君の笑顔は誰よりも可愛く、憎たらしい。
そんな君を愛しく思えてくるよ。
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高校から知り合った女の子と、大きな壁にぶつかりながらも、愛情を深めていく物語。一つ一つのことに真剣に向き合いながら、お互いが少しずつ惹かれ合っていく。しかし、「君」は誰にも言えない秘密があった。
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目次
入学式 #1
一日目、ドキドキの入学式を迎えた主人公。
はたして、友達はできるのか…?
高校生活、一日目。俺は岸部 蒼汰(きしべ そうた)。まるで、新入生の俺たちを歓迎してれているような快晴だ。桜も満開、今日からこの高校で過ごしていくんだ…ドキドキとワクワクが止まらない。って、入学式に急がなければいけないに何考えているんだ俺。体育館に行かなければ。
ー体育館ー
「皆さん、入学おめでとう。今日から君達は我が校の生徒だ。その事を忘れずに考えて行動してもらえるよう、我々も精一杯頑張らせてもらいます。校長からは以上です。」
校長の話って長いって言うけど、それって中学校までなのかな?あと、ハゲとも言うけど…
「では、各クラスに移動してもらいます。このあとの流れについて、簡単に説明させてください。クラスに移動したあと、教科書等が机の上に置いてあると思います持参してきてもらった名前ペンで名前を書いてください。そして、その後には自己紹介を行います。皆さん、今から考えといてください。それでは、各自移動をお願います。」
学年主任はしっかりしていて、厳しそうだ。仲良くできるかな?いや、それ以前にクラスの人と打ち明けられるかだ。
ークラスー
「はい。皆さん聞いてください。」
俺の担任の先生か、それにしても若いな。男の先生だけあって筋肉もムキムキだ。体育の先生かな?
「皆さんの担任になりました。佐藤 光輝(さとう こうき)です。この度は入学おめでとうございます。では、早速ですが教科書に名前をか」
「ちょっと待った!」
先生の話をさえぎった声は後ろから聞こえた。振り返ってみると男の子が立ち上がって目をキラキラさせながら言った。
「皆の自己紹介が先に聞きたいです!したら仲良くなれるかもしれません!」
皆が一斉に笑い始めた。緊張して張り詰めていた空気も一気に溶けたような気がする。
「わかった。確かに、自己紹介のほうが先かもな。じゃあ、出席番号順にいこうかな。名前と好きな教科、趣味とクラスのみんなに一言、この流れでいこう。」
一番・二番と自己紹介が淡々に進められ、14番の俺が自己紹介する番になった。
「えっと…岸部 蒼汰です。好きな教科は体育で、趣味は映画鑑賞です。一年間よろしくおねがいします。」
『パチパチパチ』とみんなが揃って拍手をしてくれた。歓迎してくれるような拍手に聞こえた。その後も自己紹介は続き、先程の男の子の番がやってきた。
「中田 悠真(なかた ゆうま)です。好きな教科は、うーん、そうだな、強いて言うなら体育かな?趣味はスマホゲームで遊ぶことかな?俺、うるさいと思うから一年間迷惑かけます!」
彼はきっと中学でも、みんなをひっぱてくれる素敵な人なんだろう。語尾の疑問形が気になったけど…そんな事を考えているうちに、中田さんの次の人が立ち上がった。思わず見とれてしまうほどの綺麗さだった。
「根崎 鈴(ねざき りん)です。好きな教科は理科で、趣味はダンスです。一年間よろしくおねがいします。」
ボブの可愛い内巻きが特徴の根崎さん、モテそう。
自己紹介が全員終わったあと、俺たちは教科書に名前を書き、そのまま下校した。一日目で友達はできなかったが、明日は頑張りたいと思えた今日だった。
えーと、締りがいまいちよくわからなくて、笑
なにかここ変だよ、とかここはこうした方が良いよというアドバイスや意見があれば、ファンレターでビシバシ言ってください!
少しでも、自分に力をつけたいのでよろしくおねがいします!
じゃあ、また。
友達 #2
二日目、果たして主人公はクラスに馴染めているのか?
今日からお昼もあるので、お弁当交換も期待してしまう主人公。
さて、昨日は自己紹介だけで終わってしまったが…まぁ、今日は授業もあるので、仲良い人は一人でもできるだろう。残念なことに、同じ中学の子は他クラスなので離れてしまった。てか、俺はボッチ確定なのでは?この流れだと絶対そうだよな。え、大丈夫かな?
ー1限目&2限目&3限目&4限目 学活ー
校舎のザットした説明をされ、校内をぐるぐる回った。その後は、高校の規則、過ごし方を確認して終わった。次はついに…お昼!!
ーお昼ー
さーてと、俺の人以外はぜーんいんなじめてるのはなーんでだ???
いや、陰キャかよ。コミュ障かよ。恥ずかしい。とりあえず、トイレとまでは行かないが、漫画で憧れていた場所がある。校内を回っていたときにしっかり目をつけておいた。そう、小・中と実験の時しか上がったことのない屋上だ!憧れの外でのご飯。えっと、たしかここを上がれば屋上だよな。
「え、」と思わず声が出てしまった。ここは中学校か?でっかく立入禁止と書いてあるぞ?
『ダンダンダンダンダンダン』
しかも先生が階段を上がってくる、入学二日目で大事になったら溜まったもんじゃない。隠れたほうがいいと思ったけど隠れる場所がない…素直に謝るしか…
『ダン』
「すいません!憧れていた屋上が閉まっているなんて知らなかったので…え?」
こんな漫画の世界のようなことを見たことがない。根崎さんが目の前にいた。
「えーと、ごめん。同じクラスのひとだよね?名前がまだ覚えられていなくて。」
「あ、岸部蒼汰。蒼汰でいいよ。はー、なんだ、先生かと思った。」
「あはは、必死に謝ってたもんね。笑っちゃ悪いからおさえてたけど、面白かったよ。」
「ところで、根崎さんはなんでここに?」
「鈴でいいよ。ここに来た理由は蒼汰くんと同じだよ。憧れてた。」
「高校って理想を潰しに来るよな。なんか思ってたのと違うっつーか。」
「そう?屋上は残念だったけど、他にもっとあるんじゃない?」
『ダンダンダンダンダンダン』
また足音がする。今度は本当に先生が来たと思ったので、根崎と慌てた。
『ダンッ!!』
「うわっっ!!」
自分から飛び込んできたくせに、驚いていたのは面白い。来たのは先生ではなく、中田悠真だった。
「え、ちょ、まって。邪魔した??」
バツが悪そうに聞いてくる中田に対して、俺たちは目を合わせて笑った。
「同じクラスのー、えっと、」
根崎がつまずいてしまっているのをサポートするように「中田さんだよ」と優しく言った。それがかえって恋人っぽく見えたのか、中田は焦っていた。
「俺は岸部蒼汰、蒼汰でいいよ。あと、さっき知り合ったばっかだから。」
「なんだよ。そうならそうと早く言えよ。俺は中田悠真、好きに呼んで。」
「ごめん、びっくりさせちゃったよね?私は、根崎鈴です。私も好きに呼んでほしいな。」
「てか、立入禁止かよ。蒼汰と鈴も弁当食いに来たのか。」
いきなり友だちが増えて嬉しい。しかも名前呼びされたことに感動でしかない。
「そうなんだ。夢を潰された。」
「私も」
「じゃあ、階段でくおうぜ。ここまで来たんだし。もったいないと思いたくないだろ?」
「さり気なくかっこよさだすなー中田。」
「あはは、あ!みんなケータイ持ってる??」
「「持ってるけど」」
はもった。しかもあの中田と。
「出して出して、マイン交換したい。」
さすが女子。すかさずマイン交換することで、いつでも話せる。さすが女子。
「二人とも交換できた。ありがとう。」
「根崎は仲良い女子作れたか?」
俺が質問を投げかけてみると、動いていた手がピタリと止まり、深刻そうな顔で「まだ…」と一言、悲しそうにいった。
「ま、別にいいじゃん。俺たちが友達だし。な?蒼汰。」
「あ、ああ。そうだな。」
はっきり言って、男子二人に対して女子が一人だけ入ってくると周りの反応が良くないと思う。そんな事言われたら、根崎が可愛そうだ。まぁ、今の段階で言われてなければそれで良いのかな?
「あ、そろそろ時間だ。授業に遅れちゃうよ?」
「ああ、そろそろ行くか。蒼汰、行くぞ?」
軽く「ああ」と相づちをして、二人の背中を追いかける。その時だった。
『ドン!!』
急な衝撃で目を丸くしてしまった。俺の体が誰かとぶつかってしまい、お互い尻餅をついた。その音に気づいたのか、中田と根崎が駆け寄った。
「あ、すいません。前を見ていなくて、その、怪我、とかないですか?」
俺がそう言って相手の方を見ると、相手は女の子だった。上履きの方に目をやると、一つ上の学年の先輩だった。この学校は、学年ごとに上履きの色が違う。そして、屋上がついている棟は、二年生と三年生の棟なんだ。しばらく沈黙が続いた後に、ぶつかってしまった先輩が口を開いた。
「ごめんね、私もよく見てなかった。もうすぐチャイムなるから帰りな。」
「すみません。」
そう一言言い残して俺たちは去った。名前を聞いてお詫びをすればよかったと後悔したが、また会えるだろうと信じて寝ることにした。いい夢見れそー…
『スパーン!!』
え、俺の頭痛い。起き上がった瞬間に教科書を丸めている先生と目があった。
「まだ学校だから寝るなよ。岸田!」
「いや、俺、岸部です。」
それと、おまけにクラスのネタ枠に入った。悲しいが、自然と周りに人がいることが嬉しかった。夢ではありませんよーに。すー…
二日目終了!!
お弁当交換は先かもしれないけど、徐々に周りの人に溶け込めている様子が最後にありましたね。
なにか変なところがあれば、ファンレターにて、意見&アドバイスお願いします!
岸田は単なる打ち間違えから生まれたものです、笑
※マインはラ◯ンと思っていただければ幸いです。
好きになった #3
月曜日が入学式。火曜日は友達ができた日。そして今日は水曜日。
昨日、ネタ枠に入った主人公は今日もいじられそうですね。
しかし、その手前にある出来事が…タイトル見たら察しがつきますよね。
ー朝の電車ー
岸部なのに岸田なんて、ひどい間違え方をする先生だ。どーせ、このネタをきっかけにいじってくるやつがいるんだろ?昨日までなんとも思わなかった電車からの風景も、少しどんよりして見えた。マインの交換が殺到した昨日の放課後、その場まかせに交換したが、それは間違いだった。察しの通り、マインでもいじられっぱなしだった。
「おはよ」
「あ、根崎。同じ電車に乗ってたんだな。」
「2個前の駅からね。いつ声かけよーか迷ってたら結構すぎちゃった。」
ん?それはどういう意味で捉えたら良いんだ?
「だって、蒼汰くんすっごいくタメいきついてたんだもん。話しかけにくいじゃん。昨日のことで悩んでるかなーとか考えてたりもしてたけど、大丈夫?」
そーゆうことかい。期待するなアホ。
「マインでいじられっぱなし。悲しくなってくる。」
「うわー。想像してた以上に深刻化してた。」
「そうなんだよ。俺の高校生活に傷はつけたくなかったけど、もう手遅れだな。」
ふと思った。俺のことめっちゃ心配してくれてるじゃん。高校生活には傷はつけたくないとか言ったけど、根崎という存在によって揉み消さている。え、俺、根崎が好きなの?
「大丈夫…?すごい目が開いてるけど。疲れたなら座れば?」
「いや、大丈夫。」
「本当に疲れてるね。ストレスからくる病気とかあるから気をつけてね。」
なんて優しい子だ。ただ心配だけをして、優しい言葉をかけてくれる。
「ありがとう。あ、次で降りる駅だ。降りれる?」
俺が聞いたことに大きくうなずいてくれた根崎は、歩こうとした瞬間にこけた。
「あ、ごめん。申し訳ないんだけど手、貸してもらっていい?」
突然のおっちょこちょいな行動に笑ってしまった。だが、降りる駅なので素早く手を差し伸べた。恥ずかしそうに俺の手をとる根崎は可愛かった。あぁ、好きだ。会って三日しかたたない、でも好きだ。
ー学校ー
あの後根崎は登校したが、「擦りむいた足、保健室で見てもらう。蒼汰くん先行ってて。」と言い残して保健室に行ったっきり帰ってこない。
「岸田だー?きっしだー」
好きと意識しだした途端、いじられてもどうってことなかった。案の定、学校に行ったらいじられたけどな。
「岸田じゃなくて岸部な?中田。」
「お前さ、それはわかってるけどよ…朝、鈴と登校してるの見たぞ。」
「あー…ええええ!?」
思わず変な声が出てしまった。その声を漏らさないよう片手で手を抑えても、遅かった。
「そりゃ、同じ学校なら皆に見られるだろうよ。」
恥ずかしい。根崎はそれが嫌だったから保健室に行ったのか?大した擦り傷にもなってなかったし。
「たまたま会っただけだよ…」
「蒼汰は鈴のこと好きなんだ。」
「うー…ええええええええええええええええええ!?」
今度は本当に抑える気もなく、大声で叫んだ。クラスの皆に注目されても、気にしない。だって、それ以前の驚き(?)が目の前にあるからだ。
「いや、焦りすぎ。はははは」
「あ、いや、その。いきなりそんなこと言い出すから。」
「だって、鈴の席ずっと見てるし。落ち着きがなかったんだもん。」
そうだ、根崎の席顔見してた。いつ来るんだろう、大丈夫かなとか思ってた。もう中田にバレたなら言うか。他の人に言わないと思うし。
「今日の朝気づいたんだ。好きなんだーって。」
「俺は屋上の時から好きだと思ってたけど。」
屋上のときは好きじゃなかった。特に意識もしなかった。友だちができて嬉しい、そんぐらいだった。多分。
「えーと、誰にも言うなよ?中田だから言ったんだぞ。」
「言わない言わない。ま、片思いは苦しい事あるかもしれないけど、頑張ってな。」
ー放課後ー
結局、クラスに来ることがなかった根崎。保健室に行って、根崎のことを聞いてみた。
「あの、根崎は…早退しましたか?」
「根崎さんは朝にね。あ、もしかしてあなたが岸部くん?伝言預かってたの。」
「え?」
「朝から体調が良くなかっただけだから気にしないでって。」
体調が悪かったんだ。だからコケたのに、それを笑ってしまった。申し訳無さで胸がいっぱいになった。
「わかりました。ありがとうございます。」
下駄箱に向かう途中、昨日ぶつかってしまった先輩が前から歩いてきた。
「あ、あの。」
すれ違うときに声をかけたので、驚いている。
「昨日ぶつかってしまったものです。昨日はすみませんでした。」
「あー、大丈夫だよ。私は忘れてたから。」
苦笑いで「そうですか」と答えると、急に自己紹介をしてくれた。
「私、2年生の指原 華乃(さしはら かの)。君は1年だよね?」
「はい。1年の岸部蒼汰です。」
「あれ?岸部って…」
そう、先輩と同じ学年には俺の兄ちゃんと姉ちゃんがいる。しかも一卵性双生児。男女の一卵性双生時は稀だ。とても珍しらしいそうだ。
「そうです。双子の兄と姉がいます。」
「私、美琴(みこと)と真琴(まこと)と仲いいんだよ。」
美琴が姉で真琴が兄だ。
「いつも兄と姉がお世話になっています。」
「そんなことないよ。あ、もう時間だから行くね。」
お辞儀を軽くして走っていった指原先輩は、ポニーテールがよく似合うなと、後ろ姿を見て思った。
今日は根崎のことを好きだとわかった。先輩が優しいことがわかった。いい感じに高校生活進んで…る?
はい、これで終わりです。今回は登場人物多く出しちゃいました。
ぶつかった先輩は指原華乃(さしはらかの)。
蒼汰の双子の兄弟は、美琴(みこと)と真琴(まこと)です。
それでは、また今度!
※マインはラ◯ンと思っていただければ幸いです。
俺の家族 #番外編
話を進める前に、少し主人公の家族のお話について書かせてもらいます。
残酷な日々を暮らす中でも、主人公は諦めず笑顔を作ろうと頑張りました。
現在の時間は6時半、いつもは7時半まで寝てるのに。ここ最近はこんな感じで早く起きてしまう。それはきっと、家庭の問題だろう。
俺には7歳の時から父親がいないため、女手一つで育ててくれたのが母だった。親戚には頼れる人がいないので、寝る間も惜しんで働いてくれていた。でも、母さんは死んだ。交通事故が原因だった。飲酒運転をしていた大学生ドライバーと、仕事に疲れ切っていた母さんが事故を起こした。何一つ、恩返しができなかった。
姉ちゃんは部屋は部屋からあまり出ず、兄ちゃんは高校1年生なのにバイトを一日中やっていた。これでは唯一の家族がばらばらになってしまうと思い、思い切って提案した。
「市役所に行って、親族を探してもらわない?葬式をあげたから、報告はしないといけないと思う。それに、これからのことについても話さなきゃ。」
姉ちゃんは泣きはらした顔で「うん」と一言答えた。兄ちゃんは、「じゃあ俺が今から行ってくるよ」とふらついた足取りで玄関に向かった。でも今は夜だ。
「兄ちゃん、明日にしよう。もう夜だよ。それにバイトで疲れてるでしょ?」
「何かを…何かをしてないと考えちゃうんだよ…」
母さんのことだろうか。今にも泣きそうな声で言う。
「俺、もう誰にも死んでほしくない…兄ちゃんも先に逝かれたら困るよ…」
限界が来た。本当に母さんみたいに疲労で疲れてほしくない。死んでほしくない。疲れと恐さで泣き出してしまった。兄ちゃんも泣き出してしまい、市役所は明日行くことになった。
市役所に来た。受け付けで親族を探してもらう。久しぶりのしっかりした姉ちゃんを見れて嬉しかった。何より、3人揃っての行動をできることが嬉しかった。
「えっと、岸部さん家のご親族は東京都に住んでいますね。こちらが個人情報になります。」
「母さんが親戚に頼りたくないのには、なにか理由があったからだよな。一応父さんのことも調べてもらおうか。」
兄ちゃんの意見に俺は大きくうなずいた。でも、姉ちゃんは賛成しなかった。
「やめよ、関わらないほうが良い。もう終わった相手の子供の連絡なんてどうでもいいよ。あの人は。」
何かを知っているように言う姉ちゃんは、澄んだ目で力強く言った。それは兄ちゃんも思っていただろう。
「わかった。じゃあこの親戚の人に連絡してみよう。」
連絡してわかったことが2つある。1つは、結婚を反対したのに結婚したこと。父さんはろくでもない人だったらしい。そんなこと、わかっているはずなのに母さんは結婚をした。そのとき縁を切って出てったらしい。2つ目は、面倒を見てあげられないということ。なんでか疑問に浮かんだので聞いてみた。
「なんで面倒を見てくれないんですか?母さんが死んで、困ってるんです。」
「それほど甘やかせれているということだろう。できの悪い娘だったからな。死んで当然の報いなんじゃないか?それに、もうあんたの家と私の家は縁を切っている。なんで面倒ごとを押し付けられれるんだ。そんな仕打ちゴメンだ。」
なんてひどい叔父なんだと思った。できの悪い娘?あんたの理想を勝手に押し付けてるだけじゃないか。母さんが親戚に頼りたくないのもよく分かる。こんな家、連絡するんじゃなかった。怒りが爆発しそうになっている僕を差し置いて、爆発したのは兄ちゃんだった。
「ふざけんな!母さんができの悪い娘?お前は何を見てもの言ってんだよ…母さんがどれだけ苦しい思いをして家計を支えてくれてたか知らないだろ!そもそもお前が頑固だから母さんは嫌になったんじゃないのかよ、声からうざったいもんな。なんでも縛ってきそうだ。仕事、恋愛、金、人生、どれだけお前の行為によって母さんの自由が奪われた!」
こんな大声を出している兄ちゃんを初めてみた。姉ちゃんも兄ちゃんに続いて怒りをぶつけた。
「お母さんができない娘だ、死んで当然だとか言ってんけど、お前が死ねばよかったんだ!!お前が死ねば、母さんはここで笑って…笑って過ごしてたかもしれない!お前のせいだ!お前の身勝手さ、傲慢さのせいで母さんは死んだようなもんだ!返せ!人殺し!どーせ、暴力振るってたりしたんだろ!人殺し!」
泣きながら叫んでいる姉ちゃんを見てられない…兄ちゃんも地べたに手をついて泣いている。でも、現実からは目をそらせない。
「あいつが、あいつが言うこと聞かないからやったんだよ。お前らもあいつと同じようにぶん殴ってやろうか!!二度とそんなこと言えないようにしてやるぞ!!」
母さんに虐待をしていたんだ。その瞬間に何かが切れる音がした。俺の理性かもしれない。
「俺たちを母さんと同じように苦しめたいんだ?どうやって?」
「何回も叩いて、真冬に外へ放り出してやったわ!!!お前らも同じ目に合わせてやる!!」
「母さんにそんなことしたあんたは間違いなく地獄に落ちるべきだ。今の内容、すべて録音してある。だから、警察に届ける。例え虐待の時効があったとしても、必ずあんたには母さんの味わった苦痛を受けてもらう。子供だからってあまくみてんじゃねえぞ!!!」
『プツ』
一方的に電話を切った後、しばらくみんなで泣いた。母さんが受けた苦痛、そんな重いもの背負って生きていたなんて…ショックだった。気付けなかったことが。
「みんな、お母さんのこと好きすぎでしょ。ブチギレ半端ない…」
最初に話したのは姉ちゃんだった。
「あのクソジジィ、いちいちムカつく。その場にいたら殴りかかってたかも。」
「兄ちゃんの言う通り、俺も殴ってた。」
「蒼汰、本当に録音してたの?」
姉ちゃんが目を丸くして聞いてきたので、深くうなずいた。
「兄ちゃんが言わなかったら、録音なんてしなかった。」
「俺、なんか言った?」
「母さんが親戚に頼りたくないのには、なにか理由があったからだよなって言ってたから、もしかしたらすっげー嫌なやつかもって思って。」
「あー、俺たち流石だな。」
そんなことを話しながら泣いていたら、電話がかかってきた。兄ちゃんのスマホからだった。でも知らない番号だ、緊急のことかもしれないと兄ちゃんは出た。
「もしもし?どちら様でしょうか?」
「あんたらの母さんの妹、美香子(みかこ)っていうんだけど。私、ずーとあの家から出られなくてね、たまたま父さんの電話の内容聞いてたら姪と甥がいること知ったんだ。住所教えて。あんたらの面倒、私が見てあげる。」
希望の光が見えた。罠かと思ったりしていたけど、そんなことはないと心にい聞かせ、住所を教えた。
「改めまして、父が大変な失礼と数々の無礼、本当に申し訳ありませんでした。」
美香子さんが家に来てそうそう土下座をして謝ってきた。いつもあのクソがこういう行動するたびに謝るのは美香子さんなんだろう。
「美香子さんが来てくれてよかったです。子供だけじゃ生活できないので…」
「罪を償うために来たと言っても良いんだ。私、由香子(ゆかこ)が虐待されてるの見てみぬふりしてたから。」
由香子は俺の母親の名前だ。
「でも、お母さんが出てってから当たり散らかされるようになったのは美香子さんでしょ?」
姉ちゃんが美香子さんの体を見て言う。確かに、バンソコウや包帯だらけだ。
「そうだけど、由香子はもっと苦しんでたと思う。」
「出てきて大丈夫なんですか?あのクソジジイになんかされませんか?」
「大丈夫、でもあんたのスマホ、番号わかっちゃってるからねー。」
「あ、やば。」
「この際、ケータイも新しいの買ってあげる。」
「そんなにお金あるんですか?」
そうだ。美香子さんはクソジジィの元にいたんだ。金なんてあるのか?
「事故を起こした相手から損害賠償が払われるでしょ?あれを使ったり、私もそこそこお金を貯めてたから買えるよ。」
「「「あー。」」」
3人同時の納得に美香子さんは「さすが兄弟」と爆笑していた。
「名前教えてよ。あんたとかじゃ嫌でしょ。」
「長男の真琴です。」
「真琴と双子の美琴です。」
「次男の蒼汰です。」
「双子とか面白いね。しかも一卵性双生児か。興味がある。あと、蒼汰。あんた頭はいいよね。そっちも興味があるな。」
謎の興味を持つ美香子さんに笑ってしまった。普通に暮らせて、普通に笑える。これが俺の望んでいた暮らしかもしれない。母さん、今まで苦労をかけてごめん。今まで育ててくれてありがとう。今まで愛してくれてありがとう。
ー次の日ー
「あれ、蒼汰って中学3年生なの!?待って待って、進路は?」
「あ、心配しなくても大丈夫です。兄ちゃんと姉ちゃんと同じ高校行くので。」
「そっか…行ってらっしゃい。」
行ってらっしゃい、普通の言葉だ。でも、それをかけてくれることが嬉しかった。もうすぐ高校生、ドキドキとワクワクが止まらない高校生になりそう。母さん、天国で見ててね。
長くなってしまいましたけど、家族編終わりです。
言葉遣いが荒くなる一面もありましたが、お母さんが大好きと伝わればなと思っています。
由香子(ゆかこ)は主人公のお母さん。由香子の妹が美香子(みかこ)でした。
元父親の謎も物語の中で解き明かしていきたいと思います!
それではまた。
思わぬ不意打ち #4
主人公は岸部蒼汰(きしべそうた)。蒼汰の好きな人、根崎鈴(ねざきりん)。蒼汰と鈴の友達、中田悠真(なかたゆうま)。先日ぶつかってしまった先輩、指原華乃(さしはらかの)。蒼汰の双子の兄、真琴(まこと)と姉の美琴(みこと)。
いい感じに進んでるのでは…?
ー学校ー
門を通過して歩いていたら、後ろから根崎が声をかけてきた
「あ、蒼汰くん。昨日はごめんね。先生から伝言聞いた?」
「ああ、聞いたよ。元々体調悪かったって。それでコケたのに笑ってごめん。」
「全然平気!あそこで笑ってもらわないと、恥ずかしさで死ねた!」
笑いながら言う根崎を見て、少し安心した。だが、異変に気づいた。
「根崎、寒いのか?手がすっごい震えてるぞ?」
「え、あー、全然平気!少し寒いくらい、かな?あはは…」
見られたくないのか、手を後ろに隠した。それを見て放っとけず、自分の来ていたパーカーを脱いで根崎の目の前に差し出した。
「来ていいよ。俺ので申し訳ないけど。」
「え、いいよ。大丈夫!蒼汰くんが寒くなるよ!」
「着込んでるから平気だよ、ほら。」
パーカーをズイッと目の前に差し出した。大胆か?きもいか?後々になって後悔するパターンかも…
「…じゃあ、お言葉に甘えて借ります。」
俺が出していたパーカーに手を伸ばし、ブレザーの上から着た。うわっ…ブカブカで可愛い。これは貸してよかった。後悔なんかしないわ。
「蒼汰くん感謝です。洗って返すね。申し訳ない…」
「全然、そんなものでも良かったら使って。」
ー教室ー
「そーうーた!見たぞ!鈴が着てるパーカーお前のだろ!」
「そーなんだよ、そうなんだよ!
でもよくよく考えたら、あれは無理やり貸したんだよな?え、もしかして断りきれなくて?
「はぁー…」
「溜め息つくとね、幸せ逃げちゃうよ?」
「うわっ、根崎か。急に驚かすなよ。」
「人を化け物みたいに、もうとっくにHR終わってるけど?」
「あ、本当だ。気づかなかった。」
てか、まだパーカー着てるのか。可愛すぎな。
「悩んでることは全部吐き出しちゃえ。聞いてあげるよ。」
「じゃあ俺も。」
途中参加の中田も聞いてくれるらしい。ま、言わないけどな。俺が立ち上がろうとしたら、腕を根崎が掴んだ。
「信用できない?」
その上目遣い結構くる…なあ、もしかしてわざと?ねえ、わざと?
「そういう訳じゃないよ、俺の悩みはちょっと特殊なんだ。」
「そんなに特殊なものを一人で抱え込むのが間違ってる。」
「あのな、根崎。俺は大丈夫だよ?」
「無理なときほど…大丈夫って言って誤魔化すんだよ?」
「本当に大丈夫だよ、ありがとう。」
お人好しすぎるんだよ、根崎。一日中何回このやり取りを行ったか…嬉しいけど
今日は一日中根崎が心配してくれて嬉しかったDAY!君のことで悩んでるんだけどね?でも、パーカー姿の根崎可愛かったなー…もういっそ、ずっと貸していたい気持ちになった。ちょっと勇気を出せた一日だったな。
皆さんあけましておめでとうございます!今年も何とぞよろしくおねがいします!
新年早々投稿させてもらいました。それではまた~皆さん良いお年を!
※マインはラ◯ンだと思っていただければ幸いです。
新たな進展!? #5
前回、主人公の蒼汰(そうた)が好きな人、鈴(りん)に勇気を出してパーカーを貸しました。
今日はどんな一日になるのか楽しみですね。
りん[蒼汰くん!今日はパーカーありがとう!]
蒼汰[全然平気ー、ちょっとサイズデカかったよな?笑]
りん[女子の中ではブカブカパーカー流行ってるからセーフ👍]
蒼汰[そっかー]
昨日、俺と根崎がしたマインの内容だ。名前が平仮名にしてるのがまた可愛い。しかもお礼してくれたのが嬉しかった。もう好きすぎて。
「蒼汰くん?蒼汰くん!……蒼汰!!」
「うわっ、え?呼んだ?」
マインの内容見返してて、呼ばれた声が聞こえなかった。てか、呼び捨てで…
「いっぱい呼んだよ?でも、呼び捨てで反応したのは面白かった。」
「なんで くん をつけるんだよ。蒼汰でいいよ?」
「じゃあ、私のことも鈴って呼んでいいよ?」
「鈴」
鈴の方を見ると満面の笑顔だった。嬉しかったのか、「蒼汰!」と元気よく名前を呼んでくれたので、つい笑ってしまう。
「それで?パーカー返しに来たの?」
「あ、そうだ。ありがとうございました。」
「やけに礼儀正しいな。あれ?これお菓子?」
袋の中を覗くとパーカーとお菓子の詰め合わせが入っていた。
「駄菓子屋さんで300円分!」
「500円は欲しかったなー。」
そんなたわいもない話をしていると、深刻そうな顔で中田が話しかけてきた。
「蒼汰…鈴…」
「「え?」」
「しょ、紹介したい人でもないけど紹介しなければいけないような気がする人がいます…」
「ごめん、何言ってるか全くわからないのは俺だけか?」
「ちょっと私も理解できなかったかな…」
「俺の幼馴染の」
「鈴木 紗彩(すずき さあや)デース!悠真がいつも、いやーそんなたってないか?いやでも?」
「紗彩、落ち着け。」
「だって、私だけ出遅れてるんだもん!焦るし!困るし!」
「だからこうやって紹介してやってんだろ、こっちが岸部 蒼汰、こっちが根崎 鈴。」
「あ、私このクラスなんだけど風引いちゃってー、休んでたんだ!良かったら仲良くしてほしいな!」
「あ、よろしくね。紗彩ちゃん。」
「よろしく、佐藤。」
「もー、2人とも紗彩でいいって!…ん?蒼汰ってイケメンだね!」
『バシッ』
「痛ったー!なんで悠真叩くの!」
「あのな?ちょっとはそのイケメン好き直せよ!」
「うるさいっ!悠真ひどい!きらい!」
2人の喧嘩が起きて数秒、嫌いの一言で中田が少し悲しそうな顔をしたのは気のせいだろうか…?
「えっと、紗彩…落ち着いて一緒に話さない?」
「え!いいの!やったー!」
鈴が場の空気を読み、紗彩を廊下に連れて行った。それと同時に中田が肩の力を抜いた。
「はぁー…ごめんな、急に。」
「いいよ、それよりさ。中田は紗彩のこと好きなんだねー。」
おちょくるように言ったら中田は顔を真赤にした。
「応援してるよ、てかお互い頑張ろう。」
「ああ、そうだな。」
今日は友だち(?)が一人増えた。しかも根崎から鈴呼びになった。最近いいことありすぎて人生の半分の運を使っている気がする。今度神社に行ってお参りに行こう。行かなきゃ良いこと起きないような気がしてきた。
今回も新キャラ登場!佐藤 紗綾(さとう さあや)です。少しチャラチャラしている子ですね…
でも、すごく優しい子なので成長を見届けてほしいと思います!それではまた~
※マインはラ◯ンだと思っていただければ幸いです。