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目次
沈黙は同意1
「…お届け物です」
大量の荷物を抱えながらぎこちなく笑うこちらの顔を痛いほどの視線で見つめてきたのは、異形の生き物だった。
「ノルマ達成まだなんですか?」
どうして分かったのか、扉の隙間からたくさんの目玉を蠢かせながらソレは話しかける。
「昔そこで働いていたので」
まるで心の声を聞かれたように紡がれた言葉に、上がる肩と息を整えながら驚いた。
「よければお手伝いしましょうか?」
「…そんな、お金がもったいないですよ」
「大丈夫ですから」
そう言いながら荷物に印鑑を押して、ソレは逃げるように扉を閉めた。置き去りにされた扉の前で、ただ唖然とする。
沈黙は同意2
いつものマンションへ指定されたのだったが、今日はソレの荷物ではなかった。
|「…あ、ありがとう」《廉都》
ドアの隙間からは、ソレよりも優しい空気が流れる。荷物の詳細には、食品と書いていた。
|「僕、それが好きなんだけどあなたも?」《廉都》
なんの食品かなんていっさい分からないため、印鑑を押すことを催促すると悲しそうな顔をする。
|「またよろしくね、あの人にもよろしくね」《廉都》
そう強く念押しをしながら、珍しい形で「|雨水《うすい》」と彫られた印鑑が押された。下の階に走り、また次の荷物を大事に抱える。彼が呼んだあの人とは、どうにも初めて会った異形の主としか思えなかった。