ごく普通の生活を送る高校生、藍村 祐介 (あいむら ゆうすけ)は、雨の降る交差点にて、幽霊の少女と出会う。自身の姿が視える祐介に、少女は…………
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幽霊少女と雨の降る街 Ⅰ
雨が降っていた。なかなか泣き止まない天穹は雨雲で覆われており、青く晴れ渡ったいたはずの空はグレーで塗り潰されている。
「空、泣かないでよ」
少女が、そう言った。空に手を伸ばして、色褪せた空を撫でる様に。泣き続ける赤子をあやす様に。
四時間前から降り出した雨は止むことを知らず、延々とアスファルトを濡らし続ける。空に|蔓延《はびこ》る雨雲が、都市上空の|青《スカイブルー》のキャンバスを|灰色《グレー》一色に塗り潰していた。雨水が滴る配電線の下で、蛙が更に雨を乞う様にゲコゲコと鳴いている。
「…………また、雨か……」
通学途中、突如降り出した雨に折り畳み傘を差す。
ボタボタと鈍い音を響かせながら、雨粒が傘のビニルを叩く。ここ最近の天気は雨が続いており、青空を見たのは数週間前の事だ。果たして、何時になればこの雨は止むのか。そう考えることも億劫になるほどに、鳴り続ける雨音は煩い。異常気象も、続けば『異常』ではなくなるのだから、不思議だ。
そんな事を考えながら、緑色が明滅する信号を見ていた。
「……帰ったら何しよう……」
僕のような高校生は、帰宅したところでテレビや漫画、ゲームに時間を使い果たすのが落ちなのに、敢えて『何をするか』を口にすることで、変に脳に染み付いた孤独感や凡庸感をなくそうとする。無意識のうちに、そうして、有って無いようなちっぽけなプライドや|自尊心《エゴ》を守ろうと必死になっているのかもしれない。
そう考えているうちに、赤信号が青信号に切り替わり、人群が一斉にゾロゾロと横断歩道を渡り始めた。水が跳ね、ズボンの裾に水が染みていく。
「これだから雨は嫌いなんだ………」
嫌いな天気で溜まった鬱憤を晴らそうと、恨みを込めてそう呟いた。
刹那、時が止まった様な感覚に襲われた。人々が流れる中に、それらの足元に見つけた。目の錯覚と疑うほどの衝撃を。そして、確固たる『異質』を。
「………なんだ……あれ……」
其処には、躍る水飛沫があった。
タンタン、と、リズミカルに跳ねる水溜りが、人の行き交う喧騒の中に、何故か、静かに響き渡った。
こんにちは、櫻樹黎螺と申します。私が前回投稿した「死神の住む街」という小説があるのですが、その後書きにて、「なんか続きやるかもー」みたいな適当なこと言ってたと思います。
はい。続きません。
待ってください、銃口を僕の額に突きつける前に少し話を聞いていただけれb(銃声)
ふぅ……致命傷で済んだぜ。
まぁ、茶番はさて置き。先程申した通り、『死神の住む街』としての続きは出ませんが、設定や世界観を今作に引き継いで新たに『幽霊少女と雨の降る街』として書くこととしました。理由としては、前作と今作を並行して書いているうちに、「あれ……?これ融合したら面白いんじゃね……?」と訳の分からない思考に至ったのが原因です。なので今後は『幽霊少女と雨の降る街』が続きます。ご了承ください。このままべらべらと喋っていても、あとがきが締まらないので、できれば先程から僕の額に突き刺さっている弾丸を取っていただけると助かります。