気が付いたらポートマフィアのビルの前にいたルイス・キャロル。しかし、どこか違和感があった。どうやら自身の知っている横浜と少し異なり──。
ののはなさんとのコラボ小説で、「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
ルイスくんが「文豪ストレイドッグス!」の世界にお邪魔しています。
ののはなさんの小説では桜月ちゃん視点、此方の小説ではルイスくん視点です。
二つの視点から楽しんでいただけたら、と思います。
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目次
collaboration.1
「英国出身の迷ヰ犬」の番外編(?)になります!
英国出身の迷ヰ犬
https://tanpen.net/novel/series/dbc4b7a3-d5a6-4927-bd3f-8e75383d3519/
ルイスside
気がつくと其処は、ポートマフィアのビルの前だった。
しかし、何故か違和感を感じる。
「ぇ、ぁ、な、だ、へっ?」
「此処は……」
「ポ、ポートマフィアの──」
「成程。君は?」
おっと、情報がほしくて遮る形になってしまった。
謝罪しようとすると、少女は自己紹介をしてくれる。
「わ、私は泉桜月。貴方は……?」
「ルイス。ルイス・キャロル。26歳だ。」
「え”っ⁉」
僕の身長について、思うところがあったんだろうな。
「──あぁ、身長なら」
「あっ……ご、ごめんなさい!年上の方に失礼を……」
まさかの年齢の方か。
というか、この子の苗字である泉って──。
「桜月?」
聞き覚えのある声がした。
桜月ちゃんの奥に見えたその影を、僕はよく知っている。
「あ、中也! こちらルイスさん!」
「初めまして……かな?」
中也君が僕の名前を呼ばなかった。
忘れている、という線もあったけどそれはない。
違和感を感じた原因が分かった。
多分此処はあったかもしれないifの世界、又は可能世界。
彼女は予想通り、鏡花ちゃんの姉妹なのだろう。
「中也……身長負けてるね(笑)」
「ア”ァ”!?」
「はい落ち着こうね~」
「手前最近太宰化してンぞ」
「辞めてそれだけは辞めて」
「──アハハ」
この世界は、とても楽しそうだ。
「ほらルイスさんが苦笑いしてるでしょ!! もぅ……」
「フッ中原中也です。」
「ルイスさんは何故ここに?」
「そうだな……何となく……? というか分からないかな」
「わ、分からない……ですか?」
嘘は言っていない。
兎に角、何でもいいから情報が欲しいところだけど──。
「まぁ、兎に角部屋の中に入ろうか」
「へっ首領!? いつの間に此処に⁉」
「ずっと居たよ」
僕も全く気づかなかったんだけど。
この世界の首領、気配を消すのが上手いな。
「あ、そ~だ! ルイスさん、おすすめのクレェプ屋さんがあるんですけど、良かったら」
「そんな事をしたら狙われるに決まって居ると思うがのう……」
「私も行きたい」
「僕が護衛として行ってあげるよ!」
敦君に、鏡花ちゃん。
そしてまだ会えていない、紅葉。
元気にしてるのかな。
この世界は探偵社とマフィアの仲が良く見える。
もしかしたら、僕のいた世界も──。
「ルイスさん、どうですかっ!?✨」
「──行ってみたい、かな」
元の世界に帰る手掛かりを、探さないと。
「念の為俺も着いてッてやる」
「って事で、行ってきま~す!」
ののはなさんとのコラボです!
イェーイ☆
ルイスくん視点を投稿していこうと思ってます。
それにしても、桜月ちゃんって可愛いですよね…
コレ、ののはなさんが書かれてるんですよ?
凄いですよね、天才ですよね、神ですよね、
よし、皆で ののはな さんを全力で敬うことにしよう(元からしてるけど)
ちょっと雑談が長いですね。
てことで、ののはなさんの「文豪ストレイドッグス!」もよろしくお願いします!
collaboration.2
「英国出身の迷ヰ犬」の番外編(?)になります。
ののはなさんとのコラボです。
collection.1
https://tanpen.net/novel/67ced1c3-dad6-446e-83d1-522b3741e934/
ルイスside
「えっと、港の方に行くとワゴンのクレープ屋さんがあるんです!」
そうなんだ、と僕は答えながら辺りを見渡す。
此処は矢張り横浜だ。
可能世界と言えども、見て分かる違いがあるわけではない。
でも、僕がいた世界とは同じだとしても、何処か違う。
誰一人知り合いの居ないのは少しばかりツラい。
でも、この世界の住人は誰も|戦神《僕》を知らない。
そう思うと、少しだけ心が軽くなったような気がした。
「所で、さっき云ってた《《狙われる》》と云うのは……?」
紅葉が確か、そんなことを言っていたような気がする。
探偵社とマフィアが手を組むなんて、どれだけ厄介な組織なんだ。
「最近、外国から来た組織の人達が横浜を荒らし回っているらしくて……」
「此処の二つの組織で争っている場合では無いな、と……一時休戦している感じです」
「……ふーん」
組織についての情報は無い、ね。
此方の世界には居なかった組織だろうか。
というか、僕から聞いておいてアレだけど部外者に話していい内容なのかな。
「そうだ! 折角来たんですから、少し観光していきましょうよ!」
「オ、オイ……」
えっ、と変な声を出してしまった。
普通に唐突だな。
「大丈夫かなぁ…アハハ…」
「楽しそう」
「あっちに見える建物は有名な赤レンガ倉庫です!」
「急に始めるな」
中也君はどの世界でもツッコミか。
「知ってると思う」
「大分有名だからね……」
「う、うん……」
流石に僕の世界にもあるから知ってる。
「うぅ……あ、じゃあ大桟橋は?」
それもあるな。
まるでガイドさんのように観光をしていく桜月ちゃん。
このまま元いた世界へ帰る手掛かりを探してもいい。
でも、流石に観光名所ばかりでは情報なんて何もないだろう。
「そ、其れ位にしてクレープを食べに行こっか」
「クレープ!」
「クレープ!」
「ま、全く同じ反応だ……」
思わず口に出して驚いてしまった。
敦君の言葉に全く同じ反応をしているのだ。
「一応双子だからな。性格は正反対に限りなく近いが」
「双子、なんだね」
姉妹かと思っていたが、双子か。
確かによく似ている。
「あ、あそこだ!」
「見っけたー!」
敦君の視線の先には、確かにワゴン販売のクレープ屋があった。
話している間に目的地に着いている。
潮風が気持ちいいな、と思っていたらふと、鏡花ちゃんが呟いた。
「お金持ってきてない」
「あ、忘れちゃった」
桜月ちゃんもそう言っていた。
普通に異能世界に財布があるんだけど、取り出すわけにもいかないよな。
何故なら、僕は|英国《イギリス》人だから。
彼女達から見れば、僕は監視対象でしかない。
突如マフィアのビル前に現れた異国人。
そして、横浜を荒らしまくっている海外の組織。
無関係と考えることの方が難しいだろう。
(……中也君が着いてきたのは僕の監視もあるのかな)
思わず笑い出しそうになった。
僕の過去を誰も知らないことに喜んでいた数分前の自分が、莫迦みたいだ。
誰も僕を知らないなら、《《彼らではない彼ら》》との関係も信用も何もない。
本当に、莫迦だな。
どうにか笑い出すことを堪えて、僕は冷静に会話に加わることにした。
「僕も持ってきてないな……」
「それ以前にお客さんに奢らせる莫迦と阿保はあの自殺マニアしかいませんよ!!」
「自殺マニア……」
「あの糞太宰の事だ」
「糞太宰……」
この世界でも、太宰君は色々な渾名が付けられてるんだな。
本当、酷い言われようだ。
No side
「はっっっくしゅっ」
「太宰君、風邪かい?」
「此処で風邪をまき散らすな! この迷惑噴霧器が!」
「(私の噂話かな? イケメン過ぎる探偵社員がいたとか((」
ルイスside
「僕もお金無いよ」
どうやら、敦君もお金がないらしい。
「ってことは……」
「俺が全員分奢るのかよ!」
「ごっめーん中也~」
「桜月手前絶対ェ思ってねぇだろ」
「はいはいルイスさんが居るから」
桜月ちゃんと中也君、仲良いな。
僕の世界の彼にもこういう人はいるのだろうか。
そんなことより、中也君に謝らないとな。
「あ、なんかごめん……」
「いっいや違います! ルイスさんには奢ってあげてと!」
「ルイスさんはそうだが手前には買わねェ!」
「えぇ~」
反応が毎回可愛いな、桜月ちゃん
「桜月ちゃん可哀そうに……自業自得だけど」
「私も無いの?」
「3人共強いなぁ」
そんなこんなで、中也君が全員分払うことになった。
何かお礼、と考えたけど異能空間から財布が取り出せないのでは何も渡せない。
でも、そんなことより──。
「美味しい…」
「ですよね!」
モクモクと食べている鏡花ちゃん可愛いな。
こういう女の子らしい面もあるのかな、僕の世界の彼女にも。
「私もたーべよ……美味し!」
「何か済みません僕迄」
「結局こうなンのかよ~!」
「ほら、私の半分あげるから」
「駄々を捏ねてる子供の扱いをすンなー!」
まるで恋人だな。
そんなことを思いながら笑っていると、敦君と鏡花ちゃんも笑っていた。
「要らないんだったら食べるよ~」
「ぁ、た、食べる……」
「え、何急にかわいい」
「うるせーっ! 何だこれ美味ッ!?」
「確かに、このお店のクレープは美味しいね」
「ですね!」
「最初から食べるって云えばいいのに」
皆が幸せそうに笑っていた。
どうしても、元の世界の彼らと比べてしまう。
そして、もしかしたらと想像してしまうのだった。
「あれは……?」
ふと見た沖の方に、不思議な光景が広がっていた。
まるで海面に垂直に刺さっているかのような、一筋の光。
誰もが僕が指差した先にある光景を見て、驚きの声をあげる。
「少し、近づいてみますか」
「そうだね……」
「危険じゃねェか!?」
「得体の知れないものだし……」
ん~、と少し考え込む桜月ちゃん。
何か分からない物に迂闊に近づくのは、確かに危ない。
でもアレが帰る為の手掛かりになるかもしれない。
なら、近づかないわけには──。
「それじゃあ、」
桜月ちゃんが何かを言おうとした、その瞬間。
ふと、視界の端で何かが消えた。
「鏡花ちゃん!?」
「居ねェ……!?」
先程までそこに居た筈の鏡花ちゃんの姿が、どこにも見当たらない。
軽く全方向見渡したが、それらしい人影はない。
「消えた……?」
「うそ、でしょ……!?」
桜月ちゃんが動揺しているのが分かる。
何処なの、お姉ちゃん。
そう、彼女は呼びながら探していた。
「──!」
その時だった。
ほんの一瞬、本当に一瞬のことだ。
あの海面へ刺さって居る光が、此方に向かってくるのが見えた。
そして、いつの間にか桜月ちゃんの足元には穴のようなものが空いている。
視界の中、目の前に彼女が居たからこそ分かった。
その表情はもう、諦めている。
落ちていく桜月ちゃんを見て、僕は異能力を発動しようかと考える。
異能空間に送ることが出来たら彼女は助かる。
でも、此処で発動したら──。
「させねェよ!」
僕の真横を何かが通り過ぎる。
正体を理解したのは、少ししてからだった。
「中也っ! でも多分中にお姉ちゃんが! ルイスさん、敦くんは大丈夫っ?」
「僕達は大丈夫!」
「桜月ちゃん、朱雀を放って!」
中也君が、助けに行ったのか。
重力操作で自身の負荷を軽くすることで出来る高速移動。
まだ正体がハッキリしていないのに行動してしまうのに驚きながらも、僕は疑問を口に出す。
「桜月ちゃんの、異能は……奇獣の使い手?」
「嗚呼。あと季節の奴が如何とか云ってたな」
「ッ、判った! 奇獣『朱雀』! お姉ちゃんを、連れ帰って来て!」
そして桜月ちゃんは、朱雀と呼ばれた異能生命体であろうものを穴の中へと放った。
きちんと地面に立とうとしていたが、ふらついたのだろう。
倒れそうになる彼女を、中也君が受け止める。
まだ気が動転しているのだろう。
確かに鏡花ちゃんが戻って来れなかったら、と考えると拳を握る力が強くなる。
「朱雀だ!」
そんな敦君の声がした。
顔を上げると、そこには朱雀と鏡花ちゃんの姿があった。
すぐには動けそうにない桜月ちゃんに代わり、僕は急いで駆け寄る。
「お姉ちゃん、大丈夫……?」
「っ……」
魘されている。
悪夢でも見ているのか。
否、寝てないから夢じゃないな。
軽く診てみたけど、傷などはなく気絶しているだけのようだった。
「気絶しているようだね」
「其れだけで済んで本当に良かった……」
「だな……」
穴の中がどうなっていたのか分からないが、少なくとも怪我する原因はなかったのだろう。
何かあるといけないから、今すぐマフィアのビルか与謝野さんに診せないと。
一応の為に辺りを見渡したが、穴はもう無くなっていた。
アレが元の世界へ戻る手掛かりなのか。
それとも、横浜を荒らし回っている組織の攻撃なのか。
現段階では流石に見当が付かない。
とりあえずは撤退したように見える。
今回はギリギリ全員無事だった。
だが次はどうか、分からない。
「……さて、どんな敵が待っていることやら」
そう呟いた声は、誰にも届くことなく消えた。
はい、てことでコラボの二話目です。
投稿が遅くなり済みません。
ルイスくんは元の世界に帰れるんですかね?
次回もどうぞお楽しみに。
ののはなさんの「文豪ストレイドッグス!」もよろしくお願いします!
もちろん「英国出身の迷ヰ犬」もよろしくお願いします!
collaboration.3
「英国出身の迷ヰ犬」の番外編(?)になります。
ののはなさんとのコラボです。
collection.1
https://tanpen.net/novel/67ced1c3-dad6-446e-83d1-522b3741e934/
ルイスside
僕達は無事、ポートマフィアへ戻って来た。
幸い、重症の怪我人は居ない。
「──だが」
あの穴に一度、完全に飲み込まれてしまった鏡花ちゃんが謎の昏睡状態だった。
朱雀も同じ状態だという。
与謝野さんにも、桜月ちゃんの不死鳥にも治せない。
「お姉ちゃ、ん……起きてよ、」
ふと通り掛かった病室から、そんな声が聞こえた。
桜月ちゃんがそう一人で呟く。
一人で涙を拭っていた。
僕の世界では両親が亡くなって孤児になり、ポートマフィアへと入った。
もし彼女たちも同じ道を辿っているのならば鏡花ちゃんは、たった一人の血の繋がった家族。
「──ぁ」
少し見えた彼女の瞳に、僕は見覚えがあった。
大切な人を傷つけられて怒り、どんな手を使っても償わせるという決意。
戦場で仲間を多く亡くして泣いた後の僕と、その姿が重なって見える。
声を掛けずには、いられなかった。
「桜月ちゃん、大丈夫?」
「る、ルイスさん……」
彼女は慌てて顔を隠す。
結構前から居たことは黙っておいた方がいいだろう。
「考え事かな?」
「い、いや……ちょっと、お姉ちゃんが心配で……」
「早く、目覚めてくれたらいいね‥‥」
それだけ言って、僕は桜月ちゃんの頭を撫でた。
これは、僕の自己満足だ。
ただ君は堕ちないでほしいという、僕の偽善だ。
「う”ぅ、っグスッ」
桜月ちゃんは涙が止まらないようだ。
拭っても拭っても、涙は溢れ続けている。
僕は無言で、ずっと彼女の頭をポンポンとし続けるのだった。
「落ち着いたかな?」
「はい。有難う御座います」
「じゃあまたね」
そう言って、僕は首領執務室へと向かった。
桜月ちゃんも一緒に連れていった方が良いかと、君の側に居た方が良いかと思った。
でも、それは僕の仕事じゃない。
「失礼します」
「わざわざ済まないねぇ」
いえ、と僕は扉を閉めて部屋へと足を踏み入れる。
中也君を除いたマフィアの主要メンバーと、探偵社の面々がもう既に集まっていた。
呼び出し内容については、僕についてだろう。
このメンバーを前に、こんなに緊張する日が来るとは。
本当、人生何があるか分からないな。
「僕から言うのもおかしいと思うんですけど、一つ良いですか?」
「……何だね」
笑いながら問い掛ければ、首領は少し警戒しているようだった。
他のメンバーも同じような感じだ。
「拘束とか、足の健を切るとか……彼女の異能があれば瀕死までなら拷問も出来ますよ」
その場にいる全員がざわめく。
鏡花ちゃんが昏睡状態になった原因が、横浜を荒らし回っている組織では無かった場合。
彼女が眠り続けているのは、僕のせいだろう。
「……ルイス、だったか。もし自身を責めているのならば、それは間違いだ」
福沢さんの言葉に、少し救われた様な気がした。
しかし、僕が悪くしてしまった空気が良くなることはない。
そんな中、中也君が執務室へとやってきた。
彼の隣に桜月ちゃんの姿はない。
「あれ、桜月ちゃんは?」
「多分すぐ来ると思います」
何とも言えない空気の中、数分が経過しようとしていた。
「桜月ちゃん、遅いねぇ……」
「ですね」
「アイツ、呼び出されてるなんて一言も云って無かったじゃねェか」
その時、執務室の扉が開かれた。
僕を含めた全員が、彼女へ視線を向ける。
「大変申し訳ございません」
「……始めようか」
「はい」
中也君が桜月ちゃんを睨んでいた。
「此処に居る、ルイスと言う人物について、貴君らは如何なる考えを持たれているか」
「よし、桜月ちゃんはどう思う?」
首領の質問に、彼女はとても驚いている様子だった。
彼女が優しい人間ということは分かっている。
しかし、どうしても身構えてしまう自分がいた。
体が震えている。
「──ルイスさんは、とても優しく、人の気遣いが出来る方で、素晴らしいお方です。それと、付け足すとすれば、例の組織との関連は無いかと思われます」
「……そうだね。確かに、人柄もいいし、敵意も感じられない。」
「されば、この者は我々の味方だと考えて善いのだな?」
「勿論です。私が保証します!」
桜月ちゃんの言葉に、目頭が熱くなった。
「──俺も、保証します」
「僕もです」
「皆……」
「ルイスさんがここに留まる事を許してください!」
桜月ちゃんが頭を下げた。
それに釣られるように、皆の頭も下がる。
僕も、無意識のうちに頭を下げていた。
「──判った。ルイス君が此処に留まる事を許可しよう」
首領の言葉に、僕は勢い良く顔を上げた。
誰よりも早く目が合ったかと思えば、彼は優しく笑っていた。
まるで初めから僕を信用していたかのように。
「……。」
此処に居ても良いんだ。
そう思うと胸が温かくて、一粒の涙が頬を伝った。
首領は驚いている。
皆に見られる前にと、僕は涙を拭って笑みを浮かべた。
「有難う、桜月ちゃん。皆」
「友達ですからっ!」
そう言った彼女の笑顔は、とても眩しい。
いつの間にか震えは治まっていた。
はい、三話です。
桜月ちゃんめっちゃいい子やん…
中也のイケメンシーンはののはなさんの小説で見れます!
本当、なんでこんな最高のストーリーを考えられるんでしょうね。
やっぱり神なんでしょうか?
それでは、次回もお楽しみに!
collaboration.4
「英国出身の迷ヰ犬」の番外編(?)になります。
ののはなさんとのコラボです。
collection.1
https://tanpen.net/novel/67ced1c3-dad6-446e-83d1-522b3741e934/
ルイスside
「じゃあ、桜月ちゃんはルイス君の部屋へ案内してあげてね」
「分かりましたっ! こっちです!」
そう言って桜月ちゃんは手招きする。
僕の部屋は12階に用意されたと言う話だった。
多分、元の世界と同じなら下の階だと黒服が多い。
色々と彼女が手を回してくれたのだろう。
「ルイスさん」
「桜月ちゃん」
見事にハモる。
「あ、ぃゃ、大した事じゃ無いので、お先にどうぞ」
「僕も大した事では無いし、先に善いよ」
「あ、ありがとうございます! 質問、良いですか?」
「答えられる範囲内ならね」
判りました、と桜月ちゃんは少し考え込んでいた。
移動しながらどのような質問が来るか自分でも考えてみる。
「えっと、先ず、ルイスさん、貴方は一体何者ですか?」
この子のことだ。
別に首領の命などで僕のことを聞き出そうとしている訳ではないのだろう。
今まで僕は、自身のことについてあまり話してこなかった。
気になるのはごく普通のこと。
「少し、考えても善いかな」
「わ、分かりました。すいません」
何処まで話すべきだろうか。
全てを話してはいけないことは分かっている。
この世界が可能世界だとして、それを知っている人が僕以外にも居たらマズい。
下手したら桜月ちゃんが、もう一人の彼らが暮らすこの世界を消してしまうことになる。
なら、異能力は?
これから例の組織と戦っていくことになるだろう。
英国軍で、戦争で培ってきた僕の戦闘能力はマフィア構成員以上。
異能力を使えば彼女たちを守れるかもしれない。
この世界に戸籍のない僕は、異世界から来たことにすれば良いだろうか。
此処に居ることを許し、信じてくれた彼女たちに全て話すことが出来ないのは少し心が痛む。
「僕は──」
「報告です!」
ビクッ、と肩を揺らしてしまった。
振り返ると其処には一人の構成員がいる。
「泉鏡花様が起きられたそうです!」
「起きた…目覚めた!?」
「どうしてそんなに急に…取り敢えずお姉ちゃんの部屋に向かいましょう!」
「そうだね!」
行こうか、と僕達は鏡花ちゃんの部屋へと向かった。
桜月ちゃんが扉を開いて、その先に広がった景色に少し驚いてしまう。
「鏡花ちゃん……?」
真っ白な髪に、真っ赤な瞳。
彼女の状態はまるでアルビノだ。
「起きた」
「お、お姉ちゃん……」
「ごめん。心配かけた……?」
「ぁ、当たり前、でしょ。お姉ちゃん、だもんっ……会いたかったよぉ”っ……」
涙を流す桜月ちゃん。
とりあえずは起きてくれて良かった。
色々と聞きたいことはあるけど、今すぐじゃなくていい。
「起きてくれた事が何よりだよ」
「ですね、っ!」
「……相変わらず泣き虫」
「ぅ、五月蠅いっ!」
「良かったねぇ……」
はい、と返事をした桜月ちゃんは満面の笑みを浮かべた。
「それにしても、こんな事になるなんて……」
「こういう病気……ですか?」
「否、やはり異能だろうな」
「この前のクレープの時の……」
「その説が一番濃厚だと思う」
「確かに……私、一寸調べて首領達に報告もしてきます!」
バタン、と扉が勢い良く開き、桜月ちゃんは部屋を飛び出した。
姉妹、か。
家族の為に此処まで出来る彼女は、とても眩しい。
「……ごめん」
「え?」
「僕は君の近くに居たのに守れなかった」
鏡花ちゃんの顔が見れない。
もし、僕が海に刺さる光に気づいた時にもっと警戒していれば。
謝っても謝りきれない。
「──何で謝るの?」
え、と顔を上げてしまう。
彼女は本当にキョトンとしていた。
「貴方は悪くない。それより、あの後どうなったか聞かせてほしい」
「……あぁ」
本当にこの姉妹は優しい。
僕は彼女のベッドの近くにあった椅子に座った。
そして一言、微笑みながら言う。
「ありがとう」
彼女が穴に落ちてから、目覚めるまで。
僕目線で申し訳ないが何があったかを説明した。
ただ、何時髪と瞳の色が変わったかだけは分からない。
「にしても、あの昏睡状態から此処まで急に治るとはね……」
「不思議な夢を見た」
「どんな夢?」
「何者かに気力が吸い取られるような」
そんな夢、と鏡花ちゃんは言った。
「気力、ね……」
「其れを無理やり斬って起きた」
いや、斬って起きられるってどういうこと。
ツッコミを入れそうになったけど、止めておいた。
「──夢の中で斬ったのは鏡花ちゃんの短刀か、夜叉白雪か」
どちらにしても眠りから覚める手段を敵は残していたことにはる。
気力を吸い取ることに何の理由があるのか。
考えてみたが、あまり納得の出来る理由が浮かばなかった。
「もう一つ聞かせてほしいことがある」
「……まぁ、桜月ちゃんが帰ってくるまでなら答えるよ」
「貴方はどうして私の異能力を知っているの?」
「──!」
あぁ、やらかした。
独り言として呟いてしまっていたらしい。
観察眼が素晴らしいな、彼女。
どう誤魔化すか考えてみたけど、鏡花ちゃんには嘘と見抜かれてしまう気がする。
動揺してしまった時点で『桜月ちゃんに聞いた』という風に嘘をつくことは出来ない。
「私のこと、いや桜月以外の皆を知ってた?」
「何故そう思う?」
「色々と違和感があったから」
桜月ちゃんもそれで聞いてきたのかな。
どうしようかな、と僕は下手に笑うことしか出来なかった。
はい、四話目です!
ルイスくん…どうするのよ…
桜月ちゃんに心配させるなよ…
ののはなさんの小説もよろしくお願いします!
collaboration.5
「英国出身の迷ヰ犬」の番外編(?)になります。
ののはなさんとのコラボです。
collection.1
https://tanpen.net/novel/67ced1c3-dad6-446e-83d1-522b3741e934/
ルイスside
「ふ、二人とも……?」
桜月、と鏡花ちゃんが扉の方を見た。
僕は急いでいつも通りの表情に戻そうとする。
うまく笑えていなくても、仕方がない。
「桜月ちゃん、首領は何て云ってた?」
「お姉ちゃんが目覚めて良かった、との事です!」
「目が覚めて本当に良かったね……」
「あっ、私、中也さんに呼び出されていて……」
行ってらっしゃい、と僕達は桜月ちゃんを見送った。
中也君に呼び出されるなんて、何したのかな。
「ルイスさん、教えて。貴方の事」
「そうだね」
話すよ、と言えば鏡花ちゃんは驚いているようだった。
「お願いします」
「うん」
何処まで話すべきなのか、少し考え込む。
さっき(collaboration.4参照)桜月ちゃんに話そうとしていたこと。
それに少し追加して話せばいいかな。
「──僕は、能力者だ」
「……。」
「その効果はワンダーランド──異空間に様々なモノを出し入れすることが出来る」
こうやって、と指を鳴らすと鏡花ちゃんのベットに兎の縫いぐるみが転移された。
可愛い、と彼女は少し笑ってくれた。
ここまでが僕について今、彼女に話せること。
「君が好きなものは兎と豆腐。嫌いなものは犬と雷だったかな?」
「やっぱり私のこと知ってる?」
「あぁ。太宰君や中也君、君の言う通り桜月ちゃん以外のことは知ってるよ」
「……どうして?」
さぁ、此処からが本題だ。
「異世界って信じる?」
「え?」
こういう時ばかり、頭の回転がめちゃくちゃ遅くなる。
我ながら、本当に見苦しい言い訳だ。
「此処ではないもう一つの世界。其処にはある小説があってね」
それが、この世界と酷似している。
鏡花ちゃんは驚きすぎて言葉が出ないようだった。
このまま乗り切るしかないよな。
「その小説は敦君を中心として物語が進んでいく。でもね、桜月ちゃんだけ出てきてないんだ」
どうしてだろうね、と僕は微笑む。
鏡花ちゃんはもっと混乱しているようだった。
いや、あの、うん、ごめん、本当に。
「……ルイスさんは、元の世界に戻りたい?」
「──!」
あの嘘など関係なしに、その質問は僕から笑顔を消した。
すぐに答えることは出来ない。
元の世界が決して良い場所とは言えなかった。
此処の方が僕は自由に、過去に囚われることなく生きれるのでは。
「ご、ごめんなさい……私……」
「君のせいなんかじゃない!」
すぐに否定した僕はギュッと自身の胸元を掴む。
本当に、鏡花ちゃんのせいではない。
僕が弱いからだ。
「ぼくが……ぼくが、よわいから……」
遠い、遠い昔。
過去と重なって涙が溢れそうになる。
「ルイスさん」
「──ぇ」
何故か僕は鏡花ちゃんに頭を撫でられていた。
理由を聞こうと思ったが、声が出ない。
涙が声を詰まらせ、視界を歪ませる。
涙が溢れて、ポタポタと服を濡らしていく。
「貴方は弱くないです。話してくれて、ありがとう」
もし僕に姉が居たのならば。
この温かさをいつでも感じられる桜月ちゃんは幸せ者だな。
そう考えながら僕は静かに、そして小さく涙を流すのだった。
第五弾でーす。
ここだけの話を一つ。
最後の方、私が考えたんですけど二、三時間悩んでた(ガチです
鏡花ちゃんがめっちゃお姉ちゃんしてるのは完全に私の趣味です。
推しをカッコ良く表現したいのがヲタクの性質(多分私だけ
ルイス君のキャラ、結構危うくなってるような気がする。
まぁ、しゃあないよね((
てことで、私はののはなさんの召使いになろうと思います(唐突)
なので全力で宣伝します。
コラボ小説もいよいよ五話です!
そろそろ敵組織の魔の手(?)が伸びてくるかも…?
桜月ちゃんって可愛いし、カッコいいし、最高としか言いようが無い。
最近はbeastをやっているんですけど、めっちゃ良いですよ!
絶対に読んだ方がいいです!
てことで(二回目)、次回もお楽しみに!
collaboration.6
「英国出身の迷ヰ犬」の番外編(?)になります。
ののはなさんとのコラボです。
collection.1
https://tanpen.net/novel/67ced1c3-dad6-446e-83d1-522b3741e934/
ルイスside
「落ち着いた?」
あぁ、と僕は鏡花ちゃんに笑ってみせた。
何度か深呼吸をすれば、少し心にも余裕が出てくる。
「年甲斐もなく泣いてしまったな。格好悪いところを見せたね」
「格好悪くなんてない」
彼女は本当に14歳なのだろうか。
僕の一回り下だとは到底思えなかった。
あ、逆に一回り上なのではないだろうか。
そんな下らないことを考えていると、視界に兎が入ってきた。
急すぎて、僕は椅子から転げ落ちそうになる。
「また考え事してた。貴方みたいな人は一人で抱え込んじゃダメ」
「あ、その、ごめんなさい…?」
兎のぬいぐるみの手足を動かしながら話している鏡花ちゃん。
意外と遊び心もあるんだな、彼女。
それで、と鏡花ちゃんは僕が何を考えていたのかを聞いてくる。
「本当に14歳じゃないでしょ、と思ってました」
「……? 私、16歳」
「へ?」
思わず変な声が漏れた。
確か他の人の年齢は同じだった筈。
彼女だけ僕の世界とは違うのか。
また考え込んでいると、鏡花ちゃんが無言の圧をかけてきた。
あ、今度ゆっくり考えることにしよう。
今は鏡花ちゃんに色々と見抜かれてしまうような気がした。
「そうだ、桜月ちゃんのところに行こう! 今の話をしないとだからね!」
「……わかった」
構成員に話を聞きながらビル内を歩き、辿り着いたのは中也君の執務室。
「ルイスさーん」
お願いします、と彼女は何度目か判らない助けを求めて来た。
桜月ちゃんに中也君が凭れ掛かっている。
部屋に入るなりその光景が目に入ってきて、初めは驚いた。
でも、怒られた後に反省していなくてこうなったのなら自業自得だ。
「何時まで私にもたれているんですか、中也さんーっ!」
中也君は返事をしなかった。
まぁ、反省しているようには見えないからな。
「る、ルイスさん、お姉ちゃん、そろそろ助けて私死にます」
「頑張れ…?」
そう、はてなマークを付けながら僕は応援した。
「夜叉白雪、桜月を楽に──」
「お姉ちゃんそれは私夜叉に殺されるから辞めて」
「矢っ張り反省してねェじゃ──」
「ものすごく反省してます御免なさい本当に済みませんでした許して下さい」
僕は三人の様子を見て、笑ってしまった。
鏡花ちゃんのお陰だろうか。
心の奥底から笑うことが出来たような気がする。
「鏡花ちゃん、写真撮っておこうか」
「はい」
|写真機《カメラ》の用意は出来てます、と鏡花ちゃんの手にはもう一眼レフがあった。
うん、いつの間に持っていたんだろう。
僕らの会話を見て、桜月ちゃんはとても焦っていた。
「一寸写真なんか撮ってないで助けてくださいっ」
「だって面白いんだもの」
「カウントダウン開始」
そして僕達は声を合わせ、写真を撮るまでのカウントダウンを始めた。
「5」
「4」
「3」
「2」
「1」
カシャッ、とシャッターの切る音が静かな部屋で鳴った。
二人で確認してみると、中々綺麗に撮れている。
「ねぇちょっとっ! 写真撮ったからいいですよねっ!?」
「もう一枚」
だね、と僕が言うと桜月ちゃんにツッコミを入れられてしまった。
「というか、中也寝てるっ!? えっ? 此処で?」
起こそうとしているが、確実に不機嫌になるだろう。
余計に彼が凭れ掛かる時間が伸びるだけ。
「怒っているマークが頭に10個は浮かびそう」
本来なら絶対に見えない。
でも、容易に想像出来てしまう。
もちろん笑わずには居られなかった。
「むにゃむにゃ…桜月五月蠅ェ…」
「中也に至っては寝言なんだけど!?奇跡すぎでしょこれっ!」
本当、面白いな。
此処にいると毎日が楽しそうだ。
「……。」
ふと彼女の方を見ると、何故かボーッとしていた。
気に掛かることでもあったのだろうか。
「桜月ちゃん、大丈夫?」
「ボーっとしてる」
「大丈夫です! でも、その……3人、4人で笑い合えるのが、本当に幸せだね……って」
そうだ。
きっと此処は楽しいだけじゃなくて幸せだ。
「……そうだね。ずっと、此処で笑っていたいな。」
「此処に居れる限り、ずっと幸せ。でも、ルイスさんは元の世界があるでしょう」
鏡花ちゃんの言葉に、僕は微笑むことしか出来なかった。
そうだ、桜月ちゃんにもきちんと説明しないと。
そう呑気に考えていた僕は、
彼女が何とも言えない表情をしていたことなど知らなかった。
遅くなりましたぁぁぁぁぁぁぁぁ!
すみませぇぇぇぇぇぇぇぇん!
てことで海嘯です。
ルイスくんが笑えて良かった、の一言しか浮かびません。
幸せが長続きするとは限らない。
出会いがあれば、別れがある。
それでは、次回もお楽しみに。
ののはなさんの小説もよろしくお願いします!
collaboration.7
「英国出身の迷ヰ犬」の番外編(?)になります。
ののはなさんとのコラボです。
collection.1
https://tanpen.net/novel/67ced1c3-dad6-446e-83d1-522b3741e934/
ルイスside
「あのっ、ルイスさん!」
「な、なに?」
突然話しかけられ、僕は驚きを隠せなかった。
「桜月、静かに。中也さん起きる」
「あっ、ごっごめん」
「で、如何したの?」
「あ、あの、っ」
桜月ちゃんは、何か迷っているようだった。
でも、聞きたい内容については予想がつく。
彼女が悩む必要はない。
「僕の事を、聞きたいんだろう?」
「……えっ?」
「全部顔に出てる」
「嘘っ」
「物凄く分かりやすいね」
「えっ」
ショックを受けているのか、桜月ちゃんは少しの間下を見ていた。
「あ、そ、そうなんですけど……やっぱり、その……」
「大丈夫だよ。鏡花ちゃんにも話した事だし、桜月ちゃんにも言わなきゃって思ってたから。」
「そ、そうなんですか、? ……お話、お願いします。」
うん、と僕は優しく笑いかけることを意識した。
大丈夫。
話す内容はさっきと全く一緒で構わない。
無駄に緊張する必要はないんだ。
「僕は、異能力者なんだ。異空間に様々なモノを出し入れすることが出来る」
「この前は兎を出してくれた」
「兎っ!? 絶対可愛いぃ~」
「うん。可愛い」
「それでね、僕は──」
僕は異世界から来た。
そう言葉を紡ごうとしたが、声に出すまでいかなかった。
桜月ちゃんだけ居ない、なんて本人の前で言える筈がない。
無駄に心臓の脈打つ速度が速くなる。
「僕は……?」
「いや、何でもない。僕は異能力者だ、って事」
「そうなんですね……」
少しだけ、手が震えていた。
僕はそれを隠すように腕を後ろへと回す。
「話して下さって、ありがとうございます」
「いいんだ。大した事じゃ無いから…」
今、僕はちゃんと笑えているだろうか。
「忘れてる」
鏡花ちゃんがそんなことを言いながら、部屋の向こう側を指差した。
部屋がシーンと空気に包まれる。
「ひぇっ」
「あ」
指差した先には、笑顔の中也君が居た。
そういえば話している間、背中に居なかったな。
いつの間に投げたのだろう(投げた前提)
「ごめんなさぁーぃ」
「五月蠅ェよ急に叫ぶなよ!」
「ハイ。スイマセン」
なんか……うん、ごめん。
多分原因は桜月ちゃんだけど、僕がちゃんと全て話せなかったからだ。
「 (っω`-。 )ショボン」
「ウッ……」
バタッ、と音を立てて中也君が倒れた。
あ、これヲタクがよくなる『トウトシ』って奴だ。
「え、何々心臓発作でも起きたの?」
桜月ちゃんが中也君を揺さぶる。
「ねぇちょっと中也~! 起きてよ~!」
「寝てねェよ!」
あ、中也くんが復活した。
二人の会話は漫才というか、コントみたいだ。
「はァもういい……反省してるみたいだったしな」
「大分しょんぼりしてたね」
「いや私最初から反省してましたよ」
暫くの沈黙のあと、僕達は声を合わせて驚く。
「え、反省してましたって」
「反省の色が薄すぎ」
「な、中々分かり難い反省態度だね」
アハハ、と苦笑いを浮かべることしか出来ない。
こんなに反省が分かりにくい人居るんだ。
「絶対ェ嘘だろ」
「其の言葉、何回目ですか??」
「まぁ、桜月ちゃんも反省してるみたいだし、皆の所へ行こうか」
何か嫌な予感がする。
彼らはそれぞれ返事をしてくれて、僕達は廊下へと出る。
「四人とも、此処に居たのか! 早くこっちに来るんだ! 善いから!」
そう声を掛けてきたのは太宰君だった。
彼の様子はいつもより余裕がないように見える。
嫌な予感が、当たってしまったか。
「敵襲だ! 一階は既に突破されたらしい! 取り敢えず下はマフィアの下級構成員が何とかしてくれている」
「……取り敢えず上へ行きましょう」
国木田君が云うなら相当だ。
僕達が話していた内にそんなことが起こっていたとは。
気持ちを切り替えなくては。
《《どんな手を使ってでも》》、彼女達を守らないといけない。
深く追求せず、僕を信じてくれた彼女達を。
「……。」
あぁ、僕は弱い。
守りたいのに過去の光景がちらつく。
まるで誰も守れないと言われているような気分だ。
『ルイスなら大丈夫』
そう、後ろから声が聞こえたような気がした。
とても懐かしい、心が温かくなる声だ。
亡くなった人のことを、声から忘れると良く言う。
僕もそうだった。
どれだけ記憶を辿っても彼らの声は思い出せない。
でも今、はっきりと思い出した。
背中を押してくれて、ありがとう。
僕は深呼吸をし、無理やり迷いを抑え込む。
「……僕も、鏡花ちゃん達と戦闘に参加するよ」
「えっ、でも、ルイスさんは、」
「自分自身で決めた事に、私達が口出ししては駄目」
「其れもそうだ。取り敢えずは全員上に集まってるみてェだし行くか」
「分かった」
ありがとう、皆。
「太宰さん、国木田さん、皆は何処の部屋に?」
「首領室」
「出来る限り速足で行こう」
「ですね。走ると体力の消耗に繋がりますし」
あれ、僕の異能で転移した方が早いのでは。
でも太宰君が居るから無理か。
彼の『人間失格』で異能力が無効化されたら、普通に次元の狭間に取り残されてしまう。
「桜月、龍」
あ、鏡花ちゃんの言葉に僕以外の皆が反応する。
龍ってあの龍だよな。
そういえば奇獣の使い手なんだっけ、桜月ちゃん。
「奇獣、龍! 早く皆を乗せて!」
随分楽になった。
ほぼ走ってるみたいな状況だったし、これで暫く体力が温存できる。
「鏡花ちゃん、ナイス」
「気が付かなかったな。奇獣を使うとは」
「全員乗れて善かった」
僕は誰にも気付かれないように《《ソレ》》を転移させる。
使わないことを願いながら。
トウトシ=尊死。
ルイス君、唐突に日本語に弱くなるというね。
はい、ふざけました。すみません。
いやぁ、矢張り主様は天才ですね。
主様の書く小説は登場人物が生き生きとしております。
私の小説など主様の足元にも及びません。
良かったら貴方も、主様の小説をお読みになられては如何ですか?
勿論、無理にとは言いません。
ただ読まないと損だとは言っておきます。
この小説を別目線から楽しむことが出来るだけでなく、主様の素晴らしい作品を見ることが出来るのですから。
それではまたお会いしましょう。
───
いや、誰だよ。
正解はイワン化した海嘯でした((
collaboration.8
「英国出身の迷ヰ犬」の番外編(?)になります。
ののはなさんとのコラボです。
collection.1
https://tanpen.net/novel/67ced1c3-dad6-446e-83d1-522b3741e934/
ルイスside
「龍、ありがとう。戻って善いよ」
そう桜月ちゃんが言うと、リュウが姿を消す。
「首領、中原です。失礼します」
「入り給え」
「私達も、失礼します」
「どうぞ」
「ルイスさん、お先にどうぞ。皆、先に。私が最後に入ります」
ごめんね、と僕は一足先に首領室へと足を踏み入れる。
後ろからは太宰君のふざけている声が聞こえる。
僕の世界の彼だったら、今頃踏んでいた。
「今ふざけちゃ駄目です」
そう、桜月ちゃんは本気のトーンで言った。
「その通りだね……」
「ハイ。スイマセン」
「フッw」
「中也?」
「タイヘンモウシワケゴザイマセン」
「よろしい」
「素直に謝ってる……!?」
此方の世界の彼らもこのぐらい素直だったら良いのに。
というか16歳に叱られる22歳って絵面凄いな。
「で、首領。押し掛けて来たのは例の組織で間違いないですね?」
「そうだね。現在此方が押されて居ると考えて良いと思う」
「成程のう……」
「僕等も下の応援に行ったほうが……」
「なら僕も、」
「俺も行く」
「一寸待って下さい。皆さん、それ程の人数、主要戦力が欠けては困ります」
彼女の発言に、確かにと思った。
敵の狙いが判らない以上、下手に戦力を割くことは出来ない。
「そうだね。一人、其れか二人だ」
「私が、行きます」
異論は認めないと、そう言われている気分になった。
「オイ……」
「私に、行かせて」
「ならせめて俺も」
「駄目だよ。それじゃ、私が行く意味が無いもん」
中也君は唇を噛み締める。
探偵社の面々や幹部クラスは、そう簡単に最前線に立つことは難しい。
それに、桜月ちゃんなら戦闘だけではなく、回復などの補助にまわることが出来る。
でも、彼女一人に行かせるわけにはいかない、
「僕が行くよ」
「えっルイスさん!?で、でも、、」
「行ってらっしゃい、桜月、ルイスさん。」
鏡花ちゃんが背中を押してくれた。
まだ全部話せていないのに、信用してくれた。
胸の辺りが、とても暖かい。
でも、首領が無言だ。
「──!」
シュッ、と空気を切る音がした。
何かまでは判らない。
でも、眼前にソレはあった。
「此れで如何ですか?」
僕は少し首を傾けて、ソレを避ける。
壁を見ると、メスが突き刺さっていた。
試されるとは思っていたけど、殺す気な気がする。
まぁ、元の世界なら叩き落としてすぐ銃で撃っていたからなんとも言えないが。
「今のを避けるか……」
首領のエモノは、この世界でも一緒か。
そんなことを考えながら、僕は手渡しで返す。
絶対ありえないけど、僕が投げて首領が怪我なんてしたら色々と面倒くさい。
「じゃあ二人に応援を任せるよ」
「ゎ、判りました。ルイスさん、行きましょう。」
「そうだね」
「死ぬなよ、二人共」
「勿論だよ」
「また後で!」
首領室を出ると、僕達はまた龍へと乗った。
戦闘自体は久しぶりでもない筈だが、脈打つ速度はドンドンと上がっていく。
緊張しているのか、僕は。
桜月ちゃんも同じ状態なのか、一言も話さない。
僕の為にも、彼女の為にも余計なことは話さないことにしよう。
「死ねぇぁぁぁっっ」
「ぐぁぁぁぁっっ」
「うぅぅぅっっ…」
戦場に近づく程、そう言った声は大きくなってくる。
龍から降りた僕が見たのは、地獄のような景色だった。
これが組織戦だ。
脳裏に浮かんだ戦場と重なって、吐きそうになる。
「ルイスさん、私は先に不死鳥で救助の方をします。戦ってる人の援護お願いします!」
「判った! 気を付けて!」
「ルイスさんも、お気を付けて!」
自分の意思で此処に来ると決めたんだ。
恐怖も、後悔も、懺悔も。
この戦場には必要ない。
今、僕に必要なのは純粋な力だ。
過去の──『戦神』と呼ばれた僕の戦闘能力。
「また後で、会いましょう!」
桜月ちゃんの言葉を合図に、僕達は反対方向へ駆けてゆく。
首領の予想通り、此方側は圧されている。
敵と比べて負傷者の数がえげつない。
「──貴様は!」
騒がしい戦場から、そんな声が聞こえた。
目の前にいる敵と、目が合う。
僕のことを知っているのか、アイツ。
なら、皆殺しにされては困るな。
指揮官らしき人物は逃げるように後退した。
すぐに殺されることはなさそうだな。
「さぁ、始めよう」
銃弾の嵐が僕へと降り掛かる。
しかし、問題はない。
異能力『不思議の国のアリス』で被弾する前に銃弾を転送すれば、当たることはない。
ただ、インターバルを考えて行動しないといけないのは、少々面倒くさい。
無限に転移できるわけではないので、うまく考えて行動しなくては。
この見極めはそこそこ難しいが、もう慣れた。
「……。」
久しぶりの戦闘なのに、全く息が上がらない。
体力も落ちているものだと思っていた。
これが『戦神』か。
「さて、如何します?」
数分後、僕は桜月ちゃんにそんな質問をされていた。
敵の数は残り一人。
味方の姿は僕達以外にない。
完治させて下がらせたのだろう。
「うーん、残り一人だから──」
捕虜にでもしようか。
そう言おうとした僕だったが、思わず叫んでいた。
「桜月ちゃん、危ないっ!」
残り一人ではなかった。
敵の後ろに見えた、もう一つの影。
銃を構えて此方を見ている。
だが、銃口は桜月ちゃんを向いていた。
僕はすぐに気がついて駆け出した。
彼女は疲労のせいか、動けなかった。
伸ばした手は届きそうにない。
異能力を発動させようにも、まだインターバルが終わっていない。
直前に異能力を使っていた僕を、心底恨んだ。
何度もこういう場面を経験してきた。
目の前で、仲間が死ぬ。
「──クソッ」
僕は無力だ。
一人ですら守ることが出来ない。
走っている僕の懐に、何か固いものがあった。
ふと、思い出した。
こういう時の為、僕は拳銃《ソレ》を転移していたんだろう。
安全装置《セーフティ》を外して構える。
僕の手は、微かに震えていた。
(失敗したら彼女は……)
そんなことを考えている暇があるなら、精神を研ぎ澄ませ。
もし、異能力の発動が間に合わなかったらこれで銃弾を《《撃ち落とす》》。
当時の僕なら出来たことだ。
もし無理でも、軌道をずらすことは出来る筈。
「間に合え──!」
--- パァン、と銃の音がした。 ---
瞬きをする間に、世界は変わる。
其処は、見慣れた空間だった。
「……間に合った?」
銃弾を確認してみたが、減っていない。
撃たずに済んだのは良いが、相変わらず手は震えている。
銃を懐にしまい、辺りを見渡す。
其処にはズラリと銃や手榴弾が並んでいた。
武器のエリアか、此処。
「ルイスさん……?」
その時、声が聞こえた。
方向的に、一番彼女に行ってほしくない《《何もないエリア》》ではないらしい。
声のした方へ足を進めていくと、彼女のいるエリアが判ってきた。
「桜月ちゃん、大丈夫?」
「る、ルイスさんっ……ありがとうございましたぁぁっっっ」
ぬいぐるみが数え切れないほどあるエリア。
ただの僕の趣味を詰め込んだだけだ。
よく此処で睡眠を取っているが、今はどうでも良い。
「それよりも無事で何よりだよ……」
良かった。
本当に彼女が無事で良かった。
「ルイスさんは私の命の恩人ですね!」
命の恩人、か。
「じゃあ、元の世界に戻すよ。残り二人を絶対に倒そう」
「はいっ!」
現実世界に戻るなり、僕達は敵に飛び掛かっていった。
そして、各々一発お見舞いする。
「手間を取らせないでくれる? この莫ぁ迦」
確かに彼らは莫迦だ。
僕達が居なくなった時に歩を進めれば良かったものの、警戒して此処に残ったのだから。
とりあえず、これで終わりかな。
「最後の二人、捕縛完了。敵の第一軍はこれで最後と思われます」
「今のところ死者は出ていません」
このまま楽に終わってくれたら良いのだけれど。
頑張れ、ルイスくん。
よく桜月ちゃん守った!
偉い! 本当に!
次回もお楽しみに!
(雑ですみません
collaboration.9
「英国出身の迷ヰ犬」の番外編(?)になります。
ののはなさんとのコラボです。
collection.1
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ルイスside
『このまま楽に終わったら良いのだけれど』
その通りになった。
否、この言い方は少々語弊がある。
とりあえず第一軍であろう全員は片付けることが出来た。
しかし、第二軍が来ない。
なので一度、首領室に戻ることになった。
「にしてもほんっとうに有難う御座いました!」
「いやいや、桜月ちゃんが無事で本当に良かったよ」
「本当に命の恩人です~」
そう、桜月ちゃんは涙を流す。
「え、ちょ、泣かないで!?」
「る、ルイスさんが、吃驚してる顔、初めて見ましたぁ~」
「発言と状況があってないよ」
「でも、まぁ合ってるって事にしときましょうっ!」
えへへ、と笑った彼女はそう言った。
僕は「そうだね」と答える。
それにしても、何故第二軍は来ないのだろう。
「首領室に着きました……首領、失礼します」
「ルイスです。失礼します」
「桜月ちゃんにルイス君か、入り給え」
「有難う御座います。報告です」
「第二軍が、来ません」
各々驚く中、首領と福沢さんは冷静だった。
流石は組織の長、といったところか。
「来ない?」
「撤退した、という事か?」
撤退、ね。
何が目的かは知らないけど、そう簡単に退くようには思えないんだよな。
いや、敵の目的についてある程度予想が着く。
「取り敢えず、第一軍は数人捕虜として捕まえましたが、その後何の音沙汰も無い状況です」
「もしかすると、敵は僕の事を知っているかもしれない…」
「えっ!? ルイスさんの事を!?」
聞こえなかったならそれで構わないけど、ちゃんと聞こえていたらしい。
また部屋にいる人達が驚く。
「な、んで…っ」
その中でも一番驚いているのは、鏡花ちゃんだった。
僕が目的だというのは、あくまでも可能性があるというだけ。
別世界から来た僕が狙われるというのは、結構おかしいことだろう。
何故ならこの世界に僕を知っている人はいない筈だから。
(それなら、どうしてあの敵は僕のことを?)
僕の中では、驚きより不思議の方が勝っていた。
もしかしたら僕は、この世界にも居るのではないだろうか。
アイツが見間違えただけかもしれない。
それか、ここに居る全員──。
「ルイスさん、少し落ち着いて」
「あ、ごめんね」
僕はハッとした。
考え込むと周りに迷惑を抱えてしまう。
一瞬でも彼女達を疑った僕は、本当に最低だ。
「兎に角、私達は元の場所に戻り、第二軍が到着した時の確認を続けます」
「この状況でルイス君を連れて行くのは危険じゃないかね?」
確かに、と紅葉は共感した。
「然し、この二人の異能は相性が良い。ペアを組んで動いたほうが良いと思うがのう」
「私も、その通りだと思う」
福沢さんも共感してくれた。
なるべく自分の力だけで解決できたらいいのだが、彼女は許してくれないだろう。
「私は、ルイスさんのお陰で命が助かりました。彼が居なければ、今頃私は倒れています」
「彼女の治癒のお陰で多くの人が助かりました。戦場に居ることが必要不可欠だと思います」
「う~ん、ならさっきと同じように二人で矢張りお願いしよう」
「私と、ルイスさんの二人ですね」
「健闘を祈る」
僕は小さく頷く。
今まで報告は入っていないが、敵はまだ来ていないのだろうか。
楽に終わらなさそうだな。
「じゃあ行こうか、桜月ちゃん」
「はい!」
部屋を出ると、彼女は銃弾を補充しに行った。
先に行っていいらしいが、どこまで進むべきだろう。
そんなことを悩んでいると視線を感じた。
ここは首領室の一つ下の階。
普通の構成員がウロウロして良い状況とは思えない。
それに、僕のことは連絡がいっているだろうから隠れて様子を見る必要もない。
「……誰だ」
声を掛けても反応が返ってこない。
でも、人が居るのは間違いないだろう。
「なら此方から──」
その時、窓の外で何かが輝いた。
狙撃かと思い柱に隠れようと思ったが、僕は立ち止まる。
窓の外には海しか広がっていなかった。
そして狙撃かと思った輝きの正体は、海面に突き刺さる《《一筋の光》》。
まさか、と僕は近づいてくる光について思考を巡らせる。
直後、不思議な感覚に襲われた。
これは《《浮遊感》》、僕は落ちているのだ。
鏡花ちゃん、そして桜月ちゃんが落ちた穴と一緒だろう。
話に聞いていた通り何も存在せず真っ暗な、異様な光景が広がっている。
ホースのようなものに僕は落ちていった。
彼女があの時、どんな気持ちだったのか改めて理解した。
周りには僕を落とした犯人しか、多分いないだろう。
彼のように助けてくれる人は居ない。
これは、諦めるしかない。
それでも僕は、少しの希望を抱いて手を伸ばした。
「い、のうりょく……」
僕は|異能空間《ワンダーランド》へ逃げようとした。
しかし、意識が遠のく今の状態では自分自身を送ることが難しい。
何でもいい。
何か、彼女達に手掛かりを残したい。
伸ばした手は、矢張り何も掴むことがなかった。
そして僕は意識を失った状態で、暗く深い闇へと落ちていく。
──手掛かりを残せたのかどうかも、分からないまま。
ルイスくん…大丈夫なのかな…
collection.2の時と同じ奴に落ちてます。
もう、本当にののはなさんの考えるストーリー神すぎませんか?
マジで尊敬するわ…
次回もお楽しみに!
本編とか、他のも読んで頂けると嬉しいです。
ののはなさんの小説も読みに行ってください!
(最近、あとがきが雑な気がする…)
collaboration.10
ののはなさんとのコラボになります。
今回は少し短めです。
ルイスside
「──い、おーい、起きてくださーい」
ペチペチと頬を叩かれる感覚。
「……こ、こは」
見慣れない天井が、そこにはあった。
確か、僕は穴に落ちて──。
左上で目を擦り、ついでに髪の色を確認してみた。
金髪のままだ。
鏡花ちゃんのように色素の抜けた白髪にはなっていない。
長時間、穴の中にいたわけではないのだろうか。
「あ、やっと起きました?」
「君は──」
僕はゆっくりと体を起こした。
眠っていたベットの横には露西亜人。
どうやら僕は彼──|フョードル《魔人君》に頬を叩かれていたらしい。
ただこの世界の彼とは面識がない為、初対面を演じなければならないか。
しかし、そんな僕の思考は無駄になった。
「心配しなくても、僕はあなたのことを知っていますよ。ルイス・キャロルさん?」
「は、ま、ちょ……ゑ?」
「少し落ち着きましょうか」
動揺せずには居られなかった。
僕はまだこの世界に来て日が浅い。
つまり、情報がほとんど無い筈なのだ。
なのに僕のことを知っているということは、例の組織の裏で手を引いていたのは──。
「先に言っておきますが、僕が真犯人ではありませんからね?」
「心を読まないでくれる?」
でも、こういう時の彼は嘘をつかない。
別世界とはいえ、根本的なものは変わらない筈だ。
なら今の発言は信用できる。
「──で、《《コレ》》について質問しても?」
僕が右腕を動かす度に、ジャラジャラと音が鳴る。
魔人君の手と、僕の手が鎖で繋がれていた。
うん、本当に何でかな。
しっかりとした理由があるのならば、教えてもらいたいものだ。
「逃走防止ですよ。あなたは触れているものも一緒に転移させてしまう。なら僕も一緒に送られますよね?」
「あー、うん。理由は分かった。君が僕のことを知っているということもよーく分かった」
で、其処までして話したいことは何だ。
笑顔を浮かべ、少し殺気混じりに僕は問い掛ける。
しかし流石は魔人君か。
この程度では眉一つ動かすことがない。
「僕の作戦に、協力していただけないかと思いまして」
不敵に浮かべた笑みを、僕は忘れることがないだろう。
彼の通り名である『魔人』にこれ以上相応しい人間はいないことだろう。
それにしても、彼の“作戦”か。
探偵社とマフィアを潰すというものなら、今ここで止める。
「横浜を荒らして回る例の組織の真犯人、ではありませんが僕が裏で手を引いていたのは事実です。僕達の目標に、探偵社やマフィアにとってもあの組織は厄介です。なので太宰君達に潰してもらおうかと思いまして」
「……僕じゃなくて桜月ちゃんに頼めば良かったじゃ?」
「あくまで僕──否、《《僕達》》は裏で手を引くだけであって、堂々と味方でいるつもりではありません。それに|泉桜月《彼女》とはもう面識があるので」
あぁ、と魔人君は思い出したかのように話を少し変える。
「あなたをここにお呼びする為に、少々手荒な方法をとってしまったことをお詫びさせてください」
「少々じゃなかったけど?」
「あの光の異能で送る以外に方法がなかったんですよ。けど、短時間だったからか代償は少なく済んだみたいですね」
僕は首を傾げる。
髪色は変わっていない。
それなら、代償とやらはどこに現れたのか。
思考が単純すぎたせいか、魔人君は鍵で枷を外してくれた。
「ご自分で確認されるのが良いと思いますよ」
「え、あ、うん……?」
ベットから降り、僕はスリッパを履いて近くの姿見まで歩く。
一見、何の問題もないように見える。
でも不思議と違和感があった。
いつもと同じ服に、背丈も変わらない。
金髪で、鏡花ちゃんのように瞳の色は──。
「──うっ」
「大丈夫ですか?」
「心配、いらない……」
口元を押さえながら、僕は元のベットまで戻った。
僕の瞳は《《燃え上がる炎のような赤》》になっている。
元の緑色の面影など、どこにもなかった。
「……話を戻してくれて構わない」
「そう、ですか」
少しだけ心配そうな顔をした魔人君。
迷惑をかけてしまったな。
多分、僕の世界の魔人君なら容赦なくこういう精神攻撃をしてくる。
「じゃあ、詳しい作戦についてお伝えしますね」
フョードルside
「これから組織は第二軍をマフィア本部へ送ります。彼らは横浜を荒らして回る……まぁ、簡単に云うなら横浜を自分達のものにしたいんです」
つまり今の狙いはマフィア首領。
最上階に辿り着くまでそう時間は掛からないことでしょう。
「目的は異能開業許可証か」
「そんなところですね」
まさか彼が知っているとは思っていませんでした。
でも異能力を持っているならおかしくない、か。
それで、とルイスさんは問い掛ける。
「例の組織の長はいつ動く?」
「それは……」
正直、分からない。
何故ルイスさんをこの世界に呼んだのかも。
横浜を自分達のものにしたいのかも。
だからこうして探偵社とマフィアに潰させようとしている。
「──まぁ、何でもいいや。とりあえず首領と、福沢さんを守ればいいんだよね」
「はい。それじゃあ、少し移動しましょうか」
彼達と合流予定の時間ですね。
ルイスside
「だ、大丈夫?」
そう、僕は声を掛けた。
移動した先は、先程と違う部屋。
そこには道化師らしい人物と、桜月ちゃんがいた。
「えっ……? ルイスさん?」
「も~ドス君遅い!」
「計画通りですから」
僕のせいで計画が乱れたりはしてないのかな。
「け、計画? というかなんでルイスさんが此処に? というか何でここにフョードルが?」
「う~ん、細かい所はこの二人が居なくなってからにしようか。」
「は、はい……?」
「と言う訳で、じゃね~」
「一寸待てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
そこまで時間は立っていない筈なのに、とても懐かしく感じた。
桜月ちゃんと再会出来た事が、とても嬉しく感じる。
まさかのドス君とゴーゴリ登場☆
しかも仲間で本当にびっくり。
赤い瞳を見て嫌な気分になったのは、そのうち(組合戦)明かされると思います。
ドス君と面識があるんですよね、ルイス君。
でもゴーゴリは面識がないという。
どこまで書いて大丈夫か、めちゃくちゃ考えながら書いてます。
多分『英国出身の迷ヰ犬』のネタバレはない筈!
あったら済みません……
それではまた次回もお楽しみに!
ののはなさんの小説も、どうぞよろしくお願いします!
───
えっと、姿見で代償の確認をするシーンの詳細のURLを最後に貼っておきます。
内容が結構アレです。
苦手な方がいらっしゃるかもしれないので念の為、別の小説での投稿にしました。
https://tanpen.net/novel/3f309d1a-a4e4-46ba-9dc0-3c807c78a9bf/
collaboration.10(閲覧注意)
ののはなさんとのコラボである『英国出身の迷ヰ犬×文豪ストレイドッグス!』の第十話である上のURLの閲覧注意版です。
姿見のシーンだけですが、この内容は少し人を選ぶかと思って別での投稿にさせていただきました。
Rをつけた方が良いか判断が難しかったので、ファンレターなどで教えてくださると幸いです。
それでは、前書きが長すぎるのも良くないのでこの辺で。
⚠︎注意⚠︎
#文スト二次創作
#アニメ4期までのネタバレ
#collaboration.10のネタバレ
#過呼吸表現あり
#嘔吐表現あり
一応、collaboration.10の内容振り返り。
桜月ちゃんや鏡花ちゃんと同じ穴に落ちてしまったルイス。
彼が気がつくと、そこには見慣れない天井が。
隣には、何故かフョードルの姿が。
鏡花ちゃんのように髪の色が変わったわけではないが、少し変化はあるらしい。
しかしフョードルは教えてくれない。
ルイスは自身で変化を確認するために、姿見の前に立つのだった。
---
ルイスside
ベットから降り、僕はスリッパを履いて近くの姿見まで歩く。
一見、何の問題もないように見える。
でも不思議と違和感があった。
いつもと同じ服に、背丈も変わらない。
金髪で、鏡花ちゃんのように瞳の色は──。
「……ぁ」
息が、上手に出来ない。
僕の瞳はいつもの緑色ではなく、燃え上がる炎の色をしていた。
笑っていない筈。
なのに、鏡に写っている僕は満面の笑みを浮かべている。
血で服が赤く染まっていてその姿は、まるで──。
「──うっ」
僕は震える手で口元を押さえながら床に座り込む。
急いで袋を転移させるけど、間に合わない。
手で受け止め切れるわけがなく、びちゃびちゃと音を立てて吐瀉物が床を汚していった。
「ルイスさん!?」
胃からせり上がってくることを、止めることはできない。
ただ僕は吐き続ける。
「おぇ……げほっ……」
「落ち着いてください。大丈夫です。僕がここにいます」
「ご、めん……ゆかよごしちゃ、た……」
そんなこと、と彼は傍にいてくれた。
こういう時はいつも一人だったせいか、凄く安心する。
どうしてこんなことになったのか、自分の中で予想はついている。
ほぼ確定していると言っても過言ではない。
これは《《拒絶》》だ。
どうしてもこの瞳を、僕は受け入れられなかった。
忘れたくても忘れられない記憶。
その人物と姿見に写った自分が重なって見える。
「大丈夫ですか?」
「心配、いらない……」
それから少しして、僕は元のベットまで戻った。
まだ吐き気はあるけど先程までと比べたら全然マシだ。
「一応袋を用意しておきますね。あと、遠慮はしないで良いですから」
異世界からきた
「……話を戻してくれて構わない」
「そう、ですか」
少しだけ心配そうな顔をした魔人君。
迷惑をかけてしまったな。
多分、僕の世界の魔人君なら容赦なくこういう精神攻撃をしてくる。
「じゃあ、詳しい作戦についてお伝えしますね」
collaboration.11もお楽しみに
collaboration.11
「英国出身の迷ヰ犬」の番外編(?)になります。
ののはなさんとのコラボです。
collection.1
https://tanpen.net/novel/67ced1c3-dad6-446e-83d1-522b3741e934/
「ルイスさぁぁぁぁんっっ!!」
うわっ、と僕はどうにか桜月ちゃんを受け止める。
「だ、大丈夫?」
「うぅ、、ルイスさんの方が、大丈夫じゃないでしょう(´;ω;`)」
「いや、僕はだいじょう──」
そこまで言った僕は「あ」と言葉を漏らす。
普通に大丈夫と言える状況ではない。
「如何したんです……かぁぁぁぁぁっっ!? え、ちょっルイスさん!? 目がっ……」
「え……?」
「る、ルイスさ……」
「_( _-ω-`)_」
「だ、大丈夫かい?」
「真坂……」
「鏡花ちゃんと同じような……?」
「ほ、本当にあの穴に落ちたんですか!?」
「うn」
「えぇぇぇええぇぇぇええぇえええぇぇえぇえええええええ」
少し、耳がキーンとなった。
「五月蠅ェなオイ」
「桜月、五月蠅い」
「黙れ。叫ぶ事しか出来ないのか……?」
最後だけ悪口で、思わず笑ってしまった。
マフィアってこういう時のノリ良いよなぁ。
「芥川先輩!桜月はそういう性格なので許してあげて下さい!」
「え、お二人共…というかさっきの発言は全員酷くない?」
「やっぱり私に似て来たねぇ」
「え」
太宰くんに似てきた、か。
元の彼女を知らないから何とも言えないけど、確かに雰囲気は似ているかもしれない。
「──断固拒否」
「グハッ」
「ドンマイ、太宰君…?」
「ってあぁっ! す、すいませんルイスさんっ!」
今頃になって桜月ちゃんは僕から離れた。
少し中也君からの視線が痛かったから助かったのは、ここだけの話。
どうにか重力で潰されない方法を考えていると、ふと彼女が声を上げた。
「ルイスさん、結局それは如何したんですか……?」
それ、について心当たりはあった。
まるで炎のように真っ赤な瞳。
僕の脳裏に、また嫌な光景が浮かび上がった。
少しだけ奥歯を噛み締める。
「えぇー、と……」
「穴に落ちた。だけでしょう?」
「う、うん!」
「そうですよね……」
桜月ちゃんは少し寂しそうだった。
僕は彼女に話せていないことがある。
そのせいもあってか、胸が苦しい。
「桜月ちゃん?」
ぼーっとしている。
何度か声をかけてみると、やっと反応が返ってきた。
「えっあっはいっ!?」
「大丈夫? ぼーっとしていたけど……」
「す、すいません……」
「僕よりも桜月ちゃんの方が……」
苦しい筈なのに。
「いやいや! 私は元気ですよ!」
「そ、そう? 善かった……」
胸を撫で下ろした、その時。
僕の視界に《《アレ》》が見えた。
僕達へ向けてまっすぐ向かってくる。
「みんな避けてっ!!」
桜月ちゃんの叫び声と、光。
前のように空く穴。
砂埃で辺りが見にくいが、敵襲なことはすぐ判った。
魔人君の言っていた第二軍──|首領《ボス》を狙う敵。
ここで決着を。
「無事、ですかっ?」
「僕は、大丈夫、だよ!」
「わ、たしも大、丈夫」
「た、すかったよ桜月ちゃん、」
「兎に角、全員無事、な様だ」
次の攻撃はいつくるのか。
異能力の詳細が分からない今、無闇に動くわけにはいかない。
「取り敢えず皆、危険の無い程度に広がりましょう!」
桜月ちゃんの言葉で全員が距離を取る。
「──来た」
今度は、一本の光ではなかった。
パッと見た感じでも5本以上はある。
手加減されて、ナメられていた。
確かに僕達にはこの攻撃を防ぐ術はない。
でも今の僕は、何でもできる気がした。
沸々と、体の奥底で何かが湧いてくるのだ。
「本当、許さないから」
砂埃の先に見えた、ボスと見られる人物の姿。
僕は周りのことなど何も見ていなかった。
ただ、異能力を発動させる。
--- 『|不思議の国のアリス《Alice in wonderland》』 ---
困惑している間に僕は敵を捕縛した。
|現実《リアル》に戻ろうとすると、《《彼女》》はそこに立っていた。
「桜月ちゃん!?」
「ルイスさん! すいません私が彼奴に触れていたから多分……」
「大丈夫大丈夫!」
周りを見ていなかった僕が100%悪い。
「で、此奴どうする?」
「え……」
魔人君から聞いた話だと、横浜の奪取を目論んでたはず。
なのにとても簡単に捕らえてしまった。
僕のことを知っているなら、異能力に驚くこともないだろう。
まぁ、偽物だとしても──。
「どうしようかな……」
「取り敢えずこの縛ってあるまま、元の世界に戻りましょうか」
「そうだね」
異能力を発動すれば、すぐに元いた部屋に戻ってくる。
敵軍が混乱していたら探偵社とマフィアが何とかしてくれる筈。
でも、戦闘音が聞こえてこない。
「皆が居ないの?」
「真坂此奴は……」
「ダミーさ」
背後から声が聞こえた。
多分、聞いたことはない。
この世界の住人か、それとも僕の世界の住人か。
今の僕には判断できなかった。
「な、なら貴方が」
「そう。この組織のボスは俺だ!」
ハイテンションだな。
それで、と僕は偽物を異能空間に置いてきた。
「一体全体何を企んでいるんです?」
「ただこの横浜を俺の物にしようとして居るだけで」
「違います、よね?」
「なら、何故僕をこの世界へ?」
否定すれば、少し驚いているようだった。
それだけなら、僕を呼ぶ必要がない。
魔人君の言葉を信じていないわけではないけど、彼のことは信用できない。
「それは、この計画に彼女が邪魔だったからだよ。そして、ルイス君。君の異能力──」
「え、私? とルイスさんの異能……?」
「桜月ちゃん? 彼女が如何かしましたか」
「彼女の異能は厄介でね。大抵の一般人は手出しできないんだ。俺でさえ、な」
「成程。僕を呼び出した時、即ち彼女が僕を発見した時、乱闘にしようとしたのか」
「え、でも何、で」
少し言うのを躊躇う。
「彼の異能力、|不思議の国のアリス《Alice in wonderland》は知っているだろう?」
「は、い。知ってます」
「その異能だけが、君の異能を止められるんだ」
異能だけじゃない。
もしその気があれば、命を奪うことも難しくない。
ツー、と冷や汗が流れる。
我ながら本当に嫌な想像をしてしまった。
彼女も、この世界の彼らも僕が守る。
「しかし、貴方の計画の内容は一体」
「さっきも言っただろう。横浜を手に入れる、と」
でも、と続けようとした僕を桜月ちゃんが止める。
「ルイスさん、これは本当の事を云ってる……。だから、フョードルが阻止したがっていたんですね」
「あの裏切り者に用は無い!」
そう、男は声を荒げた。
魔人君はもう撤収したのだろうか。
というか、何故彼が裏切ったことを知っている。
本人が言ったのかな。
「俺は──手に入れる」
その目は、僕を見ていた。
「そしてお前を、殺す」
その目は、桜月ちゃんを見ていた。
「ルイスさんが貴方の味方に付く訳が無いでしょう」
「僕は貴方の味方にはつかない」
そして、彼女を殺させることも絶対に。
「ならこう考えてみろ。お前たちの仲間は、俺の異能の手の中だ、とな」
そうだ。
この場には今、僕達三人の姿しかない。
例の光で全員穴に落ちてしまったのだろう。
(考えろ)
どちらも助ける方法を。
彼奴の命令に従わず、僕を信じてくれた彼らを助ける方法を。
無理やりにでも異能力を発動させる。
──否、僕達は操作系の異能力を持ち合わせていない。
転移先を割り出す。
──否、《《今のまま》》では不可能だ。
魔人君と連絡を取って、転移先を推理してもらう。
──否、そもそも連絡先なんて知らない。
他にも様々な案が浮かんでは、消えていった。
太宰君や魔人君のように、僕は頭の回転が異常に速いわけでも、未来が見えるわけでもない。
思い付く案の数など、たかが知れている。
「さて、如何する? 《《戦神》》。そして、《《紅い天使》》」
脈が早くなる。
途中からも思っていたが、彼は僕のことを知っていた。
なら|戦神《その名》について知っていても、何もおかしくない。
どうにか息は乱れないように、この感情を抑え込む。
桜月ちゃんに迷惑を掛けるわけにはいかない。
その時、ふと理解した。
僕の瞳が赤くなったのは、この男の厭がらせか。
いよいよ最終決戦ですね。
ルイスくん頑張ってくれぇ…
コラボ小説の終わりが近づいていると考えると、少し寂しいですね。
此方だと誰が話しているか分かりにくいので、絶対にののはなさんの小説を見に行ってください!
うちのルイスくんがごめんよぉぉぉぉ桜月ちゃぁぁぁぁん。
てことで、次回もお楽しみに!
collection.12
「英国出身の迷ヰ犬」の番外編(?)になります。
ののはなさんとのコラボです。
collection.1
https://tanpen.net/novel/67ced1c3-dad6-446e-83d1-522b3741e934/
ルイスside
「ねぇ、ボスさん。少しだけ時間をくれない?」
「15分……いや10分でいいので」
「……いいだろう。10分だけだぞ」
「ありがとうございます」
急に、桜月ちゃんがそんなことを言う。
一人で考え込むのは良くないし、少し助かった。
「ルイスさん、如何します?」
「そうだね……僕が桜月ちゃんを斃す。でなければ、皆を開放しない」
「其れが彼奴の求めている事ですよね……」
「僕は、皆助けたい。勿論、桜月ちゃんも。」
「なら、選択肢は一つしか……」
僕は小さく頷く。
「あのボスを倒す」
僕を引き入れようとすることは、相当の実力者。
真正面から戦いを挑んでくるのは馬鹿か、勝算がある奴。
正直のところ、不安しかなかった。
あの強い奴を、私たち二人で倒せるのか。
「やるしかないですよ」
桜月ちゃんの言葉で、そんな迷いは無くなった。
今から始まる最終決戦。
僕達がどれだけ傷つくかは、分からない。
でも、絶対に彼女を傷つけさせない。
この世界に生きる人達を、僕が守る。
「一つ忠告を忘れていた。お前等の仲間は全員俺の手の中に在る事を忘れるなよ」
「な、」
「人質……!?」
皆の姿が見当たらないことから、予想はついていた。
でも、やっぱり動揺はしてしまう。
「卑怯……許さないっ!」
桜月ちゃんが走り出す。
「絶対に許さないからッ!」
「桜月、ちゃん……?」
「……ふん。お前が如何思おうと俺は知った事じゃ無い」
「一生許さない! 絶対に許さないからっ! アンタの事……一生恨むから!」
どうにか桜月ちゃんを抑えた。
彼女の叫ぶ姿が、遠い日の僕と重なる。
怒りが湧いて、憎悪、悪意、恨みが絶え間なく続く。
経験したことがある僕は、彼女の心情はよく分かった。
「……桜月ちゃん、君の気持ちも分かるけれど、一旦落ち着くんだ」
「でもっ!」
「《《でも》》じゃない。君が反乱狂に為ったら、それこそ相手の思う壷だよ」
こういう時こそ、冷静にならないといけない。
僕は冷静になれず、仲間を失った。
桜月ちゃんには、まだ子供の彼女にはそんな辛い思いをしてほしくない。
「すいません、ルイスさん。私、ちゃんと戦います」
「うん。ありがとう」
「本当にこちらこそ有難う御座います」
「で、如何するか決まったか?」
ボスの声が、聞こえた。
正直、彼に勝つ未来が見えない。
どうやら精神攻撃が好きらしいし、いつでも僕を《《堕とす》》ことが出来るだろう。
彼女が過去の僕を知ることが、多分一番ツラい。
もし堕ちてしまったら、僕は──。
「待って。ルイスさん、一つ頼みがあります」
一人で考え込む僕をまた、彼女が掬い上げてくれた。
深呼吸をして、返事をする。
「……出来る事なら」
「私を、殺してください」
「……えっ?」
一瞬、思考が停止した。
言葉の意味は分かったのだが理解が追い付かない。
僕が彼女を殺す、なんて。
「ぶっはっはっはっ! 其れを止める為に戦うんじゃないのか?」
「私が生き延びるための戦いじゃありません。皆を助ける為の戦いです」
「なら一緒に此奴を斃せば……」
「それじゃあルイスさんが傷付く! 私は誰にも傷付いてほしくないんです!」
息を飲む。
彼女は優しい。
だから自身の命を、皆のために差し出そうとしている。
「なら死ね」
「貴方には殺されない。──絶対に。この状況でルイスさん以外には、私を殺せない」
戸惑う僕が言えたのは、たった一言。
「その僕が君を殺す事を拒否したなら?」
「もしも、私の命と皆の命、天秤に掻けたならば何方を優先しますか?」
ずっと、心臓の音がうるさい。
何が悪かった。
どこで間違えた。
(……僕は、一体どうしたら)
桜月ちゃんと、皆の命。
どちらも救いたいと思うことは、傲慢だろうか。
「桜月ちゃん」
「……なんですか?」
僕はどちらか選ぶことはできない。
だから、三つ目の選択肢を出すことにした。
敵の目的には彼女が邪魔らしい。
つまり桜月ちゃんを無力化する術がないということ。
深呼吸をして、懐のそれへと手をかける。
「君がすべて背負う必要はないよ」
|安全装置《セーフティ》を瞬時に外して、ぎこちない笑みを浮かべる。
「──ごめんね」
ボスside
それは、予想もしていないことだった。
思考回路が停止する。
何故ならアイツは──ルイス・キャロルが《《自身を撃った》》。
「ルイスさん!」
鮮血が辺りに飛び散る。
何があった。
一体、何が起こったというのだ。
俺が彼女を無力化できないということを、アイツは知っていた。
それを逆手に取られたと理解したのは、少しあと。
「な、んで……いや、それより不死鳥を……」
「さつき、ちゃ……」
「喋らないでください!」
「ぼく、はだいじょ、だから……」
ふとアイツと目が合った。
声は聞こえなかったが、口で何を言っているかは分かる。
--- ざまあみろ ---
俺はもちろん、今の状態の泉桜月ではルイス・キャロルの傷を治せない。
アイツはこうなることを分かっていたのだ。
瀕死状態を治せるのは《《探偵社の女医》》だけ。
「……クソッ」
ルイスくん…死ぬな…
まぁ、私がこの展開考えたんですけどね((
collection.10の閲覧注意の時といい、私はルイスくんを傷つけないと駄目なのか?
それでは次回もお楽しみに!
コラボ終わるの悲しい……。
collaboration.13
仲間が傷つくところを、もう見たくない。
痛いのも、怖いのも、苦しいのだって嫌いだ。
でも、仲間を助ける為なら。
僕は喜んでこの命を差し出そう。
仲間を助ける為なら。
あの頃の僕の力だって──。
■□■□■
「英国出身の迷ヰ犬」の番外編(?)になります。
ののはなさんとのコラボです。
collection.1
https://tanpen.net/novel/67ced1c3-dad6-446e-83d1-522b3741e934/
ルイスside
苦しい。
気を抜けば、今すぐにでも意識を失ってしまいそうだ。
こんな状況になったのは、何時ぶりだろうか。
「ルイスさんが死んだら、私の事を殺せないよ?」
「──女医だけ解放する。怪しい真似をしたら……判っているな?」
「残りの人質の首をはねる、でしょ? 分かったから早く」
桜月ちゃんは、冷静だった。
作戦を全て話すことは出来なかったけど、彼女は理解してくれた。
ふと、桜月ちゃんと目が合う。
多分焦らないように、必死に自分を落ち着かせようとしているのかな。
それなら、僕は心配させないように笑うだけだ。
彼女の不安を、少しでも拭えるように。
「桜月! ルイスさん!」
今助けます、と与謝野さんの声が聞こえた。
もう、視界が暗くなってきている。
出血ヤバそうだな。
「与謝野先生……」
「あり、がと、ゴホッ」
「ルイスさん、話しては駄目です! 桜月も、軽症じゃ無いんだから早く|妾《アタシ》の所に来るンだ!」
「先ずルイスさんを先に」
「...…判ったよ」
--- 『|君死給勿《キミシニタモウコトナカレ》』 ---
目が見えなかったはず。
それなのに、蝶が見えたような気がした。
痛みは無くなり、体が自由な動く。
桜月ちゃんの傷も無くなっていて、少し安心した。
「本当にありがとう」
「ありがとうございます!」
「二人とも、また後で」
「……。」
僕は何も答えられなかった。
今だって僕を死なせないための交換条件で外に出してもらったようなものだ。
これをきっかけに何か状況が変わるとは、到底思えない。
「保証は出来ない。でも、必ずルイスさんを守り抜きます! だから、」
「時間だ。戻れ」
ボスがそう呟くと、与謝野さんの姿が消えた。
やっぱり、あの異能力をどうにかしないことには、何も始まらない。
「...…ルイスさん、私の事を殺すふりをして下さい。お願いします!」
「えっ」
殺すふりって、そんなのボスに通用するわけがない。
いや、でも彼女には考えがあるのだろう。
「...…判った」
「何コソコソ話してんだよ」
「べーつに。アンタは絶対に負けるって話」
「僕は誰もみすみす殺させる心算は無い」
「桜月、手前が殺される運命だ。でないと、」
「私が死んだ後の話。真坂、皆がそのまま黙ると思ってるの? 絶対━━皆が今迄の報いを誣いるからね」
僕は深呼吸をしてから話しかける。
「じゃあ、桜月ちゃん。覚悟は善い?」
「勿論です。あ、私が死ぬのはルイスさんの空間でも善いですか?」
「えっ? 僕は善いよ。ただ、彼奴は……?」
恐る恐る視線を向けると、返ってきたのは意外な答えだった。
「俺もその空間に入れろ。其れなら善い」
「わぁ! ありがとうございます! 最期くらい、好きな所で、ね」
「随分変わった趣味だ」
「趣味くらい好きな物で良いと僕は思う。じゃあ━━」
--- 『|不思議の国のアリス《Alice in wonderland》』 ---
僕達はぬいぐるみのエリアへとやってきた。
本来なら他のエリアの方がいいけど、桜月ちゃんが見慣れた場所の方がいい。
「さて、じゃあ殺って貰おうか」
異能空間を使う異能者。
大抵の場合は発動させた異能力者が、その空間内で優位になる。
僕も、例外ではなかった。
「反省の時間だよ」
「この糞キモ男っ!」
「は?」
気がついた頃には、もう遅い。
僕はとっくにボスを拘束していた。
「お、おい! 人質は━━」
「もう無駄だよ。太宰さんが自分の異能の特異点を利用して、貴方の牢獄を、このルイスさんの世界に繋げたらしいから」
「えっ待って僕そんな事聞いて無いよ?」
「すいません! 声に出したらバレるんで!」
与謝野さんのきっかけに何か状況が変わらないかと思っていた。
だとしても、これは予想外すぎるって。
「でもまぁ、これで全部解決……?」
「いや、まだ残ってます」
その時、背後から声が聞こえてきた。
「皆だ!」
広い空間の中で、よく僕達を見つけられたな。
まぁ、余計なものを見られていなければなんでもいいか。
「皆、生きてる……」
「済まねェ。心配かけたな」
「ほんと、大変だったんだから...…。無事で良かった」
おぉ感動の再会だ、と思っていると太宰君が話しかけてくる。
「でもルイスさん、問題はまだ残って居ますよ」
「そうだ。最後の問題解きましょ!」
最後の問題。
桜月ちゃんの言葉を聞いた瞬間、理解してしまった。
否、もっと前から気づいていた。
でも目を背けたままでいたかった。
「...…ぃゃだ」
「ルイスさん、最後の問題が何か、判って居ますよね」
「嫌だ!!」
年甲斐もなく、声を荒げてしまった。
彼女はまだ子供だ。
なのに僕より冷静で、少し恥ずかしくなる。
でも、それでも僕は━━。
「ルイスさんっ!」
桜月ちゃんが、僕に泣きつく。
「桜月ちゃ、」
「聞いて下さい」
涙が溢れそうになるのを、必死に堪える。
僕は絶対、彼女の言葉を聞かないといけない。
「...…分かった」
「この世界には、確かに過去がありません。あの罪も、この世界にはありません」
もしかしたらこの子は、僕の過去について知っているのかもしれない。
だから《《あの罪》》だなんて言い方をしている。
「あの世界に帰って未来を生きてください!」
「でも、戻り方がわからな━━」
「私に、任せてください。その前に、一つ渡したいものがあるんです」
彼女の掌には、腕時計があった。
紳士用の、とてもカッコいいデザインだ。
「腕時計の贈り物の意味、貴方と同じ時間を刻みたい」
「その通りです。私は、世界が違うだけで存在するんですよ。其れを、忘れないで」
満面の、心残りなど一つも無いような笑顔。
そんなこと、絶対あり得ないのに。
「僕からも、プレゼント」
中也君の前で渡すのはどうかと思っていた。
でも、そんなの考えている余裕があるわけがない。
「ペンダントだよ」
意味は幸せや飛躍。
どうか君の世界の彼らと幸せになってほしい。
そして、今よりもずっと飛躍してほしい。
因みに色は若葉のような鮮やかな、僕の瞳と同じ緑。
僕のことを忘れないでほしい、なんて流石に子供っぽいだろうか。
「綺麗……凄く嬉しいです! 大事にします!」
「喜んで貰えて善かった。頑張って選んだ甲斐があったよ。困ったときは、此れをよく見てみて」
「はい! 本当に嬉しい……大事にします。ルイスさんも時計、大事にしてくださいね!」
あぁ、と僕は笑みを浮かべる。
「桜月っ!? さっきから何言って、」
鏡花ちゃんを始めとした全員、僕らの会話の意味を理解していなかった。
当然だろう。
これは《《別れの挨拶》》なのだから。
元の世界に戻ったら決して会えることのない|僕《ルイス》と|君《桜月》の、最後の言葉。
その時、ふと思った。
彼女は元の世界への帰り方を知っているのに、何故僕に教えてくれないのだろうか。
気がついた頃には桜月ちゃんは、隅に落ちていた銃を拾っている。
|安全装置《セーフティー》を外し、銃口が頭へと突きつけられた。
僕は手を伸ばす。
「桜月ちゃん!」
そんな、僕は君を守りた━━。
続く。
collaboration.Another
彼処はルイス・キャロルの世界でなければ、泉桜月の世界でもない。
つまり二人ともあの世界の住民ではなかった。
元の世界へ帰る条件はただ一つ。
ルイス・キャロル、又は泉桜月のどちらか一方が死亡する
ルイスside
目が覚めると、そこはぬいぐるみのエリアだった。
まだ眠っている頭にふと浮かんだのは、銃口を頭へ突きつける━━。
「……桜月ちゃん?」
僕は飛び起きて、辺りを駆け回る。
あれは夢だったのか、それとも可能世界なのか。
どれだけ考えても答えが出ることはない。
「あ、れは……」
このエリアに似合わない銃。
そして近くに落ちていたのは《《腕時計》》だった。
紳士用の、カッコいいデザイン。
急いで銃弾を確認すると、一つだけ使われている。
夢じゃなかった。
でも、可能世界とも違う。
「とりあえず、外に……」
おぼつかない足取りで、僕はとりあえず探偵社へと向かった。
「あれ、ルイスさん。こんな処でどうしたんですか?」
「……太宰君」
ここは元の世界だと、確信が持てた。
彼女が引き金を引いてくれたお陰で僕は戻ってこれたのだろう。
「最近見かけないから心配しましたよ。何か事件に巻き込まれてたりしたんですか?」
まぁそんなところ、と誤魔化して僕は彼と別れた。
そして、ある場所へと向かうことにした。
知らない筈なのに、僕の足はきちんとその場所へ向かっていく。
絶対にいないと分かっていても、あの子に会える気がして。
感謝を伝えられてないし、怒らなくちゃいけない。
あの子と話したいことが沢山ある。
せめて、ちゃんと別れの挨拶をしたかった。
「いらっしゃいませー!」
港近くでやっている、ワゴン販売のクレープ屋。
辺りを見渡してみたけど、彼女の姿はない。
分かっていた筈なのに、気分は凄く落ち込んでいた。
「……カッコいい腕時計だな」
近くのベンチに座って、腕時計を掲げる。
軽く調べてみたけど、この世界には無いブランドのものだった。
「あれ?」
ふと見たケース部分に、何か文字が彫られている。
『Hope to see you again』
それが細く、脆い可能性だったとしても。
0.1%もあり得ない未来だったとしても。
僕も君と同じことを思うよ。
「ルイスさーん!」
その時、何処からか僕を呼ぶ声が聞こえた。
顔をあげると、敦君と鏡花ちゃんがクレープ屋に並んでいる。
「……。」
一瞬、鏡花ちゃんが桜月ちゃんに見えた。
流石は姉妹、か。
この世界の彼女とも、よく似ている。
溢れそうになる涙を必死に堪えて、僕は立ち上がった。
これは、本来交わることのない|少年《ルイス》と|少女《桜月》の物語。
腕時計とペンダントは、しっかりと彼らの手に残った。
|不思議の国《ワンダーランド》で、また会いましょう。
『英国出身の迷ヰ犬×文豪ストレイドッグス!』をここまで読んでくださり、ありがとうございました。
これで完結になります。
ののはなさんの方で色々と伏線(?)を紹介していらっしゃるので、よかったら見に行かれてください。
一応『Another』という形にして、後日談にさせていただきました。
これからルイスくんは懐中時計から腕時計を着けるようになるかも……?
最後になりましたが、コラボ小説に付き合ってくださったののはなさん。
そして、この物語も読んでくださった皆さん。
心より感謝を申し上げます。
これからもルイス・キャロルを始めとしたキャラクター達の物語を、ののはなさんの小説を応援してくださると幸いです。