間違いなく君は私の光なのに
編集者:hosi_
『君はなんでそんなに優しいの…?』
『君のこと好きになっちゃ駄目なのに…』
ダンダダンの夢小説です!
自己満なので読むのはあまりおすすめしません
名前変えられませんごめんなさい
ジジ落ち
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目次
Prologue
ダンダダンの夢小説です!
自己満なので読むのはあまりおすすめしません
名前変えられませんごめんなさい
ジジ落ち
学校の廊下は静まり返っていた。
ランチタイムの余韻が残る中、糸師蘭は一人、教室に向かって歩いていた。
足元に視線を落とし、まるで人が見ていることすら忘れてしまったような無防備な歩き方。
蘭は、常に周囲の視線に敏感だった。
彼女には、自分でもどうしようもない不安が常に付きまとっていた。
理由はわからない。けれど、どうしても「普通の女の子」として過ごすことができない。
彼女の周りには、どこにでもいる普通の人々とは違う、何かが……
--- 霊的なものが引き寄せられてくるからだ。 ---
その日も、静かな廊下を歩いていると、突然、胸騒ぎがした。
『また、だ…』
周囲が急に静かになる。
息を飲み、振り返る蘭。その瞬間、目の前にうっすらと現れる薄い影。
すぐに、それが人間ではないことに気づく。
霊だ。
心の中で、何度も「お願い、来ないで」と願うが、それは無駄だった。蘭がどれだけ願っても、霊たちは彼女に引き寄せられてくる。
『やだ…』
震える声でつぶやきながら、蘭はさらに足を速める。しかし、その瞬間、目の前に現れた人物にぶつかってしまう。
『うわっ、すみません…!』
慌てて頭を下げる蘭。
その人物も同時に頭を下げる。
「こちらこそすみません…!大丈夫ですか…?」
顔を上げるとそこには…
---
設定
名前 糸師蘭
あだ名 ラン
性格 内気。自分に自信がない。可愛い方ではある。
容姿 赤茶色のロングウルフ。目の色はエメラルドグリーン。
グレーのセーターを着ている。
霊を引き寄せる性質があり、昔から霊が見える。
家族構成 母 父 自分
父は幼い頃に亡くなった。多分、霊のせい。
アイラのいとこ。
すごい可愛いじゃんよ…!
『確か…同じクラスの…?』
蘭は不安そうに口を開く。心の中で、声をかけるタイミングを間違えたらどうしようという思いがぐるぐると巡る。
(もし違ってたら、どうしよう…)
声を震わせないように、必死で顔に出さないようにしているが、やっぱり胸の奥がざわついていた。
「ん?オカルンの友達?」
その時、横から突然、軽い口調で女の子が声をかけてきた。
(え、なんか…かわいい…)
思わず蘭の胸がぎゅっと締めつけられる。意外と素直に、心が反応してしまう自分に、どこか恥ずかしさを覚えた。
『あの…!お名前、教えてください…!』
蘭は心臓が高鳴るのを感じながら、思わずその子の手を取った。
ちょっとだけ躊躇ったけれど、後悔しないように、できるだけ優しく、でもしっかりと。
手を取った瞬間、少し冷たい感触が蘭の心を冷やしたけれど、それでもその手のひらに感じる温もりに、また胸が高鳴る。
「うちは綾瀬桃、モモでいいよ!」
モモは笑顔で答える。その笑顔に、蘭は少し驚いた。
明るく、さっぱりとした印象があるけれど、その笑顔の奥に隠された何かに、蘭はふと心を引き寄せられるような感覚を覚えた。
「モモ…!名前までかわいい…!」
思わず口をついて出た言葉に、蘭自身も驚いた。どんな反応が返ってくるのか少し緊張しながら、モモの顔を見つめる。
モモはちょっと照れくさそうに、でも嬉しそうににっこりと笑った。
「それであんたは…?」
『あ、糸師蘭と申します…!』
「へぇ~…よろしく…!ラン!」
その言葉に、蘭はふっと肩の力が抜けた気がした。少しだけ安心して、心の中で深呼吸をする。
モモちゃんって何者じゃんよ?
「そういえば…えっと、糸師さんって、何から逃げてたんですか?」
オカルン、つまり高倉から、突然問われた。
『あぁ…えっと…』
蘭は答えようかどうか、迷った。
言ったところで、どうせ誰にも理解されないだろうという不安があった。
むしろ、笑われるかもしれない。
でも、その不安の中で、どうしても言葉を発さずにはいられない自分もいた。
しかも、不思議なことにさっきまでそこにいた霊たちが、今は全く姿を消している。
「まさか…霊、ですか?」
その問いに、蘭は驚いて目を見開く。
『…!なんでそれを…?』
思わず声を漏らしてしまうが、すぐに口を閉じた。
「え、霊!?ラン、それほんと!?」
モモが横から、驚いたように声を上げる。
『うん…信じられないかもしれないけど…
私、霊が見えるし…引き寄せちゃう体質みたいで』
蘭はしばらく黙っていた。でも、それが真実だから、仕方なく言った。
モモはしばらく黙って考えていたが、急に顔を明るくしてこう言った。
「じゃあ、家来る?」
その言葉に、蘭は目を丸くして驚く。
『え?』
思わず声が漏れた。モモの軽すぎる提案に、蘭はどう返事すれば良いのか分からなかった。
霊媒師!?
モモに連れられて、ようやく家に着いた。
家というか…神社?
「ばあちゃん、いるかなぁ…」
モモはさっさと家に入っていく。
私が少し迷っていると「ランー?入っておいで」と呼ばれた。
とりあえず、気持ちを落ち着けて家に上がることにした。
『お邪魔します…』
玄関から続く廊下を進むと、すぐに目に入ったのは、綺麗な女性だった。
(綺麗だなあ…)
思わず心の中で呟くと、モモがその人を指差して紹介してくれた。
「うちのばあちゃん!」
(…ん?おばあちゃん?この人が?え、むしろお姉さんみたい…?)
『あ、あの…糸師蘭です…!』
「星子だ。」
(星子さん…すごく綺麗だ…)
「今日はどうした?」
「ランがなんか、霊を引き寄せる体質らしくて…」
モモがそのまま代わりに説明してくれる。
「なに?霊を引き寄せるだと!?」
星子は、驚いたような顔で私を見た。
「誰だそいつは…」
突然、聞こえた声に驚いて振り返ると、招き猫が喋っていた。
(招き猫って、喋ることあったっけ? 私、やっぱりおかしくなってるのかな…)
一瞬、自分がおかしくなったのかと思ったが、とりあえず挨拶だけでもしようと心を決める。
『あ、糸師蘭と申します…』
すると招き猫は、じっと蘭を見つめながら、言った。
「お前…霊がついてるじゃねぇか!」
えっ、そんなことまで分かるの!?と驚きながらも、蘭はなんとか冷静を保とうとする。
(この招き猫さん、すごい…)
『あ、これは私の友達です!』
ニコッと微笑んだ。
「ばあちゃん、どうすんの?」
「とりあえず祓う…いや…これは…」
星子は言いかけて、突然、蘭をじーっと見つめた。
その視線に、蘭は思わず顔を赤くした。
(こんな美人さんに、まじまじと見られたら…顔が赤くなるに決まってるよ〜!)
「お前、その霊とダチだって言ったな?
昔…助けられたのか?」
星子の言葉に、蘭は驚いて目を見開く。そんなことまで分かるのか…。
『…はい。あの子、私の代わりに死んじゃって…』
その言葉を口にするのが、少しつらかった。
「そうか…。」
星子も同情してくれるように頭を撫でてくれた。
『ていうか…祓うって星子さん何者…?』
モモに聞く。
「あー、うちのばあちゃん霊媒師!」
『そっかぁ…』
蘭はもう驚かないと心に誓った。
なんかおかしいところにきたじゃんよ…!
夢のような感じで目を覚ますと、どこか見慣れない場所に立っていた。周りには誰もいないし、身の回りには何も変哲のない風景が広がっている。
さっきまで普通に授業してたのに…
『ここ…どこ…?』
その場で呟いたけれど、答えはもちろん返ってこない。心臓が少し早く動き出すのを感じながら、何とか自分を落ち着けようとした。
『みんなは…どこにいるんだろう?』
その時、足元に冷たい感触が伝わる。
『えっ!?水!?』
振り返ると、いつの間にか水位が上がっていた。制服がすでにびしょ濡れだ。
『なんでこんなことに!?』
慌てて周りを見渡してみると、どこからか足音が近づいてくる気配が…!
『こ、こっちに来てる…!?』
そのとき、視界の端に不気味な影が見えた。なにこれなにこれ!?宇宙人…?
『わぁぁぁ!?』
その影はあっという間に近づき、目の前に現れる。
怖い…死にたくないという感情が高ぶっていつの間にか妖狐の姿に変身していた。
『めんどくせぇな…』
蘭はぼやきながら、片手で水をかき分け、近づいてきた敵に一つ蹴りをいれてやった。
『あぁ…制服が濡れちまったじゃねぇか』
と、そのままトイレに向かって足早に歩いていった。
気まずい空気を残して、私はひとり、ぽつんとその場に取り残された。
「え?蘭、どうしたの?」
小さな声が聞こえてきた。友達が訪ねてきた。
『あー、えへへ、ちょっと水ぶちまけちゃったんだ。ごめんね〜』
誤魔化せるかな…。
(モモちゃんなら何か知ってるかな…後で聞いてみよう)
キャトルミューティレーションを君は見たか
蘭が外のベンチに向かうと、そこにはモモと、もう一人の人物がいた。ピンク色の髪が太陽の光を反射し、どこか目立っていた。
『……え、アイラ…?』
その瞬間、私は気づいた。そこにいたのは、私のいとこ、アイラだった。
「…ラン?なんでここに?」
アイラがちょっと驚いた様子で尋ねてきた。
『ごめん、なんかお取り込み中だった?』
少し気まずい空気が漂う。モモとアイラが何か言い合っていたような感じだったけど、今はそんなことに気を取られる余裕はない。
「ランとアイラって知り合いなの?」
モモが尋ねると、アイラがさらりと答えた。
「いとこよ…」
その言葉に、モモが「へぇ」と返していた。
その時。
突然、空気が変わった。何か不気味な気配が漂う。
「このまま帰るわけにはいかないデェス…」
声がした。振り返ると、そこにいたのは…宇宙人!?
その宇宙人、白い液体を体から流しながら、やたらと自信たっぷりな顔で言い放った。
(え、キモッ……)
「家族のために稼がないと……」
家族…宇宙人にも家族がいるんだろうか。だとしても、やっぱり気持ち悪い。
『え、アイラ?』
アイラを見つめると、彼女の姿が急に変わった。普段とは違う冷たいオーラを放っている。
「こいつ、まだおいでになるの?」
アイラが冷ややかな目で宇宙人を見下ろす。どうやら、いつものアイラとは違う雰囲気だ。
その宇宙人が意味不明なことを口にする。
「チキチータ…ユメナイカ…」
まったく訳がわからない。ただただ不気味だった。
『…っ!』
一瞬、攻撃が来るかと思ったが、驚くべきことにその宇宙人が突然倒れた。
「は?」
宇宙人がその場にバタリと倒れ込み、完全に動かなくなった。
「何が起きたの?」
私は目を丸くして、その光景を見守った。宇宙人が倒れるなんて、こんな展開、誰も予想しなかっただろう。
その後、モモの家で、倒れた宇宙人を手当てしていた。みんなで必死に治療しつつ、宇宙人が目を覚ますのを待つ。
「これ、河童じゃねぇの?」と、星子さんが一言。
それを聞いたモモが、すぐに反論した。
「いや、嘘でしょ?目の前に宇宙人いるのに、河童だなんてどういうこと!?」
そんなことを言いながら、宇宙人がふと目を開ける。みんながその瞬間に息を呑む。
「なんか、宇宙人っぽくねぇよな。河童だ、これ。」
星子が断言する。
「いや、むしろ、河童が宇宙人説が!」と、高倉が話し始める。
「ていうかさ…どうすんの、こいつ?手当てしたけど、また襲ってくるかもしれないわよ?」
アイラが心配そうに言う。初めてアイラに共感したかもしれない。
その瞬間、宇宙人が体を動かし始める。みんな、身構える。
「こっちにはばあちゃんがいるからな!」
そう言うと、宇宙人は突然、泣き出した。
「こんなにちゃんと治療されて、こんなに優しくされたの、初めてでぇす…」と、涙を流しながら、宇宙人は言った。
「もう、あなたたちを襲ったりしないデェス。約束しますデェス…」
そして、カレーを食べながら続ける。
「ほんと、ありがとデェス…」
とりあえず、ひとまず安心、かな?
その夜、みんなでお寿司を食べた。宇宙人も一緒に食べていた。
『ん〜…美味しい…!!』
みんなで美味しそうに食べる中、突然、喧嘩が始まる。
「ラン!アイラ、どうにかしてよ!!」
モモが叫ぶ。
『え〜…めんどくさいから…』
私はそう言う。
その後、星子が力強く宣言した。
「もう寿司は出さねぇ!!」
みんなが食べ終わった後、宇宙人に色々と話を聞いてみることにした。
宇宙人は、息子さんが重い病気にかかっているらしく、それで戦わなければならなかったという。
ちょっと話が複雑でついていけなかったけど…高倉なら何か解決策を思いつくかもしれない。
その後、星子が重要なことを発見した。
「宇宙人の血液、牛乳に近い成分が含まれてる…!」
これで一件落着かな?
『あれがUFO…』
宇宙人は最後に、牛を持って去っていった。
キャトルミューティレーションを君は見たか
初恋の人
「お願いします!!制服を買ってください!」
三人が星子の前で頭を下げて、必死にお願いしていた。
『…制服、なくなったん?』蘭が呆れた様子で尋ねる。
誰も反応しない。なんだか、悲しい気持ちになってしまった。
「ドドリア様のギャラで……」
「わしは何回てめぇらの制服買えばいいんだ?クソボケコラ…」
(どうして、そんなに制服をダメにしているんだろう)
「次こそは大切に着させていただきます…」と三人が声を揃えて言った。
私は星子の後ろで、ただ黙ってその様子を見ていることしかできなかった。
「アイラとメガネのは買ってやる。」と、星子がポツリと言った。
「ちょっと!なんでウチは入ってないんでございましょうか!?」と、モモがすかさず反応する。
どうやら、星子はモモの目が気に入らなかったみたい。
「わしがいいと言うまで、阿部寛のモノマネでもしとけ!」
モモが反抗していたけれど、制服が買ってもらえないことを悟ると、しょうがなくやり始めた。
『ふふっ…あははっ!!モモちゃん、…あははっ!かわいいじゃん』
私もアイラも、大笑いしてしまった。
「どうも…」モモが照れながら答える。
その時、突然インターホンが鳴った。
「おい、モモ。お前が行け。」
(え…?星子さん、鬼ですか?)モモが可哀想になった。
「ロケットエンジンバルブ」と呟きながら、モモは玄関の扉を開けた。
「どうも、ロケットエンジンバルブです」
「え、モモ…?」
そこに立っていたのは、すごくかっこいい男の子だった。私はその姿に目を奪われてしまった。
『…かっこいい…』
「ジジ!?なんで…」
アイラも、他のみんなも静かになった。
「どちら様ですか?」高倉が警戒しながら尋ねる。
「あいつはな、モモの幼馴染で初恋相手だ。」と、星子がサラッと教えてくれた。
(初恋相手……じゃあ、モモちゃんもまだその人を好きなのかな…。)
私はなんだか、胸が少し苦しくなる。
ほんとにかっこいい…思わずじっと見つめすぎてたせいか、ふと目が合った気がした。
「モモ、キャワウィーネ!」とジジが言った。
(あー、こういうタイプだったか…。)
「モモの似てないモノマネ…プライスレス!」ジジがドヤ顔で言う。
「久しぶりじゃん、モモ!とりあえずハグしとく?」ジジが元気よく言う。
「何こいつ、うざってぇ。」モモが思いっきりウザがる。
「うざってぇいただきましたー!」ジジが満足そうに返す。
(元気だなぁ…かっこいいのになんか台無し?)
その後、私はぼーっと話を聞いていた。
『え、一緒に暮らすの…!?』その言葉に私は反応する。
アイラはその後、「不自然すぎる」とかなんとか言いながら、家を出て行った。
『え、アイラ…!?』
「ラン〜…あいつ、どうにかしてよ〜…また拗らせてる…」モモが私にすがる。
『え〜…そんな事言われても…アイラの性格は昔からあんな感じだから…』と、何にもフォローにならないことを言ってしまう。
その後、高倉が「帰る」と言って、私も帰ろうとした時、ジジに声をかけられた。
「ねぇねぇ!君、キャワウィーネ!」
『え、!?あ、私…』
かわいいと言われて、思わずビクっとする。
「俺、円城寺仁!ジジでいいよ〜!何ちゃん?」
ジジはぐいっと私に近づいてきた。
『あ、あ、ぇっと……糸師…蘭…です…』
「ランちゃん!よろしく〜!」
手を差し出される。握るか迷ったけど、思わず手を握ってしまった。
『あ、…よろしく…』
その瞬間、ドクっと心臓が脈を打った。温かい…!
「え、ランちゃん!?顔赤いよ!?りんご!?りんごじゃん…!」
顔が赤いと指摘されて、思わずモモにHELPを求めた。
『え、いや…えっと……モモちゃーん!!!』
私は咄嗟にモモの後ろに隠れる。
「うぉ!?ランどした?………ふ〜ん?」
モモの顔を見たら、なんだかすごく企んでいる顔をしていた。
『あー!!頼る相手失敗した……』
人体模型って喋るんだ…
(昨日…ジジくんに触れられたところが、今もじんじんと熱く感じる…)
そんな自分の心のざわめきを押さえながら、ランは淡々と授業を受けていた。
今日、ジジが転校してきたクラスはモモと同じクラス。
そのことを思うと、高倉くんの様子が気になって仕方ない。彼は机に顔を伏せ、何かを考え込んでいるようだった。
(大丈夫かな……あとで声をかけてみよう…)
お昼の時間。ランが声をかけようと教室を見渡すが、高倉の姿はもうなかった。
(え、声をかけようと思ってたのに……どこに行ったんだろう?)
困惑しながら教室を出ると、モモがすぐそばにいた。思わず声をかけ、一緒に歩くことにした。
『高倉くん、こっちにいる?』
「なんでオカルン?」
突然ランが高倉の名前を出したため、モモは不思議そうに首をかしげた。
『いや…その…』
言おうとしたけど、二人の恋の邪魔はできない。私が勝手に伝えたら、なんだか可哀想だと思った。
『最近、お昼の時間にいなかったから、ちょっと気になっただけだよ』
そう言うと、モモは「そっか…」と少し疑問そうにしながらも頷いた。
二人で中庭へ向かうと、そこには高倉がいた。
「あれ?綾瀬さん!?それに糸師さん…!」
(いや、私はついでかい…!まぁ、いいけどさ…)
「うち、ここで食べるから…」
『もちろん、私も一緒に!』
ニコッと微笑みながら答えた。
なんて話していたら、ジジがやってきた。
「お、モモ!ここにいたんだ。
あれ?君、昨日モモん家にいた人じゃん。友達?」
と、ジジが声をかける。
「なに?ミーコたちと食べるんじゃなかったの?」
「え?モモちゃん、嫉妬っすか?きゃわうぃ〜〜!」
「ちげーわ」
「見てこれ!ポンピーヨーグルト味!」
「キャー!なにそれ!」
「プレゼント・フォー・ユッフォ!」
そんな調子で、ジジとモモは楽しそうにじゃれ合っている。
(……やっぱジジくん、モモちゃんのこと好きなんだ)
ランは心の中でつぶやき、少し顔を曇らせた。
その隣では高倉も無言で暗い表情を浮かべ、どこかへ行こうとしていた。
その背中に気づいたランは、後ろからそっと抱きつく。
思ったよりもブレることなく、しっかりと立っている高倉の体に、ランはちょっと驚いた。
『ねぇ……私に浮気してみる?……なーんて』
モモと高倉は付き合ってもいないけれど、ランはわざとそう言ってみた。
「っ!!ち、近いです……!」
『ふむ……筋肉ついてるね!!筋トレしてたおかげじゃね?』
話を全く聞いてないランは、制服の上から彼の腹筋をぺたぺたと触り始める。
高倉の顔はみるみる赤くなっていった。
「ちょ! ちょっとラン!抱きついてんじゃねぇ!!」
「えー!? ごめーん……なんでモモちゃんが怒ってんの?」
ランが高倉から離れて首をかしげると、今度はモモの顔が真っ赤になっていて、「うっせー!!」と不機嫌になってしまった。
その隙に、高倉は再びどこかへ行こうとした――かと思いきや。
「綾瀬さぁああん!!」
「そこどかんかあああい!誰も俺を止められねえええ!!」
逃げる高倉を追い抜いてきたのは、走る人体模型だった。
『……へぇ~!人体模型って喋るんだ~!』
ランは何故か感心し、その模型に目を輝かせる。
「いや、そこじゃねぇだろ!!」
モモの容赦ないツッコミが飛ぶ。
モモは模型を止めようとするが、ジジが「危ない!」とモモを庇い、そのまま2人は床に倒れ込んだ。
人体模型は、倒れた二人の上をひらりと飛び越える。
その瞬間。
モモの目には、人体模型にあるはずのない"金の玉"がついているのが見えた。
「オカルン!アイツの玉、金色!!」
「逃がすかあ!!」
モモは超能力でランを避け、人体模型をガシッと掴む。
その勢いで、モモを抱きしめていたジジごと、彼女は宙に浮きながら引っ張られていった。
(てか、モモちゃんすごくね!?)
置いていかれそうになったランは、思わず走り出した。
『わー!!置いて行かれちゃうよぉぉ…!!』
ランは走りながらそう言う。
走り続けていると、ランの脳内に声が響いた。
【|余《わー》の能力、使ぅてみぃ。】
(え、誰?)
能力……?と思った瞬間、昨日の“変身”の記憶がよみがえる。
『あー……めんどくせぇ……』
そうぼやきながらも、ランは力を引き出してみることにした。
すぐに追いつくと、高倉はすでに変身していた。
『おい、モモ。あたしは何をすりゃいい?』
「え、ラン!? いつ覚醒したの!?」
『昨日の……宇宙人との戦闘のとき。』
ランはめんどくさそうに、目をそらしながら答えた。
「オカルン!しっかり踏ん張って!ジジも手伝って!」
屋根の上へと逃げた人体模型を、モモは超能力で掴もうとしていた。
高倉、ジジ、そしてランも加わって、三人がかりで引きずり下ろそうとする。
「嫌だ!俺は諦めない!諦めたくないんだあああ!!」
人体模型の執念は強く、その体はバラバラに分解されて超能力からすり抜け、そして――再び組み直されて走り去ってしまった。
「モモ!逃げられちゃうぜ!」
「オカルン、追って!!ランも!!」
『……はぁ、めんどくせぇ。』
「ランちゃんもバケモノ~~~!?」
『バケモノじゃねぇし!可愛い尻尾と耳がついてんだろ!?』
「はい!可愛い!!」
ランが怒りながらも尻尾を見せると、ジジは「確かに……」と納得した様子でうなずいた。
屋根の上に飛び上がったランは、鋭くなった嗅覚と聴覚を頼りに人体模型を探す。
だが、街の中はバスや車、たくさんの人間の声と匂いで溢れていて――
(くそ、分かんねぇ……。しかもあいつ、匂いねぇじゃん)
すぐに諦めたランは、再び高倉たちのもとへ戻った。
どうやら、逃げられてしまったらしい。
変身を解く高倉とラン。
その横でモモと高倉が話しているあいだ、ジジがランに不思議そうな顔を向けた。
「ランちゃん達……何者?」
『ん~……それが私にもよく分かってないんだよね。』
そんな会話をしていると、モモがギュッ、ギュッ――何かを握るような仕草をした瞬間、
遠くから、悲鳴が聞こえた。
「こっちだ!!」
「えっ!?な、何スか!?」
モモが走り出す。その後を、ランたちもすぐに追いかけた。
しばらく走ると、また同じような悲鳴が響き、音のした方へと進んでいく。
「ここ……?」
「こんなとこ、勝手に入って大丈夫っスか?」
廃棄物処理場のような場所。
人気はなく、金属の匂いが鼻につく。
モモが警戒しながら中に踏み込むと―その視線の先には、倒れた人体模型があった。
「あ! 居た!」
「くそったれめ……あと一歩のところで……!」
高倉が、なぜ場所がわかったのかモモに聞くと、彼女は淡々と答えた。
「アイツが分解したとき、心臓だけは掴んでた。たぶん、それが反応してたんだと思う。」
なんだかドラマチックじゃんよ!
「別にあんたを取って食おうってわけじゃないし、逃げないって約束してくれんなら心臓は返すよ。そんでさ、あんたの金玉ちょっと見せてくんない?もしかしたら友達のかもしれないの」
「綾瀬さん、もう少しオブラートに……」
「下ネタそんな流行ってんの!?」
『男の子は下ネタ好きなんじゃないの?』
「……まぁ、嫌いではないよね」
『やっぱそうなんだ…あはは…』
モモの言葉に、言い方に困惑する高倉。
そしてまた下ネタを投下されたことに驚愕するジジと、それにノリノリで乗っかる私。
「太郎!? その声は太郎なの!?」
「花!? どこだ花! 花ァ!」
どこからか「花」と呼ばれる声が聞こえてきたかと思うと、太郎――もとい人体模型は立ち上がり、廃棄物の山から声の主を探しはじめた。
「ダメよ来ちゃダメ! 戻って太郎!」
「嫌だ! オレはあきらめない!!」
『なになに、どういうこと……?』
「やっと見つけた……!」
一心不乱に探し続けた太郎は、ついに声の主を見つけ出す。
その姿は――テープに巻かれた女体の人体模型だった。
太郎はそっと彼女を、廃棄物の山から取り出した。
「なぜ来たの!? こんな危険をおかしてまで!!」
「愛してるからに決まってるだろ!!
オレはキミと出会って、全てが変わったんだ! 灰色だったオレの世界が、キミのおかげで色づいて見えるようになったんだ!!」
「ダメよ……私とあなたじゃ、作られた年代が違いすぎる……! 住む世界が違うのよ! 私の役目は終わったの。早く戻って! あなたまで粗大ゴミにされるわ!!」
「構わないさ。自分が好きになった女性だ。何がなんでも離さない。一緒に逃げよう。今ここで何もしなかったら、オレは一生後悔する!!」
「太郎……!」
花と呼ばれる人体模型の顔半分から、
一筋の涙が頬を伝った――私たちは、それを見逃さなかった。
太郎の言葉が、すごく胸に刺さった。
太郎の思いも、花の涙も、どちらも理解できるランだった。
人体模型に安らぎの場所を
私たちは今、人体模型たちをどうにかしたいという高倉くんの思いを受けて、下校後に綾瀬宅へ来ていた。
「お願いします! 彼女をこの家に置かせてください!!」
高倉くんは、人体模型の花を連れて土下座で星子さんに懇願する。
「……テメェんちに置けやぁ」
「無理です!! これ許容できるの、綾瀬さんちくらいしかないんです!」
「ネコもいるし、別によくね?」
「そんな雑魚と一緒にすんじゃねぇよ! そいつは飯食わねぇだろうが!!」
『招き猫さん、怒っちゃだめだよ〜……』
モモの一言に、寝転がっていた招き猫――もといターボババアがムクッと起き上がり怒り出す。
だが、ランがすかさずターボババアを抱えて宥めていた。
「……で、大体その男のほうはどーなってんだよ」
「化学準備室に戻った」
「あぁ?」
「花ちゃんが無事なら、心置きなく“人体模型”してられるって……その代わり、夜になったら学校抜け出してくるから、花ちゃんに会わせてほしいって」
「……おばさんの寛大な心に頼るしかないんス! おねしゃス!!」
『おねしゃス!!』
「ったく……人体模型のくせにさかりやがって……近所迷惑にならねぇようにイチャつけよな」
渋々ながらも、星子はみんなの願いを了承してくれた。
ちなみに“金玉”の件について聞かれると――
結果的に太郎に付いていたのは、クリスマスの飾りだったらしい。
「飯にするから机出せ」
「ランもオカルンも食べてくでしょ」
「あ、はい。いただきます!」
『あー……そうしようかな。星子さん、手伝います!!』
「おう、あんがとよ」
星子さんに付いていくラン。
その隙に、モモとジジのほのぼのした空気をブチ壊すかのように、高倉が騒いでいたという。
がんばれ高倉。
「さわぐんじゃねぇ! ホコリが舞うだろうがい!」
「「すいやせん!!」」
「あとモモ、週末ジジの家に泊まるんだからパンツとか用意しとけよ」
「ちょっと! なんでそういうこと言うんだよ!」
「綾瀬さん……ジジさんの家に……なんで……」
パンツどころの話じゃなくなった高倉は、顔を青ざめさせてモモに詰め寄る。
「ええ!? 言ってなかったっけ!?
ジジの家が呪われてて、それを祓ってほしいって。それで家に来たんだよ」
『……私も行っていい? たの………大変な思いしてるみたいだし!!』
「もちろん! だいかんげーい!!」
“絶対楽しそうって言いかけただろ”という空気が、ジジ以外の全員の心に一瞬走った。
「それ綾瀬さんとジジさんだけで行くつもりだったんですか!?」
「んなわけないじゃん! オカルン誘うつもりだったよ。ウチ一人じゃ不安だしさ!
ランに関しては……急に覚醒してたから言ってなかったけど……」
検索中!恋愛の好きではないとは…?
「だったらさっさとやっちゃいましょう!! さっさと解決して、さっさとジジさんに家に帰ってもらいましょう!」
「どしたどした」
「サンキュ〜〜フォ〜〜!!」
勢いよく立ち上がり、早口でまくし立てる高倉に、モモは驚いた。
どうしてこんなテンションなのか、本人にも分からないらしい。
でも、ランはなんとなく察していた。
そっと高倉の肩に手を置き、にっこり笑って言った。
『頑張れ、少年!』
サムズアップしながらウインクをすると、高倉は自分の気持ちをランに見抜かれていたことに気づき、顔を真っ赤にした。
「そ、そそそんなんじゃ!!」
『茹で蛸じゃん! あははっ!人の恋愛見るの楽しい〜!
そろそろ私帰ろうかな〜? じゃあね、みんな!』
「ジジ、送ってやれよ」
「え、俺!? いいけど……ランちゃんは大丈夫?」
『ん? 何が?』
帰ろうとするランに、星子がジジに送るよう指示すると、ジジの「大丈夫?」の意味を図りかねたように首をかしげた。
「ランちゃんのこと襲っちゃうの、ありよりのありかも〜!」
『え!? な、殴る的な!?
私、まだ蹴りしか入れたことないんだけど……』
「よし、行け」
「イエッサー!!」
『う、うわーー! お邪魔しましたーー!!』
グダグダ言うランを、星子の号令に従ってジジは手を引き、家の外へと連れ出した。
ジジはなんだか楽しそうだったので、ランは諦めた。
夜の帰り道、いつもはにぎやかな二人も、今日は少しだけ静かだった。
『……よかったの……?』
「ん?」
『モモちゃんのこと、好きなんでしょ?
だから……私のこと送っちゃってよかったのかなぁって……』
「モモのことは好きだけど……うーん……」
『私は、高倉くんのこと応援してるから!』
身長差のあるジジが、歩幅を合わせて並んでくれているのに気づいて、ランは見上げながらニシシと笑った。
「考えてみれば……恋愛の“好き”とは違う……かな」
ジジは、まっすぐランを見つめて言った。
(え? 好きなんじゃないの?
うん? 恋愛の“好き”じゃないんだったら……
なんでああいう態度なの!?)
ランは少し困惑する。
「ランちゃん、どした?」
ジジが小さく笑みをこぼした。
『へ、? い、いや! なんでもない……っ』
やけに大人びて見えたジジに、ランは動揺して思わず大きな声を出してしまう。
その声が閑静な住宅街に響いて、ランは慌てて自分の口を手で押さえた。
今まで、異性とこんなふうに歩いたことはほとんどない。
しかもランは少し天然で、相手からの好意にも気づかず、流してしまうことが多かった。
でも、恋をしたことがないわけじゃない。
ただ、気づいていないだけなのだ。
そして、自分から恋をするというのは、また別の話だった。
不意に微笑むその顔に、どこか惹かれるところがあって——
ランは、やっぱり好きになっちゃったんだなと、自分の気持ちを再認識せざるを得なかった。
呪いの家にレッツゴー!
『よし…準備バッチシ! 駄菓子持った! いざ、しゅっぱーつ!』
呪われているというジジの家へ向かう一行。
電車内はほぼ貸し切り状態で、ランたちはトランプをしたりはしゃいだりと、修学旅行のような空気を楽しんでいた。
「ツチノコの話を今からしまああす!!」
モモとジジは、地元ネタで大盛り上がり。
その様子が面白くないのか、高倉が突然大声を上げた。
『び、びっくりした……あっ』
隣に座っていたランは仰け反ったが、すぐにモモとジジを見て、
(……あー、なるほどね)と、察した。
ランが思いつきで口を開く。
『出ました!高倉くんのおもしろ話ー!!』
「よし…今日の朝なんですけど……じゃないですよ!?やめてください!!」
ツッコミ混じりにノリ出した高倉に、目の前の二人は笑い出した。
少し肩の力が抜けたのか、高倉の顔にはさっきよりも柔らかい表情が浮かんでいる。
『ごめんごめん、ふふっ……ツチノコの話、聞かせて!』
ランはすっかり興味津々だ。
「UMAは空想の生き物なんかじゃありません!
実際、約100年前まではゴリラだってUMAだったんです!
そしてジブンは、ツチノコこそ“次のゴリラ”になると見ています!」
熱く語る高倉。その横で、ジジがふと思い出したように言う。
「そういえば、うちの村には“大蛇伝説”があるよ」
『だ、だだ、大蛇伝説!?』
「二百年の歴史がある神社で、大蛇を祀ってるらしくて。
地元じゃ“ツチノコ神社”って呼ばれてるよ」
「へー!」
『行きたい行きたい! ツチノコ神社行こうよ! ね、モモちゃん!』
「うん、行ってみよ! ツチノコの大蛇、見たい!」
『やったーーー!』
目を輝かせるランに、モモも珍しくノリノリで賛成。
その様子に、ジジはモモの頭に手を乗せて、ぽんぽんと軽く叩いた。
「ったく、しゃーねーな。二人とも、オレから離れんなよ?」
『きゃー!! さすが〜〜〜!!』
ジジを称賛するラン。
心の中では——
(あ……いいなぁ……って、ちょっと! 何考えてんの私!?)
——と思っていた。
……が。
目の前のジジが、ふいにランの頭もそっと撫でてくれた。
一瞬で顔が熱くなるのがわかった。
思わず頬に手を添えて、隠すように目をそらす。
——はしゃぐランたちだったが、
この先に“難儀な物語”が待っていることなど、まだ誰も知らなかった。
『うわぁ……!』
「ちょっと、温泉地じゃないっすか!?」
着いたのは、湯けむりと飲食店の香りが立ちこめる静かな温泉街だった。
どうやらジジの父親は、近くの大学で火山の研究をしているらしく、
それがきっかけで、この地に引っ越してきたのだという。
「火山って……噴火とか大丈夫なの?」
「200年くらい前に一回噴火したって記録が残ってるけど…
それ以降はずっと落ち着いてるみたいだよ」
転校初日ふざけたけど本気です!、ジジSide
ジジが転校してきた日の話。
教室のドアを開けて俺は元気よく自己紹介した。
『どうもー!転校してきましたー!ポポポポーン!円城寺仁、ジジって呼んでね!』
教室からは女子の声で「かっこいい〜!」がちらほら聞こえる。
(ふふん…オレ、やっぱかっけーんだよな!)
先生が話しているのにお構いなしに、
『キミ、キャワウィーネ!!』
って、女子に絡む。
先生は根気強く説明を続ける。
「えーっと、円城寺の両親は現在…」
『うわー!連絡先交換しないと死んじゃう〜!』
とジジはふざけたことを言う。
「それで、色々大変だから、みんな彼の助けになってやってくれ。席は綾瀬の隣だ。お前ら親戚だろ?」
『違います!家族です!』
ピースをしながらキメるジジ。
「いや、どっちも違うから」
モモが冷たく返す。
そこへモモの友達らしき女子が、
「チャラ男ウザ。」
と一言。
『グッサー!!美女の辛口、ありがたく頂きました!』
ジジは得意げに返す。モモは頭を抱えながら、
「美女?こいつ、いい奴じゃん…」
とつぶやく。モモの友達が、
「イケメンだー」
と言うと、ジジは調子に乗る。
『ちょっと!!超イケメンでしょ!プンプン!
あれ?なんか引き寄せられてる〜?君が可愛すぎて!』
どんどんふざけるジジに、
「なにこの人ウケんだけど〜。で、コイツ何?」
と質問してきた。
「何って言われてもなぁ…小学校の時の幼なじみ的な?」
モモは悩みながら答える。
『一緒に住んでます!』
ドヤ顔でピース。
「おいおい、やめろよ!変な噂立つだろ!」
モモが慌てて止める。
「え、マジ!?」
「ちゃんと順番に説明させてくれ」
『ラブのラブです!』
焦るモモ。
『モモと俺は親公認なんだよ〜〜〜!!』
ジジは叫ぶ。
「うるさぁぁぁあ!蘭でもいいだろー!!」
周りからは「え、同棲!?」「マジ!?」とざわつく声が聞こえる。
「ランちゃんは……」
顔が赤くなるのが俺にもはっきり分かった。
ふと、彼女のことが頭をよぎる。
彼女は俺にとって特別で、言葉にはできない感情がある。
いわゆる一目惚れってやつだ。
正直タイプだった。
だけどその気持ちは、単なる恋愛のそれとは少し違うような気もして…。
そんなことを考えているうちに、俺はまたいつもの調子に戻ってしまう。
でも、いつか彼女に伝えたい。
「ランちゃんは…俺の大事な人だ」って。
感じるのは、私だけ?
「まさか、これ……」
「聞きたくない……」
少し歩いた先で、彼らの前に現れたのは、果てしなく続くような長い階段だった。
その先が見えないほど延々と続く階段を見上げて、高倉とモモは思わず息を呑む。
「チュパチュパ!」
『……これ、登るの? はぁ……』
そう呟いたランの横で、ジジは先陣を切るように元気よく駆け出していった。
それに続いて、モモもめんどくさそうにしながらも勢いよく階段を駆け上がっていく。
「……バカどもが……」
「……ですね」
だんだん小さくなっていく二人の背中を見送りながら、モモと高倉はため息をつき、一段一段と重たい足を進めていった。
階段を登りきった先には、今度は急な坂道が待っていた。
ようやく辿り着いたその先にあったのは、ジジの自宅。
「どう? モモ、なんか変なオーラ見えない?」
「ゼェ……ゼェ……。あんたたち、どんだけ体力あんのよ! はぁ……はぁ……。見えない。てか、めっちゃ普通じゃん」
ジジとランは、息一つ乱さずに登りきっていた。
『……!』
(この家……ヤバい)
ランは吐き気がしそうなほど、嫌な感覚に襲われていた。
言葉にはできない、重く、ドス黒い何かが身体を包むような気配。
(モモちゃんは……何とも思わないの!?)
「マジ!? 霊媒師の人たち、めっちゃヤバいって言ってたのに!」
「糸師さん、どうしました……?」
高倉がランの異変に気づいて、駆け寄ってくる。
『いや……ちょっと……ここ、ヤバい。家、入れない……』
目には見えないが、家の周囲にドス黒いオーラが漂っている。
ここは明らかに危険だと、脳が警告を発していた。
「ええ!? そんなヤバいの? うち、全然見えないんだけど……」
『ジジくん……?』
ジジがそっとランの手を取る。
「とりあえず……家に入ろう。ランちゃん、これで何にも助けにならないかもだけど……」
『うん……頑張る……』
そう言って、ランは覚悟を決めて家へと足を踏み入れた。
最後に高倉が遅れて続こうとしたそのとき――
木々の間から、何かの視線を感じて、ふと足を止める。
振り返るが、そこには誰もいない。
……しかし、本当はいた。
誰も気づかなかったが、木陰には何十人もの“何か”が、じっと高倉たちを見つめていた――。
なんでこんな事になってるんじゃんよ!?
「ランちゃん……大丈夫……じゃないよね……」
モモが部屋の隅々までオーラを探している間、ランの顔はどんどん青ざめていく。
その様子に気づいたジジが、心配そうに声をかけた。
『うぅ……ごめん、ジジくん……』
「ドス黒オーラ、ってやつか……」
モモは特に強い気配を感じなかったようで、ソファにドカッと座り、テレビをつけた。
『どこから気配がしてるのか分かんなくて……ごめん。力になれなくて……』
涙を浮かべながら謝るランは、ジジの背中に隠れるようにぴったりと身を寄せた。
「アンタが幽霊見えて、引き寄せるのは知ってるっての。まったく……。
ランでさえ分かんないなら、ウチに分かるわけないじゃん」
ため息をひとつ吐いて、モモは自分なりの仮説を口にした。
──今は、幽霊が“隠れている”のかもしれない。
霊の力が弱いと、こちら側が気づきにくくなる。
だからこそ、簡単に気配を消せるのだ。
「夜になったらしれっと出てくるかもだし……今のうちに休もうぜって話よ」
「というわけで、温泉街行ってきまーす!ランも行くよ!」
『温泉……!ここにいるよりはマシかも』
ジジと高倉を残し、モモとランの女子チームは温泉街へと向かった。
二人はゆったりと湯に浸かり、他愛もない会話を楽しんでいた。
けれど、ふいにモモが頬を赤くし、目をそらしながら口を開いた。
「あの、さ……ランはオカルンのこと、恋愛的に……その、好きじゃないよね?」
『え? あー……うん。友達としてかなぁ。
モモちゃんは?』
「わっ……かんない」
高倉といるとき、自分でも分からないほどドキドキしたり、嫉妬したり、気持ちが忙しい。
その様子を知っているランは、にっこり笑って、隙間なくモモに抱きついた。
「私は応援してるよ!!恋する乙女って、ちょー可愛いじゃん……?」
「ッ……押し付けんじゃねぇー!!」
「ふー、のぼせてきた。出るべ〜」
『出よ〜。冷たいコーヒー牛乳飲みたい〜』
「最高じゃんかそれ」
『露天のわりに、壁が高くて景色見れなかったのが残念だったねー』
「そうなんだよなー」
そのとき――
「おー、先客がいましたかー」
タオルで体を隠しながら出ようとした瞬間、男の声が響いた。
『!?』
「こりゃまたべっぴんさんたちじゃないですか〜」
中年の男5人組が、堂々と温泉に入ってくる。
ランたちは呆気にとられ、動けなかった。
男たちは何の遠慮もなく掛け湯をし、そのまま湯船にどっぷり浸かる。
「え、ちょ! なにこれ!?」
「お嬢ちゃんたち、若いのに二人で混浴〜?」
「混浴……?」
言われて壁を見上げると、古びた看板にうっすらと、「男女共用・足元注意」と書かれていた。
「いや読めねぇわ!!」
「ふ〜、いい湯だ〜」
「あつい〜〜」
「こりゃビールがうまいな〜」
「極楽〜〜」
男たちの登場でランたちは出るタイミングを完全に失い、湯船の隅でじっとしているしかなかった。
熱気で頭がボーッとしてくる中、ランが小声でモモに囁く。
『変身してこの場から脱出しようか?』
「バカ!それこそ見られちまうだろーが!」
「お姉ちゃんたち、ワニって知ってる?」
「え?」
会話を遮るように、1人の男が唐突に話し始めた。
「ワニってさ、あのトカゲみたいなやつですか?」
「アハハ、違う違う! そのワニじゃない!
混浴温泉に出没して、女の人の裸を狙うヤツらのことを“ワニ”って言うんだよ」
その言葉と同時に、男は顔半分だけ湯から出し、ぬるりとランたちの方へと泳ぎ寄ってくる。
明らかな異常事態に、モモは超能力でなんとかしようと手を翳す。
だが、のぼせた身体では力がうまく入らない。
さらに、モモの両手は男に掴まれ、高く持ち上げられてしまった――。
男子たちの恋バナタイム!、オカルンSide
モモとランが温泉に向かって出て行ったあと、残されたジジと高倉は顔を見合わせる。
「……サッカー、やる?」
「ヘイヘイ、オカルン!」
サッカーが得意なジジに教わりながら、二人は軽くパスを回し始めた。
静かな空間に、ボールを蹴る音が心地よく響く――
……と、そこに突然。
「モモのこと、好き?」
『えっ!?』
高倉はジジにパスを出そうとした直前、いきなりの一言に固まってしまった。
「かわいいもんね、モモ」
「ヘイ、パスパス!」
パス待ちのジジに向かって、戸惑いながらも高倉はボールを蹴る。
『ジ、ジブンは……綾瀬さんが、初めての友達で……尊敬してますし、大切な人です!』
「ナイスパス! へぇ〜、“大切な人”ねぇ……。
“尊敬”なんだねぇ〜……」
ジジは意味深に頷きながら、ボールを蹴り返してくる。
「俺はね、モモの顔も性格も好き」
『ジブンだって!!』
「え!?さっき“尊敬”って言ったじゃん!」
『プラス尊敬ってことですよ!』
「ずりぃそれ!」
『ていうか、糸師さんとも仲良いのに、綾瀬さんを誑かすつもりですか!?』
「誑かす!?そんなこと言う〜!?
だいたい、モモのことは好きだけど、恋愛感情じゃないって」
『えっ!?』
「ランちゃんはさ……可愛くて、優しいじゃん?
だから好き。恋愛感情で!一目惚れってやつ!」
『えええぇぇぇ!!?』
高倉にとってジジは、モモの幼なじみにして、初恋相手――
自分が入る余地なんてない、そう思っていたからこそ、ジジの言葉が強烈すぎた。
何度も何度も高倉の脳内でリフレインする。
そんなことが繰り広げられているとはつゆ知らず――
モモとランは、温泉でのんびりと湯を楽しんでいたのだった。
ナイス爆発!からの逃走劇
『モモちゃん!』
変身するしかない——そう思ったその瞬間、ランの背後にあった湯口部分が突然、爆発した。
「うわっ!あちち!!」
「あっつ~~~~!!」
熱湯のしぶきが背中にかかり、二人は慌てて飛び退く。
「ヤベッ、ヤベェ! 何したんだアイツ!? 変なとこ触ったんじゃねぇのか!?」
「おい、女たちが逃げるぞ!」
仲間の一人が湯の中に沈んだ隙を突いて、ランとモモは逃げ出そうとする——
が、動きを見られてしまい追いかけられる……はずだった。
だが、なぜか次々と施設内が崩れ始める。
倒れる柱、割れる壁、ひび割れる床——
混乱の中、二人はうまくその場を切り抜けることができた。
『わぁ……!』
「眺め、いいじゃん!」
崩れた壁の向こうには、山々が広がる雄大な景色。
本来は露天風呂から見えたはずの風景が、ようやく二人の目に映る。
「壁、高すぎたのが勿体なかったなぁ……。
いや〜〜〜ラッキー持ってるぜ、ワシはよぉ」
聞き慣れた口調の声が、二人の会話とは明らかに異なるトーンで響く。
見るとそこには、タオルを頭に乗せ、湯にプカプカ浮いている招き猫の姿があった。
『招き猫さん……!』
「な、なんでいるの!?」
『全然気づかなかった……!気の緩みかなー……』
ランは不覚にも、そばに招き猫がいたことにまったく気づいていなかった。
「ワシをなめるなよ」
どうやら、星子がジジの住所を話したとき、そこが温泉地帯だと聞いてピンときた招き猫。
モモのリュックにこっそり忍び込んで、同行していたらしい。
騒動に巻き込まれる前にサクッと脱出した招き猫は、のんびりと身体を湯に浮かせたまま話を続ける。
「それより……ジジの家、見た?ターボババア的にどう?」
モモのリュックに戻りながら、ウトウトと船を漕いでいたターボババアも、ふと目を開けて答える。
「……ありゃダメだな。あの家、人間の血が染み込みすぎてる」
『やっぱ……やばいんだ……
どこがどうヤバいのか、さっぱり分かんねーけどー!』
叫ぶランに、招き猫が呆れたように口を挟んだ。
「狐になって、嗅覚で探ればよかっただろうに」
『……あ!!完全に忘れてた!!』
頭を抱えるランに、モモが鋭くツッコむ。
「アホか」
そんなこんなで、女子チームは慌ててジジの家へと足早に戻っていった。
ツチノコ神社!
『あ!ツチノコ神社!!』
「あ!」
ジジの家へ向かう道中、ツチノコ神社の話を思い出したモモが大きな声で叫ぶ。
それに釣られるようにランも思い出し、ふたりの足は目的地を変更。教えてもらった神社へと向かった。
『……何を見てるんだろ』
神社の前にたどり着いたふたりが目にしたのは、三点倒立する神主らしき人物の姿だった。
ランは目を疑い、思わず目をこするが――やはり見間違いではなかった。
「何かご用ですか?」
「あ、いや……ツチノコ神社って、ここですか?」
「あー、はいはい。お見苦しいところを……。ブーチューバーになりたくて。どうぞ、お上がりください」
「え、いいんスか? そんなすぐ見せてもらって。貴重なもんなんじゃ」
「全然。こんなんじゃ稼げませんから……ブーチューバーになりたいなぁ」
神主はあっさりと、ツチノコと呼ばれるものをふたりの前に差し出した。
「…………」
「ツチノコに……見えねぇ……」
見せられたのは、ツチノコというより――ただの蛇の抜け殻だった。
「私もそう思います」
ランとモモの視線が点になる中、神主自身もツチノコに見えないとあっさり同意する。
「この神社に残っている文献には――
“天昇る竜は虹をかけ”、
“山の怒りは村を飲み込む”――とあります。
この土地には大蛇信仰がありまして。
火山に棲む大蛇が空腹になると噴火する、と考えられてきたんです。
当時の人々は、村の子どもをひとり、供物として捧げることで
大蛇の空腹を鎮めていた――と伝えられています。
そのおかげで、200年間、一度も火山は噴火せず。
温泉という恩恵を得られたとも言われているんです」
そして神主は、まるで臍の緒のようなものを差し出す。
それが大蛇の脱皮した皮で、
今ではそれを祀ることで火山の噴火を鎮めているのだという。
『ん?それならツチノコっていうのは……?』
「うちの親父が、“ツチノコ"って言った方が観光客が来る”って」
『なんですとーー!?』
「クソが!!」
神主のあまりに正直な告白に、ランはその場にすっ転び、モモは怒りを爆発させた。
「でもそのおかげで、あなたたちみたいな方が訪れてくれるんです……
この大蛇の伝説は、“人間の過ち”でもあるんですよ」
『人間の過ち?』
「はい。恐怖に飲まれ、思考を奪われた人間は――
人柱さえも信じてしまう。
そんな過ちを、二度と繰り返さないように……
私はここでお話をさせていただいております」
「……本当は三点倒立のブーチューバーになりたいんですけど」
「いやその話、ブーチューブでやれば?」
「ハッ!!」
一体何があったじゃんよ!?
「オカルンががっかりするだろうなぁ……。ランはそんなことないわけ?」
『うーん……確かに“ツチノコ見れる!”ってワクワクしてたけど、まあ濃い話も聞けたし……やっぱ神主さんの三点倒立!三点倒立神主!』
ププッ、とさっきの光景を思い出して笑いながら、今度こそジジの家へと向かうランたち。
「まあ確かに、ウチも神主が三点倒立してんの初めて見たわ……さてさて、男二人は友情でも深めてるかな〜」
『ただいまです!』
「オバケは出たかね〜」
玄関のドアをくぐったその瞬間、ふたりは目を見開き、言葉を失った。
そこには――
見知らぬ婦人たち、先ほど温泉で居合わせた男たち。
そして――床に血を流し、倒れている高倉とジジの姿。
「やっと供物が揃ったな……それじゃあ、祭りを始めようか」
「ラン!」
『……分かってる』
ランは変身もせず、一瞬で男たちの間合いに入り、ジジと高倉の傍に立っていた男の首元を狙い、鋭い蹴りを叩き込む。
そのまま勢いよく壁にめり込ませると、次々と襲いかかる敵をかわし、反撃し、意識を奪っていく。
だが、意外にも男たちはタフで、何度倒しても起き上がってくる。
『はぁ?めんどくさ……!』
ランが怒りながら構え直すその背後――モモが捕まってしまった。
「よ〜しよしよし、イイコだね〜。怖くないよ〜?」
『モモちゃん!!』
「クソだらあああ!!」
ランが助けに飛びかかろうとしたそのとき、モモの背負っていたリュックから――招き猫が勢いよく飛び出した!
「うおっ!?」
驚いた男は慌てて後ずさりし、足元の空き瓶を踏んで――そのまま転倒、後頭部を強打して気絶した。
『招き猫さん!』
「人が良い気分で寝てたのによぉ! 誰だワシをギュウギュウ潰したやつは!!」
「助かった、ありがとう! ついでに手を貸してもらえると助かる!」
「ワシはてめぇを助けねぇ……んで、コイツら何よ」
「こっちが聞きてぇわ!」
『町内会のおばちゃまたちが、茶菓子届けに来たって雰囲気じゃないよねぇ……』
「ラン!」
団体のリーダーらしき女が、ランに狙いを定め、鋭い飛び蹴りを繰り出してきた!
『っ……!!』
不意打ち。もろにくらってしまったランの身体は、壁を突き抜け、隣の部屋へと吹き飛ばされる。
「ラン、大丈夫か……っ!?」
『ん……なんとかぁ……』
か細い返事にモモは安堵するが、次の標的は自分だと察したときには――すでに遅かった。
「ぢぇにふあ! ろぺす! 穴根打アナコンダ!!」
意味不明な呪文のような叫びとともに、リーダー女の一撃がモモを襲う!
その威力は凄まじく、モモもまた壁を吹き飛ばされ、ランのいる部屋へと投げ込まれた。
『モモちゃん!大丈夫っ……て、なにこの部屋……?』
そこは――
壁も床も、一面にお札が貼られた異常な空間だった。
大蛇様ってほんとにいたんだ
「この野郎、何者だい? 霊媒師ってわけでもなさそうだね。
――祭りの邪魔をするってことは、どうやらテメェらはこの村を壊しに来たってわけだ」
『壊しに……?』
「この村はな、俺ら鬼頭家が代々守ってきた土地だ。そう簡単に好き勝手させねぇぜ」
「はぁ!? 人んちに勝手に入り込んで、色々めちゃくちゃにしといて何言ってんだ! とっとと帰れ!」
「おいおい……誰のおかげで安全安心に温泉入れてると思ってんだ?
俺ら鬼頭家が、二百年間“大蛇様”に供物を捧げてるからだろうがい!」
「そのおかげで火山の噴火は抑えられ、温泉っていう恩恵が得られてる。
俺らがこの土地を管理してなきゃ、今ごろ村はマグマの下だぜ」
「ちょ、ちょっと待って……今、供物を捧げてるって言った!?」
『……聞いた話と同じだ』
「そうだよ。この場所はな、もともと祭壇だった場所だ。
まさにこの家で――人柱が立てられてたんだ」
「時代によって姿形は変わったが、この家は紛れもなく“祭壇”さ。
そして俺ら鬼頭家は、ここに“供物”を招き入れて、大蛇様に捧げてんだよ」
「……まさか、それで……ジジの両親は――」
「なんて酷いことを……! って、足が……!」
ランが変身して鬼頭家に襲いかかろうとする――が、足元が砂のように沈み始めた。
バランスを崩し、尻餅をついてしまい、そのまま変身が解けてしまう。
「ラッキーだったぜぇ。ちょうど四人、供物が足りねぇところだったんだよ。
――大蛇様は、腹ペコでいらっしゃるからなぁ」
部屋全体がうっすらと黒い霧に包まれていき、床も――砂のように沈み始める。
「やばいやばい! 床が砂になってる!?」
『モモちゃん! 超能力で私を飛ばして!!』
「わかった!」
モモは力を集中し、変身したランごと浮かせ――閉じかけていた入口へ向かって投げ飛ばす!
『どけよ!! てめぇらァ!!』
ランが脱出しようとすると、鬼頭家の人間たちが立ちはだかる!
『邪魔すんな!!!』
「邪魔してんのはテメェだろ、小娘がッ!!」
一人、二人と殴り倒していくランだが――リーダー格の女は、やはり別格。
『ガッ……!!』
ランは吹き飛ばされ、そのままモモとともに元の部屋へと落ちていく――
変身は解け、ランは床に膝をつく。
「ラン、大丈夫!?」
『ご、ごめんモモちゃん……! あいつ、あいつだけめちゃくちゃ強いんだけど……!!』
「この敷居は、跨がせねぇよ」
「てめぇらは、その流砂に飲み込まれて――
大蛇様の“供物”になるんだよォ!!」
「マジでやばい! ターボババア、なんとかしてよ!!」
「どわあああああ!!」
「流砂に入っちまったあああ!!」
「大蛇様の領域にィィ!!」
――そのとき。
鬼頭家たちの背後から、強烈な一撃が加えられる!
立っていた男たちが次々と吹き飛び、バランスを崩す。
気絶していたはずの高倉とジジの攻撃だった。
落ちるなら恋が良かった
高倉とジジが机やソファを武器に戦い、数人をラン達と同じ流砂の中へと落としていく。
「綾瀬さん、こっちだ!」
「ランちゃん、捕まって!」
「二人ともナイス!助かった!」
『王子様みたいだったよー!』
差し出された手を掴んでホッとしたのも束の間――
流砂に穴が開き、流砂の上にいた全員が、ラン達に引きずられるように高倉とジジも一緒に落ちていった。
『わぁぁぁ!?落ちる〜!!!!』
「ランちゃん、離さないでよ!」
『…うん…!』
痛みを抱えながらも、落ちていくランをしっかり抱きしめる力は緩むことがなかった。
地中――底には、いくつもの家の残骸が散乱している。
高倉とモモは、どこかの家の屋根に落ちて難を逃れた。
『わっ⋯お、おちおちおちちち!落ちる!!』
「モモー!オカルーン!助けてぇ!!」
「二人とも!どこにいるの!?」
「ここーー!!」
「居た!今助ける!!」
どこかの柱にランを片手で抱え捕まっていたジジだったが、モモの超能力で助けようとした瞬間、重力に逆らえず落ちてしまった。
『うわぁぁ!?こ、怖い〜!落ちるの苦手〜!!!
落ちるなら恋がいいよ〜!!』
「それならオレに落ちてよーー!」
「何言ってんだテメェら!大丈夫かー!?」
ラン達のやり取りにツッコミを入れるモモだったが、次の瞬間、目を見開く。
二人が落ちた先は――巨大な生物の体の上だった。
「大蛇様!!よくぞおいでになられましたぁ!!
我々鬼頭家は大蛇様の使徒です!!
此度捧げる供物はあの四人!!我ら鬼頭家とお間違いなきよう!!」
鬼頭家のリーダーが、大蛇と呼ばれる巨大生物に叫びかけていた。
その間に、モモの能力で助け出された二人は安堵の息をつく。
「大蛇様って、この土地の伝説の……!?」
「ありゃ、くらがりだな」
再びリュックから現れたターボババアが言う。
その言葉に食いついたのは高倉とランだった。
「『モンゴリアンデスワームだ!!』」
『ゴビ砂漠に生息すると言われる、″巨大食人ミミズ″のUMA!!』
「でも言われてるサイズは体長1.5mから2mくらいで、こんなに大きいデスワームは聞いたことがありません!!」
『確かに言われてみりゃ、顔周りも違うよねぇ⋯』
「そうですよね。体の模様も見たことないですし⋯」
『もう一回、しっかり調べる必要がありそう!』
「ジブンもです!!」
「それ以上、話を膨らますな!!」
意外にもオカルトマニアだったランと高倉は、謎の握手を交わした。
モンゴリアン・デスワーム襲来
「それよりも、|鬼頭家《あいつら》が二百年もの間生贄を捧げてたのが、ミミズのUMAってこと!?」
「さあ、大蛇様!!あの四人をお召し上がりください!!」
「おい!ふざけんな!クソババア!」
「ゲラッパ!ゲラゲラ!ミソンバ!みそみそ!」
モモの制止もむなしく、鬼頭家たちは謎の言葉を唱えながら謎の踊りを始めた。
「テメェらが崇めてるのは神様でも何でもねぇ、ただの人喰いミミズだ!!」
「鎮めたまえ〜」
その言葉と共に、大蛇――いや、巨大なミミズがラン達の頭上を通り過ぎ、鬼頭家の数人を一瞬で丸呑みにした。
残された者たちは慌てて逃げ出そうとするも、逃げ場などどこにもない。
「食われてるじゃん!!」
「どうすんのこれ!こんなの絶対に倒せないでしょ!!」
『やばい、やばいよ!』
絶体絶命のピンチに陥った四人は、とりあえず家の中に隠れることにした。
「外にいたらマズイ!三人とも早く!あいつに見つかる前に…!」
ジジが先に部屋へ入り、三人も続いた。
だがジジが後ろを振り返ると、三人は突然頭を抑えて倒れこみ、うずくまっていた。
「どうしたの!?大丈夫!?」
ランに駆け寄るジジだったが、手で制されてしまう。
立ち上がったランは部屋の学習机を漁り始めた。
「ランちゃん!どうしたんだよ!!」
すると部屋の下からゴゴゴと不気味な音が響き、ジジは危険を察知。
慌ててランたちを無理やり抱えてその場から離れる。
その瞬間――予想通り、ミミズが床から突き出してきた。
「!」
何かを察したジジは、近くに落ちていたマグカップを拾い、遠くへ投げつけた。
投げた音に反応したかのように、ミミズがすぐさま床から頭を突き出す。
どうやら声ではなく、音でラン達の位置を判断しているらしい。
「ちょっ…やめろ、何やってんだよ…!!」
その時、ランが学習机を漁っていた際に見つけたハサミを持った高倉が、自分の喉に突き刺そうとしていた。
「うわあああ!邪魔すんなあ!死なせてくれぇえ!!」
「何で…!」
必死に止めようとするが、高倉の叫びにジジの脳裏には、かつて見た母と父の自殺未遂の記憶が蘇った。
「何で…何なんだよ、コレは!!」
「死なせて…」
次にモモが割れたガラスの破片を持ち、自分の腹に突き刺そうとする。
「モモ!やめて!!」
しかし、その切っ先はお腹を貫通せず、偶然にもターボババアである招き猫に刺さった。
「なんか刺さったな」
「ネコ、ナイス!!てか大丈夫!?」
「なんじゃこりゃああ!痛てえええ!ボンクラ!そのクソども縛っとけ!」
痛みに声をあげるターボババアだが、大したことはない様子。
念波と狐火
床に伏せていたはずのランの姿はそこになく、代わりに狐の姿へと変わっていた。
「⋯チッ、めんどくせぇことになったぞ、ボンクラァ」
先に高倉の手首を縛っていたジジだったが、ターボババアの言葉に顔を上げると、そこには変身したランの姿があった。
「ラン、ちゃん⋯?」
高倉だって同じように変身していてもおかしくない。そう考えた瞬間、その思考が読まれたのか、ランは小さく笑った。
『地雷踏みよったんや、あのミミズ野郎がよぉ。
ハッ、お前、命拾いしたなぁ…』
「え……?」
狐となったランだったが、その意識はラン本人のものではなかった。
何かが乗り移ったように口を開き、窓の縁に足をかけたかと思うと、ひらりと外へ飛び出していった。
『暴れまわるの、楽しいなぁ……!』
高笑いを残し、重力に従ってランの身体は闇の中へ落ちていく。
ジジは咄嗟に追いかけようとするが、それを誰かが制止した。
「無理だ、やめとけ⋯ありゃ“念波”だな」
「念波……?」
ランは大丈夫だと自分に言い聞かせ、ジジは急いでモモの手首を縛る作業に戻る。
「あのミミズが念波を出して、家にいる人間を“自殺”させようとしてやがる。
そのせいで、あいつの奥底にあるモンに触れたんだろうよ。
精神、乗っ取られてんだ。
今の狐の言うことは信用するな、化かされるぞ……
ま、戻れるかどうかはあの娘の頑張りと、運次第だな」
「ランちゃん……じゃあ、あいつのせいで両親は……? だとしたら、なんでオレは平気なんだよ!?」
「あぁ!? テメェ、気づいてねぇのか──」
その瞬間。
背後から──モモの超能力によって操られたガラスの破片が、ジジと自分に向けて投げつけられていた。
床に伏せていたはずのモモだが、その力は健在だった。
「モモ、やめろ!!」
だが、その叫びは届かない。
振り下ろされた破片が、右目のあたりを切り裂き、左手のひらには鋭く突き刺さった。
「ああっ!!」
悲鳴と同時に床に倒れ、鈍い音が部屋に響く。
その物音に反応したのか──ミミズが窓から顔を覗かせ、口を開いた。
絶望の淵に立たされたジジだったが──
その直後、ミミズの顔が消し飛んだ。
一瞬、見えた狐の尻尾の先。
それを見て、ジジは──「ランちゃんがやったんだ」と悟る。
だが、ミミズはすぐに切断された顔を再生した。
「…!? ランちゃんだ!!」
「バカヤロウ!今は乗っ取られてんだ!
今のうちだ、逃げろ、ボンクラァ!!」
ジジはモモと高倉を両手に抱え、さらにターボババアの首輪部分を噛んで持ち上げ、その場を離脱する。
逃げた先の横には階段があった。
「このままじゃ落ちる!」と判断したジジは、二人をかばうように体をひねり、自分だけが階段に転げ落ちた。
「痛ぇ!!ハァ……ハァ……がんばれ、オレ! がんばれ……!」
だが、気づけば──階段の手すりから身を投げようとする二人がいた。
「オカルン!モモ!やめろ!!」
ジジは全力で、二人の腕を掴みにかかる──。
邪視
そして──またしても、さっきのミミズが三人に向かって口を開けていた。
投身しようとする二人。
どうしようもない状況で、ジジが叫ぶ。
そんな彼の横に──ランが現れた。
『再生すんのが何やっちゅうねん、何回でもぶっ潰したるわ!』
「みんな!!頼むから正気に戻ってくれぇ!!」
勢いをつけて跳ぼうとするランの前に、突如──ブリーフ姿の、ひょろ長い謎の生物が立ちふさがった。
「お前は……!!」
『あれ? 狐が戻ってく……?』
狐の姿のまま、自分の手をじっと見つめるラン。
意識が戻ったことに気づいたジジが、思わず振り向く。
「ランちゃん! 本物だよね!?」
『えっと……偽物なんてのがいたの?』
「うん!本物だ!」
「ジジ!手枷切って!なんか知らんけど正気に戻った!!」
「スンマセンでしたジジさん!!」
「てかこいつ何!? 」
「こいつのおかげで正気に!?」
縄を切ってもらいながら、モモと高倉の視線が目の前の謎の生物へと向けられる。
その時──
そのブリーフ姿の生き物が、グルリとこちらを振り向いた。
「そいつの目を見るんじゃねぇ!!そいつは”邪視”だ!!
ヤツの邪眼は人を狂わせ自殺させる!!」
ターボババアの声に、全員が慌てて目線を逸らす。
「それってあのミミズと同じ念波じゃん!」
「邪視の呪いとミミズの念波が相殺しあってやがる!だから狐娘の精神も今回は簡単に戻る事出来たんだろ」
『この狐さんは私の友達…!悪い狐じゃないの…!これからもずっと…』
「化け狐に良いやつなんて居ねぇよ夢見すぎると痛い目見るぜ」
『⋯っ』
モモたちは、ランの過去も、なぜ狐が憑いているのかも知らない。
問いかけようとしても、ランははぐらかすばかり。
モモから見たランは下を向いていて、表情は見えなかった。
けれど──モモは心に決める。
(後で無理やりでも聞き出す。
それでランが少しでも楽になるなら──)
「でも今回は助かったんだし、それでいいじゃん!
どんな狐でも、ランちゃんに憑いたのには意味があるんでしょ?
それに──次はオレが助けるから!絶対に!!」
俯くランの手を、ジジが力強く握る。
邪視と目を合わせないように、まっすぐランの目だけを見る。
『……っ……! あ、ありがとう……』
茹でダコのように顔を真っ赤にしながらの言葉は、この殺伐とした場にはまるで似つかわしくない。
だが──二人の世界にとっては、そんなこと関係なかった。
「んなとこでイチャつくな!!
今、ミミズが動き止めてる! オカルン!やっちゃって!」
「本気出すぜぇ──!」
変身した高倉が、首元を狙って一気にぶち抜く。
だが──再び、ミミズの口が再生される。
『あ、再生するみたい…!』
「もっと早く言えよ!!」
呪われた視線の果てに、ジジSideあり
モモは、あまりにも遅すぎるランからの情報に怒りをぶつけた。
そして──ミミズの口が再生され、次の瞬間にはランたちに向かって襲いかかってきた。
全員、その場から走って逃げ出す。
音に反応して襲ってくるなら、本来は走らずに隠れるのが最善だ。
だが、今はそんなことを言っていられない。
「てか、オカルンどこまで飛んでった!?」
『……結構飛んでいかなかった…?』
「まじか〜!!」
ランはターボババアが掴まってぶら下がるリュックを抱え、走り出す。
その直後──背後から邪視が、ジジ目がけて飛んできた。
「お前のせいじゃなかったのか!? ウチの親がああなったのは!!」
「そいつの目を見るな!!」
『ジジくん!!』
邪視は、頭から逆さにぶら下がるようにして、ジジの顔を覗き込む。
だがジジは、その目を逸らすことができなかった。
◆ ジジ Side
ジジが、邪視の目を通して見た光景──それはどこかの草原だった。
自然に囲まれ、知らない子どもたちが楽しそうに舞い遊んでいる。
だが──その輪に入れず、ただ一人離れた場所でこちらを見ている男の子がいた。
彼は小さな木造の小屋に閉じ込められていて、そこから出られない。
食事も与えられず、今にも餓死しそうな体。
──昔、火山に住む大蛇は、空腹になると噴火すると信じられていた。
それを鎮めるため、鬼頭家は村の子どもを生け贄として捧げるという答えを選んだ。
ある日、大噴火が起こった。
その結果、罪なき子どもが一人──人柱として捧げられた。
焼かれた体は朽ちていく。
だが、その体は死してなお、くねくねと動いていたという。
霊となったその子は──
気づけば、見知らぬ家族の食卓にいた。
父、母、子ども。
その子どもには、霊となった彼の姿が見えていた。
だが翌日、その家の両親は──首を吊っていた。
残された子どもも、鬼頭家によって家ごと埋められることになった。生け贄として。
椅子に縛られた子どもを救おうとしても、霊の手はその縄をすり抜けてしまう。
何もできない。
無力なまま、罪なき子どもがまた一人奪われていく。
その憎しみと怨みが、いつしか形を取り、
気づけば──その霊は子どもと融合し、“邪視”となった。
◆ ラン Side
『ジジくん……!』
「しっかりしろ!今そんなやつに構ってる場合じゃないんだからな!!」
ランたちの声に、ジジは我に返る。
だが、その瞳は──すでに邪視に取り憑かれかけていた。
背後から覆いかぶさるように張り付く邪視を、モモが超能力で剥がそうとする。
だが、邪視はなかなか離れてくれない。
「やめろモモ!! こいつは違うんだ! 悪いヤツじゃないんだよ!!」
「……え!? そうなの!?」
「コイツはずっと一人で戦ってたんだ!
ずっと……ずっと苦しんでたんだよ!!」
そう叫ぶと、ジジはどこかへ向かって走り出した。
その後を、ランたちも急いで追いかける──。
閉ざされた過去の扉
「ジジ!」
「何これ、下の方、家の造りが古くなってる!」
『先行くよ…!』
螺旋状に続く家の内部は、下に行くほど時代と共に古くなっていた。
急がなければ──と思い、ターボババアをモモに預けて、ランも走って先に行ってしまった。
「待ってろ!今、出してやるからな!」
モモより先に辿り着いたランは、扉を開けようとするジジの手を掴んだ。
「ランちゃん…?」
『その同情……私もするよ……でも、いいんだね?本当に……』
怪異の根源を見てしまい、それを受け入れることがどういう意味なのか。
ランの言いたいことが分かり、ジジは力強く頷いた。
「オレにしかできないと思うから」
その目に嘘はないと感じたランは、小さく息を吐いて手を離した。
そしてジジが扉を開けるのを後ろから見守っていた。
「はぁ……はぁ……どうしちゃったのよ!何なのこの部屋!」
少し遅れて辿り着いたモモが見た光景は、壁一面にお札が貼られた小屋の中。
その中央には、焼かれて皮も残らない子どもの遺体が柱に縛り付けられていた。
「こんなところに……ずっと閉じ込められて……守ってくれてたのかよ……ずっとオレのこと……」
ジジは涙を滲ませて近づこうとしたが、ターボババアの制止の声で足を止めた。
「同情なんかするな!そいつは人間を自殺に追い込む妖怪だ!」
「違う!オレ達と同じだよ!姿は変わってもオレ達と同じ!!」
「同じじゃねぇ!お前は何も分かってねぇ!!」
その瞬間、ミミズの電気のような攻撃がジジたちを襲い、その場でジジはうずくまった。
「いっっ!!」
『今の何!?』
「一瞬、目の前が真っ白になった…!」
気づくと、ミミズの口から出された粘着力のあるドロドロの液体が、床全体に広がっていこうとしていた。
モモもランも、ジジも動けずにいた。
『し、痺れる……』
「とにかくここから出ないと!ジジ!掴まって!ウチが脱出させるから!」
しかし、その呼びかけにジジは反応せず、俯いたまま意識がどこかへ飛んでいったように見えた。
邪視との邂逅、ジジSideあり
◆ジジSide
ジジが飛んだ意識の中、薄暗い空間に倒れている小さな子どもの姿が見えた。力なく床に横たわるその子の隣で、ジジはぽつんと座っている。
「ごめん…。ずっと憎んでたんだ。怖くて、全部お前のせいだと思ってた。でも、こんなに辛かったんだな…」
子どもはか細い声で、まるで消え入りそうに言った。
「……遊びたいんだ。一緒に。」
その言葉に、ジジはいつもの明るい調子で返す。
「オッケー!ヘウィゴー!思いっきり遊ぼうぜ!何して遊ぶ?一生かかっても足りないくらいさ!いくらでも付き合うよ!」
`**"言ったな?"**`
子どもは屈託なく笑い、くねくねと動き出した。その姿がジジにスッと入り込み、やがてジジの体を完全に乗っ取った。
◆ランSide
突然、頭を抱えて叫び声をあげるジジ。しかし周囲の声は届かない。
「ジジ!!」
「バカが!だから言ったろうが!邪視を信用しちゃならねぇってよぉ!!」
ランが叫ぶが、その直後に強い電撃が走り、ランは床に倒れ込む。仰向けに倒れたため、身動きが取れず、変身もできない。
「やばい…食われる!」
『うわぁ…歯がたくさんあって気持ち悪い…』
ミミズが口を大きく開け、じわじわと近づいてくる。
ジジはその白く粘り気のあるドロドロした液体に顔から突っ込んでいるが、動かない。
『ジジくんっ…!!』
迫り来るミミズにもうダメかと思い、目を瞑りながらジジの名前を叫ぶランの声が建物内に響く。
その時、強い衝撃音と風が耳に届いた。
目を開けると、ジジがミミズを殴り、蹴り飛ばしていた。
「やっと手に入れたでのぉ、この体あ…人間は皆殺しじゃあ」
その姿はジジではなく、邪視に憑依された邪視の姿だった。
「ジジ!あんた、それ邪視の力!?」
「超能力を構えろ!やられるぞ!!」
「ラン!!」
ターボババアの言葉に即座に反応し、ランと共に超能力で自分たちの体を覆う。
「貴様、妙な力を使っておるなぁ」
言われた通り邪視からの蹴りが届いたが、ギリギリ超能力で防ぎ、大きな怪我は避けられたものの、その強さと衝撃は凄まじい。
「このクソだらぁ!カスが調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
「貴様、妖怪じゃのぉ。人間の奴隷になったのか?」
「口のきき方に気をつけろや。テメェはボキャボキャ確定だぜ」
「ジジ、正気に戻って!」
「誰に話しかけとるんじゃ。この器は我のものじゃ。これから人間にとっての地獄を見せてやるからのお」
邪視のやり取りを見ていたランは、邪視の背後から近づくミミズに気付く。
『またビリビリくる…!』