登場人物
名前 性別 年齢
諦松紬葵(ていまつき) 女子 22歳
神宮羽隆(かみやはた) 男子 27歳
続きを読む
閲覧設定
名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
1 /
目次
余命1.2秒の君に。0
君はずっと笑っていた。天使のように。
その笑顔が絶えることなく、これからも一緒に暮らす―はずだった。
君という―魔法使いに会うまでは。
「生後何か月かの子供がいるらしいよ。」
「結婚してるってことですか?」
「うん、そういうことじゃない?」
「そう、なんですね。」
あぁ、終わってしまった。私の初恋がここで、今。
ずっと、片思いだったってわけか。私なりに頑張ったつもりだったのにな。
目の奥に熱いものがこみ上げてくる。それを必死に抑えるのが精一杯だった。
こんにちは!颯凪榎です!
この度は余命1.2秒の君に。0 を読んでいただき、ありがとうございます!
これからも頑張って書いていくのでよろしくお願いします!
余命1.2秒の君に。Ⅰ
あなたは・・・誰?
雨。今日は雨だ。
ベッドに寝転がったままカーテンを開けて外を見ると激しい雨が地面を叩きつけていた。
昨日の天気予報では「9月でもまだまだ日が照る蒸し暑い日が続くでしょう」なーんて言ってたんだけどな。見事に外れたか。
デーブルに投げ出されたような感じで置かれた自分の手帳に、シャーペンで適当な傘の絵を描く。1日の記録や出来事、天気などを適当に手帳に記していくのが、私の日課になっていた。
「なんか、テンション上がらないな。」
そう呟き、私は出勤のため家を出た。傘立てに刺さっている一本の《《黒い傘》》を手に取り、歩き出す。履いているヒールのコツコツという高い音が耳を刺激する。
3階分の階段を下り終わり、湿気でスーツの内側にジワリと熱気が伝わった。
手に持っていた黒い傘のボタンをはずし、バサッと傘を開く。傘を自分の真上に持ってくると同時に歩き出した。
「きゃっ」
歩き出した瞬間に誰かにぶつかった。咄嗟に口から悲鳴が零れ落ちる。バランスを崩した身体をなんとか元の体制に戻し、ぶつかってしまった人に謝ろうとした時だった。
「お前、大丈夫?」
「へ」
私の耳に低い男性の声が聞こえた。そしてその声に、怒りが混じっているのもはっきりと分かった。
「急にぶつかりやがって。俺のスーツ濡れただろうが。」
「ごっ、ごめんなさっ」
その人の威圧感に負けて上擦った声が出る。
「お前、ちゃんと前見ろよなぁ。ぶつかった相手が俺だったからまだいいけど、高齢者だったらどうすんの。考えて行動しないと。」
「へ、あ、はい。」
久しぶりにこんなに怒られて、小学生時代の記憶がよみがえってきた。
そう言うと、その人は私の前から姿を消した。
誰だったんだろう。あの人。
カフェで一息つきながら私はさっきの出来事について頭を捻らせていた。
カフェのテーブルに肘をついて頭をフル回転させる。その人を突き止めるために、私が覚えている証拠をすべて出してみる。
その人は声からして男性だった。それは確かだ。
今、記憶をよみがえらせているとあの時こうしておけばよかった、と後悔が押し寄せてくる。顔を見ておけばよかったなぁ、なんて後悔していると、
「お待たせしました。」
という、カフェの定員さんであろう声が聞こえた。なんだか、馴染みのある声だった。
どこかで、聞いたことのあるような、もう一度、聞きたいと志願していたような声が。
肘をテーブルから離し、その人の方に勢い良く振り返る。横目にハーフアップにして結んでいた髪の毛がちらっと写り、その人の顔が見える。
「え」
私が勢いよく振り返ったこともあって、その人はびっくりしたようだった。
「すっ、すみません。」
そう言って頼んでいたコーヒーを受け取る。
知らない、人だった。知人でも何でもない人だ。
いや、でも本当に聞いたことのある声だった。絶対に。
これだけははっきりと確信が付く。
それは、奇妙な確信だった。
本当に、誰なんだろう。
テーブルにずっとついていた肘がそろそろ痛くなってきたので、私はそこに置かれたコーヒーカップに手を伸ばす。
随分と長いこと考え事をしていたのか、コーヒーカップはひんやりとしていた。
もっと温かいうちに飲んでおけばよかったなぁー、なんて後悔しながら冷えたガラス製のコーヒーカップに口をつける。
中に入っているコーヒーのほろ苦さが口の中に広がり、体中に染み渡る。
そしてそれは、私の心にも染みていった。
余命1.2秒の君に。Ⅰ を読んでくれてありがとうございます!
これからも頑張って書いていくのでよろしくお願いします!