名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
1 /
目次
無茶苦茶な遊園地
理屈を気にする人は読まないほうがよろしいかと…
今日は、彼氏と遊園地にお出かけだ。
開園したばかりの遊園地だが、とても楽しめると評判が早速ついている遊園地である。
「楽しみだね、|直哉《なおや》」
「だな、雫」
まず向かったのは 、ジェットコースター。
しかし、私たちはそれを見て呆然とした。これ、フリーウォールじゃないか?
とりあえず、入り口に向かった。開園後すぐに来たおかげか、15分で入れた。
「結構待ち時間短かったな。」
「ね、私たち、運がいいのかも。これだと他のアトラクションにもたくさん乗れるしね。」
そして、ジェットコースターという名のフリーウォールに載ろうとしたのだが、、、
私たちがのせられたのは、コーヒーカップだった。
…どういうこと?
しかも、このコーヒーカップ、二人で回したけど、回しても回しても速くならない。そればかりか遅くなる始末である。反対回しでもそれは一緒だった。
「おかしいだろ、ここ。」
「こんな無茶って許されるのかな? めっちゃ嘘もあるし」
「次何に乗る?」
「じゃあコーヒーカップに並んでみない?」
「おう、それがいいと俺も思ってた。」
そして、コーヒーカップの列に並んでみた。
しかし、私たちが通されたのは…またコーヒーカップ?
待ち時間が短いのはいいけど、おかしいでしょ?
だか、今回はちゃんと速く回るコーヒーカップに乗りたい。
そう思って、少ししか回さないことにした。
ビュンビュン
…え? 一瞬我が目を疑った。これ、新幹線といっても通じるくらいのスピード感なんだけど…。
終わったころには疲れてた。目も回ってしまった。
「次どうする?」
「疲れたから何か食べたい。」
「じゃ、店に行くか。」
そう行って向かったのはカフェみたいな店。
さすがにここで噓をつくことはないだろうと思って、安心して入った。
中は普通の店っぽい。よかった、やっとまともなものにたどり着けた。
注文をしたら奥に通された。
なんだろう?と思っていると、普通に机といすがあっただけだった。ただし、机は1つに椅子は4つ。
なんだ…と思い何かあることに期待してた自分に気づいた。
うん、確かにこれは楽しいわ。予想外がたくさん詰まっている。
証拠に、彼も少し残念そうに感じていた。
その時、
ガタン。
と、変な音が聞こえた。
「え?何?」
「わかんねえ。うわあ!」
「ぎゃあ!」
彼が気付いたときに私もちょうど気付いた。
この机、4分割されている。
机にはあしが多くついていたおかげか、倒れることにはなっていない。
そして…
机といすが、一セットごとに動き出した。もちろん私が座っている椅子も動き、私も動く。
そして、反対側に座っていた彼は真逆の方向に動き出した。
机の上に置かれていた皿も、分かれ目にそって割れていた。
…どういう原理?
分からない。
そして、机と、私が座っている椅子はある部屋に入った。
ガクン。
という音がした。
そして、けだるさを感じた。
何が起こっているんだろう。というかあの建物そこまで大きく見えなかったし一階建てだったし、こんな広くなかったよね?
また、ガクン、と音がした。
部屋のドアが開いて、目の前に直哉がいた。
「あれ? なんでいるの?」
「そっちこそなんでいるんだ?」
どうやら私たちは左右対称に進んだみたいだ。残りの二つの机といすも戻って来ている。
「なぁ、この机、割れ目見えなくないか?」
「え?あ、本当だ…しかも皿も割れた感じがない。」
少し肌寒く感じた。
**パーンパパパパーン!**
ファンファーレの音が聞こえた。大音量で。
「え、何?」
「これ、ファンファーレだよな?」
「たぶん」
「こういうのって、何かが始まる時とかめでたいときに使われるよな」
「うん、そんなイメージがある。」
そんな風にしゃべっていると、
「本日はこのテーマパークをご利用いただき、誠にありがとうございます。」
ブフッ
「今、テーマパークって言った?」
「うん。確かにそう言っていた。」
二人とも思わず笑ってしまった。
「わたくしども、従業員一同、心より感謝いたします。さて、先ほど喫茶店をお使いになられました、2名様には、ただいまよりフリーウォールに乗ることができます。10秒後に、扉が開きますので、しばしお待ちください。その後は、係員の誘導に従っていただきますよう、心よりお願い申し上げます。」
プシューッ
あれ? 10秒もたったっけ? すぐに扉が開いたような…
しかし、フリーウォールってここから乗ることができるんだ。楽しみだなぁ。
「お客様、これをつけていただけますでしょうか?」
そう言って係員に手渡されたものは足元ががっちりしている、何かの防具だった。
フリーウォールってこんなの使うっけ?
「では、こちらへどうぞ。」
そういって通されたのは、確かにフリーウォールの建物の外。景色が一望できるところ…なのだが、フリーウォールは下から乗るものであって決して上から乗るものではない!!
「自分のお好きなタイミングで飛びおられて結構です。」
つまり…
「なあ、これってバンジージャンプだよな…」
「私もそう思う…」
「かなり無茶苦茶だよな…」
「嘘ばっかだね…」
「すいません、これって二人一緒に行けますか?」
直哉がそう聞いてくれた。うれしい。
「大丈夫ですよ。ご一緒で行かれますか?」
「「はい」」
「いくよ。」
「うん。」
「せーの。」
「きゃああああああああああああああああ!!!!!!」
「うわぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!!」
落ちるのは止まった。
もうすぐ上から引っ張ってもらえるはずだけど、普通のバンジージャンプなら。
しかし、まあまあの高さから落ちたとはいえ、結構高さに余裕があるな…
「きゃああああああ」
「うわぁぁああああ」
また落とされた。
紐に余裕をつくっていたみたいだ。
ついたのは地面すれすれ。
まあ、2メートルぐらいのところ。
下にさっき上でもてなしてくれた係員がいて、
「そこからは、自力で降りてくださいますようご協力お願いいたします。」
と言ってきた。
なんで下にいるの? と思ったが聞かない。聞けない。
下には普通にクッションがあったから、安心して飛び降りたら、跳ねた。
トランポリンだ。
全然止まれない。
勢いをつけないようにしているが…
…1分ぐらい後になってやっと収まった。2メートルの高さの反動ってそこまで持つかなぁ?
「面白かったね。」
「確かに何回でもいけるかもな。」
私も彼もこの遊園地を楽しみ始めてきた。
「ミラーハウス行ってみない?」
「いいな、それ。中には何があるんだろう? まさか同じ系列のお化け屋敷があるわけがないし…」
「お化け屋敷だね。」
「あぁ、あたってたな。」
建物の一歩入るとそこはおどろおどろしい雰囲気が…。
ま、楽しもう。と思い、なぜかあった扉を開ける。
…密室でした……。
何これ? 脱出ゲームでも入ってるの?
入口でもらった懐中電灯で壁を照らすと、
「世界に一つだけの花を歌え」
と書いてあった。何これ? 音声に反応するの?
仕方がないから歌う。一緒に歌った。
すると、文字が変わった。
[「ん」から始まる言葉を一つ答えよ]
これには彼が答えてくれた。
「ンジャメナ。」
しかし、出てきた答えは
「そんな単語は存在しません。もう一つお考えください。」
だった。
「ンジャメナ」というのはチャドの首都で実際に存在している。
仕方なく、
「ンゴロンゴロ」
と答えてみた。
「正解です。鍵を探し、次の部屋へどうぞ。」
「ンジャメナ」との違いが分からない。
そしてその鍵だが…振り返ると目の前にあった。
「うわぁぁあ!」
思わず叫んでしまった。
それもそのはず、宙に浮いていたのだ。
実際は紐で吊らされていただけだったが。
「…いつの間にあったんだろうね?」
「分かるわけがない。」
「そのとおりだ。」
で、次の部屋に行った。ちなみに、鍵をどこに使ったかというと、使っていない。
鍵を手に取ったら勝手にドアが開いた。
「これ、ミラーハウスだよな。」
「そうだと思うよ。」
「また何かあるよな。」
「ありそうだよね。」
しかし、このミラーハウス。20秒で終わってしまった。
狭いところにあったのだ。
「何もなかったね。」
気がつけばもう4時。あと一つでアトラクションは終わりだろう。
「ウォータースライダー行ってみるか?」
「いいじゃん。行こうよ。」
ウォータースライダーの先にあったのは…ジェットコースターだ。
「最後には言い締めだな。」
「私たち、運いいね」
ガタ、ガタ、ガタ、ガタ。
ジェットコースターが登っていく…先が途切れているところに…。
その途端、落ちた。車両ごと、落ちた。
そして、また線路に乗った。衝撃も感じなかった。
このジェットコースターは、最後に強烈な思い出を私たちにくれた。
大満足だった。
後日…
あの遊園地がつぶれたと聞いた。
なんとも、従業員がいなくなったのだという。
もったいないな…とは思ったが、おかしいとは思わなかった。
景色
曇っていた。
そして、風が吹いていた。
強く風が吹いていた。
女の子が髪をなびかせていた。
一人だった。
そして、
影が、2つになった。
2つは近づき、並んで座った。
雲は少し晴れ、天使の通り道が見えた。
雨が降ってきた。
ぽつりぽつりと音がしていた。
影は、見えなくなった。
明るい色が、一つだけ残っていた。
また、一人だった。
風も吹いていた。
傘が意味をなさなかった。
女の子は、傘を閉じた。
そして…
ずっと濡れながら立っていた。
風が緩くなった。
傘が一つ増えた。
横から見ると、高さが違う。
そんな2つの傘が見えた。
長い間、2つの傘はそばにあった。
雨が弱くなった。
2つの影は、動き出した。
同じ方向に。寄り添うように。
また、晴れてきた。
風は穏やかに吹いている。
光を受け、地面が光っている。
そして、気づいた。
たくさんの花が咲いていること。
ここの景色がこんなにも綺麗だったこと。
春らしい景色が、風が、光が、あたりにあふれている。
女の子は、一度振り返って、もう一つの影の方へと歩いていった。
短い…悔しいです…
復習完遂
悲しかった。
とてつもなく悲しかった。
あれも、これもすべてのことが信じられない。
現実を嘘だと思いたかった。
今日、親友だと思っていた子が、私のことを
「自分勝手。嫌い。」
と言ったのを聞いてしまった。
じゃあなんでいつも喋ってくれているの?
遊んでくれるの?
聞きたいことが溢れてくる。
しかし、聞くのは恥ずかしい。
本当だったら自分が滑稽みたいになる。それは嫌だ。
だけど…知りたい。知りたい、知りたい!
そうして放課後、私は彼女の家に行った。
遊びに誘いに行った。
「いいよ。行こう。」
彼女は来てくれた。
向かったのはいつもの公園。
そこで私は、聞いた。単刀直入で聞いた。
他の人に聞かれないところなら恥ずかしさも減る。
そう考えている自分に呆れながらも聞いた。
「ねぇ、私のことどう思ってる?」
彼女は文脈がつかめていないようだった。
「一緒にいると楽しいし、親友だと思ってるよ。」
そう言ってくれた。
「一緒だ!」
表向き、そう喜んだけれど、心の中は荒れていた。
じゃあ、あの言葉の意味は何?
「さすがうちら!」
向こうも喜んでくれている…けど…
「あのさ、今日の昼休みに、私のこと嫌いって言ってなかった?」
「え? 何のこと?」
普通に返された。
私が聞き間違えていたのか?
「教室で、南ちゃんとかとしゃべっていたじゃん。」
「あ~あれ! ……。」
思い出した素振りが見えた途端、言葉が絶えた。
「ホンットごめん。そんなつもりはなかったの!」
そして謝ってきた。どうやら聞き間違いではなかったらしい。
「じゃあどんなつもりがあるのよ。」
「あれは…みんなが言ってくれたことを真似していたらああなったわけで、本当にああいうの、思っていないから!」
「ダウト。」
「っ…、じゃあ…、」
どうやら本当にダウトだったらしい。
うん。あれが本当だったら嫌だもん。私、みんなから嫌われていることになる。
「嘘言おうとしないで。」
「ごめん! 実を言うとあれは本音です!」
「………。」
え?
「けど、これからは仲良くしていきたいと思ってるの!」
「なんで? 私たち4年間も一緒だったのに?」
「そうなの! 傷つけてたらごめん。自分勝手だと思っているのは本当だし、今もまだ好きじゃない。けど、遊んでいるときは楽しい。一緒にいると楽しくなる、それは本当。」
はぁ~、ショック。さっきの悲しいとは別で、また悲しくなってきた。
「そっか、じゃあ学校ではあまりしゃべらないほうがいいかな? あんまり好きじゃないんでしょ?」
「そうしてくれると助かる…けど、放課後は本当に一緒にいたいと思ってるから! そこは信じてほしい!」
こんなに言うくらいだし、少しは信じてみよう。
心が私の中ではもう傾いていた。
「分かった。」
「ありがとう!」
しかし、また私は悲しみに襲われた。
彼女が私のことについて、「一緒にいても少しきつい。」と言っているのを聞いてしまった。
悲しかった。とてつもなく悲しかった。
彼女に詰め寄った。
登校とかで一緒に喋るのは楽しいんだ、信じてくれと言われた。
もう、信じれなかった。
そこから、世界中のことが信じられなくなっていった。
私が信じられるのは科学や数学だけ。
現在の中ではそれが真理なのでそれを安心して信じることができる。
もう、彼女を信用することはできない。
周りの人も信用できない。
私は、一人ぼっちでこれからを過ごす。
---
それからの私の高校生活は、意外とよかった。
自由に時間を過ごせる。
だから、好きな本を読んで過ごした。
授業で疑問が出てくる。
だから、みんながしゃべっている間に質問した。
私はきっと、誰よりも本当の高校生活を満喫したと思う。
そのおかげで、ほら。
私は今こんなにも幸せだ。
大学ではいろんなことを知っているね、と言われ、教授からは研究職に向いているんじゃないかと誘われる。
ざまあみろ。
これが、私とあんたの違いだ。
はしめはただただ暗いのを書こうと思ってたんですけどね…
けっこうこの話、気に入っちゃいました。
※「悲しみ」(削除済み)にアフターストーリーを入れただけです。
嫌いだ。
(自白)
私は、アイツが嫌いだ。
ナルシストで、いかにも自分は何でもできますというような態度。
しかし、その言葉通りにたいていのことはできる。さらにむかつくことに、たいして努力をしていない。
その言動すべてが私を逆なでする。
ある時は、自習中にうるさくし、ある時は、授業中にゲームをして、ある時は、居眠りしている。
こんなやつでもクラスの男子に味方は多く、先生にもあきれられて、見過ごされている。
この自由奔放な感じが嫌いだ。
自分を中心にすべてが回っているという感じが嫌いだ。
一応彼も、塾には通っている。
ただし迷惑だ。テスト前の自習室でしゃべるとかありえない。
顔はいいが、その言動もあって、一部のぶりっ子以外あんまり好いていない。
当たり前だ。
しかし、それをものともせず、話しかけてきたりする。
そこら辺の空気を読め!他のことを含めた空気も読め!
そう思っている。
---
私はなんと幸福だろう。
悪口を存分に言えるような人物がいるなんて。
みんな言えずに貯めて…いろいろ事件が起こるんだろうな。
でも、最後に一つ。
分かっていると思うけど今のは全部嘘。大好きだよ!
---
知ってる。君が俺のこと大好きなのは疑っていない。
というよりぶりっ子しか好いていないって…一応君には好かれているよ?
それとも君はぶりっ子だったの?
俺のこと好きだと言っているのは媚びてるだけ?
ごめんごめん。怒るなって。
疑っていないってさっきも言っただろ。
きっと俺も幸せ者だ。思ったことをお互いに悪いこと含めて言い合える関係ってなかなかない。
少しでも意外性を持ってくれると嬉しいです。
魔法
ここは地球。山の中。
ここで、私たちは過ごしている。
人間たちにばれないですんでいるのは、偉大なるもののおかげである。
私たちが言う偉大なるもの、それはこれだ。この幾何学模様のやつだ。
私たちは、これを見て、その模様にあった言葉を唱えればよい。
もちろん、その模様は作ることもできる。
ほら、この書きやすそうな枝で地面にちょちょいと。
え?そんな簡単にかける模様じゃないって?
書くんだよ。書けるようにもなるんだ。
ほら、人間だって、ややこしいものを読んでいるじゃないか。
それと一緒だ。
言わば、文字だな。
これも組み合わせることができる。
一本一本に意味が込められている。
私たちはみんなそれを教わる。
これが私たちの民族のおきてだ。
そして、この模様にあった言葉をしゃべると、その言葉通りになる。
だから、人間にばれないようにするには、「人間が我らを見つけられないようにして」と書いた紙を持って、そう唱えればいい。
紙はどこから手に入れるのかって?
作るんだよ。ここには植物がたくさんある。それを使えば作れるに決まっているじゃないか。
魔法みたい?魔法っていうのはなんだ?
願いをかなえるもの?それなら確かに魔法に近いかもしれない。
認識的にはそんなもんだろう。
老人はいないのか?老人なんぞいない。
その前にみんな亡くなっちまうからな。
この民族は生まれてから60年過ごすと、皆一様に、「人間が我らを見つけないようにして」と願って死んでいく。
それまでに死ぬこともなければ、それ以上生き延びることもない。
しかし、そのおかげで私たちは人間にばれず、快適な生活を送っている。
動物に襲われないのかって?大丈夫だ。そこは結界を張っている。
だから、襲われることはない。襲う事ならあるけどな。ははは。
あぁ、けど、時々行方不明者は出るよ。
3日ぐらいたつと何事もなかったかのように帰ってくる。
えーっと…そうだ、神隠しと確か言うのだったな。
じつに的を射ている表現だと思う。
神を信じているのかって?信じていない。
私たちは人間よりも高位である。下位の者が信じるものなぞ信じるにも値しない。
だれもそれに疑問を持たないのかって?持つわけがない。
人間は魔法とやらを持っていないのではないか?そんな人間を高位だと考えることなぞできるわけがないだろう。
何故取材を受けてくれたかって?
私たちも定期的に人間の情を打を手に入れる必要があるのだよ。
それより、君はなぜ私を見つけることができたのか疑問に思わないのか?
自分は運がいいから?ふざけたことを抜かす。
運などで魔法は覆りはせぬ。
わざと姿を見せたに決まっているだろう。
私はどうなるのかって?
どうなるのだろうな。教えるつもりはない。
では、さようなら。悪運の強い記者さん。
次合うのはあの世だな。
---
「お父さーん、人間を手に入れたよー!」
「何?人間をか!?しかも大人じゃないか!これなら半年くらいもつな。」
「えらいでしょ?ほめてほめて」
「ああ。いい子だ。こんばんはこれでステーキでも作ろう」
「やったー!」
お母さん
私のお母さんはモンペとみんなに言われている。
「何の略?」と聞くとモンスターペアレントの略だと言われた。
過保護な親のことを言うのだという。
確かに私のお母さんは過保護かもしれない。
けど、それは私を心配してくれているからであって、基本的にお母さんは私には甘い。
それなのになぜ、モンペと言われるんだろう?
これが、私の小学校時代のことだった。
中学になっても、小学校の同級生がいたため私のお母さんはモンペだった。
「なんで?」と聞くも、渋い顔をされた。
「ねえ、今度うち来る?」
ある友達が私を誘ってくれた。
お母さんに許可をもらえたから、次の日行けるよ、と伝えた。
「そういうところも過保護だよね。」と言われた。
なんで?
待ちに待ったその日。
「お邪魔します。」
「お母さんは居ないから、楽にしていて。」
ゲーム類の数はそこまで多くなかったけど、さすがにトランプはあったようなので、私たちは、それを使って遊んだ。
その時、少し怪我をした。カードがかすったのだ。
「大丈夫?」
「大丈夫。」
そう、大丈夫。だけど、これでお母さんにまた心配をかけると思うと申し訳ない気持ちになる。
そして…案の定、家に帰ったあと、お母さんに心配された。
「〇〇ちゃんの家よね? 少し電話してくるわ。」
「うん、心配かけてごめん。」
「いいのよ。」
「ありがとう。」
そして、次の日。その友達に、
「ごめん。もううちには呼ぶなってお母さんに言われた。」
「じゃあ私の家で遊ぼうよ!」
その日のうちにお母さんに許可を取った。
この前遊んだ子だとバレて渋い顔をされたが、なんとか許してくれた。
そして、その日がやってきた。
「うわあ、たくさん本があるんだね〜。」
「そうだよ。お母さんは私には甘いもん。」
「へえー。優しいんだね。」
当たり前じゃん。お母さんは私のことを本当に思ってくれている。
「でしょ? 自慢だよ。」
扉の裏にお母さんがいるのが分かった。
「ねぇ、」
と呼びかけられて振り返ったら、友達がカッターで手を切っていた。
皮膚の部分だけだった。
それでも、ショックは隠せない。
「何やってるの!?」
「あ、ごめん。間違えちゃった。」
「何と?」
「紙と。」
良かった。どうやらちゃんと髪を切る予定だったっぽい。
「絆創膏とってこようか?」
「いや、大丈夫。抑えとけば治るよ。」
「いや、そりゃそうだけど…。本当にいいの?」
「うん。大丈夫。」
しかし、友達は早く帰ってしまった。
「私、何か悪い子としたかなぁ?」
分からなかった。
〇〇ちゃんのお母さんは優しかったから、心配して電話してくるのかな?
と思ったけど、私はその電話に気づかなかった。
次の日。
「けが、大丈夫?」
「大丈夫だよ。ほら?」
そう言って見せてくれた手にはうっすらとまだ血の跡が残っていた。
「ねえ、不思議に思わなかった?」
唐突に、友達が話しかけてきた。
「何を?」
「親からの電話がかかってこなかったこと。」
「あ、思った!気づかなかっただけかと思ってたけど…かけてないの?」
「そうだよ。」
「普通の親はあなたのお母さんみたいにがなり立てて電話することはないんだよ?」
「へぇ~、そうなの? じゃあ、愛情が足りていないんじゃない? 私はお母さんに愛されているって自信を持って言える。」
その時、顔が、一瞬暗くなった気がした。
「けど、そんなふうに怒る人のことを世間ではモンペっていうんだよ。」
「知ってるよ?けど、それの何がいけないの?」
「それが高じると、みんなに迷惑がかかるの。」
「なんで?」
「なんでって…先生にも迷惑がかかるじゃん。」
「けど、本当のことじゃん。」
「でも!とりあえずそうなの!だからそういう親の子には友達ができにくいんだよ! その子に悪いことをして怒鳴られたくないから!」
気付いた。だからか!私が避けられているのは。
それだったら、なぜ、この子は友達になってくれたんだろう?
それから先生が来るまで、言い争いは続いた。
お互い、意見を言って終わりだった。
そして今。私たちは公立の高校に行き、一緒の大学に行っている。
2人で同じ部屋に住んでいる。
似た者同士、これからも仲良くしよう。
好奇心
ぼくは、どうぶつかんさつがすきだ。
たとえばアリ。れつをみているだけでおもしろい。
ときどきは、えさをおいてあげることもある。
いつもおなじばしょ。するとアリにきくどくをいれたものもふつうにもってかえってくれる。
そして、そのなかまがいるすはぜんめつしたり…しない。
しばらくすると、またアリがやってきて、おなじところにおいたどくいりのやつをもっていってくれるから、たぶんいきのこりがいたんだろう。
ざんねんだ。ぜんめつしていればよかったのに。
---
私の息子は、動物観察が好きだ。
特にアリ。身近にいるからか、よく観察しているように見える。
しかし、時々怖くなる時がある。
アリを観察している息子が、不意にアリを押しつぶしたのだ。
私は動物を見るのは大丈夫だが、それが殺される瞬間を見るというのが大嫌いで、思わず目をつぶってしまった。
「動物を殺すのはやめなさい。」
たしなめるも、
「なんで?ママもどくでころしたりするよね?」
と言われてしまった。
確かに私は息子にアリの駆除を頼む。
それなら、手で殺すのと変わらない、という人もいるかもしれないけど…
---
ぼくは小学生になった。
そして、あたらしいしゅみができた。ひょうほんだ。
1年生のときのなつ休み、しゅくだいでひょうほんというものを作ったのだ。
たのしかった。
きれいな虫をそのままの形でのこせることにびっくりした。
はまった。
さぎょうは、パパが手伝ってくれる。
そのひょうほんのできは、先生にもほめられた。
ママはいいかおをしないけれど本当にたのしかった。
---
息子が、標本採集にはまった。
ここは、まあまあの都会だから、そんなに生き物の種類は多くないに、息子ははまってしまった。
息子に与えた部屋には、息子が集めた標本がたくさん置いてある。
私は、だから、息子の部屋には入れない。
あの標本のすべてに命があったと思うと、いたたまれなくなる。
「標本調査はやめて。」
そう何度も言っているのに
---
9年後。
「今日未明、〇〇県の〇〇駅の近くの住宅で、殺人事件が起こりました。被害者は〇〇さん。警察は、〇〇氏を容疑者として、署に連行しました。容疑を認めており、犯行動機として、標本、と、言っているそうです。家庭内の殺人であったことからも、被害者にも何か原因があったとみられます。」
息子がうっとうしがって母を殺したのか、それとも殺すのに快感を覚えて殺したのか、母が息子を恐れて息子を殺したのかは、わかりません。
秋風吹けば
私は夫が大好きだ。そして、同時に尊敬している。
こういうのを言い表す単語があって、それは愛敬というらしい。
私から夫への感情にぴったりだ。
そんな夫と出会ったのはかれこれ10年前。
彼は強盗未遂をしていた。
その時に人質になったのが私だ。
未遂と言ったくらいにはそれは失敗しており、5年間の懲役がかけられていた。
だから、実際は5年間しか一緒に暮らしていない。
懲役明けに彼からプロポーズをもらった。
面会の時点でほのめかされていたから、あまり驚かなかった。
しかし、嬉しさはしっかりと感じた。
今でも時々、彼が私にプロポーズをしたのは、私の人質としての行動がよくて、使いやすいと思うからだったかもしれないと思うときはある。
それでも、私は人質にされているとき、彼を好きになってしまったのだ。
---
俺の妻は扱いやすい。
そう今日の日記に書いた。
今日は、出張で、帰りが朝になる、といったのに、何も俺を疑っていない。
本当にこの生活に飽きたら不倫しようかな、バレなさそうだ。
強盗未遂で捕まった加害者の俺に人質であった彼女がこまめに面会してくるから、あれ?これストックホルム症候群というものじゃね?と思うことがある。
実際その可能性が高そうだ。
しかし、強盗未遂を犯した俺に嫁いでくれる物好きの女はそういない。
だから、たぶんいけるだろうと踏んだうえで、プロポーズをした。
実際は愛していないが、愛している、と|嘯《うそぶ》いたのも何度もある。
彼女は俺を好きだと自分で勘違いしているし、なぜか敬う。
敬うのは、人質と加害者であった時の立場が俺が上だったからだろうと踏んでいる、が、実際は分からない。
しかし、俺の行動に対してとやかく言わないでくれるのはありがたい。
扱いやすい、いい妻だ。
---
夫がノートを忘れて出かけていった。今までに見たことがないノートだ。
しかし、使い込まれた形跡がある。
何に使っているんだろう、興味を惹かれて覗いてみた。
「妻はたぶんストックホルム症候群だ。」
その文字が見えた。
そして悟った。
これは夫の主観を交えた日記帳だ、と。
怖いもの見たさでページを進めていく。
そして最後のページ。
「俺の妻は扱いやすい」
そう書いてあるのが見えて、動けなくなった。
我に返り、「ストックホルム症候群」ついて調べてみた。
ネットによると、「誘拐や監禁などにより拘束下にある被害者が、加害者と時間や場所を共有することによって、加害者に好意や共感、さらには信頼や結束の感情まで抱くようになる現象」らしい。
その言葉を見て熱が冷めた。
その日、私は荷物をまとめ、署名した離婚届を置いて出かけた。
私達の関係には秋風が吹きさったのだ。
---
妻が出ていった。
離婚届を置いて。そして気づいた。
日記帳を置いていっていた事に。
多分、妻はこの日記を見て熱が冷めたんだろう。
妻のことは何とも思っていないはずだったが、少しだけさみしくなった。
途中まで思いつくまま書いて、ラストで、もしかしたら、これ、メリーバッドエンドになるかもしれないと思いました。
どうなんでしょう?
これはメリーバッドエンドになるのでしょうか?
一応#つけてみまーす。
秋風、の意味を単独で調べてみると、面白かったので書いてみました!
バレンタイン(※数日遅れ)
「前村、めっちゃチョコもらっているじゃん。モテモテだなぁ。」
そうだろうか、どれも義理だと思うけど…
飯島は続けて喋っている。
「なあ、いったい何個もらったんだ?」
「大体15個だと思う。」
「うげぇ、俺の今までの個数完全に超えてるじゃん。安田、お前もたくさんもらっているのか?」
「あぁはいそうですよ。」
「一応彼女もいるんですが、どうせ僕にくれるのはみんな義理チョコなので、ありがたくいただいてます。」
「はぁ~俺も欲しいなぁ。」
少し口を挟んでみる。
「飯島は一体何個もらったんだ?」
「普通そこ聞くか?聞いて驚くなよ? なんと、ゼロ個だ!」
「……。」
「……。」
「二人とも無言になるのやめて!」
「え?飯島ゼロ個なの? はいオレ勝ちましたー!3個でーす。」
ウザいやつが入ってきた。後ろから声をかけられたせいで分からないけれど。たぶんこの声は山田だ。
「あのさ、山田。3個で自慢するのやめたほうがいいぜ?」
「なんでだ?飯島。」
「安田と前村のチョコの数を見ろよ。俺らのなんか全然自慢にならないよ。」
「お前のほうがもっと自慢になんねえから。黙っとけよ。」
あーあ、いつもの言い争いが始まりそうだ。退散しよう。
「あ、ちょっと廊下行ってくる。」
「あ、僕も行きます。荷物直さないといけないので。」
廊下で荷物をあさっているふりをしていると、声をかけられた。
「前村、チョコいる?」
「くれるのならもらう。」
「じゃああげる。」
「ん、ありがとう。」
なんで俺にチョコをくれるんだろうなぁ。本当にモテているのなら嬉しいが…しっかし、これじゃあホワイトデーのお返しが大変じゃないか…
---
(前日)
「ねえねえ、誰にチョコあげるのがいいと思う?」
「とりあえず私は同じクラスの女子にはあげようと思ってる。プラスで安田もあげようかな?」
「安田?何で?」
「安田はお返しがめっちゃ豪華なんだよ。」
「え?何くれるの?」
「うちはあげてるわけじゃなかったから知らんけど、100円くらいのものに、2000円くらいで返したっていう情報が散らばっている。」
「え、なにそれ。私もあげようかな。」
「それがいいと思うよ。」
「あ、思い出した。確か前村も結構すごかった気がする。」
「ほんと?うち、前村にあげてみようかな。」
「それがいいと思う。あとは‥」
この会話は、他の女子も巻き込んで、1時間以上続けられたというのがもっぱらの噂だ。
なんとなく可哀想な男子を描いてみたくなったのでバレンタインに関連付けて書いてみましたー!
実際にこんな会話ってあるのでしょうか?
なんかありそうで怖いです。
告白
これは、とある日のことりの夢。
「先生は、実は〇〇のことが好きなんだ!」
始業式の日、教室で唐突に先生が、そんな自己紹介をした。
**「えぇぇぇぇーーー!」**
〇〇ちゃんは新しいクラスメイトだ。
「おい、△△、行け」
「オレ?了解!」
△△くんは紙を取り出して、教卓に貼り付けた。
そこには「先生失格」との文字が…
これは普通は教師を辞める案件なんだろうが…
みんな面白がっているのか、そのままだった。
そして、次の日もまたその次の日も、私たちは爆弾発言を抱えたまま過ごした。
なんの変哲もない夢です。
久しぶりに夢の内容を覚えていたので書いてみました。
病
病にもがくというわけではありませんが、参加させていただきます!
自分が、まさかこの病気になるなんて…
病院から帰りながら、私は絶望した。
手には大量の薬が。そして、母は、何やら高そうなものを買っていた。
病気になっていなければ…
もしも、そうだったら、新手の宗教にでも騙されているのかと思うだろう。
車の中である今も、症状は続いている。
嗚呼…
外に出たくない。
晴れた日の次の日の服も着たくない。
窓も開けられない。
…ずっと、家に閉じこもっていたい。
神よ、何故私がこれになければならなかったのであろうか。
私の親は健在だ。祖父母も大丈夫だった。
なぜ、私だけ…
世とはつねらなず非常なもので、それでも外へでなければならない時が…ある。
私はそのたびに症状を出す。
時には家でだって出ることがある。
この病気は、非常だ。
好きなものを嫌いなものに塗りつぶしていく。
人は、それに抗うことができない。
できても、そこには死が待ち構えているかもしれない。
今まで家にあったもの。
それの中から、私が使えるのは一部になった。
母は、我慢してね。と言う。
私も、我慢するつもりではある。
いずれ、また便利な生活に戻るだろうから。
その日を信じて、それを頼みに私は生きようとする。
嗚呼…
その病気の名前は…
アレルギー。
行間をめっちゃ作るの、今までやってみたかったんですよねー。
今回できて、大満足です。
奇跡
AIガチャで出てきました。
今日は土砂降りだ。
憂鬱になりながら、目的地向かう。
歩いていると、
「え? なんだよコレ」
黒いものが地面に倒れていた。
近づいてみると…老人なのが分かった。
「って、ちょっと、おーい!おじいさん!」
老人の息が止まった。
「誰かー!一が倒れています!」
呼びかけるも、雨に吸収されて、聞こえないのか、誰も来ない。
「くそっ!」
心臓マッサージをしようとする。
その時。
呼吸をしていなかったはずの老人が動いた。
老人は微笑み、手で制して、やめるように伝えた。
「君は顔を見せずに何かを成し遂げたんだろう?」
老人がそういった。
きっと、呼吸をしていない老人がしゃべることに驚くべきなのだろう。
しかし、それよりも大きい驚きがやってきた。
その言葉は、自分の考えていることとまるで同じで、それを当てられたことにこそ驚いてしまった。
老人を見ると、老人もこちらを見ていたのか、目が合った。
その途端、老人の顔が輝き出した。
驚いた。つい後ずさろうとしたが、後ろに傘があったから、できず、後ろに|躓《つまず》きかけるということになった。
老人は自らが神の使いであり、最後の願いを叶える力を持っていることを明かした。
俺は……
アイツのために、その力を使いたい。
今も苦しんでいるアイツ。
人の役に、俺の何十倍も立つであろうアイツ。
そして、今、一番苦しんでいる。
自分がアイツを救うことができたら…
今まで何回思ったことだろう。
しかし、今までそれを達することはできなかった。
自分に力がなかったから。
この老人の力を借りれば…?
アイツは助けられる。
「友人を、救ってください…!」
老人は頷いた。
「私はあなたを信じる。私の顔を見せることは出来ないが、顔を見せてほしい。」
俺にとって、顔を見せてほしいと言う願いの最重要さを理解してくれたのか…
老人は、顔を涙ながらに見せてくれた。
ープルルッ。
「もしもし。」
『内海さん? いま、巡回をしていたんだけど、あなたの友人の体調が、回復しているわ。』
「本当ですか!?」
『本当よ。正直私も信じれていないけれど。』
「分かりました。今向かっている途中だったので急ぎます。」
『気を付けてね。』
「はい。連絡ありがとうございました。」
ープツッ
「ありがとうございまじだ…」
老人は微笑み、旅立っていった。
その後には、もう何も残っていなかった。
老人の遺体さえも。
しかし、電話の履歴が今までのことが嘘じゃないと教えてくれている。
急いで病院に向かった。
「おまえ…!」
「優斗…?」
「そうだよ。なあ、少し長話していいか?」
看護婦さんを見たら頷いてくれた。
そして、俺は、今朝の老人…神の使いの話をした。
友人は、驚きながらも信じてくれた。
「ありがとう。」
友人から告げられたその言葉は、胸を清々しくしてくれた。
「そんな事もあったなぁ。」
「そう。俺たちにも奇跡が起こせるんだよ。」
「うん。」
あの日、俺らは感動と共に生きると誓った。
そして、奇跡を信じるようになった。
奇跡を信じたからか、奇跡が多く起こるようになった気がする。
「ありがとうな。病院長。」
それが認められ、病院長に昇進した。
「どういたしまして。」
これは、俺が老人を助け、信じることから始まった奇跡のストーリーだ。
うん。一部がよく分からん。さすがAI。無茶苦茶だ。
お題決め
初日替わりお題の活用です。
3/16(3/17)のお題
「お題」「才能」「屈服」
A「今度のディベートのテーマを決めましょう。」
B「はい!」
A「なんでしょう?」
B「鉛筆とシャーペンがいいと思います。」
A「いいですね。他にありませんか?」
B「はい!」
A「何でしょう?」
B「ゲームと読書なんてどうですか?」
A「いいですね。他の人からはなにかありませんか?」
C「はい…」
A「どうぞ。」
C「…スイカの分類…?」
A「ダメですね。実際には野菜と決められています。」
C「そうですか…」
A「他には?…何も無いなら、Bさんの意見を採用することにします。賛成の人?」
大勢「はい。」
A「決まりですね。では、今日の会議はここまで。ありがとうございました。」
大勢「ありがとうございました。」
くっそーBの奴。なんであんなに意見が出てくるんだよ。
俺はモブじゃないか。
あぁ…まあうん…そうだけど…見返してやる!
次の会議。
A「今日も今度のディベートのテーマを決めましょう。」
B「はい!」
A「なんでしょう?」
B「はい!」
A「何でしょう?」
B「はい!」
A「何でしょう?」
A「いいですね。他には?…何も無いなら、Bさんの意見を採用することにします。賛成の人?」
大勢「はい。」
A「決まりですね。では、今日の会議はここまで。ありがとうございました。」
大勢「ありがとうございました。」
またBの独壇場…
頑張って考えたのに、会議になると、怖気づいてしまう。
だから、あんなやつに屈服することになるんだ。
才能、そして度胸はこの世で最も不条理なものだ。
強引…かもね
終焉
テキトーです。私はこの時代に生きていないので、全くの推測です。
フィクションとして、楽しんでください。
3/17(3/18)のお題
「ロシア」「世界一周」「世紀末」
僕の夢は世界一周をすること。それも世界が滅びる前に。
今は1999年1月。
ノストラダムスの大予言まで、もうすぐだ。
僕は、あれを信じる。
世界には、終りがあるはずだから。
だから、それまでに世界一周を成し遂げたい。
それが、僕の今の目標だ。
旅は…順調と言っていいほど順調だった。
ヨーロッパ、アフリカ、中東、南アジア、オセアニア、東アジア、北アメリカ、南アメリカ、もう一回北アメリカ。そしてロシアに行って、ヨーロッパに戻る。それの、ロシアまでやってきた。
1年で世界一周なんて無茶なと思ったが、つめつめにしたし、なんとかなるだろう…なるだ…ろ…う‥。
ロシアは広かった。
いろんなところを観光するうちに、1999年12月31日がやってきた…
え!?ちょっと!? まだヨーロッパに戻っていないんだけど?
仕方がない。ロシアに骨をうずめよう。
町中では、今日で世界が終わるかどうかの論争が行われていた。
へぇ~と思う。どうなるかな。骨をうずめるとしたら、綺麗なところがいい。そう考え、探し歩いた。いつの間にか、夜。
世界の雰囲気は、年越しどころではなかった。
みんながみんな、息を呑んで、なにかが起こるかを、待つ。
この広場にいる人は、きっと終わると信じている人たちだ。
そして、その瞬間が、来た。
**ゴーン。ゴーン。**
鐘のなる音が聞こえた。
世界は…滅びなかった…。
「やーい、やーい。やっぱり世界は滅びないんだよー!」
信じなかったものに、馬鹿にされた。
けど、おかしい。信じなかったものが、救われるのはおかしい。
僕は、この予言を本当にするべく…
海まで行き、
身を、投げた。
---
その後、遺体は、流れて、ヨーロッパで、見つかったそう。
いかがでしたか?
感想、コメント待っています。
724文字…日替わりお題にしてはがんばた
クレーマー
3/20の日替わりお題
クレーム、ショート、幽霊
最近、クレームがよく来る。
接客業を俺はしているんだが、最近クレーム電話がひどい。
鳴るのは1日に一回ぐらいだが、放置しておいてもうるさく言われるし、だからといって、でたらでたでうるさいし、時間を取られる。
非常に無駄な時間を過ごしているのである。
しかも、そのクレームの内容はいつも同じことだ。
「お宅の店の前に、ショートヘアの女の子の幽霊がいるんですが…」
これに対して延々と言われ、1時間弱使うことになるのだ。
最悪としか言いようがない。
幽霊なんて、存在するわけねえだろ。
大体、万が一にでもその幽霊がいたとして、俺にどうしろというのだ?
こちとら一般庶民で何もできることはねえが?
プルルップルルッ。
ほら、今日もまたやってきた。
「ちょっと見せお願いするわ」
「了解です」
そして、電話に出た。
今日こそ決着をつけてやる。
---
『もしもし、こちら飲食店、│風月《ふうげつ》です。』
昨日までと同じ声が聞こえる。対応も一緒だ。
「もしもし。風月さんのまえに、まだ幽霊がいるんですが」
『そのことですが、確証が取れないこともあり…』
「確証ですか?お宅は顧客を信用しない、と?」
『いえいえ、信用していますとも。しかし、目に見えない存在について言われましても…』
「とりあえず、風月さんの前にショートヘアの幽霊がいるんです!だから、祓ってほしいと言っているのですが?」
『祓うと言われましても…』
「お寺に行って、頼めばいいんですよ」
『しかし、他のお客様からは何も言われておりませんので』
「それがどうしたんですか!?」
こちとら親切心で言っているのに。
あの幽霊女、店にいる座敷わらしを誘拐しようとしている。
『複数のお客様にも言われたのならともかく、お一人様だけとなると…』
「あれは不気味ですよ!」
『失礼ですが…ショートヘアの女の子の幽霊ですよね?どこが不気味なのでしょうか?』
「あの幽霊女、風月さんにいるいい妖怪を誘拐しようとしているんです。」
『…は?』
「その幽霊は、玄関口に立って、風月さんに客を呼んでいるんです」
『…。そのようなことがあったのですか…。それにしてもうちの店に客を呼んでくれる幽霊…いや妖怪が…それはありがたい話です。』
「分かっているんですか?その妖怪を連れ去ろうとしている幽霊がいるのです」
『もし、そうなりましたら、こんどこそ 自力で店を運営できることになりますね。』
のんきな店主め。ことはそう簡単じゃないっつうの。
「いいですか?とりあえず、寺に行って、店の前を祈祷してもらってください。」
『無理ですなぁ。そのようなものは運営費として入っておりません』
「じゃなくて…!」
あぁ、むしゃくしゃする。こちとら善意でしているんだ。
感謝くらいしろや。
あぁ…もうすぐあの幽霊女も返ってくるだろう。
バレないうちに戻っておこう。
「じゃ、時間がないのでまた明日に。」
いかがでしょうか?
あの店長さん、自分の応答も電話を長引かせているんですけどねぇ。
気づくのはいつになるのでしょうか?
そして、クレーマー。
彼女も幽霊です。しかも幽霊女に誘拐され、かつ軟禁されている。
まあ、そんなふうな話でしたー!
我らが部
3/22日替わりお題
写真部、精霊術、印刷業
私が所属する写真部には秘密がある。
「どうしたの〜?サキサキ」
私のことをこんなふうに呼んでくる、│葛《くず》という名前を持った、かわいい精霊だ。
「昨日の夜空が綺麗だったな、って思ってた。」
「確かに昨日は満月だったし、綺麗だったね~」
「でしょ?」
「じゃ、写真を取ってあげよう」
「いいの!?」
というか、実は、それを狙って言った。
「後でお菓子ちょうだ〜い。クレーム…だっけ?」
「…。クレーム?え、あげていいの?」
「あぁ、違う違う。クリームに果物がのっているやつ。」
「クレープ?」
「そうそれ!」
「分かった分かった。けど、体と同じ大きさのものをよく食べれるよね」
「精霊は、そういうものなの〜」
「まあいいや、写真頂戴。」
「分かった〜!じゃあ、思い浮かべて。」
そうして、私は昨日の夜空を出来るだけ鮮明に思い出す。
「は〜い、はい、チーズ」
「いつも思うけど、それ、いらないよね?」
「雰囲気作りは大切よ〜」
「ふうん。」
なぜ、我らが写真部に精霊がいるかを教えてあげよう。
分かっていない!
葛の曖昧な記憶によると、印刷系に関わっていたらしいが…
いや、写真も印刷するから!
結局わからずじまいだ。
「できたよ〜。印刷もした〜!」
「え!?もう!?みーせて!」
「はい。」
手渡された。
「うわぁ。」
「サキサキはこんな景色を見たんだー。いいなぁ。」
「いや、葛も今見たでしょ。」
「それはそうだけど、生で見たかったの!」
「それ見てたんじゃないの?」
「時間帯が違った。」
「ドンマイ。」
「うぅぅ。」
「クレームあげるから許せって。」
「許す…ってアレ?クレーム?」
「うん!」
「ちょっと!クレープじゃないの!?」
「いや〜今、クレームあげるので合意したじゃん。今更変えるのもなぁ。」
「この〜!!嘘つき!詐欺師!」
「じゃあそういうことで!」
かくして私は葛の魔の手から逃れられた。
天使と悪魔
Aより
B「俺、アイツ好きなんだよね。」
A「一緒ですね。私も彼は好きですよ。」
B「で、自分のことは嫌い」
A「一緒ですね。私も自分のことはあまり好きになれないのです。私たち、気が合いますね。」
B「そうだな。」
A「他には何があるでしょうか…私は…あなたのことは好きですよ。」
B「俺もあんたのことは好きだ。」
A(ふむ、私のことは嫌いなのか。)
A「私と喋ってくれているのに?」
B「…!それは…いや、俺は嘘をつかないからな。」
A(そうね、嘘しかつかないわ。けど、私にそう言える関係ではまだないのね…)
A「そうですか…少し悲しいものがありますね」
---
Bより
B「俺、アイツ好きなんだよね。」
B(俺、アイツ嫌い)
A「一緒ですね。私も彼は好きですよ。」
B「で、自分のことは嫌い」
B(当たり前だろ。自分のことは好きに決まっている。)
A「一緒ですね。私も自分のことはあまり好きになれないのです。私たち、気が合いますね。」
B(は?気が合うだと!ふざけんな。自分のことを嫌いな人間と気が合うわけがないだろう!)
B「そうだな。」
A「他には何があるでしょうか…私は…あなたのことは好きですよ。」
B「俺もあんたのことは好きだ。」
B(翻弄されるし嫌いだ。)
A「私と喋ってくれているのに?」
B「…!それは…いや、俺は嘘をつかないからな。」
B(私と喋ってくれているのに、だと?なぜ俺が嘘ばかりついていると知っている!?)
A「そうですか…少し悲しいものがありますね」
A…天使 B…悪魔
りょうり
4/7のお題
平民・秀才・料理の才能
平民のアユナ。彼女は秀才として注目を浴びていた。
曰く、何でもできる。
曰く、できるものはそれの道の上級者レベルだ。
曰く、人を超えている。
いろいろ噂は聞くことができる。
あるものは恐れ、あるものは崇拝する。
アユナは神殿に呼ばれ、一時母と離れることになった。
一人でこいというのが神殿からの思し召しだ。
その道中、アユナは料理をしてみた。
「うん、おいしい。」
そう思ったので、アユナは普通に食べたそう。
しかし、その皿にのっていたのは…焦げたと思われる黒い物体だったのだ…
そう、アユナは味覚が狂っていた。
母の手料理は美味しいと思うが、何か物足りない気がしていた。
アユナはこのとき、自分の手作りが一番美味しい!となり、その料理の普及に務めることにした…
今まで崇め、恐れられていたアユナは、その日から一転して、人間味もある、と思われ、その味覚の狂いに、同情されたのだった…
なんか今回の日替わりお題、作りやすすぎて逆にむずかった。
400いかず…よくランダムに選んでこんな分かりやすいものが偶然とは言え1日に集まったな…
ダンジョン
4/10 日替わりお題
モンスター、最下層、不思議系
ーここは、ダンジョンが多数存在する世界
「人類最強」の名誉を獲得した俺、デスマン・クレロードは、いよいよ、この世界で一番大きいと言われているダンジョン、その名も「デス・ダンジョン」の最下層を目指していた。
何故かわからないが、ダンジョンでは最下層に行き、ボスを倒すと、地上に戻れる。
だけど、いままでこのダンジョンのボスを倒せた人はいない。
最下層にたどり着いた人もいないと言われている。
最下層は70階層らしい。
なぜか、これだけは情報がある。このダンジョンに過去、深く潜った人は戻ってこれず、力尽きているらしい。
だからついた名前がデス・ダンジョン。
これは、世界初への、前人未到の偉業への、挑戦である。
あと1層。
慎重に魔物を倒していく。
階層ボスを、魔術、剣術を使い、一部を集中攻撃し、殻に傷をつける。そこから傷を広げ、倒すことが出来た。毒は除去できるから、何も問題ない。
さあ、最下層突入だ。
…そこにあったのは、
幻想的な光景だった。
ダンジョンの中とは思えない。
光が差し、花が咲き誇っている。
ついぼうっとした。
見惚れた。
ふと我に返る。
奥の方を見ると、さっきまでは視界にさえ入らなかった、禍々しいものがあるのが見えた。
…あれがボスか。
さあ、人類初の挑戦に向けて、頑張ろう。
そう意気込んだ。
ボスにもう一度目を向けた。
そこにボスは、いなかった。
デス・ダンジョン。
そこの最下層には、ボスはいなかったのだ。
そこの最下層は、幻想を見せてくれる。食べ物もある。
今からまた地上に戻るのか。
ずっとここで過ごしたい。
そう思った。
これからは、ここで過ごそう。
才能があるくせに使わない妹には努力の復讐をあげましょう
大嫌いな妹がいる。
私より後に生まれてきて、私が令嬢に必要な大方のことを覚えたところで、才能が発覚して、みんなの好き…興味を掻っ攫っていった、優秀だった妹。
お陰で私は忘れ去られ…いや、家族ではないものとして扱われている。ただ、それだけだった。
今の私は妹の専属使用人だ。
「ねえサラ、あなたの顔を見ると陰鬱だからこの部屋から出ていってくれない?」
「しかし奥様はミアマを見ていろとおっしゃられました。使用人にそれを破ることはできません。」
「ミアマとは呼ばないで。気持ち悪いわ。」
「こちらも奥様におっしゃられたことですが…」
「はぁ…あなたは自分で考えて行動することが出来ないの?こんなのが実の姉だなんて一生の恥よ。こんどお母様に進言してみようかしら?姉を捨てて、て。」
それはとても魅力的な提案だ。私は早くここから逃げたい。
だけど、妹がそんなことをするはずがない。妹は、私をいびるのが好きだから。そしていつも今度お母様に私が部屋から外れてもいいようお願いするわ、と言いながら、やらないのだ。全ては私をいびって楽しむため。
ーガチャン
「あら?花瓶が割れてしまったじゃないの?片付けておいてね。あなたが私の行動をちゃんと見ていないから、こういうのが防げないのよ。それが分かるのなら今度からはちゃんと…って出来ないからこうなっているのよね。そうね…そんなサラにはこれはあなたが落としたという罰が必要かしら?必要よね?では、お母様にそう伝えておくわ。」
これもいつものこと。こう言っていつも私が花瓶を落としていることになっている。
そう、いつものこと。こんな暮らしにももう慣れた。だからこれ以上傷つかないよう、心を無にする。
そうすれば、私の尊厳だけは守られるから。そうしなければ、私は壊れる。もう、限界にはとっくに達している。それでも、まだ私は生きたいと願ってしまう。
私への教育は妹が2歳になって才能の片鱗を見せたときまでだった。両親は妹を跡継ぎにすると決め、私は放って置かれた。だけど、それまでに買われていた教科書類は残っている。両親は、私に買ったものを妹にあげたりしない。だから、それで勉強すること、それがこの生活の唯一の救いだった。もちろん、私の味方をしてくれる使用人も救いではある。
妹をいいなと思っていたのは妹が4歳の時までだ。それまでは妹は勉強を真面目にしていた。そして、並外れの吸収力で、いろんなことを覚えていった、しかし、それもすぐに終わる。妹は、勉強しなくなった。あの盲目な両親の言葉を信じて。自分は天才だと思い込んで。だから、もう勉強はいらない、と。それでも両親は妹を信じたままだ。というか、このままいくと妹はどんどん衰退していくことに気がついていない。
ーそれも今日で終わった。
妹をこの手で焼いた。もちろん死にはさせない。ただ、両親が妹にかかりきらないように。新たな子でも見つけ、今度は真剣に育てることを願って。
そして、私は家を出た。
あのままの妹が君臨する家などいずれ潰れる。だから。
忘れ去られた長女である私がこの家を終わらせる。
そして、逃げた。たった一人で。
きっと両親は調べに来た人には使用人が焼いて逃げたというだろう。あの人達が実の姉に妹が殺されましたなんて言うわけがない。そして、使用人と言い張って私を探し、そして殺す。いい大義名分を得たと思いながら。
だから、一生懸命逃げた。捕まらないよう、見つからないよう、遠くへ。2つの街道のうち片方を選んで進んだ。幸い、お金は奪ってきた。
もっと…もっと…どれくらい歩いただろう。ずっと逃げ続けているから、お金は結局使っていない。そして、3日、寝ずにほとんど歩き続けた。
「見つけたぞ!」
あぁ…終わりだ。その言葉を聞いた私の意識は沈んだ。
---
一人の令嬢が火傷を負ったという。
たったそれだけの捜査に、私が駆り出された。
その令嬢の火傷の原因である使用人を見つけるというのが、依頼だ。
その令嬢というのが公爵家で、まあまあ大事だから、私、第一王子まで駆り出されたのだろう。まったくいい迷惑だ。
まず、その両親を尋ねた。
「話を聞きたいのだが?」
「娘が殺されたんだ!使用人に!アイツめ…」
「使用人の出身は?」
「知らん!孤児だった!」
見た目である程度の特徴はあることもあるが、しかし見つけていないということはここらへんで生まれたのだろう、きっと。
「孤児ねぇ…。どうやって逃げたのだ?」
「普通に使用人用出入り口だ!くそっ!」
「ところで、火傷を負ったのは長女か?次女か?」
「長女だ!うちは一人娘しかおらん!」
おや?おかしいぞ?
これがこの事件の取っ掛かりになるかもしれない。
「分かりました、では見た目は?」
「碧の髪に藍の瞳だ!」
ふうむ。どうやら公爵夫人とまったく色が同じのようだが…。
血縁関係でもあるのだろうか?
「分かりました。では私たちが街道にはいくので、あなた達はこの街を探しなさい。」
「分かりました。」
ここから逃げられる街道は2つ。しかも街と街の距離はまあまあ長く、1本道だ。使用人ということは、体力はないわけではないのだろうが、所詮は使用人。そんなに遠くまで行けるわけがないし、時期に見つかるだろう。
そう思って探し始めて2日目。
まだ見つからない。反対側の街道だったのだろうか?しかし連絡は来ていない。だったらまだだろう。いずれは見つかるのだから、気長に探そう。
そう思って1日後。
「見つけたぞ!」
その方向を見ると、公爵夫人と同じ色をもった少女が、倒れ終わったところだった。
その令嬢は、サラと名乗った。記憶にあった公爵家の長女の名前と同じである。また、少女がしてくれた話は、信じがたいものであった。
妹の使用人になる、妹からのいびり、そして両親からの待遇。気分が悪くなった。
そして、少女はすんなりと告白してくれた。
妹を焼いたのは自分だ。あのままだと、妹は何も学ばず、より強引になる。それだと民に嫌われるだろうし、家も潰れるかもしれない。だから、妹の顔を主に焼いた。顔を焼けば、あまり社交界には出たくなくなる。それを機にもう一度学んで欲しい、と言っていた。もちろん、少女は妹が勉強に再び励むとは考えていなかった。
しっかりとした少女だと思った。
まだ、確証は何も無い。だけど、理由も無しに妹を焼く理由も、3日もずっと逃げ続ける必要はない。なにか大きい理由があったのだろう。そして、これがその理由であっても全くおかしなことはない。
使用人からの証言が揃った。
この少女は公爵家長女で間違いないようだ。そして、妹が、傲慢なのは皆言っていた。あの少女の言うことは本当のことなのだろう。
「私を平民に落としてください。」
少女はそう言った。
貴族にとって平民に落ちることは屈辱となる。だから、判決としては悪くないだろう。
3日後。少女の願いは叶えられた。
---
望み通り平民に落ちることが出来た。今日から頑張ろう。
第一王子が優しい人で良かった。
私の親の評判は落ちた。これからは娘を娘の使用人として扱い、挙句の果てにその娘に大事にしていた娘を焼かれた、問題のある家だと思われるだろう。これで公爵家だというのだから、どうかしている。
いずれ、あの家族を見返してやる。そう思ったとき思い出した。そう言えば、私は笛が得意だった。妹とは違い、努力はできる。なら、努力を頑張れば…。
楽団に応募した数日後、通知が来た。是非入ってください、という内容だ。
嬉しかった。始めて実力が認められた。私は報われたのだ。
楽団ではがむしゃらに頑張った。幸いお金は奪ってきたままだ。何も言われなかったのには驚きである。このときは妹に感謝した。これが最初で最後だろう。まあそんなわけで住む場所には困らなかった。そして、楽団で給料は入ってくる。何も問題がない毎日だった。
毎日毎日練習した。正直才能はそこまであるわけではない。だけど、努力では誰にも負けないようにしたい。そうでないと自分の元からの才能に甘えていることになる。それでは妹と同じだ。そうは絶対になりたくない。その一心で、練習をし続けた。
かなりの頻度で舞台はある。少しずつ、難しいものを任されるようになった。それも、嬉しかった。
あの家を出て…平民になって正解だった。心からそう思った。
そして…
「今から、我が楽団による演奏を行います。曲目は…」
そう団長が言うのを私は隣で聞いていた。
今日は、第一王子に即位による戴冠式が行われ、それに伴い多くの楽団が呼ばれているのだ。そして、今、私は副団長にまで上り詰めた。実力もある程度は身についていると思う。だけど、それ以上にその努力が認められた。みんなは私を見習ってくれてより練習し、それを見た私もより練習する。そういったいいサイクルがこの楽団には回っていた。
今日は全家が呼ばれている。そう、つまり私の両親も妹も呼ばれている。そう思って。私は団長に少しだけ無理を言って見せ場を作ってもらったのだ。これで、堂々とあの家族に見返せる。
ピローロローローピーーロー
見せ場は無事に終わった。そして、公演は大盛況のうちに終わった。今日は、いろんな他の素晴らしい演奏も踊りも見ることができ、とてもいい1日になった。演奏のとき、私の両親も妹も驚いているのは確認できた。まだ少し物足りないけれど…。悔いはない。
「おい!」
「あらミアマ、一体何の用?それにしても醜くなったわね。」
王宮に打ち合わせで一度言ったあと、手紙が届いた。送り主は第一王子…いや、今日から国王だ。わざわざ私がいるのに気づいて、届けてくれたらしい。主にミアマと両親について。だけど、第一王子には悪いけれど、私はその情報はとっくに知っていた。ここは都。噂はすぐに広がっていく。
まず、公爵という地位は妹に譲られるときに降格されるらしい。あのときは外面はしっかりとしていた妹も、今では物にあたり、近隣の住民は怯えているそう。信頼もクソもない。そして、降格に伴い領地は消え、その領地は信頼できる家に分けて渡すことが決まっているらしい。いいざまだ。
「誰のせいだと!」
「あぁ、違うわね。もともと性格から醜かったわ。まあ顔の醜さとマッチしていていいんじゃないかしら?」
「呼び捨てにするな!わたくしは公爵令嬢よ!」
「あなたも努力すればよかったのに、ねぇ?おごらず昔のまま、素直に生きていれば…。そしたらこんなふうに王宮に来れることもあるのよ?」
「だから誰のせいだと!」
少なくとも私のせいではない。
「それ以上落ちこぼれたくなかったら大人しくするのがいいわよ。今からでも真面目になれば…あぁ、もう手遅れですね。」
妹はさらに、私をいびれなくなったからか、地位の低い貴族までもいびり出したそう。
「死ね!」
「お前を捕らえる。」
「どうして!」
「連れて行け。」
当たり前でしょう。妹の行動は貴族の権威を貶めるものだった。そして最後に放った言葉。妹はきっと何も学んでいないのだろう。それとも学んだのに忘れてしまったのかは知らないが、この国では貴族は人の「死」を願うような言葉は放ってはいけないとなっている。そして、それを言ったものは問答無用で牢屋行きだ。
「ありがとうございます。」
騎士団の方にお礼を言う。
「いや、当然のことをしたまでです。そして、さっきはタイミングが良かった。」
「できれば、両親も教育不足として牢に入れてもらえないでしょうか?できれば妹と同じ牢屋がいいわ。3人で惨めにずっと喚いているのを見るのなんて、面白そうね。」
「えぇと…あなたがあの家の長女ですか?」
「えぇ、長女だったわ。」
「分かりました。会にかけてみます。」
「ありがとうございます。」
---
最近のとある公爵家の行動には目に余るものがあった。
妹が姉に火傷をつけさせられて数年が立ち、あの家の評判は落ちるばかりだ。話によると、下位の貴族をいびる、家からは物を壊す音が聞こえる、叫び声が聞こえる…。
確証的な証拠が掴めなかったから、今までは野放しにしていた。
そして、そんなときに私が国王を受け継ぐことになった。そして、その戴冠式には、最近人気がうなぎ登りになっている楽団も呼ばれた。そして、その中にあの少女だったと思われる人物がいた。
楽員の名簿を見ると、サラという名の副団長がいた。きっとあの少女だろう。そういう確信が芽生えた。
なんということだろう!優秀だとされてきた妹があのように落ちこぼれ、逆にないものとして扱われてきた姉が今は人気の楽団の副団長だとは!
彼女の音は、我々貴族に、不意に癒やしを与えてくれた。貴族の殺伐さも、その音を聞いていたら和らいだ。しかし、その音はまっすぐなにかに向かっていた。
私には分かった。これは彼女の家族に向ける憎しみだ。
だけど…憎しみを思いながら吹かれた音が、我々貴族に癒やしをくれるとは…。なんと不思議な音色だろ
う!
素直に感心できた。
だから、彼女の家族だったものに関する情報を送った。
そして当日。
「死ね!」
何事かと思った。
今日は私の戴冠式であり、何事も問題は怒らないほうがいい。だけど、まさか暴言が…しかも最悪の部類の暴言が吐かれるとは…。想像していなくて戸惑う。
見ると、その言葉を放った令嬢はミアマだったようだ。
後から報告が来た。
サラは、両親もミアマと同じ牢に入れるように頼んだそうだ。理由に関しては…はっきりとは伝えられなかった。多分あまりいい類のものではないのだろう。
そして、そのとおりに決まった。
3人の罰は、死ぬまで牢にいるか、奴隷になるか。しかし、実の姉が牢に入れることを望んだため、牢の方になった。
細かい罪状はどうでもいい。みんなあの家族にはイライラしていた。ただそれだけだった。
---
「家族を訪ねに来ました。」
「私が案内しよう。」
そう言って出てきたのは第一王子…今の国王だった。
「こんなことでご足労いただくなんて…」
「構わない。あれの扱いは慎重に行うべきだろうし。」
「すみません…」
申し訳ない。私が何かを言っても何も変わらなかっただろうが、やはり申し訳なくなる。
「ここだ。」
「ありがとうございます。」
ーコンコン
「誰?」
「私です。」
「ふざけんな!お前のせいで!」
あぁ…全然反省していない。
「あら、牢でも楽しめているようね。だったらこのままで良さそうだわ。心配して損した。」
「はぁ!?誰もお前の心配なんて欲しがってない!それより出して!」
昨日からずっと考えてきたセリフを言う。
「あらら…お可哀想に、こんなにも惨めになって…」
「は…!?」
その絶望の表情を見れただけでも今日ここに来て良かった。
おそらく、今の言葉はあの人達にとって、私に絶対に言われたくない言葉だったから。だから、効果があった。
「最後のは良かったな。」
「ありがとうございます。」
あの第一王子…いや国王にもミアマはああいう反応を求められているたのなら、なんとも思わない。
情けをかける余地もない。
そして、私はまた街に戻った。
これからも妹の…いえ、もう妹ではない…ミアマのようにならないように、これからも努力はし続ける。
今日、あの表情を見れたことで過去は吹っ切れた。
これからの私の未来は、私が諦めない限り、きっと明るい。
悪役令嬢、婚約解消に同意する〜しかしなぜか婚約が解消されていません〜
むらさきざくら 様
長くてよければ、この物語の採用をお願いします。
「カーナ、お前との婚約を解消したい。」
あら?みんなの前で申さなくてもいいの?まあ私は別に構いませんけど。
「分かりました。」
ここは乙女ゲーム、光の子の祝福、の世界。
私がそのことに気付いたのは8歳のとき。突然、何のきっかけもなく思い出した。
そして気付いた。あぁ…私は悪役令嬢カーナに転生したんだって。
だけど、私は何もしなかった。
そう、よくある悪役令嬢に転生して、何もしなかったのに勝手に噂が広まって…というやつそのまんまだった。
そして、今、婚約破棄を言い渡せられた。
けれど…
おかしいな。悪役令嬢カーナはみんなの前で断罪されていた。だけど、今は違う。グレイ王子と二人きりだ。そんなところで婚約破棄したところで、何の意味もないのに。
ってそうじゃなくて、第一王子はヒロインであるアンナにメロメロなはずよね?なんで私と二人きりになろうとするのかな?危険だと思わないの?私はそのアンナに意地悪をしたとされている令嬢だよ?
訳が分からない。
「それで、その他には?」
「いや、何もない。」
??
おかしいよね??
私が断罪されないなんて、どうなっているの?
さらにわけの分からなさは加速するばかりであった。
そして、私は普通の日常に戻った。
・・
そう、普通の。
私が婚約破棄されたことも噂にさえなっていない。
相変わらず私に人は寄り付かないし、嫌われ者のまま。
そして、私が嫌がらせをしたという噂はまだひろがったままだ。
一体なぜ?
そして今までに増してわけの分からなさが加速した。
ヒロインであるアンナの攻略対象者は5人いた。小規模なゲームなのだ。
だけど、一人ひとりの難易度は高かった。
しかし、この世界でヒロイン、アンナは王太子グレイしか攻略していない。あれはゲームで、これが現実世界なのだし、そんなものかもしれない。だけどヒロインが一人だけに絞って攻略したのだ。もう少し王太子にも効いているのではないか?
それなのにアンナは婚約破棄を告げられたあの場所にいなかった。
「分からない…」
そう、グレイ王太子殿下のせいでいろいろ相違が起こっている。
私には関係が無いはずのところで。
そしてヒロインの預かり知れぬと思われるところで。
何がどうなっているのか?
それが全然わからない。
ーそしてさらに1年がたった
・ ・
私は今も普通の日常を送っていた。
そう、一人で過ごし、私の悪い噂は流れ、嫌われたまんま。
はやく断罪されて解放されたかった。
私が何も行動しなかったのには理由がある。
死にたかった。
私は前世で引きこもっていた。人間不信になっていた。
そして、この世界でも人間不信は続いた。
引きこもりたかった。
だけど、それは許されなかった。
恋愛とか今となってみればどうでもいい。
光の子の祝福、も、ただの遊びで始めたゲーム。
そして、一回クリアしたあと捨てたゲーム。
悪役令嬢なのは承知。
そしてよくある話の通りゲームには強制力がある。
だから、私が悪役令嬢という噂が広まった。
私がやっていなくてもそれは広まる。主にヒロインの手によって。
これがお約束の決まり事だと思ったし、実際そうだった。
けれど、はやく断罪されたかった。
こうなったら王太子殿下に直接言ってみよう。
そう思いたち、立ち上がる。
「グレイ王太子殿下はいらっしゃいますか?」
「いるが?何のようだ?」
「お話がありまして。少しお時間いただけないでしょうか?」
「分かっ…」
「やめて!」
「?」
唐突にアンナが声を上げた。というかアンナさん、今に一緒にいたのね。
邪魔してごめんなさいね。
けれど、こうやることでより王太子殿下に私の悪口が広まり、はやく断罪されるのかもしれない、と思うとこのままでいいのだと思う。
「しかし…彼女は一応私の婚約者だ。」
あらら?
貴方の手によってそれは解消されたのでは?
なぜ今もそうなっているのでしょうか?
「寂しいから行かないで。」
アンナは泣き落としにかかった。
「気持ちはありがとう。すぐに戻るから大人しく待っていて。」
「そんな…」
アンナは絶望の表情に変わった。
あぁ、この表情も悪くは無いわね。断罪されたときに仕返しをするのも…悪くは無いかもしれない。
そう思ったりもしたが、それだと生き延びてしまうためやっぱり仕返しはしないことにした。
「それで、何のようだ?」
「お聞きしたいことがありまして…わたくしは婚約解消されたのではないのですか?」
「いいや、してない。」
は?
「ですが、1年前のあのとき、婚約解消を持ちかけられて、わたくしは同意したはずですが…」
「そんなに簡単に王族が婚約解消できるわけがないだろう。しかもあとの人も決まらないうちに。」
「あとの人?アンナさんがなるのではないのですか?」
「あいつは平民だぞ?なれるわけがない。」
あらら?
アンナさんにメロメロなはずよね?そういう者は馬鹿だからそんなことを考える余裕が無いはずだけど…
「しかし光の子の祝福を頂いておりますよね?」
「それが?」
あら?
そういう法律はないの?
ゲームの中ではそういう特例があった気がするんだけど…
「いえ、勘違いでした。」
「ほかには何かあるのか?」
「あると言われればありますが…。では、あのとき婚約解消を持ちかけてきたのはなぜでしょうか?」
「それは…今は答えられない。」
おかしいな。もう少し明朗な答えが返ってくるかと…
「そうですか…それではもうひとつお聞きします。」
「何だ?」
「わたくしはアンナさんに嫌がらせをしているのですよ?なぜこのような場を作ってくださったのですか?」
「そりゃあ婚約者を無下に避けたとなっては王家の恥だ」
「それでは、なぜアンナさんとつるんでいるの?わたくしにとってはそちらのほうが恥に感じるのですが…」
「それは…それも…今は言えない。」
どうしたんだろう?行動が矛盾しているし、ゲームの中では王太子殿下はもっと敵意が剥き出しだった。
わけがわからない。
「ひとまず要件はこれだけです。お時間、ありがとうございました。あと、婚約解消に向けて、よければ積極的になってくださいね?」
「え?婚約解消を望んでいるのか?」
「その通りです。その前にそちらが望まれたことですが。」
「…。また今度。」
また?また会う予定があるの?
はやく離れたいのに。死にたいのに。どうして死なせてくれないんだろう?
まさか!
私がはやく死にたいと思っていることがバレた?
それだったら今のままのほうが罰ぬなるだろうと思って放って置かれてる?
そんなの絶対に嫌だ!
なんとか…何よかしないと。
だけど、何も行動したくない……
そして、さらに年月がたち、卒業パーティーがやってきた。
わたくしは婚約者として王太子殿下にエスコートされることになっている。
「今日はよろしく頼むよ。カーナ。」
「こちらこそよろしく頼みますわ。王太子殿下。ところで、なぜ今も婚約解消がなされていないのかしら?」
無視された。
けれど…なぜこんなに丁寧に扱われているのでしょう?ゲームでは…ってこの前にゲームは終わっていたから知らないか。
それでも、あのままゲームが進んでいたならグレイ王太子殿下はアンナさんをエスコートしていたはず。
なんだか奪ってしまったようで申し訳ないわね。
そして、式は順調に進んだ…
「グレイ!なんで!」
「説明しただろう?婚約者を無下には出来ない、と。」
「だから!今日から私を婚約者にしてくれるんじゃなかったの!?あんなに私をいじめてきたその女をなんで婚約者だからってエスコートするのよ!」
やっとやってきたみたい。
はやく断罪して欲しいな。
「そうだったな。だけど、それはまだだろう?まずはみんなの前で婚約破棄をして、そこから君を婚約者にするはずだったが?」
「グレイ王太子殿下、わたくしは婚約解消でも別に問題ありませんわ。」
「ほら、その女もそう言っているじゃない。」
「ですが、公爵家の令嬢をその女呼ばわりするとは…不敬ですわね。」
「え?」
「その通りだ。今日でお前との関係はなくしたいと思う」
まあ!それはわたくしに向けて言ったの!?
なんて喜ぶことは出来ない。
だって今の言葉は間違いなくアンナさんに言ったものだった。
「は?」
「ここ数年間、ずっとお前には苛ついてきた。平民のくせにそれをわきまえない数々の無礼。そして自分は何をやっても許されるという意識。最後に数々の虚言。だが、それも今日で終わりだ。アンナ、お前は2度と王宮に入ってはいけない。」
「どうして!?私は何も嘘をついていない!」
「嘘ばっかだろう?そこにいるカーナはお前に何もしていない。」
「証拠はあるの!?」
「お前の方こそ証拠はあるのか?」
「それは散々見せたじゃない!あの女の数々の悪行を!」
「その証拠は全部王宮に提出した。カーナは何も関わっていないという結果が帰ってきた。もう出ていけ」
なんということでしょう!
私は死ねないの?
「どうしてあんなことを?」
「そりゃあ苛ついていたからな。」
苛つく?王太子殿下にとってはあれは癒やしのはずだったのだけれど…
「それで、いつ気づいたのですか?」
「お前が婚約解消をすんなり受け取ったときからだ。そんなやつがわざわざいじめるわけがない。」
それはそうかも。
ってそれほとんどの間気付いていたってことじゃ!!
「迷惑ね。」
「そうか?それは済まなかった。」
そうしてパーティーは何事もなかったように終わった。
ざわめきはまだまだ残っていたけど。
王太子殿下は「名役者だ!」などと言われ、評判が上がったそう。
ー 死にたい。
その欲望は日を増すごとに強くなっていた。
あれから私は王宮で王太子殿下妃として過ごしている。
つまらないし、はやく死にたい。
ー いっそ、自殺でもしようかな?
そう思い、バルコニーに立ってみる。
ここから落ちたら死ねるのよね?飛び降りて…
バタンッ!
「カーナ!何をやっている!?」
「何をって…死のうとしているのですよ?見て分かりませんか?」
「分かる!だが死ぬな!」
「…何ででしょうか?わたくしがはやく死にたいと思っているのには王太子殿下もお気づきでは?」
「気付いているが…。あとグレイと呼べ!」
「分かりました、グレイ様。そして何でわたくしの邪魔をするのですか?」
「私は…結婚するならお前がいいと考えている。」
「それはそれは…光栄ですわ。」
「だから、死んでほしくないと思う。」
「そうですか。ですがお断りします。そもそもわたくしがあの噂を消さなかったのはあのままいけば死刑になるのではと考えたからです。それなのにそうじゃないことをされては…」
「許せ。」
「大体王太し…グレイ様はなぜわたくしがよろしいの?」
「カーナは…性格が綺麗だろ」
「そうかしら?今も落ちようとするかもしれませんわよ。」
「それにも何か理由があるのだろう。お願いだ。教えてくれ。」
私に事情がある前提…こんなに心配されるようになったなんておかしいわよね。
「そうですね…」
それでも身分的に今のはお願いと言われても命令同様だ。話すしかなかった。
「まあ端的に申しますと、人間不信になったのです。」
「分かった。では私は君には嘘をつかないと誓おう。」
「…。」
「どうだ。考えてくれないか。」
いえ…やはりおかしいわよね?やはり死にたいわ。私は権力に興味はないの。
「嫌よ。王太子妃なんて…多くの人と関わらなければならないじゃない。」
「だったら、まずは私が信用できると思ったものだけに会える人を制限しよう。」
「これってもしかして、わたくしが何を言っても反論されるのかしら?」
「そうだよ。君は私の相談にのって、子を作ってくれればいいのだ。」
「そうですね…でしたら子ができるまで死ぬのを待ちましょう。」
「本当か!?」
「それならばグレイ様はわたくしが子を産めば死ぬのを邪魔しないと約束してくださる?」
「…分かった。ただ、子供は男だ。そして、それまでに君の意見を変えてみせる。」
それから20年が経過した。
二人は今もまだ元気に生きている。
そして、民衆は…その二人のこの約束を知っていた。グレイ様が広めたのだ。そして、みんなが私に死なないで欲しいと言ってくれた。それが儀礼的なものであろうとも、少しは嬉しかった。
そして、より死ねなくなった。
子供は3人。
男児が一人と女児が2人だ。
ー いつ頃になったら民は私たちのことを忘れてくれるのかな?
そんなことを考えながら、カーナは今日も生きている。
わたくしの名誉へのこの度のご尽力、誠にありがとうございました。
わたくしの家は孤立している。
まず、王族から嫌われている。そして、他の貴族からも嫌われている。
理由は知らない。優秀な人材を今までに数多く輩出しているから、その妬みでもきているのかと思うのだけど…
わたくしは、今学園に通っている。
もちろん嫌われている。先生たちにも、生徒たちにも。だから、面倒事を押し付けられている。
例えば森に強力な魔物が出たから倒しに行ってくれないか。例えば、授業で敵役を延々とさせられる。
先生によって、意地悪は様々だ。
だけど、共通していることがある。どの先生も、わたくしがそれを成し遂げたとしても見て見ぬふりをすること。
そして、わたくしの訓練になることを押し付けてくること。
わたくしの家はわざと孤立しているんじゃないかしら?そう思うくらいに、わたくしの訓練になるものが来るのだ。…いくら人がそれを面倒事だと思っていたとしても。
今日も、わたくしは面倒事を押し付けられていた。
明日校外学習があるため、そこにいる魔物を倒しておいてくれないか、という要望だ。
まあ手応えがありそうだったし、もともとそういうのは断らないのがわたくしの家だ。だからより押し付けられるようになるのだけど…
そこはまあまあ国の端の方だった。
なぜわざわざこんなところで校外学習をするのかしら?もし誰かが間違えて隣国に行ってしまっては問題よ。
まあそんなことも考えつつ。魔物を倒していく。
「なぁ、国境越えちゃったけど大丈夫か?」
「大丈夫さ、こんなところこんな時間に来るやつなんていない。」
あのー…わたくしはいるのですが。
まあいいでしょう。
なにか深刻そうな話をしそうなので、黙って聞いてみることにした。
「最近うちの国忙しいじゃんか。給料はそのままなのに働く日数を増やされるしさ。」
あぁ…そんなこと自国では言えませんわね。
もしバレたら退役、もっとひどい場合もあるかもしれませんももね。
わたくしがこれの証拠を掴んで送りつければ一発ですが…やめておきましょう。面倒くさいし。
「はぁなんであんな嫌われ者の領地を攻撃しなくてはならないのか…」
あら?
わたくしの家と似た立場の家があちらにもあるのかしら?
「あの家って優秀なんだろ?そんな領地を攻撃して何になるのか。負けるんじゃねえの?」
まあ!優秀なところまで同じなのね!不思議な偶然ってあるものね。
「知らね。俺達はとりあえずこっそりでも生きて帰ればいいんだよ。」
「それもそうだな。スラローム家なんて放っておけばいいか。」
スラローム家…わたくしの家のことね。そんな偶然ってあるのかしら…
なんて思うわけがない。
あらら、思わぬところでいい情報を手に入れてしまったわ。
これはお父様に伝えるべきね。
「ただいま帰りました。」
「おかえり、アリアナ。」
「お父様、後でお話があります。」
「分かった。執務室に行こう。」
流石お父様。話が分かるわね。
「それで、何があった?どうせ面倒事で面倒事を手に入れたのだろう?」
「ええ、そうですわ。本当なら知りたくないことでした。」
「それで、どんな内容だった?」
「我が家の領地が帝国に脅かされそうになっております。」
「そうか、それでどこからの情報だ?」
流石お父様。これだけでは驚きもしないのね。正直…少しくらいは驚いてほしかったわ。
「兵隊からですわ。」
「兵隊か…ふむ、戦争が起こるのは我が家だけかな?それとも他の家も巻き込むのかな?アリアナはどう思う?」
「そうですね…少し情報が足りないのですが…」
今までのことを思い出す。
少し前、見たとある資料。
それには我が家とこの国の標準を比べた資料だった。
我が家はどれも抜きん出ていた。
いくら他のところから嫌われようとも、中が豊かなのだから人は集まる。
それは貴族たちには手を出せないところだ。
「普通に考えますと、我が家だけを襲撃するメリットはないわ。」
しかし、あの兵隊たちは一般的なものだ。
彼らのような者たちばかりで構成されている帝国軍が我が王国全部を相手にする?
帝国はそこまで軍隊の規模はなかったはずよね…
「しかし帝国軍の規模からすると、王国全部とは考えにくいわね。」
では…我が家が狙いでは無いとしたら?
そう、我が家をダミーとして使い、他の領地を狙う…。
狙う価値がある領地は…
隣のベスティーア領はあまりいい領地だとは言えないわ。わたくしたちの領地に何人も移住してきているもの。
ではクロベータ領はどうでしょう?
あの家は行商が盛んね。帝国にも盛んに行っている行商達がいるからきっと狙わないわ。
となると残りのデストレイア領かしら?
確かあの領は…。鉱山があるわ!でしたらそこが最も可能性が高いわ。
「デストレイア領のダミー…かしら?」
「それが結論か?」
「ええ。」
「では私の考えたことを話そう。」
まずお父様も私と同じくデストレイア領のダミーだと考えた。しかし、我が家をダミーに使う意味はない。だったら何も不思議なことはない、我が領が狙われているのではないのか?
「私はそう思った。」
「なるほど…確かにダミーに使うならもっと手応えのありそうな領を使うわよね。…!」
「お、気付いたか?」
「我が領をなぜ帝国は狙うことにしたのでしょう?」
「さあな。ある程度の自信はあるかもな。」
ありえないわ。
わたくしたちの家の実力は昔から知らしめられているはずよ。それなのに狙うなど…
そんなこと…
なにか兵器でも開発…いや、何か強い魔術師でも見つけたのではないとやるわけがないわ。
それだったら最悪ね。
「帝国は…いい人材でも見つけたのでしょうか?」
「さあな。ともかく私たちは自領を守ればいいのだ。」
「そうね。学園は休むわ。」
「まだ時間はあると思うが?」
「心配だもの。」
「そうか。まあもともと嫌われているし、問題ないか。」
「そういうわけよ。」
そこから、少しお話して、驚いたりして、今、領地に戻っている。
「お父様、帝国はいつ襲撃してくるかしら?」
「分からないな。その方が面白いだろう。」
「お父様!民の命もかかっているのですよ?」
「分かっている。今は情報を集めているんだ。そう急かすな。」
「…本当に王家に助けて貰わないのですね。」
「もちろんだ。あんな家、我が家を助けてくれないからな。」
「そうですか…」
まあそうよね。仕方がないわ。
「使者が参りました。通しますか?」
「通せ。」
「はっ。」
何か連絡があったのかしら?
「帝国軍がいよいよ出発の兆しを見せているようです。」
「分かった。こちらも準備しよう。」
「いよいよね。楽しみだわ。」
「それは良かった。暴れるぞ。」
「もちろんです!」
この日をどれくらい待ち望んだか。早く攻撃に来て欲しいわ。楽しみね!
「アリアナ、準備はいいか?」
「はい!」
「そなたらもいいな?」
「「「「「「はい!」」」」」」
「では出陣だぁ!」
「「「「「「「おう!!」」」」」」」
「…え?」
「あら?」
「「敵が少なくないか(しら)?」」
「「まさか!」」
ダミーだったの!?でしたらきっとデストレイア領よ!急がないと!
「お父様、わたくしが行ってまいります。」
「あぁ、騎士の半数も後で連れて行く。」
「迷惑ですわ。一人でなんとかします。」
「いちおう後から行かせるだけだ。」
「…分かりました。」
デストレイア領侵攻の際に邪魔になるのは我がベスティーア家。ベスティーア家は侵攻を防ぐだけの力がある。だからここの領を狙うと見せかけて、ベスティーア家は自領の防御に専念してもらい、小規模な軍隊を送り、軽く足止めしている間にデストレイア領を狙うのね。
ベスティーア家ともあろうものが騙されてしまったわ。
ここは…あちらが一步上だったと認めないといけないわね。もっとも、戦闘力において負けるつもりはまったくありませんけど。
「見つけたわ。」
帝国軍は追いついたとき、森にいた。
「障壁!」
兵隊全部を囲うように土壁を築く。
休憩時間だったのかしら?一つにまとまっていてくれて助かったわ。
「さて、殺戮の時間よ。わたくしの…ベスティーア家の力を見せてあげるわ。」
そう言葉にし、一人一人倒していく。
わたくしは、魔術よりも剣術が好きだ。その方が倒したという実感がある。魔術だと、間接的に倒したという感じがするから、それが嫌いなのだ。
近くにいる兵士が気づき、わたくしを狙いにやってくる。だけどそんな簡単に負けはしない。
魔術で来られたら魔術で返す。剣で来られたら剣で返す。それがわたくしの流儀。そして、わたくし自身で葬ることで、その死を無駄にはさせない。その思いを持ってどんどん敵を倒していく。
魔術での攻撃を魔術で返すとき、他の人も大勢巻き添えにしてしまったようだけど…まあ気にしている暇はないわ。その人達はまだ剣で攻撃してきたわけではなかったのですし。
「ぎゃああああ!逃げるぞおおお!」
あら、もうそんな頃合いかしら?だいぶ人数は減ったわね。では障壁を狭くしてあげましょう。
「解除、障壁!」
「なんだ? うわあああああああああああああ!」
気付いたようね。ではまた殺戮ショーを開始しましょう。
「ぎゃあああああああ!殺さないでくれえええ!」
「え?無理よ?あなたはわたくしのためにも死んでもらわなくては」
「ひいいいいいいいいいいやめてくれえええええええ!」
うるさい方ね。えい!
「ぎゃあああああああ…。」
よし、これで静かになったわ。…ってあら?
「皆さんどうされたの?かかってきなさいよ。」
「嫌だああ!降伏するから助けてくれえええ!」
えぇ…人数が多いと大変なのよね。まあいっか。捕虜を連れて帰るのも名誉になるでしょう。
「分かったわよ。拘束!」
「「「「「ありがとうございます!」」」」」
感謝されるのは悪くはないわね。
さあて、戻りましょう。
ええとロープは…あった!これで頑丈に縛って…
「あのー」
「何かしら?」
「きつくて…動けません。」
「はぁ?面倒くさいわね。」
仕方なく少しだけ緩めた。まったく、手間がかかるわ。
「ただいま帰りました。」
「おかえり、無事なようで何よりだ。…捕虜か?」
「ええ。全員切っても良かったのですけど懇願されてしまって…」
「そうか、まあ悪いことではないだろう。私が責任をもって預かっておく。」
「ありがとうございます。」
「では王都に戻ろうか。」
「そうね。お母様も待たせているし。」
「お母様!ただ今帰りました!」
「おかえりなさい、アリアナ。ところで陛下からパーティーの招待状が来ているのだけれど…」
へ?どういうことかしら?我が家は嫌われているはずよ。
「名誉が授与されるみたいよ。」
まあいいわ。この機会に遊んできましょう。
そしてパーティー当日。
「アリアナ・ベスティーア。そなたを、自領ならず他領まで守り抜いたとして、神人の名誉を与える。」
まあ!与えられる名誉は神人でしたの?
これは自慢できるわね。神人なんて人が与えられる最上の名誉よ。
そして本当に王家の方が名誉をくださったわ。驚きね。
「何か一言言いなさい」
「わたくしの…ベスティーア家の名誉へのこの度のご尽力、誠にありがとうございました。」
◇◆◇
領地に戻る前にお父様と帝国が脅かしてきていることを伝えた後の会話で。
「ところで、お前はなぜ我が家が嫌われ者になっているのか気になったことはないか?」
「もちろんあるわ。」
「この機会に教えてあげよう。我が家は名誉をもらうために嫌われているのだ。」
「嫌われたら名誉など遠ざかるかと思いますが…」
「我が家が参加するものには他家は参加してこないだろう?そういうことだ。」
なるほど。
「そして、我が家は戦争を仕掛けられるタイミングを100年間も待っていた。」
「100年も?スケールが大きいわね。」
「それだけ、我が家は優秀であるとともに顧みられない一族だったのだよ。」
「しかし、王家の方はわたくしたちに名誉を与えてくれるのでしょうか?」
「知らないな。その時はその時だ。」
「…」
「あと、理由はもうひとつあってな。鍛錬をするためだ。」
「あぁ…やはりそれもあり、わざと嫌われていたのね…。」
まさか本当にわざと嫌われるなんて…
◇◆◇
わたくしも知ったときは驚いたわ。
そしてこの名誉は多大なる方々の尽力で出来ている。
例えば、ベスティーア家の先祖様。そして嫌ってくれた貴族の方々。そして、鍛錬のためにわたくしに程よい面倒事…いえ、鍛錬を押し付け…いえ、くださっ方々。さらには、王族の方々も。
わたくしがそう考えている間、貴族たちは…。
(何!?まさか嫌われていたのもこのときのため…)
(いや、そんなことはないだろう。嫌われ始めたのは100年以上前だと聞いたことがある。)
(だが、あそこはベスティーア家だぞ。)
(確かに…)
(では…我々は…)
((都合よくこの名誉のために使われてしまっただけだというのか!?))
(あの発言…そう考えると納得がいく)
(つまり、我々は…)
(そうだな…)
((騙されたのだ。))
(やられたな…)
(しまった…)
そんな会話をしていたり、していなかったり…。まあ少なくとも、一部の頭の出来の悪い者を除き、みんな悔しさを感じていたのは間違いないだろう。
「では、パーティーを再開してくれ。」
わたくしもパーティーに行くべきかしら…と考えていると、国王陛下に呼ばれた。
「何か気になることはないか?」
「もちろんありますわ。なぜ、嫌われ者のベスティーア家に神人という最上の名誉を与えたのですか?」
「我の家は昔、そなたらの家の者と約束したのだ。嫌い続け、よりよい仕事を与え、活躍した場合にはちゃんとそれ相応の名誉を与える、とな。」
あら?
「嫌われているのは、ベスティーア家が何かわざと嫌われることをしたのではない…ということなのでしょうか?」
「いや、そうではない。そなたらの先祖は、ちゃんと嫌われることをした。ただ、我の家もそれを手伝ったのだ。」
「それの目的はいったい…?」
「ベスティーア家がそう要求してきた。まず、一家だけそなたらベスティーア家は秀でていて、貴族からもともと多少は嫌われていたのだ。我の家の者…その当時の王は特に嫌うことはなかったのだが、それでもほかの者が嫌っていたから…な。」
「えぇ、分かりますわ。」
そこまで親しくするわけにはいかなかったのよね。
「そんなときに、ベスティーア家が我が家を嫌っって欲しいと頼んできたのだ。」
なるほど…。
「理解いたしました。お話はそれだけでしょうか?」
「あぁ。」
「わたくしのためにこんな時間を作っていただき、ありがとうございました。」
そして、国王陛下のもとを離れた。
その後、パーティーはつづがなく終わったそう。
その後も、我が家は面倒事を押し付けられはするものの、嫌われはましになってしまった。
少し残念に思ったのは…お父様との秘密よ。
転生したからと言って、大好きな人を忘れられるはずがない。
はねられた。車に。もちろん、あっけなく死んだ。
東村大和の人生は、そこで終わった。若い…まだ19歳のときのことであった。
最愛の人…楠木里愛とも高校生からの付き合いが続いていたのに…
「儂は神じゃ。」
「は?」
神だなんて名乗るやつ、信用できるのか?
「お主を転生させてやろうと今思っているのだが…」
「本当ですか!?」
いや、こいつはきっと本当に神だ。じゃないと転生なんて出来るわけがない。
「あぁ、実はな、ここ最近まで王族同士で争ういがひどくてな…誰もなってくれないのだ。そんな王族だが、なってくれるか?もうすぐ落ち着くと思うんだが…」
「なります!」
こんな俺でも、一回くらいはいい思いしたいからな。
だけど…
「そこでじゃ。面倒事を受けてもらったからの、なにか一つ頼みを聞いてやろう。」
「本当か!?」
これだったら気がかりだった里愛のことも解決できるかもしれない。
「里愛と…里愛の記憶を残したまま、また俺と出会えるところに転生させてください。」
「うーむ…どうじゃろうなぁ。距離は遠くなるかもしれないな。あと…記憶に関しては…とりあえずお主の記憶は残しておいてやろう。」
あ…。つい、俺の記憶は残っている前提で話していた。
そうだよな。俺の記憶が残っていないと意味がないよな。
「ありがとうございます。絶対…里愛を見つけ出してみせます。」
「そうか、精進しよ。」
「はい!」
「では、転生させるぞ。」
「お願いします。」
「あちらもすぐに到着しそうじゃな。」
神様が何かを呟いたのを聞いた。
◇◆◇
懐かしい夢を見た。
ってあれ?俺は第一王子ザイレル・ダンジェスターだよな?ん?俺?私ではなくて?どうなっている?しかも懐かしい?確かに昔あったような気はするが…
考えないことにした。
次の日。
また同じ夢を見た。何かが腑に落ちてた。
今日は昨日とは違って混乱はしない。受け入れられたから。
そっか、俺、神様に会って、転生させてもらったんだ。
なら、里愛を探さないと。今の俺は15歳。里愛はまだ生きているだろう。見つけられるのはもっと後だな…
あれ?俺って王族だよな?これじゃあ里愛と結婚できないのでは…?
ああ…あのときの俺よ…なぜ受け入れてしまった…。いや、受け入れたから記憶が今残っているのか…。だったら悪くは無いのか。
でも…結婚か…どうしよう…まあまだ先だ。
「里愛…」
「殿下、一体どうしたのですか?」
庭でボーっとしていると、公爵殿が話しかけてきた。
「いや、何でもない。」
「そうですか…。ふむ。」
「なんだ?」
「今のため息、私には分かりますぞ。殿下は恋をしていらっしゃるのですな。」
な!?間違ってはいないな…
しかしどう答えるのがいいだろう。そう考えて何も返事しないでいた。
「おや?では恋に恋しているのですかな?」
いや、それはないな。だけどここで否定したら始めのやつはなんて答えればいいのだろう?
「おぉ!そう言えば!」
公爵殿が急に叫んだ。
「何だ?」
「確かもうすぐ婚約者を決める会議が開かれる…」
「公爵殿、頼む!婚約者はまだ決めないでくれと言っておいてくれないか。」
「なるほど、殿下は恋に恋していらっしゃるのですな。王族とは言え人の身。それを追い求めるのは悪いことではない。応援しましょう。」
「ありがとう」
これで少し、時間を稼げるだろうか?
だけど里愛はきっとこの世界にはまだいない。俺は…どうすればいいんだ…
5日後。
夕方ぐらいに、庭にいると、
「殿下、済まなかったなぁ、婚約者が決められてしまったぞ。」
また公爵殿が話しかけてきた。
「そうらしいな…」
「頑張ってその令嬢と恋をしてくれ。」
「うん…」
父上が教えてくれた。
決まってしまった…。願わくば、里愛のように優しく、しっかりとした令嬢であることを…。強く祈る。
この5日間、頑張って考えた。
だけど、何もわからなかった。俺は、今、地球がどうなっているのかも知らない。
そして、里愛がいつ死ぬのかも、この世界でどのような姿になっているのかも知らない。
こんな俺に里愛を探せるのか…?不安ばかり募っていく。
何か…何か…意見をくれよ…誰か…
「殿下、明日は婚約者様とのお茶会がありますから。」
「…分かった。」
侍女に言われ、しぶしぶ頷く。
次の日。
「こんにちは。第一王子殿下。」
「こんにちは。シーモア・パルテイン。シーモアと呼んでもいいか?」
「えぇ、構いません。わたくしも殿下とお呼びしても?」
「この度は私の婚約者を引き受けてくれてどうもありがとう。」
そんな社交辞令から始め、当たり障りのない会話をして過ごした。
「殿下は…どこか覚めた目をしていますね。何か理由があるのでしょうか?」
「きっとシーモアの気に障ることだからな。言わないほうがいい。」
というか私に自ら婚約者を傷つけるような真似はさせないで欲しい。
「そうですか…しかしわたくしと殿下は婚約者の身。そういうことも是非お聞きしたいです。」
「これは…政略結婚だろう?必要ないことを話す必要はない。」
「あります。政略結婚から愛が生まれることもあリますよね?そのためにはまず相手をしる必要があります。相手を知ることで、恋ができ、政略結婚を楽しめるのです!」
シーモアがいきなり饒舌になった。
「しかし、私はシーモアとは多分恋ができない。」
「理由をお聞きしても?」
「昔…大好きな人に出会ったのだ。今もそれが忘れられない。君を傷つけてしまうことだろう。すまない。」
「だから殿下は目が冷めていらっしゃるのですね。」
「かもしれないな」
「ですが…わたくしわ構いませんわ。ただ、わたくしが殿下に恋をする機会を与えていただければ、と思いまして…。はじめにそのことを話してくれたこと、感謝いたします。」
「それだけでいいのか?」
もっと…相思相愛を求めているのかと思っていた。
「はい。一緒に暮らすとしても自分が好きな相手か嫌いな相手かでは大違いですもの。」
「ならいい。」
「あと…殿下にとってもこれはいいお話だと思いますわよ?わたくしが王太子妃としていることでその懸想されている方を妾とすることができますもの。」
「それもそうだな。」
シーモアか…。いい令嬢が来てくれたな。
彼女は信頼できそうだ。もしかしたら里愛を探すのも手伝ってくれたり…いや、それは我が儘だというものだ。きっと無理だろう。
「ではさっそく、明日、城下に視察に一緒に行きませんか?」
「どうしてだ?」
デートということか?
「もちろん多少の変装は致しますわ。ですが、平民の方々は好きな相手と2人きりでデートというものをするらしいのよ。わたくしたちもそれを出来ないかな…と考えまして…」
「まあいいだろう。」
その時、シーモアの付き添いとして来ていた侍女の視線が厳しくなった気がした。
俺はお嬢様の相手として不適切だ…とか考えられているのだろうか。
少し残念だ。できることならば侍女ともいい関係を築いておきたかった。
「こんにちは。」
「こんにちは、殿下。今日はよろしくお願い致しますわ。」
「あぁ、よろしくな。誘ってくれてありがとう。」
「どういたいしまして。では行きましょうか」
「そうだな。」
そしていろいろ出かけた。裕福な商家の娘とその婚約者…というふうに変装した。
護衛は後ろからついているから完全とは言えないが、基本的には安心だ。
「まあ!これは綺麗ね!」
「シーアに似合いそうだな。買おうか?」
「まあ!いいですの?ザイ様」
イヤリングを買ってあげることにした。
あと、偽名はシーアとザイにした。
「あぁ、私からのプレゼントだ。」
「ありがとうございます!嬉しいわ!」
可愛いな。ほだされそうだ。里愛がいる限り絶対そうはなりたくない…ならないが。
「あ、少し離れてもいいでしょうか?少し行きたいところがあるのです。」
「ああ、いいぞ。」
「護衛を一人お借りしますね。」
「分かった。」
侍女を置いていっているが…いいのだろうか?
「あの…」
侍女に声を掛けられた。シーモア付きの方の侍女だ。
「殿下…いえザイ様は里愛を知っていますか?」
「え?」
「やはり知りませんか…」
「なぜその名前を知っている?」
どういうことだ?
俺は里愛の名前は公爵殿に出くわした一回しか呟いていないと思うのだが…
「それは…夢でその名前の少女を見たのです。」
俺と似たようなものか。
「だがなぜわたしが 里愛を知っていると考えた?」
「老人が…その夢で見た老人が、大和は王族に転生したと言っていました。」
「そうか…それは確かに俺しかいないな。」
この王家、兄弟争いが終わり、今生きているのは俺と今の国王だけだ。
だが…
「お前は誰だ?」
神様は里愛の記憶を残すとは言わなかった。だったら記憶があるこいつは誰だ?
「シーモ…シーア様の侍女であり、でん…ザイ様のお知り合いでいらっしゃる里愛の夢を見た者です。」
里愛の夢…ね。俺も1日目はただの変な夢だと思っていた。
「その夢は、いつ見た?」
「今日が初めてかと…」
なら明日まで分からないな。
「ただ今戻りました。お待たせしました、ザイ様。」
シーモアが戻ってきた。お陰で話はなあなあになってしまった。
「明日、時間をいただけるか?」
今夜、あの侍女は俺と同じならきっと夢を見る。だったら明日会わなくては分からない。
「まあ!いいのですか!嬉しいですわ!」
「さすがに場所は王宮だが…。何をしてきたのだ?」
「内緒ですわ。まあお買い物ですわね。楽しめましたわ。」
そう言ってシーモアは笑う。
「そうか。」
何を買ってきたんだろうなぁ。
「最後に向かいたいところがありますの。」
「連れて行ってくれ。」
「かしこまりました。ただ…秘密の場所ですので。目を閉じて頂いてもよろしいでしょうか?」
「あぁ。」
そう言って目を瞑った。
「今日一日、殿下と過ごし、殿下が誠実であることが分かりました。」
「それは嬉しいな。」
目を瞑ったまま会話に乗じる。
「きっと、わたくしは幸せ者でしょうね。このような方が婚約者であるのですから。」
「不誠実者だがな。」
「それをはじめに伝えてくださったのですから誠実だと言うのです。」
「…。」
「さらに、懸想されている方がいらっしゃるようですが、わたくしにも誠実に対応して下さいました。」
「それは…婚約者だからな。」
「これならわたくしが蔑ろにされることはなさそうだと安心いたしました。」
「婚約者を蔑ろにはしない。」
「皆がそれをできるとは限らないのですよ。」
「そうかもしれない。」
「さあ、到着いたしました。あの…ご不便をかけますが、まだ目を閉じてもらっていてもよろしいでしょうか?」
「歩くのか?」
「えぇ、少々。」
「分かった。護衛についてもらえば大丈夫だ。」
そして、護衛の者に伝える。
「もし危険だったら判断は任せる。」
「「かしこまりました。」」
念には念を。シーモアは信頼に値するが、それでも王族として、危険を犯すわけにはいかないからな。
護衛の者二人に支えられて10分ほど歩いた。
「到着いたしました。目を開けても構いません。」
そう言われ、目を開ける。
「…すごいな。」
そこからは街を…城を見渡せた。夕日に照らされ、綺麗な景色があった。
そっか…いつの間にか夕方になっていた。
「どうです?お気に入りですのよ。」
「素晴らしい景色だ。連れてきてくれてありがとう。」
「どういたしまして。そして、こちらをどうぞ。」
シーモアがあの時…俺が侍女と話していた時に買いに行っていたと思われるものを手渡された。
「ザイ様…いえ、殿下がわたくしに買ってくださったもののお返しをしなくては…と考えまして…」
「開けていいか?」
「はい。ありきたりなものですが…」
それは、ブローチだった。
シーモアの髪の色と同じ…いや、少し違うか。ただ、何か親和感を抱かせる色だった。
「…すごいな。どこで見つけた?」
「殿下がわたくしにイヤリングを買ってくださった店にあったわ。」
「そうなのか…。気づかなかったな。」
「そのお陰でわたくしは殿下にプレゼントすることが出来たのです。助かりましたわ。」
「ありがとう。ところでなぜこれを?」
「どこか…わたくしみたいに感じたからです。」
「そうか。大切にするよ。…あ。だったら今度また私を思い起こさせるものを買わなくてはならないな。」
「いえそんな、結構ですわ。そこまでしていただなくても構いません。」
「私が気にするのだ。贈らせてくれ。」
「…はい。分かりました。」
そして、しばらく夕日が沈むのを眺めていた。
「では帰りましょうか。」
「そうだな。」
城に戻った。
「シーモア嬢はどんなだ?」
「素晴らしいです。彼女を選んでいただき、ありがとうございます。」
週に一度の、父上との夕食。そこでさっそくシーモアについて聞かれた。
「そうか。気に入ってくれたか。そういえば今日は1日中出かけておったようだな。シーモア嬢と。」
「はい。素晴らしい時間を過ごせました。」
「それは何より。これからどんどん愛を育むがよい。」
おいおい。一体何人ぬそれを言われ続けなければならないんだよ。
「おはようございます。今日は午前中に勉強が、午後は婚約者様とのお茶会があります」
「分かった。いつもありがとう。」
「…ぇ?」
侍女はボソッと呟いた。
午後。
「今日はよろしく頼む。時間をもらえたこと、感謝する。」
「こちらこそ、殿下とのお時間をいただけて嬉しいですわ。」
「今日は…シーモアには申し訳ないが、数分、侍女と話してもいいだろうか?」
「ええ、構いませんわ。わたくしは少し離れておきますね。」
「助かる。」
「さて、侍女…名前は何だ?」
「フィリーと申します。」
「そうか、ではフィリー、今朝も夢を見たか?」
「はい。」
「それで、どう思った?」
「私は…里愛が前世なのだと理解しました。」
まさか…
「神が出てきたか?」
「はい。」
「どんなことを言っていた?」
「話すなら…始めからでもよろしいでしょうか?」
「ああ、分かった。」
◇◆◇
私の目の前で恋人の大和が車にはねられて死んだ。
それから1週間。おおかたの葬儀は終わったけど、私は立ち直れずにいた。
「早く…会いたいな…」
自殺することにした。選んだのは飛び降り自殺。
首吊りより確実に死ねるからだ。
そして、気付いたら老人が目の前にいた。彼は神だと名乗った。そして…
「お主を転生させてやろう。」
「いいんですか?…だけど、転生したら大和がいないじゃない。」
「いるぞ?」
「え?」
「大和が不人気なところに転生してくれてな、その分お願いを飲むことにしたのじゃ。」
「それは…?」
「里愛…そなたを同じ世界に転生させる、とな。」
「え?」
「ちなみに大和の記憶は残してある。だが…お主の記憶は残せない。すまぬな。」
「あの…!」
「なんじゃ?」
「大和に会える範囲内で、不人気なところはありますか?」
「そうじゃなぁ。幼いころに奴隷になることになって、だが、その後侍女までになるコースならあるぞい」
「じゃあそれでお願いします!そしたらお願いも聞いてもらえますよね?」
「ふむ、確かにそうじゃな。」
「記憶は、子供の時からあるのですか?」
「いや、15歳と半年のときに戻るようになっておる。」
「だったらそれでいいです。」
「いいのか?」
「はい。その代わりに私の記憶を残して下さい。」
「分かった。ではお主を転生させよう。」
◇◆◇
「こんな内容でした。」
「フィリー、君は奴隷だったのか?」
「そうです。」
「辱めを受けたのか?」
「幼いうちですから…裸を見られるくらいでした。一番最初の買い取り手がシーモア様でしたので。」
「そっか…辛い目に合わせたな。そんなことまでして記憶を残してくれてありがとう。」
目頭が熱くなる。
「どういたしまして、大和。」
「ありがとう、里愛。」
「すまない、ありがとう。お陰で満足に話し合えた。」
まだ少し涙目だが、なんとかしてシーモアに戻る。
「殿下…どうされたのですか?」
「フィリーが…大好きな人だった。」
「フィリーですか?失礼ですが、どこに接点があったのかお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「夢だ。」
「はい?」
「フィリーもそうだよな?」
「はい。」
「夢…ですか?一体どういう…」
「まあそういうことだ。」
「いえ、分かるわけがありませんわ。ただ、泣いてしまわれたことを見るに、フィリーがお相手なのですね。」
「あぁ。」
察しがよくて助かる。
「そこでだが…フィリーをもらってもいいだろうか?」
「フィリーは元は奴隷でしたが?」
「構わない。もちろん君も大切にする。だから、どうか貰わせてくれ。」
「そうですね…殿下が国王になられ、わたくしが王妃になることが出来た場合はそれで構いませんわ。」
「ありがとうシーモア。」
ちゃっかり自分が王妃になることを確実にしているが、まあどうせ確実なのだから許そう。
2年半がたった。
俺は18歳になり、先日結婚式が行われた。まだ即位は先だが、シーモアと結婚することができ、これでフィリーを妾にすることができる。
シーモアは無事俺に恋ができたようだ。有言実行。素晴らしいと思う
何もかもが上手く行っている。
里愛ともまた過ごせて今、最高に幸せだ。