キャプテン副鼻腔は歴代の海鮮将軍にあこがれて蓄膿溢れる社会の荒波に茶碗船を漕ぎだした。がんばれ!キャプテン副鼻腔。幻のちぢぼ焼きを救うんだ!
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蟷螂トーマルドーの大海戦
寝耳に水とはこのことだ。乙女たちのぬるま湯生活に終わりが告げられた。
人々が減り過ぎた人口を異宙《いちゅう》に求め始めて半世紀が経った。進化系統樹は可視化され、極まった科学により人類の基幹世界線《正史》と統合された。滅びかけた地球人類は正史に近接する世界線に逃れそこで細々と命を繋いだ。
しかし、正史を遥かに望む枝葉世界δは人間を水耕栽培することに成功し、人類は生活圏に侵入して宇宙空間に逃れた。世界線は新たな拠点――人類の住む惑星の中心に降り立った。
この惑星から新たな世界線へと送り出され、地球人として転生する《地球人》は一つ前の未来からの転生を繰り返す。
<そんな中、女子耕生《じょしこうせい》のイネは、繊細な美しさを持つ少女だった。彼女の瞳は深い青色で、長い黒髪が優雅に揺れる。小柄な体格ながら、しなやかで美しいラインがあり、その優美な動きには誰もが魅了される。足湯仲間のムギが旅立つ姿を見送り、彼女の顔には絶望的な未来への不安が浮かんでいた。 "ずっ友でいられると思ったよ"と彼女はつぶやいた。ムギもスカートから延びるしなやかなつま先で不安げにお湯をかきまぜた。水耕栽培で育ったため色白だ。そんな美人がかき消すようにいなくなった。女子たちの噂ではコロンブスの卵を産む雌鶏の餌として出荷され、たべられてしまったのだという。>
こうして、少女たちは自分たちが生きるべき理由を問い直すこととなった。「…カンブリア爆発Ⅱと呼ばれる大量絶滅が21世紀中葉の地球を襲い、人類は進化系統樹の最果てにたどり着いた」。ムギロスは授業中、耳を疑った。人間の水耕栽培は多様性確保が目的だったはずだ。だったら、どうしてムギは「たべられなきゃいけない」のだろう。そんな疑問が胸に渦巻く中、ムギはいなくなった。イネはムギと足湯を楽しむ仲間だったが、その後の出来事で胸がいっぱいになっていた。先生たちは「ムギは卒業した」と告げるが、本当はわかっている。嘘つきは泥棒の始まりって、先生たちが教えてくれたから。目が怯えているムギの様子を見て、何を恐れているのだろう。ムギ友の復讐?秘密の暴露?それとももっと怖い誰か?イネに秘密を垂れ込んだのはイネの世話係だった40代独身のウメだった。>
また、カンブリア爆発Ⅱについての説明を追加すると以下のようになります。
カンブリア爆発Ⅱは、地球上の生物相における大量絶滅の一つで、2億5千万年前に起こったカンブリア紀の爆発的な生物進化の影響により、21世紀中葉に地球上の生物が大幅に減少した出来事を指します。この事態は、人類が異宙に進出し、進化系統樹を可視化し、正史に近接する世界線に逃れるきっかけとなりました。「
「私も負けずに頑張るよ……!」
「私は未だ死にたくありません!」
「……まあ、俺も死にかけてるけど、頑張らなきゃね」
「あたしも」
「死なないよ~」
《天命》を受け取った少女達は、いつの世も無慈悲であることを理解していた。
『もう、誰もかれも死んでない……!』
『ああ、死ねないよ……!』
『死んで、私だけが生き続けてしまい……!』
『もう、みんな、死んでしまった……!』
『――ごめん、まだ、私だけ……!』
『もう、みんな、死んでしまった……!』
『何もかも諦めて、死にたくなるまで遊んで死んでくれたら……』
『――ごめん、死んでいいならば、私も、やりたい! 私も……!』
『ああ、死ななくていいならば、また遊べる、遊ぶ……!』
《宇宙人》は、新たな可能性に気がついた。
それは、人類を滅殺し、滅びを待つだけの不滅の存在でもある。
人類を絶滅に追い込んだ宇宙人は、これから滅ぼすのだ。
「……」
「? 大丈夫なの?」
《天命》を巡る新たな局面を目の前に、戸惑いの表情を浮かべる少女たちを余所に。
《宇宙人》はその少女たちが持つ《生命》の《素》を覗き込んだ。
「あ……」
「あれは……白くて丸い……」
「……なんだろ……」
《宇宙人》は呟いた。
(なぜか、頭から離れない……なぜだ……?)
《生命》に宿るは、《生命》に宿る力を持ったものの性質。
彼らは、自分の身に宿る『力』に強く惹かれる能力(こと)がある。
だが、《生命》の力を宿す『力』の扱いには、非常に難度の高いものが多い。
人の身にあっては絶対に扱いことができなく、人としての『価値』を見出せず、しかし、『力』の扱いから判断に至るという稀有な性質を持つ。
だが、《生命》を宿す《精神》が、人を超えた存在と成り得る以上、その性質を引き継ぐ者は稀有であるだろうとも考えられる。
それは、この惑星《エデン》に長きにわたって生き続け、その中に《精神》という『力』があることを示している。
少女たちはそうして、人を超えた存在と成り得た。
(…………どういうことだ……?)
少女たちは、自らの《生命》に疑問を覚えた。
それは、少女たちが《生命》に対し、何らかの強い敵意を感じたということだ。
『あの力が必要なこの惑星を、滅ぼさなくちゃいけなくなった……』
(それって……)
少女たちは、それだけが理由ではないと知っていた。
もしかすると、彼らの『力』の扱いに関する問題に関係しているかもしれない。
『俺たちの《生命》ってか――なんだか、怖いぞ?』
(――……ッ! ……待て、今なんて言った、?)
《宇宙人》は、少女たちを取り囲むように立ち回った。
『あ、あああ……っ』
『あ、あの、僕、あの、私たち、どういう……?』
『わ、わからない。何だか、わからなくなってきたんです。でも、どうしても……、
私たちに……、《力》を……っ』
『あ、あの、あなた!? どうして、ここにいらっしゃったの……?
……私なんかで良かったの?』
(……え?)
少女たちは、一斉に動きを止めた。
「ああ……」
《宇宙人》は、呟くように一言言った。
「あの力を使って、もう一回戦って、勝てなかったことを伝えてやるよ……」
「……!」
少女の一人が、何かを言おうとした瞬間だった。
突然、少女の周りを取り囲んでいた黒い影たちが飛びかかってきた。
「……うあっ!!」
少女は、その影たちに圧倒され、地面へ倒れた。
「な、なんなの、これ――きゃぁっ!!」
他の少女たちも、同じように倒れ込む。
『――助けてくれ!!』
『――誰か!! 誰でもいい、来てください!』
『――もう、ダメです、私も、私も、殺さないでください……!』
『ああ、お願いします! 私も、私も……!』
『あ、ああ……! 誰か! 私も! 私も!』
『あああ! たすけて! あ、あ……!』
『あ、あ……! こわい、わたしも……!』
『あ、ああ……! たすけて……!』
このままでは少女たちは危険な状況に置かれていた。しかし、そのとき、突然静寂が訪れ、会場に一際響く音が響いた。
「止まれ!」
一人の若者が力強く声を上げると、彼の周りには輝く光が集まった。
「私が来た。君たちを守るために」
彼の手から放たれる光は、影たちを弾き飛ばし、会場に明るさを取り戻した。
少女たちは驚きと安堵の表情を浮かべながら、次第に立ち上がっていった。
「ありがとう、助けてくれて」
「本当に助かった」
若者は微笑みながら頷き、少女たちに近づいた。
「君たちにとっては大切な戦いだったんだろう?でも、それはもう終わりだ」
彼の言葉に、少女たちは戦いの疲れを感じながらも心が軽くなっていく。
「でも、なぜここに現れたの?」
一人の少女が尋ねると、若者は「ちぢぼ焼きを探しているんだ」と言い放った。
「それなら、たったいま焼き滅んだわ」
「ゲぇっ? 関羽!」
少年はあまりのショックで塩の柱になってしまった。
少女はこともなげに通信機を取り出すとキャプテン副鼻腔を呼び出した。
「こちらエージェント909。蟷螂トーマルドーを殲滅」
「キャプテン副鼻腔、標的の殲滅を確認。よくやった」
キャプテン副鼻腔(サイヌシーズ)とエージェント909の旅は続く。果たしてまぼろしのちぢぼ焼きを見つけることは出来るのか。