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目次
電波少女A
「朝香さん、落としたよ」
帰り際、朝香アキの開けっ放しのリュックサックのポケットから落ちた小さなノートに手を伸ばす。
逆さで開いた状態に落ちたそれの真ん中に指を差し込み、反転させて閉じようとした。
「ひっ、!」
私のその小さな悲鳴に、クラスメイトが近寄ってくる。
「朝香、さん?これ…何?」
聞くと、アキは躊躇わずに答えた。
「何って、神からのお告げだよ?アキね、神様の声が頭に届くんだ。それを全部、書き留めてるの。名前と、日付と、その日何が起こるか」
アキの不思議な言葉にドンドンと人が寄ってくる。
「げ、俺の日、試合の前日じゃねぇかよ。しかも骨折するとか。ってか、このBって何?」
サッカー部のエース・春川亘がノートを見てアキに聞く。
「クラスの中心に近くなるほど、Aに近くなるんだって。ちなみに一番下はCだよ」
「えー、俺中途半端。Aに近いとなんか良いことでもあんの?」
アキの話を聞くうちに、怪談を聞いてる気分にでもなった春川が、次々と質問する。
「えっと、それはね〜」
「やめろよ」
クラスの中心人物・佐藤優斗がアキの話を遮った。
「そんなもん気になるなんてガキかよ。おい亘、今日部活無いから、俺ん家来るんだろ?早く行こうぜ」
「おう!あ、朝香後ででいいから、それ全部、グループに送っといてくれよ!」
まだ少し気になる部分があったのか、それだけ言い残して優斗についていった。
「うん、わかったー!」
アキがそう言うと、興味を示し残っていたであろうクラスメイトが続々と教室を出ていく。
数週間したある日、いつもは朝一番に学校に来ている春川が昼休みが始まってもまだ学校に来ない。
先生に聞いても、連絡が来てないとのこと。
こんなこと今までになく、仲良しの友達と集まり、ご飯を食べていても、結局皆で春川の話に。
「春川くん、明日部活の試合って言ってたよね。大丈夫かな、」
思わずつぶやくと、それを聞いた誰かが言った。
「朝香のノートの日付、今日じゃなかったか」
その言葉を期に、あの日教室に残っていた人が次々とグループメールを確認しだす。
何が何やら分からぬ人まで、流れにつられトークを遡る。
「えっ、!」
クラスで目立たず、普段は大きな声も出さない福原唯が驚きが隠せない声を出した。
教室が静まり返り、皆が福原に注目すると、彼女はそっと口を開いた。
「私、5日前これの通りのことが起きてる」
教室が少しざわつく。
「私、5日前、転んで膝縫ったの。ここに全く同じこと書いてる…」
そう言いながら福原はスカートを少し上げる。そこには、少し大きめのガーゼが布テープによって固定されていた。
皆がアキの言う神のお告げに信憑性を感じ始めた頃、担任教師が教室に入ってきた。
「皆が気になっていた春川のことだが、神社の階段から落ちて、両手首と足首骨折したらしい。病院で色々手続きをしていたから今まで連絡できていなかったと。今日は取り敢えず入院するらしい。それ言いに来ただけだから。お前たちも気をつけろよー」
教師の言葉を聞いた途端、クラス中は阿鼻叫喚。中には幼い子供のように声を上げて泣く子まで居た。
「次!次誰だよ!」
その言葉を皮切りに、再び皆がスマホに目を落とす。
必死にスクロールし、使い日付を探していると、明日の日付が書かれていた。その右側には、死亡、と書かれている。私は、恐る恐る名前が書かれている、左側に目を向けた。
「…佐藤優斗。優斗が、明日…死ぬ」
小さな声だったが、スマホに集中し、声という声がなかったこの教室の中では、随分とよく響いた。
「…俺かよ。…なんで、なんで俺だけ死ぬんだよ!亘も福原も死んでねぇじゃねぇか!なんでだよ!!」
声を荒げる優斗に対して、アキはいつも通りの声色で返す。
「だって、評価Aだもん。評価Aに近づくほど、不幸は大きくなっていくんだよ?」
「…そんなこと聞いてねぇよ。評価がAに近いほうがクラスの中心なんだろ?Aのヤツ殺してCのヤツは転けて膝縫うだけって、お前の中の神様ってやつはどんだけ陰キャなんだよ!」
「春川くんが聞いたとき、遮ったのは佐藤くんじゃん。ガキって。そりゃ聞いてないよね。きっと、神様は、ずーっと1人だから皆の中心にいる人が羨ましかったんだよ」
「…なぁ、朝香。俺が助かる方法ねぇのか?お前なら何とか出来んだろ?俺はどうすれば良いんだ」
アキの肩を掴み必死に懇願する優斗の手は、震えていた。
「…わかった。神様に聞いてみるね。あ、皆静かにしてて。声聞こえなかったらダメだから」
アキは静寂に包まれた教室で、ギュッと目を瞑った。
1分程経っただろうか。アキがそっと目を開いた。
「聞こえたよ。『お前は女遊びのし過ぎで刺される。反省して滝にでも打たれてこい。そうしたら、命ぐらいは許してやろう』だって」
「…滝?わかったよ。打たれてくるよ。今日の夜行けば良いのか?」
「うん、今日の夜。頑張ってねー!」
キーンコーンカーンコーン
一段落ついたところで予鈴が鳴り、皆は自分の席へと向かう。
例に漏れず私も自分の席へ座ると、スマホのメッセージアプリを開き、用件を打つ。
宛先は朝香アキ。
『山の斜面から落とすぐらいはしなさいよ』
『はい、愛美さん』
電波少女A
電波少女
妄想、妄想癖のある少女。他者とのコミュニケーションをとらない少女。
頭の中に何者かからの声、思考、指示、妨害が電波で届く少女のこと。
リアル
ありのまま。現実そのまま。
評価
ものの良し悪しなどの値打ちを定めること。
すっげえ駄作ですわね。
まぁ、初日ですし、1日で考えたししょうがないでしょう。これから上手くなってけば良いしね!
あたしが普段書くような題材とは全然違くて、大変だったんですけど、楽しかったです!
1000文字ぐらいの小説書こうとしたら2000字行きました笑
小説に対してのアドバイス、コメントくれると喜びます!
では、明日会えたら合いましょう!
月夜と少女
私はいつも、洗濯機の中で眠る。
「ねぇ、結衣ちゃん。8月に近くの大きい公園でお祭りがあるんだけど、一緒に行かない?」
学校の終業式の帰り道。一緒に帰っていた咲月に誘われた。
「受験勉強大丈夫なの?良いトコ行くんでしょ?」
結衣たちは中学3年生で、高校受験を間近に迎えているのだ。
「まあまあ、たまには息抜きも必要でしょ?いいじゃん。1回ぐらいさ。…ダメ、?」
頭が良く、自分が美少女の自覚がある咲月は、どうすれば自分を可愛く見せることが出来るか、を熟知している。
「…行きたいのはやまやまなんだけどさ、私あんまり夜が得意じゃないっていうか…」
私の含みがある言い方から咲月は何やら察してくれたらしい。
「そっか。じゃあ、他の子誘ってみるよ」
申し訳ない、という気持ちも多いが仕方がない。
だって、私の病気を理解してくれる人なんて居ないんだから。
「結依、夏祭りの誘い夜が苦手って断ったってホント?」
夏休みに入って1週間ほど経った頃。母親の亜弥が聞いてきた。
「ホントだけど。誰から聞いたの?」
「誰って、村岡さんだけど。アンタ優香ちゃんに、断ったんじゃないの?」
咲月に断っていたとき、誰かに聞かれていたのか、咲月が他の子に言ったのか知らないが、広まっているというのは事実だ。
「なんで断ったのよ!さ。只でさえ友達少ないって言うのに。仲良くしてくれる子ぐらい大声にしなさい」
「…行きたくても行けないんだってば」
「月の光浴びると痛いってやつ?アンタ、ナイーブなのよ。全部気にしすぎ」
「…違うよ。この世界には不思議なアレルギー位あるんだよ、」
「あったとしても、アンタは勘違いよ。人と違うものが欲しいんでしょ?厨二病みたいな」
「…もうそれでいいよ」
「あ、そう。だったら、村岡さんに連絡しとくわね。結依も行きますって。あと、みんな浴衣で行くみたい。アンタのも出しとくから」
行くだけなら服装でまだ我慢出来たかも知れないのに。浴衣だなんて。
数日は人に見せれない醜い身体になってしまう。
月光アレルギー。その名を聞いたことがあるだろうか。
月光…正確に言うと、月に反射した太陽の光。
月面に反射することで、新たな物質が加わり、身体に合わない人が出ているのではないか、そう言われているが詳しくはわからない。
そんな未知のアレルギーを患う1人が私、足立結依だ。
結依の両親は所謂自然派、というもので、電球のブルーライトですら、身体に悪いと外の光と四六時中カーテンが開き、足りなければ蝋燭を灯すような過激派な親に、月光アレルギーなど通じない。
自分の身体は自分で守る。小学生の頃、自分でそう決めた。
その頃から、パジャマは春夏秋冬問わず、全身黒スウェット。フードにマスク。靴下と完全防備。
最初の頃はそれで十分良かったが、地球温暖化に連れて、その格好では寝苦しくなってきたため、家の中で、涼しい格好で過ごせる場所を探すようになった。
そこが洗面所。しばらくは洗濯機にもたれ掛かり眠っていたが、風呂の窓からの光が少し入っていたことに気づき、そこからは、洗濯機の中で眠っている。
亜弥に着付けられた浴衣。折角の浴衣だし、とまとめられた髪。全てが嫌になる。
ピンポーン
「結依ちゃん居ますかー?」
咲月たちが迎えに来る。
「行こうか」
玄関を出て、言う。
肌を刺すような刺激を感じる。
「…結依ちゃん、大丈夫?」
あの時何かを察したであろう咲月が、心配そうに聞いてくる。
「…うん。大丈夫だから」
そう言っていないと自分が保てないような気がした。
痛い、痛い、痛い。
あとこの感覚が、数時間。
真夏の地獄の始まりだ。
毎日投稿の小説、暗い話が多いですね。
なんでだろう。
単語がそんな感じなのかな。きっとそうだ。
人に気づかれない、理解してもらえない自分のこと。
について書いてみました。
どうだったでしょうか。
コメント、アドバイスくれると嬉しいです!
要らない
「…お腹、空いたなぁ」
レベッカは呟いた。
不慮の事故により、片腕を亡くした彼女は、小刀1つとともにこの島に捨てられてしまった。
どうせ誰かここに来るだろう。片腕がない状態で1人で狩りなんて、とてもじゃないが出来ない。そう思い動かなかった過去の自分を殴りたくなる。
今、この島は冬籠りの時期らしく、ここに来てから人1人も見ていない。
雪にドンドン体力を奪われ、動けない。
いっそのこと、小刀で喉元をついてしまおう。そう思った時、
「ちょっと!こんな時期に何してるの!死んじゃう!」
女に拾われた。
「なんでこんなところに居たの?この時期に居たら死んじゃうよ。観光客?な訳ないか」
この島何もないしね、と笑う彼女になら、話してしまっても良いのではないかと思ってしまう。
「…捨てられました。腕がなくなって、使えないから、って」
そこから事情を説明すると、女は机をバンッ!と叩き立ち上がった。
「はぁ!?何それ、信じらん無いんだけど!そもそも子供を使うって何?本っ当にムカつく!」
女が私に近づいてくる。さっきまでの鬼のような形相は消え去り、涙を流していた。
「ねぇ、私と一緒に暮らさない?私は君を使う、なんてこと絶対しない。約束する。だから、どうかな?」
考えるより先に言葉が出ていた。
「…お姉さんが、良いなら。よろしくお願いします」
そう言うと、女は温かいココアを入れてくれた。
2人の同居生活の幕が上がった瞬間だった。
彼女はエマと言い、年齢は32。
「20代前半だと思ってた」
そう言うと、えぇ!そんな若く見える?じゃあ、美人姉妹に見えるかな?と笑った。
冬籠りの間、おそらくエマが一人で食べようとしていた分、を全て半分に分けてくれた。切ったことによりサイズの違いが生まれたものは全て、大きい方を与えてくれた。
一度、申し訳ない。小さい方を分けてくれるだけ十分だ。そう伝えたことがあったが、
「大人になったら我慢なんていくらでも出来るんだから、子供のうちはそんなことににしなくて良いの!」
と頭を撫でられた。
冬籠りの時期が過ぎると、エマはレベッカを連れて船に乗り、技師のもとを訪ね、レベッカに義手を贈った。
その後は街で教本を少なくないお金を払ってレベッカへと贈った。
レベッカは12歳にしては、得手不得手の差が激しく、エマはそこを少し心配していた。
レベッカは、折角買ってくれたのだからと、毎日読み続け、数ヶ月も経つと、同年代から頭一つ抜けた知識票になっていた。
ここでの生活も半年が過ぎ、季節が夏に変わろうとしていた頃、島民約50人のこの小さな島で、大きな事件が起きてしまった。
人が死んだのだ。小さな兄妹だった。
あの兄妹がこの世から去り、10年経っただろうか。
あれから何人も人が殺された。
兄妹の次も子供、その次も。
その時、この島から家族と年頃の女は殆ど居なくなった。
次の標的にされたのは"老害"と島民に忌み嫌われていた老人たちだった。
子供たちは、一見眠っているような、安らかな表情だったが、彼らは明らかに恐怖を抱いていた。
最後まで残っていたあの男は、気づくと島を出ていた。10年同じ島で暮らしていたが、最後まで良くわからなかった。
この島も、気づけば2人になっていた。
「やっぱりそうだったんだね。エマさん」
レベッカが呟いた。不思議なことにその言葉には、悲しみも恐怖も入っていなかった。
「そうよ。私は一応暗殺者なの。ここに居たのは潜入捜査。あとはアンタだけ。とっとと死んで頂戴」
私に銃を向けるエマの姿は、初めて会った頃から変わらず美しく、42歳とは到底思えない。
「…うん、良いよ。撃って」
思いの外すんなりと受け入れるレベッカにエマは少し動揺するも、銃を撃つ体勢に入る。
あとほんの少し、指に力を込めれば弾が飛ぶ。そんな時、レベッカがもう一度口を開いた。
「今までありがとう。お母さん」
最初の頃はあんなに下手だった笑顔も、今はこんなに自然に出せるようになったよ、そう言うように笑うレベッカを見て、エマは泣き崩れた。
「やだよ…。私、レベッカのこと殺せない。一緒に逃げよ?」
「…ダメだよ、お母さん。もう、自由になって良いんだよ?だから、ほら」
エマの手の上から銃を握り、自分の方へと向ける。
「…ごめん。レベッカ。ごめん」
そう言いながらエマは引き金を引いた。
それと同時に心臓のあたりに違和感が。
「…え、?」
初めて会った日、レベッカが持っていた小刀が刺さっていた。
この日、島から人間が消えた。
「エマは人が良すぎる。悪いところが無い子供たちを殺すことが出来ない。そんな奴、ここには要らない。片腕のお前もだ。時間はいくらかかっても良い。命果ててこい」
「…ラジャー」
そう言えば、初めて異国の話書きました。
ちょっと遅れちったんですけど、まぁ、投稿できただけ良しとしようではないか!
ごめん。
民族紛争の絶えないこの街。
殺らねば殺られる。
今日も今日とて西の方の発砲音で目を覚ます。
少しの準備運動をした後、大人が三人入ればいいような小屋を出ると、目の前に幼女が座っていた。
この国は俺たちが生まれるずっと前から横の国と戦っている。
戦争が始まった理由なんて誰も知らない。先人が戦っていて、終わらなかったからと戦っているだけ。
名前の残らない人生で終わる1兵士。
そんなつまらない人生のままだと思っていた。
「…お前、一人か?」
自分の小屋の前で、一人座っていたまだ五つほどの幼女に聞く。
「ねんねしてたらここ居たの!ママもパパも居なくなっちゃった…」
どうやらコイツは捨てられたようだ。捨て方まで同じで反吐が出る。
言葉にしていくうちに頭の中が整理されたのか、ポロポロと涙がこぼれた。
「うわぁぁあん!!」
声を上げて泣く幼女に敵軍が気づかないように、取り敢えず少しでも音が小さくなれば、と小屋へ招き入れる。
しばらくすると、落ち着いたようで、話しかけてみることにした。
「お前、名前は?」
「レイだよ!ママがレノンでパパがイチなの!お兄ちゃんは?」
ニコニコして答える様子を見て、聞いておいてなんだが、少し不安になった。
「俺はエル」
「えりゅ!えりゅのママとパパの名前は?」
例の年齢ではまだ、「ル」の発音が難しいらしい。そんな姿を可愛いらしいと思うが、それと同時に、そんな年齢で捨てられたのか、と気の毒に思う。
「ママとパパ、か。俺には居ねぇんだ」
そう言うと、レイはハッとしたようで声を潜め聞く。
「死んじゃったの?」
誰しも親は居る、なんて当たり前のことを当たり前に言レイを少し羨ましく感じる。
「いや、なんていうかな。コウノドリがこの世界に落としていったけど、キャッチしてくれる人が居なかったって言う感じだな」
頭にハテナが浮かんでいそうな顔。
学がない割には頑張ったつもりだったが、レイには伝わらなかったらしい。
「えりゅ、良くわかんなーい!」
「…まぁ、いつかわかるよ。きっとお前がこういう日だって来る」
頭を撫でると、銃を持ち立ち上がる。
「レイ、俺、ちょっくら出かけてくっから。いいコで待っと…かなくてもいいか」
しゃがみ目線を合わせて再び口を開いた。
「ここから逃げるんだったら、東…右ってわかるか?右に行けよ。つうか、絶対そっち言ったほうがいいぞ。こんなとこ居るより。じゃあな」
これ以上一緒にいれば、情が移ってしまいそうで少し怖かった。
俺が死ぬ可能性だってある。だから、これで良いんだ。
戦場につくと、とっくに昼軍と夜軍は入れ替わっていた。
エルもそこに加わり、銃弾を放っていく。
パァンパァン、という音で鼓膜が破れそうになる。
誰が何のために初めたのか、いつ終わるのかもわからない。
決まった時間に交代し、まるで、東の方に住んでる金持ちの子供が通う、学校とやらではないか。
誰が何のために初めたのか、いつ終わるかも分からない。意味のない戦争。
でも、この時間が人生において大切な時間なことも事実。
この戦いのこと、自分の死に際、幼少期のトラウマ。いっつもグルグル考えている答えのない問いを少しの時間かもしれないが、忘れられる。
どれぐらい経ったのだろうか。そして、今日だけでどれほどの手を殺めてしまったのか。
夜軍と交代し、少し遠くにある小屋へと帰る。
小屋の扉を開くと、出た時にはついていた小さな豆電球が消えていた。
それを付ける気にもなれず、暗闇の中寝転がる。
無事に東へ行けたのだろうか。戦場からの帰り道、周りを見ていたが、レイらしき人物は見当たらなかった。
だからきっと、大丈夫だ…
咄嗟の出来事に思考停止する。
いきなり腹に物が落ちてきた。20キロ程だろうか。必死に手を伸ばし、ランタンを付ける。
「ばぁ!」
レイが俺の上に乗っていた。
「ふふっ、大成功!」
腹の上で喜びを表すレイに思わず、痛い、痛い!と叫ぶ。
するとレイはそこから降り、電気を付けるとエルの周りを歩きながら話す。
「お外見ててね、えりゅ、見つけたから、驚かそ!って。それでね、電気消してね、隠れてたんですよぉ。スゴイでしょ!レイ、スゴイでしょ!」
「おぉ、凄い凄い」
起き上がり、レイの頭を撫でた後、正面に座らせる。
「レイ、お前に東行けって言ったろ?なんで行かなかったんだよ」
「…だって、えりゅと離れ離れヤだもん」
「ここに居たら死ぬかも知んねぇんだぞ!分かってんのか!」
思わずカッとなり声を荒げてしまう。
それでも、自分のためなんかにこんな場所に残ってほしくなかった。
「…わかってるよ。でもえりゅ、強いんでしょ?今日、銃バンバン撃っててカッコよかった!あ、レイにも教えてよ!レイが強くなればここに居ても良いでしょ?」
レイの言葉に引っかかる。
「お前、ついてきてたのか?」
聞くと、レイは「あ!」と慌てて口を塞ぐ。 「ごめんなさい。でも、一人怖かったんだもん」
その言葉を聞いてハッとする。
コイツ、親に捨てられたばっかだった、と。
「…まぁ、ケガが無いなら良いよ。でも、次は絶対来るなよ?」
少し声を低くして、威圧するように言うと、刻々と頷いた。
怖がらせたままなのは悪い、とレイを抱きしめ言った。
「レイ、ホントに良いのか?ここに居て」
「うん!えりゅ、優しいもん!一緒いたい!」
「…おぅ。わかった。任せとけ、俺が強くしてやるよ!」
ごめん。お前を突き放す強さがなくて。
ごめん。お前の人生を歪めて。
1000字で書こうとしてるのに、めちゃくちゃ書いちゃうんですよね…笑
子供に弱い大人は好きですね。
この前の短編もそうですけど。
悲恋コンサル氷浦さん
一昨日とかの日替わりですね。
めちゃ遅くなりました。
悲恋コンサルタント。それは失恋をした人、叶わぬ恋をしている人から話を聞き、アドバイスをする。いわば恋愛のプロフェッショナル。
今日はそんな恋愛コンサルの氷浦蓮の生活をご紹介します。
朝は七時起床。
私の朝は少し早め。洗顔をし、手ぐしで神を少し整え、軽くストレッチ。
朝食はバナナ。私はバナナが大好物でして。暇さえあればバナナと名のつくものを食べております。
九時には家を出ます。
私は歩く、という行為が好きでして。電車に乗れば数十分で着くところを一時間かけ、今の季節ですと蝉の声などを感じるのです。そのためにこの立地に店を開いたのです。お気に入りのコースで、気分を上げるために。
最近は家の近くのキッチンカーでバナナスムージーを買うことにもハマっています。
十時に出社。
出社すると、制服に着替えます。
白いシャツに黒のスラックスとベスト。この制服は新たな門出を祝うため、数年前にオーダーメイドで作ったものです。
次にすることは本日の予定の確認。十一時、十三時、十五時に予約があります。本日も予約がいっぱい、有り難い限りです。
十一時鈴谷様ご来店。
特別に、仕事シーンを公開しようと思います。今回だけですからね。
本日一人目のお客様、鈴谷明(二十一)様がご来店されました。
紅茶とバナナケーキをお出しし、早速話を聞かせていただきます。
「…俺ぇ、昨日彼女に振られたんすよ。突然ですよ!1週間ぶりにデートした帰りに。初彼女だし、嬉しくてぇ、ネットで見たのとか試してみたんですけどぉ、鬱陶しいって!」
半泣きになりながら言う鈴谷様。こういう時にこそ私の出番ですね。
「鈴谷様、お辛いとは思いますが、お相手の性格と、インターネットで得たという情報、教えていただけますか」
冷静な私の声を聞き、少し落ち着いたようで、鈴谷様は話し始めた。
「彼女は、俺と同い年で、ゼミで一緒で気が合って。そしたら段々好きになって、告白したらオッケーしてくれて。葵は物静かで本を読むのが好きで、友だちといるのはあんま見たこと無いですね。でも、見る時はいつも同じ人とですね。二人」
「読書好きで、友好関係は狭く深く、という感じですかね」
話を聞きながらメモを取っていく。
「ネットで見たのは、これです」
こちらに向けてきたスマホを覗く。
『女のコにすると喜ばれることを三つ紹介します!一つ目は〜』
長かったので要約すると、
①おはよう、おやすみから、何か行動を起こすたび連絡。
②デートの帰りは必ず家まで送る。
③仕事学校のない日は全てデート。
「コメント見てください。みんな『カッコいい!』『そんな彼氏欲しー!』って」
スクロールしコメントを見せる鈴谷様に思わずため息を一つついてしまう。
「鈴谷様、一つ質問よろしいでしょうか」
「…はい?どうぞ」
「ありがとうございます。では、お聞きします。お相手様はそのような動画サイトにコメントをするようなタイプですか」
「…いえ。でも、無言は肯定っていうじゃないですか!サイトのこの言葉は、女のコ全員の思いじゃないんですか!」
どうしても自分が見つけたネットの情報を信じたいらしい鈴谷様。
いい加減気づきませんかね。
「鈴谷様、貴方は男性だから、と巨乳が好き、オフショルが好き、ミニスカートが好き。それが男性の総意だと思われてもよろしいのですか」
「…いや、俺ワイドパンツとか履いてる子のほうが好きですし…」
「でしょう。それは女性も同じなのです。女性だから、これをして欲しい、あれをして欲しい、なんてそんな物無いのです。おそらくコメントしている女性は悪い言い方ですが夢を見がちな方です。鈴谷様は、お相手様がそのようなタイプに見えますでしょうか」
「…いえ」
ちゃんと、否定してくれて良かった。そうじゃないと話が進まないところでした。
「元々友人だった鈴谷様の告白をオーケーしたということは、鈴谷様の素を気に入っていたからではありませんか」
「そう、ですかね」
「えぇ、きっとそうですよ。最後にもう一度、連絡してみてはどうですか」
「…はい、そうします。氷浦さん、話聞いてくれてありがとうございました」
十二時昼食
昼食廃棄にコンビニで買ったサンドイッチとバナナケースに入れたバナナをいただきます。
この時間は、個人営業、ということを最大限に活用して、プロジェクターでドラマを見ます。
毎日浴びるように恋愛話を聞くので、気分転換に事件ものをみていることが多いですかね。
時々不倫が理由のものもありますが。
十三時香月様ご来店。
皆さん、ここからも全て見せるとお思いでしたか。話を聞いていなかったみたいですね。鈴谷様の際に「今回だけ」と申しましたよね。
ここからの二名は冒頭のみですが、楽しんでくださると幸いです。
「私、彼氏を振っちゃったんです。『鬱陶しい』と。でと、彼のこと好きで、でも付き合ってからどこか変わってしまって…」
是非復縁してほしいものです。
似たものカップルは長続きすると言いますから。
十五時山田様ご来店。
「…俺、好きな人が居て。昨日は振られたってグループメールで暴れ回ってたんですけど、ついさっき復縁したって。前までは絶対無理だってあきらめられてたんすけど、一瞬光が見えちゃったっていうか。諦め方を教えてほしいんです」
ここでは、同性との恋愛の相談も承っております。
では、本日はこのあたりで。
私の生活はいかがだったでしょうか。
またいつか、会えることを楽しみにしております。
最初全然気づかなかったんですけど、ラブホの上野さんっぽくなりましたね。
上野さん好きが出てしまった…!
この小説は日替わりお題なんですけど、鈴谷の彼女が振った理由、私が常々思っていることでして。
私は一人が好きなタイプの人間なので、あまり得意ではなくって。
皆さんの感想もお聞きしたいです!