|蒼空《そら》に謳う
多分雑になっちゃいます、ごめんなさい
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登場人物が分かりづらいかもなのでこっそり載せときましょう…
東雲学園軽音楽部正式な、正式な部員(中高一貫)
結田莉子(ゆいたりこ)♀
中3 ギタリスト兼ボーカリスト(ギタボ)
天野凛音(あまのりんね)♀
高2 ギタリスト
佐伯文(さえきふみ)♂
高2 ベーシスト兼ボーカリスト
黛玖利主(まゆずみくりす)♂
中3 ドラマー
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東雲学園軽音楽部居候(非公式部員)
黛和主真(まゆずみかずま)♂
高3 元ボーカリスト
玖利主の兄
大原美留香(おおはらみるか)♀
高一 照明・音響
藤川聖天(ふじかわのあ)♂
中3 雑用
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目次
蒼空に謳う
ふわふわしたセミロングで色素の薄い髪、大きな鼈甲飴色の瞳。
そこらのアイドルなど比にならないほどの整った顔立ち。
それに加えて、成績優秀、性格も良いとくればそれなりに目立つものである。
何らかの才能があるなら尚更__
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風が吹いて視界の隅の髪の毛がなびく。
空は蒼く澄んでいた。
まだ吐き出した息は白くない。
「ありがとう」
静かな裏庭に今すぐ消えそうな、けれども凛とした声が響く。
「だけど__ごめんなさい」
憂いを含んだその声は草の影に身を隠している少年の耳にも届いていた。
そっか、ごめんね。ありがとう
そう言って向き合った2つの影の1つが動く。
こちらに来る気配がして少年は息を顰めた。
「|玖利主《くりす》、いつまで隠れてるの」
少女は草の影に目を向ける。玖利主は首をすくめて姿を見せた。
「バレてた?」
「バレてた」
少女がふっと微笑む。玖利主は彼女が怒っていないようで、まず安心した。
しかしなんとなく居心地が悪い。
「いや、、だって、|莉子《りこ》は上級生に目ぇつけられてるじゃんよ。もし__もしまた彼奴等になんかされたらっ」
焦った口調の玖利主に莉子は彼の手を握った。
「大丈夫怒ってないから。あんなこともきっともう起こらない」
蒼空に謳う #2
「|莉子《りこ》また告られたん?」
文化祭を前にした軽音楽部部室。軽音部の部室は第一校舎、第二校舎から遠く離れたところにある小屋のようなものだ。もとは小汚いものだったがこの部長|天野凛音《あまのりんね》が一人で改装。そうしてこのアットホームな部室ができたのである。
「は……?」
重厚な(雰囲気の)扉を開いた途端に飛び出てきた問いに|結田莉子《ゆいたりこ》は絶句した。
「んなっ、んで凛先輩知ってるんですか…?」
知られたくないものを知られてしまった。という顔の莉子にソファーに寝転んでいた|佐伯文《さえきふみ》がにやりと笑う。
「莉子ぉ、天野の情報網ナメないほうが良いと思うなぁ」
「お、覚えときます」
莉子は軽く苦笑すると棚に荷物をおいて定位置である本棚近くの椅子に腰掛ける。
と、向かいに座っていた凛音が身を乗り出して大真面目な顔で言った。
「顔面くれ」
「嫌です」
「くれぇ〜」
「その顔で言いますか」
莉子を可愛い系とするならば、凛音はかっこいい系の整った顔立ちをしている。
文は安定の王道イケメン。友人に言わせると某王子様系俳優似というか超え、らしい。
そして先程の|黛《まゆずみ》玖利主はチャラいけど|初《うぶ》!と女の子たちに好評である。
|東雲《しののめ》学園軽音楽部の全部員4名は全員整った顔立ちをしているため、『東雲の顔・軽音楽部』と呼ばれていたりもする。
なら、彼等・彼女等目当ての部員がいるのではないか?
否。
東雲学園軽音楽部は非常にまったりゆったりしている部活のようにみえて、がっつり実績を残している。
今までに何度も部員目当てで入部しようとした生徒が男女問わずたくさんいたが、練習が始まった瞬間、そのハードさ、ストイックさに逃げ出していった。
しかし練習が始まるまでは、アットホームでのんびり、ゴロゴロ、ゲラゲラという部活なのであった。
蒼空に謳う#3
あ、発作だ___
そう思ったときにはもう遅い。
目の前が真っ暗になる。
酷い耳鳴りがして、手足から力が抜けた。
薄れゆく意識の中で、温かいものに抱きしめられたのを感じた。
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ふと目を開くと見覚えのある天井があった。
ツンとした消毒液の匂いの中に嗅ぎなれた匂いを感じて横を見やる。
色素の薄いふわふわ頭のつむじが見えた。
どうやらずっと手を握られていたようで、じんわりと手汗を感じる。
仕方がないので反対の手を一生懸命に伸ばして、そのふわふわをふわふわしてみる。
甘い香りが広がった。
彼は寝てしまったらしい。
珍しい。
そう思って寝顔を拝見しようと顔を近づけたが
「なんだよ」
ややハスキーな声とともに彼は顔を上げてしまった。
やけに整った顔面が至近距離にあって、思わず笑う。
「体調は」
「まあまあ」
「給食は」
「ちゃんと食べたよ」
「嘘つけ」
「嘘じゃないし」
「運んだときクソ軽かったけど」
「運んでくれてありがとうっ!」
「もっと食え」
「無理」
「食え」
「無理」
「食え゛ぇ」
「無理」
わたしたちが言い合っていると
やけに美しい養護教諭が顔をのぞかせた。
「結田、もう5時だけど、どうする」
「部活」
「おっけ。体調気をつけろよ」
もうすっかり常連である。
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「なんで高3の教室にいるんだよ」
保健室から出ると、彼、|黛和主真《まゆずみかずま》は訪ねた。
莉子はなんでだっけ、と一瞬思考する。
「ああ、和主真にエッジボイス教えてもらおうと思ったんだった」
エッジボイスとは歌唱テクニックの一つで声帯をひらひらさせたときに発生する、低くきしむような振動のことである。
「なんで俺なの。引退したじゃん」
和主真は莉子にでろーんと覆いかぶさったが
莉子はもう慣れっこではらりと腕を払う。
「和主真が『俺はもう大学決まってるから、いつでも教えてやるからな』って言ったんじゃん」
「そーだっけ」
「そーだよ」
保健室は第一管理塔にあり、昇降口のある第一校舎までかなり距離がある。
さらにその第一校舎から歩いて部室のある小屋まで行かなくてはならない。
莉子にとって和主真は部内で唯一のボーカリストの先輩であり、小さい頃から一緒にいる兄のようなものである。
だからこの時間はすごく大切なものだった