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目次
とにかくなんかキラキラした話を書こう。
角川つばさ文庫を目指そう。会話文を増やそう。感情描写を多くしよう。
今日は中学生になって初めての1日授業の日。真新しい制服に包まれた私は、胸を高鳴らせながら校門をくぐった。入学式を終えたとはいえ、まだまだこの学校には慣れない。
きょろきょろしながら歩いていたら、誰かにぶつかってしまった。私は慌ててぶつかった相手の方を振り返った。艶やかな黒髪を低い位置でツインテールにしている女の子がいた。身長は私より低い。制服がぶかぶかなので、同じ中1なのかなと思う。
「すみません。」
私を見上げる女の子と目が合った時、女の子はぱっと花の咲いたような笑顔を浮かべた。右頬に小さなえくぼができていた。
「あなた、中1?」
「あ、うん、えっと、あなたも?」
「そうだよ。よかったら友達にならない?あなた、かわいいし。」
どきっとした。恋愛的な意味じゃなくて、かわいいと言われたことに対して、純粋に照れてしまったのだ。
「うん、全然、なろう、あの…。」
どぎまぎしているせいでうまく返事ができなかったけれど、女の子には伝わったようで、にっこり笑ってくれた。
「名前は?あ、あとクラスも教えて!」
女の子は歩きながら言った。綺麗な黒髪が揺れるのを眺めながら、口を開く。
「綾川、ほのか。クラスは、えっと、1年3組です。」
「あ、敬語やめようよ。同い年だし。ていうかクラス一緒!私は桜木香織。よろしくね。」
「うん、よろしく。香織、ちゃん。」
ずっと胸が高鳴っていた。初めての友達だった。
***
「香織、おはよー。」
教室に入ると、香織ちゃんの友達らしき女の子が駆け寄ってきた。私は戸惑った。なんとなく気まずい。
「おはよー、光希。」
「ん。それよりこの人だれ?」
光希と呼ばれた女の子は、私に視線をやって不思議そうな顔をした。名前ではなく『この人』と呼ばれたことに、少しだけ傷つく。初対面だから名前を知っていた方がおかしいけれど。
「友達のほのかちゃんだよぅ。」
「へー。友達?」
「うん、そう。ほのかちゃん、この子は私の友達の光希ね。幼稚園の頃から一緒だから、まあ幼馴染かな?」
光希さんは微妙な顔をしながら数秒間沈黙した。私も多分、彼女と同じ気持ちだ。彼女にとって私はあくまで友達の1人なんだな、という、嫉妬に似た、変な感情。かわいいとか褒められた後だと、さらに堪える。気がする。
とはいえ、香織ちゃんは相変わらずえくぼを作ってニコニコしているし、空気を険悪にさせるわけには行かない。
「光希、さん?よろしく。」
私はそう会釈をした。光希さんも、「よろしくね。」と返事をくれる。
この子のことは、あんまり好きになれなさそうだ。友達の友達は友達、なんて、綺麗事なのかもしれない。知らない感情が私の心を渦巻いていて、そんな自分には慣れていなくて。どうにも拭えない違和感というものが、私に張り付いている気がした。
***
お昼休み、私はお弁当を持って視線をさまよわせていた。香織ちゃんと食べたい。けど、香織ちゃんにとって私は一緒にお弁当を食べるほどの仲ではないかもしれない。それに多分、光希さんもいるだろうし。私がいたら、2人の邪魔になるかもしれない。そんなことを永遠と考えてしまって、自分の席から動くことができなかった。
そんなふうにしていると、
「ほのかちゃーん、ご飯食べよー。中庭で!」
教室のドアのそばに立った香織ちゃんが、自身のお弁当を掲げながら私を呼んだ。気分がぱっと明るくなる。
「う、うん。」
私はお弁当を抱えて香織ちゃんに駆け寄っていく。
「どこにいるのかと思ったよー。光希たちと中庭行ってたら、ほのかちゃんいないことに気づいて。」
屈託のない笑顔で香織ちゃんはそう言う。私も笑いながらごめんと返したけれど、内心では『光希たち』という言葉が気になって仕方がなかった。
光希さん以外にも、香織ちゃんには複数の友達がいるのだろうか。私が入ったら、浮いちゃうかな。邪魔者だとか思われないかな。いない方がいいんじゃないかな。私がいてもいなくても、あんまり関係ないだろうし。必要不可欠とかじゃないだろうし。事実、香織ちゃんたちは中庭に着くまで私がいないことに気づかなかったわけで。
そんなことをぐるぐると考えてしまう自分が嫌だ。こんなだから必要不可欠だと言われる存在になれないんだろう。わかってるけど、わかってるけど。
中庭のベンチには、光希さんの他に2人の女の子が座っていた。「葵とカレンだよ。あ、ちなみに2人は幼馴染ね。えーと、私と光希と仲良くなったのは、小5の時。」葵さんは短髪でボーイッシュ、いかにも快活そうだ。カレンさんはどことなく不思議な雰囲気を漂わせている。
あのメンツの中に私が入ってもいいのだろうか。緊張で胃がキリキリと痛み出した。
けれども実際に話してみると意外と優しくて、もちろんそれはまだ『他人』というレッテルが剥がれていないからだろうが、それでも攻撃的にされるよりはずっとマシだった。
***
それから2週間ほどがたった。学校にも人間関係にも少しずつ慣れてきた。もちろんまだまだ緊張はするけど。光希さんたちと距離を縮められているわけではないし。
休み時間、私、香織ちゃん、光希さんの3人は、香織ちゃんの机の周りでおしゃべりをしていた。
「香織ちゃんはたくさん友達がいるんだね。」
私がつぶやくように言った言葉に、香織ちゃんはえくぼを作った。香織ちゃんの笑顔は可愛い。胸にちくっと、小さな針が刺さったような痛みを感じた。この笑顔を向けているのは、私だけではない。光希さんにも、葵さんにも、カレンさんにも、他の子達にも。こんな子がいたら、みんな好きになっちゃうだろう。惹かれてしまうだろう。
「ほのかちゃん。」
光希さんに名前を呼ばれた。驚いた。私と光希さんが関わることは、あんまりないだろうなと思っていたから。
「どうか、した?」
光希さんの吸い込まれそうな瞳を見つめて聞いた。この瞳が、私はなんだか怖い。光希さんが基本的に無表情だから、というのもあるのかもしれない。
「ほのかちゃんは、香織のこと、好きなんだね。」
えーっ。私の声と香織ちゃんの声が重なった。
「そ、え、そう、そうかなぁ、え、そうかな……。」
汗がだばだば湧いてくる。へへへへ、と変な笑い声を漏らしながら視線を上から下へ、右から左へと動かし続ける。香織ちゃんの顔も光希さんの顔も見れないし、私の顔を見られたくもなかった。顔に熱が集中しているのがわかるから。
「うん、私のことはあんまり好きじゃないみたいだけど。」
「そ…んなこともないよ!!」
香織ちゃんに性格の悪い人だと思われたくなくて、それだけはしっかり否定しておく。実際光希さんのことは好きでも嫌いでもないけど、それを言葉にされると自分自身の器が小さいようでなんとも情けなくなってくる。
「別にいいでしょ。私も、あなたのことはあんまり好きじゃないもん。」
「あ、あぁ、そう…。」
「ちょっと光希ズバズバ言い過ぎ!」
「まぁお互いそこまで好きじゃない関係もそれはそれでいいんじゃない。」
どうやら光希さん的には、決して貶しているわけではないらしい。というか、光希さんならどんな関係性でも「まぁいいんじゃない。」と言いそうだ。
「えーなんか私が1番気まずくない?」
香織ちゃんが冗談ぽく言った。確かに、それはそうである。
***
7月中旬。私は日中は30度を超えるほどの暑さに耐えながら、毎日を過ごしていた。
『今週の土曜日、私と光希とほのかちゃんとで遊ばない?』
香織ちゃんからそんなメッセージが送られてきたのは、水曜日のことだった。予定は特にないので、返事はもちろんOKだ。いいよ、どこにいくの?そう打っている間に、続けてメッセージが送られてきた。
『葵とカレンは塾で行けないらしい。』
そういえば2人は幼馴染だと聞いた。特別仲が良くて同じ塾に通っているとか、そういうのもあり得そうだな。そんなことを想像しながら慣れないフリック入力でなんとか打った文章を送信した。
すぐに既読がついて、返信が来る。
『プールとかどう?』
この暑さにはぴったりの提案だった。
土曜日、私は楽しみすぎて待ち合わせ時間の30分前にプールに着いていた。が、やっぱり早すぎたので、受付の、2台ある自販機のそばでで立って待つことにした。受付を通ったら次は更衣室で、スマホなどもそこで預けるので、今入ってしまったらもう香織ちゃんたちと連絡が取れなくなってしまう。居心地が悪いけれど外は猛烈に暑いので仕方がない。
10分ほど経った時、自動ドアが開いて人が入ってきた。
「あ、ほのかちゃん。早いね。」
入ってきたのは光希さんだった。少し意外だった。まだ待ち合わせ時間まで20分もあるのに。光希さんはなんとなく、待ち合わせ時間ぴったりに来るイメージがあったのだ。偏見以外の何者でもないのだけれど。
「え、光希さんも結構早い…。」
「そうかなー。」
光希さんは私のそばにある自販機の目の前に立って財布を取り出した。何を買うのだろうと思い、改めて自販機の商品を見てみる。ひとつは普通の飲み物が売っている自販機で、もうひとつはアイスを売っている自販機だった。光希さんはアイスを買ったようだ。
自販機の口から取り出されたそれはいちご味。また、意外だと思った。クールな光希さんはチョコミントあたりを好むのかと…これもまた偏見でしかない。ぺりぺりと包装紙が剥がされ、可愛らしい色のアイスが見えた。光希さんの体に入っていくアイスを眺めていると、視線に気づいた光希さんが、アイスを私に傾けた。
「食べたいの?」
「えっ。あ、え、いやいや、申し訳ないから。」
「そう。別に少しくらいならあげても良かったんだけど、まぁいっか。」
割とフェアなんだなと、3つ目の意外なところ。
一度は遠慮したけれど、なんだか光希さんのアイスを見ていると美味しそうで、私も買おうかなと財布を取り出した。自販機の前で何味にしようかと思考する。バニラかチョコか、クッキーアンドクリームも捨てがたい。結局チョコ味にして、光希さんと並んで食べた。香織ちゃんが来るまでの間、会話はほとんどなかったけど、気まずいとは思わなかったのが不思議だ。
***
2学期になった。下駄箱で上靴に履き替え、廊下を歩いた。すれ違った葵さんとカレンさんに挨拶をすると、2人ともニコッと笑って返してくれる。教室に入る。教室の中は話し声で溢れていて、夏休みの非日常感から一気に日常に引き戻されたようだった。
「ほのかちゃん、おはよー!」
「おはよー。」
香織ちゃんと光希ちゃんが挨拶をくれて、駆け寄ってきてくれて、私も自然と笑顔になる。口を開いて、声を出す。
「おはよう。」
日常が始まった。幸せな日常。代わりのない日常。あまりにも尊い、日常。
軽く書けた。
キミヨリ
2025/08/18
「待ってよ!」
屋上のドアを勢いよく開いた。柵を飛び越えた私を見て、那月は一瞬顔をこわばらせた。
「え、待っててよ、動かないでよ…。」
那月はそろりそろりと私の様子を伺いながら近づいてくる。「何がしたいわけ?」思わず口から落ちたその呟きが、那月に届くことはなかった。「何がしたいわけ!」私はもう一度言った。さっきより大きな声で、さっきより怒った顔で、言った。本当に怒っていたわけではなかった。ただ那月を引き下がらせるためにあえて演じた。このことで彼女に嫌われても構わなかった。だってどうせ、私はここから飛び降りて死ぬんだし。そしたらもう、何も関係ないでしょ。
「紗奈に生きてて欲しいわけ!!」那月は泣きながら叫んだ。驚いた。彼女からこんな大声を聞いたことがなかった。大粒の涙を拭き取ることもせずに私を見つめる那月に、何か棘のある言葉を放ってやろうと思ったけど、喉に突っかかって出てこなかった。
私は確実に近づいてくる那月に、わずかな恐怖を抱いた。早い者勝ちだというように飛び降りた。那月の声が聞こえたような気がした、けれどもすぐに風の音でわからなくなった。
私のことを嫌いにならなかったのは、見放さなかったのは、那月だけだった。私にとって那月は特別で、那月にとって私は特別だった。
那月のことは大好きだった。けど、少し重たかった。どうしようもなく。
もういいよね。もう、見放されたんだよね。離れられるんだよね。1人でいられるんだよね。私にとって、それは居心地の良いものだった。
まじでなんていうかもう…。
なんだよこれ!!!!!!!!!!
瞳
出血大サービス!
2025/08/25
藤井咲子は不思議な子だった。いつもどこか遠くを、キラキラとした瞳で見ていた。クラスメイトは彼女のことを「変わり者」「何考えてんのかわかんない」「ちょっと苦手」だとか評していた。クラスメイトの1人が彼女に話しかけてみたことがあった。話してみれば案外普通の子だったよ、とのことだが、それでも彼女のことを好むような生徒はいなかった。かといって嫌われていたとかいじめられていたとかそういうわけでもなく、ただ誰からも話しかけられずに孤立していた。
転校してきたばかりの私はそんな藤井咲子になんだか魅了された。ある日、勇気を出して彼女に声をかけてみた。おはよう、とまずは挨拶。彼女は可愛らしい笑顔でおはようと返してくれた。私はまた口を開いた。「どこを見てるの?」彼女は黙った。微笑のまま、窓の外に視線を向け、1分ほど経ってから答えた。「みらい。」不思議な答えだった。でもそれが彼女だった。私の鼓動が体に響いていた。好きだと思った。それは、恋愛とか友情とか、そういうものではなかった。尊敬とか、憧れとか、人間としての美しさとか、私にはまだ少し難しい、あんまりわからないようなことを思った。この変な感じってなんなんだろう、とちょっとだけ仲良くなってから聞いたら、彼女は輝く瞳で私を見つめた。それからちょっとだけ微笑んだ。彼女の透き通るような瞳に私の顔が写っていた。それは綺麗だった。たぶんこれが、私の質問に対する、彼女の答え。
誰のための夜
2025/08/25
「おねえさん。」不意に後ろから、服の袖を掴まれた。反射的に振り返ると、背の低い、おそらくまだ10歳ほどの少女が立っていた。
「なに?」子供は苦手だ。視線を迷わせながら聞いた。「なんでもないよ。ただ、ちょっとつらそうな顔してたから。」なんと返事をすれば良いのかわからず、曖昧に笑って頷いた。少女は丸い瞳で私をじっと見つめた。「お母さんはいないの?」だんだん居た堪れなくなってきた。私の質問に、少女は俯いて黙り込んだ。数十秒後、ポツリとつぶやいた。「おかあさんは、私のこと、みてくれないの。」だからなんだと内心で叫んだ。「だから、夜でも、ここにこれる。」少女は暗い公園をぐるりと見回した。今は夜の8時だ。10歳程度の少女を1人で外に出してもいいような時間ではない。ネグレクトとか、その類かな、なんてぼんやり考える。
「ね、そしたらね、おねえさんがいたんだ!」急に声を高くして、少女はぱーっと笑った。花の咲いたような笑顔だった。「そっか。」私はブランコに腰を下ろした。少女も同じようにした。「おねえさん、なんでつらそうな顔してたの?」少女は私の顔を覗き込むようにして、言った。返答に詰まった。こんな少女に話すべき内容ではなかった。でも、どうしてか口を開いていた。「親がね、大学に行けってうるさいの。私は高校卒業したら働きたいんだけど、そんなこと言ったら、やばいし。」言い終わってから、わかんないよね、君には、と付け足した。「ちょっとだけわかった。やばいって何がやばいの?」「別に、フツウに、あばれられたり。」「ふうん。」少女はそれっきり静かになった。その横顔に目をやった。少女とは思えないような、達観した、さみしそうな表情だった。
「どうかした?」なんだか可哀想で、私から話を振った。「なんかねー、うらやましい。」「…なぜ?羨ましがられるようなところ、ないけど。」「だって、だって、おかあさんとかおとうさんと、たくさん話せるんでしょ。私も話したい、たくさん。」あまりにも切実な願いだった。今この少女に必要なのは、私でも、慰めでも、見せかけの優しさでもなかった。愛してくれる、母親と父親。愛してくれる、誰か。
私は衝動的に少女を抱きしめた。少女の体は細くて、髪の毛からは変な匂いがした。ちょっとでも力を込めたらすぐに骨が折れてしまいそうだと思った。けれど、彼女の芯は強くて、あたたかくて、希望があった。薄汚れた服を着ているボサボサの髪の少女は、もはや少女ではないように感じられた。そのことが、どうしようもなくしんどかった。
「おねえさん。どうしたの。」私はいつの間にか泣いていた。生ぬるい液体が頬を伝った。何かを堪えているような声の少女に、もういいんだよと言った。耐えなくていいんだよ。少女は答えなかった。私は少女の体を強く、けれど優しく包み込むように抱きしめ、そして離れた。少女は涙を流していた。しばらく、そのまま2人で静かに泣いていた。
10分ほどして、落ち着いた少女に私は微笑みかけた。
「そろそろ帰ろう。」少女は頷いた。「もうこんな時間に来ちゃだめだよ。」私の言葉に、少女はためらうように口を開いては閉じるという動作を繰り返していたが、やがて小さな声を出した。「また会える?」私は頷いた。
「きっとね。」
少女はまた、ぱーっと花の咲いたような笑顔を浮かべた。強くて凛々しい、まるで椿のような笑顔だった。
消えないしみと
言葉の暴力とかいじめとかが含まれてるけど、そういう行為を推奨している訳では無いので、そこだけ勘違いしないでね、という注意書き。
2025/08/26
うちのクラスでいじめが始まったのは、5月からだ。私は主犯格でもなんでもない、いうならば村人的存在だった。いじめを止めるようなヒーローにはなれない。いじめが良いことだなんて思っていないけれど、どうしようもできなかった。
今日も学校があって、いじめがある。そう考えると胃がムカムカした。真っ赤なランドセルを背負い、家を出た。朝の空気は冷たく、私の頬を容赦なく叩いてくる。10月の中旬、つい先日まで暑かったのに、秋を挟むことなく冬になってしまっているみたい。そんなことを思いながら、学校に向かう。
教室のドアを開けた。ガラガラ。大きな音が鳴るも、それに耳を傾ける生徒はいない。クラスメイトたちはみんな、友人と楽しげに談笑しているからだ。私は教室の真ん中に位置する自身の席に座った。ランドセルから教科書やノートを取り出す。私の周りからは音が溢れ出ていたが、私の空間は、ここにだけなんらかのバリアがあると錯覚してしまうほど静かだった。
私には友人がいない。けれどいじめられているわけではない。私はいじめるに値するほどの人間ではないと思われているのかも知れなかった。まるで空気だ。それは寂しくもあるけれど、なんとなく居心地が良くもあった。
10分ほどすると、チャイムが鳴り響いた。担任が教室に入ってくる。だが、誰1人として席に座ろうとせず、会話を続けていた。担任が「みんな、席についてください。」と言っても、聞こえていないみたいに。この光景に、手足が重くなった。いじめが始まる。今日も。みんなの悪意に満ちた顔と、担任の疲れ果てた声。「座って、みんな。」担任が再度言う。「はー、なんで?」クラスの中心的な生徒である咲口美波が反抗して、他の生徒もヤジをとばした。「偉そうに言うなよ。」だとか、攻撃的な言葉が担任に投げつけられた。「…じゃあ、このまま話します。聞かないで困るのは君たちだからね。」担任は茶色っぽい長い髪の毛を揺らし、教室の中を見回した。私と目が合うと、口を固くつぐんで数秒黙った。その後、自身の手元に視線を落とし、話を始めた。
「まず____。」クラスメイトたちの声に遮られ、よく聞こえなかった。
8時50分から、授業が行われる。
「今日は割り算の勉強をします。」
「そんなん知らねえよ。」「興味ないし、だまれ。」担任は口元を歪めた。それを見て、咲口美波が高い声を出して笑う。
「傷ついてんの?メンタル弱すぎ。きもちわるい。」
担任は泣きそうな顔になった。でも、泣かなかった。黒板の方に体を向けて、チョークを走らせていた。カッカッという荒っぽい音はなんだか私を不安にさせた。「聞かないで困るのは君たちだからね。」担任はさっきと同じことを言った。さっきよりも小さな声だった。
給食の時間になった。この時ばかりはみんなきちんと席に座る。
給食当番がお皿に料理を入れて、クラスメイトの持っているおぼんに置く。咲口美波が、味噌汁をお椀に入れながら取り巻きたちと話していること以外、他のクラスと全く同じだ。
担任がおぼんを持って列の最後に並んだ。普通はクラスメイトの誰かが担任の分の給食を持っていくのだが、みんなそれをやろうとしないので、担任自身がやっているようだった。普段は担任に反抗するクラスメイトたちも、給食の時は無害だった。あえて担任の分のおかずを残さなかったりとか、嫌がらせをしようと思えばいくらでもできるのだが、そんなことをしたら自分たちが食べる時間が減るかも知れない、とか色々と考えているんだろう。平穏になる。
担任がメインのおかずと白米、牛乳をとって、最後に咲口美波から味噌汁を受け取ろうとした時だった。咲口美波が、「あー!」と叫びながら、担任に味噌汁をぶちまけた。咲口美波以外の全員が息を飲み、固まった。熱い味噌汁が全身にかかった担任は、訳のわからない悲鳴をあげながら走って教室を出ていった。
「み…なみ、今のはちょっとやりすぎじゃない…。」取り巻きの1人が言った。咲口美咲は可愛らしい笑顔を浮かべながら答えた。「そうかな?まあ運が良ければ顔に火傷を負ってるかも知れないね。そしたらもう調子乗れないね。うふ。さあ、ご飯食べよう。」咲口美波が給食着を脱ぎかけた時、教室に男の先生が入ってきた。
「どうした!?叫び声が…。」途端に、咲口美波は泣き出しそうな表情を作った。
「私が、先生にお味噌汁かけちゃって…手が滑って。」俯き、鼻を啜る音が教室に響く。「本当にごめんなさい…。」男の先生は少し慌てながら、「あ、いや、そうか、それで、先生はどこに?」と言った。咲口美波は首を横に振った。わかりませんという意味だろう。先生は私たちに、給食を食べていなさいと指示をして教室を出て行った。給食台の手前の、味噌汁の水溜まりはそのままにされていた。
咲口美波は何事もなかったかのように給食着を脱ぎ、自分の席に座って給食を食べ始めた。私たちはしばらくぽかんとしていたが、時間があと25分ほどしかないことに気づくと、急いでお箸に手を伸ばした。
そういえば、咲口美波が担任に反抗するようになった理由はなんだろう。不安で心臓が早鐘を打って、吐き気がした。それでも給食を飲み込みながら、考えた。先ほどの発言から考えると、担任が、自分よりも美しかったから?熱い味噌汁を口に含んだ。
翌日から担任は来なくなって、別の先生が担任になった。咲口美波は実に満足そうだったが、それ以外のクラスメイトたちは浮かない顔をしていた。しかしそれも数週間ほど経つと元に戻ってきた。元担任が今どうしているのか、誰も知らない。知るべきではないのかも知れない。
けど、忘れてはならない。私たちはもれなく全員、罪を犯したんだ。
教室の床には、一箇所だけ、大きなしみがある。今もある。
糸の繋ぎ方
2025/08/28
幼稚園の頃から一緒の、裕という名前の幼馴染がいる。気が強くて、しっかり者の女の子だ。小さい頃は毎日遊んでいた。小学校に上がってクラスが別々になっても、何せ家が隣なので、離れることはなかった。
小学5年生。私は中学受験のため、進学塾に通うようになった。毎日裕の家に通うことは出来なくなったけれど、交流は確かに続いていた。
中学に上がって、会う回数は格段に減った。裕は公立中学、私は私立中学で、家を出る時間も家に帰る時間も全く違うし、勉強たら部活やらそれぞれの人間関係やらで忙しかった。見かけること自体はあるが、長話することは少なかった。その分、時々の長話が新鮮なものになっていった。
中1の、6月頃か。突然、裕の姿を見ることが無くなった。最初は偶然だろう、あるいは風邪でも引いたのかなーなんて思っていたけど、それが1ヶ月近く続くと、偶然でも風邪でもなさそうだと不安になってくる。そんな中、ある日私が家に帰っていると、買い物帰りらしき裕のお母さん、以下おばさん、を見かけた。思い切って話しかけ、裕のことについて訊いてみることにした。
「こんにちは。えっと、最近、裕の姿を見かけないけど、何かあったんですか?」とたんにおばさんは顔を曇らせ、頬に手を当て、困ったような動作をしてみせた。「そう……渚ちゃんだから言うけどね。実はね、裕が引きこもるようになっちゃってね。」えっと声が出た。おばさんは視線を落とした。「私とは話したくないみたいなのよね。」あの裕が、と思う。あの、元気はつらつで気が強くて、みんなを引っ張っていってくれるような裕が?驚きと戸惑いと心配が入り混じったような、変な感情だった。なんと返すべきかわからず俯いて黙り込んでいると、おばさんはポツンと呟いた。
「渚ちゃんと会うことが減ってから、ちょっと変わったからね。寂しかったのかもね…。」「え、そうなんですか。」顔を上げる。意外だった。裕は誰にも依存しないタイプで、誰とでも仲良くなれるタイプで、どこででもうまくやっていけるタイプだよね。そう思い込んでいた。でもそれは私の押し付けだったのかも知れなかった。私はおばさんにぺこりと頭を下げて、家に帰った。
私の部屋の窓からは、裕の部屋の窓が見れる。カーテンを開け、窓から顔を覗かせた。オレンジ色の光が漏れ出ているが、カーテンが閉じているため中は見えない。少しの間それをぼぅっと眺めていると、急に裕の部屋のカーテン、そして窓が開かれた。裕の顔があった。視線が交わると裕は心底驚いたような表情を浮かべ、何も言わぬまますごいスピードで部屋に引っ込んでいった。私は10秒ほど呆然としていたが、雨がポツポツと降り出したことに気づき、窓を閉ざした。内心ではちょっとだけ安心していた。窓を開けるということは、外との関わりを完全に拒否しているわけではないんだね、と。
翌日、学校から帰ってきた私は、自室の窓から顔を突き出した。もしかしたら、昨日と同じように裕が出てくるかも知れない。昨日はすぐに引っ込んでいっちゃった裕も、今日は話してくれるかも知れない、とそこまで考え、どうやって話すのだろうと疑問を抱く。この距離だと声は届くかも知れないが、明らかに近所迷惑だ。かといって紙に文字を書いてそれを見せるのも、今はもう6時、黒い文字がきちんと見えるのか、果たしてよくわからない。携帯でメッセージを送ることはできない。そもそもお互い、携帯を持っていないからだ。うーんと唸っていると、ひとつ、良い案が思い浮かんできた。私はその場から離れ、大急ぎで紙コップと糸を部屋に持ってきて、勉強机に向かってテープでつなげた。糸電話である。糸の長さはこれだと少し短いか?いやちょうどいいか?でもとりあえず長くしておこうか?まあ短いくらいなら長いほうがいいもんな、などと考えながら、一応完成した糸電話を手に、再び窓から外を見る。なんということか、裕がいた。「あっ!」裕は私を見て、信じられないというような反応をしたが、信じられないのはこちらである。今作った糸電話も、作りながら、使うことなく捨てるのかもなぁなんて想像をしていたのだ。
私が糸電話を見せると裕は怪訝な顔をしたが、そんなの関係ねぇので紙コップの片方を投げた。裕がそれをなんとか受け取ったことを確認し、私は自分の方の紙コップを口に当てた。「えーと、こんばんは。聞こえてますか。」今度は裕が口に当てる。「うん。」と、それだけだった。私は次に何を言おうかと焦りつつ、とりあえず口を開いた。「あー、えーと、えーと、今日はなんで出てたの、窓から?」裕はしばらく黙った。ぴくりともしない裕を見て、訊くべきじゃなかったかなと後悔し出した頃、耳に当てていた紙コップから声が聞こえた。「別に、なんか、気分。」そっけないなと思った。裕らしくないなとも思った。でも、裕らしいなんてないんだよなと思い直した。口元が緩むのを感じながら、私は紙コップを口に当てた。
死んだ親友
2025/09/03
ある日突然、親友は親友じゃなくなった。
顔も、声も、歩き方も笑い方も、親友と同じ。でも親友じゃない。絶対違う。他の人にはわからないみたいだけど、私にはわかる。だって親友だもん。
夕日が教室を赤く染めている。私と親友に扮した何か以外、誰もいない。私はその何かを睨みつけながら、訊いた。「あなた、誰なの。」『何か』は戸惑った表情を浮かべた。それも親友そっくりで、どうにも気色が悪かった。「何言ってるの?歩実の親友だよ。」違う。お前は親友じゃない。頭が狂ってしまいそうになりながら、胃の内容物が込み上げてくる感覚に耐える。怒りが心の底から湧き上がってきて、今にも爆発してしまいそうになった。「まさか、覚えてないわけないよね。」冗談半分っぽく、『何か』は笑った。親友そっくりの笑い方で。目の前がカッと赤くなった。夕日のせいではなかった。親友を冒涜するなと、そう思いながら、私は怒りに身を任せていた。
気がついたら、目の前には死体があった。肉体は親友のものだった。私が殺してしまったんだと瞬時に理解した。どうやって殺したのかも、すぐにわかった。重い辞書が何冊も入った私のカバン、その角が血に濡れていたから。罪悪感はなかった。中身は親友じゃない『何か』なのだろうから、それを退治できたことは気持ちが良かった。
荒い呼吸を整えながら、そういえばと思考を巡らせる。
こいつ、死ぬ直前に何かを言っていた。てあみだったか。てあみ、手編み?意味がわからない。不意にひらめく。てあみじゃない、てがみだ。てがみ、手紙。私は『何か』のカバンを漁った。白い封筒が入っていた。中から1枚の紙を取り出し、死体の目の前の椅子に座って読んだ。親友そっくりの文字だった。だがそんなことを気に留めている暇はなかった。文字なんかよりも、始まりの言葉に目を奪われてしまったからだ。
『あーちゃん、最近少し様子が変なので心配です。直接いうのは照れ臭いので手紙に書くけど、私はずっとあーちゃんの親友なのでどうか安心してください。悩んでることとかあったらいつでも相談してね!!あーちゃん大好き!!!ではまた。』
あーちゃん。幼稚園の頃の私のあだ名だった。小学校に上がってからめっきり呼ばれなくなった、あだ名。なんでこいつが昔の私のあだ名を知っているの。いやな何かが心の表面を撫でた。考えられるのは、つまり、私は死体に目をやった。目を見開いて、当然だけれど動かない。その瞳から出た一筋の涙が、重力に従って頬を伝っていた。もう、重力に逆らうことのできない、親友。死んだ親友。
何言ってんだこいつ!!!!!!!!!!!🙂↕️🙂↕️🙂↕️🙂↕️🙂↕️🙂↕️
皮膚潜む傷、腐りかけ
生々しいタイトルつけたいんだけどむずすぎ
2025/09/17
血とか、生々しい傷とか、行動の変化とか。目に見える形のものじゃないと、その人が抱えていた痛みに気づかない。私はそんな人間が好きではなかった。
友達の美也子は、漫画を描くのが好きだった。何度も漫画のコンテストに自身の作品を送っては、落ちる。けれどもそんなこと気にせず、また別のコンテストに別の作品を送る。また、落ちる。また、ペンを握る。私は美也子が悲しんでいる姿を見たことがなかった。いつもポジティブだった。「次は受賞できるように頑張るよ。」と笑っていた。私も「頑張れ。」と返した。私も美也子の作品を読んだことがあるが、あれはあまり面白いものではなかった。絵は癖がなく、下手ではないが突き抜けて上手いわけでもない。展開は王道。先が容易に予測できるが、変なところで意外性を出してくる。正直、私には合わないなと思った。私は「どう?」と感想を求めてくる美也子に、褒めもなしにそのまま伝えた。美也子なら受け止めてくれるだろうと信じた。美也子の作品をより良くしたいという思いもあった。「そっかぁ。ありがとう。」美也子はへへへと眉を八の字にして笑った。それは困っているようにも、笑うことで何かを誤魔化そうとしているようにも、照れているようにも見えた。美也子が私に漫画を見せてきたのは、それが最初で最後だった。私が美也子に漫画を見せて欲しいと頼むこともなかった。ある日、ふと思い出して私は訊いた。
「そういえば、漫画はどうなったの?賞とかとれた?」美也子はお箸を口に運ぶ手をぴたりと止め、数秒黙った。私は購買で買ったパンをかじりながら言葉が返ってくるのを待った。視線だけをあちこちに動かした末、美也子はつぶやくように言った。
「もう描いてない。やめた。」
思わず顔を上げた。今度は私の手が止まった。美也子は卵焼きを口に放り込んだ。その瞳は自身のお弁当だけを写していて、私のことは見ていなかった。卵焼きの次はプチトマトを食べる美也子は、どこかいつもと違っていた。何が違うのか明確にはわからなかった。だから私は、いつもと同じような口調で訪ねた。「へー、なんで。」思っていたよりも低い声が出た。「頑張っても面白い話作れないし、賞、取れないから。」美也子の目立たない喉仏が上下に動いた。プチトマトを飲み込んだようだった。「ふーん。」私は頑張ってる美也子が好きだったな。そう続けそうになった口を、慌てて固くつぐんだ。もしかしたら、私の感想が、美也子から漫画を描く楽しさを取り上げたのかもしれなかった。でも、そう思いたくなくて、私は話題を全く別のものに変えた。
血とか、生々しい傷とか、行動の変化とか。目に見える形のものじゃないとその人が抱えていた痛みに気づかない。私はそんな人間が好きではなかった。私もまた、そんな人間なのかもしれなかった。
焦げた努力は美味しくないから削って捨てる。
この小説を読みたいなら、代わりにファンレターを差し出しなさい
↑こういうのしてみたかった
パssssssssssすワード付きコメント返すよ
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今の君を壊してあの頃の君を救い出したい
純粋な恋愛物語かこうとおもた。
2025/09/24 今の君を壊してあの頃の君を救い出したい
ふうと息を吐くとすぐに白く染った。今日は寒い。隣を歩く真奈美の、やわらかそうな頬もうっすらと紅色になっていた。
「…あ。」真奈美がふと上を向いた。僕も釣られて顔を上げると、鼻頭に何かが落ちてきて、すぐに解けた。「雪だ。」
へへ、と笑う真奈美の方を見ると、子供みたいな無邪気な笑顔がそこに浮かんでいた。
「そういえば、高橋は雪、好きだったね。」思い出したように言った。彼女のことを高橋と呼ぶようになってからもう随分たったのに、全く慣れない。高橋と呼んだあとは必ず、舌の上がざらつくような感覚になるのだ。
「うん。大好きっ。」真奈美にしては珍しく、弾んだような好奇心の塊のような声で僕に笑いかけた。「ここ何年かは、全然雪降ってなかったから、なんか新鮮。」
そういえばそうだった。最後に雪が降ったのは、僕たちがちょうど小学校を卒業する日だった。あの時も真奈美は今みたいな笑い方をした。そのあと、クラスみんなで雪合戦でもしたっけな。クラスみんなと言っても、10人程度だったけれど。思い出して、自然と頬が緩んだ。10人程度しかいなかったから、みんなと等しく仲良しだったんだろうなと、今は思う。
「ねえ、まな……高橋。」小学校の卒業式の日、言えなかったことがあるんだ。そう続けると、彼女はきょとんと首を傾げ大きな瞳で僕を見上げた。そしてふふっとあの頃とは違うような、大人っぽいような、そんなふうに笑った。
「今更?小学校の卒業式って、3年前のことじゃん。」
「それは、そうだけど。今も変わってないし、まあ。」
「それで、なに?」促され、口を開いた。だが言葉は、喉に突っかかって出てこなかった。口をパクパクとするばかりでなにも言わない僕を、真奈美は静かに見つめていた。
「なにもない。」結局、言えなかった。
「なにそれー。」真奈美はおかしそうに、しかしどこか不満げに言った。昔と似ているけれど、昔とは違う声。それが、透き通るような空気に広がっていく。僕はぎゅっと、真奈美に見えないように拳を握った。
口を開いて、怖いと思った。彼女との関係性が崩れてしまうんじゃないかと、恐ろしかった。それは初めての感情ではなかった。今まで何度も、真奈美に自身の思いを伝えようと口を開いてはなんでもないと誤魔化していた。何度も何度も。
本当は伝えたい。
変わってほしくなかったなって。
あの頃の君が好きだったよって。
でもそんなこと伝えたらいけない。困らせるから、今の彼女を。
なんでこんなタイトルになってるんやろ。
「昔と同じ真奈美」「昔と違う真奈美」が頻繁に描写されてる。
これはつまり!!!!!?????????!!!!!
なに……?
これはつまり、なに……?
ごめんわかんない
父が死んだ日、母は笑った。
パスワード教えてみたいなコメント来たら個別で教える =͟͟͞͞(:3ꇤ[▓▓]=͟͟͞͞(¦3[▓▓]=͟͟͞͞(¦[▓▓=͟͟͞͞( [▓▓]
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この作品ってジャンルなに!!??
追記:サイコホラーらしい。初めて知ったジャンル‼️‼️‼️
祖母の遺影が日に日に笑顔になっていく
見たい人は私にファンレターを送り付けよう‼️‼️‼️
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あなたがいなければ
ざつ
2025/10/07 あなたがいなければ
新田あかりに羨望の瞳を向けたことは一度や二度ではない。
「あーおはよう安藤さん。」朝、私が教室に入ると、新田あかりが私に手を振った。私は会釈を返すだけで精一杯だった。声をかけられたことに少しの居心地の悪さを感じながら、通学カバンを自分の席の横にかけ、1時間目の教科書を取り出すためにロッカーに歩く。のろのろと教科書を取って席に戻った時、教室のドアが開き教師が入ってきた。それと同時に、校舎にチャイムが鳴り響いた。
カッカッカッという、黒板の上をチョークが走る音。問題を移し終えた教師が黒板から生徒の方に体の向きを変え、じゃあこの問題を、と教室を見回す。「新田さん、これ、応用問題だけれどわかる?」指名された新田あかりはさっと答え、そしてそれは当たっていたようで、先生は上機嫌で解説に入った。私はシャーペンを強く握りしめながら、前に座る新田あかりの背中をじっと見つめた。しゃんと背筋を伸ばし白い腕でノートに文字を書く後ろ姿、ただそれだけなのに絵になった。私がそれにくちびるを噛み締めていると、不意に教師が私の名前を呼んだ。「安藤さん、この問題、答えは?」どうやら次の問題に進んでいたらしかった。私は黒板に視線をやり、10秒ほど黙り込んだあと、わかりませんと呟くように言った。先ほど新田あかりが解いたよりもずっと簡単な問題なのにわからない自分に嫌気が差した。
中学2年生になって、成績が急に落ちた。1年の時は学年5位以内に入ることなんて当たり前だったのに、最近は40位前後でも驚かない。それに対して新田あかりは、1年の頃から今に至るまで、何度も学年1位を取っていた。成績優秀者として彼女の名前が張り出されている時、私は嫉妬で狂いそうになる。加えて新田あかりは運動ができた。体育祭のリレーで陸上で大会新記録を出したことも、テニスの大会で優勝したこともあった。作文では優秀賞を取り、顔もよく整っていて、また性格まで良い。人望もあって先生からも信頼されている。嫌いなはずの新田あかりのことを、私はどうしてか気にしていた。嫌いだから気にしていた。1人勝手に情報をインプットし、嫉妬し、自分と比べ、自分に失望する。新田あかりという人物は、それなりに幸せでそれなりに優秀だった私の人生に初めて生まれた、大きなしこりだった。
自然と筆圧が強くなっていたようで、無心で文字を書いているとシャーペンの芯が折れた。芯入れから新しい芯を取り出している時、新田あかりが振り返った。一瞬、心臓が高鳴った。「これ、回してくれる?」新田あかりは私に小さな紙をよこした。反射的に受け取って、それが手紙だと理解すると、一気に体の熱が冷めた。期待していたのかもしれなかった。新田あかりの方も私のことを気にしていて、私に興味を持っている、そんな展開を。そんなことあるわけないのになと内心で自分を嘲笑しながら、後ろの席の子に手紙を回した。芯入れから数本の芯が飛び出たままになっていたので、1本つまんだあと、筆箱に戻した。つまんで取り出した1本をシャーペンに入れながら、新田あかりが授業中に手紙を回すという行為をしていることが羨ましくなった。いや、少し違う。新田あかりが充実した人生を送っていることが、憎らしい。憎らしくてたまらない。いなくなれば良いのにと思う。私の人生から消えてくれと願う。どうしてこんなにも、あなたの小さな行動に一喜一憂しなければならないのか。一喜なんて、ないけれど。
入れたはずの芯がなかなか出てこなくて、舌打ちしそうになった。
ざつでしょう
新田あかりって名前めっちゃいい可愛さと上品さがある人の名前だこれは
見えない人は山吹とノート。音楽室はない。
(見たい人は、)ファンレターであなたのユーザーネームあるいはユーザーページのリンクを教えてくれたら、私がパスワード付きコメントを返すよ。
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雑巾の味
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あとがきがき
蝉
みじかい
2025/10/20 蝉
蝉が鳴いていた。9月中旬のことだった。大合唱ではなかったけれど、近くで鳴いているのか、うるさかった。鬱陶しいと思った。蝉の鳴き声を聞くと、余計に蒸し暑く感じられた。公園の薄汚れたベンチに座って、食べ終えた、当たらなかったアイスの棒を弄びながら目を瞑った。蝉の鳴き声が脳内に響いていた。ソーダの味がまだ残っている爽やかな口の中と、汗のせいか頭皮にへばりつく髪の毛によくわからないものを抱いた後、蝉の鳴き声が消えたことに気がついた。目を開けて視線を動かすと、視界の下に小さな茶色いものが映った。蝉だった。木から落ちたようだった。アイスの棒でそれをつついてみた。勢いよく動き出すのではないかと少し身構えたが、蝉が動くことはなかった。死んだ。蝉が死んだ。死んだ蝉。1匹だけで鳴いていた蝉。メスを呼ぶために鳴いていた蝉。でも一生懸命鳴いたって、結局なんの意味も持たなかった。この蝉の仲間はきっともうみんな死んでる。
アイスの棒で蝉を動かして地面に落とした後、公園のゴミ箱に歩いた。
449文字
ミジカイヨ
指示、大事
タイトル韻踏んでる。
これ韻っていうの。。。。?
「じゃあ、今すぐ死んでよ。」
涙を流したお母さんにそう言われた時、私はすぐに首を縦に振った。
「わかった。どうやって死ねばいいの?」問うと、お母さんは目を見開いて包丁を握ったまま膝から崩れ落ちた。力なくフルフルと首を横に振りながら小さくもういいわと言った。だから私はわかったと答えた。
お母さんは私にずっと何かを求めてきた。それがなんなのか私にはわからなかった。成績を求めてきた。私はそれに応えることができた。大人に従うことを求めてきた。私はそれに応えることができた。偏差値の高い学校に進学することを求めてきた。私はそれに応えることができた。偏差値の高い学校で良い成績を取ることを求めてきた。私はそれに応えることができた。
高校1年生になった。さあ次は何をしたらいいのと、台所で野菜を切っているお母さんに訊けば、お母さんは眉を下げた。「自分で考えれば?」私はそれに応えることができなくなった。
指示を出してくれないと困ると言った。私にはそれはできないと言った。
お母さんはダンッとにんじんが飛んでいくほど強く包丁を振り落とした。それから長い息をつき、うめくような小さな声を出すと、急に泣き出した。更年期で情緒不安定なのだろうか。「どうして彩菜は、自分で動くことができないの?」
私が黙るとお母さんも黙った。1分ほど経過して言われた。
「私が死ねといえば死ぬの?」
「そうだね。」
私に即答されたお母さんは一度深く息を吸った。
「じゃあ、今すぐ死んでよ。」
「わかった。どうやって死ねばいいの?」
しかし結局、私が死ぬことはなかった。お母さんがもういいわと呟いたからだった。
それに少しがっかりする自分がいた。がっかりと言う表現が正しいのかよくわからなかったが、私はこの感情を表現する言葉として「がっかり」以外知らなかった。
私は自分で動くことができなかった。常に指示を待っていた。それは子供の頃にお母さんにそう言う指示をもらったからだった。大人に従いなさい。お母さんに従いなさい。自分勝手な行動をしてはいけません。
私は自分があと2年で大人側の人間になることについて、何も考えていなかった。
そのような指示をされていないから。
包丁を握ったまま崩れ落ちるなんて危ないよ!!!!!