閲覧設定
名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
1 /
目次
隣の学校の元ヤンに恋する1
朝は時間通りを心がける。いつもと同じ時間6時23分27秒に起きて、身支度。6時30分00秒には朝ごはんを食べ始め、6時45分00秒には完食。6時55分には後片付けも済ませ、7時ちょうどに家を出る。私の通っている学校はバスで30分ほどだ。バス停まで歩き、バスを待つ。バスが来る。いつも通りガラッとしていて私以外誰もいない。パスモを当てて、支払いを済ませ、私は一番奥の一番左の定位置に座り、胸元までの髪を二つ結びにする。二つ結びにしようと櫛を取り出したところで前にある座席に「このバスは今月末で廃線します。××交通」という文字が目に入る。(そりゃそうだろうな)次々と通過していくバス停を眺めながら二つ結びにする手は止めない。このh県は人口が少なく、全国でぶっちぎりで地域過疎化しているのではないかと思う。高等学校は私の住んでいる区では五つしかない。しかも、私立は2校だ。だから、受験する人はそのどちらかを選ぶかしか選択肢がない。家にも鍵をかけずに出かける人だっている。大体の家はこじんまりとしていて、金目のものなんかもそんなになく、取られる心配もない。(卒業したら東京行ってみたいなぁ)幾度となく思った考えを今日も考える。「次は無月夜高校前ー無月夜高校前ー」のんびりした女性運転手の声と共にモニターに表示された文字を見てボタンを押す。ガコンという音と共に扉が開く。降りて学校に行く途中の信号で立ち止まり、おでこから顎にかけてスッと右手で撫でるようにして深呼吸をする。これは、儀式だ。今日もあのクラスの一員。そう思うだけで少し気分が憂鬱になる。いつもギャアギャアと騒がしい教室、私の机の目の前で獲物を見つけ、それをいじめるうるさい男子。ヒソヒソしながら誰にでも分け隔てなく接しているように思えて、密かにカーストを作る女子。そんなクラスの一員。いつからか、この儀式をしないと落ち着かない。仮面をかぶるようなこの動作。誰にも目をつけられず、優等生の仮面をかぶる。そんな意味がある。「…行こう」信号が青になると同時に私は学校への一本道を歩く。
隣の学校の元ヤンに恋をする2
今回お相手いません。友人編。
言い訳 更新遅くなりすみません!少し学業が忙しく、私の最も忌み嫌い、学生全員忌み嫌うアレ
そう中間テストです。あんなやつの対策のためアップが遅くなり、ごめんなさい!
正門の方へ行って、そっと門をくぐり抜ける。この学校は土足なので、履き替えの必要がなく楽だった階段で3階にある教室へと向かう。階段の踊り場のところに立ち、今一度身だしなみを確認する。よし、大丈夫。ガラガラと1年Aと手描きで書かれた教室の前の扉を開ける。まだ誰もいないカーテンから入る朝日で輝いている教室。これくらい明るいのなら電気をつける必要もないだろう。私の席へ向かう前にロッカーから今日の科目の教科書、ノートを取り出す。右から三列目後ろから二番目。席に座り、スクールバックを横にかけた後、その中から本を取り出す。先日発売されたミステリ作家の本。時計を見る。クラスメイトが来始めるのは7時50分ごろ。それまでには3章まで読み進みたい。栞を取り、目の前の活字を目で追う。
7時52分。ちらほらと顔も知らないクラスメイトが来る。「おはよう。衣鶴」後ろの席から私に声をかけてきたのは唯一の友達。湖夏だ。今日は、肩までの髪を小さく一括りにしている。「…似合ってるね。その髪。」「衣鶴変なもの食べた?」急に言われる。「なんで?」「いつもは私の髪なんか褒めないで、『うん、おはよう』って言ってるじゃん。」『明日は大雪では!?』両手を上に上げ、ガビーンという効果音がつきそうな様子である。「フッ」「あー、いま鼻で笑ったなぁー」「なんのこと?」堪えきれない笑いを隠さず言う。「…衣鶴が笑ってるの見たの今月、二回目だ。明日は槍がふ「んなわけないでしょ。まあ、あの側溝に財布を落とした時は大笑いしたけど。」
湖夏との出会いは2年前、私が中2の夏だ。あの日、中学校は午前授業で、いつもより早く帰れると少しそわそわしていた。バス停まで急いでいた。日がカンカンに照っており、入道雲が奥の方に聳え立っている。まるでアニメのようだ。次のバスは56分に来る。後一時間ほどだ。どうしよう、この一時間は。学校に戻って、図書室に行く?それとも近くの本屋に入る?それとも
「あーすいませんそこのお姉さーん。ちょっと手伝ってもらってもいいですかー?」考えに入り込んでくるように間の抜けた女の声が聞こえた。まるで一昔前のナンパのようで、無視を決め込んでいた。「おねーさん、おーいおねーさん?」まだ声が聞こえる。気にしない。気にしない。あれは私を呼んでるんじゃない。無視を決め込んでいたところ、右足首に生暖かな感触「ぁえ」恐る恐る下を見ると、目をカッと見開き、歯を食いしばった顔をした制服姿の女が、私の足首を逃すまじとガッチリホールドしている。その時、私の生態が凄まじい金切り声をあげたのは言わずもがなである。
「ごめんね、足首掴んじゃったりして。でも、誰も手伝ってくれなかったから、強行突破で…まさかあんな悲鳴あげられるとは思ってなくて。」制服姿の女、もとい湖夏だ。「で、何があったの?」久しぶりに大きな声を出したせいだ。声帯が悲鳴をあげている。少し掠れた声で話しかける。「学校の帰りに、ノートを買いにいこうと思って、財布を出したの。そしたら、クラクションが聞こえて驚いちゃって、お財布側溝の中に落としちゃって…」「ンフッ」「それで、頑張って探して「あははははははは!」「何が面白いの〜!」「だ、だって」ヒィという音が付きそうなほど笑っていた。湖夏には申し訳ないが、側溝に財布を落としたなんて漫画のようである。「ンフフフフヒィー」ひとしきり笑ったところで、少女が睨みつける。「そんな笑わないでよぉ」「ごめんね。フフッ」「そんな笑うなら手伝ってよ」「いいよ」「ハッ?」あっさり返事がもらえるとは思っていなかったのだろう。「いいの?」少女の目がうっすら潤んでいる。よく見ると、少女の手は土で汚れており、顔も少し汚れていた。大事な財布だったのだろうなと思いを寄せ、つい憐鱗を垂れてしまった。幸い六限が体育だったこともあり、ジャージを着ているため、汚れても後一週間は体育がないため洗っちゃえばいいだけだ。「じゃあ早く探そう。」「アイアイサー!」靴下を脱いで裸足になり、恐る恐る側溝に入り込む。泥を踏んだ。グチュりと冷たくまた、足の爪の間に入った気持ちの悪い感触がする。この感触は小学校の田植え以来ないと思っていた。側溝は結構深く私の膝蓋。太ももの少し下あたりにまである。「探すか。」バスは一時間に一回なので早めに終わらせたい。「どんな財布?」「青いがま口みたいなやつ。お金はそんなに入ってない。」「わかった。」下に屈んで、手を突っ込み犬のように泥を掻き分ける。
「ねね、名前は?」「水上衣鶴。」「どういう字?」「衣食住の衣に、鳥の鶴。」「私は小野上湖夏。湖に夏で湖夏。」小野上、どこかで聞いたことがあるような気がする。「衣鶴はどこの学校なの?」この子距離感近いな。まあいいけど。「常葉中、ここから近いよ。」「えー私も私も常葉中!え、何年生?」「2年」「えええーおんなじだ!何組?」「3組」「………え?」「何?」「わ、たしも3組。」「は?」嘘だろ。まさか、ついさっき足首掴まれて、いま財布探すの手伝っているこの子と同じクラス?「そういえば、いたな。水上って名字。」「私も小野上ってどこかで聞いた気がするなぁって」「マジか。」「って財布探さなきゃじゃん。」すっかり脱線していた。
バスまで後20分。まあ、もう逃してもいいか。私は今起こったことの衝撃が強すぎて、バスのことなんて忘れていた。そこから約15分。「見つかんないね」「おっかしいなぁ」「一回休憩しよっか。」うんせと側溝から上が理、地べたに座る。当たり前だけどものすごく暑い。灼熱の太陽はまだ照らし続けており、側溝の方が少し涼しかった。「どこなんだろうね。財布」先程より汚れの増えた顔を顰めながら湖夏がいう。ここまで探してないということは。私には思い当たる節が一つあった。「うーん…もしかしてさ」と言いながら側溝に躊躇いなくジャンプして入る。先程掘ったところとは違うところを慎重に掘ってみる。ツンと爪先が柔らかいものに触れる。服が汚れるのも構わずそこを一心不乱に掘る。「!…あった」「え!」湖夏も躊躇いなく入ってくる。私の手に握られている少し汚れがあるコバルトブルーと白のがま口。
隣の学校の元ヤンに恋をする3
「私のだすごい、なんでわかったの?」「あれだけ探してもないってことは、がま口はもう少し深く埋まってるかもしれないけど、落としてからそんなに時間が経ってないから、まだ浅いところにあるはず、後掘り起こした時にだんだん深く減り込んでいちゃったか、別の場所にあるはず、でも結構深くまで掘ったのにないってことはまだ探してなくて、落とした可能性の低いここなんじゃないかなって」「…衣鶴、その頭の良さ分けて…」「別に頭いいわけじゃないよ。それにさっきのも仮説だったし。まあ、何はともあれ無事見つかってよかったねー」また側溝から上がり、泥まみれの足と手を持っていたタオルで念入りに拭く。靴下を履き、ローファも履く。
「じゃあ私はこれで「待って」颯爽と帰ろうとする私を湖夏が引き止める「何?」「お礼…させて!」「いやいやいいよいいよお礼なんて。」「いやいやでも〜」「本当に大丈夫だからって。」その場を離れるが、彼女も離さない。なんか前もこのやりとりをやったような気がする。最終的な結論は私が折れた。
「よーしじゃあレッツゴー」「あ、その前にさ、少しお手洗い行かせて。着替えたいから。」すぐ近くのお手洗いに行って、ジャージを脱いで、制服に着替える。「お待たせ。いこ。」るんるんと鼻歌を歌っている湖夏をじっとりとした目で見つめる。そうして湖夏につれられて来たのは駄菓子屋だった。ちびまる子ちゃんに出てくるような、古びた駄菓子屋、かき氷の看板、ジュースしか入っていない自販機。中には所狭しとグミ、チョコ、ラムネなど駄菓子が一つの軍隊のように重々しく鎮座しているようだ。
隣の学校の元ヤンに恋をする
湖夏が店の奥の方に声を掛ける。「おばあちゃーん、ラムネ2つね」「おばあちゃんじゃないよ、お婆様とお呼び!」少ししゃがれた声と共に奥から、小柄な老婆が来る。「はい、120円」「あいあい、毎度ー」「そんな態度ならもう来ないよ」「いいよ別に。あんた一人来なくても。おや、お友達かい、湖夏」「あ、いや」別に友達と言うほどでもない。「うん!財布友達!」「なんじゃそりゃ」湖夏が事の発端を話す。「あらまぁそりゃぁ」老人が目をまんまるくする。黒豆みたいだな。「ごめんね。うちの孫が迷惑かけて。」「あ、ハイ、イイエ!」「どっちなんだい。」「この人は小野上遙子。うちのおばあちゃん!」「お婆様とお呼び!」コントのようだ。「はいラムネ。」「ありがとー」はいと手渡される。「うん、ありがとう。」お金あったかなと財布の中を弄る。「いいよ、いいよお金なんて。」湖夏が笑って拒絶する。「ううん、私知り合いと金銭関係でトラブりたくないから。」きっぱりと言い切り、六十円を渡す。
ポン、景気のいい音と共にラムネの蓋を開ける。シュワシュワという音と共に小さな無数の泡が浮かび上がってくる。飲むと、サイダーのようなシュワシュワとした舌触り、そして、お菓子のラムネでは味わう事のできない、甘く、どこか夏の香りのする味だ。「おいしい」よく見るとこのラムネはガラス玉が入っている。「湖夏…このガラス玉どうやって取るの?」「ああ、これはね、一回ガラス玉を落として、これを時計回りに外すと」コロコロと湖夏の手のひらに藍色の夜空を背景にザザンと波が浜辺に打ち付けられているそれを写真で切り取ったようなガラス玉だった。
隣の学校の元ヤンに恋する4
「やってみ?」「う、うん」ガラス玉を落として、キャップを時計回りに外す。コロコロと落ちてきたのは、真っ赤なカエデの葉が何枚も張り付いている。まるで、秋に、清澄寺などで撮った紅葉たちの写真。「綺麗」「ねーなんかこれガラス玉すごい凝っててさ、集めたくなる。」「わかる」ガラス玉を陽の光にかざしてみる。日の当たる場所によってどの葉がどのような色味をするのかが違ってくる。「なんかさぁ」「うん」「こんなんを“せーしゅん”って言うのかな。」「へー、衣鶴もそんなこと言うんだ。」さも珍しげな目で見られる。「だって、本人がせーしゅんって言ったら、せーしゅんでいいじゃん。」「うん、今私もこれ青春ぽくない?って思った。」そして、あの日は湖夏と二人でガラス玉を見ていた。暑かった。でも、本当に綺麗だった。
すみません…期末テストが近くて、出せませんでした!終わったら頑張って出しますのでよろしくお願いします!
数学嫌だなぁー理科もなぁーー
隣の学校の元ヤンに恋をする。5
授業が終わり、帰りのホームルームが終わった。「湖夏ー一緒に帰ろ。」「あ、ごめん、今日バレー部があって…」「あーね。」「ほんとごめん…」「ううん、大丈夫。頑張ってね、バイバーイ」「バイバーイ」そうだ忘れていた。湖夏は月、水、土、日と部活がある。私は帰宅部なのでとっとと帰るが、湖夏はそうも行かない。来年冬の春高を狙って練習中だ。
また一人また一人と教室という密集地帯から出ていく。
私が最後のようだ。ブラインドを上げ、クーラーの運転を停止し、窓を閉める。電気を消して、教室を見渡す。暗い教室に明るく夏の日差しが降り注いでいる。アンバランスだ、でも、こうしたら、私の座っていた机と椅子がスポットライトを当てられたように輝く。ここは舞台で、先生も生徒も湖夏も観客。私が主役でこの映画の監督だ。今日は何をするのか観客達がソワソワとしながら今か今かと待ち続けている。私はそれに答えるようにステージに上がり…
「あら、誰かいるの…」「あ」声のする方を見ると、担任の清水先生が立っている。清水先生は新任教師で、歴史担当だ。パッチリとした二重にショートカット。爽やかで明るい性格だが、若さも相まってか、生徒達には舐められている。
「水上さんよね、ありがとうブラインド下げてくれて。」「あ…いえ…」口数が少なくなる、喉の奥から声を絞り出すがか弱く小さい声だった。
私は教師が苦手だ。教師は成績、内申点、将来。自分たちの表面しか見てくれない。友人、部活、家庭。そんな内側のところには注意も向けず、がむしゃらに突っ走っていく、それが嫌だった、散々相談に乗る、何かあったら言え、など温かな言葉を投げかけても、それが私の役に立ったことは一度そしてこれからもない。
「では、失礼します」「気をつけてね。」ニコッと効果音がつきそうなほど笑う。そそくさと後ろのドアから退散。そのまま背後を振り返ることなどせず、全力疾走で正門から外に出て、息を整える。スマホを見る。15時23分。バスの時間はというと「終わった」私は今日初めてバスを逃した。
隣の学校の元ヤンに恋をする6
バス停まで回り道で行くか、近道で行くか、それが問題だ。今の私には少なくともシェイクスピアで遊べるほどに余裕だけはある。バスが来るまで後40分。校舎内に留まることも考えたが、清水先生にばったり出くわしでもしたら気まずい。回り道の方は30分くらい。近道は15分。倍の差がある。近道の方が。いやでも、25分も待つということは、熱中症になる可能性はとても高い。矢張り、回り道。30分かかるなら、そんなに待たず、熱中症になる可能性も低そうだ。では回り道で行こう。
まず、十字路を右に曲がり、真っ直ぐの一本道を歩くこと12分。信号待ちに5分、間に合う。蝉が規則正しく合唱する。じわじわと夏の暑さが私の皮膚と体温を蝕んでいく。なんでこんな日に長袖で来た、正気か、朝の私に日焼け止めでもなんでも塗って半袖でいけと伝えてやりたい自分を叱りつける、信号が変わる。歩き出そうと左足を出したところで、違和感がある。視界が可笑しい。遠くの木が二重に見え、三重に見える。胃の奥から何かが込み上げてくる。足がまるで自分のものではないかのようにフラフラと安定しない、「ぁあ」必死に声を絞り出すが、私以外誰もいない。どうしよう、こんな時、救急車呼んだほうがいいのかな?スマホをスカートから取ろうとするが、横断歩道に倒れ込んでいる状態なので、上手く取れず、何回もポケットの布地に引っかかる。すると、「…大丈夫ですか」平坦で私を心配しているようには思えないそんな声が頭上から聞こえてきたが、その時私は視界が二重に見える恐怖が最高潮。目を伏せてこの人の判断に委ねるように意識を手放した。
隣の学校の元ヤンに恋をする 7
※
次に目が覚めたのは知らない家のベットの上だった。目を覚ました瞬間、自分の家だと勘違いし、(今日の夕飯なんだろう)といささかドメスティックなことを考えてしまった。額にはこの部屋の持ち主が貼ってくれたのだろう熱冷まシートが貼られている。起き上がるとベットのスプリングが音を立てる。部屋は全体的に青系統の色でまとめられており、生活感がそんなにない部屋だった。取り敢えず、この部屋の持ち主にお礼を言ってから帰ろう。テーブルの上のスマホを付けると、17時26分。「後一時間くらいか、バス停まで行くか…」「いや、ふざけるな」と、後ろから平坦かつ若干怒りの籠ったような声、細いチタンフレームの眼鏡を掛け、前髪が若干眉毛にかかっている。髪は耳より少し下で、声を聞くまで女の子と間違えそうになる。服は薄い白シャツにパーカー、そして黒いズボン。そしてこの声はあの時、聞こえた平坦な声。顔は若干眉間に皺がよっているように見える。そうだ、お礼言わなきゃ。「あ、あの助けていただきありがとうございました。お邪魔になると思うので帰りますね、では」「お待ちください」出て行こうとスクールバックを下げた手を掴まれる。なんだ、私はこの人の逆鱗に触れることでもしたか。「な、なんでしょう」「…」やめてくれ、その沈黙。あんただろこの元凶、手ぇ掴んだの。「また、貧血で倒れるかもしれないので、バスが来るまでここでお待ちになってはいかがでしょう」「んあ」間抜けな声が出る。だってきみはさっきまで眉間にシワ寄せてただろ。私知ってるぞ?「これ以上ご迷惑をおかけするわけには…」「先程のようにまた道路で倒れたらどうなさるんですか。道路に這いつくばってでも日陰に行けますか」何も言えない、ぐうの音も出ない、この人毒舌。いや、でもこの家がどこかも、バス停までどのくらいなのかも分からないし、早めに出ておいたほうがいいのではないか。「ご親切にありがとうございます、ですがバス停まで行かなければならないのでこれで」というと、彼は考え込むような仕草をする。「分かりました。では、僕もご一緒します」「何故」「夏とはいえ、こんな時間に女性一人というのは賛同しかねます。先程言ったようにまた倒れてしまうかも。」少し眉毛を下げて心配そうに言われる。やめてくれ、湖夏の件で分かった私は押しに弱いのだ。少し渋々と言った感じで首を縦に振る。「では行きましょう」
隣の学校の元ヤンに恋をする
手首を掴んでいた手を離される。「そういえばお名前を伺っていませんでしたね」彼が話す「僕は渚、川島渚です。エヴァンゲリオンの渚カヲルの渚に、川の島とかきます。」「私は衣鶴です。水上衣鶴。ころもに鶴、水の上です。」「左様ですか」___会話が続かない。なんだこの気まずいのは。「どこの学校に通ってるんですか?」「鳳来高校です。川島さんは?」「時津風津です」「あ、隣の学校。今は何年生なんですか?」「高校二年生です、貴方は?」「同い年です」同い年…、この人の顔のせいか年下に見えたということは黙っておいたほうがいい情報である。彼の家を出ると、ヒグラシの鳴き声、昼よりは落ちた太陽、息を吸い込むと、ムシムシとした空気が肺いっぱいに溜まっていく感じがする。「では、これで」今度こそとその家から離れるようにすると。「この家から、バス停までの道、分かるんですか?」…分からん。「…あの」「なんでしょう」「バス停」「はい」「一緒に」「ええ」行ってくださいでいいのか?ほぼ赤の他人に一緒に行ってくださいなんて言っていいのか?「言わなきゃわかりませんよ?」スマイリーの絵文字並ににっこり笑っている川島さんに腹が立つ。殴りたいこの笑顔ってこのことを言うのか。「い、一緒に行ってください。」思わず小さな声になる。「はい」執事のように胸に手を当てて、悪びれなく言う。歩き始めて気がつく。あれ、この人は倒れてた私を助けてくれたんだよね?たおれてたんだよ?なんで119でも7119でもなく部屋に運んだ?いくら動揺してても、自分家運ぶか?そっと川島さんの方を見ると、また貼り付けたようににっこりとした笑みを返された。何も聞くな、と言っているように。「へえへえ」ぼそっと呟きながら歩みを進める。歩みを進めて行く。「彼方に見えますのがバス停でございます。」バスガイドのように優雅に言われる。「あ、じゃあこれで」「はい、‘’また‘’会いましょうね」「はい、ありがとうございました。」さっとお辞儀をしてその場からさり、冷房の効いたバス車内に乗り込む。極楽極楽。
でも…
「‘’また‘’ってなによ…」 いつもの定位置に座りながらつぶやいた。
隣の学校の元ヤンに恋をする 7、8?
面白そうなヒト。」
私、いや、俺はバス停へ行く彼女の背を見つめながらクックッと笑った。イヅルさんね…。流石に道路に倒れてる時はビビったけど、俺に医学知識があって良かった。少しずつ周りの家に電気がついていく。家に着いた途端、手も洗わずに先程まで衣鶴の眠っていたベッドにダイブする。街灯なんて要らないくらい明るい。彼は家に着くと先程まで家に連れ込んだわけでもない、看病しただけだ。それにしても。彼は恍惚とした表情で衣鶴のいたベッドに倒れ込んだ。「水上 衣鶴」もう逃がさない、逃す訳がない。
人物図鑑
水上衣鶴 ミズカミ イヅル 158センチ
鳳凰高校2年生
決めたことは最後までやり切るタイプの人間。
バス通学なので某少女がウサギを追っかけて穴に落っこちて…のウサギに似ている。名前は、和っぽい名前が良かった。目の前にあった歴史ワークの中に『日出る国』どうたらと書かれていたので、じゃあ、イヅルでいいかなと決めた。部活は入っていない。
成績も中の上くらい。
体育イヤーという子なので、体育の時隅っこで本を読む。ばれます。
小説好き設定。倒れた時の走馬灯は、
「せめて…綾辻行人の another読んでから倒れたい」で意識を飛ばす。
もはや小説馬鹿。
ちなみにこれからも渚のヤッベェ思考に頭クルクルパーになりそうになってるよ!
主人公が不憫なの好き!!!!!!(お巡りさん、こいつです。)
容姿は、
黒髪セミロングなお、おさげ。友人その2からとった 黒目 表情筋の動きが少ない。 たまにハイライトが家出する。両目の下に黒子。
制服紺ブレザー
校章は 青いフェニックス。
最近の悩みはアホ毛がひどいこと。後に渚も悩みになる。
リボンは青いリボン サテンとかではない。すずめの戸締りですずめがつけてるやつ的な。
川島 渚 カワシマ ナギサ 171センチ
時津風津高校2年生
多少の医療知識はある。衣鶴との関係は後に。
バス通学。
名前の由来は友人その3がエヴァンゲリオンに沼ったので。部活は吹奏楽部。
成績は上の下。
体育はまあできますよ人並みには。
衣鶴が倒れた時は目にハート状態。家に連れてった。
ちなみに衣鶴が倒れた時、熱中症で倒れた設定にしようとしたら友に、「なんで、119でもなく、自分の部屋運ばせてんだよやべーやつじゃん。」と言われ、そっか、じゃあ貧血でぶっ倒れたことにしよう!そんでもってヤッベェやつにしよう!!!!と思い立つ。まだ衣鶴の前ではまとも。でも じわじわと…真綿で首を絞めに来てる…どうなるんだろうね。
まずは家かな。と思っている。
容姿はちょっと耳にかかるくらいの黒髪 黒目 黒縁メガネ 度は弱い 黒ばっかりだな…同じくハイライト家出気味
制服キャラメル色ブレザー ネクタイ赤チェック
最近の悩みは友人がうざったい。
小野上 湖夏 オノガミ コナツ 160センチ
鳳凰高校2年生 衣鶴と側溝財布で仲良くなって一緒に進学。
衣鶴がお気に入り バレー部 湖夏は病ん照れにするか否か。
体育は好きでも嫌いでも、その時の内容にもよる。
容姿は
クリーム色の髪 ショートカット 若干ギャルっぽい。ハイライトキラッキラ。
最近の悩みは8番出口がクリアできない。
推しは某男性グループ。推しの尊さを聞くと雄弁に語る。およそ三時間。
衣鶴と渚の恋の行方を見ながら、あ、これやばいわという時、助けてはくれる。最悪自分が恋人にも…とも考える。