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目次
怠慢も自己満も中華街で売れば中華まんになるから 兵庫編
中華料理が来日して400年、現在日本でブームが発生。
有名どころでいうと神戸と横浜(あと長崎)しかなかった中華街は全国展開された。
南京中華街、某ボカロ曲の神戸中央区元町駅前とはここのことだ。
横浜の中華街と比べると小さいが異国情緒溢れるれっきとした中華街だ。
そんな中華街に1人の料理人見習いが来ていた。
見習いは故郷の中華街復興のため、修行の地にまず兵庫は南京町を選んだようだ。
と、背中に負っていた大きな籠を降ろし、托鉢のように地面に置いた。
籠は人一人入る大きさをしていたが、そこから魔法の様に道具やら材料やらを出していく。
そして中華饅頭を作っていくのだ。
大きな蒸籠と籠を机代わりに次々と調理していく。
手際と異様な作業工程に人集りができ、彼女は群衆の前の人達に二束三文で中華まんを売る。
見習いの分際で高い金は取れないという信念からだろう。
蒸籠の中の中華まんが残り1つになったとき、群衆の中で小さな姿を捉えた。
大人が犇めく中、消え入りそうになるその姿は上背がないからだけではないような気がしてきた。
見習いはその小さな観客に最後の中華まんを渡し、何かを耳打ちした。
夕間暮、メモリアルパークに大きな荷物を置く人影、見習いに近付く少年がいた。
「死ぬ前に借りを残したくないんだ」
少年は財布を取り出した。
「どうして死のうと思ったの?」
見習いは本当に全く解らないといった様子だった。
代金は受け取ろうとしなかった。
少年は関東から引っ越し、兵庫の雰囲気に溶け込めず虐められていることを不思議な位赤裸々に話した。
見習いは話を聞いても解らない様子を変えなかったので少年をより苛つかせた。
「人生詰んでんだよ…」
人生という言葉を聞いたとき見習いの目の色が変わった。
「私は人生が解らない。君位の年頃に人生を悟って何が見えるの?私は考えたことないから解らない。それでも分かる。君の人生論は早計で自己満だ。でもここは中華街。我慢も自己満もここだと中華まんになる」
蒸籠を開けると中華まんが湯気を立てていた。
少年に差し出すと喜んで食べた。
そして海の方へ歩いていくので制止した。
代金を払えということらしい。
少年は見習いとの会話を忘れないだろう。
しかし見習いは少年のことを5分で忘れた。
自分の何かを思い出して馬鹿らしかったからだ。
見習いの怠慢だった。
入水、ニュース、上の空
Wrist Cat
絵描きは新聞を置いた。
少年の入水自殺のニュースを議題に専門家の討論は近年の自殺傾向がどうとか、少子化がああでヤングケアラーがこうで、だからSDGsを…と続き、最近食べたドーナツの話でもしていろと絵描きに呆れられた。
いや違うでしょ。
人生の定価を入水で決める、最近じゃそう聞かないでしょ。
久々に芸術的な死に方を見た。
頭に売れないのつく絵描きは暇そうにソファに座り、新聞を1面から見出した。
彼もまた自殺願望者だった。
この前漢検2級に合格、遺書を正しく書く準備を整えたところだった。
絵描きは副業をしていた。
売れ行き的にはそちらが本業なのだが。
不定期に開ける店のシャッターを上げる。
すぐに客が来た。
「いらっしゃい」
来客には無数の傷があった。
その傷は普通の人は見ることができない。
聞こえ良く言うなら心の傷だ。
傷を縫うように、脈が全身を巡るように赤い糸が来客の全身に絡まって見えた。
これも普通の人なら見ることはできない、が絵描きは違った。
来客の傷が古いことを確かめると、仕事道具をバックヤードから持ってきた。
ドラゴン柄の裁縫ケースである。
それを見た来客の苦い顔を見た絵描きの表情はとても満足気だった。
「どういった感じに致しましょう?」
掠れて上手く出ない絵描きの声は普段人と禄に話していないことを物語っていた。
来客は無言で紙を渡した。
猫のシンプルなイラストだった。
絵描きもまた無言で作業に取り掛かった。
来客の手首に縫い針で猫を模写していく。
裁縫の様にも刺青を掘っている様にも見えた。
猫のイラストは来客がお絵描きをしていた頃のサインだということを、今朝の新聞の様なしょうもない話から聞き出した。
作業中、新しい客が入ってきたが、その客から見える糸の絡まり具合は非常に面白味がなかった。。
誰かの真似をする訳もなく誰かの真似になったのだろう。
すぐに追い返した。
猫を縫い終えた。
来客は溜息を付き、まじまじと眺め、何か達成感に溢れていた。
代金を伝えると少し面食らって財布の中を掻き交ぜ、何とか払うことができた。
そうだな。夢を叶える為には金がいる。
次の日絵描きは新聞の記事を見て久々に声を出して笑った。
昨日の来客の遺影が載っていて、また専門家達が討論していたのは言うまでもない。
次の面にはこの夏お勧めのドーナツが紹介されていたのだ。
卵、牛乳、死力粉
相対的に、早退手厳しい! 天国編
半年振りにこの日記帳を開きました。
半年前の僕の日記を見ることができません。
何を境にか、僕は全てが上手くいかなくなったのです。
半年前の自分に今の自分を見られたくないし、今の自分は半年前の自分のことを思い出したくないのです。
人間不信をテーマにしたアニメにとても共感してしまいました。
まず誰に謝れば良いでしょうか?
その次に誰に謝れば良いでしょうか?
最近何も無いのに、ごめんなさいと言ってばかりな気がします。
特に何てこともないときにも、ありがとうと言っていた頃に戻りたい。
「こんな遅くに何してるんだ?」
扉を半分開け、父が覗いていた。
電気が点けられる。
日記帳を引き出しに隠そうと急ぐと、余計に怪しまれてしまった。
父はその日記帳を取り上げ、有無を言わせないまま読み始めた。
それも最初、僕がまともだった頃の記録から読み始めたので、今この瞬間だけ時間を繰り上げられないかと本気で手段を考えた。
日記帳を大袈裟に閉じるのが聞こえた。
怒っているだろう。
しかし父の顔は失望が溢れていた。
一番嫌な表情だった。
僕は必死に父に謝った。
次の日の朝食の卓は、僕のことについて主に両親が話していた。
朝飯は嫌いな食パンだったし、全く喉を通らなかった。
「お前より辛い奴は沢山いる。そいつらに申し訳なくならないのか?」
なってるよ。だからずっと謝ってるんだよ。
「もういい」
父は椅子を引き、どこかに電話した。
僕はそれを横目に自室に籠もる。
あ、今日学校あるじゃん…。
支度をしなくては。
親と顔を合わせたくなかったので時間ギリギリになってから部屋を出る。
玄関には余所行きの格好をした父がいた。
「行ってきます」
自分でも聞き取れない細い声で、素早く家を出る。
「まあ、待ってくれ」
父が呼び止める。
「学校には連絡しておいた。ちょっと用事に付き合ってくれ」
学校を休めるのは好都合だったし、何より父に逆らうのが怖かったのでついていくことにした。
交差点を今まで曲がったことのない方に曲がり、着いたところは展望台だった。
受付の人にハーネスを付けてもらい、展望台…展望穴と言った方が正しいかもしれない。を覗き込んだ。
「ほら見ろ。地上ではこんなに辛い人がいるんだ。お前はあれだろ?羽がちょっと不揃いなだけじゃないか」
天使の少年は飽きることなく地上の人間を観察していた。
相対、早退、絶対的
なりきり系作家謎に理系 1巻
やあ!私はなろう系作家!
異世界転生が流行り始めてから作家を志した旬に遅れた作家だ。
遅すぎた天才と呼んでくれ。
何しろ大学は理系専攻だったしね。
でもまあ私クラスの理系になると文系にも通ずる。
どの職業からも作家は目指せるってよく聞くしね。
いずれ芥川賞、直木賞の受賞者として絨毯の上に並び、自分の小説を手に抱え、マスメディアで報道されるだろう。
遅咲きの天才作家なんて見出しが付いたら良い。
どの年齢からでも文豪になれる!こっちの方がいいな。
私の後の年の受賞者がインタビューで私の小説を読んで再起、執筆しましたなんて言葉も聞けそうだ。
流行りに出遅れた感はあるが悪いことばかりじゃない。
下積み期間が短い訳だ。
亀の甲より年の功と言うだろう。
齢を取れば、それ相応の文才を発揮できるものだ。
私の原稿はこの前見てもらった編集社からは酷評だったが、それは私の小説が実験的だったから。
私から広まる小説の新形態は時代を創るだろう。
私は決意を漲らせ、編集社の思い扉を開けた。
「どうでしょう?私の考えた新形小説、"なりきり系小説"は?」
「なろう系小説との相違点は?」
「読み"きり"の"なろ"う系という点です」
「確かになろう系始めライトノベルはシリーズが殆どですが、それは読者の需要と作者の供給が釣り合うからです」
「読者様の需要に間に合うよう、納得頂けるクオリティーを高頻度で実現してみせましょう!私が作家になったからには私本人の利益はあまり問わず、純粋に光る作品を追い求めていくつもりです」
「確かにどの作品からも影響されていないように見受けられますね。逆を言えば実験的すぎるのではないかと」
「いや、そこからは我々編集部の腕の見せ所じゃないかな?理系作家さん、今日は忙しい中来てくれてありがとう。そうだね、中々光る物を感じたよ。我々の中で検討するが、前向きに受け取ってほしい」
「ありがとうございます!」
「彼、デビューさせるんですか?」
「うーん、今日来るもう1人の作家の卵の原稿を読むまで言い切れないけど…センスはあったね」
「その作家の卵さん、もう到着してますよ」
結論から言うと彼は採用されなかった。
遅すぎた天才は強ち間違っていなかった。
彼は遅刻したのだ。
彼の小説は他の新米作家とは一線を画すセンスがあったが、最後の信用勝負で負けたのだ。
押しドア、ビル風、作家ごっこ
或る老人の持論
私はよくサスペンス映画を観る。
映画というのはジャンルに関わらず、エンドロールが長い。
私は最後まで観る派だ。
それが余韻に浸れる時間だからだ。
退屈な小説を読む前の注意書きも長くしよう。
そこそこ忙しかった日常の余韻に浸れるように
--- この短編集に含まれる要素 ---
自殺や虐めを示唆する表現
自殺や虐めを直喩する表現
人が死ぬストーリー
作者の病みが疑われるストーリー
病みアピに対する苦言
説明されない専門用語
説明されない世界観
説明されないキャラクター
自分の小説ネタ
実在する地名を使った悪意とも汲み取れる表現
深読みすぎる考察の禁止
五時脱字
定まっていないキャラクター像
名前の出て来ない登場人物
シリーズの第一話っぽいけど続きを書くつもりのない小説達
小説ごとに変えている作者名
適当なタイトル
作者なりの諷刺
一次創作という名のオマージュ
深い意味のないシリーズ順
再現できていない方言
統一されない文体
校正していない文章
注意タグの付け忘れ
徐々に現れるネタ切れ感
実際にある地名に関して、作者の知識不足
実際にある職業に関して、作者の知識不足
その他諸々
以上のことが許容できる方はごゆっくり堪能下さい。
或る作家のメモ書き
登場人物 巨人←森に住んでる
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川を挟む
↓
街(西洋風)
街の住人 教信者、サラリーマン、首長
↳巨人弾圧派
街は煉瓦造り、城壁の名残
モデルはこの前行ったヨハネスブルグ
或るサラリーマンの頭痛
最近頭が痛い。
頭が痛いのはここ数年ずっとなんだが。
今日は上から視線を感じる気がする。
差し込む日の光もない曇り空なんだが、項辺りにチリチリと視線が集まる感覚?
かろうじて見える雲の切れ目、あの丸く空いたところから日光が差し込んでいるのか?
それとも?
或る運び屋の待ち合わせ
中華街、裏通り
シャッターが閉まる店と店の間を男は鞄を抱えて進んで行く。
突き当りに取引相手が居た。
「待っていたぜ。お前がブツを持ってきているか、始発の列車の中から見させてもらったぜ」
運び屋を尾行してきた高校生探偵がいるとかいないとか。
或る犯罪者の計画
海を渡った先の国に人生の最期を彩ってくれる店があるらしい。
自分が今どこにいるのか分からない。
どっちの海を渡れば良いのだろう?
今朝歩いた朝市で聞いたうわさ話が耳に残っている。
海を渡った先にはライオンがいるらしい。
そうだな。
今日は砂浜で戯れるライオンの夢を見よう。