これは正しい物語ではない。
私達は間違っているかもしれない。
それでも、私は君を選ぶ__。
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目次
一話「羽の影に、私は___」
新シリーズ!!どうか温かい目で見守ってください!!
谷に少しの影が差し始め、白い光が窓辺に差す。午前七時十分前後に白髪に青色の目の少女、私_セレは起床する。一番窓辺にあるセレの部屋は日当たりがいい。
セレ「…………寝たい。」
だからこそ一番眠くなる。だけど、ここで寝たら母はリライナの拳骨で叩き起こされることになるので我慢だ。私は寝るという考えを頭を軽く振って振り払った。床に素足で足を置き、冷たいと凍え、布団に戻るのを何回か繰り返し、とうとう諦め床に足を付いた。私は部屋を一望する。クローゼットとベッド、それと机だけの割とシンプルで綺麗な部屋だ。
自分の部屋に満足していると、まるでそんなことないと言うかのように部屋の隅の埃が舞った。私はムッとして埃を指で摘まむと、元の隅に置いた。
セレ「埃は埃らしくそこでじっとしてて!」
素早く着替えると、私は扉を勢いよく閉めた。扉の軋む音と、木の折れそうなミシッという音が聞こえた。更に、凄まじい音が重なり合い、騒音の見本のような音になった。私はやってしまったと公開する。いつだって私は怒りっぽい。それでリナに叱られたばかりなのだ。
オリバー「セレぇ、扉くらいもっと優しく閉めろよぉ…………。」
隣の部屋の同い年の少年、オリバーがぼやく声が部屋の中から聞こえた。
セレ「すまんすまん。」
騒音被害にあったオリバーに取り敢えず謝っとく。
オリバー「お前絶対思ってないだろぅ………。」
セレ「そんなこと言うからモテないのよ?」
ブツブツ言うオリバーへ苛立ちを募らせた私は小声で言ってやった。すると、扉が凄まじい速さで開け放たれた。赤髪に紫色の目の少年が寝巻き姿で立っていた。
オリバー「余計なお世話じゃボケェ!」
セレ「扉をもっと静かに何とかとか言ったのはどこの誰だったかしらねぇ?」
私はわざと甲高い声でオリバーをあざ笑う。オリバーはセレを睨みつけながら、部屋へ戻って行った。二度寝するつもりなのかな。オリバーにはまだ「相棒」がいないからそれもそうかと考える。私は廊下を真っ直ぐと行き、リビングへ来た。リビングには金髪に金目の女性がいた。
リライナ「遅かったねセレ。夜更かしでもしたの?」
リライナはパンにバターを付けながら時計を顎で指す。時計の針は七時五十分を示していた。私は呆気にとられる。寝坊したとは思っていなかったからだ。
セレ「いけない!ママ、いってきます!」
リライナ「ほい!いってらっしゃい。」
私はリライナが差し出したパンを口に咥え、靴を履く。
リライナ「ソキウスを待たせないでよ~!」
セレ「|わはってる。ほうをまはへるはけはひでしょ!ひっへひはふ!《分かってる。ソウを待たせるわけないでしょ!いってきます!》」
セレは口に咥えたパンを落とさないように下に両手を出す。目指すは相棒のいる山、「ペンナ山」。全力疾走したいところなのだが、最初から全力疾走したせいで、現在ばて中である。肩で息をしながら、最後の一かけのパンを飲み込む。それから、ヨロヨロと歩く。その時、急にザァーッと風が吹き、私の白髪を巻き上げた。日が隠れ、影になる。顔の前を腕でガードしながらチラリと上空を見る。
ソキウス「朝早くから随分お疲れのようだな。セレ。」
上空から舞い降りてきたのは白銀の体と翼に宇宙のような深い青と黒の境界線の色をした目を持つ羽を持った狼。学名では「アーラルプス族」と呼ばれているけど私達は個々の名前で呼んでいる。私達、「アーラ峡谷」の裂け目に住む「谷の子」はアーラルプス、略称アルスを相棒にしている。相棒になれば家族と同じくらいかけがえのない存在になる。そして、今来たアルスは私の相棒「ソキウス」。相棒同士は普通はあだ名で呼び合うんだけど、私の名前が短すぎて普通に呼んでるんだ。
セレ「寝坊しちゃって…………。最初から走ったら疲れてバテた…………。迎えに来てくれてありがとう、ソウ!」
私は最大の笑みをソウに見せる。ソウは人間の姿に化けると、私の頭を撫でてくれた。アルスは人間に化けることができる。言い忘れていたが、相棒になる時はアルスが先に勧誘してくれないとなれない。もちろん私も勧誘されたのだが、私の場合は少し特殊で、生まれる前からソウは生まれてくる子を相棒にすると言ったらしい。
セレ「ねぇ、ソウ。」
ソキウス「ん?」
私は一歩先を歩くソウに聞く。ソウは一つに結ばれた白い髪を揺らして、振り向いた。
セレ「………ソ、ソウと私って容姿似てるよね!」
ソキウス「そうだな。白髪だし青い目だし。」
この事だけは相棒になってもう11年目だがずっと聞けない。ソウに見つめられると、声がでなくなるのだ。聞けないともやもやして、自分の中のなにかが騒ぐ。自分の影を見つめたまま、私は黙々と歩く。気がつくと、ペンナ山は目前に迫っていた。空を舞う金と銀のアルスに魅了され、私は思わず足を止める。他の羽狼を見る私が気に入らなかったのか、ソウはアルスの姿に戻り、服を口で引っ張ってきた。
ソキウス「………セレ、乗れ。」
ソウに言われ、私はペンナ山をボーッと見つめながらソウの背中に乗った。ふかふかと心地いいソウの毛に私は安心感をおぼえた。私がソウの毛をしっかりと掴むと、両の翼が動いた。体が浮く感覚と共に地面が遠ざかる。私はこの感覚が苦手で、でも好きだった。
一周りした後、ペンナ山の奥へ向かった。そこには長い長い階段がある。谷の外、「外の世界」へ続く階段だ。大人は誰も外の世界に出ようとしない。けど、私は出たい。向かい風が私を谷の中へと引き戻す。
セレ「………行こう、ソウ。」
ソキウス「そうだな。」
私はソウの背に跨がり、階段を背にしてペンナ山中腹に戻った。
あとがき
お読みいただきありがとうございます!
新シリーズどうでしたか?
これは序の序なので………。
第二章から楽しみすぎます!
龍憑事も進めなきゃ………。
二話「迷いの中で、私は___」
ペンナ山中腹に戻ると、私はソウから下りる。ソウはブルブルと毛を震わせた。はらはらと毛が舞い落ち、私は毛だらけになってしまった。私はソウを真顔で見つめる。
ソキウス「す、すまん………。」
気まずそうにソウは謝った。私はふんと鼻を鳴らす。許すということだ。気を取り直して私はにっこり笑うと、バッグからブラシを取り出した。ソウの目が少し輝いたように見えた。私はソウの体をブラシで撫でる。ソウは気持ちよさそうに目を閉じ、喉を鳴らした。その声に私も嬉しくなる。最後に耳の裏を手で撫でる。ソウはごろんと横になってお腹を見せた。ソウは耳の裏を撫でられると無力化する。私はソウの横に大の字で寝転がる。
セレ「ちょっとお昼寝しよっか………。」
私は目を閉じた。すぐさま夢の中への道が開ける。私はうとうとしながら寝息をたて始めた。ソウが寄り添って来てくれたことを感じると、安心して眠りについた。
---
広い草原を私はソウと駆け回った。笑い声が草原に響き渡る。ふと、ソウが立ち止まり、私も立ち止まる。
ソキウス「セレ、なんか聞きたいこと、あるだろ?」
ソウの言葉に、私はコクリと頷く。
セレ「なんでソウは私を選んだの?」
ソウ「それは_____。」
その答えに私は微笑んだ。そんな夢を見て、起きたのは十一時半頃。他は鮮明に思い出せるのに、ソウの答えだけが思い出せない。もやがかかっている。私は怒り顔でソウを見る。その顔にソウは驚いている、というか恐がってる。
ソキウス「セ、セレ?悪夢でも見たのか?」
私は話そうと思って、口を開けて、噤んだ。私はそっぽを向いて、首を横に振る。
セレ「なんでも、ない。」
ソキウス「そうか。」
ソウはやたらに詮索しない。それが、心地よく、少し寂しい。ソウが再び驚いた。
ソキウス「セレ!?」
セレ「え………?」
その時、頬を水が伝った。私は泣いていた。
ミナリカ「セレ~?」
茶髪の女性がこちらに向かって来る。リライナのママ友のミナリカさんだ。ミナリカさんは私を見るとぎょっとした。
ミナリカ「セレ!?」
私は慌てて服の袖で目を乱暴に擦り、笑顔を作った。目の端が若干赤いだろう。
ミナリカ「狩り、やめとく?」
私はそろそろ狩りの時間であることを思い出す。私は少し迷った挙げ句、結局行くことにした。
セレ「ちょっと、弓矢取ってくるから先にアルクスの森で待ってて!」
私は走り出す。ソウが察して、駆け寄ってきてくれる。私は走りながらソウの首根っこの毛を掴み、飛び乗る。ソウの翼が開く。それはまるで、銀を辺りに散りばめたようだった。何度も見たそれが、今日はなんだか特別だった。ソウが後ろ足で地面を蹴って宙を舞う。このまま宇宙へ行けるのかもと思う。でも、私が行きたいのは違う。昼の日に照らされ、私はペンナ山の反対側の山、リュコス山へ向かった。ペンナ山は私とアルスが交わる場所。アーラ峡谷の裂け目は私達が住む場所。リュコス山はアルスが住む場所。武器はアルスに管理してもらう。だから、いちいちリュコス山に向かうのだ。面倒だが、伝統なので仕方がないと私は諦めた。
---
私はアルクスの森の中でミナリカさんと鳥を伐ち落とそうとしていた。木々の間に隠れ、息を潜め獲物を待つ時も夢の中のソウの答えのことが頭の中をぐるぐる回っていた。思い出せない歯がゆさの裏で、思い出したくないと思う自分もいる。それが、腹立たしかった。
セレ「ソウと私って…………何なんだろう。」
その呟きはミナリカさんには聞こえなかったみたいだ。ミナリカさんは無言で空を指差した。そこには空を舞う鳥がいた。私は弓の弦を引く。ソウのことが頭を回る。手が震える。矢が空を突き抜け、鳥へ飛ぶ。鳥が避ける。矢がスピードを落として地へ落ちる。
セレ「あ…………。」
ミナリカさんが怪訝な顔をして、言った。
ミナリカ「ねぇ、セレ、今日はやめといたら?何か考えてるでしょ?」
セレ「………はい。」
私は渋々ソウとアルクスの森を離れ、家へ向かった。
---
オリバー「セレ?聞いてる?」
セレ「へ?」
私は夕食の席でオリバーに呼ばれ慌てて返事をする。リライナが心配そうな顔で私を見る。
リライナ「セレ、大丈夫?」
セレ「う、うん平気平気。大丈夫…………。」
私は引きつった笑みを浮かべながらビーフシチューを喉に流し込む。やっぱりオリバーの料理は美味しい。
リライナ「何でも吐き出しなさいよ。あ、吐くのは禁止!」
オリバー「掃除が大変なんだから。」
セレ「分かってる分かってる。」
私は苦笑いしながら言う。心の底から笑えない。
今、悩んでいることはなんだろうか?私は木のスプーンを置くと、口を開く。自然と言葉が出てきた。これが、嘘偽りのない私の本心。
セレ「私は、外の世界へと行きたい。」
あとがき
いい物語は「この物語がどこかの世界で本当に起きている」と感じる物語。
私はそれが創りたい。
みんなにできているそれをしたい。
セレは実在するかもって思わせたい。
それだけです。
三話「覚悟の末に、私は___」
リライナ「セレ………!」
リライナが反論する前に、オリバーが机を叩いた。ビーフシチューの入った器が宙に浮き、戻る。
オリバー「セレ、本気か……?」
セレ「………うん、本気。」
オリバーは怒るとも悲しむとも言えない表情でセレを見つめた後、席を立った。
オリバー「………今日はごちそうさま。」
オリバーは歩いて扉の前まで行く。静かに閉まる扉を、私は寂しげに見つめた。
---
ベッドに入って、私はオリバーのことを考えた。オリバーは多分本気で心配してくれたんだと思う。だって、彼の父は外の世界に行って帰って来なかった内の一人なのだから。オリバーの父はオリバーと病弱な母を置いて相棒と出て行ってしまったのだ。その後、何年かしてオリバーの母は私の父と同じく流行病で死んだ。それで、私達の家に引き取れた。だから、オリバーが心配するのも分かる。
セレ「分かってるよ………外の世界は危ないことくらい………。」
私は闇の中に溜まったものを吐き出した。それは闇の中に溶けて、混ざって消えた。考えることが多かった。私はしばらく唸った。
---
五時半、私は物音で目が覚めた。窓の外に誰かがいる。窓を開けて確認するとそれはソウだった。
セレ「ソウ!?」
ソキウス「セレ、悪い予感がする!」
切羽詰まった様子のソウに私は不安をおぼえる。ソウ、アルスの悪い予感は大抵当たる。私は素早くベッドから出て着替える。ソウが翼の付け根から弓矢を取り出した。私はそれを持つと部屋を出て、大声で叫んだ。
セレ「ソウのお告げが来た!!」
私はソウが悪い予感がすることをお告げと呼ぶ。すると、隣の部屋の扉が壊れんばかりの勢いで開いた。出て来たのは寝癖をつけたオリバー。
オリバー「本当か!?」
オリバーの答えに私が頷いているところに、リライナも来た。包丁を持っているところを見ると、料理中だったのだと思う。
リライナ「ソキウスは!?」
私は部屋の窓を指差す。リライナは大声でソウに確認する。
リライナ「本当!?どんな予感!?」
ソキウス「分からない。けど、これまでとは比べものにならないくらい、大きな災いだ。」
ソウの言葉に、私達は喉を鳴らす。オリバーは自分の部屋に走って戻った。着替えに行ったのだろう。リライナは私の部屋の机に包丁を置く。
リライナ「ソキウス、私の武器を取りに行かせてくれる?」
ソウが頷くと、リライナは窓から外に出た。リライナが跨がると、ソキウスは地面を蹴ってリュコス山へ向かった。それを見届けると、私は振り返った。そこには、開けっ放しの扉の前に佇むオリバーがいた。オリバーは私に気づくと手招きした。私はオリバーの元まで行く。
オリバー「セレ、外の世界に行きたいって気持ち変わんないのか?」
セレ「うん。変わらない。」
オリバーは長いため息を吐き出し終わると、壁の背に座り込んだ。私も倣って座り込む。
オリバー「俺は反対だ。外の世界に行った父さんは帰って来なかったから。」
セレ「うん。」
オリバー「俺はセレとは血のつながりはないけど、家族みたいなもんなんだ。」
セレ「うん。」
オリバー「だから、家族を二人も外の世界に行かせたくないんだ。」
セレ「うん………。」
オリバー「それに、俺はセレが好きだ。」
セレ「は!?」
私は思わず素っ頓狂な声を発する。オリバーの横顔を見ると、顔が耳まで真っ赤になっていた。どうやら本当なみたいだ。私は意地悪な顔で立ち上がる。そして、オリバーの前に仁王立ちした。
セレ「私が好きだと?」
オリバー「あ、ああ………。」
セレ「この私が恋愛に興味あるとでも?」
オリバー「だよなぁ~………。」
オリバーはがっくり肩を落とす。俯くオリバーを私は勢いよく抱き締めた。
オリバー「セレ!?」
私もずっと思っていた。11年しか生きてないけど、オリバーといると楽しかった。次第に、これって恋なのかなと思っていた。私は口を開き、精一杯の笑顔を向ける。
セレ「私………。」
言い終わる前に、爆破音が聞こえた。一つじゃない、次々に爆破音と悲鳴が聞こえた。そして、すぐ近くでなった爆破音は、玄関からだった。
?「谷の子は一《《匹》》残らず全員殺す。」
玄関から聞こえた声と、殺気。私はオリバーの口と自分の口を塞ぐ。ソウはまだ帰ってこない。相手は一人。私は手元の弓矢を見る。
オリバー「__セレ………。__」
セレ「__オリバーは隠れてて。__」
私は弓の弦を指ではじく。弦はピンと張っている。私は矢筒から矢を一本取り出す。相手は多分大人。この一本を外せば死ぬかも知れない。それに、人を殺すことになる。私は両手を見る。この手が血で染まる。
私は、大きく息を吸い込み、吐き出す。そして、覚悟を決めた。大切な人を守るためなら。
セレ「上等だ。人でも何でも殺してやるよ………。」
あとがき
セレよりもオリバーが好きです。
オリバーって聞くと白髪に少し赤が入ったあっちのオリバーが………分かる人いますかね?
いたら教えてください。
けど、その後に登場するあいつも好きだ。
第二章が楽しみだ。
四話「私と引き替えに、君は___」
オリバー「セレ、何するつもりだ。」
オリバーは小声で静かに怒りをはらんだような声で言う。私は唇に指を添え、静かにと言うことを示す。そのまま、どうやって敵を倒そうか考える。相手は大人なのだから奇襲で倒す以外ないと思う。そうすると、非常口を出て、迂回して玄関が見える窓を開け、相手の頭部を狙う。いや、武器を持ってある手を狙うでもいいかも知れない。無闇に殺したくはない。
セレ「オリバー、私は敵を討ちに行く。だから、待ってて。」
オリバー「だったら俺も!」
セレ「オリバー、あなたは武器を持っていない。」
オリバー「っ!」
相棒がいない子供は武器を持たせてもらえない。だから、オリバーは戦えない。突き放す言い方だけど、これでオリバーが諦めてくれるならそれでいい。落ち込んでるオリバーを置いて、私は非常口へ向かう。その手を、オリバーが掴んだ。
セレ「オリバー、離して。」
オリバー「いかせない。」
セレ「離せっていってるでしょ!状況考えろこの馬鹿が!」
オリバー「馬鹿はお前だろ!俺がどれだけ心配してるか分かってんのか!」
セレ「分かって………。」
オリバー「分かってないだろ!?父さん失って!母さん失って!好きな人も失うかもしれない気持ちになってみろよ!」
オリバーの声に、私は反論の言葉が思い付かなかった。涙で顔を歪めるオリバー。その時、銃の引き金を引く音が聞こえた。
オリバー「セレ!!」
セレ「え………。」
銃声が耳を貫く。オリバーは私を抱き抱える形で床に倒れていた。ポタポタと液体が垂れる音がする。私は音源を探す。それは、すぐ近くにあった。私は真っ青になる。オリバーは肩から血を垂らしていた。
?「一匹発見。」
声がして、私は横を向く。軍服を来た男が銃を持ってこちらに近づいてきた。
軍服の男「動くな。そうすれば苦しまずに殺してやる。」
男の声からは殺気も哀れみもなかった。ただ、着々と作業を進める。そんな感じだった。私はそのことにはらわたが煮えくり返る程の怒りをおぼえた。それは、明確で純粋な、`殺意`。私は自分でも驚くほど速いスピードで男に接近し、固めた拳を男の鳩尾に沈めた。
軍服の男「うっ!」
男がひるんだうちに私は男から銃を取り上げると、男の脳天に向けた。
セレ「死ね。」
私が引き金を引く前に、羽が私の手の甲を裂いた。私は銃を取り落とす。
セレ「誰だ……!」
ソキウス「そこまでだ、セレ。」
羽を飛ばしたのはソウだった。途端に私の中にあった赤いものが無くなり、青く変わった。
セレ「ソウ!」
私はソウに飛びつく。美しい白銀の毛はボサボサで、息も上がっている。
ソキウス「セレ、聞いてほしい。現状、リライナが殺られた。不意打ちを食らった。守れなかった………すまない。」
セレ「ママ、が?」
私は足元から崩れ落ちる。視界がぼやけ、背中を冷や汗が伝う。そんな私をソキウスが鼻で慰めてくれた。悲しがっている場合じゃないと思い、私は涙を拭いて立ち上がる。
ソキウス「谷の子はアルスと一緒に脱出する。オリバーはいるか?」
セレ「オリバー………。そうだ!オリバーが!」
ソウは壊れた玄関から家の中へ入る。私はソウをオリバーの元まで連れて行った。私はオリバーの胸に耳を押し付ける。脈も呼吸も浅い。
セレ「オリバー、死んじゃうの!?」
ソキウス「落ち着け。止血をするんだ。それからリュコス山で採れた薬草を持ってきなさい。」
ソウの指示に私は従う。奥の棚にある包帯と薬草。それから白いタオルを持ってきた。私はタオルを傷口に押しつけ、体重をかける。血がジワリと滲む。ソウは薬草を見つめた。薬草が青い光に包まれ、浮く。ソウが何かを呟くと、薬草は粉状に変わった。私は薬草をタオルに付け、再び傷口に押し当てる。それから包帯を少しきつめに巻いた。
ソキウス「これは応急処置だ。一時間後くらいにまた動けなくなる。」
ソウが言うと同時に、オリバーが起き上がった。私は目を見開く。あの薬草はとんでもない代物だったらしい。薬草収集をサボらなくてよかった。
オリバー「あれ?俺は………?何でここに?」
セレ「オリバー!」
私はオリバーに抱きつく。すると、オリバーは心底嫌そうな顔で私を引き剥がした。
オリバー「セレ頭おかしくないか?」
セレ「なんで!?おかしいのはオリバーでしょ?私のこと、す、好きなんでしょう………?」
私が顔を真っ赤にして言うと、オリバーはため息をついた。
オリバー「あのなぁ?俺みたいなイケメンに好いてほしいのは分かるが、俺はお前が好きじゃない。」
セレ「え………?」
ソキウス「セレ、言いにくいんだが。月蓬華草は使うと、記憶の混乱を引き起こす。それは、感情にまで及ぶ。」
ソウはそこで言葉を切った。私は分かった。感情に混乱が起きて、オリバーは私が好きという感情を、無くしてしまったんだ。
あとがき
オリバーが好きです。
格好いいじゃないですか?今回はそんなオリバーの話でした。
軍服の彼は何者なのか?
セレはどんな選択をするのか?
五話でも会えることを楽しみにしています。
五話「火の空の下で、私は___」
後一話で一章終了。
オリバー「セレ、どうしたんだよ?どっか具合悪いのか?」
セレ「………ううん。オリバー、撃たれたけど記憶ある?」
オリバー「へ!?撃たれた!?誰に!?」
ソキウス「そこの人に。」
ソウが羽で軍服の男を指差す。思ったより近くにいてオリバーは驚いたのか飛び跳ねる。
セレ「取り敢えず、ソウに乗って逃げるよ。」
軍服の男「いや、お前は死ぬ。」
男が口を開き、笑った。私は銃口を男の頭に突きつける。しかし、男は笑ったまま、逆に銃口に頭に押し付けた。
軍服の男「あの方が来る!お前は死ぬ!」
男は言うと同時に、腕を伸ばす。そして、私の指の上に指を添えると、私の指を圧した。軽く鈍い音が響き渡り、私は反動で床に倒れる。
セレ「ッ!」
私は男の方を見る。男は額から血を流していた。死んでだのだ。私は恐怖と共に知った、人間はこんなにもあっさり死ぬのだと。男の指に圧されたからとはいえ、引き金を引いたのは私だ。手に残る死の感触を私は一生忘れないだろう。私は自分の指を見つめる。引き金を引いたのは人差し指。この指で、私は人を殺したのだ。
オリバー「セレ………?」
オリバーの声に私はハッとする。私は廊下に立てかけてある弓矢を手に取る。
セレ「行こうか。」
---
外は焼け野原だった。家は破壊され、放火されていた。ペンナ山やアルクスの森は赤く燃え上がり、空は夕方でもないのに真っ赤に染まっていた。
セレ「誰が………。」
?「こんばんは。」
後ろから声をかけられ、私は振り返る。後ろで髪を束ねた黒髪のスーツの男が笑顔で手を振っていた。私は男の手を見る。剣を持っていて、手は血だらけだ。私はそれを見て鳥肌がたった。生物的本能が告げている。こいつはヤバい、勝てない、と。私が一歩後ずさると、スーツの男が消えた。
オリバー「セレ!」
セレ「!?」
私は咄嗟に頭を下げる。頭の上すれすれを剣が通り抜ける。髪がはらはらと舞い落ちる。
男「ほぅ………。なかなかですね………。」
男は目を細めて笑う。そして、ゆっくりとお辞儀をした。私はその瞬間に鋭く尖った石を投げる。石は男に当たる直前で粉々に砕け散った。男は顔を上げる。
男「申し遅れました。私、ルードゥス・フルオールと申します。以後、お見知りおきを。」
男、ルードゥスは頬笑む。
ルードゥス「ああ、失礼失礼。貴方方は今宵死ぬのでしたね。」
ルードゥスは顎に手を当てて考える。そして、手を掲げた。すると、私の目の前に剣が刺さった。私はルードゥスの手を見る。剣は握ってある。
ルードゥス「じゃあ、始めましょうか。夜のショータイムを。」
ルードゥスが消え、私は剣を持つ。土ぼこりが舞い、私はそこを斬りつける。ルードゥスの剣と私の剣がぶつかり合い火花を散らす。オリバーに退避してほしいが、一瞬でも気を抜けば死ぬ。ルードゥスの剣が私の首元に迫る。私はルードゥスの心臓を刺せるようにする。
ルードゥス「やはり貴方は面白い………。」
ルードゥスの声と同時に膠着状態が動き出す。ルードゥスの剣が私の頬を掠める。私はルードゥスの肩を斬りつけようとする。ルードゥスは身をそらせて私の剣を避けた。それから、三歩ほど後ろへ退く。
ルードゥス「ふむ。貴方、あの方の娘さんでしょうか?」
ルードゥスは私をじっと見る。私は肩で息をしながらルードゥスを睨む。おかしい。私は汗だくなのにルードゥスは汗一つかいていない。
ルードゥス「なんでしたかな……。そうです、"リライナ"でしたかね?」
私は全身の毛を逆立てた。視界が真っ赤に染まり、剣を持つ手が震える。ルードゥスは口角を上げた。
ルードゥス「あの方も強かったですね。しかし、私には遠く及ばなかった。残念です。貴方も終わらせてしまいましょう。」
ルードゥスが言い終わると、私は地面を蹴って大きく振りかぶった。ルードゥスの剣が私の腰を狙う。しかし、私はその剣を踏んで更に大きく跳ぶ。そんなこと、普通の私ならできない。けど、なぜかすごく遅く見える。ルードゥスは初めて驚いた顔をした。ルードゥスは素早く退く。ルードゥスの白い肌に一筋の血が伝い落ちる。
ルードゥス「貴方は………。その目………。」
ルードゥスが手を伸ばす。私の視界はなにか白いものに遮られた。ソウが雄叫び声を上げる。
ルードゥス「くっ………。」
ソキウス「失せろ。お前には彼女がなにか分かるはずだ。」
白い視界の奥で聞こえるソウの声。
ソキウス「お前は彼女を殺せない。」
ルードゥス「そうですね、ここは退かせてもらいましょう。」
ルードゥスは指を鳴らす。すると、翼の生えた人間が下りてきて、ルードゥスの手を掴んだ。
ルードゥス「では、また会いましょう。」
僅か五分ほどの死闘は呆気なく幕を閉じた。
オリバー「セレ!大丈夫か!?」
オリバーが近寄ってくる。私は一歩歩く。疲労で足が震え、膝をつく。
セレ「オリバー………大丈夫………。早く、外の世界に………。」
オリバー「…………俺は、ここに残る。」
あとがき
ルードゥス好きな方挙手してくださいって言われたら私は真っ先に挙手します。
よくないですか?
紳士系戦闘狂っぽいの。
歪んでるのは自覚しています。
とにかくルードゥス好きは挙手してください………。
六話「赤い目の少女を、追い__」
オリバーの返事に私は驚く。
セレ「なんで…………どうして…………?」
オリバー「ここが、俺の故郷だから。」
オリバーは笑みを浮かべる。その言葉が腑に落ちてしまう。私は納得の考えを頭から消す。
セレ「一緒に……行こう。」
オリバー「バーカ。お前が外の世界行くからだよ。」
私はまたしても驚いた。
オリバー「ほら、お前が戻って来たときに、誰がおかえりって言うんだよ?」
オリバーは私の髪を撫で回す。オリバーらしい回答に私は笑った。
セレ「待ってて、私は必ず戻るから。」
オリバー「おう。」
私はオリバーと拳を打ち合わせた。仲良くしているのが不満なのかソキウスがオリバーと私の間に割り込んできた。私はソキウスの背に跨がる。オリバーはその時にはもう私に背を向けて歩いていた。私達に、別れの言葉はいらない。
セレ「オリバーらしいや。」
私はオリバーの背を愛おしげに見つめると、ソキウスの羽の付け根を軽く叩いた。ソキウスが飛び立ち、私の、私達の故郷が遠ざかる。さようならはいらない。
セレ「またね!」
---
---
---
俺は腕時計を確認する。時刻は午後十時。谷の子の生き残りがいないか探す。
仲間「全く無慈悲なもんだよな。女子供も殺せってなぁ…………。」
俺は仲間の言葉に大いに共感した。いくら汚れた谷の子だからといってここまでする必要性はないと思う。
仲間「俺らは第二部隊でも下っ端だから死体処理しかしなくてすんだけどな。」
俺「俺らはランクIIだから戦闘しても無駄足だろ?」
仲間「確かにな。今回はえぇっと、幹部のルードゥスが来てんだろう?」
俺「マジで!?ルードゥスってランクVIIだろ?」
仲間「でも、あれでまだVIIか………。上に後3もあんだぜ?」
俺「やべぇな。」
そんなことを言いながら歩いていると一人の少女がいた。黒いフードを被って、黒髪を二つに結んでいる。赤い目の少女。十歳くらいだろうか?俺は銃を構える。谷の子は問答無用で撃たなければならない。
仲間「悪いな。嬢ちゃん。」
仲間が発砲する。しかし、死んだのは仲間の方だった。額にナイフが突き刺さっている仲間の亡骸を俺は呆然と見つめる。
少女「危ないなぁ。少女に発砲するなんて。」
少女の後ろには無数のナイフが浮いていた。少女は舌なめずりする。
俺「お、お、お、お前は…………?」
少女「全く。|半端な怪物《セミ・ベールア》を解き放ちやがって…………。あ、君達からしたら|羽狼《アーラルプス》だっけ?それとも、まだ|親を喰らう狼《パレンス・エデレルプス》で通じる?」
俺は地面に尻を打ちつける。少女のナイフが刻一刻と迫る。
少女「あ、私の名前?お前たちが恐怖する者。太古から人間が恐怖する者。」
少女のフードが風に飛ばされる。どす黒い赤の目は下等生物を見下す目をしていた。
少女「闇___。」
少女の声を最後まで聞く前に俺の骨をナイフが砕いた。
---
?「なんで殺してこなかった。ルードゥス。」
重く響く声に私は顔を上げられなかった。
ルードゥス「お言葉ですが、彼女はイグニスの血をひいています。」
?「全滅したんじゃねーのイグニスの血。」
?「してなかったらそんなこと言ってないでしょ?ね、ルードゥスちゃん♪」
甘く絡みつく言葉と軽い笑い声。彼らはイグニスの単語を耳にしても恐れない。
?「確認する。彼女の目は何色だった?」
ルードゥス「普段は青色。怒ったときに燃えるような赤へ変化しました。」
?「なるほど。つまり、研究材料になるから殺さなかったっていいてーの?弱虫くん。」
前髪を掴まれる。
ルードゥス「申し訳………ありません…………。」
?「よしなよ、弱いものいじめは。」
?「ハイハイ。お前は子供が好きだねぇー。」
?「無駄口はいい。次会ったら殺せ。」
?「今度は弱虫くんじゃなくて俺にやらせてくださーい!」
?「いや、今回のことはルードゥスの成果を示すのにもってこいだ。」
重くのしかかる視線。
?「戻ってくるのだろう?」
ルードゥス「………彼女は、私が殺します。」
?「頑張ってねー!ま、俺には勝てないだろうけど。君は才能がないじゃないか。」
ルードゥス「………失礼いたします。」
私は扉を閉める。天才たちに囲まれての会議は疲れる。私はまた戻ってくる、上へ。そのためには、彼女を殺す。私はニヤリと笑った。
ルードゥス「待ってろ、小娘が。」
あとがき
終わった。
一章が終わりました。
オリバーとルードゥスと他三人は登場させる気のなかったキャラクターです。
強引に乱入してきたんですよ。
文句はキャラクターに言ってください。
では、また二章でお会いしましょう。