音の国の幹部、こえの婚約者に選ばれていた、みつば。
しかし、新たにやってきた2人の姉妹に陥れられ、音の国を追放されてしまう。
それにブチギレたみつばは、故郷の仲間達と復讐を決意する。
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目次
壱
私はみつば。
時の国に暮らしていた、17歳。
2年前に音の国で、女性幹部として働き始めたんだ。
その頑張りが認められ、幹部のこえくんと婚約が決まりました!
こえくんに相応しい妻になれるように、これからももっと頑張るぞ!
と、思っていたんですが・・・
私「あれ?ゆいちゃん、どうしたの?」
私が廊下を歩いていると、幹部のすちくんの妹、ゆいちゃんがうずくまっていた。
ゆい「みつば姉さん!実は、足が痛くて・・・」
私「ええ!?大丈夫?歩ける?」
ゆい「多分無理・・・。肩貸してください」
私「いいよ。ほら、つかまって___」
私がゆいちゃんに手を差し出したタイミングで、私が嫌いな声が聞こえてきた。
?「あーーーっ!みつばがゆいに怪我させたーーー!!」
私「は!?」
大声を出したのは、|皇賀愛《こうがあい》。私は愛が苦手だった。1年前に音の国にやってきた愛とその姉は、何故か私を毛嫌いしていて、いつも私を目の敵にしてくる。今までも陰湿な嫌がらせをされていたので、正直言って困っていたんです。
愛が大声をあげたので、他の幹部達も集まってきた。みんな私がゆいちゃんに怪我をさせたと思っているようで、説明しようがない。それでも否定し続けた結果、とうとう・・・
ないこ「もういい!こえとの婚約を破棄して、音の国から出ていけ!」
その瞬間、私は頭が真っ白になった。
ゆい「そんな・・・!お願い、いなくならないで!」
LAN「近寄っちゃダメ!また怪我するよ!」
愛のせいで、私がこれまで築き上げてきた2年間が、全て無駄になってしまった。
私「そこまで信じてくれないのね」
もうどうなったって知らないから!
私「だったらお望み通り、出ていかせてもらいます!」
私は部屋の荷物を全部まとめて、即出て行った。チラリと後ろを見ると、愛とその姉、舞が不気味に笑っていた。
その時、私はあの2人の罠だと悟った。
私の行く先はただ一つ。時の国!
弐
私は音の国を飛び出し、時の国に戻った。
私「お兄ちゃん!お姉ちゃん!ひなみ!ただいま!」
私は時の国の幹部である、かなめお兄ちゃんとうららお姉ちゃんの妹だ。王城には、お兄ちゃん、お姉ちゃん、妹のひなみがいた。
かなめ「え、みつば!?帰ってきたの!?」
うらら「おかえり〜!どうしたのよ、急に戻ってくるなんて」
ひなみ「みつ姉〜!おかえりなさーい!」
かなめお兄ちゃん、うららお姉ちゃん、ひなみは驚いていたけど、喜んでくれた。
私「しの達は?」
かなめ「出かけてる。そろそろ帰ってくるよ」
実は、この国の幹部の中には私の親友もいる。
それが『しの』なんだ。
うるみや「ただいま〜って、みつばやん!」
しゃるろ「帰ってきたんだ!おかえりなさい!」
れむ「心配してたんだよ。元気そうでよかった」
私「うる兄!しゃる兄!れむくん!ただいま!」
幹部のうる兄、しゃる兄、れむくんも帰ってきた。
かなめ「うるみや、しゃる、れむ、おかえり。しのとアルケーは?みやび達もいないけど」
れむ「買い物行ったよ。城の備品が足りてないからって」
かなめ「そう」
私「お兄ちゃん、私の部屋まだあるよね?」
かなめ「うん。そのままにしてある」
私「部屋に荷物持って行く。しのが帰ってきたら言って」
かなめ「わかった。俺もいくつか持っていくね」
一方、音の国。
りうら&こた&すち**「「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」**
部屋で書類仕事をしていた幹部3人は、みつばがいなくなったことを聞いた途端ブチギレ!
りうら「え!?ちょっ、はあ!?ないちゃんマジで何やってんの!?」
こったろ「みつばがいなくなったら、仕事終わらないよ・・・!?」
すち「大体なんで追い出したの!?俺たちが仲良かったの知ってるよね!?」
ないこ「いやいや、みつばはすちの妹を怪我させたんだよ?なんで怒るのさ」
すち「そんなわけないでしょ!ゆいから連絡きてた!見てみたらびっくりしたよ。みつばは足が痛くて動けないゆいを、助けようとしてたんだよ!」
りうら「言っておくけど、ゆいちゃんは嘘つかないよ。それにこれまでの2年間で、みつばちゃんがどんな子か見てきたよね!?」
こったろ「勘違いした挙句、無実の罪でみつばを追放するなんて・・・!みつばはすごく優秀なんだよ!これまで誰が仕事してたと思ってるの!?」
ないこ「ヘ?君達3人じゃないの?」
3人**「んなわけねぇだろ!!」**
怒鳴る3人の後ろから、ゆいが現れ、ぽつりぽつりと話し出した。
ゆい「確かに書類仕事を担当してるのはすち兄達だよ。でもね、みつば姉さんは、自分の仕事もやりつつ、毎日すち兄達の書類仕事を手伝ってくれてたんだよ。姉さんはすち兄よりも頭がよくて、書類仕事を終わらせるのも早くて、私と遊んでくれることもあった」
ないこ「え、は・・・?」
ゆい「どうして私の話を聞いてくれなかったの・・・?私、あれだけ説明しようとしたよね・・・!?」
ゆいは大泣き。全てを知ったないこ、LAN、こえは、絶望顔でうなだれた。
参
私が自分の部屋の掃除をしていると、かなめお兄ちゃんが呼びにきた。
かなめ「みつば、しのが帰ってきたよ」
私「ほんと!?」
私は部屋を飛び出し、階段を駆け下りたんだ。
しの「ただいま〜」
私「しの〜!」
しの「え、みつばちゃん?うわっ!?」
私はしのに飛びついた。久しぶりに感じるしのの温もりが、ささくれた私の心を癒してくれた気がした。
しの「みつばちゃん・・・。帰ってきたんだね!おかえり!」
みやび「みつばちゃん!?え、夢!?」
リネ「みっちゃん!元気そうだね!」
しのの後ろには、私の幼馴染のみやびとリネもいた。
うるみや「しのおかえり〜。今日、みつばが帰ってきたんよ」
しゃるろ「おかえりパーティーするからね。手洗ってきて」
しばらくして、ある兄、ゆら、花音、音実、チサキも帰ってきて、私のおかえりパーティーが始まった。
私「ん〜!やっぱりお兄ちゃんのカレーおいひい!」
かなめ「みつばはこれ好きだったもんね」
かなめお兄ちゃんは、私の好物だったカレーを作ってくれた。
しばらくお兄ちゃん達の料理を堪能していると、しのが真っ赤な顔で、もじもじしながら近寄ってきた。
どうしたんだろ。
私「しの、どうしたの?」
しの「あの、えーと・・・」
お兄ちゃん達はニヤニヤしながら見てる。何が始まるの?
しの「あの、ね。僕、みつばちゃんのこと・・・5年前からずっと好きで」
私「ふえ?」
いきなりすぎて変な声が出てしまった。告白は予想外だって・・・。
しの「僕、頼りないし、みつばちゃんを守れないかもしれない。でもね、みつばちゃんを愛する気持ちは本物なんだよ」
私「・・・」
しの「僕と婚約、してください・・・っ!」
正直、婚約破棄されたばかりで、また裏切られるかもしれない・・・とは思った。でもそれは一瞬だけで、しのの一途な性格は、10年前からずっと一緒にいる私がよく知っている。1ミリも迷わなかった。
私「うん。よろこんで」
しのが差し出した手を、私は掴んだ。私も、しののことは気になっていた。こえくんと婚約した時も、しののことが頭から離れなかった。
しばらく無言の時間が過ぎる。気がつくと、私はしのに抱きしめられていた。お兄ちゃん達は何も言わず、拍手で祝福してくれた。
ちょっと気恥ずかしくて、とっても幸せな、夢みたいな時間でした。
音の国
みつばが音の国を出て行ってしまった。
書類整理をしていたりうら、こったろ、すちは、それを重く受け止めていた。実は、みつばは全ての書類のうち、半分近い書類をまとめて書き上げられるほど有能で、3人も音の国ではかなり頭が良かったが、みつばの成績はいつもトップクラス。3人はみつばを尊敬し、慕い、共に協力し合っていた。
りうら「俺、音の国を出て行こうと思う」
りうらがぽつりと告げると、すちとこったろもうなずいた。ゆいも涙ぐみながら首を縦に振る。
あのあと、ないこ達は今回は勘違いだったと認めたものの、りうら達3人以外の幹部は、皇賀姉妹から有る事無い事吹聴されており、謝罪もしなかった。りうら、こったろ、すちも色々言われてはいたが、相手にしていない。そのため、彼らの行動に嫌気がさしたのだ。
ゆい「みつば姉さん、時の国のかなめさんっていう幹部の妹なんだって」
すち「ならみつばちゃん、きっと実家に帰ってるよね」
こったろ「明日の朝早く、ここを出て行こうか」
りうら、こったろ、すち、ゆいは、それぞれ荷物をまとめ始めた。
肆
翌日。
りうら、こったろ、すちはまだ暗いうちに起きた。
りうら「流石にゆいちゃんはまだ寝てるか・・・」
すち「俺がおぶっていく。りうらはゆいの荷物お願い」
りうら「わかった」
こったろ「ごめん、遅くなった」
すち「じゃあ、そろそろ行こ」
4人は静かに音の国を抜け出した。
私・みつばが自分の部屋で窓の外を見ていると、見覚えのある顔を見つけた。
私「りうくん、すっちー、こた兄さん、ゆいちゃん・・・」
私は慌てて4人に会いに行った。
私「みんな?なんでここに・・・」
りうら&こったろ&すち&ゆい「「「「ごめんなさい!」」」」
私「ヘ?は?」
わけがわからない。なんで謝ってるんだろう。
りうら「ないちゃんから全部聞いたんだ。最初は俺達も信じそうだった」
こったろ「ゆいが説明してくれなかったら、あのまま誤解したままだったかもしれない」
すち「ゆいを助けてくれてありがとう。そして、疑ってごめんなさい」
ゆい「私もだよ!あの時は庇えなくてごめんなさい・・・!」
私「え?それを言うためだけに、わざわざ音の国から来たの?」
りうら「ごめん。許してくれないと思うけど・・・」
私「いや許すも何も、最初から愛と舞さんにしか怒ってないよ」
ゆい「私、説明できなかったのに・・・?怒ってないの?」
私「うん。それに故郷に帰ってこれたのが嬉しかったし、そんなの気にしてなかった」
4人は呆然としていた。この感じ、音の国を捨てたのね。
私「私の兄弟と婚約者を紹介する。入って」
私は城の門を開けて、4人を招き入れた。
私「私の兄のかなめ、姉のうらら、妹のひなみ。それと婚約者のしの」
かなめ「かなめです。妹のみつばがお世話になりました」
うらら「みつばの姉のうららよ。今日はゆっくりしてって」
ひなみ「ひなみです!4人のことはみつ姉ちゃんから聞いてるよ〜」
しの「えーと・・・。みつばと婚約してるしのっていいます」
私「それと時の国の幹部のみんな。私の友達だよ。幼馴染達も幹部候補生なの。みんな、この人達は私の同僚だった、りうくん、すっちー、こた兄さん、ゆいちゃんだよ」
私はお兄ちゃんやみやび達に、仕事仲間だったりうら達を紹介した。
そして、音の国で何があったのか。隠すのは難しいので全て打ち明けた。
当然だけど、お兄ちゃん達は全員ブチギレ。もう音の国に戻る必要はない、と言ってくれた。
りうくん達も音の国を罰せられる覚悟で出てきた、と言うので、放っておけなかった。お兄ちゃん達に交渉すると、みんな快くりうくん達を受け入れてくれた。
伍
りうら達がいなくなった音の国は、大混乱に陥っていた。
彼らがいなくなった後、数週間はなんとかなったのだが、書類が次第に溜まり始め、ないこは慌てて書類係を用意した。りうら、こったろ、すち、みつばの次に頭が良かった、如月ゆう、暇72、if、ないこが溺愛していた愛と舞の5人に書類を任せたのだが、これが間違いだった。
りうら、すち、こったろは真面目で、みつばがいたおかげで、ものすごい速さで書類の提出が終わっていた。ところが、ゆうはタイピングが遅く、暇72は遊んでばかり、ifは日本語が間違いだらけ。愛と舞は頭が悪く、まともに仕事が出来ず、書類は貯まる一方だった。
ないこ「まずい・・・。このままじゃ、音の国が!」
LAN「ないこさん!どうするんですか!?」
こえ「思えば、みつばが出て行ってからこんなことに・・・」
ないこ「こうなったら、こえとみつばのヨリを戻して、こっちに戻ってきてもらうしかない!」
ないこ、こえ、LANは、みつばの故郷である時の国ヘ向かった。
かなめ「音の国のないこ総統。こんな所まで何のご用ですか?」
ないこ「実は今、うちの幹部のこえに婚約者を探しているんです」
かなめ「・・・それで、うちの幹部候補生や妹の中から、1人くださいと?」
ないこ「そうです。かなめ総統の妹様である、みつばさんを婚約者にしたいのです」
かなめ「なるほど。他の女性ではいけないのですか?」
ないこ「はい。彼女は優秀ですから、こえに相応しい女性なんです」
かなめ「わかりました」
満面の笑みを浮かべるかなめ。それを見たないこは「ありがとうございます!」と言いかけたが、かなめが放った次の一言で、さあっと青ざめた。
かなめ「出来ません。」
かなめは笑ったまま、淡々と答えた。
ないこ「な、何故ですか!?我が音の国は大国・・・。玉の輿なんですよ!?」
かなめ「大国なら情報が入ってくるのも早いと思ったんですがね。知らなかったんですか」
ないこ「え・・・?何が、ですか!?」
かなめ「みつばはとっくに、しのと婚約しています。来月には結婚式もあげますし、自分の実力だけで幹部にまで成り上がってますよ」
隣で黙って話を聞いていたこえとLANは、あからさまにショックを受けていた。
そこに、みつばとしのが帰ってきた。
みつば「こ・・・こえくん!?それにないこ総統とLANさんまで・・・。今更何のご用?」
その途端、こえはみつばにしがみついた!
みつば「きゃあああ!?何なの急に!?」
こえ「お願いみつば!そいつと婚約破棄して、僕と再婚して!」
みつば「は!?嫌よ!どうして私が愛してる人と別れなきゃいけないの!?」
みつばは抵抗した。
こえ「なんで!?みつば、僕のこと支えたいって・・・」
みつば「確かに支えたいとは言ったけど!私があなたと婚約したのは、あなたに憧れてたからよ!みんなを笑顔にしてくれて、人一倍頑張ってる。私もあなたを応援したくて婚約したのよ!」
こえ「ええええ!?僕のこと好きだったんじゃなかったの!?」
みつば「今回のは政略結婚じゃない!私だって、本当は親友のしののこと心配だったし・・・。それでも音の国に残ったのは、友達になったすっちー達がいたからなの!」
こえ「う・・・嘘・・・」
みつば「もういいでしょ!?離して!」
みつばはこえを振り切り、泣きながら部屋へ戻ってしまった。
陸
みつばが部屋に戻ったのを見届けたかなめは、恐怖さえ感じる笑顔でこえに詰め寄った。
かなめ「こえさん?」
こえ「ひえっ」
かなめ「俺の妹を泣かせて、ただで済むとお思いですか?」
かなめは間違いなく怒っている。笑っているのが余計に怖い・・・。
かなめの顔を見れば、こえでなくとも誰でもそう思うだろう。
かなめ「決めました。我々時の国は、音の国との同盟の話を破棄させていただきます」
ないこ「そんな・・・困ります!何年も交易してきたのに、それを無駄にするおつもりですか!?」
かなめ「無駄にしたのはそちらでしょう。俺が音の国との交易をしていたのは、みつばがそちらで働いていたからですよ。最初、みつばは『友達がいっぱいできて楽しい』と言っていたのに」
ないこ「ならどうして!」
かなめ「こちらが何も知らないと思っておられたのですか?とっくに全て知っていますよ。音の国の幹部・・・、つまりあなた方にみつばが邪険に扱われた、とね」
事実を告げられ、ないこ達は押し黙ってしまう。
かなめ「とにかく、同盟はなかったことにします。その判断は何があっても変わりません。妹にしたことを謝ったとしても、ね」
かなめの意思は硬かった。ないこ達も何度も説得を試みたが、かなめの決断が変わることはなかった。
こえ「ないこさん!?どうするのこれ!?」
ないこ「時の国はなかなかの領地を持ってる。それが手に入れられないとなると、音の国は不利だ」
LAN「謝ったとしても許してもらえないですし・・・」
ないこ「今思えば、舞と愛のやることは違和感だらけだった。なんであんなにいい子を手放しちゃったんだろう・・・」
こえ「というか・・・みつばは僕のこと好きじゃなかったのかぁぁぁぁぁ!」
3人は絶望しながら音の国へ帰って行った。
全てを終えたかなめは、みつばの部屋の扉をノックした。
かなめ「みつば?」
中にはしのもいた。
しの「しばらく泣いてたんだ。慰めてたら寝ちゃって」
みつばはしのの膝の上で、規則正しい寝息を立てて眠っていた。
相当泣いていたのだろう、目の下は赤く腫れて、涙が滲んでいる。
かなめ「怖い思いをさせてごめんな、みつば。もう大丈夫だからね」
かなめは妹の頭を撫でて言った。
漆
それから数日が経ち、みつばとしのの結婚式が近づいていた。
みつば「結婚式、楽しみだなぁ!」
しの「そうだね。あんなことがあるなんて思わなかったけど」
みつば「着てみたかったドレスも予約できたし、悔いはないわ」
しの「僕、ひとつだけやり残したことがあるんだ」
みつば「何?」
しのはみつばの前に立ち、ポケットから何かを取り出した。
しの「あれからトントン拍子で話が進んで、結婚にまでいったけど・・・プロポーズしそびれてた」
取り出したものは指輪ケース。中にはエメラルドの指輪が入っていた。
みつば「これ・・・私の誕生石!わざわざ用意してくれたの?」
しの「うん。あちこちの宝石店を探し回ったんだよ」
みつば「嬉しい!ありがとう!」
しの「こんな僕だけど、言わせて欲しい。僕と結婚してください」
みつば「もちろんよ!」
2人は少し見つめ合い、大笑いした。
結婚式当日。
お城のベランダから下を見ると、沢山の人が集まっていた。
みつば「すごい・・・。こんなにいっぱい」
しの「みんな僕達を祝福してくれてるんだよ。嬉しくなるよね」
みつば「うん!結婚できてよかった!」
結婚式が始まった。真っ白なドレスを着たみつばと、同じく白いタキシードを着たしのが歩いてくる。
司祭「新婦みつばさん。あなたはしのさんを夫とし、生涯愛することを誓いますか?」
みつば「誓います」
司祭「新郎しのさん。あなたはみつばさんを妻とし、生涯愛することを誓いますか?」
しの「誓いm」
ガッシャーン!
突然ステンドグラスが割れて、何者かが入ってきた!
みつばの悲鳴が上がり、しの達が上を見上げると、全身黒ずくめの人物がシャンデリアの上に立っていた。
しの「みつば!?みつばーっ!」
しのがいくら叫んでも、どうすることもできなかった。
捌
〜音の国〜
初兎「ないちゃん、みつば連れてきた」
ないこ「ナイス!」
ほとけ「でもさ、これでどうすんの?変装はしたけど多分気付かれるよ」
黒服の男の正体は、初兎だった。
実はないこは、みつばを音の国に連れ戻す計画を立てていたのだ。とはいえ結婚式当日に実行する予定ではなかった。実行日がたまたま2人の結婚式だっただけの話だ。
計画としては、みつばを睡眠薬で眠らせて城から連れ出し、外に待機している猫車に乗せて音の国に運ぶ・・・という手筈だった。しかしまさかの結婚式当日で、焦った初兎は睡眠薬を吸わせるのを忘れ、外に出たときに慌てて眠らせたのだ。あの時のみつばの悲鳴はそういうことだ。
みつばはすっかり眠っていた。
ないこ「みつばを人質に・・・ってまぁ言い方悪いか。でもこれでかなめ総統も同盟を組んでくれるはず」
LAN「流石に妹を捕虜にされれば、かなめ様も考え直すでしょう」
みつばは城内の小屋に閉じ込められ、ないこはかなめに文書を送った。
かなめ「なん・・・だと!?」
かなめはないこが寄越した文書を読み、怒りで拳を振るわせた。
結婚式当日に新婦が誘拐、さらにそれを脅しに使われたのだ。黙っていられるはずもない。
しの「僕のせいだ・・・。僕が助けられれば」
しのは泣いて悲しんだ。
猶予はなんと5日。それまでに同盟を組むか決めなければならないのだ。
音の国は同盟国で、賽の国、星の国、奏の国の3国がくっついた大国。下手に逆らえば、みつばがどうなるかわからない。
かなめ「一体どうすればいいんだ・・・」
かなめは頭を抱えるしかなかった・・・。
みつば「嘘・・・。5日間しかないの!?」
みつばはこっそり話を聞き、我慢ならなくなった。
みつば「とにかく、これは飲んじゃダメね」
目の前に置いてある紅茶。一見すれば普通だが、色彩感覚が人一倍優れているみつばは、色が微妙に違うことを見抜いていた。後で調べると、紅茶には幻覚剤が入っていたことが判明した。
みつば「どうしてここまでするの・・・!?」
みつばは音の国を逃げ出そうと決めた。
玖
みつばに出される飲み物には、いつも大量の幻覚剤が仕込まれていた。みつばはそれを毎回回収し、夜中にみんなが使うウォーターサーバーに飲み物を混ぜていた。
そして3日目から4日目に日にちが変わる。いよいよ明日は運命の決断を迫られる日だ。
みつばはこの日、料理の中に高濃度の睡眠薬を混入させていた。真夜中、全員が寝静まったことを確認し、みつばは行動を開始した。
みつばの左手首は手錠で繋がれている。みつばはこっそり持ち出した拳銃で手錠を撃った。
バンッ!ガチャリ!
みつば「切れた!」
しかしその音で、ないこ達も起きてきた!
みつば「やばっ、早く逃げなきゃ!」
みつばはドアの後ろに隠れ、ないこ達が全員小屋に入るまで待った。
みつば(今だっ!)
みつばは全速力で小屋を飛び出し、城から逃げた。
ないこ「逃げられた!くに!いるま!アニキ!追って!」
ものすごい形相で幹部が追ってくる。みつばは裸足で死に物狂いで走った。
川を渡り、茨の上を駆け抜け、木の根につまずきながら森を走った。
幹部達の声は聞こえなくなっていたが、みつばは足を止めなかった。転んで血が出ても、服が破れても、走り続けた。
不思議と疲れは感じなかった。
やがて時の国の城が見えてきた。
みつばは安心すると同時に疲労が爆発。そのまま力尽きて倒れてしまった。
日が昇り、夜が明ける。
ボロボロになったみつばの姿を、朝日が照らした。
幹部候補生の花音は、当番制の城の見回りをしていた。
花音「手紙はきてない。不審者もいな・・・ん?」
花音は城の庭の隅で倒れている少女を見つけた。近寄ると、少女の指に光るものが付いているのに気がついた。
花音「指輪だ。恋人がいるのかな?」
花音はしばらく指輪を見ていたが、指輪についている宝石を見た瞬間、悲鳴をあげた。
花音「か、かなめ様!かなめ様〜っ!みつば様らしき人が、倒れててっ・・・!」
それを聞いたかなめ達は、少女を見にきた。
かなめ「姿が全然違うけど・・・?」
花音「あの子がつけてる指輪、エメラルドですよね?しの様が渡していた指輪もエメラルドでした」
しの「僕が渡した指輪だ・・・。S&Mって彫ってある」
かなめ達は変わり果てたみつばを見て、呆然としていた。
左手には千切れた手錠が付いていて、服はあちこち破れ、足は血だらけ、アザや擦り傷があちこちにできている。
れむ「とにかく、診療室に運ぼう!このままじゃみつばが死んじゃう」
うるみや「せやな、しゃる!みやび!頼んだで!」
しゃるろ「わかった!」
みやび「お任せください!」
しゃるろ達はみつばを診療室に運んだ。
拾
みやび達の必死の看護で、みつばはなんとか元気を取り戻した。
しの「みつば!もう大丈夫、なの?」
みつば「うん。ありがとうしの。みやびとしゃる兄も」
みやび「みつばを運んだの、花音なんだよ」
しゃる「後でお礼言ってきな」
みつば「そうするわ」
みつばが戻ってきた時の国は、以前の勢いを取り戻し、かなめはないこへ宛てた文書を出した。
『同盟など組まない。みつばは傷だらけで帰ってきた。妹をこんな目に合わせたことは許せない。これ以上同盟を迫るなら、それは我が時の国への宣戦布告と見なし、直ちに攻撃を開始する』
これを読んだないこは鼻で笑い、返事を書いた。
『我ら音の国に勝てるはずがない。諦めて和解した方が身のためだ。大人しく同盟を組むがいい』
ないこは余裕としか思っていなかった。三国同盟を組んでいた彼らに怖いものなどなかったのだ。
だが、闘志に火がつき、殺意に燃えていた時の国を止めることなど不可能だった。
かなめ「じゃ、瓜の国に行ってくるね」
みつば「わかった!協定結べたらいいね!」
かなめ「行ってきます!」
かなめは瓜の国へ向かった。
瓜の国は音の国と仲良くしている国だ。ただ同盟には参加していない中立国である。
なろ屋「ようこそ、かなめさん」
かなめ「なろ屋さん、いきなりすみません」
なろ屋「それで、用事はなんですか?」
かなめ「俺、音の国に戦争を仕掛けようと思ってて。それで協力していただきたいんです」
なろ屋「え・・・?なんで戦争?今のままじゃ協力できませんよ」
かなめ「わかっています。ただ、これを聞いていただけませんか」
かなめはみつばの音声を記録したレコーダーを置いた。
そこには、みつばが音の国にされたことを語る声が入っていた。
なろ屋「そんな・・・これまで仲良くしてきたのに」
かなめ「俺の妹のみつばには会ったことありますよね。みつばは嘘を言わないんです」
なろ屋「これからも音の国とは友好的にやっていこうかと思ってたけど・・・これじゃできそうにない。もちろん協力するよ」
かなめ「ありがとうございます。決行は2日後です」
なろ屋「こちらも準備しておくから、安心して」
かなめ「助かります。俺・・・みつばを傷つけた音の国を許せないんです」
なろ屋「僕も、みつばちゃんとはほんとの兄妹みたいに遊んできたから、気持ちはわかるよ。一緒に戦おう」
かなめ「心強いです。お願いします」
拾壱
そしていよいよ戦争決行当日。
かなめ「みんな、計画を話すからちゃんと聞いてね」
この場には、かなめ兄妹4名と、れむ、しゃるろ、しの、アルケー、うるみや、リネ、花音、チサキの12人が揃っている。
かなめ「今のところ、人数はあっちの方が多いと思う。それでも、俺たちは軍隊なしで特攻する」
みつば「今城には、すっちー達が先に忍び込んで隠れてる。ゆいちゃんは瓜の国のスマイリーさんに匿ってもらってるよ」
かなめ「最初は俺たちの方が弱いと踏んで、手加減して幹部も兵士もあまり出さないだろうね。それがチャンスだ。こっそり瓜の国のなろ屋さんたちと合流して、一気に畳み掛ける」
みつば「兵士達は潜入組が抑えてくれるらしいから、敵が少ない瞬間に全力で攻め込むの。数打ちゃ当たる作戦?みたいな感じだよ」
そう、今の音の国の幹部は16人。現在の人数は負けているが、瓜の国の幹部はなんと10人。しかも今隠れている幹部6人も合わせると28人。本気でかかればオーバーキルできる人数である。
カタカタカタカタカタ ガタッ!
すち「パソコンに細工しておいたよ。これでないこさんからのメッセージは来ない」
りうら「こっちも偽装できたよ。まさかすちくんがパソコンいじりできるなんてね」
すち「まぁね・・・」
みやび「みんな、そろそろ隠れた方がいいわよ。誰かの足音が聞こえてきてる」
すちは兵士寮の飾りとして置いてある樽に、りうらは出入り口の扉の後ろに、みやびは空きロッカーに隠れた。
こったろ「みつばちゃんたちがきてる。みんな準備して」
音実「このブザーが鳴ったら、ここを突き破って下に落ちるんだな」
ゆら「緊張する・・・」
音実「りうら達もこっちにきてるらしい。支度しておこう」
こったろ、音実、ゆらは王座の天井裏に隠れていた。
みつばが合図をしたら、6人で天井を突き破り、下に落ちてみんなと合流する計画である。
かなめ「みんな!目的地は王座だ!とにかく俺についてきて!」
12人は敵という敵を吹っ飛ばし、王座へ一目散。
大きな扉を開け放ち、かなめ達は遂に王座に辿り着いた。
ないこ「え・・・?は!?兵士寮の兵士全員行くように言ったはずなのに、なんで無傷なんだ・・・!?」
かなめ「俺たちのこと舐めてたんですか?100人ちょっとしかいませんでしたよ。そんなのでやられるわけないじゃありませんか」
ないこ「100人!?500人はいたはず!」
その時、みつばが前に進み出た。
みつば「ないこさん、頼みがあります」
“皇賀愛と皇賀舞を連れてきてください”
拾弐
みつばの声は、あの日よりも低かった。
ないこはその声に一瞬怯み、慌てて皇賀姉妹を連れてきた。
愛「突然なんなんですかぁ?」
舞「なっ、あんた・・・!」
みつば「お久しぶりです。あんた達の大っ嫌いなみつばが帰ってきましたよ」
舞「嘘でしょ!?だって、アナタは私達が徹底的に追い詰めて追い出したはずよ!」
愛「ちょっとお姉様!?」
舞「だってそうじゃない!私は愛のために、アナタの評価を下げて愛を引き上げてきたのよ!なんでわざわざ帰ってきたの!?」
愛「お姉様!もうやめて!」
舞「どうして止めるの!?みつば!あんた、変なとこで粘るんじゃないわよ!さっさと死んでくれれば・・・!」
愛「お姉様!ないこ総統が聞いてるんだよ!?」
舞「え?・・・あっ」
こえ「どういう、ことなの・・・?」
LAN「ふざけないでよ!君たちはずっと嘘をついていたのか!?」
舞「違うわ!」
ないこ「もう言い逃れできないよ!それ相応の罰は覚悟しておけ!」
みつば「そんな事言ってられないと思うよ、ないこ総統」
ないこ「え?」
みつば「今ここにいる幹部全員に告げます。私に謝罪していただけるなら、お兄ちゃんにとりなして、戦争は無かった事にします」
その場は静まり返る。やがて皇賀姉妹が笑い始める。
愛「何言ってんの?馬鹿じゃない!?謝る訳ないでしょ!」
舞「私達に嫌われるあんたが悪いのよ!」
ないこ「2人が謝るのはまだわかる。でも、俺たちは何もしていないんだから、謝る必要なんてないだろ」
みつば「・・・そうですか。それじゃ、ぶちのめすしかありませんね」
みつばは持っていたブザーを鳴らした。
ビーーーーーー!
ガッシャーーーン!
天井が壊れ、6人が落ちてきた。
すち「あーあ。ここで謝ってたら、チャンスはあったのにね」
りうら「チャンスを棒に振ったな」
ないこ「は!?なんでお前らがここにいるんだよ!?」
こったろ「ちなみに、攻撃してるのは俺たちだけじゃない」
ないこ「!?」
パリンッ!
王座のステンドグラスが割れ、瓜の国の幹部達が入ってきた。
なろ屋「話は全部かなめさんから聞いてる」
サムライ翔「みつばはなろっちにとっちゃ、妹みたいなもんや」
そらねこ「僕の大好きなお姉ちゃんでもあったんだ!」
KAITO「大切なみつばへの所業・・・!許されることではない!」
のっき「みつばさんのためにも、絶対に許しませんよ!」
かもめ「ここまで来たら、徹底的にやってやるからな」
こーく「何があってもぶっ潰すから、覚悟しといてね〜」
ラメリィ「時の国側は28人。俺たちに勝てるかな?」
たけ「さぁ、みつばの復讐の始まりだよ!」
拾参
愛「は・・・!?」
音の国の幹部達は、全員青ざめた。
いるま「愛!舞!お前らなんてことしてくれやがった!?」
舞「はぁ!?なんでこっちに言うのよ!」
Relu「だってそうやろ!そもそも、お前が余計なことするから・・・!」
全員大パニックで、責任転嫁を始めた。
愛「・・・みつば」
みつば「何?」
みつばは謝罪してくれるのか、と少し期待した。だが、気がつくとみつばは倒れていた。
かなめ「みつば!?」
うらら「大丈夫!?」
愛「全部全部!あんたのせいよ!あんたが目立つから!あんたが先に玉の輿に乗って調子乗るから!」
みつば「え・・・?今、何が?」
ひなみ「お姉ちゃん!」
なんと愛がみつばを殴ったのだ。
ないこ「てかなろ屋さん!?なんであなたが時の国側についてんの!?」
なろ屋「実は・・・僕とかなめさんは従兄弟同士でね。それもあって、うららさん、みつばちゃん、ひなみちゃんとは本当の兄妹みたいに遊んでた仲なんだよ。そらちゃんもみつばちゃんには特に懐いてて、幹部みんなみつばちゃん達のこと、姉妹のように可愛がってきたんだ」
ないこ「は・・・?そんなこと、一度も言ってくれなかったよね!?」
なろ屋「言う必要ないじゃん。そう言うわけで、時の国が同盟に入るって聞いて、僕達も入ることを検討し始めてたんだよ。でも同盟を破棄したって聞いて、僕達もやめておこうってなったんだ」
ないこ「・・・嘘」
項垂れるないこを尻目に、愛はなおも叫んでいる。
愛「ふざけんじゃないわよ!なんであんたばっかり!なんでいっつもあんたが可愛がられるのよ!?」
みこと「ちょっ、愛ちゃん!落ち着いて!」
愛**「あんたさえいなければ!あんたさえ消えてくれれば、私がみんなにチヤホヤされたのに!」**
愛の叫びは、虚しく響き渡っていた。
こうして、音の国と時の国の戦争は、音の国側の降参で幕を閉じた。
愛と舞は要注意人物として、投獄される事になった。愛は捕えられた後も、「みつば!絶対ぶっ殺してやる!」と執念深く叫んでいたという。
そして音の国は、瓜の国の支配下に置かれることとなり、総統の座はなろ屋に移ったという。
ないこは現在もかなめに謝罪の手紙を送っているが、「みつば本人に謝らない辺り、反省してないね」と手紙を全て破り捨ててしまった。
そしてみつばはというと。
結婚式は台無しになってしまったが、しのは「守れなかったお詫びだよ」と、みつばを高級レストランに連れて行ってくれた。そして友達の花音はすちと結婚する事になり、結婚式の友人代表スピーチを任された。
さらに、ネットでの繋がりで「苺連合王国」との交流も始まり、来年には苺連合王国の同盟に参加する予定である。
みつばは大勢の友達と、自分を守ってくれた兄、姉、妹、心優しい夫と幸せに過ごしている。
私を裏切ったこと、後悔させてやる!
〜end〜
完結しました!
これまで見ていただきありがとうございました!
VOISING×カラフルピーチの新作もよろしく!