい!」という優しいトーンではなかった。
「ご、ごめん…でも、チロルが急かすから焦っちゃうんだもん」
ぴのが、小さな声で反論する。チャット欄にも「ちろぴの珍しい!」「チロルさん怖いよ」「ぴのちゃんドンマイ」といったコメントが流れ始める。
次のステージで、ぴのが取るべきアイテムの場所を間違えてしまった。
「ああ、ぴの!なんでそっち行くんだよ!さっき説明したじゃん!これ、タイムロスになるって!」
チロルが、思わず声を荒げた。
「だって、見た目同じなんだもん!チロルは完璧にできるかもしれないけど、ぴのはそうじゃないよ!そんな怒らなくてもいいじゃん!」
ぴのの声が震え、涙声になる。その瞬間、配信の空気が凍り付いた。チロルも、自分が言いすぎたことに気づき、ハッとする。
「…ごめん、ぴの。ちょっと…」
チロルが謝ろうとした、その時。
「もういい!チロルと一緒だと楽しくない!ぴの、ここで抜ける!」
ぴのは、ゲーム内のキャラクターをその場に立ち止まらせると、無言で配信画面からゲームを閉じた。
🧊 突然の配信終了
チロルは画面に向かって一人残された。チャット欄は「え?」「どうしたの?」「喧嘩しちゃった?」というコメントで大パニックだ。
チロルは深いため息をつき、顔を覆った。
「…ごめん、みんな。ちょっと、配信トラブルっていうか、僕の不注意でぴのを怒らせちゃった。今日の配信は、ここで終わりにします」
チロルはいつになく真剣な声でそう言うと、すぐにライブ配信を終了した。
🚪 配信後の沈黙
配信を切った後も、チロルはしばらくその場から動けなかった。自分が仕事に夢中になりすぎて、ぴのの気持ちを考えられなかったことを痛感する。
やがて、チロルは立ち上がり、ぴのがいるであろう隣の部屋へ向かった。ノックもせず、そっとドアを開ける。
ぴのは、ヘッドホンを外し、目を真っ赤にして、ベッドに座り込んでいた。
「…ぴの」
チロルが名前を呼ぶと、ぴのは顔を背けた。
「来ないで。チロル、いつもぴのを馬鹿にするんだもん。ゲームのことだけじゃなくて、私生活でも、チロルはぴのがやること全部、効率悪いって言うじゃん」
堰を切ったように、ぴのが溜め込んでいた不満を吐き出した。今日の喧嘩は、配信中のゲームのミスが原因ではなく、二人の間に少しずつ溜まっていた、お互いのペースの違いが原因だったのだ。
チロルはゆっくりとぴのの隣に座り、ただ静かに話を聞いた。そして、ぴのが落ち着くのを待ってから、ゆっくりと話し始めた。
「ごめん、ぴの。本当にごめん。俺、自分が正しいと思ったことを押し付けすぎてた。動画の時も、プライベートでも、ぴのを傷つけてたんだね。気づかなくてごめん」
チロルは、ぴのの震える手をそっと握った。
「俺は、ぴのと最高のパートナーでいたい。だから、ぴのが俺に正直に怒ってくれたこと、嬉しいよ。次は、こんな風に、配信中に爆発する前に、ちゃんとお互いの気持ちを話せるようにしよう。約束する」
ぴのは、チロルの真剣な謝罪に、小さく頷いた。
「…うん。ぴのも、チロルに言えなかったの、悪かった」
二人は、初めて本音でぶつかり合ったことで、ただの仲良しではない、一歩踏み込んだパートナーとしての信頼を深めたのだった。
第7話 🏖️ 初めての海:きらめく水着と鼓動
🌊 ドキドキの海辺
あの大きな喧嘩から数週間後。二人は動画撮影を兼ねたオフの日を利用して、初めての海デートに来ていた。
駐車場からビーチに向かう途中、ぴのはパーカーとショートパンツで体を隠している。チロルは、その隣を歩きながらも、今日のぴのの水着姿を想像して、すでに心臓が落ち着かなかった。
「ねぇ、チロル。海、久しぶりだね!ぴの、すっごく楽しみにしてたんだ!」
ぴのがキラキラした目で笑いかける。チロルは平静を装い、頷いた。
「うん。でも、日焼け止めはしっかり塗るんだよ。ぴのは肌白いからすぐ赤くなっちゃうし」
「もう、チロルはお父さんみたいだなぁ!」
ぴのは少し不満そうに口を尖らせたが、その可愛さにチロルは思わず口元が緩む。
💖 衝撃の登場
白い砂浜に出て、パラソルの下で荷物を広げる。チロルがレジャーシートを敷き終えた頃、ぴのが「ちょっと待っててね!」と言って、簡易テントの中に入っていった。
数分後、テントのチャックが開く。
ぴのが姿を現した瞬間、チロルの心臓はドクンと大きく跳ねた。
ぴのが選んだのは、ふんわりとしたフリルがあしらわれた、パステルカラーのワンピース型の水着だった。普段の元気で可愛らしいイメージそのままに、少しだけ大人っぽさも加わったデザインだ。
髪は高い位置でポニーテールにまとめられ、首筋や肩のラインがいつもよりずっと露わになっている。太陽の光を浴びたぴのの白い肌が、眩しいくらいに輝いていた。
「ど、どうかな、チロル?変じゃない?」
ぴのは少し恥ずかしそうに、水着の裾をキュッと握りしめている。
チロルは、しばらく言葉が出なかった。視線が、ぴのの鎖骨のラインから、足首までをさまよう。
(やばい、可愛すぎる…!)
チロルの頭の中は、その一言で埋め尽くされていた。
「チロル?聞いてる?」
ぴのが心配そうに顔を覗き込むと、チロルは慌てて、しかし、正直な気持ちを伝えるために、深く息を吸った。
「…ちょ、ちょっと待って。可愛すぎて、心臓がバグってる」
チロルはそう言うと、顔を隠すように両手で目を覆った。
「え、バグってるって…どういうこと?!」
ぴのは、チロルの反応に驚きながらも、嬉しそうに笑う。
チロルは、意を決して顔から手を外し、まっすぐぴのを見た。その目は真剣そのものだ。
「ぴの。本当に、すごく可愛い。想像してた何倍も可愛い。これは…今日一日、俺、ぴのから目を離せそうにない」
チロルの素直で熱烈な言葉に、今度はぴのが真っ赤になった。
「も、もう!チロルったら急に…!そんなこと言われると、ぴのまでドキドキしちゃう!」
チロルは立ち上がると、ぴのに近づいた。そして、海に入る前にと、ぴのの肩にそっと日焼け止めを塗ってあげた。
「あのね、ぴの。今日は、あまり俺から離れないでね。可愛すぎて、心配だから」
そう耳元で囁くと、チロルはぴのの手をしっかりと握った。チロルの手から伝わる熱と、心臓のドキドキが、ぴのにも伝わってくる。
「ふふ、わかった。じゃあ、チロル、早く行こう!」
二人は手を繋いだまま、きらめく夏の海へと、笑顔で駆け出していった。今日一日、チロルの心臓が持つのか、ぴのは少し心配になった。
第8話 🌅 デートの終わりに:誓いの夕焼け
🌙 海辺の黄昏
一日中、海で遊び、たくさんの写真を撮り、美味しい海の幸を堪能したチロルとぴの。帰る前に、二人はもう一度砂浜に戻り、夕日が水平線に沈むのを眺めていた。
潮風は穏やかで、オレンジ色に染まった空と海が、まるで二人のための特別なステージのようだった。
ぴのは、チロルのTシャツの裾をそっと掴み、静かに横顔を見上げた。
「ねぇ、チロル。今日、すっごく楽しかったね。ぴの、チロルと来られて本当に良かった」
「うん。俺も楽しかったよ。…ぴのの水着姿、本当に可愛かったし」
チロルは照れくさそうに笑いながら、ぴのの頭を優しく抱き寄せた。
「もう!まだその話するの!」
ぴのが小さく抗議するが、顔は嬉しそうだ。
「ねぇ、チロル。さっき、海で遊んでる時に、ぴの、ふと思ったんだ」
「うん?」
「チロルといると、どんなに真剣なゲームをしてても、どんなにプライベートな時間を過ごしてても、ずっと楽しいなって。今日、すっごく喧嘩した時みたいにイライラすることもあるけど…それも含めて、チロルといる時間が、ぴのの生活の全部だなって」
ぴのは、チロルの胸に顔を寄せたまま、小さな声で続けた。
「ぴの、もうちょっと『あと』じゃなくて、早くチロルと家族になりたいな。もう、待てないくらい」
💍 具体的な一歩
チロルは、ぴのをしっかり抱きしめ直した。ぴのの素直な気持ちが、チロルの心に強く響いた。
「ぴの。ありがとう。俺も、同じ気持ちだよ」
チロルは、ぴのと向き合い、両肩に手を置いた。夕焼けの光が、チロルの真剣な瞳を照らす。
「あの喧嘩の時、俺は最高のパートナーでいたいって言ったけど、その最高のパートナーの最終地点は、やっぱり夫婦だと思ってる」
「…うん」
「だから、俺、同棲のルールを、少しずつ作り始めようと思ってるんだ。いきなり一緒に住むんじゃなくて、まずはお試しで週末だけ一緒に過ごすとか、仕事のスケジュールを完全に共有するとか。一つ一つ、ちゃんと計画を立てていこう」
チロルは、ぴのの手を取り、優しく撫でた。
「そして、その同棲の準備が整って、二人の生活のペースが完全に合った時が、俺たちが結婚するタイミングだと思う。そうすれば、ファンのみんなにも、絶対に祝福してもらえる自信がある」
ぴのは、チロルの現実的で、しかし愛情に満ちた計画に感動した。
「チロル…ありがとう。ぴのは、チロルが考えてくれる計画なら、なんでも頑張るよ!週末一緒にいるの、楽しみ!」
「ふふ、じゃあさ」
チロルは、ぴのに向かって左手を差し出した。
「まずは、この指にぴのに似合う指輪をつけられるように、二人で頑張っていこう。この夕焼けを、俺たちの誓いの色にしよう」
ぴのは嬉しさのあまり、チロルの差し出した手に自分の手を重ねた。
「うん!誓う!チロル!」
夕日は、完全に水平線に沈みきった。空には、二人の未来を祝福するように、一番星がキラキラと輝き始めていた。
第9話 🌙 再びのお泊まり:特別な週末の夜
📦 ワクワクのお泊まり準備
チロルが提案した「結婚に向けた同棲の予行練習」として、今日から初めての週末お泊まりが始まる。
ぴのは大きなトートバッグを抱えてチロルの部屋にやってきた。バッグの中身は、二人で遊ぶボードゲームや、ぴののお気に入りのアロマ、そして…もちろん新しいパジャマだ。
「チロル〜!ぴの来たよ!よろしくね!」
ぴのは、玄関で元気いっぱいに挨拶をした。チロルは嬉しそうに笑いながら、ぴのを招き入れる。
「ようこそ、ぴのハウスへ。…じゃなくて、チロルハウスへ(笑)。さっそく、晩ご飯は何にする?」
「ふふ、今日はぴのが得意なオムライス作るよ!チロル、楽しみにしてて!」
夕食後、お風呂に入り、二人で明日の動画の企画について少し話し合った。そして、いよいよ寝る時間になった。
🎀 パジャマ姿の再会
チロルが部屋で待っていると、ぴのがお風呂から上がって、部屋に入ってきた。チロルはまたしても、ドクンと心臓が高鳴るのを感じた。
ぴのが着ていたのは、淡いピンク地に小さなさくらんぼ柄が散りばめられた、ガーゼ素材のパジャマだ。袖と裾にはレースがあしらわれ、少し幼くて可愛らしいデザイン。髪はふんわりとタオルドライされ、ほんのりとお風呂上がりの良い香りが漂っている。
「どう、チロル?これ、このお泊まりのために新しく買ったんだ〜!」
ぴのは、その場でくるりと一回転して見せた。
チロルは、口を開きかけたが、言葉が出てこない。付き合う前に一度お泊まりをした時も、ぴのの可愛さにドキドキしたけれど、今回は**『彼女』という肩書きと、『将来の家族』**という意識が加わっている。その事実が、チロルの動悸を何倍にも加速させた。
(前回より、確実に可愛さが増してる…!っていうか、俺専用の可愛いを更新してきてる…!)
チロルは、顔が熱くなるのを感じた。
「あの…チロル?」
ぴのが、心配そうにチロルの顔を覗き込む。
「ちょ、ちょっと待って、ぴの。また心臓がバグってる」
チロルは思わず、海デートの時と同じ言葉を口にした。
「もう!チロル、またそれ!そんなに言うと、ぴの恥ずかしいよ!」
ぴのは顔を手で隠したが、指の間からチロルの様子を伺っている。
チロルは深呼吸をして、なんとか平静を取り戻した。
「ごめん。いや、本当に。そのパジャマ、可愛すぎる。ぴのにすごく似合ってるよ。…その、破壊力がすごい」
「えへへ。ありがとう、チロル」
ぴのは嬉しそうに笑い、チロルのベッドにちょこんと座った。
🛌 語り合う夜
二人はベッドに並んで座り、電気を消して、小さな読書灯だけを点けた。
「ねぇ、チロル。この前喧嘩した時、チロルが『生活の全部を見せ合う』って言ったでしょ?ぴの、チロルの全部を知りたいな」
「うん。俺もぴのの全部を知りたいよ。だからこうして、お泊まりしてるんだもん」
チロルはそっと、ぴのの小さな手を握った。
「あのね、ぴの。一つだけルール。このお泊まり期間中は、ゲームの時の厳しいチロルじゃなくて、ぴのの彼氏のチロルでいるから。安心して、思いっきり甘えてね」
「…うん。わかった。チロルの優しいところ、たくさん見せてね」
ぴのは、チロルの肩に頭をコテンと預けた。パジャマ越しでも伝わるぴのの温かさと、良い香りに、チロルの心臓はまだ少しドキドキしていたが、それはもう「バグ」ではなく、最愛の彼女への愛しさの証だった。
二人は、結婚という未来への第一歩を、優しいパジャマと温かい温もりに包まれながら踏み出したのだった。
第10話 💻 配信再開:煽りコメントと最強の絆
📢 配信スタートと煽りコメント
週末のお泊まりデートを経て、チロルとぴのはいつもの配信部屋に戻ってきた。今日の配信は、久しぶりの二人実況だ。
「みんな、こんばんはー!ちろぴのです!」(ぴの)
「今回は、最近話題のあのホラーゲームに挑戦します!心臓バクバクになること間違いなし!」(チロル)
チャット欄には、いつもの温かい応援コメントが流れる中、一部、二人の関係性や動画の質をあおるコメントも目立ち始める。
「またイチャイチャ配信かよ。ゲームしろ」
「ぴのの声がうるさい。チロルの足引っ張るな」
「喧嘩して仲直りアピール乙。どうせまたすぐ揉める」
チロルは、ちらりとチャット欄を見ながら、ぴのの表情を確認した。ぴのは、いつものように明るく振る舞っているが、少しだけ手が震えているように見える。
🛡️ チロルの守り
ゲーム開始直後、ぴのが操作ミスをして敵に捕まってしまう。チャット欄は一斉に「またか」「下手すぎ」という煽りコメントで溢れた。
チロルは、ゲームを一時停止し、カメラに向かってまっすぐ話しかけた。
「はい、ちょっと待ってね。今、チャット欄が荒れてるね。僕から一つだけ言わせて」
チロルの真剣なトーンに、配信の空気が引き締まる。
「『ぴのがうるさい』とか『足引っ張るな』っていうコメント、見えてます。でもね、僕の動画でぴのは絶対に足手まといじゃない」
チロルは、隣のぴのの手を握り、そのままぴのに向かって微笑んだ。
「ぴのが出すアイデア、ぴのがくれる元気、ぴのがしてくれるミスだって、全部このチャンネルの色であり、僕がぴのを最高のパートナーだと信じる理由です。僕がぴのを必要としてるんだから、そういうコメントは、僕が全部受け止めます」
そして、チロルはぴのに向かって言った。
「ね、ぴの。気にしないで。僕はぴのが隣にいるから、最強だよ」
✨ ぴのの反撃
チロルに庇われたぴのは、目を潤ませたが、すぐに笑顔に戻った。そして、カメラに向かってはっきりと言葉を放った。
「ありがとう、チロル!チロルがそう言ってくれるから、ぴのは気にしないよ!っていうか、煽りコメントする人も含めて、みんな私たちの動画を楽しみにしてるんでしょ? ありがとうね!」
ぴのは、敢えて煽りコメントの視聴者にも感謝を伝えた。
「『喧嘩して仲直りアピール乙』って書いてくれた人もいたけど、喧嘩したことも、仲直りしたことも、全部私たちの大切な思い出です。隠すつもりもないし、これからも二人で楽しく動画を作り続けます!」
ぴのは、そう宣言すると、ゲーム再開のボタンを押した。
「さあ、チロル!行くよ!ぴのは、うるさくても、ミスしても、チロルと最高の動画を作る!」
「もちろん!ぴのがいるからこそ、このホラーゲームも怖くない!」
二人は再びゲームに集中し始めた。先ほどまでの不安そうな様子は消え、お互いを信じ合い、ハイタッチを交わしながら難関を突破していく。
煽りコメントは依然として流れていたが、二人の揺るぎない絆と楽しそうな笑顔を見た視聴者の中には、
「あれ、なんか感動した」
「この二人、マジで本物だな」
「応援するわ」
と、コメントのトーンを変える人が増え始めていた。
二人は、煽りコメントという試練を、二人の絆の強さを証明する場に変えてみせたのだった。
第11話 🏠 重大発表配信:ふたり暮らし、はじめます!
🔔 緊張の「重大発表」
いつもの配信時間。今日のサムネイルは「重大発表!今後のちろぴのは…」とだけ書かれており、チャット欄は開始前から憶測で溢れかえっていた。
「みんな、こんばんはー!ちろぴのです!」(ぴの)
「今日は、ちょっと真面目な話も交えつつ、みんなに報告したいことがあります」(チロル)
チロルとぴのは、いつもより少し緊張した面持ちでカメラに向かい、お互いに見つめ合った。
「先に言っておきます。これは、私たち二人にとって、大きな前進となる、最高に嬉しいお知らせです」(チロル)
📢 報告:ふたりで暮らす!
チロルは深呼吸をして、切り出した。
「僕たち、ちろぴのは、一緒に生活を始めることになりました!」
ぴのは、満面の笑顔でチロルの隣で大きく頷いた。
「わー!私たち、同棲します!」
その瞬間、チャット欄は「えー!」「マジで!」「おめでとう!」「やっぱり!」という祝福のコメントで爆発した。スパチャ(スーパーチャット)も次々と飛び交う。
💖 同棲を決めた理由
少し落ち着いたところで、チロルが真剣な表情で、同棲に至った経緯を説明し始めた。
「みんなも知っての通り、僕たちは昔から一緒にいる時間が長かった。でも、仕事が終わると別々で、お互いの生活の全部を知っているわけじゃなかった」
ぴのが、その言葉を引き継ぐ。
「私たちは、これからもずーっと最高のパートナーとして、動画もプライベートも一緒に進んでいきたいんです。そして、いつか、みんなに『おめでとう』って心から祝福してもらえる夫婦になりたいって思っています」
チロルはぴのの手を握りながら、続けた。
「同棲は、そのための大切な一歩です。まずは、お互いのペースを尊重しながら、動画制作と生活を両立させる。最高のパートナーから、最高の家族になるための準備を、二人でしっかりやっていきます」
「もちろん!同棲の様子も、ルームツアーとか、二人で作るご飯とか、動画でたくさん公開していく予定だよ!」(ぴの)
🏡 新しい生活への決意
視聴者からの質問にも少し答えた後、チロルは力強く締めくくった。
「僕たちの新しい生活が始まることで、動画の撮影ペースや環境が変わるかもしれないけど、ちろぴのの動画への情熱は、今まで以上に熱くなると約束します!」
「ふたり暮らし、楽しみにしててね!これからも、ちろぴのをよろしくお願いします!」(ぴの)
ぴのは、嬉し涙をこぼしそうになりながらも、最高の笑顔でカメラに手を振った。
チロルとぴのは、新しい家での生活と、その先に待つ未来への期待を胸に、ファンからの熱烈な祝福を受け取ったのだった。
🔑 新しい家:夢を詰め込んだ新居へ
🚚 引っ越しと新居
引っ越し当日。チロルとぴのは、トラックから運び込まれる荷物に囲まれながら、新しい家の鍵を握りしめていた。
二人が選んだのは、動画編集室とプライベート空間をしっかり分けられる、広めの2LDKのマンション。特にこだわったのは、防音対策がしっかりされた配信・編集専用の部屋だ。
「わぁ〜!ここが、私たちのお家だね!」
ぴのは目を輝かせ、広いリビングを見回した。南向きの窓からは明るい日差しが差し込み、白い壁とフローリングがキラキラと輝いている。
「うん。これからここで、たくさんの楽しい動画と、たくさんの思い出を作っていくんだね」
チロルはぴのの肩を抱き寄せた。
🎮 チロルのこだわり:最強の配信部屋
最初に荷ほどきしたのは、二人の**「ワークルーム(配信部屋)」**だ。
チロルのこだわりが詰まったその部屋は、窓のない、静かな防音室。壁には吸音材が貼られ、特注のL字型デスクが設置されている。
「見て、ぴの!このデスクなら、僕の編集用モニターと、ぴののゲーム用PCを並べても余裕があるよ!」
「すごい!チロルの秘密基地みたい!これで、ゲーム中にお互いの声が反響する心配もないね!」
ぴのは、新しい配信用のチェアに座って、ぐるりと一回転してみる。
「でしょ?これで、深夜でも気にせず配信できるし、喧嘩して言い合いになっても、音漏れしないから大丈夫!(笑)」
チロルが冗談めかして言うと、ぴのは「もう喧嘩しないもん!」と笑った。
🎀 ぴののこだわり:癒やしのリビング
次に荷ほどきしたのは、ぴのがこだわったリビングスペース。
「ここには、ぴのが選んだふわふわの大きいソファを置くの!あと、チロルが夜ご飯の時にお酒を飲むから、オシャレなバーカウンターもちょっと作る!」
ぴのは、テキパキと指示を出す。
「お酒は、週に一度だけね。…でも、ぴのが選んだソファ、楽しみだなぁ」
チロルは、ぴのが持ってきた大きな段ボールの中から、可愛い二人分のお揃いパジャマを見つけ、顔を赤くする。
「あ!チロル、それ見ちゃダメ!」
「なんでだよ、可愛いじゃん!…そういえば、ぴのがこの前買ってくれた、あのアロマディフューザーもここに置くんだよね?動画編集で疲れた時、あの香りで癒やされたい」
「うん!チロルが一番リラックスできるように、ぴのが毎日アロマを替えてあげるね!」
🤝 新しい生活の始まり
夕方、運び込み作業が終わり、部屋にはまだ段ボールが残っているが、二人の生活が始まる空間は、すでに温かい空気に満ちていた。
チロルは、リビングの真ん中でぴのを抱きしめた。
「ぴの。これから、本当の意味での『二人暮らし』が始まるね。動画も、生活も、一つ一つ丁寧に作っていこう」
「うん!チロルと一緒なら、どんなことも楽しいよ!まずは、どこに何を置くかのルームツアー動画を撮らないとね!」
二人は、新しい家での生活と、これから始まる「夫婦になるための準備期間」に、胸を躍らせていた。
🎀 ぴのの部屋:可愛いの秘密基地
🗝️ ルームツアーの始まり
引っ越し作業が一段落した週末、二人は新居の紹介を兼ねた「ルームツアー動画」を撮影していた。リビング、キッチン、チロルの配信部屋と回り、いよいよ最後に残されたのは、ぴののプライベートルームだ。
「さあ、みんな!お待たせしました!ここが、ぴのの部屋です!」
ぴのは、元気いっぱいにドアを開けた。チロルはカメラを持ち、ぴのに続いて部屋に入る。
💖 乙女空間の衝撃
部屋に入った瞬間、チロルの心臓はまたしても大きく跳ねた。
チロルの部屋が機能的なモノトーンで統一されているのに対し、ぴのの部屋は**「可愛い」が凝縮された秘密基地**だった。
壁は淡いピンクのアクセントカラーで、ベッドにはフリルとリボンがついた天蓋が飾られている。机の上には、チロルとぴのがこれまで獲得したゲームの景品や、ファンからもらった手作りのぬいぐるみたちが所狭しと並べられていた。
「わ、わあ…!ぴの、これ…!」
チロルはカメラを構えながらも、思わず声を漏らした。特に目を引くのは、大きなクマのぬいぐるみが鎮座する、窓際のビーズクッションだ。
「どう?可愛いでしょ!ぴのの好きなものだけを集めた空間だよ!」
ぴのは、そのビーズクッションに飛び込み、抱きしめているクマのぬいぐるみに頬擦りした。その仕草が、部屋の雰囲気と相まって、あまりにも可愛らしい。
チロルはカメラ越しに見ながら、ゾクッとするほどの強い愛しさを感じた。
(こんな、可愛すぎる部屋で毎日寝て、毎日過ごしてるんだ…。俺以外の人には、絶対見せられない空間だ…!)
💘 チロルの独占欲
チロルは、ふと目線を部屋の隅の壁に向けた。そこには、二人の思い出の写真が飾られたコルクボードがあり、その真ん中に、海デートの時のぴのの笑顔の写真が、一番大きく飾られていた。
「この写真、飾ってくれたんだね」
チロルがそう言うと、ぴのは嬉しそうに頷いた。
「うん!チロルが撮ってくれた写真の中で、一番お気に入りなの!ねぇ、チロルもこのビーズクッションでくつろいでみてよ!」
ぴのに誘われ、チロルはカメラを固定し、隣に座ってみた。ふかふかのクッションにぴたっと体がくっつき、ぴのの甘い香りに包まれる。
「うん…すごい落ち着くね。でも、ここ、破壊力がすごすぎて、俺、一人で入るの緊張するかも」
「えー、なんで!チロルが配信で疲れた時は、いつでもここで休んでいいんだよ?ぴのが子守唄歌ってあげる!」
ぴのが悪戯っぽく笑いながら、チロルの腕に抱きついてきた。
チロルは、ぴのの愛しさが詰まった部屋と、隣にいるぴのの体温に、完全に理性を奪われそうになる。
「…ぴの。わかった。じゃあ、疲れた時は、遠慮なくこの部屋に入らせてもらうね。でも、そのときは…ぴのから目を離せなくなるかもしれないよ?」
チロルが少し大人っぽいトーンで囁くと、ぴのはドキッとした顔になり、ますますチロルに顔を埋めた。
新しい家での二人の生活は、ぴのの「可愛い」がチロルの「ドキドキ」を更新し続ける、甘い日々の始まりとなったのだった。
🎧 チロルの部屋:クールな秘密とぴのの動揺
💻 ぴののドキドキ
ルームツアー動画の撮影後。ぴのは、チロルの**ワークルーム(配信部屋)**に忘れ物をしたことに気づき、一人で部屋に入った。
チロルの部屋は、ぴのの部屋とは対照的だ。防音室特有の静寂と、ゲーミングPC、高性能なマイク、複数のモニターが並ぶプロフェッショナルな雰囲気がぴのを包み込む。壁は濃いグレーで、間接照明の青い光が、機械のメタリックな質感を際立たせている。
(うわぁ…なんか、ぴのの部屋と全然違う…。チロルって、ここでいつも真剣に仕事してるんだな)
普段、隣でゲームをしている時とは違う、「クリエイター・チロル」の空間。その真面目さとクールさに、ぴのは胸がドクンドクンと高鳴るのを感じた。
チロルが使う、高そうな黒いゲーミングチェアにそっと触れてみる。
「…なんか、チロルがここにいないのに、チロルの匂いがする…」
ぴのは、その場の空気に気圧され、顔が熱くなるのを感じた。
🦊 チロルのからかい
ちょうどその時、リビングにいたチロルが飲み物を持って部屋に入ってきた。
「あれ、ぴの。どうしたの、こんなとこで突っ立って」
ぴのは慌てて手を引っ込め、振り向いた。
「あ、チロル!えっと、ヘッドホン忘れてないか見に来たの!もう見つけたから、大丈夫!」
ぴのは、ヘッドホンを手に取り、出口に向かおうとするが、顔の熱が引かないせいで、いつもより口調がぎこちない。
チロルは、そのぴのの様子を見逃さなかった。ぴのが珍しく落ち着きをなくしていることに気づき、ニヤリと意地悪な笑みを浮かべる。
「ふーん?でも、ぴの。顔がちょっと赤いよ?」
チロルはぴのの前に立ち、逃げ道を塞ぐように両手を壁についた。
「え、あ、それは…この部屋、ちょっと暑いから!」
「ふふ、そう?ここは防音室で空調も完璧だけどな。それとも…俺の部屋の雰囲気にドキドキしちゃったとか?」
チロルは、ぴのの耳元に顔を近づけ、低い声で囁いた。その声は、配信で聞くクリアな声とは違い、プライベートな響きを帯びている。
「なっ…!そんなことないよ!チロルの部屋なんて、モニターと機械ばっかりで、全然可愛くないもん!」
ぴのは、必死で強がったが、その言葉が完全にチロルのからかいに火をつけてしまった。
「あ、可愛くないって言われちゃった。残念。でも、ぴの。君が今、俺の部屋にいるってことは、俺の仕事の空間、俺の頭の中のほとんどに入り込んできたってことだよ」
チロルは、ぴのの腰にそっと手を回した。
「俺の部屋は、ぴのの部屋みたいに可愛くないかもしれないけど、俺が一番集中して、真剣になる場所だ。その真剣さに、ぴのがドキドキしてるの、俺にはわかるよ」
ぴのは、もう何も言い返せない。チロルの真剣なまなざしと、腰に回された手の熱に、完全に打ち負かされていた。
「も、もういい!チロル、意地悪!ぴの、リビング行く!」
ぴのは、サッとチロルの腕の下を潜り抜け、慌てて部屋を飛び出していった。
チロルは、出ていったぴのの後ろ姿に満足そうに笑い、自分のデスクに戻った。
(ふふ、可愛いな。俺の部屋に入って、ドキドキしてるぴのを独り占めできるなんて、最高だ)
新しい家は、二人の仕事への情熱と、甘い愛のドキドキで満たされていくのだった。
📝 新居ルール会議:最高のパートナーシップのために
📋 厳粛な会議(?)の始まり
引っ越しから数日後。リビングのダイニングテーブルには、チロルが準備した真面目な議題が書かれたホワイトボードと、ぴのが用意したお菓子と紅茶が並んでいた。
「よし、ぴの。『新居ルール会議』を始めるよ。まずは、僕たちの生活の質と動画の質を保つための、大事な話し合いだ」
チロルは真剣な表情で、マジックを握った。
「はーい!ぴの、ルールの話は真面目にするけど、お菓子もちゃんと食べます!」
ぴのは、紅茶を飲みながら応じた。
📌 ルール その一:家事の分担
「まずは家事分担だね。ぴのは料理が得意だから、基本の夕食はお願いしたい。その代わり、朝食は僕が担当するよ。ぴのは朝弱いから、ゆっくり寝てていい」
「やった!チロルの作る朝食、楽しみ!じゃあ、ぴのは**洗濯と掃除(主にリビングとぴの部屋)**を担当するね!チロルは?」
「僕は、風呂掃除とゴミ出し、あと仕事部屋の徹底した整理整頓を担当する。水回りは僕がやった方が得意だし、仕事部屋はぴのに触らせると大変なことになりそうだからね(笑)」
「もう!ちゃんと整理するもん!」
「あと、食器洗いは、その日の気分でジャンケンにするのはどう?勝ち負けも楽しいし」
「賛成!負けた方が、洗いながら今日の動画の反省を言う、とかどう?」
「いいね、採用!」
📌 ルール その二:仕事とプライベートの境界線
「次、ここが一番大事。仕事とプライベートの切り替えだ」
チロルはホワイトボードに太字で書き込んだ。
「【仕事部屋のドアが閉まっている時は、緊急時以外ノック禁止】。これはどう?お互いに集中できるように」
「うん、賛成!あと、ぴのからも提案。【夜10時以降は、仕事の進捗の話は禁止】。必ずプライベートな話をして、リラックスする時間を作る!」
チロルは目を細め、ぴのを見つめた。
「ぴの、いいルールだ。それは、二人で一緒に作った朝食を食べる時間まで持ち越さない、も追加で」
「もちろん!朝は笑顔で『おはよう』だけ!」
📌 ルール その三:喧嘩と仲直り
「最後に、喧嘩のルールだ。あの時の配信中の喧嘩は、もう二度と繰り返したくない」
チロルが真剣な顔になると、ぴのも背筋を伸ばした。
「【相手の部屋に逃げ込んだら、最低30分は追わない】。お互いにクールダウンの時間を設ける。どう?」
「いいよ!そして、【仲直りは、その日のうちに、必ずハグと『ごめんね』で終わらせる】。次の日に持ち越さない!」
「完璧だ、ぴの。そして、一番大事なルール。【どんな時も、お互いを『最高のパートナー』と呼び続ける】。これは絶対に守ろう」
「うん!守る!」
チロルは、ぴのに向かってペンを差し出した。
「さあ、ぴの。これで、僕たちの新しい生活が、もっと最高のパートナーシップになる。このルールに、サイン(署名)してくれる?」
ぴのは、チロルのルールを読み返し、満面の笑顔で自分の名前を書き込んだ。お互いのサインが入ったホワイトボードを見て、チロルとぴのは満足そうにハイタッチをした。
「よし!このルール通り、明日から新しい生活を楽しむぞ!」
「チロル、楽しみだね!」
☀️ ルール後の朝:珈琲の香りと「おはよう」
⏰ ルールに基づく目覚め
チロルの部屋の目覚ましが鳴る、午前7時。
チロルはすぐに目を覚ました。昨日のルール会議で、朝食担当になったチロルは気合十分だ。
(よし。今日はぴのが朝食で起きるのが楽しみになるように、頑張るぞ)
チロルは静かに部屋を出て、キッチンへ向かう。これが、同棲生活で迎える、ルール適用後の初めての朝だ。
キッチンに入ると、チロルはすぐにコーヒー豆を挽き始めた。ガリガリと豆が挽かれる音と、香ばしいアロマが、静かな新居に広がる。
続いて、冷蔵庫から食材を取り出し、手際よく調理を始めた。今日のメニューは、ぴのが好きなフレンチトーストと、彩り豊かなフルーツ。
🍽️ 完璧な朝食と「おはよう」
チロルがダイニングテーブルに朝食を並べ終えた頃、午前8時。
ぴのが、まだ少し眠たそうな顔で、パステルカラーのパジャマのままリビングに現れた。コーヒーの香りと、トーストの甘い匂いに誘われたようだ。
「…んー、いい匂い。チロル、おはよ…」
ぴのは目を擦りながら、テーブルの前に座った。
「おはよう、ぴの。よく眠れた?」
チロルは、焼き上がったばかりのフレンチトーストをぴのの皿に載せてあげた。
「うん…!あ、そうだ!」
ぴのは、急に姿勢を正し、チロルが定めたルールを思い出した。
【朝は笑顔で「おはよう」だけ】
ぴのは、今日の動画のアイデアや、昨夜やり残した編集の話を口にしそうになったが、ぐっとこらえた。
「ねぇ、チロル。このフレンチトースト、すっごく美味しそう!今日も一日、よろしくね!」
ぴのは、**『仕事の話は朝食まで持ち越さない』**というルールを完璧に守り、最高の笑顔で挨拶を返した。
チロルは、ぴのがルールを守ってくれたこと、そして、その笑顔が可愛すぎて、再び胸が熱くなるのを感じた。
「こちらこそ、ありがとう、ぴの。たくさん食べて、今日も一日頑張ろうね」
☕️ チロルの小さなルール破り
ぴのがフレンチトーストを食べ始めた時、チロルはぴののマグカップに、挽きたてのコーヒーを注いだ。
チロルは、マグカップをぴのに渡すふりをして、そっとぴのにキスをした。
「…ん?」
ぴのは目を丸くした。
「チロル!**『朝は「おはよう」だけ』**ってルールじゃなかったの!?」
チロルは、ニヤリと笑いながら、自分の席に戻った。
「そうだよ。『仕事の話はしない』ってルールだ。でも、ぴのに『今日も一日頑張れるように、エネルギーを注入する』っていうのは、彼氏のチロルの大切な役割だから、ルールには書いてないだろ?」
「もう!チロル、ずるい!」
ぴのは、顔を赤くしたが、そのおでこのキスのおかげで、眠気は完全に吹き飛んだ。
新しい生活のルールは、二人の仕事と生活の秩序を守るだけでなく、二人の愛情表現の隙間を作る、最高のスパイスにもなっていくのだった。
🕛 ルール後の昼:静寂とランチの合図
🤫 ワークルームの静寂
午前中の新居は、規則的な静寂に包まれていた。
チロルは防音対策されたワークルームにこもり、企画書作成と動画の編集に集中している。ぴのは、リビングのダイニングテーブルで、動画のサムネイルデザインやSNSの更新作業を行っていた。
お互いの仕事部屋のドアは閉ざされており、チロルが定めたルール**【仕事部屋のドアが閉まっている時は、緊急時以外ノック禁止】**が守られている。このおかげで、二人は高い集中力を保って仕事を進めることができていた。
ぴのは時々、閉まったチロルの部屋のドアを見つめた。
(チロル、頑張ってるな…)
こんな風に、物理的に空間を分けていても、同じ家で一緒に仕事をしているという事実に、ぴのは心の中で温かい喜びを感じていた。
🧺 ルールに基づいた家事
午前11時半。ぴのは作業を一旦区切り、立ち上がった。
【家事分担:ぴのは洗濯と掃除(主にリビング)を担当】
ぴのは、チロルの朝食の片付けを済ませると、チロルと自分の洗濯物を集め、洗濯機を回した。リビングのテーブルや床を、丁寧に掃除機で掃除する。チロルに言われた通り、整理整頓されたリビングが、ぴのの掃除によってさらにピカピカになった。
🍴 ランチの合図
正午、きっかり。
チロルのワークルームのドアが、カチャリと開いた。
「ぴの、お腹空いたね。休憩にしようか」
「チロル!お疲れさま!」
ぴのは、にっこり笑ってチロルを迎える。チロルは、コーヒーの香りが染みついた部屋から出てきたことで、少し表情が和らいでいた。
チロルは、ランチ担当のぴのに尋ねる。
「今日のお昼は?」
「今日はね、**『チロルの頑張り応援!』**スペシャルメニューだよ!ぴのが昨日作ったミートソースで、ナポリタン!」
「お、いいね!ぴのの料理は、仕事の後の最高の燃料だ」
二人がダイニングテーブルに向かいながら、チロルは、リビングを見て驚いた。
「すごい。ぴの、もう掃除してくれたんだね。昨日より部屋が明るく感じるよ。ありがとう」
「えへへ。ルール通り、ぴのがしっかりお掃除しました!」
🎲 昼食後のドキドキ
昼食を終え、食器を片付ける時間。
【食器洗いは、その日の気分でジャンケン】
「さあ、ぴの!今日は勝って、僕がぴのに動画のアイデアを話せるか、決めるぞ!」
チロルは、ワクワクした顔で両手を差し出した。
「望むところだよ、チロル!最初はグー!」(ぴの) 「ジャンケン…ポン!」(二人)
結果は、ぴのの勝ち。
「やったー!ぴのの勝ち!チロル、洗い物よろしくね!」
「くっ…。負けは負けだ。洗いながら、今日のゲームの反省点を語るよ」
チロルは、負けた罰として食器洗いを始めた。ぴのは、そんなチロルの背中を見ながら、ふとチロルがキッチンに立つ家庭的な姿に、また胸がキュンとした。
(チロルって、仕事してるときはすごくかっこいいのに、こういう時、すごく優しい…)
チロルは、洗剤の泡を立てながら、そっとぴのに話しかけた。
「ねぇ、ぴの。僕が洗い物してる間にさ、あの指輪のサイト、もうちょっと見てくれない?」
昼食後の和やかな時間。チロルは、ぴのがドキドキしていることに気づかないふりをして、そっと二人の未来の計画を忍び込ませるのだった。
🌃 ルール後の夜:甘い密着と誓いの時間
🎮 仕事終わりの切り替え
夜9時45分。
チロルはワークルームから出てきて、パソコンの電源を完全に落とした。ぴのもリビングのテーブルで、最後のSNS投稿を終える。
チロルは、ぴのの隣に座ると、満足そうに言った。
「よし。今日の作業は終わり。ぴの、お疲れ様」
「チロルもお疲れ様!」
二人はハイタッチを交わした。まもなくルールで定められた時間がやってくる。
【夜10時以降は、仕事の進捗の話は禁止】
チロルは壁の時計を見ながら、ぴのに声をかけた。
「あと15分で10時だね。それまでに、今日の分のジャンケンを消化しようか」
「え、ジャンケン?何のだっけ?」
「夜のジャンケンだよ」
チロルはニヤリと笑った。これは、ルール会議でぴのが提案した**「食器洗いジャンケン」**の派生だ。負けた方が、お互いのマッサージをするという、内緒のルールが加わっていた。
結果は、ぴのの勝ち。
「やったー!チロル、ぴののマッサージよろしくね!」
「はいはい。お嬢様」
チロルは、ぴのをソファに座らせ、ぴのの肩を丁寧に揉み始めた。
✨ 10時、ルール発動!
そして、ちょうど夜10時になった。リビングの照明は、ぴのが選んだ温かい間接照明だけになる。
「ルール発動!チロル、仕事の話は禁止だよ!」
「わかってるよ。じゃあ、聞くけど、ぴの。僕がさっきまで何を考えてたと思う?」
チロルは、ぴのの肩を揉みながら、優しく尋ねる。
「えー?ゲームの新しいアイデアとか?」
「ブー。違うよ。僕が考えてたのは、ぴのの部屋の天蓋のフリルのこと」
「えっ…なんで?」
ぴのは、チロルの意外な答えに驚いた。
「いや、可愛すぎるだろう、あれは。僕の部屋の無骨な雰囲気と比べて、あのフリルはあまりにもぴのの可愛さが凝縮されすぎてて…ちょっと、独り占めしたくなるなって考えてた」
チロルの甘い言葉に、ぴのは顔が真っ赤になる。
「も、もう!チロルったら!急にそんなこと…!」
「ほら、ルール通り、仕事の話はしてない。これは**『プライベートな話』**だからね。ルール違反じゃない」
💖 誓いの時間
チロルはマッサージを終えると、ぴのを自分の隣に引き寄せ、抱きしめた。ぴのは、チロルの胸にすっぽりと収まる。
「ねぇ、ぴの。今日は、ルールのおかげで、仕事も集中できたし、プライベートもすごく楽しかったよ」
「うん。ぴのも。ルールがあるからこそ、チロルがぴのだけを見てくれる時間が増えた気がする」
チロルは、ぴのに向けた優しさを込めて、そっとキスをした。
「ありがとう。そして、**【仲直りは、その日のうちに、必ずハグと『ごめんね』で終わらせる】**ってルールがあったけど…」
チロルは、ぴのを抱きしめる腕に力を込めた。
「俺たちの夜の最後のルールは、**【どんな時も、必ずハグと『大好き』で終わらせる】**にしよう。毎日、この場所で、最高のパートナーであることを確認し合おう」
ぴのは、チロルの胸に顔を埋めたまま、嬉しそうに頷いた。
「うん!賛成!チロル、大好き!」
二人は、新居の温かい光の中で、一日の終わりと、永遠の愛を誓い合った。彼らの新ルールは、最高の仕事と最高の愛を両立させるための、完璧なガイドラインとなったのだった。
💔 浮気疑惑!?:不安と安堵のロブロックス配信
📱 誤解の始まり
ルールを決めた平和な同棲生活が始まって数週間。チロルは昼間、新作ゲームの編集作業に集中していた。
その時、リビングから聞こえてきたぴのの声が、チロルの手を止めさせた。
「うん、うん、わかった。じゃあ、夜に二人きりでね…。誰にも言わないで、ってことだよね?楽しみにしてる!」
ぴのは、誰かと電話をしていたようだ。声は弾んでいて、最後は少し内緒話のようなトーンだった。
チロルの心臓がドクンと嫌な音を立てた。
(二人きり?誰にも言わないで?…一体誰と?)
チロルは、すぐにぴのを問い詰めることはせず、不安を抱えたまま、その日の夜の配信に臨んだ。
🎮 ロブロックス配信とチロルの違和感
その夜の配信は、久しぶりのRoblox(ロブロックス)のホラー脱出ゲーム。いつものように二人は並んで座っているが、チロルの心は上の空だ。
チロルはゲーム中、ぴのの動きやコメントの一つ一つを観察してしまう。
ぴのがチャット欄に目をやるたびに、チロルは(誰からの連絡を気にしているんだろう?)と考え、ぴのが誰かを応援するようなコメントをするたびに、(もしかして、あの電話の相手を意識してる?)と疑ってしまう。
ぴのが、次のステージに進むためのアイテムを見つけた。
「あ、チロル!ここだよ、ここ!**『あの人』**が教えてくれた場所だ!」
ぴのが無邪気にそう言うと、チロルの不安は頂点に達した。
(「あの人」!?やっぱり、電話の相手だ!ぴのが、誰か別の人間と秘密の交流をしている…?)
チロルは、感情を抑えきれず、つい口調が冷たくなった。
「…ぴの、その**『あの人』**って、誰のこと?僕たちは、仕事のことは何でも共有するルールだよね?」
ぴのは、突然のチロルの真剣なトーンに驚き、ゲーム内の操作を止めた。
「え?チロル、どうしたの?急に」
チロルは、ゲーム画面ではなく、カメラに向かって少し前のめりになる。
「さっきから気になってたんだ。昼間、誰かと内緒話してたよね?夜に二人きりで会うって。その**『あの人』**と、何か隠してること、ないの?」
チャット欄は、「え、三角関係!?」「修羅場配信?」「チロルさん怖い」と大騒ぎになった。
🕊️ 誤解の解消
ぴのは、チロルが真剣に自分を疑っていることに気づき、一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐに事態を理解して、噴き出した。
「ふふっ…あははは!チロル、まさか浮気だって疑ってるの!?」
「…笑い事じゃないだろ、ぴの!」
「もう!チロルったら勘違いなんだから!」
ぴのは、カメラに向かって、そしてチロルに向かって、身を乗り出した。
「あのね、**『あの人』**っていうのは、今日のホラーゲームの制作チームの広報担当の女性だよ!」
ぴのは、ロブロックスのゲーム画面を指さした。
「このゲームの隠し要素を、今日の配信の最後に紹介するサプライズ企画をお願いしてたの!その時に、『夜に二人きりでこっそり内容を決めたい』って広報さんが言ってきたから、『誰にも言わないで』ってお願いしたの!」
ぴのは、スマホを取り出し、チロルに見せた。そこには、広報担当者との打ち合わせチャットの履歴が残っている。
「で、さっき**『あの人』って言ったのは、チャットで『隠しアイテムの場所は、このキャラクターに尋ねる!あの人から教えてもらった!って言うのがキーになります』**って打ち合わせした通りに言っただけだよ!」
チロルは、血の気が引くのを感じた。不安に囚われて、ぴのを疑い、しかもそれを配信中に問い詰めるという大失態を犯してしまったのだ。
「え…あ、ああ…そうだったのか…。ごめん、ぴの…!俺が、勝手に勘違いして…」
チロルは、心から安堵すると同時に、恥ずかしさで顔を覆った。
「もう!チロル、私を誰だと思ってるの!チロルと決めたルールがあるのに、ぴのが秘密で誰かと会うわけないでしょ!でも…」
ぴのは、チロルの手をそっと掴んだ。
「でも、チロルがそれだけぴののことを大好きで、心配してくれたって分かったから、許してあげる」
「ありがとう、ぴの。俺の愛の大きさのせいで、ごめんね。今日の配信、僕の勘違いで大騒ぎになっちゃったけど、僕たちの絆が最強なのは証明できたってことで、許してください!」
チャット欄は「チロルさん可愛い」「愛が重い!」「仲直り配信最強」と、再び祝福ムードに包まれた。
💧 涙のドッキリ:チロルの後悔
🤫 リアルすぎる計画
前回の失敗に懲りたチロルだが、「ぴのの本当の反応が見たい」というクリエイター魂と、少しの意地が消えなかった。今回は、ドッキリだと気づかれないように、徹底的にリアルさを追求した。
チロルは、数日前からぴのへの態度をわずかに冷たくするという演技を始めた。配信中のハイタッチを拒否したり、夜のリラックスタイムで抱きしめる時間を短くしたり…。
そして、ドッキリの当日。チロルは、ぴのが嫌いなタバコの匂いに似たアロマを服に少量つけておき、さらに、女性の香水のように甘い香りを少しだけ振りかけておいた。そして、昼間に「今日は急に会議が入った」とだけぴのに伝え、夜遅く帰宅した。
🚪 ドッキリのピーク
チロルが夜11時過ぎに帰宅すると、リビングは真っ暗だった。ぴのは、ルール通り先に寝たようだ。
チロルが静かに自室へ向かおうとした瞬間、リビングのソファにぴのが座っているのに気づいた。照明をつけず、小さな常夜灯の明かりだけで、ぴのは膝を抱えて丸くなっていた。
「…ぴの?どうしたの、こんな時間に」
チロルは、少し驚きながら声をかけた。
ぴのは、ゆっくりと顔を上げた。その目は、真っ赤に腫れ上がっていた。
「チロル…おかえり」
ぴのの声は、か細く震えていた。チロルは、ぴのが本当に泣いていることに、一瞬で背筋が凍りついた。
「ぴの、泣いてたの?何があったの?」
チロルは慌ててぴのの隣に座ろうとしたが、ぴのはスッとチロルから距離を取った。
「チロル、どこに行ってたの?…会議なんて、動画クリエイターが夜11時までやるわけないでしょ」
ぴのは、チロルの服の匂いを嗅いだ。
「この匂い…タバコと、甘い香水。チロル、嘘ついたでしょう。ぴのと結婚の準備してるのに、誰か別の女の子と会ってたんでしょ?」
ぴのの言葉は、まるで鋭い刃のようだった。チロルは心の中で「これはドッキリだ!」と叫ぼうとしたが、ぴのの瞳から溢れる、絶望と裏切りの色を見て、言葉を失った。
(やばい、リアルすぎた。ぴのを本気で傷つけてる…!)
😭 涙の告白とチロルの崩壊
チロルが言葉に詰まっていると、ぴのは静かに立ち上がった。
「あのね、チロル。ぴのは、チロルと最高のパートナーになるために、喧嘩しても、チロルを信じるって決めたんだよ。同棲のルールも、全部チロルとずっと一緒にいるために守ってたのに…」
ぴのは、込み上げる涙を堪えきれず、声を震わせた。
「ぴのは、チロルが**『もうちょっとあとね』**って言ったのに、それでもチロルの隣にいたくて、一生懸命頑張ってたのに…。こんな裏切り、ぴのには耐えられないよ…」
ぴのは、その場に崩れ落ち、声を上げて泣き始めた。
チロルは、ぴのの涙を見て、自分が仕掛けたドッキリだという事実が、完全に崩壊した。これはネタではない。自分が一番愛する人を、取り返しのつかないほど深く傷つけてしまったのだ。
「ぴの!待って!違うんだ!ドッキリなんだ!」
チロルは膝から崩れ落ち、ぴのを強く抱きしめた。
「ごめん!ごめん、ぴの!全部嘘なんだ!僕が仕掛けた、くだらないドッキリなんだ!この匂いも、この香水も、全部嘘だよ!」
チロルは、自分の服を脱ぎ捨て、ぴのに何度も謝罪した。
「許してくれ、ぴの。僕がバカだった。君の愛を試すなんて最低だ。もう二度と、こんなことはしない。君を傷つけるなんて、想像しただけで、僕の方が死にたい」
ぴのは、チロルの必死な謝罪を聞きながら、チロルの胸の中で、わんわん泣き続けた。
ドッキリが仕掛けられたことを知っても、ぴのの涙は止まらなかった。それは、裏切られたショックと、チロルがもう二度と自分から離れないとわかったことによる安堵の涙だった。
二人は、抱き合ったまま、長い時間泣き続けた。チロルは、二人の絆の強さと、ぴのの愛の深さを、最も残酷な形で知ることになったのだった。
ぴのちゃんのドッキリ
📞 ぴのの完璧な計画
チロルの度重なるドッキリに懲りたぴのは、一度だけチロルに仕返しをして、完全に白黒つけることを決意した。ぴのが仕掛けたのは、チロルの**「愛が重すぎる」**という弱点を突く、緻密な浮気ドッキリだ。
ぴのは、チロルの友人であり、チャンネルの運営を手伝っている**「ケント」**さんに協力を依頼した。
ドッキリ当日、ぴのはわざと、チロルと決めた**「夜10時以降は仕事の話禁止」**のルールを破るように、ワークルームに駆け込んだ。
「ねぇ、チロル!急に明日から3日間、ケントさんと旅行に行くことになったの!」
チロルはヘッドホンを外して、ぴのを見た。
「え、旅行?なんで急に?しかもケントと二人で?仕事で?」
「ううん、プライベート。ケントさんが、動画の企画で新しい場所を探したいからって、ぴのを誘ってくれたの。二人きりの方が、ゆっくり話せるし、色々決められるから」
ぴのは、ケントさんの名前を出し、プライベートの旅行だと強調した。
チロルは、すぐに顔が曇る。ぴのが、自分ではなく男性と二人きりで、何の相談もなく旅行に行くという事実に、嫉妬心が湧き上がってくる。
「なんで急にそんな話になるんだよ。僕には何も相談なしで?」
「だって、チロルに言ったら**『危ないから行くな』とか『僕も行く』って言うでしょ?これは、ぴのとケントさん二人だけの秘密**なんだ」
ぴのは、チロルを試すように、チロルとの**「仕事とプライベートのルール」**を盾にした。
🚨 チロルの心のバグ
翌日、ぴのは大きな旅行バッグを持って、本当に家を出ていった。
チロルは、3日間仕事が手につかなかった。ぴのがいない静かな新居で、チロルの心は完全に**「バグ」**を起こしていた。
(本当にケントと二人きりなのか?ぴのがケントを好きになる可能性は?ケントはぴののタイプじゃないはずだけど、もしかしたら…)
そして、ぴのが帰宅する予定の日の夕方。チロルはぴののスマホに、ケントさんからのメッセージが届くように仕込んでいた。
チロルはわざとリビングのテーブルで編集作業をしているフリをし、ぴののスマホを放置。そして、ぴのがリビングに戻ってきたタイミングで、ぴのにスマホを渡した。
「ぴの、お疲れ様。スマホにケントから通知が来てたよ」
ぴのはスマホを手に取り、画面を見た瞬間、驚いたフリをして、思わず声を上げた。
「あ…ケントさんから**『昨日の夜、楽しかったね。ぴのちゃんとの旅行、最高だったよ』**だって!」
ぴのは、慌ててスマホを隠そうとする。
チロルは、そのメッセージを見て、完全に冷静さを失った。
「昨日の夜!?ぴのは今日帰ってくる予定だったはずだろ!昨日、何があったんだ!?」
チロルは立ち上がり、ぴのに詰め寄る。
「ぴの、嘘をついたのか?本当に、ケントと…付き合ってるのか?」
チロルの顔は青ざめ、目には絶望と裏切りの色が浮かんでいた。
👑 最高の「大好き」
ぴのは、チロルの顔色を見て、ドッキリが成功しすぎたことを悟った。チロルが本気で泣きそうになっている。
ぴのは、チロルの顔に両手を添え、まっすぐその瞳を見つめた。
「チロル。チロルが、『ぴのがいないと生きていけない』ってTシャツを着た日から、ぴのはもうチロルを裏切らないって決めたよ」
ぴのは、チロルのTシャツを優しく握った。
「これは、ぴのからのドッキリだよ、チロル」
「え…?」
「ケントさんと二人きりで、動画企画の打ち合わせをしたのは本当。でも、旅行先はケントさんの彼女も一緒に来てたんだよ。ケントさんから届いたメッセージも、チロルが前に私に仕掛けたように、ぴのが編集して送ったの」
ぴのは、スマホを取り出し、ケントさんの彼女とのスリーショット写真を見せた。
「チロルの愛が重すぎるから、一度、チロルがいないと、ぴのがどれだけ自由で、チロルを必要としてないか、証明したかったの。でもね…」
ぴのは、チロルに抱きつき、耳元で囁いた。
「チロルが本気で泣きそうになってるのを見て、わかった。ぴのがいないと、チロルは本当にダメなんだね」
チロルは、どっと力が抜けるのを感じた。そして、ぴのを抱きしめ返し、その背中に顔を埋めた。
「もうやだ…ぴの、怖かった。本当に怖かった。もう二度と、僕から離れないでくれ…」
「ふふ、もう離れないよ。チロル、ドッキリ失敗の罰として、今すぐ、ぴのが選んだ指輪を見に行くよ。『もうちょっとあとね』は、もう終わり。ぴのをこれ以上不安にさせないための未来への保証を、今すぐ見せて」
チロルは、ぴのの強さと愛情に心から感謝し、頷いた。
「わかった。僕の愛のすべてを、その指輪に込める。さあ、行こう、ぴの!」
最終話 涙の結婚 「絶対に幸せにする」
🌙 沈黙のリビング
ご両親からの猶予をもらい、結婚という目標に向かって走り始めた矢先。夜の配信を終えた後、チロルとぴのは、いつものようにソファでリラックスしていた。
チロルは、明日行く予定の指輪ショップのサイトをスマホで開いていた。ぴのは、ブランケットにくるまり、チロルの肩に頭を乗せている。
チロルは、ぴのに画面を見せた。
「ぴの、これ見て。昨日話してた、このシンプルなデザイン、ぴのに似合うと思うんだけど、どうかな?」
ぴのは、画面を一瞥すると、すぐにスマホから顔を逸らした。
「…うん。可愛いんじゃない?」
その声は、いつもの弾むようなトーンとは違い、抑揚がなく、どこか冷たい。
チロルは違和感を覚えた。
「どうしたんだ、ぴの?あまり嬉しそうじゃないぞ。指輪選び、楽しみにしてたんじゃないのか?」
ぴのは、チロルの腕から離れ、ソファの端に座り直した。そして、静かに、しかしチロルの心臓を凍りつかせる一言を放った。
「チロル。お願いがあるの。…ぴのね、YouTube、もうやめたい」
⚡️ チロルの動揺
チロルは、指輪のサイトを見ていたスマホを、思わずソファに落とした。
「え…?ぴの、今、なんて言った?」
チロルは、聞き間違いかと思い、ぴのを凝視した。
「YouTubeをやめたい、って言ったんだよ。もう、動画に出るのも、編集するのも、全部疲れた」
ぴのの瞳は潤んでおらず、覚悟を決めたような、固い意志を秘めていた。
「どういうことだよ、ぴの!僕たち、YouTubeで出会って、一緒に夢を追いかけてきたんじゃないか!結婚してからも、二人で続けていくって、約束しただろう!?」
チロルは、動揺と怒りで声が震えた。ご両親に「安定」を誓い、まさに「指輪」という未来の象徴を探している最中だ。チロルにとって、ぴののYouTube活動は、二人の絆そのものだった。
「その『約束』が、ぴのには重すぎたの。ねぇ、チロル。ぴののお父さんの言ったこと、正しかったんだよ」
ぴのは、深く息を吸い込んだ。
「チロルは、ぴのを動画の世界から離してくれない。プライベートでも、喧嘩しても、私たちの生活の全てが、動画のため、チャンネルのために動いてる。**『最高のパートナー』って、チロルにとって、『最高の動画素材』**と同義なんじゃないの?」
ぴのの言葉は、チロルが一番恐れていた、核心を突くものだった。
🚨 決意の理由
「ぴのの夢は、チロルと幸せな家族になることだよ。でも、ご両親に**『不安定』**だと言われた時、ぴのは思ったの。本当に不安定なのは、仕事じゃなくて、私たちの心なんじゃないかって」
ぴのは、涙を堪えながら、チロルに訴えた。
「このままYouTubeを続けて、チロルのペースについていけなくなったら、また喧嘩になる。またチロルに**『足引っ張るな』**って言われるかもしれない。だから、ぴのは、動画じゃない道を選びたい。普通の奥さんになって、チロルの帰りを待つ生活がしたいの」
「チロルと結婚するためなら、YouTubeをやめる。それが、ぴのが考えた**『安定』**なんだ」
チロルは、ぴのの覚悟の重さに、何も言い返せなかった。目の前のぴのは、彼に**「動画か、自分か」**という、究極の選択を突きつけていた。
🚫 チロルの拒絶
ぴのさんの「YouTubeをやめたい」という決意を聞いたチロルは、激しい動揺と拒絶の念に襲われた。
「ダメだ、ぴの。それは絶対にいけない」
チロルは立ち上がり、強い口調で言った。
「YouTubeは、ただの仕事じゃない。僕たちが二人で作り上げてきた、僕たちの証だろ!君が僕に『最高のパートナー』でいてほしいと願ったように、僕もクリエイターのぴのと一緒にいたいんだ!」
チロルは、ぴのの頬に手を添えた。
「僕たちは、二人でいるから最強なんだ。君が動画の世界から離れたら、僕たちの関係性そのものが、ご両親の言う**『普通の生活』**に飲み込まれてしまうんじゃないか。それは、僕が望む結婚じゃない!」
「ぴのが、動画を続けることが重荷なら、僕がペースを落とす。仕事とプライベートの境界線を徹底する。だから、頼む、やめないでくれ!」
チロルは、ぴのを失う恐怖で必死だった。
🚪 ぴのの家出
しかし、チロルの必死な言葉は、ぴのさんには**「結局、チロルは動画が一番大切なんだ」**という風に響いてしまった。
ぴのさんは、静かにチロルの手から自分の顔を離した。
「チロル、わかった。チロルは、ぴのが**『最高の動画のパートナー』**じゃなくなるのが、怖いんだね」
ぴのさんは、ソファの横に置いていた小さなバッグを手に取った。
「ぴのはもう、チロルの『最高のパートナー』じゃなくていい。ただ、チロルの**『安らげる家族』**になりたいだけだった。でも、チロルには、それが理解できないみたいだね」
「待て、ぴの。どこに行くんだ!」
チロルはぴのの腕を掴もうとしたが、ぴのはそれを振り払った。
「ちょっと、頭を冷やしてくる。チロルと、動画と、これからのことを、一人で考える時間が必要なの」
「ぴの!待て!夜中にどこへ行くんだ!危険だろ!」
チロルが必死に叫ぶ中、ぴのさんは、チロルの呼びかけを無視し、玄関のドアを勢いよく閉めて、家を出ていってしまった。
⏳ 絶望と空白の3日間
その後、チロルは一睡もできずにぴのさんの携帯に電話をかけ続けたが、繋がることはなかった。
新居のリビングは、ぴのさんの不在によって、まるで命の光が消えたように冷え切っていた。チロルが作った**「同棲のルール」**も、ぴのさんのいない今となっては、ただの虚しい紙切れだ。
朝食担当: チロルが作ったフレンチトーストは、誰も食べる人がいない。
仕事の切り替え: ぴのがいないことで、チロルは仕事に集中できず、ワークルームからも出られなかった。
チロルは、過去のドッキリでの**「愛が重い」**という自分の欠点が、最悪の形で現実になってしまったことに絶望した。
「僕が、ぴのを…追い出してしまったのか…」
チロルは、ぴのさんのいないソファに座り込み、涙が止まらなかった。
そして、3日間。ぴのさんからの連絡は一切なく、チロルは食欲も睡眠も失い、完全に崩壊寸前だった。動画の更新も止まり、チャット欄にはファンからの心配の声が溢れ始めた。
チロルの頭の中には、**「ぴのが、ご両親の元に戻ってしまったのではないか」「ぴのはもう、二度と帰ってこないのではないか」**という恐怖だけがあった。
🚪 3日後の帰還
ぴのさんが家を出てから、丸3日目の夜。チロルはリビングのソファに、ぴのさんのブランケットを抱きしめて座り込んでいた。
その時、玄関のドアが、静かに開く音がした。
「…ぴの?」
チロルは信じられない思いで立ち上がった。玄関の明かりに照らされ、見慣れたぴのさんの姿があった。ぴのさんは、あの時の小さなバッグを抱え、少し痩せたように見えるが、瞳にはもう迷いはなかった。
「…チロル」
ぴのさんは、チロルの顔を見て、そのやつれた姿に、すぐにチロルがどれほど自分を心配していたか悟った。
チロルは、一歩も動けずに立ち尽くしていた。恐怖と安堵と喜びが混ざり合い、言葉が出ない。
ぴのさんは、そっとチロルに駆け寄り、チロルを抱きしめた。
「ごめんね、チロル。心配かけて。ただいま」
チロルは、ぴのさんの体温を感じた瞬間、張り詰めていた緊張の糸が切れ、声を出して泣き崩れた。
「ぴの!どこに行ってたんだよ!もう二度と、僕の目の前から消えないでくれ!お願いだから、僕を一人にしないでくれ!」
🤝 ぴのの真意と本当の安定
チロルが落ち着いた後、二人はソファに並んで座った。
「チロル、聞いて。ぴのがYouTubeをやめたいって言ったのは、ドッキリじゃなかった。ご両親の言葉が、ぴのの心を弱くしたのも本当だよ」
ぴのさんは、チロルの手を握りしめた。
「でも、家を出て、一人で考えたの。ぴのの本当の『安定』って何だろうって」
「一人になったら、チロルがいないことで、朝食のフレンチトーストも美味しくない。夜の抱っこもない。静かすぎて、寂しくて、仕事どころじゃなかった。その時わかったの。ぴのの安定は、公務員や、普通のお家じゃなくて、チロルが隣にいることなんだって」
ぴのさんは、チロルを見つめた。
「だから、ぴのは、YouTubeをやめない。チロルと『最強のパートナー』として、不安定なこの世界を、二人で安定させる! チロルが望んだ通り、クリエイターのぴのとして、最後までチロルと一緒にいるよ」
「ありがとう、ぴの…!」チロルは感動で、ぴのさんを再び強く抱きしめた。
💍 永遠の誓いとプロポーズ
チロルは、ぴのさんの言葉に感涙した後、意を決して立ち上がった。そして、3日間触れることのできなかったワークルームに戻り、小さな箱を持って戻ってきた。
「ぴの。これで、全部終わりだ」
チロルは、ぴのさんの前にひざまずいた。
「この3日間、僕は地獄を見た。ぴのがいない世界は、何も価値がないと、心からわかった。僕は、ぴのがいないと、動画も生活も、何もできない」
チロルは、箱を開けた。中には、ぴのが前に選んでいた、シンプルなデザインの指輪が入っていた。
「ぴのを裏切り、傷つけ、不安にさせたバカな僕だけど、これだけは真実だ。ぴのこそが、僕の人生のすべてであり、僕の『安定』そのものだ」
チロルは、涙で声が震えながらも、まっすぐな愛を伝えた。
「ぴの。僕と結婚してください。ご両親に誓った一年間の猶予は、最高の夫婦になるための準備期間にしよう。これからも、最高のパートナーとして、最高の家族として、一生僕の隣にいてください」
ぴのさんは、涙で顔をくしゃくしゃにしながら、何度も頷いた。
「はい!チロル!結婚します! ぴのの安定は、チロルの隣だよ!」
チロルはぴのさんの震える左手の薬指に、指輪をそっとはめた。指輪が、リビングの温かい光を反射し、きらめいた。
抱きしめ合った二人。チロルとぴのは、多くの試練とドッキリを経て、真の愛と永遠の誓いを手に入れた。二人の新しい生活は、今、**「最高のパートナー」から「最強の夫婦」**へと、永遠に続いていくのだった。
― 完 ―
(このエピソードをもって、この物語は完結となります。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。)
最強の夫婦 ちろぴの
💍 続編:結婚後の「最強の夫婦」生活
💒 エピローグ:最高の報告
ご両親との約束の一年後。チロルとぴのは、結婚生活の安定と、YouTubeチャンネルのさらなる成長を証明し、無事にご両親から祝福を受けて結婚した。結婚式の様子を収めた動画は、チャンネル史上最高の再生回数を記録した。
二人のワークルームのデスクには、お揃いの結婚指輪がキラリと輝いている。
👨👩👧👦 結婚後の試練:ご両親との距離
🏡 週末の訪問
結婚後もチロルはご両親に誓った「生活の安定」を証明するため、積極的に動いていた。二人は、結婚後初めて、ぴのさんの実家を訪問することになった。
新婚旅行のお土産を手に、リビングに通された二人。ぴのさんのお父様は、まだ少し硬い表情をしていたが、以前のような拒絶の雰囲気はなかった。
「お父様、お母様、ご無沙汰しております」
チロルは丁寧に挨拶をした。
「ええ。結婚おめでとう、チロルさん。ぴのがあなたを選んだ以上、親としては見守るしかありません」
お父様の言葉は厳しかったが、その裏には娘への愛情が感じられた。
📊 安定の証明
お母様が、ぴのさんに新しい生活について尋ねている間、お父様はチロルに話しかけた。
「チロルさん。結婚の前に、あなたは一年間で生活の安定を証明すると言いましたね。それはどうなった?」
チロルは、バッグから一通の封筒を取り出し、お父様に差し出した。
「お父様。こちらが、この一年間の二人の収支報告書です。ぴのと二人で、弁護士と相談しながら、資産管理を徹底しました」
封筒の中には、二人が確保した十分な貯蓄額と、夫婦間の収益配分の明確な契約書が入っていた。
「そして、こちらは**『仕事と生活のルール』**の改定版です。ぴのの生活が仕事に飲み込まれないよう、**週に一度は必ず『動画禁止のデート日』**を設けるルールを加えました」
お父様は、報告書を静かに読み進めた。チロルが真剣に、そして現実的にぴのの安定を考えていることが、その書類から伝わってくる。
🤝 認められた絆
「チロルさん…」
お父様は、書類をテーブルに置いた。
「この一年で、あなたが**『最高のパートナー』として、言葉だけでなく行動で証明したことは認めましょう。特に、この『収益の安定化』と『ぴのの生活を守るルール』**は、親として安心できる」
お父様は、チロルを見つめた。
「ですが、一つだけ約束してください。ぴのを泣かせるような嘘や、不安にさせる行動は、絶対にしないこと。それが破られたら、容赦しません」
「はい!もう二度と、ぴのを悲しませるようなことはしません。命に誓います」
チロルは、強く誓いを立てた。
その時、お母様が、ぴのさんの隣で嬉しそうに微笑んだ。
「ねぇ、お父さん。もういいじゃない。この子たち、お互いがいないと生きていけないって、顔に書いてあるわよ」
お母様の温かい言葉に、ぴのさんは嬉し涙を浮かべた。お父様も、観念したように小さな笑みを浮かべた。
「まったく、しょうがない娘だ。…さあ、せっかく来たんだ。夕食は、みんなでゆっくりしなさい」
チロルは、ぴのさんのお父様とお母様に、深く頭を下げた。ご両親の反対という試練を乗り越え、二人の結婚生活は、家族の温かい祝福を得て、揺るぎないものになったのだった。