び‐こう〔‐クワウ〕【微光】 の解説
かすかな光。弱々しい光。
__________________________________
この話は、嘘か本当か。
嘘のような実話か。
実話のような嘘か。
暁〜AKATSUKI〜
カラ-kun
LOUIS
寺
周
から成る個人活動グループ。
カラ、LOUIS、寺、周。四人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇____
⚠️この物語は、あるグループをモデルとしたものです⚠️
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目次
暁前の微光
嘘のような実話。
実話のような嘘。
この話は嘘か、本当か。
カラ、LOUIS、寺、周…4人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇。
強くなれ。
強い者だけに、道は開かれる__________
「ねぇ、本当にやるの。」
「あったりまえじゃん!」
「家出ってちょっと怖い…」
「だからいいんでしょ!」
夕方4時半。小学2年生くらいだろうか。4人の子供達の声が響く。
おいよいよいよい…さっきから気になって聞いてたけど、こんな時間に今から家出かよ。大丈夫か?いやまあまだ四時だし。
「………s」
4時半か。そのうち飽きて帰ってくるだろうし……___って。僕はなんで他人の家の子供のこと心配してんだよ。
「…UIS」
いやでも声かけてみれば…誘拐に思われるか…
??「LOUIS」
流石に他人の家の子供に声掛けるのは誘拐っぽいよな…いやでも僕もまだ13だよ。誘拐とは思われ___
??「LOUIS!!!」
「え」
??「もぉ…何回名前呼んだと思ってんの。4回だよ4回!」
「うん…」
あの少年たちのことが脳裏に焼き付き、応答が疎かになる。
束の間。
??「聞いてんの?」
?「ちょっとカラ、LOUIS。近所迷惑よ」
カラ、LOUIS、と呼ばれた少年二人は、声をかけられた方へ振り返る。
カラ「うッ……ごめんなさぁい」
???「wwwwwやけに素直で草」
「笑」
僕が控えめに笑う。
カラ「誰やいまわろたやつでてこいヤァあああ!!」
「フッ」
僕はわざと、わざとらしく。鼻でカラを笑った。
カラ「な゛ッ…」
周「ww
でもやっぱり寺って保護者。」
寺、というのはさっき僕とカラに声をかけた人。
寺「そんなことないよ笑」
本人は否定するものの僕はこの人のことを姉のように慕っている。
きっと、他二人もそうだろう。
カラ「ていうか、さっきLOUIS。何をぼーっとしてたのさ。」
路上の一点を見つめていると、ふいに話を戻される。
「あの四人の__2年生くらいかな。あの子達が気になって。」
寺「それもまた、どうして?」
「あぁ…うん、家出がどうとか、言ってたからさ。まあすぐ、家に帰ると思うんだけど。」
周「なるほど。まあそんなに心配することでもないんじゃない?」
カラ「そういえばさ。」
全員の視線がカラへ向く。
カラ「僕らもした事あったよね、家出。四人で」
続く
暁〜AKATSUKI〜
嘘の様な実話か。
実話の様な嘘か。
ぜひ、お楽しみください。
ファンレターや質問など、どしどしお寄せください。
暁前の微光【2話】
嘘のような実話。
実話のような嘘。
この話は嘘か、本当か。
カラ、LOUIS、寺、周…4人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇。
強くなれ。
強い者だけに、道は開かれる__________
カラ「僕らもした事あったよね、家出。四人で」
刹那、冬の冷たく乾いた風がビュッ……と四人の頬を攫った。
空気が重い。2秒ほどの沈黙。
周「ぁ…はは、そうだっけ___」
カラ「うん。そうだよ、皆んな覚えてないの?」
寺「……」
全員の苦い返答を待って、カラが口を開きかけ__そして閉じる。
何かを言いたそうにこっちをみている。
僕にはその言葉がわかる。
_______覚えてないの________
きっとカラは、あの家出の事を一番、覚えている。
痺れを切らしたのか、もう一度口を開くカラ。
周「やめてよ、カラ。いい思い出じゃないよ。《《あれ》》は____あれはまだ小さい時の話。もう中学になったんだよ。ねぇ……もう忘れよう。」
話を止めようと、周が急かすように言う。
それがいい____とはどうしてもいえなかった。
僕らが覚えてないといえば、それは嘘になってしまう。
だって《《あの日》》の事は、5年が経った今も、鮮明に、何よりも。
覚えている。
「__________覚えて、ない。」
それでも僕は、嘘を吐く。
寺「…!」
周「LOUIS…」
僕のその一言で、ずっと重かった空気が鉛のようにもっと重くなったのが分かる。
寺と周の顔が、それを思い知らせる。
カラ「嘘。」
「……………」
カラ「だってLOUISは、覚えてるでしょ。LOUISは普段嘘をつかないぶん、嘘を吐くのが誰よりも下手。顔が引き攣ってる。僕がLOUISの事、分からないと思うの?」
カラには敵わない。僕がそれを、一番知っているというのに。
何を騙そうとしているんだ、僕は。誰を。
「___うん、ごめん嘘ついた。」
カラ「うん。」
周「私も…実は覚えてる。」
寺「私も。もう、__5年も経つのに…」
「___忘れない。多分、というより絶対。僕らはあの日を《《忘れられない》》。」
《《あの日》》僕らは四人で家を出た。
丁度、雪が降る季節…今ぐらいの時期だった。
その日は、体の芯から凍えるほど、寒かった。
手袋をつけていたのが二人____寺と周。しかいなかったので、全員が片手ずつ手袋をつけて手を繋いで。
学校から帰ったら、すぐにいつもの場所で待ち合わせよう。
嗚呼………そうだ。学校から帰る、確かその時の事だ。
続く
暁〜AKATSUKI〜
暁前の微光【3話】
嘘のような実話。
実話のような嘘。
この話は嘘か、本当か。
カラ、LOUIS、寺、周…4人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇。
強くなれ。
強い者だけに、道は開かれる__________
「___忘れない。多分、というより絶対。僕らはあの日を忘れられない。」
あの日僕らは四人で家を出た。
丁度、雪が降る季節…今ぐらいの時期だった。
その日は、体の芯から凍えるほど、寒かった。
手袋をつけていたのが二人____寺と周。しかいなかったので、全員が片手ずつ手袋をつけて手を繋いで。
学校から帰ったら、すぐにいつもの場所で待ち合わせよう。
嗚呼………そうだ。学校から帰る、確かその時の事だ。
---
2007年1月 兵庫県神戸市
学校帰り。
当時小学1、2年生の三人が、手を繋いで雪が降り積もる道を歩いている。
周「うぁ〜〜っ………さむいぃい……」
カラ「…カイロ…カイロがほしぃ……凍る…指が凍ってまう…」
周「こぉんなに寒うなるなんて聞いてへんわぁ!!」
大袈裟な二人_____とも言えない。
真冬とはいえどここは日本。氷点下を下回る事もあるが、比較的温暖なはずだ。
しかしその日は、記録的な寒波が関西地方を襲っていた。
寺「いうてそんな寒うないやろ」
カラ「いや寒いわ!!!!」
周「寺はもともと北海道に住んどったけぇ、あんまし分からんのかもしれんなぁ…!贅沢なやつめ。」
周は『ゼイタク』という覚えたての言葉を使った。
寺「どこがやねんw」
周(突っ込まれてしもた……)
カラ「俺知っとぉで!『ぜーたく』っちゅーのはなぁ____他人の気持をおしはかること。や!!」
周「あほぉ!!それは『たくあん』ゆうねんで!」
健気な声がてんてんと家が建つ田舎町に響く。
寺「『ぜーたく』は、使いすぎたりする事。カラのいう『ぜーたく』と周の言う『たくあん』は、そらきっと『ソンタク』やな。」
カラ「ほぉ………」
周「寺は物知りやなぁ!!」
寺「ふふ」
寺はこの二人のことを、妹と弟のように思っている。
この二人と出会ったのは、3歳の頃だったと思う。
周の言う通り、寺は北海道の『オタル』と言う場所から越してきた。
寺のいう『オタル』はすごく寒いらしい。そんなところから引っ越してきた寺は、寒さには滅法強かった。
途端、
カラ「あれ_____」
周「おん?」
カラ「うん……………ちょっと待っといて!」
周「なんやなんや!!鬼ごっこか…!?付きおうたるわぁあ!!!」
寺「えっ?ちょ__二人ともどこいくん!?」
そう言うや否や、どこへいくのか。突如走り出していくカラ。
それを追いかける周。
唖然と走り去っていく二人を見つめる寺。
寺「_______________あれは完全、迷子になるで……」
そう呟いた息が、白く濁った。
続く
暁〜AKATSUKI〜
暁前の微光【4話】
嘘のような実話。
実話のような嘘。
この話は嘘か、本当か。
カラ、LOUIS、寺、周…4人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇。
強くなれ。
強い者だけに、道は開かれる__________
寺「_______________あれは完全、迷子になるで……」
そう呟いた息が、白く濁った。
---
見慣れない路地。
カラ「______いやここどこ?」
困惑のあまり自分にツッコんでしもた……
カラが追いかけていたのは猫。あの三人で話に夢中になってる時、確かに目の前を《《黒い猫___黒猫》》がすぎていったのを見た。
「カラは好奇心が旺盛すぎんねや。そんなんやから外出すると毎回迷子になるねやんか。小学校にも上がったんやから、ちぃっとは大人しくしたらどない?」
今日の朝、そう母に言われたことを思い出す。
んなこと言われても…黒猫。黒猫やで?魔女宅のジジやで?あんな真っ黒な猫、珍しい。そりゃ、近くで見たいし観察したい……
黒猫なんておったら誰でも追いかけてまうやろ!
そもそも好奇心旺盛のどこがあかんねん…小学校にも上がったんやからって___まだ小2やで?人生100年時代。俺は130まで生きるんや。
人生これからやのに、俺を産んだオヤがそんなこと言うなんて。
ありえへんと思わん?
カラ「____ちゃうちゃう。今はそれを考えとんのとちゃうねん。はぁ……完全に迷子や。もうあかん……怒られてまう__」
ちりん……
鈴の音だろうか。透んだ音が路地に響いた。
はっ、と振り返る。
カラ「あ_______」
黒猫。
---
周「あーーーーっ、もう!どこやねんここ!!聞いたことも見たこともないて!!」
周がカラを追って辿り着いたのは入り組んだ繁華街の裏道。
行き止まりだった。この先を進もうにも、自分の倍程の塀を乗り越えていかなければならない。
幸いにも、周は運動神経が良い。足をかける場所があれば最も簡単に登れただろうが、今回の塀はそれがない。
周(詰んだ……)
周「______いやいやいやそんな訳…なぁ??
誰かおるやろ、道を戻れば繁華街に戻れるんやんかぁ________」
ひゅう……と冷たい風が首に巻いているマフラーを解いた。
ここは《《入り組んだ》》繁華街の裏道。
来た道を戻ろうにも、どこだったか覚えていなかった。
周(……………うち、ここでジ・エンドなんかな。もっと色んなことやっとけばよかった。例えば___学校サボるとか。子供だけで肝試しとか。
運命ってザンコク。)
りんっ……
聞きなれない音が耳を掠った。上を見上げた先にいたのは。
銀色の鈴を首から下げた
白猫。
---
一時間後…
カラ・周「__________え」
「えぇえええええええぇぇえ!!!???」
続く
今回はカラと周を主役として出しました。
そしてまだ出てきていないのが、少年時代のLOUIS。
彼はいつ現れるのか…
暁前の微光【5話】乞うご期待!!
暁前の微光【5話】
嘘のような実話。
実話のような嘘。
この話は嘘か、本当か。
カラ、LOUIS、寺、周…4人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇。
強くなれ。
強い者だけに、道は開かれる__________
一時間後…
カラ・周「__________え」
「えぇえええええええぇぇえ!!!???」
夕暮れ時。時刻は4時過ぎほどだろうか。
南の路地から来たカラと北の繁華街裏道から抜けてきた周は、お互い猫を追いかけると共に、見事一番最初____てんてんと家が建つ田舎町に戻ってきていたのだった。
カラ「な…なんでここにおんねん」
周「こっちのセリフや!」
そしてあろうことか、暁小学校の校庭の前で鉢合わせた。
カラ「俺は…黒猫がおったから、それを追ってここまできてん。そしたら周がおったんやんかぁ…」
周「__黒猫てw今時そんな見いひんやろ、マボロシちゃう?魔女宅のジジか」
周がカラをおちょくるように言う。
カラ「はぁ!?なに言うとんねん、せやったら周はなんでここにおんの。」
周「そら、白猫追ってきてん。この時代に白猫やで?珍しいやろ」
カラ(ようそんなんで俺の事バカにできたな…)
ふふん、と鼻を鳴らすかのように胸をのけ反らせ周が答える。
それを他所に、カラは周の理由に飽きれの色を見せていた。
すると____
寺「はぁっ、…はぁっ…あーーーっもう、二人ともどこいってん…」
という息の切れる呼吸音が聞こえてくる。
カラ「寺ちゃう?」
周「せやな。けどこっち気づいてへんと思うわ」
寺「あぁ…ほんっまっもう、何回、はぁっ…迷子になったら…気がすむねんッ」
カラ「てーーーーーらーーーーー!!!!」
周「こっちやでーーーーー!!!!」
そう二人は声をかける。と同時にこちらを振り向き3秒ほど停止する寺。
大丈夫やろか?息しとるかな?二人は話し始める。
寺「_____________おった……」
疲れと安堵の余りその場に座り込む寺。
カラ「すまんすまん」
寺「絶対思ってへんやろ…」
周「バレた?」
寺「あほかっ!二人とも…ほんまに、、あほや…」
二人「……心配した?」
寺「はぁ〜当たり前やろ…」
二人「ふふ」
3人がこう会話するのは2時間ぶりほどなのに、何故か一周間ぶりのような、懐かしい気がした。
寺「___さ、帰ろか。」
周「おん!」
カラ「折角やし、俺んちまで来て《《〇〇》》に会ってったら?」
寺「ええの?」
カラ「ええよ!」
周「ほんならはよいこ!!!」
3人の子供たちの健気な声がこの街に戻ってきた。
カラの家へ帰る途中、魚屋さんからアジをもらった。しかし、その後はしゃいだ周が水路に落ち、アジは逃走。というエピソードがあったのはまた別の話。
---
カラの家
カラ「ただいま〜!!」
カラがそう元気に帰宅すると、ぱたぱたと人が小走りで向かってくる音が聞こえてきた。
キィ…と扉が音をたて、その人物が顔を覗かせる。
母「おかえり。今日は遅かったやない、どないしたん?あら?寺ちゃん達もおるん。」二人「こんにちは!」
母「おん、こんにちは。ちょっと上がって待っといてや。お茶入れてくるわ。あ、お菓子はなんでもええ?今、ちょっと不足してんねん。」
カラ「お母ちゃん、そないいっぺんに喋られてもわからへんわ…」
カラの母は昔からよく喋る人だ。その点、カラとは似ている。
母「すまんすまん、ささ、外寒いやろ。上がって。」
二人「お邪魔しま〜す」
母がお茶お茶…、と呟きながら台所の方へ向かう。
カラ達はそれを横目で見ながら上の階へとあがっていく。
ふと、カラがなにを思い立ったのか。母へと声をかけた。
カラ「お母ちゃん〜?《《〇〇》》まだ寝とる?」
母「あぁ……《《LOUIS》》?もう起きとるんとちゃうかな。様子見たって〜」
カラ「はぁーい」
やっとLOUISがでてきましたね。
彼は少年時代どのような子だったのか。また、少年少女達が繰り広げる家出劇はいつ始まるのか。
まだまだ謎ばかりです。
第6話、乞うご期待!
暁前の微光【6話】
嘘のような実話。
実話のような嘘。
この話は嘘か、本当か。
カラ、LOUIS、寺、周…4人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇。
強くなれ。
強い者だけに、道は開かれる__________
母がお茶お茶…、と呟きながら台所の方へ向かう。
カラ達はそれを横目で見ながら上の階へとあがっていく。
ふと、カラがなにを思い立ったのか。母へと声をかけた。
カラ「お母ちゃん〜?〇〇まだ寝とる?」
母「あぁ……LOUIS?もう起きとるんとちゃうかな。様子見たって〜」
カラ「はぁーい」
毎日昇り降りしているこの階段。どこか薄暗くて。
そして、この扉の先。僕のがいるであろうこの部屋の入り口は人気の無いように静かだった。
今日も、ぎぃっ…と軋んだ扉を開け__
カラ「LOUIS、入んで」
名前を呼ぶ。
今まで寝ていたのか、起きていたのかは知らない。彼は暇があればだいたい寝ている。
LOUIS「ぁ…え?ちょっと待って。ほんま汚い」
カラ「大丈夫やって、いつも汚いで。もう慣れたわ」
LOUIS「カラの部屋の方が汚いて。…………うん、入って」
5分程度待ってから彼が出てきた。一番最初に目に入ったのは寝癖。
カラ「寝てたな。」
LOUIS「寝てへんわ」
カラ「嘘つけ」
寺「wwこの部屋入るんも、久しぶりやなぁ」
周「やっほーう」
LOUIS「二人もおったん。すまん、部屋汚いんけど」
カラ「ダイジョーブ!なにする?」
周「LOUISの部屋で遊ぶゼンテーなんかい」
この4人が揃うのは2週間ぶり。
寺「ほんで?なにする?」
3人「うーーーん………」
3分ほどの沈黙を経て、一番最初に口を開けたのは。
LOUIS「外に行きたい」
彼だった。
途端、“は……?”
とカラの口から低い声が漏れる。カラは普通の男子よりも声が高い。
そんな彼の口からは誰もきかないはずであろう、低い、小さな戸惑いの声が乾いた部屋に溢れた。
LOUIS「あ…いや、違くて」
まだ続く言葉を遮って、トーンを落としたままカラが言った。
カラ「お前…自分がどんな状況なんか、分かって、言ってんの」
LOUIS「……」
カラ「なんか、返事…せえや。お前、つい2週間前に倒れて、そんで……」
寺「カラ」
カラ「そんで……、病院いって、病気やったんちゃうの」
止みかけていた雪が、また降り出した。
部屋は冷えてとても寒い。さっきまで明るいはずだった空間は、重く変わっていた。
再びカラが開こうとした口を、周と寺が止める。
他人の自分達が出るべきではないと、幼ながらにも二人の少女は分かっていた。
小学生___それも低学年とは思えない、重すぎる兄弟の会話を、静かに聞いているしかなかった。
LOUIS「…、すまん」
LOUISは、二週間前に学校で気を失って病院に運ばれた。
丁度昼休みが終わりそうな頃。校庭で突如、倒れたのだった。
病気。『意識障害』というものだった。
意識障害_____意識が清明ではない状態のことを示し、覚醒度あるいは自分自身と周りの認識のいずれかが障害されていることを指す。
病院に運ばれたLOUISは、丸半日、昏睡状態に陥り、目を覚ましたのは次の日の早朝だった。
そんなことがあってから、外で倒れられたら困るから。と医師に外出を制限されていたのだ。
LOUIS「……俺は。___俺は部屋に篭るため生まれてきたんじゃない。外に出たい。木を見たいし、猫と遊びたい。商店街にも行きたいし、学校にも行きたい。」
カラ「っ…」
彼が外に出たがっているのは、カラが一番よくわかっていた。
同じ部屋で、同じ家で、毎日を過ごす兄弟としては当然のことだろう。
カラもLOUISと外に出て遊びたかった、しかし、それを止めるのが弟としての役割だから。
LOUIS「なぁ、お願い。」
--- 「いいよ」 ---
続く
次回、いよいよ家出編へ突入。
暁前の微光【7話】乞うご期待。
暁前の微光【7話】
嘘のような実話。
実話のような嘘。
この話は嘘か、本当か。
カラ、LOUIS、寺、周…4人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇。
底に埋もれた弱者達よ。
強くなれ。
強い者だけに、道は開かれる__________
彼が外に出たがっているのは、カラが一番よくわかっていた。
同じ部屋で、同じ家で、毎日を過ごす兄弟としては当然のことだろう。
カラもLOUISと外に出て遊びたかった、しかし、それを止めるのが弟としての役割だから。
LOUIS「なぁ、お願い。」
--- 「いいよ」 ---
寺・周「…えっ」
LOUIS「えっ?」
3人「______え?」
カラ「なんやねん…」
LOUIS「えっ、ええの??」
カラ「もう…いいよ、だってあんなに行きたいアピールされたらさぁ」
期待していた。それでも許されないであろうと、そう思っていた言葉がカラの口から聞こえたことに驚きを隠せない三人がいた。
寺、周、そしてLOUIS。そのうちに三人の顔が喜びに満ち溢れていくのが分かった。
LOUIS「よっしゃああああああ!」
寺「出れるんや!LOUIS!外!!」
周「な!いつから行く?」
カラ「明日やな!そんで________家出ってことにしよ」
LOUIS「……家出?」
カラ「LOUISを外に連れ出すことをお母ちゃんに言うても、多分、と言うか絶対。許してくれへんから。それに、なんか家出の方がスリルあってイイやん!」
LOUIS「あほか」
カラ「やかましいわw」
寺「ほんまあほやw」
周「ww___あ、なぁ。うちらもついていってええ?」
空気の入れ替えのため、5センチほど開けていた窓から雪が入り込んで溶けた。
明日からは1週間の大型連休だ。丁度いいから、とカラは二人の頼みを承諾。
LOUISも二人がいた方が心強い、と言うことだった。
それから30分程度、他愛もない会話を終えた後。少女達は
「また明日」
と言って帰路についていった。
明日の朝、7時半にもう一度この家に集まることにした。
各自、家出の用意を済ませる。お金は必須。それから食料。
防寒着もしっかり着て、朝ごはんを食べてくるようにと。
---
夜ご飯を終えて二人の兄弟は部屋へ続く階段を登っていた。
その階段はほのかに明るい。下の部屋の電気も、上の部屋の電気も届かないが、天井についている淡い光を出す蛍光灯が階段を照らしていたのだった。
部屋に入り、2段に分かれたベッドに潜り込む。
下段はカラ。上段はLOUIS。昔からこの配置だ。
しんしんと降る雪が部屋を冷気で包ませ、布団と毛布をかけていても少し、肌寒かった。
ピ、という音が聞こえ機械音が静かに響く。
LOUIS「____寒いな」
カラ「ん」
LOUIS「なぁ……なんで、」
なんでわざと『家出』ってことにしたん。
そう言いかけて、止める。
LOUIS「やっぱり、なんでもない」
カラ「…ん」
ベッドの板の隙間から下を覗くと、弟はもう目を閉じかけていた。
あと5分もあれば寝てしまうだろう。
カラ「なぁ」
先ほどまで虚な返事ばかりしていた彼が話しかけてきたことに驚く。
LOUIS「………ん?」
カラ「下降りて一緒に、寝るか?」
LOUIS「_____あほ」
ふふ、と微かに笑って言葉を返す。
その言葉を聞いていたのか、聞いていなかったのかは知らない。
少し経つと下から呼吸音が聞こえてきた。
それを聞いているうちに、兄も深い眠りに落ちていった。
続く
暁前の微光【8話】乞うご期待。
暁前の微光【8話】
嘘のような実話。
実話のような嘘。
この話は嘘か、本当か。
カラ、LOUIS、寺、周…4人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇。
底に埋もれた弱者達よ。
強くなれ。
強い者だけに、道は開かれる__________
カラ「下降りて一緒に、寝るか?」
LOUIS「_____あほ」
ふふ、と微かに笑って言葉を返す。
その言葉を聞いていたのか、聞いていなかったのかは知らない。
少し経つと下から呼吸音が聞こえてきた。
それを聞いているうちに、兄も深い眠りに落ちていった。
---
窓から朝日が差し込む。
ピピピピ……という機械音と共に重たい瞼を開ける。
LOUIS「ん………カラぁ…朝だよ…」
カラ「………………んぁ、?」
LOUIS「ふぁ、?」
朝が弱い二人には、この時間は地獄。
いつもは母が起こしに来るが、今日は仕事なのだろうか。二人以外に誰かいる気配はなかった。
部屋から出て階段へ続く廊下の電気をつける。
少し肌寒い。
下へ降りて洗面所へ向かう。顔を洗って食卓へ。
いつものルーティーン。何も変わらない。
LOUIS「……何時からやったっけ」
カラ「7時半」
LOUISの問いかけに短く返す。朝食が置かれている食卓には紙が置かれていた。
二人「なんやこれ」
不思議に思い、少し乱雑に封を開ける。
中から出てきたのは綺麗な飾り付けがしてあるレターだった。
--- お母さんは先に行くな。外出る時は気いつけるんやで。 ---
それだけ書かれていた。
LOUIS「………食べよか」
カラ「おん」
LOUISが時計をちら、っと見、絶句する。
時計の針が指しているのは7時15分。
カラ「何時からやったっけ」
LOUIS「七時、半」
____________終わった。
食パンを口に放り込み急いで支度をする。
こんな日にまさか遅れるなんてあり得ない。幸いにも集合場所は家だが、こんな大切な日に遅れるなんてどんな漫画でも聞いたことがない。
笑い事じゃない。
カラ「っなぁ!!何がいるん!?」
LOUIS「金と食料!!!」
カラ「ええっ、それだけでええの!?食料って何!?バナナ!?」
LOUIS「あほ!腐ったらどないすんねん!なんか…お菓子やお菓子!飴!」
カラ「オッケーー、ちょっと待ってや…この上に__」
冷蔵庫の上にある飴の袋を取ろうとするために乗っていた椅子が傾き________そして倒れる。
大きな音がしてその場に投げ出されるカラ。
LOUIS「っ……はぁ、ちょ…な、なにしとんねんっ!!w」
カラ「いぃったぁああ!!!こんの___あほいす!」
ガヤガヤ騒いでいる間にインターホンが鳴る。
嗚呼……終わった。来てしまった。
恐る恐る扉を開ける。
LOUIS「は……はぁい?」
寺「おはよう。準備できとるん?」
カラ「えっ?あ、はは、うん、ばっちり……」
周「嘘つけw」
カラ「すまん、LOUISが二度寝しよって…」
LOUIS「お前ほんましばくで」
カラ「ゴメンナサイ」
はよ準備してき、という寺の一声でバタバタと再び準備に取り掛かる。
___十分後。
寺「オッケー、準備完璧やな?扉の鍵しめた?」
二人「ばっちり」
周「うん、ほんなら先どこ行く?」
「うーーーん………」
--- 駅!!! ---
続く
暁前の微光【9話】
嘘のような実話。
実話のような嘘。
この話は嘘か、本当か。
カラ、LOUIS、寺、周…4人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇。
底に埋もれた弱者達よ。
強くなれ。
強い者だけに、道は開かれる__________
寺「オッケー、準備完璧やな?扉の鍵しめた?」
二人「ばっちり」
周「うん、ほんなら先どこ行く?」
「うーーーん………」
駅!!!
---
「ほぉぁ〜〜……」
駅に行く道すがら。
目の前に広がる懐かしい光景に言葉を紡がないまま口を開ける。
木々は葉を落としていたが、それでも銀杏並木は見事なものだった。
紅葉の時期は少し前だ。
丁度、見盛りの時期にLOUISが倒れたから、彼は今年の紅葉を見ていないんだな。
幼ながらにハンデを喰らった彼に、心底、同情する。
そして、彼に同情している自分に、心底、呆れた。
カラ「幸せかどうかなんて、本人じゃないとわからんのにな…」
そう、小さく呟いた。
木々を見上げている彼の姿を見るとどうしても、虚しさを感じてしまうのだ。
「行こう」
寺がそう声をかけて、全員_____LOUIS以外が振り返る。
数秒ほど、紅葉を目に焼き付けるようにしてから名残惜しそうに、けれども何かを決意したかのように、こちらを振り返った。
「うん」
短く返事を返す。
---
前に見えてきたのは箕谷駅。
「ミノタニエキ」と言うのだと最近母から教わった。
この駅は、僕らの町からは最寄りの駅だ。
高台にある、少し古びて小さな駅舎は入口にある郵便ポストと共に味わいがあり、映画に出てきそうな田舎を感じさせる。
周辺は僕らが住む町で囲われていて、バスの方が交通の便が良い事もあり寂しい感じもするところだ。
ここから至近距離で見る電車、聞こえてくる音が好きだ。
LOUIS「なぁ、何をシンケンな顔しとん」
カラ「え」
周「ほんまやでカラ!!般若みたいな顔や…w」
カラ「はぁ!?」
寺「よう般若なんてワードしっとったな…w」
周「あほぉ!うちかてそんくらいわかるわ!!」
LOUIS「20点台常習犯が何言うとるん」
周「うわっ、…なんやお前ら寄ってたかって…いじめやで!?」
カラ「むっちゃ大事にするやんww」
周「うったえたるぅ!」
ぐぎゅぅるるるぅうう…………
全員「え」
大きな腹の音が周辺に響き渡った。
全員が唖然と周りを見渡す。
全員「誰や!!」
またもハモる。
LOUIS「俺ちゃうで」
寺「私も。」
周「うちもちゃう〜」
カラ「僕も_____」
言いかけて、ハッと目を見開く。
ここで「僕もちゃう」
そう言ってしまったらこの事件はメイキュウ入りだ…未解決ジケンになってしまう。
なんとしても避けなければ…
我ながら変な使命感だ。
カラ「す、すまん!僕や!」
意を決してそう告げる。
すると
LOUIS「やっぱり?」
カラ「ふぁ??」
周「そうだとおもってん。」
寺「な」
カラ「し……しつれいな!!」
________________解せぬ。
「おーーい、君達、こんなところに四人だけかい?」
変なおっさんが急に話しかけてきた。
まさか…ユウカイ犯?
カラ「い、いや僕ら…食べても美味しないから……ほ、ほら、こんな……あはは」
「え?おじさん変な人じゃないよ??ほら、こっちにおいで。」
どうみてもやばい奴やん。
続く。
暁前の微光【10話】
嘘のような実話。
実話のような嘘。
この話は嘘か、本当か。
カラ、LOUIS、寺、周…4人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇。
底に埋もれた弱者達よ。
強くなれ。
強い者だけに、道は開かれる__________
「おーーい、君達、こんなところに四人だけかい?」
変なおっさんが急に話しかけてきた。
まさか…ユウカイ犯?
カラ「い、いや僕ら…食べても美味しないから……ほ、ほら、こんな……あはは」
「え?おじさん変な人じゃないよ??ほら、こっちにおいで。」
どうみてもやばい奴やん。
カラ「ちょ、…と、取って食うならLOUISにしてぇえええ!!!」
LOUIS「はい??」
カラ「死にたくない…ヤダァアアアアァア」
「ちょ、おっちゃん本当に変な人ちゃうよ?ここの駅長やねん。」
カラ「誰か助けてェエエエエエエエエエエエエエエエエイィイイイヤァアアアアア
______…え?」
寺「www」
周「ヤバすぎやろwwどっからどうみてもエキチョウさんやんな。」
よく見るとちゃんと駅員の制服を着ている。
ということは完全にカラの勘違いだったのだ。
焦って見間違えたとはいえ、我ながら呆れるほどの間違いっぷりだった。
いやでも、いやいくら田舎とはいえ、知らないおっちゃんに急に話しかけられたら。
みんな警戒するでしょ??うん。
駅長「君達四人だけやろ?こんなとこで何しとん。」
寺「あぁ…えっと、」
LOUIS「家出です。」
周「言っちゃうんだw」
LOUISが家出と言うなり、駅長は顔色と表情を一変させた。
和やかな雰囲気だったのが、睨め付けてくるような眼光になり、その眼は、少年達に焦りと不安を感じさせるものだった。
駅長「家出なん?あかんやん、今すぐ帰り。」
そう言ってくるだろうと、四人が思っていた。
普段ならば、この辺でおとなしく帰路についていただろう。
現に、まだ親離れも済まないほどの僕らには、もうすでに「寂しい」という感情が芽生え始めていた。
しかし今回の家ではここでは終わらせられない。
カラ「かえらん!!」
駅長「…それは、なんでなん?」
先ほどの空気が少し崩れる。
冬の冷たい空気が衣服の隙間から肌に触れる。
LOUIS「どうしても、観たい場所があるんです。」
寺「今日やないと、多分来年まで待たんとあかんから。」
周「おっちゃん、お願い。見逃してくれん?」
カラ「おねがいします!」
少年達の必死な声を聞いたからか、少しずつ躊躇いの色が浮かんでくる。
わずか7、8歳の子供達が一人の願いの為にこのような行動を起こすとは。
街の安全を支える者の一環として、本来であればここで見逃してはならない。
しかし、この威勢を目の前に、受け入れずにはいられなかった。
駅長「暗うなったら、ちゃんと、家に帰るやで。」
その言葉を聞いた途端、四人の表情がパッと輝いた。
ありがとう、ありがとう、と通る声で、手を大きく振りながら
四人の少年達は駅の階段を滑るように降っていった。
雲の隙間から、陽光が差していた。
続く。
暁前の微光【11話】
嘘のような実話。
実話のような嘘。
この話は嘘か、本当か。
カラ、LOUIS、寺、周…4人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇。
底に埋もれた弱者達よ。
強くなれ。
強い者だけに、道は開かれる__________
駅長「暗うなったら、ちゃんと、家に帰るやで。」
その言葉を聞いた途端、四人の表情がパッと輝いた。
ありがとう、ありがとう、と通る声で、手を大きく振りながら
四人の少年達は駅の階段を滑るように降っていった。
雲の隙間から、陽光が差していた。
---
周「____って、ほんまに今年もやっとるんかなぁ」
寺「うーん、去年はやってたけど…」
カラ「観たい場所…ここから結構距離あるよっ?」
LOUIS「うん。」
はぁ…とため息をつくLOUIS。
今年もあの景色を見ることはできるのか。
子供四人で行くことができる距離なのか。
どうしようもない不安と焦りがLOUISの心を覆っていたのはうちでもわかった。
うちもまぁ観たいけど、来年も観に来れるわけで。
周「…っしゃ、ほんなら早よ行こ!!!!」
うちがそう大きい声を出すと、3人の視線がこっちを向いた。
全員顔がいい()
周「間に合うかな!?いや、ぜったい間に合わせよな!!」
急に張り切り出したのはまぁ…気の所為!!
LOUISは来年来れるかわかんないもんね。
カラ「うん、早よ行こ!!」
寺「え」
LOUIS「ちょっと待て、走るのは______」
カラ「あっちの木まで競争な!!」
LOUIS「カラさん?」
競争…絶対まけん。どこから湧いてくるのかわからないこのやる気。
カラには負けられない。
周「よっし、…ええで!」
寺「ちょ、」
カラ「よぉおおおおい」
--- どん!! ---
全速力で50M程先の木までかけていく二人。
それを唖然と見つめる二人。
うちらが走り出した先にあったのは_________凍った地面。
これはやばいやつ。絶対滑る。
横をチラリと見るが、案の定カラは気付いてない。
頭では止まらないとと思うのに、足が止まらない。
嗚呼終わった。
瞬間、音にならない音がして二人が空中に投げ出される。
カラ「っ……たぁ、」
周「はぁ、…」
カラは腰を弱打、うちは幸い膝を擦りむくだけで済んだ。
LOUISと寺が駆け寄ってくる。
イケメンと美女……()
LOUIS「あほなん」
第一声の圧が強いよイケメン。
寺「大丈夫?」
ごめん、好き。
寺に手を貸してもらって体制を整える。
雪が積もっている道路で走るのはやめよう。カラ半泣きやし。
LOUIS「頭打ってたら、危ないから、」
カラ「ごめんなさい」
寺「滑った時はびっくりしたよw」
周「気いつける!」
ちゃんとして、と喝をくらったうちとカラは、この道路で走ることは無くなった。
そろそろ着くかな。まだまだかな。
もしその光景が見れなかったら、LOUISはどう思うんだろうな。
来年も、四人で来れるかな。
淡い期待と確かな不安。
今年もやってますように、四人が同じ事を思っていた。
一人の仲間のために、これだけ勇気を出したうちたちには。
ちゃんとご褒美があるよね。
続く。
暁前の微光【12話】
嘘のような実話。
実話のような嘘。
この話は嘘か、本当か。
カラ、LOUIS、寺、周…4人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇。
底に埋もれた強者達。
逆境に仰がれし弱者達。
さらに強くなれ。
強い者だけに、道は開かれる__________
そろそろ着くかな。まだまだかな。
もしその光景が見れなかったら、LOUISはどう思うんだろうな。
来年も、四人で来れるかな。
淡い期待と確かな不安。
今年もやってますように、四人が同じ事を思っていた。
一人の仲間のために、これだけ勇気を出したうちたちには。
ちゃんとご褒美があるよね。
---
「見えない」
LOUISがぽつりと、そう呟いた。
見えない、と。
LOUIS「前が、見えない」
LOUISの身体の中で何がどうなっているのか私には全くわからなかった。
見えない、見えないとただつぶやくLOUISに何をしたらいいのか。
意識障害が再発したのか。
ただたんに寒さで目が霞んでいるだけなのか。
私と周が呆然としていると、カラが言った。
カラ「LOUIS、前が見えないだけ?他になんか変なとこある?」
ないよ、とLOUISが落ち着いた声で答える。
大丈夫かな、と周が隣で呟いた。
カラ「じゃあ、どんな感じで見えないの?まっくら?」
LOUIS「ちかちか、するだけ。ぼんやり」
カラ「じゃ、ちょっと休も」
「あそこの公園まで、いける?」
カラの言葉を一通り聞き終え、少し考えるような仕草をした後
いける。と返事をする彼。
こういう時に、日頃から彼をみているカラは頼りになる。
いつもとは打って変わった冷静かつ素早い対応をする。
カラ「よっしゃ、いこ!!」
周「……おー!!w」
カラと周でLOUISを挟んで、カラの横に私がつく。
全員で手を繋いで少し先の公園で休むことにした。
あの場所まで残り1.5キロほど。
---
積もる雪を払って、公園の階段に腰掛ける。
周「う‘‘〜っ……さむぅう…」
寺「ね、私でもけっこう寒い…w」
「________おわ、っ」
急に首があったかくなったと思えば、周がマフラーをかけてくれていた。
ぬくぬくしていて、少しだけ、あったかい。
周「あったかい?」
寺「ん、あったかい。」
ありがとね、と言うと別に!と返ってきた。
素直じゃないなぁw
カラ「周ーー!!寺っちゃーーん!!飴ちゃんあんで!!」
周「えっ!!食べる!!!!」
寺「やったぁ」
カラの呼びかけに対して階段を滑り降りるかのように走っていく周。
また滑っちゃうよ_______あ、滑った。
周が落とした茜色マフラーを拾い上げ、かじかむ手をさする。
寒いなぁ。
LOUISは滑り台の下でカラのマフラーと耳当てをして暖をとっていた。
さっきはどうなることかと思ったけど、大丈夫そうかな。
カラと周は飴を手にたくさん持って、美味しそうに舐めていた。
寺「カラ、私も飴もらってええ?」
カラ「ん!ええよ!」
「いちごとぉ、めろんと、ミルクと〜、レモンもある。あ、あとぶどうも。」
寺「ミルクがいいな。」
カラ「おっけぇ!ちょっとまってや……んーと、みるく、みるく…」
はい!とカラがミルク味の飴を二つ渡してくれる。
甘い。
少しだけの休憩。
はやく行きたい。それでいて、少しだけ怖い気持ちと不安があったのは多分、
嘘じゃない。
続く。
暁前の微光【13話】
嘘のような実話。
実話のような嘘。
この話は嘘か、本当か。
カラ、LOUIS、寺、周…4人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇。
底に埋もれた強者達。
逆境に仰がれし弱者達。
さらに強くなれ。
強い者だけに、道は開かれる__________
はい!とカラがミルク味の飴を二つ渡してくれる。
甘い。
少しだけの休憩。
はやく行きたい。それでいて、少しだけ怖い気持ちと不安があったのは多分、
嘘じゃない。
---
カラ「だぁ〜かぁ〜ら!!うそちゃうもん!!」
周「wwww」
寺「えぇ…でも__なぁ?w」
僕が回復してさっきと同じ道沿いをただ歩く。
今の現状を説明しよう。
まず、カラがこの前びっくりした話をみんなに聞かせてる。
その内容が……
カラ「やから!こんっっっなにでかいネコがおったんやって!」
まぁ、説明すると、カラの背丈を超える猫がいたらしい(脳死)
さすがにデカすぎやろ。
カラ「もーー、なんかい言うたらわかってくれるん?」
周「何回言われてもわからへんわ。」
寺「ほんまになw」
カラ「もっかい説明したる!」
「こないだ、起きて窓の外見たらこんっっっなにでかい黒猫が_____」
寺「あ、見て。あそこに小さい鳥がおるで。かわええな」
周「あっ、ほんまやぁ〜」
カラ「_______聞けや!!!ww」
カラ「LOUISぅう〜二人がいじめr」
LOUIS「僕に共感求めないで」
カラ「ゑ」
LOUIS「え?」
二人「……………えっ?」
お願いだからハモるのやめて?
まぁ、うん。でかい黒猫がおったらしい。
一人で喋り続けるカラに、それをほって小鳥がかわええとか話しだす女子組。
これを世の中はカオスと呼んだ(脳死)
LOUIS「あ、白猫。」
雪が積もった屋根の上に白猫が座ってこちらを見ていた。
3人が振り返る。
寺「どしたん〜」
LOUIS「見て、白猫。」
周「ほんまや!」
カラ「むっちゃかわええ」
白猫と目が合う。
りんっ……と澄んだ音を鳴らして、屋根を跨いで《《それ》》は姿を消した。
カラ「っあ!!!」
急にカラが大きな声を上げた。
カラ「_____みて」
指をさす方向にあったのは紛れもない、あの場所だ。
懐かしい。
去年、周と寺と、カラと四人。その家族と訪れた。
この日だけにやっている、一年に一度しか見れない光景。
赤と緑で彩られたフェンス。クリスマス仕様。
入口の小さな門のようなところには、招き猫が飾られている。
白猫をベースにして、朱色で沢山の装飾がされている招き猫。
その首元には銀色の鈴の首飾りが光っている。
この門を開けたらその先には僕が望む景色が待っている。
今年も観に来れますように、とずっと願っていた景色。
青空に映える大きな花。
赤や青、黄色に光る花。
来たよ。
もしも神様がいるのなら
これだけ勇気を出してここまで来た僕たちに
最高の贈り物を。
続く
暁前の微光【14話】
嘘のような実話。
実話のような嘘。
この話は嘘か、本当か。
カラ、LOUIS、寺、周…4人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇。
底に埋もれた強者達。
逆境に仰がれし弱者達。
さらに強くなれ。
強い者だけに、道は開かれる__________
カラ「_____みて」
指をさす方向にあったのは紛れもない、あの場所だ。
懐かしい。
去年、周と寺と、カラと四人。その家族と訪れた。
この日だけにやっている、一年に一度しか見れない光景。
赤と緑で彩られたフェンス。クリスマス仕様。
入口の小さな門のようなところには、招き猫が飾られている。
白猫をベースにして、朱色で沢山の装飾がされている招き猫。
その首元には銀色の鈴の首飾りが光っている。
この門を開けたらその先には僕が望む景色が待っている。
今年も観に来れますように、とずっと願っていた景色。
青空に映える大きな花。
赤や青、黄色に光る花。
来たよ。
もしも神様がいるのなら
これだけ勇気を出してここまで来た僕たちに
最高の贈り物を。
---
心臓がばくばく鳴っている。
脈が早い、緊張しているのだろうか。
胸の辺りをぎゅっと掴み心臓の音を抑える。
抑えたばかりの心臓音が再びばくばくと体内に響く。
LOUIS「いこう」
僕の言葉で全員が喉を鳴らし頷いた。
深呼吸をする。
目を閉じて、落ち着け、落ち着けと自身に言いかける。
目を開ける。
さらにはやくなる脈と心臓音に迫られるかのように門のドアノブに手をかける。
ギィ…、…と軋む門を開ける。
そこには家族連れの人や、友達と訪れたと思われる人々で賑わっていた。
カラ「人多いねぇ」
寺「ね。」
周「去年も多かったけど…」
LOUIS「そろそろかな」
____瞬間
ひゅうぅうう〜と《《望んでいたもの》》が打ち上げられる音が聞こえてきた。
その場にいた全員が一斉に空を見上げる。
ぱぁんっ……と乾いた音が空に響き渡る。
刹那、僕らの目にとびこんできたのは紛れもないその光景だった。
ついたよ。
今年は見れないのかもしれないと、何度諦めただろうか。
絶対に叶わない願いだと知っていた。
沢山の人に拒絶され否定された。
『無理』だと。
僕のことを思って止めてくれたカラ。
その想いを振り払ってまでみたかったんだよね。
あー…泣きそ
カラ「ん…えっ!?LOUIS、?」
周「どうしたの、」
寺「どこか痛い…?」
LOUIS「え?」
カラ「___泣いてるよっ、?」
なにがあっても僕の味方でいてくれて。
我儘な願いを叶えてくれた三人。
本当、感謝してもしきれないなぁ……w
LOUIS「ん…、」
溢れ出す涙を袖で拭う。
一瞬驚いたような顔をした三人だが、すぐに目線を上へ戻した。
寺「綺麗」
周「ね。」
カラ「来れてよかったね」
LOUIS「ん」
本当におかげさまで。
泣くのなんて想定してなかったなぁ…
まぁ
それも全部
--- 『_______』 ---
ただそれだけ。
続く。
暁前の微光【最終話】
嘘のような実話。
実話のような嘘。
この話は嘘か、本当か。
カラ、LOUIS、寺、周…4人の少年少女達が織り成す怒涛の家出劇。
強くなったね。と
貴方に認められるその時まで。
微光はやまない。
カラ「僕らもした事あったよね、家出。四人で」
LOUIS「___うん、ごめん嘘ついた。」
カラ「うん。」
周「私も…実は覚えてる。」
寺「私も。もう、__5年も経つのに…」
「___忘れない。多分、というより絶対。僕らはあの日を忘れられない。」
---
LOUIS「外に行きたい」
カラ「お前…自分がどんな状況なんか、分かって、言ってんの」
LOUIS「……」
カラ「なんか、返事…せえや。お前、つい2週間前に倒れて、そんで……」
寺「カラ」
カラ「そんで……、病院いって、病気やったんちゃうの」
LOUIS「……俺は。___俺は部屋に篭るため生まれてきたんじゃない。外に出たい。木を見たいし、猫と遊びたい。商店街にも行きたいし、学校にも行きたい。」
LOUIS「なぁ、お願い。」
カラ「いいよ」
カラ「LOUISを外に連れ出すことをお母ちゃんに言うても、多分、と言うか絶対。許してくれへんから。それに、なんか家出の方がスリルあってイイやん!」
---
寺「オッケー、準備完璧やな?扉の鍵しめた?」
二人「ばっちり」
周「うん、ほんなら先どこ行く?」
「うーーーん………」
駅!!!
---
カラ「ちょ、…と、取って食うならLOUISにしてぇえええ!!!」
LOUIS「はい??」
カラ「死にたくない…ヤダァアアアアァア」
「ちょ、おっちゃん本当に変な人ちゃうよ?ここの駅長やねん。」
カラ「誰か助けてェエエエエエエエエエエエエエエエエイィイイイヤァアアアアア
______…え?」
---
LOUIS「どうしても、観たい場所があるんです。」
寺「今日やないと、多分来年まで待たんとあかんから。」
周「おっちゃん、お願い。見逃してくれん?」
カラ「おねがいします!」
---
LOUIS「頭打ってたら、危ないから、」
カラ「ごめんなさい」
寺「滑った時はびっくりしたよw」
周「気いつける!」
---
カラ「LOUIS、前が見えないだけ?他になんか変なとこある?」
ないよ、とLOUISが落ち着いた声で答える。
大丈夫かな、と周が隣で呟いた。
カラ「じゃあ、どんな感じで見えないの?まっくら?」
LOUIS「ちかちか、するだけ。ぼんやり」
カラ「じゃ、ちょっと休も」
「あそこの公園まで、いける?」
---
寺「カラ、私も飴もらってええ?」
カラ「ん!ええよ!」
---
「こないだ、起きて窓の外見たらこんっっっなにでかい黒猫が_____」
寺「あ、見て。あそこに小さい鳥がおるで。かわええな」
周「あっ、ほんまやぁ〜」
カラ「_______聞けや!!!ww」
カラ「LOUISぅう〜二人がいじめr」
LOUIS「僕に共感求めないで」
カラ「ゑ」
---
LOUIS「いこう」
---
カラ「ん…えっ!?LOUIS、?」
周「どうしたの、」
寺「どこか痛い…?」
LOUIS「え?」
カラ「___泣いてるよっ、?」
---
脳裏に焼きついたあの日が鮮明に思い出された。
LOUIS「家出したこと…あったね」
寺「いろんな事が起きたよねぇ」
周「うちめっちゃコケた記憶あるわww」
カラ「もぉ…なんで覚えてないなんて嘘ついたのさ!!」
LOUIS「まぁ…ね?」
言葉を濁すのは、僕が最後泣いたのを蒸し返して欲しく無かったから。
とでも言っておこうか。
カラ「ていうか…最後LOUIS、泣いてたよねっ?」
周「やっぱり?」
寺「まぁまぁ…w」
君達それ思い出さなくていいんだよ。
苦い思い出だなぁ…
本当におかげさまで。
泣くのなんて想定してなかったなぁ…
まぁ
それも全部。
なんで泣いてたの、とカラが聞いてくる。
本音を言うには、年頃の僕のプライドが邪魔するから誤魔化させてね。
ねぇ、もしも神様がいるのなら
三人にこれだけ伝えさせてください。
僕をあの場所まで連れて行ってくれて
今までもこれからも最高の贈り物を
「|目が痛かった《 あ り が と う。》」
ただ、それだけ。
--- 完 ---
これにて暁前の微光は完結となります。
短編小説として書かせていただきましたが、いかがだったでしょうか?
毎小説読んでくださった方々には、感謝の言葉しかありません。
ここまで、暁を支えてくださりありがとうございました。
至らぬ点はまだまだあると思いますが、これからも暁の執筆活動は続きます。
ご愛読のほど、よろしくお願いいたします。