編集者:角砂糖の角
春夏秋冬、様々な事がある。
春。一歩踏み出すスタート地点
夏。青春
秋。どこかさみしくなってくるころ
冬。大切な人に会いたくなる
この4つがあるのは日本だけ。
その中での物語、見ていきませんか?
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目次
桜の砂時計
昔からある喫茶店は、いつもとは違い静かだった。
この時から違和感を感じていたのかもしれない。
「あ。佳菜!」
私を呼ぶ声。**親友だった**有香だ。
私『有香、、、、、、、』
何もなかったようにヘラヘラと笑う彼女を見て、
正直正気でいられるわけがない
「もー。待ったんだよ?ったくぅ」
私『ぇ、ごめん』
待ち合わせ時間30分前だった。
「マスター。コーヒーちょうだい」
私『私はカフェラテで。」
やっぱ昔から変わらない。有香は。
彼女は何か変わっただろうか。
「いやー。しかし、子供がいると遊びに行けないんだよーこれが」
私『あっ、そうだったね』
「いいなー**自由に遊びに行けるのがうらやましいわw**」
その言葉。どれだけ聞いたか。
私『まあ。会社が忙しくて全然いけないけどね(笑)』
「でもいいよー。一人暮らしなんでしょー?」
時々無神経なことを言ってくる。
私『まぁ。あなたと私は違うから』
「え、あ、まぁそうだけど?」
私『もう連絡してこないでくれる?』
「え!?なんで!私たちの仲じゃん!」
私『反省の色、見えないな』
「ごめんごめんごめん!」
私『もっかいだけ、きちんと向き合ってみるよ』
「良かったー。じゃぁ早速だけど10万貸して」
私『はあ?』
「遊びに行ったらなくなっちゃって』
いやいやなんだよこいつ。
遊びに行けないかわいそうな私ッって悲劇のヒロイン感
出してたのに。あ、早速これっすか。もう無理かも
私『ごめん、無理』
「ええええ!?」
店を出た後、しばらく着信音が鳴り響いたが、
心の中はすっきりとしていた。
同じ名前の人、すいません!
こういうのを書いたことないので、苦手ですが
優しい目で見てー
青いサイダーと、言えなかった三秒 悠介編
放課後の理科準備室。窓からは、入道雲と、野球部の掛け声が混じった熱風が吹き込んでいた。
悠介(ゆうすけ)は、誰もいないのをいいことに、実験用の丸底フラスコを眺めていた。そこに、
バタバタと足音を立てて陽葵(ひまり)が飛び込んでくる。
陽葵「ちょっと悠介! 掃除サボってこんなとこにいたの?」
悠介「サボりじゃない。……思考の整理だ」
陽葵「はいはい、カッコつけない。ほら、これ。差し入れ」
陽葵が差し出したのは、校門前の商店で買ったであろう、キンキンに冷えたラムネ瓶だった。
二人は窓際に腰掛け、ラムネを開ける。パチリ、とビー玉が落ちる心地よい音が室内に響いた。
陽葵「ねえ、私たちもさ、もうすぐ引退だね」
悠介「……ああ。この夏が終わったら、受験モードか」
陽葵「悠介は東京の大学、行くんでしょ? 先生が言ってたよ。……遠いね」
陽葵はラムネの瓶を頬に押し当てて、視線を遠くのグラウンドに向けた。
悠介「陽葵はどうすんだよ。地元の短大って言ってたけど」
陽葵「私は、この町が好きだし。……でも、誰かさんがいなくなったら、ちょっと退屈かもね」
陽葵は冗談めかして笑ったが、その瞳は笑っていなかった。悠介の心臓が、ラムネの炭酸みたいにチリチリと音を立てる。
今、この瞬間に言わなければいけない言葉がある。 悠介は喉まで出かかったその言葉を、強引にサイダーと一緒に飲み込んだ。
悠介「退屈なら、たまには東京まで遊びに来ればいいだろ」
陽葵「……それ、本気で言ってる?」
陽葵が真っ直ぐに悠介を見た。 一瞬、世界から音が消えた。蝉の声も、野球部の声も、遠くの電車の音も。
陽葵「……なーんてね! 交通費高いんだから、悠介が稼いで呼びなさいよ」
陽葵はそう言って、悠介の肩をポンと叩いた。
悠介「ああ。……そうだな。わかったよ」
結局、核心には触れないまま、二人のボトルは空になった。 沈んだビー玉が、カランと虚しい音を立てる。
陽葵「行こ。部活、最後のアイス買い出しに行かなきゃ」
悠介「……陽葵」
陽葵「ん?」
悠介「……いや、なんでもない。行こうぜ」
陽葵「なによそれ。変なの!」
二人は準備室を出て、夕暮れに染まり始めた廊下を歩き出す。 影が長く伸びて、二人の距離を無理やり繋いでいるように見えた。
本当は、あの沈黙の三秒間で「好きだ」と言いたかった。 けれど、言わなかったからこそ、この夏は壊れずに、永遠に心のどこかに保存されるような気もしていた。
背後で、風が理科室のカーテンを大きく揺らした。 青春とは、炭酸が抜ける前の一瞬の輝きに、名前をつけられないまま終わることなのかもしれない。
青いサイダーと、待っていた三秒 陽葵編
放課後の廊下を、私はわざと大きな足音を立てて歩いていた。
行き先は分かっている。あいつが「思考の整理」なんて気取って逃げ込む、理科準備室だ。
陽葵「ちょっと悠介! 掃除サボってこんなとこにいたの?」
あえてガサツな声を出すのは、私の心臓の音を隠すため。
悠介は、フラスコ越しに窓の外を眺めて、少しだけバツが悪そうに振り向いた。
悠介「サボりじゃない。……思考の整理だ」
陽葵「はいはい、カッコつけない。ほら、これ。差し入れ」
私は、手に持っていたラムネの瓶を一つ、あいつに押し付けた。
本当は、手が震えて落としそうだった。
窓際に座って、二人でラムネを開ける。
悠介の横顔は、教室で見るときよりもずっと大人びて見えて、私は急に喉が渇いた。
陽葵「ねえ、私たちもさ、もうすぐ引退だね」
悠介「……ああ。この夏が終わったら、受験モードか」
陽葵「悠介は東京の大学、行くんでしょ? 先生が言ってたよ。……遠いね」
「遠いね」と言ったのは、距離のことだけじゃない。
あいつの目が、もうここにはない未来を見ているのが分かったから。
私は冷えた瓶を頬に当てて、無理やり熱を冷まそうとした。
陽葵「私は、この町が好きだし。……でも、誰かさんがいなくなったら、ちょっと退屈かもね」
(今のは、かなり攻めたはず) 私の精一杯の告白だった。
冗談のふりをして、心の中でカウントダウンを始める。 1、2……。
悠介の喉が動いた。何かを言おうとして、迷って、そして。
悠介「退屈なら、たまには東京まで遊びに来ればいいだろ」
……バカ。 私が欲しいのは、そんな「招待状」じゃない。
陽葵「……それ、本気で言ってる?」
私は、逃げ場を失くすつもりで悠介の目を覗き込んだ。
三秒。 たった三秒の沈黙が、永遠みたいに長く感じられた。
悠介の瞳が揺れて、何かを言いかけて……結局、彼は視線を逸らした。
(ああ、言わないんだ。この人は)
陽葵「……なーんてね! 交通費高いんだから、悠介が稼いで呼びなさいよ」
胸の奥がギュッと縮まったけれど、私は最高の笑顔で、あいつの肩を叩いた。
これが、私たちが今日まで築いてきた「親友」という名の防波堤だ。
ラムネはもう、空っぽになっていた。 炭酸の抜けた甘い液体の味が、口の中に残っている。
陽葵「行こ。部活、最後のアイス買い出しに行かなきゃ」
悠介「……陽葵」
心臓が跳ねた。振り向くと、悠介がまだ何かを言いたそうに私を見ていた。
陽葵「ん?」
悠介「……いや、なんでもない。行こうぜ」
陽葵「なによそれ。変なの!」
私は先に立って歩き出した。 振り返ったら、泣きそうな顔をしているのがバレてしまうから。
夕暮れの廊下。伸びた二人の影が、一瞬だけ重なって、また離れていく。
「好き」の一言を飲み込んでしまったあいつを、嫌いになれたら楽だったのに。
私は、カランと鳴った瓶の中のビー玉みたいに、
一生取り出せない思いを胸に閉じ込めて、夏の出口へと足を進めた。
キンモクセイと、消えない下書き
十月。大学の図書館のテラス席には、甘ったるいキンモクセイの香りが漂っていた。 湊(みなと)は、ノートPCの画面に映る「新人賞応募原稿」という文字を見つめて、溜息をついた。
そこへ、一足ごとにブーツの音を響かせて、ゼミ仲間の結衣(ゆい)がやってくる。
結衣「湊、またここにいた。……何、まだその小説直してるの?」
湊「……まあな。ラストの一行が決まらないんだ」
結衣「ふーん。相変わらず真面目だねえ。私なんて、昨日書き上げた短編、もうSNSに上げちゃったよ」
結衣は湊の向かいに座り、キャラメルマキアートを一口飲んだ。
二人は文芸サークルに所属している。 湊は、一文字一文字を削り出すように書く「職人気質」。 結衣は、時代の空気を読み、軽やかな言葉でファンを増やす「天才肌」。
湊「お前の新作、読んだよ。……相変わらず、今っぽくて面白いな」
結衣「あ、読んでくれたんだ。ありがと。でも、湊の顔、全然褒めてないよね?」
湊「……そんなことない。ただ、俺には一生書けない種類のものだと思っただけだ」
湊は、自分のPCの画面をパタンと閉じた。 結衣の「面白い」は、スマホの画面をスクロールする指を止めさせる強さがある。 けれど、湊が目指しているのは、十年後の誰かの本棚に残っているような、重い言葉だった。
結衣「湊はさ、私のことバカにしてるでしょ。使い捨ての言葉ばっかり書いてるって」
湊「……してないよ。むしろ、羨ましいと思ってる」
結衣「嘘。……湊の書く文章は、冷たい秋の朝の匂いがする。私はそれが怖いの。自分には、そんなに深いところまで潜る勇気がないから」
結衣が伏せた睫毛(まつげ)が、秋の日差しに透けて揺れた。 いつも自信満々に見える彼女の指先が、カップの縁を不安げになぞっている。
湊「……深いところは、暗くて苦しいだけだぞ」
結衣「それでも。……私は湊に、私の書いたものを『羨ましい』なんて言ってほしくなかった。一番のライバルだと思ってたのに」
沈黙が流れる。 風が吹き抜け、赤く色づいた桜の葉がテーブルの上に落ちた。 夏の頃の突き抜けるような青空とは違う、少し寂しくて、けれどどこまでも高い空。
湊「……結衣。ラストの一行、お前に読んでほしい」
結衣「え、いいの? 湊、人に見せるの極端に嫌がるのに」
湊「お前に『浅い』って言われたら、また書き直すよ。お前が一番、俺の足りないところを知ってる気がするから」
結衣「……ふふっ。厳しいよ、私は。キャラメルマキアートより甘くないからね」
結衣はそう言って、悪戯っぽく笑った。 二人はPCの画面を覗き込む。
友情でもなく、ただのライバルでもない。 秋の夜長を、互いの孤独をぶつけ合うことでしか埋められない二人がそこにいた。
湊「……どうだ?」
結衣「……最悪。これ、私が書きたかった一行だよ」
二人の影が、落ち葉の上に長く伸びていた。 キンモクセイの香りは、いつの間にか、少しだけ冷たくなった夜の匂いに変わっていた。
真夜中のコインランドリー
午前二時。住宅街の片隅にあるコインランドリーは、蛍光灯の青白い光で浮き島のように白んでいた。 タケルは、くたびれたスウェット姿で、大型乾燥機が回るのをぼんやりと眺めていた。
そこに、カランとドアが開く音がして、毛皮のコートを着た派手な女性、ルミが現れた。
ルミ「……あー、寒い。ねえお兄さん、ここ、暖房入ってないの?」
タケル「……あ、はい。乾燥機の排熱でなんとなく暖かいだけですよ」
ルミ「最悪。人生、乾燥機の熱頼みなんて」
ルミはドサリと、タケルの隣の椅子に座り、小さな紙袋からハイボールの缶を取り出した。
ルミ「(プシュッ)……飲む?」
タケル「いえ、僕は明日、朝一で面接なんで」
ルミ「面接! 若いねえ。何次面接?」
タケル「五次です。もう、何を話せばいいのか分からなくて。自分の人生、全部洗濯機で回して、真っ白にリセットできればいいのにって思ってるところです」
タケルが自嘲気味に笑うと、ルミは缶を口に運び、目を細めた。
ルミ「リセットなんて、しなくていいわよ。あんたのその、必死に悩んでる汚れこそが、味なんだから。私なんて、汚れすぎてて、もうどのコースでも落ちないわよ」
ルミはそう言って、高いヒールを脱ぎ捨て、乾燥機の中で踊るタケルのワイシャツを指差した。
タケル「……ルミさんは、何をしにここへ?」
ルミ「私はね、寂しさを乾かしに来たの。家の中が、あんまりにも湿っぽくて。ここに来れば、誰かの洗濯物が回ってる音がして、なんとなく生きてる感じがするじゃない?」
乾燥機が「ピーッ」と終了を告げた。 タケルが立ち上がり、ホカホカになったワイシャツを取り出す。
タケル「……これ、あったかいですよ。触ります?」
ルミ「あら、役得。……本当だ、生きてる匂いがする。洗剤の安っぽい匂いと、少しの焦げた感じ」
ルミはタケルのワイシャツを両手で挟み、一瞬だけ目を閉じた。
タケルがワイシャツを丁寧に畳み始めると、ルミはバッグからくしゃくしゃになった千円札を取り出した。
ルミ「ほら、これ。お守り。面接の帰りに、一番高い肉でも食べなさい」
タケル「え、そんなの受け取れませんよ!」
ルミ「いいのよ。これは『先行投資』。あんたが立派な社会人になったら、どっかのスナックで私を見つけて、倍にして返して」
ルミはそう言って、再びヒールを履き、窓の外の雪を眺めた。
タケル「……ありがとうございます。あの、頑張ってきます」
ルミ「ええ。行ってらっしゃい。ワイシャツ、シワにならないように持ち帰るのよ」
タケルがランドリーを出て、冷たい夜風に当たると、さっきまでの絶望が少しだけ軽くなっていた。 背後で、再び乾燥機が回り始める音が聞こえる。
雪の降る夜。 孤独を乾かし合うだけの関係が、明日を生きるための小さな熱を産んでいた。