天才ちゃん!(日本Ver.)駄作
編集者:ことり
なんでも出来すぎて、いつの間にか褒められることがなくなっていた。
これは、そんな天才ちゃんが幸せになる物語である。
天才少女を書こうかなーと思い立ったのがきっかけで…
日本以外にも平民、貴族のバージョンがあります!
立ち消えの可能性、完結の可能性、どちらの可能性もあるので、生暖かい目で見てください!
追記)最終話12まで、予約投稿しました。
しかし、結末はおざなりです。読まないことを推奨します。
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目次
天才ちゃん!1
「あの子、気持ち悪いわ…」
私は、そう言われてきた。もちろんそれを言っている人は私に気づかれているとは思っていない。気づかれてもいいとは思っているかもしれないけど。
私がそう言われる|所以《ゆえん》は、2歳のとき。
私がお母さんに絵本を読んでもらっている時に、文字を読めるようになったことから始まる。
「もうママは読まなくていいよ。」
多分そう言ったんだと思う。理由を聞かれて、自分で読めるから、と言ったら驚いた顔をされた。
そこからお母さんは私がまだ読めない、漢字の入った本を読み聞かせてくれ、また同じ事を言い…3歳では大抵の本を読めるようになっていた。
最近の本は大抵難しい字に送り仮名がついているから、あまり多くの漢字を知らなくても、基本的なものさえ知っていれば読める。
それ以降、お母さんは読み聞かせをしなくなった。
今は、お母さんに悪いことをしたなって思ってる。
また、幼稚園では、絵を描く時間がある。
私もはじめは見るに堪えない絵だった。
しかし、1ヶ月くらいハマっちゃうと、普通にかけるようになっていた。
もちろんそれは見たものそっくりで、独創性などがあったわけではない。
先生にこういうふうにしなさい、と言われれば、多少実際の形をゆがめても、そのとおりにした。多分、その方がいいのだろうから。
そうやって描かれた絵は、幼稚園児が作るには、出来過ぎていた。
習い事もした。
水泳、歌、ピアノ、そろばん、くもん、卓球…
月に2,3回しか行かなかったけれど、楽しかったし、実力もあった。
また、話は運動にもいく。
私はドッヂボールも得意だし、縄跳びも得意だし、逆上がりもできた。フラフープもホッピングも得意だった。こま回しも得意だ。
だから、みんながどこで困っているのか分からなかった。
…私ができたのは、見本を見せることだけだった。
それでもみんな純粋だったんだろう。
私を褒めてくれた。すごいすごい言ってくれた。
私もまだその頃は純粋で、誇らしく思っていた。
…その場所は、居心地が良かった。
しかし、何を思ったのだろう、両親は、私を受験させた。
遠い学校に。しかも、まあまあ偏差値が高い学校らしい。
そろばんとくもんのおかげか、普通に受かった。
両親は新たな仕事もちゃんと見つかったのか、引っ越した。
小学校は、正直言って、つまらなかった。
テストで百点は余裕で取れるし、他の人も取っている人が多かった。
あと、みんな私に話しかけてこない。話しかけたいな、と思う子がいても、嫌われてるかも、と思うと話しかけづらい。
だから、みんなが楽しく遊んでるのを見ながら、私は近場の美術館や博物館、科学館に水族館、動物園、植物園など、いろいろ通った。
今も、その知識が生きているのを実感できる。
中学は、寮にした。
親の前だと、少し息苦しい。多分、幼稚園のころから見られているから、変化を見せて、失望されるのが怖かったんだと思う。
受けたのは、小学校の先生に勧められたところ。
首席だったから、先生は私でも余裕で受かるところを勧めたんだろうけど、ここでも日々はつまらなく、行事では、自分ひとりでやったほうがはるかに効率がいいと歯噛みし、放課後は、いろんなところに行った。
小学校の時と別の都会だったので、また色んなところに行って、知識を蓄えていた。
高校も、中学の先生に勧められたところを受けた。
またまた首席だった。中学の先生も、どうやら余裕で受かる高校を選んでくれたようだ。
中学に近く、ここは親に頼んで下宿にしてもらった。
寮だと、ルームメイトの人と全然喋らなくて気まずいから。
そして、今。高校3年生のはじまり。私はそこにいる。
天才ちゃん!2
主人公…|金糸雀《かなりあ》|悠《ゆう》
友人…日暮静香
「悠ちゃ~ん!」
名前を呼ばれた気がして振り返ると、校門の方に悠ちゃんがいた。
手を振って、その場で待つ。
しずちゃんは、2年生の時、初めて同じクラスになった子。
みんなから嫌われている私にも話しかけてくれる優しい女の子。
「おはよ~。」
しずちゃんが追い付いてきた。走って来てくれたらしい。息を切らしている。
「おはよ~。クラス替え、楽しみだね。」
「楽しみ?つまり、うちと別れたいの…?」
「違うって、新しい環境になるのが楽しみだよねってこと。しずちゃんと同じクラスになれるならそれに越したことはないよ。」
「本当!?」
目を輝かせてくるなぁ。こんな私の何がいいんだろう?
「そうだよ…あ、人がめっちゃいる。」
「本当だ。あそこに行かなきゃだよね…?」
「だろうね。」
手で、頬をパンッとたたいて、
「よし、行こう!」
呟いた。
「行こっか。」
「理系って、1,3,4組だよね?」
「うん。」
私もしずちゃんも理系だ。進路も二人とも理系。必然的に同じクラスになる確率は高くなるが…
1組は理系を選んだ人でも成績がいい人が集まる特進クラス。
他2クラスは、そこに行けなかった人たち。
一組は…日暮…ひ…日暮静香!
「しずちゃん!すごい!1組だ!めっちゃ勉強していたもんね。」
「そうだよ!一緒のクラスだね!」
「え?私も1組にいるの?」
「いるにきまってるじゃん!悠ちゃんだもん!…あ、ほらあった!」
「本当だ!今年もよろしくね!」
それにしても、なぜ私が一組にいるのが当たり前かのようにしずちゃんは言ったのだろう?
「あぁ~本当に良かった~。」
隣で人一倍胸をなでおろしているしずちゃん。本当に良かったなぁ。
私も、悠ちゃんと一緒なら、しゃべれるし、本当にうれしい。
「じゃ、邪魔になるし、教室に行こっか。」
「うん!」
扉を開けると、まあみんな新しいクラスメイトが気になるのだろう、顔を向けてくる。
そして、そのあと、自分のしていることに戻る。
自習室とかでもお決まりのこれがおこる。
これって実際やられる側ってまあまあ気まずいんだよね…みんなはどうなんだろう?
---
今年も悠ちゃんと同じクラスだー!
それを見て、めっちゃくちゃうれしくなった。
去年の四月、初めて同じクラスになった学年一の秀才であり、この学年の首席である悠ちゃんに声をかけた。
彼女を始めて見たのは始業式。新入生代表挨拶をした彼女に思わず見惚れた。
彼女は見た目の良さに秀逸さを兼ねそえているすごい人。
あんまり、悠ちゃんから声をかけることがないせいか、みんな声をかけずらいという雰囲気ができている。
それに抗って悠ちゃんに声をかけてみたけど…彼女は冷たいと思っていたイメージとは全然違い、喋っていて楽しいし、表情も変わる。そして…なにより無自覚だった。
自分が話しかけられないのは嫌われているから。
成績がいつも一位なのはあたりまえすぎて、みんなもそうなんじゃないの?と思っていて、うちの点数を見せてみれば、ここはこう間違えてこうなって、これは文章読んでいないだけ、などと、理由を見つけ、「ほら、しずちゃんでも満点とれるでしょ?」と無邪気に聞いてくる。
その一瞬は取れそうかも、と思ってしまうのだが、いざ次のテストが来ると、やっぱり満点なんてとれるわけがない、と思う。
だって問題が難しいんだもん。
悠ちゃんは、人をその気にさせる天才だ。
天才ちゃん!3
「先生が、3年1組の担任だ。|小鳥遊《たかなし》|丙《ひのえ》という。小鳥が遊ぶでたかなし、甲乙丙丁の丙でひのえ、だ。国語を担当する。これからよろしく頼む。自己紹介?するか?したいやつは手を挙げろー!」
そういって呼びかける小鳥遊先生。
「はい!」
一人だけ威勢良く手を挙げたやつがいた。
「一人だけか?」
みんな、周りを見渡し、頷く。
「うーむ…じゃあ、一人だけ、自己紹介するってことで!いいよ、自己紹介しろ。」
「えー俺だけですかぁ~。まあいいや。|高麗《こうらい》|譲《ゆずる》です。下の名前は、謙譲語のじょうの譲で、謙虚な子になりますように、という願いが込められていますが、こんなになっている人です。1年間よろしくお願いします。」
淀みなく述べられた自己紹介。笑いを取れること。新鮮だった。
「他にやりたい人はいるか?」
みんな周りを見て首を振る。
「じゃあ、今日はこれで終わりだ。今年は分かっているだろうが、受験だ。勉強を怠らないように。じゃ、解散!」
わちゃわちゃみんな帰りだす。
さあ、勉強でも頑張ろうかな…
「悠ちゃ〜ん。」
「ん?どうした?」
「すごいよ、このクラス。今さらながら足が震えてきた‥」
「何かあった?」
一応教室であったことをを思い出してみるが特に何もなかったような気がする。
「悠ちゃん知らない?まずあの小鳥遊先生は、ちょー評判いい先生。他校から引き抜いてきたんだって。で、さっきの高梨くんは運動もできるし勉強もできる秀才。バスケットボール部の部長をしているんだよ?他にも大会社の御曹司もいたし、研究者の子供さんもいたんだよ!すごい人がめっちゃいるんだ!もちろん悠ちゃんもね!」
「最後のは一体何?」
「まあそれは置いといて、1組って理系のせいか女子少ないじゃん?」
「まあ40人中10人くらいだったかな?」
「そう!で、みんなで仲良くなろーと言うことで、今からカラオケ行かない?」
「私が行っても何もいいことないよ。というか迷惑かけるだけだし行かないほうがいいと思う。」
「大丈夫だって。悠ちゃん歌うまいし。」
「そういう問題じゃなくて、まず私が行くこと自体に…」
「あ~もう、言っちゃうけど、うちは、悠ちゃんを連れてこい、って頼まれているの!」
「え?」
「はいはい行くよ〜」
「ちょっと…歩くから!だいたいしずちゃんは私を引っ張れないでしょ!」
「そりゃあねぇ、悠ちゃん身長も高いし体幹もいいもん。簡単には動かないって。」
「はぁ。」
「あ、金糸雀さん来た!」
「日暮さんありがとう!」
「いえいえ〜」
「じゃ、行こうか。」
「だね」
「早く行こうよ。」
「ねえねえしずちゃん。これってもしかして全員いる?」
「そうだよ?」
これ集めた人すごいなぁ。
「着いたー!」
「いえーい」
「じゃ、うち受付行ってくる。」
「ありがとう日暮さん。」
受付に行ったしずちゃんが帰ってきた。
「5号室だって。悠ちゃん、行こう」
「うん。」
みんなが入ったのを確認して、扉を閉める。
「まず誰行く?」
誰もいない…悪い予感が…
「よし、それじゃあ悠ちゃん行こっか。」
当たっちゃった…
「だからなんでそうなるの?まずはしずちゃんが行こうよ。」
「まあそっか…悠ちゃんが行くとみんな気後れしちゃうし…」
何を言っているのかな?しずちゃんはいったい。
「じゃあ行きまーす。次は悠ちゃんだよ」
「え?だから何で!?」
あぁ~いやだな~嫌だな~と思っていたら、しずちゃんの歌が終わった。
「はい。」
マイクが渡される。
「分かったよ。」
「えーと…これでいっか。」
一番上にあった曲を選んだ。YOASOBIの「アイドル」。聞き覚えがあるから多分歌える。
---
無敵の笑顔が荒らすメディア♪
金糸雀さんのその最初を聞いただけで戦慄した。
この人、すごい上手い。
なにもためらわないでこの曲を選んだし、肩に力もかかっていない。
これが金糸雀さんの自然なんだ。
机にあったタンバリンを思わずつかんで、曲に流されてしまった。
金糸雀さんも冷たい人だと思っていて、席が隣で気まずいなぁって思ってたけど、結構明るいし…
決めた!金糸雀さんの友達になる!
---
あぁ、やっと歌ってくれた。
今日、クラスの女子全員を集めて、カラオケに来たのは、全部悠ちゃんに自信を持たせるためだ。
悠ちゃんは嫌われていない、ただ、いい意味で近寄りがたいだけなのだ。
それを気付かせる意味も込めて、この場を作った。
|夕川《ゆうがわ》|乃蒼《のあ》ちゃんが、タンバリンでリズムをとっているのを横目に見ながら、うちは成功を確信した。
---
歌っていると、一人、タンバリンをもってリズムをとってくれる女の子がいた。
背がちっちゃくてかわいいなぁ。すこし驚いたけど、歌い続ける。
…その後、楽器が増えた。
歌い終わったとき、机にあった楽器は全部消え、みんなそれぞれ片手に何か持っていた。
そして、大きい拍手が来た。
「ライブみたいだったよー」
「金糸雀さんって歌もうまいんだね」
そう言ってくれたのはタンバリンの子。
「ありがとう。」
みんなも歌っていき、また回ってきた。
「何か歌ってほしいもの、ある?」
しずちゃんに聞いてみた。あわよくばこれを聞いた他の人が答えてくれないかな、って思いながら。
運のいいことに、タンバリンの子が答えてくれた。
「私、晩餐歌歌ってほしい!」
「あ、いいね!」
しずちゃんも頷いてる。
「じゃ、それで」
多分歌えると思う。
あぁ~楽しかった〜。
みんな私が歌っていても快い反応だし、2人もいいけど、こんなふうに大人数なのもいいかなって思った。
今年は去年よりもっと楽しくなりそう。自然とそう思えた。
天才ちゃん!4
「おはよ~」
朝、教室に入ったら声をかけられた。しずちゃん以外から声をかけられるのは…初めてかもしれない。
普通の人は嫌われ者に声はかけないからね。
昨日のカラオケのおかげだろうか?
それなら嫌々でも行って、よかったかもしれない。
「おはよ?」
「おはよー!」
返したら後ろからしずちゃんがやってきた。抱きつかれるのはちょっと嫌だ。
「こら、抱きつくな。」
「えぇ~いいじゃん。」
「ダメ。暑苦しい。」
ぶーぶー言っているけど、離れてくれた。
「おはよう。」
改めてさっきの女の子に言う。
確か、昨日はじめにタンバリンを叩いてくれた女の子。
席が隣の、確か|夕川《ゆうがわ》|乃蒼《のあ》ちゃん。
「おはよう」
返してくれた。よかった~。一安心。
---
金糸雀さんに頑張って声をかけてみた。
日暮さんに危うく邪魔されかけたけど、金糸雀さんは、また声をかけてくれた。うれしい…!
「金糸雀さん、昨日は楽しかったね。」
---
昨日?あ、カラオケか。
「うん、楽しかった。」
「だよね~。金糸雀さんのときとか、本当にライブみたいだったし!そうじゃなくてもみんなそれぞれですごかった!」
「? あ、うん。みんなすごかったよね!またどこかで一緒に行きたいって思った。」
「だよね~。ねえ、金糸雀さんって何か好きなものあるの?」
「私の好きなもの?_勉強…は嫌いじゃないけど、好きっているわけではないから…_やっぱ読書かなぁ。いろんな人の考え方に触れられるし。夕川さんは?」
「私は音楽聴くのが好き!…ねえ、私のことは乃蒼ちゃんでいいよ?」
「本当!?乃蒼って可愛い名前だよね!私のことも悠でいいよ」
「わかった。悠ちゃんね。」
「うん。そっちは乃蒼ちゃんね。」
「え、いいなぁ。うちも金糸雀さんのこと、悠ちゃんって呼びたいわぁ。」
えーと…確か|久礼川《くれかわ》いろはちゃんだったはず。
「いいよ。わたしもいろはちゃんって呼んでいい?」
「もちろんいいよ~」
かくして、話す人が1人から3人に増えたのであった。
「なあ、金糸雀さん、今日遊びに行かない?」
「どこに?」
「そうだなぁ、ゲーセンとか?」
「じゃあ、遠慮するね」
私と行っても絶対つまんないし。
「何で?」
「ゲームは…ちょっと…あんまりしたことがないから…」
「いいよ!それでも!」
「やめとくよ。」
「そうか…」
「普通にカラオケ行こうぜ。もし行くのなら。」
何故か暗くなった、盛田くんの後ろから、高麗くんが現れた。
「あ、それじゃあ他の人も誘っていいかな?」
乃蒼ちゃんは絶対誘いたい!
「え…」
「別にいいだろ。盛田。」
「あぁ。うん、まあいいけど…_僕は金糸雀さんを誘えれば十分だったし_」
「じゃあ、そうしようぜ。」
「高麗? カラオケ行くの? オレも行っていい?」
「金糸雀さん…だよね?確か。金糸雀さんはいい?」
「私は問題ない…かな。私も他の人呼ぼうと思っていたし…」
「そう。じゃあ30分後に店で。場所は…この店でいい?」
「いいよ。」
縁があるのか、その店はこの前女子で行った店だった。
「乃蒼ちゃん。カラオケ、男子に誘われたんだけど、一緒に来ない?」
「え!もちろん。行くよ!悠ちゃんも行くでしょ?」
「行くけど…」
なんか…私が行くから行く、みたいになっていない?私にそんな価値ないけど…
「悠ちゃーん?なぜ私は誘わないのかな?」
「今から誘おうと思っていたよ。けどカラオケなら乃蒼ちゃんのほうがいいなって。」
私の歌に一番ノッてくれていたからね。
「え〜。うち、去年からの友達なのに〜。」
「いろはちゃんは来る?」
「私は…親がそこら辺は厳しいからなぁ。この前のがバレて少し怒られちゃったからなぁ。また機会があったら誘ってもらってもいい?」
「もちろん!」
「金糸雀さん、少し相談があって…」
「何?」
「妹への誕生日プレゼントで何をあげようか迷っていて…」
妹の誕生日プレゼント?なら妹がいる|江東《こうとう》さんがいいんじゃないかな?
「それなら江東さんがいいんじゃないかな?確か妹いたよ。」
「あ…そう。うん。じゃあ聞いてみる
---
悠ちゃん…これ、意図的ではないよね?
そう思ってしまうくらいあしらい方が完璧だった。
その男は悠ちゃんと話したくて、喋りかけたのに。それを他の人に振ってしまう。
これは男子もたまげたもんじゃあないだろう。
---
天才ちゃん!5
私はこのクラスが気に入っている。
授業が簡単じゃなくて普通になったし、みんなと話せる!
もう何もいらないと思う。
「ねぇ! 今日一緒に博物館行かない? いま特別展やっているんだ!」
しずちゃんに聞いてみた。
「何の?」
「人間国宝のものを集めている展」
「もうちょっと勉強になるのもはないの?」
「うーん…じゃあ、こっちの博物館行こう!すぐそばだし、地学と生物の勉強はできるよ!で、その後こっちに行くの!」
「うーん、まぁ、そこならいっか。その代わり、解説してね。」
「わかった。」
やったー! しずちゃんがついてきてくれる! なんか久しぶりな気がする。
あ、そうだ。
「いろはちゃん、今から博物館行くんだけど、一緒に行かない?ここなら親も大丈夫だよね?」
「博物館?そこなら親も怒らないと思うわぁ。」
---
博物館? そこって友達と普段から行くところだったっけ?
何か特別なときに行くところのような気がするのだけれど。
「? どうした?」
悠ちゃんの行動に少し驚き、少し世間ずれしたところに呆れながら、けど、そんなところもかわいいなぁ、と癒されていたら、不思議に思われたらしい。
「ううん。とりあえず、いけると思う。」
「やったー!」
あぁ〜本当に癒される。
---
聞いてみたところ、乃蒼ちゃんは今日は塾だそうだ。
頭がいい人は大変だと思う。
だからきっと、授業で先生に当てられても、しっかり答えられるのだろう。
私は授業を普通に受けているつもりだけど、当てられない。先生にも怖がられている気がする。
「勉強した勉強した。」
「久しぶりかもしれないなぁ。塾以外でこんなにしたのは」
「本当?あんまり細かいところは教えられなかったけど…」
「十分十分」
「ところで悠ちゃんはどこでああいう知識を知ったの?」
「小学校の時から、ああいう博物館とかには行っていたから。放課後に。」
「どうりで職員さんと顔なじみだったんだねぇ。」
「まぁここらへんに来たのは中学からだけど。で、何回も言っているうちに、職員さんに顔を覚えてもらえて、で、話しかけてくれるからいろいろ聞くようになった。」
「あ、そんな事情があったんだ!そういえば今まで聞いたことなかった。」
「そういえばそうかも。今まで聞かれたことなかった。」
---
私は金糸雀悠が嫌いだ。
小学校は、あいつと同じ学校だった。
中学校でも高校でも、そうなった。しかし、私はあいつがいるかぎり、1位をとることができない。
中学も、高校も、私はあいつの首席の次、あいつが休んだら、挨拶を考えることになる次席だった。
私は高3までの12年間中、8年間も同じクラスだったことがある。
私はあいつのことが好きではなかったから話しかけなかったし、あいつも私には話しかけてこなかった。
あいつの評判は、追いつけそうなものはあいつを嫌い、完全に追いつけない者はあいつを崇拝する。そんな感じだった。
あいつは私と小中高が一緒だったとは気づいていないのだろう。
そして、1位以外を今まで取ったことがないのだろう。
普通の人間ならするミスをしない、人外だ。
小学校の時だって…
あいつは他に何人も100点を取っていたから自分を普通だと思っている。
しかし、あのテスト、最後の方の難易度は高く、全教科で100点を取ることは難しい。みんな、取れていたとしても2教科くらいまでだった。
つまり、そういうことだ。
あいつは周りに興味を持っていない。それなのに自分は話しかけてもらえないときっと思っている。そういうところもムカつく。
高校でもあいつは崇拝を受けていた。
当たり前だ。首席の上に容姿も良く、テストでミスらしいミスをしない。いつも100点で1位は当たり前。
これが崇拝の対象にならないわけがあろうか?
さすがに日本で一番偏差値の高い高校だから、崇拝よりは、憎しみがみんな勝つだろう、などと生ぬるいことを考えていたときもあった。
しかし、みんな崇拝をする。
そして、2位である私には目もくれない。
高校3年生で、また再開したときは、しゃべるようになっていて、これなら超人も普通に感化されるかと思ったが、そうはなっていなかった。
あいつは、あくまでも金糸雀悠。
その本質は変わらない。
いつまでも受動的で、被害者打っているだけ。それで周りに悪影響を与える、いうならば、災厄だ。
---
天才ちゃん!6
放課後に、呼び出され、屋上に行った。
クラスメイトの陸快斗くんだ。
「あのー。」
「何?」
「金糸雀さん!好きです!付き合ってください。」
またこれか。高校入って、いや今年度になって何度目だろう。クラスメイトからというのは今年度初めてだけれど。
「ごめんね。無理かな。」
「どうして?」
「私は今のままが気に入っているの。最近ちょっとビミョーだけど。じゃあね。あと、私は今まで通り接するから。そこよろしく。」
なぜ付き合わないかって毎回聞かれる。
いつもこういうことにしているけど、これは本当だ。
私と付き合っているなんて、申し訳ない。けど、好意を捨てるっていうのもまた申し訳なくなる。
だったら、みんなに嫌われていようが、何の波風も立てないほうがいい。
それが私の出した結論だ。
---
「…かっけぇ。」
扉に戻る金糸雀さんを見て、そう思った。
「あははっ振られちゃったかあ。まぁ、しょうがないよな。」
ここまできれいに振られれば、諦めはついた。
けど、より好きになってしまったかもしれない。
「あーあ。」
そう言って、また笑うのだった。
---
最近、去年までに戻った気がする。
悠ちゃん、いろはちゃん、乃蒼ちゃん以外とあんまり喋れていない。
去年まではこれが普通だったけれど。
あとは、時々男子が話しかけてくるくらい。
私は正直どうでもいい。これが日常だったし。けど、3人とも気にしてくれる。
だから、それに応えたくなってしまう。
「これ、絶対嫉妬だよね?」
「うちもそうだと思うなぁ」
「私も!最近悠ちゃん告白増えてるもん!絶対そうだよ!」
「というか、女子でこんなのになるって、恋愛絡み以外にないよね。」
「そうやなぁ。」
「悠ちゃんはどうでもいいって態度だし、うちらが何とかしないと!」
「あのさ…聞こえてるよ?」
「あ、悠ちゃんごめん」
「いや、しずちゃん気にしなくていいよ。別に悪くはないんだし…。けど、これ、そんなに気にする必要ある?」
「「「ある!」」」
「あぁそう…けど本当に気にしないでいいよ?しずちゃんも知っているでしょ?去年までと一緒じゃん。」
「__いや…今回のは明らかな悪意で、今までと違うんだけど…__」
「なにか言った?」
「言ったけどなんでもない。」
「えぇー。何なのー?」
「なんでもない。」
もう。結局わからずじまいに終わった。
「金糸雀さん…相談があるんだけど、」
「何?あ、この内容なら|古宇利《こうり》ちゃんが詳しいよ。」
「でも、金糸雀さんがいいんだけど…」
「こら、金糸雀さんが困ってるだろ。やめてやれよ。」
「譲…?まあしょうがないか。」
嫌われている今となっては余計男子からの相談は受けないほうがいい。
私は、今まで以上にかかわらないようにしていた。
「あのさ、金糸雀ちゃん。」
見ると、古宇利ちゃんと、江東さんがいた。
久しぶりだ。
「どうした?」
「なんで私達に相談回してくるの?」
「なんで…って…だって相談するなら素人よりも詳しい人のほうが適切じゃん。」
「それはそうだけど、金糸雀ちゃんに相談したいと思ってみんな相談してくるものじゃないの?」
「私に相談?ないない。私、去年まで、普通に嫌われていたんだよ?そんな人に相談なんて本気でするわけがないよ。」
「__は?本気で言ってる__」
「__多分本気で言っている。今までのも意識せずにやっていたかもしれない。__」
「__そうかも知れないね。じゃあこっちの方で恩恵を預かるほうがいいかもしれないね。__」
「__だね。一旦、中立に行こうか。__」
「__そうだね。__」
「?」
「なんでもないよ。答えてくれてありがとう。」
「どういたしまして。えっと…これからも相談事回してもいいの?」
「いいよ。」
「よかったー。ありがとう。」
---
「生意気だね。」
「ね。2人があっち側に行きそう。」
「人数的にはちょうどいいんだけどね。」
「金糸雀さんだから、こっちのほうが不利よ。」
「けど、ムカつくんだよなぁ。彼氏欲しいのにー。」
「みんな金糸雀さんに行くよね。私もこのままじゃ作れない。」
「私もムカつくけどさ。今受験期だよ?恋愛する余裕あるの?」
「「その時に作る!」」
「あ、そう。」
「まあ取り合えず、あんまりかかわらないようにしようね。」
「「うん」」
---
「悠ちゃん!いい加減気にして!」
そう言うのはしずちゃん。
「なんで?今までと一緒だって。」
「違うし、それでも気にしないとだめ!」
うぅ…しずちゃんがこんなに言うなんて…心が痛む。
「じゃあどうしろと?」
「えぇ…んー。…悠ちゃんが…彼氏を作る…とか?」
「無理。」
「だよね…」
天才ちゃん!7
「金糸雀さん、2人で買い物に付き合ってほしいんだけど…」
「え…ちょっと…」
---
また金糸雀さんが困っている。
みんなはどれだけ彼女を困らせればすむのだろう。
いい加減気付いてやれよ。
それとも、困らせるとわかっていて、行くのか?それだったらただの迷惑だ。
そう思い、また、助けに行く。
まったく、人を困らせるなよ。見ているこっちが不愉快だ。
---
「ねぇ、俺もついて行っていい?」
「いいけど…それなら私も友達誘うよ?」
「なぁ、いいよな?」
「あぁ…うん。いいよ。」
また、高麗くんに助けてもらってしまった。
「じゃ、どこに行く?」
「とりあえずホームルーム後でいいんじゃね?」
「あ、そっか。じゃあそうしよう。」
「__おまえ…邪魔すんなよ__」
「__お前が人の嫌がることをしなければいいだろうが__」
「ねぇしずちゃーん、いろはちゃーん、乃蒼ちゃーん放課後空いていない?」
「私今日塾。いろはちゃんは?」
と、乃蒼ちゃん。
「うちは…内容によるなぁ。」
「うちも今日はパス!最近成績落ち込み気味だから!」
え…。どうしよう?
あ!
「古宇利ちゃん、江東さん、今日放課後付き合ってくれない?」
「何であたしら?」
「だって…みんな空いていないんだよ。男子と一対一って、悪い予感しかしなくない?」
「あたしで良かったら行けるよ?__よっしゃ。これぞ狙っていたチャンス__」
「わたしも…行こうかな?」
と、古宇利ちゃん。下の名前は七海だったはず。
「本当!ありがとう〜!」
何で彼女らに声をかけたかと言うと、しずちゃんたちが、彼女たちは大丈夫、嫌われていない、と教えてくれたから。
嫌われている人に声をかけて、余計に嫌われるなんてことには、なりたくない!
「「「「さようなら〜」」」」
さあ、初の古宇利ちゃん、江東さんとのお出かけだ。
「で、どこ行くの?」
「俺はどこでもいい。|快真《かいま》、どこに行こうとしてたんだ?」
「僕は、普通にゲーセン行きたかった。」
「ダッサ。」
「ねえ、|大貝《おおがい》、あんた金糸雀さん誘ったんよね?」
ちなみに今、江東さんが言った大貝で、大貝快真がフルネームだ。
「そうだよ。」
「センスなさすぎ。男子が女子を誘うところじゃない。」
「えぇ…そうかな?」
「あ、けど、私、1回はゲームセンター行ってみたい。」
「よし、金糸雀さん、今度あたしらと行こうか。」
「うん!ありがとう!」
江東さんが誘ってくれた!良かった、しずちゃんたちの言うとうり、嫌われていないかも。
「で、江東さんは、どこがいいと思うの?」
「いや…相手が金糸雀さんだもん、ここはブックカフェっしょ?」
「そうだね~。あ、てか、金糸雀ちゃん、他人行儀な気がするし、|妃奈乃《ひなの》のこともちゃん付けか下の名前にしようよ。」
と、古宇利ちゃん。
「あ、じゃああたしも金糸雀さんのこと悠ちゃんにする!」
「えぇ…悠ちゃんなの?金糸雀ちゃんってかわいいと思わない?」
「かわいいけど…長い!」
「そっか…残念…。」
「じゃ、私は古宇利ちゃんにちなんで江東ちゃんにする!」
「__あたしら、前楯突いたのに、嫌われていないんだね。__」
「__そうだね~。悪口よりこっちのほうがわたしの性にはあっているかも__」
「あのー。」
急に大貝くんが割り込んできた。
「どうしたの?」
「いや、さっきまで譲とどこ行くか話し合っていてさ、このブックカフェ、どうかなって。」
「んー?あ、結構近い。いいんじゃない?あたしは賛成。悠ちゃんは?」
「私もいいと思う。」
けど…気を使われている感じが少し申し訳ない。
「わたしもいいよ〜。」
「じゃ、全員一致で賛成だね!案内して。__よっしゃ、高麗くんにいいところ見せられた!__」
「はいはい分かりました。」
---
僕が金糸雀さんを誘ったのに…
いつの間にか下っ端の様になっている。
譲にも邪魔された。それは、結果的には良かったかもしれない。
けど、譲は一体何をしたいんだ? 金糸雀さんを気にしている風ではないが。
ときどき女の子二人は僕と金糸雀さんを二人にさせてくれるが、喋らないので、そのまますぎる。これは自分のせいだとわかっているけど、
あぁ…
誰か僕をたまには目立たせてほしい…
---
「えぇー!これこの前発売されたやつ!」
「あ、それオレ知ってる。その作者、何作も書いている人だよね。」
「そうそう!」
驚いたことに、小説の話題に乗ってくれたのは高麗くんだった。
「オレ、まだ読んでいないや。あ、でも、この人のデビュー作は読んだ。」
「え!私まだこれの前の作品しか読んでない。どうだった?」
「良かった。主人公が…」
「あぁ~楽しかった。」
みんなとも近づけた気がする!
「また明日〜。」
「ばいばーい。」
「学校で!」
「じゃあね…。」
最後のセリフ。上から、悠、譲、江東、古宇利、大貝です。
天才ちゃん!8
少し短め。
「おはよ~しずちゃん」
「おはよ!悠ちゃん、昨日はどうだった?」
「楽しかったよ?古宇利ちゃんと江東ちゃんの仲も深まったし。」
いつも助けてくれている、高麗くんの趣味も知れた。
いつもは助けてもらうばかりだけど、これからはお返しができるかもしれない。
「そうなんだ~良かったじゃん。」
「うん。いい子たちだった。」
---
「なあ、あいつ、舞ちゃんとななみんと昨日遊んでんの?」
「そうらしいね。しかも仲が深まった?じゃあ完全にあっちの仲間入りか。」
「そうみたい。それとも一方的に勘違いしているとか?」
「あぁ~、あの人のことだし、あり得るね。」
「じゃあ結局わからずじまいか。」
「まあ、あっちよりにはなっているのかもね。」
「そっか…1日遊んだだけであそこまでなるんだ…やっぱあいつ無理。」
「あたしも。あいつが男をたぶらかす限り仲良くなれなさそう。」
---
「おっはよ~。」
「おはよ~。江東ちゃん。」
声をかけてくれた!嬉しい!
前は去年までに戻ったなんて考えてたけど、遥かに去年よりいいよ!
喋る人が5人もいるんだよ?これを幸せと言わずなんという?
---
やべぇ、また金糸雀さん見てた。
昨日の会話が楽しかったからかな。また喋ってみたい。
---
数学の授業だった。
「ここは、ここがこうでこうなるからして、これは証明されるというわけだ。」
先生の話を聞きながら、ぼんやりとする。
問題は、別に難しくもなんともない。
先生はわざわざ嫌われている私を当てないから、話を本当は聞く必要はない。
けどな、通知表はいいんだ。
どうやら、先生に嫌われているわけではないらしい。
あ、そうだ!
昨日、難しい問題集買ったんだ。
授業でできそうなくらいの、であまり時間がかかる問題がないやつ。
ふふんふーん。
あ、この問題難易度高い。私は今日は気分がいい。
昼休み。
「なにやってるの?金糸雀さん」
「え、数学の問題集。面白いよ、解いてみる?」
「面白いの?見せて。」
「あのさ…金糸雀さん、それ、大学で習うやつ。」
ありゃりゃ。高麗くんに呆れられちゃった。
「え?けど高校生でも解けるよ?」
「うーん…まあそんな人もたまにはいるかもね。」
「え?みんな出来るよ。ほら、解いてみる?」
「いや、遠慮する。」
「解けるしつまんないかー。じゃあ、こっちの問題はどう?」
「いや、俺両方解けないから。」
「嘘つかないで。じゃ、解いてみなよ。」
「うん、じゃあそうしようかな。」
………。
「そこはこれを使えばいいじゃん。」
「あ、そっか。えーと、じゃあここがこうなって、」
「で、そこからは、こうすれば?」
「いけるね。すごい…」
「すごくないよ。高麗くんも解けたじゃん。」
「うん、解けたね。金糸雀さんが解き方を教えてくれたからね。」
「一人でも解けてたと思うけどな…」
「じゃ、俺、用事あるから。」
「あ、うん。じゃあね。」
---
何今の?みんなできる?だと。けっ、ほざいてろ。そんなのできるやつだけが言える詭弁だ。
授業中も内職してやがって。先生に好かれているし、先生方が教えることができないくらいにレベルが高いのかもしれないが、それでも先生に甘えているうちはだめだ。
そんなことをするくらいなら、学校に来るな。邪魔だ。
お前なんか、先生方が目にかけているだけであって、実際にはいようがいまいがかわらない、どころかいるだけで人間関係に悪影響を及ぼす。
お前がいなければ、きっとこのクラスはうまく成り立っていたんだ。
高麗くんをたぶらかしやがって。
なんでも余裕で解けるあんたと違って、高麗くんは受験勉強に忙しいんだよ。まだ部活も行っているし。それなのに、なぜあんたの我が儘に付き合ってやらなきゃならない?おかしいだろ。
ただ生活するだけで、他人に影響を与えるやつは、今後一切合切喋るな。
…才能があるんならちゃんと開花させろや。中途半端が一番ムカつく。
---
天才ちゃん!9
「悠ちゃーん。もうそろそろだね。」
しずちゃんだ。
「? 何?」
「え?嘘でしょ?3年生の体育祭以外の唯一の行事があるじゃん。」
「あぁ、校外学習ね。うん、もうすぐあるね。」
「なんでそんなにサラッと過ごせるのぉー!?」
「え…だって、正直どうでもいい。」
「何故!?うちらが楽しめる残り少ない行事だよ!?学校という檻から逃げられるんだよ!?煩わしい人間関係からも一時期外れられるじゃん!?」
「まぁそうかもね。」
**「めっちゃいいでしょ!?」**
「かもしれないね。」
「もう…**何でそんなに反応が薄いのぉ!?**」
「普段と変わっているように思えないから?かな。みんながソワソワしているのは分かるけど。」
「じゃあ気にしなさいよ!」
「あら~静香ちゃん怒ってるわぁ。」
「そりゃ怒るよ!いろはちゃんも悠ちゃんの言を聞いたらわかる。」
「そうかなぁ?」
「そう。」
「違うと思うよ。しずちゃんは変なこと…じゃないどうでもいいことで怒っている。」
「うーん。うちは、どっちにも賛成できかねるなぁ。」
「何で!?」
「どうして?」
声が被った。何で!?がしずちゃんだ。
「静香ちゃんは押しつけているけど、悠ちゃんはまず理解さえしていない。」
あるかも…。
「うち、押しつけてた?」
「うーん、そんな感じに聞こえる、て言うだけやよ?」
「よかった…」
「おーい。いいか?じゃ、今日は、校外学習の班を決める。男女混合がいいが…。まあ無理だろう。女子だけは禁止だが、男子だけは許す。人数は4人〜6人。男女比が極端に偏らなかったらいい。決まったらどこ行きたいか話し合っとけ。」
先生の発言を皮切りに、みんなが班を作っていく。
「悠ちゃーん。やろう?」
「しずちゃんならやりたい!」
「私は?」
目、輝いている…
「乃蒼ちゃんもだよ!あれ?いろはちゃんは?」
「うちもちゃんとおるよ。」
「じゃ、一緒だね。けど…古宇利ちゃんと江東ちゃんが二人…」
「うーん、まあしゃあないと思うけどなぁ。」
てってって。走っていく。
「二人はどうするの?」
「わたしたちは、2人で組むつもりだよ?」
「大丈夫?」
「うちらは問題ないから安心して!」
そっか。良かった良かった。
さて?あとは男子だ。どうしよう?
選択肢的に二人のところだよね?
うーん…みんな3人くらいでいる。
あ!
「高麗くん達、私達と組まない?」
「金糸雀さんは何人?」
「4人いるんだ。大丈夫かな?他に2人でいるところがあまりなかったから来たけど…」
「お前はいいのか?」
「うん。問題ない。」
「よかったー。しずちゃん、これで決まったね。」
「だね。__いやはや高麗くんを引っ張ってくるとは…恐ろしや恐ろしや…__」
---
「あいつに高麗くん取られた。」
「またたぶらかしている。」
「さっさと誘えばよかった。」
「どうする?2人のところもうないけど?」
「仕方がない。2と2に分かれよう。」
「了解。私たちもたぶらかすか。」
「いいね。」
---
「どこに行きたい?」
高麗くんが最初に発した。
「私は、博物館とか美術館とかそういう学べる系。」
「「え?」」
「あぁ~。まあ、悠ちゃんだもんね。」
と、しずちゃん。続いて乃蒼ちゃん。
「うん。だよね。」
「やなぁ。」
「あ、そうなんだ…。」
そして呆れたようにいう大貝くん。
「他の人は?」
また高麗くんが仕切ってくれた。
「うちは、本音を言えば遊びたいけど、まあ無理だし、科学館とかそういう遊べる所がいいな。」
「私も!」
乃蒼ちゃんも賛成していた。
「うちは、この前の博物館が結構面白かったし、どこでもええなぁ。」
「僕は…もうどこでもいいや。ところで譲は?」
「俺は、特にないな。ということは、遊べる系の科学館、はくぶつかん らへんってことだな?」
みんなそれぞれで頷いている。
「じゃ、どこに行こうか?」
「うーん…遊べるところだったら…科学館はどこ行っても遊べる。で、美術館だと遊べないし、けど、博物館だったら…」
一つ思い当たることがあって、パソコンを取り出す。
「ねぇ、こんなのがあるんだけど、どう?」
それは、トリックアート博物館だった。
「あ、いいじゃん。面白そう。」
「で、近くには、こに科学館もあるから、2つ楽しめるよ!」
「ふうん。いいんじゃね?なあ、快真もよさそうだよな?」
「うん、僕もいいと思う。」
「うちもいいよ。」
「じゃあ、全員賛成で、こことここに決定な。…何でこんなのがすぐ出てくるの?」
「え?ここらへんにある〇〇館は、全部行っているから、かな?」
「そんな時間どこにある?」
「放課後。私、たいてい一人だったからね。」
「そうなんだ…。じゃ、先生に出してくる。」
「ありがとう、高麗くん。」
「ほいほーい。」
天才ちゃん!10
「さーて、明日が待ちに待った校外学習だ。ここに全班分の行動予定が書いてある。もう変更不可能なので、みんなに見せようと思う。興味があれば、暇なときでも行ってみろ。」
そう言って配ってくれた。
わぁ、みんなちゃんと博物館系に行っている。
科学館に、トリックアート博物館なんてやっているのは私達だけだ。
え!?〇〇博物館!?今、特別展がすごいと人気の!?
いいなぁ。今度行かなきゃだ。
「じゃ、これで授業は終わりだ。」
「|起立《きりーつ》。気を付け、礼。」
「ありがとうございましたー。」
「楽しみだねー。」
乃蒼ちゃんだ。
「ね、この前の博物館のとき私いけなかったから嬉しい。」
うん、かわいい。
「それはうれしいなー。」
当日。
「気を付けてなー。」
先生に見送られて、学校を出る。
「うわ、何この背徳感。楽しー。」
と、大貝くん。
「だな。」
そして、それに同意する高麗くん。
「背徳感?特にそんなのなくない?」
「いやー、あるよー?」
「しずちゃんは持っているわけ?」
「うん、うちは持ってるよ。」
「ふーん、変なの。」
電車に揺られること数分、目的地に着いた。
「ここがトリックアート博物館かぁ。」
「そういや、みんなこんな勉強関係じゃないところ選んじゃっているけど、勉強は大丈夫なの?」
聞いてみた。
「俺は問題ない。」
「僕は問題ありまくりだけど、息抜きとしてこういうのも必要だと思う。」
「私は塾行って何とかなっているし…」
「うちは、大丈夫かなぁ。」
「うちは、大丈夫じゃない」
「…。」
一同、|黙祷《もくとう》を捧げる。
「まあ、去年、このクラス目指して頑張っていたとき見たく頑張ることはできるはず、だよね?いざとなれば。」
「もちろん!」
私の問いかけに勢いよく答えるしずちゃん。
まあ、火事場の馬鹿力ともいうし、なんとかなるだろう…しずちゃんの場合は。
「よーし、うちは楽しみまくる!」
「私も!」
「うちも」
「俺も!」
「僕もだよ。」
「…。あのさー、一応勉強で来ているんだけど?」
それを言わずにはいられなかった。
「え?けど、学ぶところある?」
「しずちゃん…よし、しずちゃん連行してくる。」
「え、え?え?え?え?ぇ? ちょっ、悠ちゃん!」
「すみません。」
「どうしました?金糸雀さん。」
無事顔見知り発見!
「__え?悠ちゃんここでも知り合いいるの?__」
「この人が、今日遊びまくると言っているんですよ。遊びまくるのもそりゃ大切だけど、今日は校外学習としてきているので、トリックアートのいろいろをこの人に教え込んでくれませんか?」
「あぁ…なるほど。それはやりがいがありそうですね。」
「え?ちょっと!?怖いんだけど!?」
「ですよね!2時間コースでお願いしたいんですけど、いいですか?」
「了解です。」
「ねぇ、悠ちゃん置いてかないでー!!!!!」
「じゃあ行きましょうかね。名前は?」
「日暮静香。」
「静香…あんまりその通りというわけでは…なさそうですね。」
「こっちも気にしてんの!」
早速仲良くなっているようだ。安心安心。
「戻ったよー。」
「あれ?日暮さんは?」
「職員さんに渡してきた。」
「は?」
「悠ちゃん、ここにも行ったことがあったの?」
「もちろん。ここらへんの博物館系は制覇しているよ?知り合いも作っているし。」
知り合い、でいいよね?大人の方だけど。いや、ここは私を助けると思って、知り合いに甘んじてもらおう。
「はぁ〜。さすがやねぇ。」
「うん、俺はすごいと思う。」
「…ありがとう?」
「なんで語尾上がるの?」
高麗くんに目ざとく見つけられた。
「なんか、褒められている気がしなかった?」
「変なの。」
「えぇぇ〜」
ひどいなぁ。
「あ、あった!これ、おすすめ!」
私は館内を紹介しながら、順番に見ていっていた。
見るだけじゃなくて、みんな楽しんでいた。
確かに、トリックアートは体験するとより面白いかもしれない。
そんな事を考えるうちに、最後の方まで見終わった。
「あれ?」
「どうした?」
乃蒼ちゃんが気にかけてくれた。
「しずちゃんが来ないな…って。もうすぐ終わるはずだけど…」
「あ、いたー!悠ちゃん助けてよ〜」
「全部見終わったの?」
それに答えてくれたのは、係の方だった。
「2時間、みっちり、教え込みました。これなら次はみんなの博士となるかもしれませんね。」
あぁ…トラウマになっていそう。
「悠ちゃーん…」
「お疲れー。まあ、楽しかったでしょ?」
「うん、楽しかった!は楽しかったけど…」
「アハハ…じゃあ金糸雀さん、またのお越しをお待ちしております。」
「はぁい。またどっかで行きます。」
天才ちゃん!11
ネタが切れてきた…。
ここから強制エンディング、はいりまーす。
次の科学館は、可もなく不可もなく…と思ったんだけど、
「ねえねえ悠ちゃんこれ何?」
と何回も聞かれた。
科学館って勉強よりは遊びそうだけど、みんなちゃんと勉強していた。
「おもしろかったわぁ。」
そう言ってくれたのは、いろはちゃん。けれど、みんなもそんな事を言ってくれたし、私がした説明が分かりやすかったと、感謝されもした。
「じゃあ、帰ろうか。時間は大丈夫だよね?」
「大丈夫。10分前には余裕で着く。」
私の質問に、高麗くんが答えてくれた。
「よかった。」
「|到着《とうちゃーく》!」
「テンション高いね…」
いつも通りのしずちゃんだった。
「戻りましたー…ってあれ?」
「まだ誰もいないね。」
「先生は一体どこに行ったんやろうなぁ。」
「うーん…まあ座って喋るか勉強しよう。」
「そうだね。」
乃蒼ちゃんの提案に賛成した。
10分後。
「あれ?」
唐突に声が聞こえた。見ると、先生がいた。
「せんせーい、遅かったですねー。」
「すまんな、高麗。しかし毎年みんな遅れてくるから今回もそうだと勝手に思っていた。」
「みんな遅れてくるのー?」
「そうだ。」
「道理で全然来ないんだー。」
「そういうこと。」
「で、何すればいいのー?」
「遅れてこなかったし…特に何かしなくてはいけないということはないぞ。」
「そうなんだー。じゃ、さっきまでと同じように過ごします。」
「それでいい。」
ワチャワチャ過ごして1時間が経過。
「せんせーい、昼飯食べていい?」
「うーん…まあ仕方ないかぁ。」
「よっしゃぁ!いただきまーす!」
「私も食べよ。いただきます。」
「うちも!」
みんな食べることになった。
「ねえ、クイズ出し合おうよ!受験生だし。」
「それしずちゃんが勉強やばいだけじゃん。」
「えぇ~いいじゃん。悠ちゃんのケチ。」
「はぁ…まあ、やろっか。」
「いいな。賛成。」
「僕もいいと思う。」
「乃蒼ちゃんもいろはちゃんもやる?」
「やる〜」
「やるよ。」
「よーし、じゃあ…3つの宗教の聖地」
まずは高麗くんだ。
「エルサレム!」
「じゃ、次は発案者のうちから~。ヒトデは何動物?」
「棘皮動物!」
そんなふうにしながら楽しく食べた。
20分位経ったかな?
「遅れてすいませーん。戻りましたー…ってえ?少なっ」
「江東ちゃんじゃん。遅かったね。一時間以上の遅刻だよ。」
「しょうがないよ。許して。」
「古宇利ちゃん…まあもっと遅い班あるし許すけど。」
「さっすがぁ〜」
そこからは続々集まってきた。
おかげでクイズ大会は終了。私達は急速に日常に戻されたのだった。
---
告白します。俺は、金糸雀さんを好きになっています。
今日の校外学習だって…楽しかった。
金糸雀さんは、学年1位なだけあって知識も豊富だし、このメンバーで行動できたのも本当に良かったと思う。
遊びながらこんなに学んだ班は他にはないと思う。
これも全て金糸雀さんのおかげだ。
それにしても金糸雀さんは、いろいろ無自覚だった。
今までは男とトラブらないように意図的に避けてると思ってたんだけど、偶然な気がする。意図的だと思ったから助けていたんだけど。
なんとなくで行動して、それが偶然男よけにもなっている。
いろんなことができるのに、それを自覚していない彼女の手助けをしたい。そう思った。
そして、本来の彼女は明るい。
それが現れないのは、環境のせいだと思う。
少しでも助けたい。
それが今の俺の気持ちだ。
---
バレていると思うから告白します。
私は、高麗くんが好きです。
困ったときにいつも助けてくれる人を好きにならないのはおかしいと思う。
それくらいこれは私にとって自然なことだった。
今日の校外学習は、たくさん話せて楽しかった。
まだ多くの半が残っている中、高麗くんがいる班を選んだのは、そのためだ。
やろうと思えば、二手に分かれて別々の班として行動することもできたのに。
それらはすべて、私の勝手だ。
いつものみんなには巻き込んじゃって申し訳無いと思う。
天才ちゃん!12
エンディングです。
はやく新しい異世界ものか何か、とりあえず別のもの書きたい!というわけです。
ま、あんまり人気じゃなかったし、別にいいよね!
---
つい牽制的なもので、他の人に金糸雀さんを好きになったことを伝えた。
---
「金糸雀悠と、高麗くんがいま両片思いだってさ。」
「あ、じゃあちょうどいいじゃん。バラしちゃえ。」
「えーけど、恋愛要素がない…楽しめない。」
「私はそれで金糸雀悠が幸せになるのが嫌だから却下。」
「私はバラすのに賛成。あんなやつに恋愛を感じられたくない。」
「あ、たしかに。じゃあ私も賛成。」
---
「あ、高麗くんと金糸雀さんいた!」
最近あんまり喋っていない望月さんが来た。
「どうしたの?」
「何だ?」
「ねえねえ、二人って今両片思いなの?」
「へ?両片思い?何それ?」
「え?」
高麗くんは口をパクパクさせている。
この言葉を知っているみたいだ。
「両片思いはね、両方好きあっているのに、恋人になっていない状態のことだよ。」
「ふーん、で、私と高麗くんが両片思いって…え?」
「じゃあねーあとはお二人で。」
「「あのさ…」」
「あぁっごめん。お先どうぞ。」
「いや、そっちこそ先にいいよ。」
「ありがとう。さっきのこと、あってる?」
「さっきのって…両片思いのこと?分からないけど、片思いはあっている。俺、その…好きだから。」
「私もだよ。…さっきのって私に対してであっているよね?」
「あってる。」
「そっか、ありがとう。」
あーもうエンディング気持ち悪い。
なんか納得いかないなぁ。
人にバラされるの面白そうと思ったけど、案外つまらないかも。
それがわかっただけでも成長か…