この世界の夜にばらまかれた変身アイテム。
それは一般人には有毒で、一度死んでいながら神に救われたことにより体を得た半霊体の私達にしか使えない。
変身アイテムを使って、天空から堕ちてきた穢れを祓う。
それが、私達の役目なのだ。
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目次
一箱吸って、あの頃へ
「……」
無意識にスカートのポケット部分を握りしめた拳は、痛々しい程に白かった。
---
『あ!も〜、|未来《みらい》ったらいっけないんだ〜』
「あんただって吸ってるでしょ。」
放課後の校舎裏。
さっきまで吸っていたそれをそこら辺の小石にぐりぐりと押し付ける。
オレンジ色に染まりきった太陽が沈むころ。
こうやって学校の終わった後、二人きりで煙臭い中、駄弁るのが最近のマイブーム。
『てかさ、ウチら|未来《みらい》とか|光《ひかり》って名前なのに希望もクソもなくね ?笑』
「それなー 笑」
|光《ひかり》と話すのは正直死ぬほど楽しい。
昔の自分と今の自分を切り離してくれる感じ。
それがいいのか、悪いのかは分からないけど。
『あ、それじゃ〜あ〜』
少し悪い顔をしながら|光《ひかり》は囁く。
『希望も光もないお先真っ暗なウチらに乾杯♡って事で、これ最後に吸お?』
にこっと笑みの形に変えて、|光《ひかり》は袖から小さな箱を取り出した。
「…|Princess・killer《プリンセス、キラー…?》」
『え、よく読めたね!!さっすが進学校組〜♡』
「別に…そんなでもないし。で、どんなやつ?」
鮮やかな蛍光ピンクをベースに白のストライプのデザイン、大きな薄桃色のリボンのついたパッケージは、地雷系っぽくて可愛い。
そこにサインのように書かれた|Princess・killer《プリンセス・キラー》の文字は、大きめでありながら不思議と主張しすぎには見えないいいデザインをしている。
『えっとね〜、バイトのせんぱいから貰ったんだけど〜』
「また媚び売ってんの 笑」
『違うし!ウチの魅力が最強すぎただけだし!』
「はいはい 笑」
『もぉ…っ、説明しなくていいの!?』
「それはやだ。ごめんって〜」
|光《ひかり》によると、これの別名は|poison・girl《有毒のお姫様》と言って、その詳細も、どこで入手できるのかも不明らしい。
ただ分かることは、味はとんでもなく甘いけれど、不思議と吸いやすく、吸ってから一分〜三分以内に幻覚症状が引き起こされるということ。
といっても幻覚症状は五分ほど経てば収まり、その後は後遺症も特に残らないという。
『せんぱいも吸ったらしいけど生きてるし、まぁ大丈夫っしょ』
憎たらしいほど可愛い顔を綺麗にウインクさせて、|光《ひかり》はそう言うから。
少しの不安を胸に抱えながらも、火をそっとつけ、それを唇に当てる。息を吸うだけで、肺は煙で満たされる。
吐きそうなほどの甘さを吸って、息を吐く。
白い煙は空へ昇っていった。
『なぁんだ、全然げんかく?とかこないじゃん』
「それ」
「なっ、…?」
さっきまでしっかり捉えていた|光《ひかり》の顔がぐにゃりと変形した。
いや、ほかの建物も、これを持つ私の手も、どこもかしこも異様な形をし始めている。
『…、……〜♡…ー、……!!』
…|光《ひかり》が、何か言ってる……?
そこで、意識が途切れた。
---
「っ!!!」
眩しい光が差し込んで目の前が真っ白になったところで、私の意識は覚醒した。
清潔な純白のシーツに、木造の天井。
窓は大きくて、カーテンが風に吹かれてゆらりと揺れている。
窓の外は真っ白な光に包まれているようなほど眩しい。
保健室…、ではないだろう。
うちの学校の保健室は天井が真っ白だ。
ベットは手すりもついてないし、隣側にある小さめの机も木で作られている。病院でもないはず。
だとしたら…ここは、何処なのだろうか?
『天界よ。』
なるほど、天界か…。天界ね〜…、……
「てんか、い!?!? ぃ、今いまココ天界!?」
『何よ、煩いわね…。そうです、天界デスヨー』
「天国の天に世界の界!?」
『そーそ。天才の天に界隈の界。』
「はぁぁっ……!?」
天界って、いや、あるのかなーと思ってはいたけど!こんな、こんな感じなの!?全っ然真っ白な空間とかじゃない!!
『天界全体が物もなくまーっさらってわけないじゃない。』
「天界に全体とかあるの…??」
『あるわよ。そりゃ、神だって真っ白な空間に一人っきりじゃつまんないのよ。だから、あんた達がよく言う「真っ白な空間」は尋問室みたいな所なわけ。ここまでいーい?』
「じゃあ、神にも生活区域みたいなのがあって、よくある転生モノのあの真っ白な空間はそういう部屋ってこと…?」
『そうそう。現代の子は理解が速くて助かるわ〜』
ちょっと誤魔化しながら言うと理解してくれない子もわんさか居るからね〜と言いながら、神は流れるような動きでポケットから煙草を…
煙草!?
『何よ、神だって煙草くらい吸うわ。ストレス発散よ』
神が煙草って…、ていうか、堕天とかしないの…?
いつの間にか火のついた煙草を一吸いして、神は息を吐く。
妙に甘ったるいその匂いは、覚えがあるものだった。
「っ!?そ、の煙草!!まさか」
『大丈夫よ。人体に害があっても、神には影響ないの』
「じゃあなんで、それを吸うの…?」
『罪滅ぼし。』
「つみ…?」
…罪、つまり悪いことを犯した、ということ?神様が?
『若気の至りってヤツ?ま、あんたが気にすることないわ、無駄だもの。』
無機質なハイライトの消えた瞳は、私を捉えずぼんやりとどこかを見つめていた。
『そんなことはどうでもよくて』
バチリと、やっと視線が合った。
『あんた、これから異物討伐隊ね』
「はっ?」
いぶつとうばつたい…??
今日はどれもこれも話が急展開すぎて着いていけない。
ほら、作者だって小説のくせにセリフばっかで焦ってる。
『簡潔に説明するわね。』
神はふっと煙草の煙をこちらに吹きかけた。
思いっ切り吸い込んでしまったせいで咳き込む。
「げほッッ、ごほッ、__ひゅ__、ふぅ…」
前屈みになってむせていた為心做しか膝も痛いが、そんなことはすぐにどうでも良くなった。
前を向いた瞬間、景色が変わっていることに気づいた。
広い広い、海の上。風が強く吹いている。
何処までも壮大な青色は、太陽の光を反射しながら、深く深く輝いている。
『それじゃあ…』
神はさっきの煙草を一本取り出して言った。
「あたしとコレで戦え」と。
読んでくださりありがとうございます。
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以上、海老尾丸からでした。